※この作品はR-18です。

ヤリチン至上主義教室へ   作:トリコ

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主人公は黒く染めてるだけで、ほんとは茶髪。
うっかりでクラスポイントのこと書いてたので消しました。


クラス

 しっかりとした印象にポニーテール調にした髪。間違いなく彼女は美人だ。お近づきになりたいものだ。

 

「えー新入生諸君、私はDクラス担当を担当することになった茶柱佐枝だ。普段は日本史を担当している。この学校には学年ごとのクラス替えは存在しない。卒業までの3年間、私が担任としてお前たち全員と学ぶことになると思う。よろしく。今から一時間後に入学式が行われるが、その前にこの学校の特殊なルールについて書かれた資料を配らせてもらう。以前入学案内と一緒に送付したものと内容は同じだ」

 

 前の席の綾小路から見覚えのある濁った青色の資料が回ってくる。東京都高度育成高等学校要項と書かれたそれは、茶柱が言っていた通り内容は合格発表を受けてから貰ったものと変わらない。この学校は他の学校よりも特殊であり纏めると、

 

 寮生活の義務。

 特例を除いて肉親にも許可なく連絡できない。

 学校の敷地から出ることも出来ない。

 

 と書かれてある。一応、その代わりとして小さな街が形成されていてる。60万平米を超えるそこにはカラオケやシアタールーム、カフェ、ブティックなどなどの施設もある。

 

 そして何より一番の要注意点は、Sシステムというこの学校独自のもの。

 

「今から配る学生証カード、それを使えば敷地内の全ての施設を利用することが出来る。勿論、売店などで商品を購入することも可能だ。端的に言えばクレジットカード、電子マネーのようなものだな。ただし消費されるのは現金ではなく、この学校内でのみ流通しているポイントだ。この学校においてポイントで買えないものはない。学校の敷地内にあるものなら何でも購入可能だ」

 

 茶柱の手にあるスマートフォンほどの機械。学生証と一体化したこのポイントカードは学校での現金の意味合いを持つ。あえてを紙幣持たせないことで、学生間で起きる金銭のトラブルを未然に防いだり、あるいはポイントの消耗をチェックすることで、消費癖も分かるというものだろう。

 

 買えないものはない、何でも購入可能。今回はどちらも意味としては同じと捉えていいだろう。わざわざ二回言うんだから、この学校生活での鍵となるんだろうな。因みに何でも、と言うのは簡単だが実際のところその幅はどれほど広いのだろうか。もしかしたら言ってしまえばつまりポイントさえ払えば……自分のクラスを女だけに出来ると言うことだ。まぁしないが。

 

「施設では機械にこの学生証を通すか、提示することで使用可能だ。使い方はシンプルだ から迷うことはないだろう。 それからポイントは毎月1日に自動的に振り込まれることに なっている。 お前たち全員、平等に10万ポイントが既に支給されているはずだ。なお、1 ポイントにつき1円の価値がある。 それ以上の説明は不要だろう」

 

 一瞬、教室の中がざわついた。

 だが無理もない。普通の学生には大金レベルである、実質十万円の支給……もしこの学校の生徒全員が何らかの世界レベルの技能を持っているならまだしも、俺の目が節穴でなければ、このクラスで何かに秀でたものは何人かで、大半は普通の生徒がいるから絶対にありえない。

 様々な小難しいことを抜かしても、何せこのクラスだけでも十万×十二月×四十人=四千八百万ポイント。それが更に四クラスあり三学年も存在している。いくら政府が関わっていると言っても、本当ならとてつもない喪失は避けられないだろう。

 

「ポイントの支給額が多いことに驚いたか? この学校は実力で生徒を測る。 入学を果たしたお前たちには、それだけの価値と可能性がある。そのことに対する評価みたいなもの だ。遠慮することなく使え。 ただし、このポイントは卒業後には全て学校側が回収することになっている。現金化したりなんてことは出来ないから、ポイントを貯めても得は無いぞ。 振り込まれた後、ポイントをどう使おうがお前たちの自由だ。好きに使ってくれ。仮にポイントを使う必要が無いと思った者は誰かに譲渡しても構わない。だが、無理やりカツアゲするような真似だけはするなよ? 学校はいじめ問題にだけは敏感だからな」

 

 ……茶柱の言うことを信じるならば、入学時点の俺たちの価値が十万ポイントという評価。そんでもって学校が実力で生徒を測るのなら、これからの生活次第でどんなに上下しても全然おかしくない。やっぱり進学・就職に100%希望に応えるというのも何か訳ありなんだろうな。

 後はこの、現段階で考えられる可能性を言うかどうかだな。確定しているわけではないし、茶柱に目をつけられるのは面倒だ。しかし誰かに迷惑をかけられ俺のポイントが下がり、小遣いが少なくなるのも不快だな。いや、俺が稼ぐ方法ならあるか。

 

 今も戸惑いの広がる教室内で、先生はぐるりと生徒たちを見渡す。

 

「質問は無いようだな。では良い学生ライフを送ってくれたまえ」

 

 クラスメイトの多くは、十万ポイントと言う大きな数字に驚きを隠せないようだ。 誰もがこの学校が楽園だと疑うものは居なかった。寮生活を強いられることや、敷地内から出られない、連絡を取れない、それを加味しても無償で提供される十万ポイントや周辺施設が生徒達の思考を緩くしていく。そもそもこの高度育成学校に入った人間は、殆どが進学率、就職率がほぼ100%という部分が目当てだろう。

 

 実際、俺が調べた卒業生の中にはこの学校を出たことで有名になった人物もいる。普通どんなに有名で優秀な学校でも、秀でた分野は限らている。スポーツに特化していたり、音楽に特化していたり。あるいはコンピューター関係だったり。けど、ここはどんなジャンルであったとしても望みを叶えてしまっていた。それだけの力を持っている学校が故、入学してしまえば卒業まで安泰だと考えているのだろうか。

 

「思っていたほど堅苦しい学校ではないみたいね」

 

 鈴音はこちらを見ながら話しかけてくる。そうだな、彼女になら別に良いだろう。どうせこの様子なら変わってないのは明確だ。言ったところで周りから変な注目をされることはないだろう。

 

「このままならそうかもな。でも監視カメラの異常な数とか見ると結構怪しいんだろうな。少なくとも十万をこんなふうに使ってるんだから、それだけリスクはある筈だ」

「確かに……優遇され過ぎてて少し怖いくらいね。貴方が言うんだからやっぱり裏があると思うべきね」

「じゃあ探索がてら俺とデートしようぜ」

「断るわ。私は今日は疲れているの。寮生活の準備もしなくてはならないし、貴方とは違うのよ」

 

 この学校の詳細は、ヴェールに包まれている。外から調べるのは限界がある。ハーレムを作りたいだけなのに、とんでもないリスクがついて回りそうだ。そして先生が居なくなり、高額なお金をもらって浮き足立ち始めた生徒たち。 そんな中で手を挙げたのは、如何にも好青年といった雰囲気の生徒。

 

「皆、少し話を聞いて貰ってもいいかな?」

 

 髪も染めておらず、優等生そうだ。表情にも不良のそれは感じられない。 俺と違って真面目で清純そうだ。

 

「僕らは今日から同じクラスで過ごすことになる。だから今から自発的に自己紹介を一日も早く皆が友達になれたらと思うんだ。 入学式まで時間もあるし、どうかな」

 

「賛成!! 私たち、まだみんなの名前とか全然分からないし」

 

 女子生徒がその提案に賛成すると、迷っていた他の生徒もそれに賛同する。

 

「僕の名前は平田洋介。中学では普通に洋介って呼ばれることが多かったから、気軽に下の名前で呼んで欲しい。趣味はスポーツ全般だけど、特にサッカーが好きで、この学校でもサッカーをするつもりなんだ。よろしく」

 

 提案者から始まった後は席の端から始まった。一人目は櫛田の手助けで上手くいき、自己紹介が続く。

 

「俺は山内泰樹。小学生の時は卓球で全国に、中学時代は野球部でエースで背番号は4番 だった。けどインターハイで怪我をして今はリハビリ中だ。よろしくう」

 

 身体つきが完全に運動するものじゃないため、明らかに嘘だと分かる。

 

 次に元気よく立ち上がったのは、櫛田桔梗だ。

 

「私は櫛田桔梗と言います、中学からの友達は1人もこの学校には進学してないので一人ぼっちです。だから早く顔と名前を覚えて、友達になりたいって思ってます。私の最初の目標として、ここにいる全員と仲良くなりたいです。 昔の自己紹介が終わったら、是非私と連絡先を交換してください」

 

 相変わらずの仮面。そして嘘の設定。桔梗はとてつもないストレスを抱えることになっても、自らの承認欲求の高さで止まることが出来ない。今の笑顔を絶やさず明るく振る舞う彼女は、中学の時のように男子からも女子からも好感触のようだ。おそらくこのクラスは中学のクラスよりはマシだろう。

 

「それから放課後や休日は色んな人と沢山遊んで、沢山思い出を作りたいので、どんどん誘ってください。ちょっと長くなりましたが、以上で自己紹介を終わります」

 

 促すように次の生徒に視線を送る平田だが、次の生徒は強烈な睨みを平田に向けた。 髪を真っ赤に染め上げた生徒だ。

 

「うっせぇ。こっちは別に、仲良しごっこするためにココに入ったんじゃねえよ」

 

 赤髪は席を立った。それと同時に数人の生徒が後に続くようにして教室を出る。鈴音も立ち上がる。俺と一緒に出て欲しそうだったが、来ないと分かると悲しそうに行ってしまった。一部は自己紹介に反発する形で教室を出て行ってしまったが、残った多くの生徒たちは 自己紹介を続けていく。

 そして綾小路の失敗の次、遂に俺の番となった。立ち上がり、笑顔を意識してクラスを見渡すと既に半分以上のクラスメイトがこちらを見ていた。特に女子は平田を見る目よりも目がハートだ。

 

「俺の名前は沢越蓮。苗字で呼ばれるのは好きじゃないので、なるべく蓮って呼んでほしいかな。趣味はスポーツに料理かな。部活はサッカーやってました。みんなと友達になりたいから気軽に遊びに誘ってほしい。みんなよろしく」

 

 拍手が起こる。俺は軽く頭を下げて着席した。その時、一人の女子が質問してきた。

 

「そういや蓮くん。もしかして読者モデルやってなかった?」

「あ! 私も見たことあるって思ってた! 黒髪になってたから気付かなかった」

 

 女子の言葉に続く形で、もう一人の女子が声を上げた。それにつられるような形で、他の生徒も口々に話し出す。

 

「確か『〇〇〇〇』とかいう雑誌でしょ?」

「それそれ。ちょー有名じゃん」

「え? そうなの!? 私もそれ雑誌で見た事あるかも! だからかっこいいんだ」

 

 どうしようか。このままだと俺がヤリチンだとバレてしまう可能性がある。ネットで調べられたらバレるかもしれないし、ここは誤魔化すか……。いや、無理だ。だが待てよ。別にヤリチンなのは事実だし、ここで否定しても無駄なら、むしろそう言う可能性を肯定しておいた方が後々楽かもしれない。

 

「実はモデルをやっていたんだ。受験を機に辞めちゃったんだけど、よく分かったね」

 

 その言葉を聞いた瞬間、クラスの反応が変わった。女子は黄色い歓声を上げ始め、男子の何人かはそれに対して嫉妬の眼差しを向ける。こんな場所で言う気はなかったんだけどなぁ。一応広まれば何人かの女子はやってくるかもな。それよりも必要以上の人間に沢越の関係者であることがバレなくて良かった。桔梗が特に言わなかったのは問題ないからだと思いたい。俺はあの家から使えるものは何でも使うが……それでも、な。

 

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