異哲偽作断片集 作:小沼高希
「……濡れているの、わかる?」
私はケトの手を取って、自分の下腹部のさらに下へと持っていく。
「……はい」
「それなりに敏感な場所だから、優しく触って……いや、逆にくすぐったいかな……」
「様子を見ながら、でいいですか?」
「そうだね。何かあったら言うから……というか、見る?」
「……見たい、です」
「いいよ」
多少は緊張しているのだろうけれども、知識としてはこの後で何があるかわかっているのと相手がケトなのもあって心は案外落ち着いていた。心地よい胸の高鳴りというか、適度な恥ずかしさと言うか。
私は少し下がって太ももを開く。顔を近づけるケト。少し息が荒い。そりゃ、そうだよな。正直なところ、年齢差とかが私の心を高揚させている理由の一つでもあったりする。
だって、普通に考えたらまずい関係だ。ハルツさんは多分許しそうだけど、なんて事を考えてしまったので軽く頭を振る。
「見える?」
大陰唇を指で引っ張って、尿道口と腟口が見えるようにする。触った時にわかったけど、ちゃんと小陰唇が開いていた。こういう学んだ知識の通りに自分の身体が反応しているのはかなり楽しい。多分間違った興奮だけど。
「……入れるのは、ここ、ですよね」
「そうだね。ゆっくりなら指を入れてみてもいいよ。というよりある程度……柔らかくしておかないと私が痛い」
身体の小さな少年を脚の間で挟んで見下ろすというのは、どうにも嗜虐心みたいなものをそそるらしい。自分にこういう趣味があったとは意外だ。
「……わかりました」
ケトはそう小さく言って、指を入れる。あ、すごい。ちゃんと爪を切っている。なんでこんなにちゃんと準備ができているんだろう。
ちなみに爪切りはないのでよく研いだ小刀で削っていく感じになる。仕上げに使うのは多孔質の石だ。多分軽石。火山地帯が近くにあるとは聞かないから、輸入品なのだろう。こういうところからも交易範囲を推察することができる。
「どう?」
人差し指の第一関節ぐらいまで入れたケトに私は声をかける。
「柔らかい、です」
こうやって見下ろすというか見上げられるの、ここまでの距離があるとなんかいいな。ケトの髪を撫でてあげる。嫌がるそぶりはない。ならいいか。
「入口の縁、ちゃんとほぐしておかないと入りにくいから注意してね」
「ああ、これがそうなんだ……」
まあ一部を裂いてしまえばいいんだけど痛いのもあるしね。ほぐせばいけるのだろうか。知らん。まあもし無理だったら擦り合わせるだけでもいいか。
「……傷の薬とかって、ある?」
「血を流した時のための、ですか?」
指を止めてケトが聞く。まだそこまで奥に指を入れられていないから大丈夫だけど、もう少し先まで触られたら危ない気がするな。
「そう」
「一応は。煮て冷ました脂に薬草を混ぜたものですが……」
「なら大丈夫かな。もし傷ができてもそれを使うから、あまり気にしなくていいよ」
「……そこまで、したいんですか?」
「……私は、したい。ケトくんは?」
ここで相手に判断を投げるのはさすがになしだ。それに疼きと言うものを感じている。このまま焦らされ続けたらたぶん自分から求めてしまうだろうし、その前のまだ冷静なうちに言葉にしてしまった方が良さそうな気がする。
「……最後まで、したい、です」
へえ、こっちでも前戯って概念がちゃんとあるんだ。挿入行為を最後までって捉えるなら一連の性行為は複数に分割できる、と考えていいだろう。
「……ぁ」
思わず溢れた私の声に、ケトが慌てて指を引き抜く。
「大丈夫、ですか?」
「……続けて。もっと奥まで入れていいから。十分緩んだら、指も、増やして」
息が荒くなっている。いや陰核はそう刺激されていないはずだろ。オーガズムとまでは行かないが、明らかな性的快感があった。
なんなんだろう。私の体がもともとある程度敏感なのかな。それとも相手がケトだから?条件付けをしっかりすれば神経が密集しているところを刺激すれば絶頂に導かせることができるとかいう怪しい文を読んだ記憶もあるけど。
まだ、駄目だ。少なくとも挿入までは私がリードしておかないと。それ以降は色々と投げ出してケトを感じることだけに集中してもいいかもしれないけど。
「……もう一度、入れますよ」
「うん」
慣れてきたのか、ケトは上手に私が反応する場所を探しているらしい。指は根元まで入っているし、軽く曲げられているのも感じられる。
異物感はあるけど、嫌な気はしない。ケトの指だと意識すると思わずギュッと力を入れてしまうけど。そういえばここまでしっかり何かが入るのは初めてなのか。
「……ここ、どうですか?」
膣の上側の方をケトの人差し指と中指の腹が撫でる。自分でも触ったことがないはずなのに、そこはちゃんと敏感で、思わず私の脚を閉じさせるほどに当たりの場所だった。
「……知っていたの?」
「……読んだことが、あったので」
そういう分野の専門書……はあってもおかしくないか。あるいはもう少し医学寄りとかかもしれない。でも、今はそういう知的好奇心よりも優先すべきことがあった。
「……しよう、か」
私はケトの頬を持って上を向かせ、視線を合わせた。