えっち大好きな美人家庭教師が可愛い教え子くんに手を出した結果押しかけてきたカノジョがやばすぎた話 作:萩萩
インターホンも鳴らさずに玄関を開け、いつも通り二階へ上がる。部屋の扉はひとりでに開いて、そこには情けなく佇む天橋君の姿があった。
「せ、せんせい……」
何が言いたいかはわかる。男の子の表情はわかりやすい。声は細々でも、はっきりと聞き取りやすい。意思が確かな、訴えるための声。ぐらぐらしていた瞳も今日はしっかりとこちらを捉えている。
肩を掴み、顔を近づけた。すると、温かい空気が伝わってくる。
「はぁ、はぁっ……先生っ……」
触れた途端に固まった。背筋を伸ばして、何かを待ちわびてる。
「ふふ、美智ちゃんとなにかあった?」
わざわざ聞くのは、からかうためだ。天橋君は蒼白し直立したまま、瞳だけで私に抗議する。
「ずっと着けたまま、放っておかれたの?」
天橋君は黙ったままだ。何か隠してることがあるのかもしれない。
それでも、ちゅ、ちゅっ。キスができればそれでいい。
「ん、れろ、んっ……、ふふっ」
下の方に手をやると、貞操帯はしっかり着いていた。硬い無機質な感覚に、天橋君は四六時中苛まれていることだろう。頑丈な金属が天橋君の性器を五日ほど閉じ込め、縛り付け、焦らしている。。
「つらい?」
固い部分をぎゅっと握り、引っ張る。苦しそうな声がした。
「や、やめ、てっ、くださいっ……」
「んー、やだ」
「ん、あ、ぁ……」
怯えがら反抗することは、さぞ恐ろしいことだろう。勇気を激しく駆り立てるのは、溜まりに溜まった、煮えたぎる性欲。
「鍵は美智ちゃんが持ってるんだよね?」
「で、でもっ……あ、ぁ……」
「でも、なに? 先生も我慢してるんだから、わがまま言わないの」
「あ、うぅ……うう……」
どうしようもない。そういうときは泣くしかないのだろう。そしたら泣かせた方が悪くなるから、泣いた自分は悪くないと思い込める。天橋君は目を逸らすことが得意だ。実際は何も解決していないと言うのに。
性器をぎちぎちに締め付ける檻が朝から晩まで、寝ている間もずっと存在している。これからもそうだろう。期待の視線で私のことを見つめ続けているが、全くの無駄。
「は、外してっ……これ……もういやだっ……」
「えー、先生、天橋君のこと考えて一生懸命選んだのに。もう外したいんだ? そんなこと言われたら悲しいなぁ」
言葉で刺しながら、慰めるように抱き寄せた。胸に顔を埋めさせると何の抵抗もない。何にも頼れない天橋君はすべてに甘える。
「先生のおっぱいに包まれながら射精したこと、覚えてる? 気持ちよかったよねぇ」
顔を埋めて泣きじゃくる姿がそこにあった。私が天橋君の立場だったら、恥ずかしくて耐えられないだろう。自分のことを傷つけた相手にその傷を癒してもらわなければならないのなら、死んだほうがマシだ。ひとつ擁護するなら……天橋君は、私のことが大好きである。すべてを忘れさせるほどの恋とはこのことかもしれない。
せっかくふたりきりなのだから、できることはしておきたい。貞操帯を外さなくたって、人間の身体はいくらでも気持ち良くなることができる。
「ふふ、おちんちんが触れないからって、諦めちゃだめだよ」
私に寄り掛かる天橋君はあまりに無防備。
胸元の突起に手をやると、可愛らしい甲高い声とともに跳ね上がった。
「んぁっ、あ、あっ」
「気持ちいい?」
優しくつんつん、乳首を愛撫する。服の上からでもわかる固いつぶを指でぐにぐに擦る。
「はぁっ、んぁ」
「ふふ、気持ち良いんだね」
「は、ん、んっ」
気持ち良さより恥ずかしさが勝るようだ。その表情を私には見せてくれない。だが、声まで抑えることはできないようで、可愛らしい鳴き声が部屋中に響き渡っている。
「気持ちいいのはおちんちんだけじゃないって、徹底的に教え込んであげる」
ふともも、その内側と、薄いお尻。
指先で撫でる。
「ふあっ、んぁ……」
「くすぐったい?」
身体をよじり出したのは嫌がるふりだろう。悪ふざけみたいな抵抗に嗜虐欲が煽られた。いけない欲求が正当化されていく。これは天橋君のため。私はきみを気持ち良くしたいだけなんだ。
「せ、せんせっ、は、離してっ……」
「だーめ」
──ちゅ、ちゅぐっ、ちゅっ……。
舌で舌を撫でると、天橋君の好きなお菓子の味がした。
唇に吸い付いて唾液を流し込むと、天橋君は膝から崩れた。
──くりくりくり。
左手で胸を撫でる。右手で背中をすっとなぞる。その優しい両腕で身体に絡みつくと、それはすとんと力を失った。ゆっくり崩れるのを私が支える。
「もう負けを認めちゃうんだ。素直だね」
天橋君は、尻もちをついた姿勢で私を見上げる。くたりと床につく手足で数センチだけ後ずさりをする。抵抗はそれだけだった。
逃げない獲物に飛びかかる必要はない。小さい高校生の身体など、本当は欲しくもない。その震えや怯えた表情だけが私の餌だ。
しゃがんで、天橋君に視線を合わせる。痛いことや苦しいことをしたいわけじゃない。だけど、それらに怯える姿は見たい。
「本当は期待してるんだよね。また気持ちいいことしてくれるんじゃないかって。怯えたふりして本当は楽しんでる。天橋君はいつもそう。天橋君はずるい。いままでまともに抵抗してこなかったのが悪いんだよ。これから先生に何されても、文句は言えない」
罠にかけられた獲物の分際で美味しく食べてもらえるという幻想を抱くのは間違っている。私は天橋君を飼い殺しにする。怯える様を眺めて。飽きたら捨てるだけ。引き取り手の目星もついているから、それで十分だ。
「取り返しつかなくなちゃったね。かわいそう、本当にかわいそう」
見ているだけで事足りる。貞操帯を外してやる気はない。
覆いかぶさって、上からキスをした。それから両手で乳首を摘まんで、ぐりぐりこねくり回す。ずっと、これだけでいい。
「射精したいね、苦しいね。ふふっ、いつ射精できるのかな。もう限界なんでしょ? 逆らったら、何をされるかわからない。だからそうやって大人しくしてるのかもしれないけど、それじゃあ、一生そのままかもよ……?」
私の方から射精をさせることは、もうないだろう。天橋君は、自分の力で射精の権利を勝ち取るしかない。それか、美智が優しい人であることを願うしかない。
「美智ちゃんとは最近どうなの?」
うまくいってるといい。
「今度、美智ちゃんも呼ぼうかな。ふたりで、天橋君のことめちゃくちゃにしてあげる。鍵も外してくれるかもしれないよ」
「……は、はい」
「美智ちゃん、昨日は鍵、『忘れてきた』んだっけ? 今日も持ってきてくれなかったんでしょ?」
「…………」
「明日は金曜日だから……また忘れられたら、次は月曜日だね」
人の射精の権利を握るということを、美智は容易に受け止めた。そして、天橋君の日常はいとも簡単に崩壊した。
「あ、明日は、も、持ってくるって…………」
「持ってこなかったら、どうする?」
「せ、先生は、美智ちゃんのことを知らない…………」
「ふふっ、そんなに真剣にならなくていいのに。明日になればわかることじゃん」
「……」
ぎちぎちに詰められた性器にとっては、一秒も惜しいように思える。天橋君が美智を信じる根拠は何だろう。
「先生はね。もしもの話をしてるんだよ」
そう囁きながら、身体を撫でる。頬、首元、唇をついばむ。身体がそのたびに跳ねる。射精のできない身体は常に悶々としている。ずっと、同じことの繰り返し。
「もしも美智ちゃんが、先生と同じだったら。ただ、天橋君を支配したい。言うことを聞かせたい、独占したい。そう思ってるとしたら。私と同じで、射精させてくれないかも」
「そ、そんなの……ありえないっ……」
「『美智ちゃんはそんなんじゃない』もんね。ふふっ」
天橋君は私の手に夢中。話を聞いていないのかもしれない。
「美智ちゃんが、天橋君の思った通りの子だったらいいね」
黒木美智もきっと同じことを思っている。天橋聡が自分の思い通りになれば良い、なってほしい。そうじゃないと許せない、と。
「先生も、天橋君が先生の思い通りになってほしいと思ってるよ」
そう言い、私は天橋君の肝心なところに触れた。
ズボンの上から擦られるのを、天橋君は拒まなかった。
「……ゃう、ぁ」
「本当に外せないか、試した? 意外と簡単にできるかも」
性器の根元を握りこんで、引っ張る。装着するときに毛を剃ったから、すべすべとした心地い感触が続く。
「い、いたっ、いたいですっ……」
「すっごい膨らんでるね」
先端から押しつぶされるように性器が膨らんでいる。阻害された血流が根元の方に溜まり、天橋君の股間をいびつに膨張させている。服の上から触っただけでわかるほどに、それらは激しい。
「このまま、射精できるんじゃない?」
手のひらを上下に動かす。天橋君の腰がくねるたびに、力を強めて引き戻した。繰り返すとすぐに抵抗が止んだ。
「あ、あっ、ああっ」
「びくびくしてる。熱いのも伝わってくるよ」
ごしごしと、服の上、貞操帯越しの性器を刺激していく。
「出したくてたまらないんでしょ。このまま我慢してたら射精できるんじゃない?」
「うぁ、や、やだっ……あ、あ……」
「ほら、ぐにぐにしてあげる」
服を脱がせるつもりはない。射精させるつもりもない。ただ、焦らすだけ。貞操帯の苦しみからは逃れられないということを思い知らせる。そのためだけに、私は天橋君を責めている。
「う、うぁっ……」
「んー……勝手に射精したら、美智ちゃんに怒られちゃうかな」
「……え、えっ……ぁ」
「管理されてるんだもんね。美智ちゃんに」
「え……あ、あ、わっ……」
このまま続けたら本当に射精してしまいそうな勢い。天橋君は激しく声を上げた。
実のところ、貞操帯の鍵は私も持っている。鍵にはスペアがあるから、その一本を美智に渡しただけのことだった。だから、美智のせいで射精ができないというのはただの口実。私は私の意思で、天橋君の貞操帯をそのままにしている。
「……ここまでにしよっか」
「え、ぁ、あ……」
自信のなさそうな声が弱々しく浮かぶ。私はそれをかき消さず、じっくりと聞き入った。
「イかせて欲しかった?」
「……」
「先生は勉強を教えに来たんだけどなぁ」
なんて、そんな状態で授業ができるわけもない。
「だ、だって……先生、が……」
「ふふ、ごめんね。もうしないから。美智ちゃん、明日は鍵持ってきてくれるといいね」
天橋君は、ぐったりと床に倒れ込んでいた。仰向けで、性器のところが膨らんでいる。貞操帯を押し上げるほどの勃起が、苦しそうに収縮していた。上向きになることは叶わない。下向きに、固く抑え込まれている。
乳首を撫でられていた頃の蕩け顔からは一変、蒼白している。
「天橋君、すっごいつらそう。男の子の気持ちはわからないけど。射精できないって言うのはすごく、大変ことなんだよね」
男の子のつらさを知らないとしても、その顔を見ればなにか重大な問題を抱えていることは容易に想像がつく。苦しくてたまらないのだろう。大きな情念と、それをこまぎれにして絞り出す身体は今にも弾け飛んでしまいそうだった。
聞くだけで、見ているだけで、満たされる。
「中途半端に僕のことからかって……つらいの、わかってるのに……期待させて……ど、どうするつもりなんですか……っ」
負の感情が、天橋君の表情に宿っている。性欲というのは、人間を勇気づけるものかもしれない。徐々に強くなる語勢に、私はまだ気を圧されてはいない。
「全部、先生のせいだっ……」
俯いて、大声でそう言ってくれた。
「なんで、なんでそんなに、僕のことをいじめるんですか……何が楽しいんですかっ……こ、こんなこと、もう、やめてくださいっ……」
天橋君の身体が立ち上がった。ゆっくりと、強く歩み寄ってくる。
「先生っ……!」
肩を掴まれた。
私よりも短い腕、小さな手で、強い力を掛けられた。こんな天橋君を見るのは初めてだった。私を睨みつける目は淀まない。強く、私を刺すように見つめている。そうしているうちに力はどんどん強くなっていく。私の身体はこのまま押し倒されてしまうかもしれない。
「先生のせいだよ、全部。でもそれがどうしたの? 天橋君は先生より弱い。体も小さい。先生は弱いものいじめをする悪者。それでいい」
どちらが悪いかなんて関係ない。私は私のしたいようにしているだけ。罰したければ罰せばいい。起きたことは変わらないのだから。
「そういう人を好きになっちゃった時点で、天橋君は負け。騙されたそっちがわるいんだよ。嫌だったら、逃げれば?」
「……ふ、ふざけんなっ!」
いっぱいの力で肩を突かれた。身体がふらついて、背中が壁に打ち付けられる。
「う、うわっ、痛い」
壁と天橋君に挟まれて、私は追い詰められる。
「なんで、なんでっ……みんな……僕のことをめちゃくちゃにするんだよっ……!」
間近で、思い切り怒鳴られた。
冷たいものが頭に登ったような気がした──。
私が天橋君の胸ぐらを掴むと、攻勢は簡単に逆転する。壁に追い詰められようと、天橋君は私より弱い。
「あ、あっ、は、離せっ……」
「うるさい」
耳元でそう囁くと、いつにもまして抵抗が激しかった。
女性の衣服というのは複雑で、少し強く引っ張れば簡単にちぎれてしまうような装飾が多くあしらわれていることがある。
天橋君の手によって、その一つがびりびりと音を立てた。
「離せっ、離せっ……!」
「はぁ」
どん、と強く突き離すと。勢いは衰えてくれた。飛びかかる姿に迷いが見えたから、少し乱暴にした。次に壁を背にしたのは天橋君だった。
「ひ、ひ、や、やめっ……こ、このっ……!」
「なぁに?」
「ひ、ひいっ……」
「怖い?」
身体を押し付けて追い詰める。
ようやく、いつもの天橋君になった気がした。
「悦んでるくせに。いい加減なこと言わないの」
「う、うるさいっ……こ、こわくなんかない……」
股の方をわしづかみにすると、まだ興奮が冷めやらない性器があった。焦らしを忘れられないのか、今もなおこの状況に恍惚しているのか。答えは定かではない。
「よろこんでなんかない、ね……そう」
細い、天橋君の首。そこに指を這わせると、そこから全身が凍り付きはじめた。
息が止まったかのように静かになった。まだ絞めてないのに。
「や、やめっ……やめてっ……」
「先に手を出したのはそっちだよね?」
そんなことないかもしれないけど。どちらにしろこれから首を絞める。ただでさえ恐怖で息が浅いのに、これ以上酸素を奪ったらどうなってしまうのだろう。
──ぐぐっ、ぐ。
「う、うぁ……っ」
天橋君は手をぱたぱたさせて、それに意味がないことに気が付いてからは私の腕を必死に退けようとしていた。少し怖がらせてやろうと思っただけだから、その力はすぐに緩めてあげた。
「はぁっ、う、あ、あっ……」
「素直になりなよ。天橋君は、私にいじめられて嬉しいんだよ。きみは何も悪くない。先生がそういうふうにしてあげたの」
「はぁ、ち、ちが……はぁ、あ、はあ」
「認めたら、すぐに気持ちよくなるよ。何も考えないでいい。余計なことは全部忘れさせてあげる」
また、ぐっと首を絞めると、今度はただ耐えていた。天橋君は立ち尽くしたまま、私に上から見下ろされ、動けないでいる。
「────ぐ……ぁ」
「美智ちゃんも喜んでくれるよ。天橋君がマゾだってこと、きっとバレてるもん」
「ちがっ、う、うっ……」
「美智ちゃんも素直じゃないとこがあるから、ふたりとも似たもの同士だね。いじめられたいのを隠してる天橋君と、いじめたいのを隠してる美智ちゃん……いや、隠してはないのかもしれないけど。きっとお似合いだよ」
「み……みのり、ちゃっ…………」
手を離すと、天橋君は一気に息をした。私のことなんかまったく見ないで、必死に呼吸している。
「はぁっ、はぁ、ああっ」
「認めなよ」
硬いままの乳首を摘まんだ。一瞬だけ、苦しそうな顔をされたが、拒絶はされなかった。
「乳首でも射精できるんだよ、知ってた?」
「あ、あっ、う、うあっ」
抵抗の勢いは完全に失せ、文字通り私の手に堕ちた。
快感にようやく気が付いたのかもしれない。
「ふふ、後ろから抱き着いてあげる。両手でこうされると気持ちいいでしょ?」
天橋君の背後に回りくりくりすると、くすぐったそうな身体が激しくよじれた。
「う、ふぐっ……ううっ」
「気持ちいい、ちくび気持ちいい。美智ちゃんにも教えておいてあげる」
指先で強く摘まんで引っ張る。
爪の先端で何度も擦る。
指を乳輪に沿わせたり、手のひらで胸元全体を撫でまわしたり。そうしながら、両手で抱き寄せる。天橋君の背中と私の前側がぴったりとくっついて、間には衣服だけ。
「大人しくなちゃった」
「も、もう……やめてっ……おねがい、おねがいっ……」
「えー、素直じゃないなぁ」
普段通りの天橋君を見て、安心した。温度が伝わって、その事実が私をさらに温かくしていく。そしてやがては熱く、赤くなり、抑えることを忘れる。
「そろそろ先生も気持ち良くなりたいな」
天橋君の手首を掴む。それを私の下着の中へと放り込ませた。
「な、なにっ……先生っ……」
意外と男らしい指先だった。
「ほら、濡れてるのわかるでしょ」
「え、あ、あっ……」
困惑する顔を横目に、手を導く。それで欲求を満たせるわけもなく、もどかしい感覚が増長するばかり。そのせいで口調が強くなる。
「天橋君、指いれて」
「や、やめ、やめてくださいっ……」
がっしりと、手首を固く掴んで離さない。
「先生の弱いところいじってみて」
「う、うっ……あっ……」
せっかく主導権を譲ろうとしているのだから、天橋君には応じて欲しかった。だけど、いきなりやれと言われても難しいのかもしれない。
「どうすればいいかわからない?」
天橋君はまだ怒ってる。怯えているのかもしれない。一度安心させたら動いてくれるかなという希望に賭けて、私は少し優しさを見せることにした。
「ごめんね、怖がらせて」
そう言ってから、天橋君を指を絡ませた。手の甲から覆うようにして、そのまま私はいつものように自慰をした。天橋君の手を挟んだままで、気持ちいいところを刺激する。
「ね、わかるでしょ。こうするの」
今度は天橋君の指を掴んで、直接刺激させた。
「ん、ぁっ……はぁ……」
気持ちいい。いつもと違う、新鮮な感覚。広がる快感が天橋君の指から来ていることを意識すると、たったそれだけで全身が震えだした。だが、喘ぎ声は少し大げさだ。
「ね、天橋君。して。おねがい」
──ぐちぐちぐち。音が鳴る。
「……意味わかりません、先生」
なんて可愛い言葉が聞こえて、天橋君の手のひらがようやく動いてくれた。
まとまった指の先で何度か押されて、やがてそれが分かれると、そのまま突起を挟んでくれた。
「……んっ、あ、ん、んっ」
「…………ご、ごめんなさい、乱暴なことして」
こういうことは初めて、天橋君はそんな顔をしていた。
反して、指先は的確に私を責め立てる。甘美な驚きにおもわず声が溢れた。
「ん、はぁっ……ね、もっと」
「……え、えっ」
冷たく突き抜ける快感、まだ足りないと求めてしまう。ためらいの残された指先にもどかしさを与えられる。堪えられなかった。
「天橋君っ……」
「あ、あっ……ちょ、ちょっとっ」
手首を掴む。そして大きく、まずはゆったりと、かきまぜるように使った。軽く曲げられた指先が私の弱点をくすぶる。思うそのままの刺激を繰り返した。
結局、天橋君は道具だなと思った頃、その手が自ずと動き出してくれた。
「……んっ、んぁ……意外と、積極的じゃん」
「はやく、イってください……」
「んっ、イったら、それで終わりっ……?」
「……先生だけなんて、許せない」
迷いが少しずつほどけ、浅かった指が深く、大胆になった。苦しさと熱さに反射して身体が逃げ惑ってしまう。だけど、その先にある快楽を知っている私は、私を抑えることができた。
「ん、く……ああっ…………あ、あまはしくん、本当に、はじめて……?」
「な、何も言わないで……」
私のことが嫌いか怖いか、好きなのか、弄んでいるのか。わからない。あれほど拒絶していたというのに。天橋君はいつも私を許してしまう。そんな定まらない態度につけこんでしまうのは卑怯だろうか。
「はぁ、ああっ、天橋君……」
「……っ」
私はもたれかかった。責め立ててくる身体へ、無防備にも隙を晒した。刺激は深くなり、小さく弾ける。熱さはまた何度も湧き上がり、快楽を何重にもくるみ込んでいく。
「い、いつもの、仕返し、っ」
「あ、あっ……あ、き、きもちいい、よっ」
素直に口にする。それで楽にはならない。ただ執拗に降りかかる快楽、受け止めきることはきっとできない。かならずきたる決壊に向けてそれは積もり続ける。
熱いまま、天橋君は決して私を楽にしないでいてくれる。
「は、はぁっ、あ……い、いく、かも……」
「はぁ、ああっ、いけっ、いけっ……!」
ほんの一瞬、わずかに我に返ることがある。自身の痴態を傍から見たら、相手から見たら、どんなものになっているのか。すべてを忘れ去ることなんてできない。
相手は誰でもよかったのか。否、こんな姿を見せられるのはこの子だけ。
私は、本当に天橋君のことが好きなのかもしれない。
「い、いくっ……ん」
全身を締め上げるみたいに硬直した。それが、絶頂だった。
私は抵抗する。襲い掛かる全てに私は反抗的になった。
快楽をこの身に留めたい、離すものかと苦闘した。
「天橋君っ……ご、ごめん、なさいっ……はぁっ、あ、あっ……」
びくびくと、身体が跳ねる。そんな私を天橋君は離さなかった。
「はぁっ、あ、あっ……イったからっ……ねっ……もう……」
すると、私を支えていたものが、すっと離れていく。私は脱力して床に崩れ落ちた。
「う、はぁっ……あっ……」
「……先生」
下から天橋君を見上げることなんて、ないと思ってた。
嬉しい。そう思った。
次の日、美智が天橋君の部屋に来た。私が呼んだのだ。美智と天橋君の関係性を目の前で確認してみたかった。
「聡くんの部屋、いい匂いがする」
私の隣に座る天橋君と、それを挟み込んだ向こう側いる美智。ベッドに一列に腰かけ談笑していた。真ん中の天橋君はずっともじもじとして、自分の部屋だというのに肩身が狭そうだった。普通ならたいそう甘々なシチュエーションに違いないが、天橋君に限っては少々事情が異なる。溜まった欲望が溜まったままになる苦しみは計り知れないようだ。
それから、制服のスカートを見て少し懐かしいなと思った。学校の制服には不思議な魅力がある。
「一週間で外すって決めてたけど、不安そうな聡くんが可愛かったから内緒にしてた」
「え、ええ……」
ほっとしたような顔をしながら、まだ不安を拭い切れていない天橋君がいた。美智もきっとそれを見抜いている。
「ふふ、天橋君の良さをよくわかってるじゃない」
「隣の席なので」
ふたりのやりとりに置いて行かれたくないという思いから、私は少し強引にでも話に割り入ろうとしていた。一方で、天橋君は自分の身体の話だというのに真ん中で置いてきぼりにされている。目の前の相手に鍵を握られていては気軽に口を出せないのだろう。
意地悪な私たちは話を引き延ばす。
「天橋君、学校ではどんな感じなの?」
「えー、っと…………ていうか、先生の前ではどんな感じなんですか?」
「ふふ、まぁ……変わらないんじゃないかなぁ」
なんて、たわいもないようで、私たちにとっては大切な話だった。
自分の知らない天橋君を美智は知っているはずで、その逆も然り。
「聡くんの部屋に来られてうれしいです。聡くんはなんだか嫌がってましたけど、久しぶりに鍵を見せてあげたらすぐでした」
「へぇ……すごい使いこなしてる」
人をぞんざいに扱う才能のある彼女。鍵がなくとも、瞳をじっと覗かれただけで魂が抜かれそうだ。天橋君が彼女にどのような扱いを受けているのか容易に想像がつく。
「あ、あ……あの、」
ようやく勇気の出た天橋君。
「……なに?」
可哀そうな声に、美智が反応した。少しトーンが下がり、私の方まで少し、ぞっとさせられる。すると天橋君はベッドから降り、床に膝と手をついた。頭を下げて、声を上げた。
「も、もうっ、限界っ……で、っ」
「いま、井川先生と楽しく話してたんだけど」
機嫌の悪そうな美智だが、それは演技だとすぐわかった。だが、美智は機嫌の良いまま人を殴れる女だと思う。
「まぁまぁ、いいじゃん。天橋君も、すごい辛そうだし」
「もったいないじゃないですか。解放したら」
「でも、一週間って決めてたんでしょ?」
「変えてもいいですよね、別に」
不満そうにつぶやく美智。その態度に、天橋君は大きく揺さぶられたようだった。
「な、なんでもしますっ……お、おねがいっ…美智ちゃん……せ、せんせいもっ……」
「ふふ、可愛い。美智ちゃんの気持ちもわかるねぇ」
「え、ええ……っ」
床に顔を擦り付けているから表情が見えない。だけど、泣きそうなのは簡単にわかる。
今日は金曜日。このチャンスを逃せば次は月曜日だろう。土日に会える希望は薄い。
「でもまぁ、初めてにしてはがんばったんじゃない? 一週間も着けるなんてすごいよ」
「鍵がなければ外せないんだから、なにもすごくな」
「……ふふ、天橋君はこんなのが好きなの?」
「あの……いつもは……もっと優しいんですっ……」
苦悶の表情が本格的になってきたところ、私はもう満足だった。一方で、美智はそもそも満足するとかしないとか、そういう軸で見てはいないようだ。
「聡くん、泣いたって可愛いだけだよ」
美智が立ち上がった。二歩ほど進むとそのすぐ足元に涙だまりがある。声は優しかった。
美智は、私のように器用な飴と鞭は持ち合わせていないと思う。
「聡くん、嘘ついてない?」
「え、ぁ……つ、ついてないっ、ですっ……」
それを見下しながらかがんで、美智は髪を掴んだ。
そして強引に顔を上向かせた。
「本当に限界? ただ気持ち良くなりたいだけじゃないの?」
「あ、う……ああっ、違いますっ……!」
泣き腫らされた情けない瞳をじっと見つめ、逸らすことを許さない。
「嘘ついたらわかるよ」
「はい、はいっ…………」
かわいそうな天橋君。髪の毛を上に引かれながら必死に頷いていた。
「こんなに泣いてるの珍しいかも。本当に限界なのかな。とりあえず土下座して」
すぐ従う天橋君は急いで土下座の姿勢に戻る。
「頭踏むね」
「は、はい、ぐっ……うっ」
教本に載っていそうな手順を雑にこなしていく。淡々としていても、表情からは楽しさが感じ取れた。興味津々、実験みたいに色々な体重の掛け方を試している。
「はは……美智ちゃんすごいねぇ……」
そんな私の感嘆は、美智の気に留まることはなかった。
「顔蹴ってもいいよね」
「…………え、ぁ、ああっ……いや」
「はい、でしょ?」
「……は、は、はいっ」
「冗談だけど。でも、『はい』以外の返事はいらないよ?」
美智がすべてを口にしていく。天橋君の心の中も、自分自身の心の中も全てをさらけ出していった。
少しくらい参加しても許されるだろう。そんな気がした。
土下座する天橋君脇腹をつま先で小突く。ぴくぴくと身体が動いて楽しかった。今まで散々いじめてきたけど、こういうのは初めてかもしれない。
「あ、ああっ、せ、せんせぇっ……」
「あはは、美智ちゃんとふたりきりのほうがよかった?」
天橋君にとっても、この経験は新鮮かもしれない。ふたりの女の子に同時にいじめられるなんて贅沢だ。一人ずつでも到底勝てないくらいの強い女の子に挟まれて、怯えてる。
「聡くんは怖いの好きだよね。頭踏まれてドキドキしてたし。顔も、本当は蹴ってほしそうにしてた」
「そ、そんなことないっ……ない、よっ──うぐっ」
「なくない」
美智が頭を踏んだ。天橋君は口を利けなくなった。床に顔が擦りつけられて物理的に喋れないのと、何を言っても否定されるから怖くて喋れないのと、いろいろな理由で、天橋君は抵抗をやめた。
「聡くん、井川先生にちょんちょんつつかれるのと、私に思い切りぐりぐり踏まれるのどっちが好き?」
「ん、ぐ……んっ──」
「それ、先生も気になるなぁ」
太ももに足を乗せて、ぐりぐり。
背中も、肩も踏んでみた。
それから股間に足を移すと、心地のよさそうな声がした。
「ほらほら、先生の足、気持ちいいでしょ? 土下座のままこうして射精させるのも楽しそうだねぇ」
「う、ぐっ、ううっ」
美智はまだ頭を踏んでいる。天橋君はずっと呻いていた。
「先生、聡くんのこと甘やかさないで」
「えー、だめ?」
急なことだった。美智は甘い声が気に入らなかったようだ。
美智は天橋君の方ではなく、私のことを咎めた。
「聡くんは私のものだから」
「うぐっ、ぐうっ……!」
八つ当たりに踏まれた天橋君。可哀そうなくらい大きな泣き声が聞こえた。
「聡くんも悪いんだよ。先生に可愛いとこ見せちゃだめ」
美智は怒っている。ごめんね天橋君。
「あっ、はぁっ……ごめんっ、ごめんなさいっ」
「ね、私のこと好き?」
強気の問い。
天橋君は頷いた。
「顔上げて」
天橋君は顔を上げた。美智の言いなりだった。上がった瞳で私と美智の顔を交互に見つめるが、落ち着いた頃には美智しか見ていなかった。
「一番好き?」
「は、はいっ……」
「先生より、私の方が好きですって言って」
「え、え……」
「早く」
「先生より美智ちゃんの方が好きですっ……!!」
「よし」
……はっきり口にされれば、いい気はしなかった。私への見せしめのような気がする。
それからの美智の言葉は明らかに、私にも向いていた。
「聡くんが先生のことを好きになるなんておかしいよね。生徒と付き合おうとする先生なんてやばい人しかいないのに」
そんなこと、美智に言われたくなかった。私は天橋君の幸せを願っていたし、暴力で強引に従わせるようなことはしていない。
「美智ちゃん、それは言い過ぎじゃない?」
「先生は黙ってて」
その怖い顔が、初めて私に向いた。部屋が静まり返る。じっと、美智は私のことを強く睨んだ。
思えば、彼女が私に向けるのは初めからそういう瞳だった。
「あ、あの……ふ、ふたりともっ……」
仲裁しようとする天橋君がいる。それも、美智は足蹴にした。
「そもそも聡くんがはっきりしないのが悪い。聡くんが可愛すぎるから、先生のこと勘違いさせちゃってるんだ」
違う。私の好きの気持ちは本物だ。
「勘違いじゃない。私はずっと真剣に天橋君のことが好きだった」
「その真剣が勘違いだって言ってるの」
天橋君にとって、私は二番目かもしれない。でも、それでも私は天橋君が好きだ。天橋君の一番が美智なら、私はそれを否定しない。だけど、美智は天橋君をどうしたい?
ここまでの態度を見るに、天橋君は美智に怯えている。私も多少強引なことをしたけれど、それは美智ほどじゃない。
天橋君は私の強引な態度を許した。だが、美智のことは許しているのだろうか。ただ無理やり従わされているだけのような気がしてならない。
「ぼ、僕は……どっちも好き、なんだけど──」
「はっきりしないと一生射精させないよ。先生といればいいじゃん。貞操帯の鍵は私が持ってるから」
美智はそれを切り札のように言った。だが、貞操帯の鍵は私も持っている。スペアを残しておいて正解だった。
「美智ちゃん、鍵なら私も持ってるよ」
それで天橋君を救える。
そのはずだった。
「着け替えたから。鍵は私しか持ってないよ」
「……え」
美智の顔は、私を嘲笑っていた。
信じたくない私に、その事実を突きつけた。
「聡くん、見せてあげなよ」
美智がそう言うと、その通りになった。天橋君はすぐ裸になり、股間には見慣れない貞操帯が着けられていた。
信じたくない。
「先生の安っぽい貞操帯じゃ不安だから着け替えたの」
天橋君の焦点は合わなかった。伏し目がちに私を見つめている。
助けを求めているように見えた。避けているようにも見えた。
「あ、天橋君……」
そう声をかけても、天橋君は応じない。
「先生のこと全部話してくれたよ。バレたらいけないことまで、全部。そうだよね?」
美智の声にはゆっくり頷いた。
これが答えなのかもしれない。
「こんな先生なんかと一緒にいるより、私と一緒のほうが聡くんは幸せになれる」
美智が私の方へ、強く歩み寄る。
「自分でも、気づいてるんでしょ。先生。聡くんの一番は私なの」
「……ち、ちがう……それは……」
それは。先は、何もなかった。
美智の言うことはもっともかもしれない。
私は、天橋君に甘えていただけかもしれない。
「それは、何? じゃあ、聡くんのさっきの言葉は嘘ってこと?」
わざとらしく逆なでするような口ぶり。綺麗な上目づかいで覗き込まれ、吸い込まれそうだった。
「ね、聡くん。先生より私のことの方が好きだよね」
「う、うん……みのりちゃん、好き」
先ほどよりもはっきりとしていた。その声が、私の頭の中で何度も繰り返された。
それでも私はまだ認められなかった。美智が無理やりそうしたんだ。男の子は、貞操帯の鍵を持っている女には逆らえない。
「美智……天橋君に何をしたの……?」
「別に、射精管理だけだよ。先生が教えてくれたんじゃん」
美智に貞操帯の鍵を渡したことは、間違いだった。
激しく後悔した。少し怯えさせたいだけだったのに。天橋君の可愛いところを見たいだけだったのに。私以外の女に手綱を握らせれば、痛い目を見たときに私の元へ戻ってくる。そう思っていた。帰ってきた天橋君はより私のことを大事にするようになる。そう思っていた。だが、美智は天橋君を帰すつもりがない。
天橋君も、帰るつもりがないのかもしれない。
美智の手がすっと上がり、私の顔を撫でようとする。
腹が立ち、すぐ振り払った。
「……なにするの」
しかし次は勢いよく、美智の手が私の頭を掴む。
「聡くんと無理やりキスした、悪い口」
おぞましかった。私は抵抗したつもりだった。
──ちゅ、ちゅぐっ。
激しくは抵抗できなかった。美智の瞳が間近にあって、見開いて。刺すように私を見ている。
唇を奪われたことだけは、認めたくなかった。
「んぐ、ん、んんっ」
「んむっ、はっ、んぐっ……」
私が天橋君にしたように、強引にされた。私は怖くて動けなかった。
美智の力は強い。私の力が抜かれていただけかもしれない。
「ん、ぁっ、んんっ……!」
「はぁ、先生っ、かわいいかもっ。聡くんに似てる」
怖くても、目を逸らしてはいけない気がした。目を閉じればそれこそ終わりだ。美智の髪からいい香りを感じ取った自分がすごく気持ち悪い。体温が心地良いのも許せない。
無理やり肩を突き飛ばしても、助かった気はしない。されたことはもう戻らない。
まだぐちゃぐちゃの思考に、美智の声が降り注ぐ。
「聡くんの気持ち分かったでしょ。ふふ、意外と悪くないみたいな顔だけど」
「……はっ、な、何言って」
放心した顔を見られた私は焦って、いまさら美智を睨みつける。
それに興味がなさそうな美智は天橋君の元へ歩いていった。何が起こるか決まっているかのように、なにかがふたりを引き合わせていた。
「聡くんも」
「……は、はい」
そう返事した天橋君は、美智とキスをした。
私はただそれを眺めていた。
次第に、美智の方が激しくなっていく。
「ん、んぐっ、さとるくんっ、すきぃっ」
「んむ、ん、んっ、ぐ」
天橋君が、吸われていく。
「ふぁ、んんっ、聡くん。先生と間接キス、嬉しいね」
「は、……んっ……」
裸の上に制服で覆いかぶさるのは、異様かもしれない。ふたりにとっては当然みたいだった。私はただ呆然と立ち尽くし、それを眺めた。何を考えているか悟られている気がして、あるいは悟られたくなくて。結局はなにも考えられない。
部屋にただ水音が響く。
──ちゅ、ちゅぐ……ちゅっ、ちゅ。
「……そろそろ、外してあげよっか」
水音の合間にそう囁き、唇を塞ぎ続ける美智はポケットに手を入れる。すぐに鍵が取り出された。
「聡くん、好き」
「あ、あ……はぁっ……、ぼ、ぼくもっ……」
「ふふ、先生見てるよ?」
美智が振り返る。暗澹とした彼女の、今まででいちばん自然な笑顔だった。
「私のことが、一番好きでしょ? 聡くん」
「う、うんっ、うん……好き、美智ちゃんっ……」
「先生より?」
その問いには誰も応えなかった。
美智が鍵を挿すと、天橋君の脚が気持ちよさそうに伸びる。
「外れるよ、ほら」
ゆっくり性器が露わになるのも、私はただ見るだけだった。
透明な液体が糸を引く。美智はそれを指で掬い、亀頭へ塗り広げた。
「射精させてあげる」
「ほ、ほん、と……?」
「やっぱり嘘かも」
美智の手が性器を包み込む。
「う、ぁっ……」
「気持ちいい?」
「あ、あっ……」
はっきりとした返事が天橋君から来ることはない。
美智は構わず手を上下する。
「先生とえっちするより、このほうが何倍も気持ちいいでしょ」
「う、うんっ…………」
「ふふ、聡くんは素直だね」
美智が振り返る。にやりと私の顔を見つめた。
せわしい手の動きを見せつけられているような気がした。それに、私の知る天橋聡が壊されていく。私の怒りはとうに鎮まっていて、いまは不安だけが残っている。
天橋君が私から離れていく。たった一度手放しただけなのに、戻ってくると信じていたのに。天橋君は去った。そこにいても、私の知る彼ではない。
そこで間違ったのか、何を間違ったのか。最初からすべて、間違っていたのかもしれない。
教え子を好きになってしまったところから、私は愚かだった。
「先生、悔しそうだね。おもちゃ取られた子供みたいな顔してる」
許せないとしたら、美智だ。
天橋君を誑かす悪魔。
すべて、なにもかもこの女が悪いなら、私は報われる。
美智は手を緩めた。
切なそうな天橋君の顔。怯えているようにも見えた。
「聡くん、射精したいよね? お願いして?」
「お、お願いしますっ、射精したいですっ……!」
「ふふ、おとといも言ってた。そんなんじゃ出させてあげないよ」
「え、えぁ……」
天橋君は、今にも泣きだしそうだった。時折私を見つめる瞳が、やはり助けを求めているように見えて。私はいてもたってもいられなくなる。
美智はそれも察した。
「……先生にお願いしたら?」
「え……」
顔の蕩けたままの天橋君は、今、はっきりと私を見ている。
美智の手の離れた寂しそうな性器が細かく震えている。
「…………せ、せん、せいっ……」
歩み寄ると、天橋君は縋るような声で私を呼んだ。
仰向けの身体の側にしゃがみこんで、触れる。
「天橋君」
触ってもいい。そんな気がした。
天橋君の性器が私を求めている。
「触ってあげたら?」
美智までが催促すると、それは罠のようにも思えた。だけど、目の前のそれを逃したくはなかった。
少し強く握り、ゆっくりと動かす。天橋君はこれが一番好き。私だけが知っている。
「あ、うぁっ、あっ……ううっ……」
泣いてる姿を見て、私の方までつられそうになる。安堵の涙で目が霞む。手の感触を頼りに愛撫し続けた。
「天橋君……気持ちいい?」
「せ、せんせっ……」
静まり返る部屋に水音と、すすり泣く声が聞こえていた。気持ちよさそうな天橋君がとても温かい。ふたりで目を合わせていると、繋がっているのは手と性器だけではない気がしてくる。
「聡くん」
──ちゅっ。
「んはぁ、さとるくんっ、ん、ちゅっ……」
「なっ、離れて、邪魔しないで……!」
「んふふ、先生はおちんちん触ってなよ」
美智の強引な口づけ。天橋君は脱力する。
「ふ、ふざけないで! なんで、なんで邪魔するの!」
「んはっ、先生、手、止めちゃうの? んん、聡くん、かわいそう、ふふふっ」
驚いて手を止めた私のそばで、腰を突き上げて刺激を求める肉棒があった。カウパーをだらだら流し真っ赤に腫れている。
それは確かに私の手を求めている。だけど、天橋君は今、美智とキスをしている。
「キス、好きだもんね。聡くん」
嫌がるようなそぶりはなかった。上と下の意思が分離し、各々に私たちを求めている。
「そ、そんな……天橋君……」
「はやく射精させてあげないと、かわいそうだよ」
──ちゅっ、ちゅぐ、ちゅ。
言い捨てた美智はキスを再開する。先ほどより激しく啜るようだった。それに応じて性器が震え、お腹に張り付くほどに上向いている。
疼きを訴えるさまに、いたたまれなくなった。切なそうな天橋君。そこには限界まで溜められた欲望が渦巻いて、身体の中でずっと暴れている。
私は、天橋君の性器を口で咥えた。
「んぐ、んっ、む」
美智に口をふさがれている天橋君は何も言えない。私も、天橋君で口の中がいっぱいだ。口の中に天橋君の香りが広がって、甘い。
なぜ口で咥えたのかはわからない。気がつけばそうしていた。先っぽが喉の奥の方に当たり、そのたび少し苦しくなる。しかし、何度か繰り返しているとそれは心地よくなっていった。人の性器を口で気持ちよくさせるのは難しい、持ち合わせの知識と経験でなんとか続けていく。
きっと手でするよりか遥かには良いのだろう。あたたかいし、精液を全部残さず飲んであげられる。
「んっ、ぐ……んじゅっ……」
腰がすくんで痙攣している。もうすぐ射精するのがわかった。天橋君の腰が反射的に刺激から逃れようとするのをがっしりと押さえた。どこかへ溢れて行ってしまいそうな快楽をなるべく押し込めて、すべてを天橋君の身体の中で弾けさせる。
「んぁっ、あまはしくんっ……だ、だしてっ、んっ」
吸い上げるリズムを速める。本格的に絞り上げる姿勢で一心不乱に咥える。喉奥を何度も往復され、つんとした息苦しさが広がっても、私はそれを心地のよいものとした。
なにも返事がないのが悲しかった。天橋君の口は美智に奪われて。視線をこちらに向けることも叶わなさそうだった。それでも、自分の手に取れるところは逃したくない。
口の中の性器が震えだした。
「ん、んぐっ──」
膨らみ、腰の跳ねる力が強くなる。ぐっと押さえ込むと、喉奥に温かい感触がする。
──びゅくびゅく。
「んふふ、聡くんっ……イったんだ」
美智のからかうような声を無視して、私は吸い続ける。
──ぐじゅじゅっ、じゅっ。
「んぐ、んッ……じゅる、ん、んぁっ」
精液が流れこむ。味わう間もなくそれは胃の中へ流し込まれた。ゼリーを吸いこんだような感触で、粘りのある熱さが次々に通過していく。
後から香りが立ちのぼって、私はそのまま惚けていた。
「あ……ぁ……あまはしくんっ……」
私まで、何かを出しきったかのように脱力した。一滴も残さぬように鈴口を啜って、小さくなった亀頭をふにふに舌で転がしている。
「んっ、ふふ……聡くんっ、先生すごく嬉しそうにしてるよ」
私以上に息を激しくする天橋君がいた。満足してくれたなら、それでよかった。
「はあ、んぁ、あ……っ」
「気持ちよかった?」
「は、はあっ……う、うん……っ」
ふたりの会話が繰り広げられる。それを聞いていると、なんだか手柄を横取りされたような気分になる。天橋君は私の口の中で果てたのに。
天橋君を離したくなかった。柔らかくしおれた天橋君の性器を、私はまだ咥えていた。
「ん、んっ……天橋君、まだ、出せるでしょ……?」
「ぁっ、あっ、せんせっ」
また口淫を再開する。あんなに溜めたのならば、まだ出せるはずだ。
私は美智なんかより天橋君のことをわかっている。たった一回の射精で満足しないことを知っている。
「んっ、んっ、はぁっ、はぐっ」
美智は床で脚を崩し、私の方を見ていた。
「先生も大変だね、聡くんのお世話」
「……んはっ、うる、さいっ」
「疲れたなら手ですればいいのに。カッコつけて後に引けなくなってるの?」
ただ天橋君の方を見る。聞きなれた心地の良い喘ぎ声だけに耳を傾ける。口から溢れる唾液がぐぢゅぐぢゅになって、さっきよりも水音が大きい。肉棒の硬さも落ちていて、少し咥えやすい。
「せ、せんせいっ……きもちいいっ……また、出そうっ……」
「ん、んっ……」
何か返事してあげたかったが、私は必死だった。精液の後味がまだ残って、それに興奮を煽られながら必死に奉仕した。
「先生、やっぱり疲れてるんじゃない?」
美智の声を聞いてはいけない。それは悪魔の声。天橋君を騙し、私をマイナスな方向へ導く罠だ。
「ねぇ、無視? 先生。聡くんも」
耳障りな声が近づいてくる。ずっと、嫌な微笑みを浮かべてる。
邪魔だ、ずっと邪魔。
私も、この女みたいになってしまうかもしれなかった。そうなってたら、天橋君を幸せにできなかった。それに気づかせてくれたことくらいしか、美智への感謝はない。
「私も手伝ってあげる」
後ろから聞こえた。
何かに頭を押さえつけられる。
「ん、んぐっ……ぁ」
「先生もたもたしてるから、手伝ってあげるって言ってんの」
何が起きたかわからなかった。
戯言として聞き流していた言葉が鮮明になる。
「ん、んぐっ、あ、んあっ……」
美智の両手が私の頭を掴み、押さえている。
視界が揺れる、振られる。
喉奥を激しく掻きまわされる。
「んむ、ああっ、はぁっ、はあっ……」
「聡くんが責めてるみたいで楽しいね」
離したくない。咥えたままでいたい。そのはずなのに、私の身体が苦しそうに喘ぐ。食べてしまいたいほど好きなはずなのに。あまりの刺激に鳴く天橋君は、思いのほか気持ちが良さそうだった。
「んむっ……ぐうっ、んっ……ぐ、うえっ……」
「せんせー、無理しちゃだめだよー?」
私の口腔が雑に使われるのは、相手が天橋君でも流石に対抗がある。美智の強引な力で奉仕させられていることを意識すると、羞耻はより増した。
「はあっ、はあっ……あっ……ぐ、くっ……」
「ふふ、そんなに大事なんだ。
息継ぎが足りなくて力が入らない。朦朧とした意識の中、抵抗もままならない。すでに打ちのめされた身体は何にも逆らえず、その中で、天橋君の性器は膨らむばかりだった。
「聡くんも、そんな顔しないでよ。先生のこと懲らしめてって言ったのは聡くんじゃん」
「んっ、そ、そん、そんなっ、ぁ、でもっ……はぁっ、うっ……」
「遠慮しなくていいのに」
「あっ、うぁっ、あっ、あっ……」
根拠のなかった自信が美智に崩されていく。
天橋君は私のことが好き。
天橋君は無理やりされるのが好き。
天橋君は、美智が怖い。
だから、天橋君は必ず私のもとへ戻ってくる。そのはずだったのに。少なくとも、私の中だけではそうだったのに。美智に崩された。私の描いてきた物語に美智が現れて、全てが狂った。
ただ、教えてくれたに過ぎないのかもしれない。最初から美智が正しくて、私が間違っていた。私と天橋君が出会ったときから、やはりおかしいのは私の方だった。
「聡くん、もうイきそうな顔してる。出すときは思い切り喉奥まで咥えてあげるね。先生が」
苦しい、苦しいだけだった。吐き出したい。食べてしまいたいほどに可愛かったのに、今は異物でしかなかった。気持ち良さそうな天橋君の声まで、嫌に感じた。そんな自分がやっぱり嫌だ。
逃げたら負けだ、そんな陳腐な気合でなんとか耐えていた。実際は、逃げられないだけだというのに。
耐えている自分やこの苦痛を肯定したいだけ、美智に打ちのめされている自分への言い訳でしかない。天橋君への想いがあれば耐えられる。目に入れても痛くない、はずなのに。そんな希望すら捨ててしまいたく思える。
「あ、出そう。聡くん。ぎゅってしてあげる。先生は力抜いてー」
「ふぐっ、う、ううっ……ぐ……っ……」
頭を思い切り押された。天橋君の身体へ顔が食い込むくらいだった。膨らみ痙攣する性器に口の中が満たされて、胃の中まで届くのではないかというほどの奥へ、大きなものが押し込まれた。
「あ、あー、さっきより気持ちよさそう。私の方がセンスあるんじゃない?」
「んんっ、んぐっ……あ、うえっ……うっ……」
「先生吐きそうじゃん、聡くんの大事なおちんちん汚さないでよねー」
片手でぐりぐり押され、嘔吐反射を何度も誘発される。ちゃんと息をしたい、喉が痛い、それより先に。許してほしい。もうやめてほしい。そればかり浮かぶ。どうしようもないことばかり願っていた。
しばらくそうされて。温かい天橋君の液体がたくさん漏れ出てきた。一度目より多かったように思う。
身体が必死に暴れた。美智が私の背中に跨り、両手で頭を掴んで、天橋君へ押し付けていたから、暴れる以上のことは起きない。手足を激しくばたばたしても、床にぶつかるだけだった。顔をあげようしすぎて首が痛い。乾いた口の中を精液が潤してくれたのが、唯一の救いかもしれない。それでもずっと吐き気は続いていた。天橋君の射精が終わって性器が小さくなるまで、ずっと暴れていた。傍から見れば、力なくもがいていただけだろうけど。
「そろそろ柔らかくなったかな。やっと終わったね、先生。聡くんのおちんちん、おいしかった?」
その問いと同時に私は解放され、言葉を話せるようになった。
できれば、答えたくない。まだ息をするのに精一杯という風を装って、稼いでも仕方のない時間を過ごす。
「苦しいだけでしょ、どうせ。先生は聡くんのことを
応じる間もなく、美智は正解を言った。私の認めたくない事実。私の心の中にだけ存在するものならいくらでも改ざんできるのに。美智を前にしてそれは許されなかった。
「私は、聡くんのためなら死んでもいいって思ってる。先生は違うだろうけど」
そんなわけはない。そう、思いたかった。
「これでどっちが聡くんに相応しい女か決まったね」
「…………はぁっ……それは、天橋君が……」
天橋君が、決めること。
……天橋君は、どちらを選ぶだろうか。
「聡くんのことを惑わせるものは全部なくす。私の恋を邪魔することは絶対に許さない。それが聡くんであっても許さない。私の言うとおりにするのが一番理にかなってるんだから」
間違ってると、言ってやりたかった。そんなわけないって言いたい。彼女の誤りを指摘する、私以外の誰かが欲しい。美智こそが正しいと思い始めてしまった私まで、誰か、救ってほしい。
「私が相応しいって決めたら、それが正しいの。聡くんはわかってくれたよ。先生も、これでわかったでしょ。だからもう、終わり」
希望を捨ててはならないはずだった。
天橋君は私のことが好き。美智に無理やり従わされているに過ぎない。
美智の支配の鎖を絶てば、私たちは幸せになれる────
かもしれない。ただ、それだけだった。
完結となります。ここまで閲覧ありがとうございました!
感想・評価等励みになります!
ぜひよろしくお願いいたします!