貞操逆転世界のおちんぽサムライ〜私は彼女ですか?いいえ。あなた“も“セフレです〜【挿絵あり】 作:たんばりん
「督促状?」
「えぇ、たっくんにですって」
朝、蒼佳から俺に郵便が来ていると聞きどんな書類かと思うと葉書の中央にデカデカと“督促“と書かれていた。
「俺、なんか滞納してたっけ?」
あまりにも身に覚えがないので家主たる蒼佳に尋ねるも
「知らないわ。中身までは見てないもの」
という回答があり「そりゃあ、ごもっとも」と返して俺はペラペラと仰ぎ見る。
「……あ……」
督促の横には“
「あれ、サムライって納精免除じゃなかったっけ?」
「あぁ、“納精“の督促だったの。というより納精で督促状が来るのね」
そう言って蒼佳は苦笑いを浮かべた。
この世界では体外受精による試験管ベイビーが一番メジャーな妊娠方法である。
それを支えるのは男性による精子ドナーの提供であるわけだが、男性の性欲が総じて低い為、任意に精液提供を促してもあまり効果が見られなかったことから20年前より(精通した13歳以上の)男子は強制的に月に一度精液を精子バンクに提出する義務が生じるように法律が変えられた。
故に“納精の義務“である。
悔しく話すと長くなるが俺は13歳の頃からサムライ養成機関のため、一度も納精をしたことがないのだ。
故に蒼佳に「どうすれば?」と問うも、
2人して首を傾げた後に出たことは市役所へ行くということだった。
「行ってきまーす」
あまりのめんどくささに俺はため息をつきながら家を出た。
「はぁ、“精液バンク“ですか……。」
「はい。納精の際はお手数ですが精液バンクへの出頭をお願いしております。
ここから一番近い所ですと……、ここですね。現在地より歩いて5分程度のこちらに精液バンクがありますので詳しくはそちらにご確認下さい」
市役所の受付に立つ女性に地図を用いてそんな説明を受けた。
「本当に訳の分からん世界だ……」
「ん?申し訳ありません。聞き取れませんでした」
俺の独り言に受付の女性が反応するので、
「あ……ごめんなさい。独り言です」と返して、
俺は地図を頼りに精液バンクを目指した。
転生して16年。未だこの世界に慣れないことも多い。
再認識させられるような気分だった。
――――――――――
「おはようございます。本日は“
「……ん?……ごめんなさいもう一度お願いします……」
聞き覚えのない単語に思わず再度聞き返すも受付嬢は先のセリフを繰り返すだけで、
俺は最終的に“納精“の督促状がきた。
「畏まりました。それでも“納精官“より説明を受けて頂く必要がありますのでこちらの番号でお呼びしますのでおかけになってお待ち下さい」
ぺこり。
頭を下げる彼女に俺もぺこっと頭を下げて待合室のベンチに座る。
いざたどり着く前は精液バンクという字面からどことなく精液臭そうな病院のような場所予想していたが全然違っていた。
むしろ近代美術館のような装いで建築された施設内はテレビで紹介される大手企業のオフィスのように清潔感が溢れていた。
「36番でお待ちのかたぁー…8番準備室にお願いします」
アナウンスが俺の番号を呼び出す。
「初めまして。私 納精官の橘
殺風景な、どこか保健室を思い浮かべるような室内に通され、女性がぺこりと頭を下げる。
「あ、よろしくお願いします」
「賀茂匠様は……おサムライ様で、今日が初めての納精ですね……」
彼女はタブレットを操作しながら切長の目を細めた。
「では、簡単に納精についてご説明致します」
そう言ってテレビに一つの映像を抽出した。
……ほうほう。ふむ……なるほど……
映像はおよそ30分程度流れるも簡単に言えば納税が単純に精液にも適用されるということだった。
納める精液の量や、ランクに応じて税金もいくらか免除になるらしく、おまけに“ふるさと納精“なるものも存在しており思わず舌を巻く。
「いかがでしたでしょうか?何か不明な点はありますでしょうか」
納精官の橘が俺に確認を問うので俺は気になったことをいくつか質問した。
一つ、納精と献精の違いについて
一つ、精液のランクについて
一つ、精液の提出、搾精方法について
俺の質問に彼女はニコリと笑顔を浮かべてパンフレットを俺に差し出す。
「まずは納精と献精の違いですが納精は先の映像の通り月に一度、ここ精液バンクに出頭頂き“処置室“にて搾精した精液を納めてもらうものです。
そして献精ですがこちらのパンフレットの方が分かりやすいかと思われます」
そこにはデカデカと
“献精のおねがい“
とタイトルが書かれ、四コマ漫画で献精について記されていた。
可愛らしいポップな男の子がフラスコを掲げて精液を提出している四コマだ。
発行元は日本“白十字“という機関らしい。
「それで精液のランクでございますが賀茂様は“甲欄“でございます」
「……あぁ……なるほど」
橘の“甲欄“ということに俺が合点が行く。
俺はは12歳の年の5月5日に行われた“精液検査“、通称、“精検“の結果、サムライになったのだ。
そして精検には5段階の評価がなされ、
甲〉乙〉丙〉丁〉戊の5段階にてランク付けされて甲と判断された精液の持ち主のみがサムライ養成機関へと行くのだ。
どうやら、その評価をそのまま引き継いでいるらしい。
「甲の方ですと納精された精液1mlにつき、所得税が5,000円減税措置をされます。
最終的に所得税を全て減税されると翌年の住民税からも控除されますし、それに上限はございません」
橘のセリフに俺は思わず前世の“年末調整と住宅ローン控除“の関係を思い出す。
今回は上限がないそうなので似て非なるものだが……。
「ですので男性は毎年の確定申告を税務署に行って頂く必要がございますのでご注意下さい」
ぺこりと橘はまた頭を下げた。
「最後に搾精方法や提出方法ですが、納精・献精はいずれもここ“精液バンク“で搾精頂きます。
一般的にはこの搾精器とコンドームを使って頂き……」
そう言って彼女は透明色のオナホールをこちらに差し出した。
「精液バンクにあります“処置室“でマスターベーションし、射精した精液をそのまま提出頂ければそれで終了です」
最後に「他に何か質問はありますか?」と言う彼女に俺は首を振って「ありがとうございました」と頭を下げると橘は鷹揚に頷いてから
「では、施設のご案内などはここに常勤しております”看護師”にお任せ致します。
この中から選んで頂けますか?」
と言っていくつかのクリアファイルを渡された。
……ん?……
疑問符が頭に浮かぶが、何処かにワクワクとしている自分を認めて、とりあえずは1人の女性の資料を指差した。
「早川ですね。この者についてはまだ“看護実習生“になりますが……畏まりました。それではこちらに呼びますので、その後の詳しい説明は彼女よりお聞き下さい」
ぺこり。
ピンっとはった背筋を90度に曲げて彼女は部屋から出ていった。
1人、室内に残されてどこかソワソワ、ドキドキする姿に俺は前世の風俗を思い出していた。