※この作品はR-18です。

敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…やらかし   作:苦味100%(後悔)

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夜と契る/43

 

 アマネとブラスの逢引は終わらない。

 終わることを二人が望まなかった。

 少年は、自身の仮住まいへと少女を招くことになるし、少女はそれを喜んで受け入れた。

 なんてことはない。独占欲と思慕を始めとした欲求。単に愛し尽くしたいだけの、何ら特別性のない欲望の発露。そんな当たり前のことを抱けるくらいには、二人の心はようやく安定した。

 

「………緊張してる?」

「まぁ…うん、素面でするのは初めてだ」

 

 少女の問いかけに、少年が返答する。

 同じベッド、同じシーツの上で二人は手を重ねる。必要なものは揃えてある。水もゴムも、それと夜と朝の空腹を満たすための食べ物も既にある。

 やることは、もう一つだけだ。

 

「…ボクもだよ」

 

 ちゃら、とアマネのチョーカーを留めるチャームが揺れる。ハートを模した金属製の小さな錠前。倒錯と見られても仕方ない証。これが示すのは、偏に彼女が彼のものだという永劫に覆ることのない事実。

 

「というか、キミしか知らない…」

「………俺の罪深さが増してる気がする」

「いや、っでも…その、襲ったのボクだし…!」

 

 互いの傷口である、最初を抉る。

 何度負ったかわからない傷。最初だからこそ、時折苛む罪悪感は離れ難いが、それも繋がりの一つだと思えば、笑い合えるくらいには苦痛ではない。

 

 アマネもブラスも、既にシャワーを済ませた。

 二人の服は中途半端に崩れている。

 アマネは、キャミトップスとショートパンツのルームウェアを。ブラスはシャツの上に薄手のパーカーを羽織り、緩い就寝用のルームパンツを。

 どちらもラフな格好で、無防備を晒すような有様で、ベッドに腰掛けていた。

 

「…………おいで」

 

 そう言ってから、アマネがブラスに向けて両腕を広げる。少年は誘われるがまま、少女の腕の中に収まる。そうして、抱きしめられて、互いに相手の匂いを感じる。

 ちらり、と少女がベッドの周りを見る。あるのは姿見一つ、そして小机のみ。

 少し寂しい部屋かも、と思いながら少年を強く抱きしめ直す。

 

 それが、合図と言えば合図だった。

 

 

 

     ◆

 

 

 

 仄暗い部屋、光の薄い寝室。

 響き渡るのは深い呼吸の音。強く何かを吸い込む音。欲しい欲しいと空気を肺に取り込む音。

 その音は、部屋の隅にある寝台の上から。

 白いシーツに皺を作るほど、離れることなど知らないと言わんばかりに必死に抱きしめ合う一組の男女。

 彼等が吸っているのは、互いの香り。

 

「ん……ッ…は、ぁ…ッ!」

 

 緑の髪を乱したアマネは蕩けた笑みを浮かべる。

 陶酔と恍惚。酩酊よりも遥かに頭をクラつかせている素面。その中でも、彼女はまた男の首筋に顔を埋めた。

 骨に筋肉がへばりついたような体躯。

 良く言えばしなやか、悪く言えば肉を削ぎ落としたようなそれが、少女は嫌いではなかった。

 というより、彼の身体だから好きだった。

 女の腕は彼の髪を抱くように動いていく。

 

 その蒼白色の髪を揺らす少年。

 つまりブラスは同じ色の瞳を、安堵と忘我に沈めたまま、今なおしがみつくようにアマネを抱きしめている。

 そして彼もまた、女の首筋に顔を埋めて、深い呼吸を何度も何度も繰り返していた。

 お互いの匂いで肺を満たす。その様はまるで、相手の存在を己の中に染み込ませていくかのよう。

 

「……っ……ぁ」

 

 頭のぐらつき、ドロドロに重たい脳。

 そんな思考の中で『まるで麻薬だ』とブラスは意識を保ちながら、呼吸を荒くしながら苦笑する。

 心地良い匂い、安堵と興奮を引き起こす何か。

 誰かに溺れるとはきっとこの事なのだろう。

 

 何度も何度も互いの匂いを肺に入れる。

 その最中に、アマネの体が微かに動く。意識してか、無意識なのかは定かではないが、彼女は自身の太腿をもどかしそうに、疼きを抑えるように擦り合わせていた。

 

「〜〜〜〜…ッ!!」

 

 それに気づいた男は、勘弁してくれ、と思う。

 今だけは、酒の力も何もない今だけは、焦りに駆られて抱くことを避けたい。感情に任せて、記憶もおぼつかないままになるのは嫌だ。

 この全てを、頭に刻みたいと彼は願っている。

 だから、歯を食い縛って堪えた。

 押し倒してしまわないように、半ば強制的に抱いてしまわないように。

 けれど、耐えきれないものもあって。

 

「…………」

 

 アマネが顔を上げて、少し体を離す。

 熱に溶けた飴玉のような翡翠色の瞳が、ジロリとブラスを見つめている。

 呼吸は浅く、荒い。まるで獣のように、何度も息を呑んでは吐き出すことを繰り返す。

 

 汗が、流れる。

 

 ゆっくりと、一筋だけ。緑色の髪から、頬を伝って、肌を濡らして、潤いを与えて、艶かしく光らせる。

 それを見て、思わず男の喉が鳴る。

 男として、雄としての本能はずっと励起されたまま、鎮静することを知らないと言わんばかりに高まったまま。

 

 どう足掻こうと抗えない欲求。

 男の理性を焦がすそれを、理解しているのかいないのか、彼女は小さく微笑む。

 誘うように、煽るように。

 そしてそのまま、舌を出して己の唇を舐めて、少しだけ赤い舌先を覗かせる。

 ぷるり、と潤い、濡れた薄い肉が見える。

 それは酷く扇情的だった。

 

「……きす、だけ…する?」

「……………す、る」

 

 女の誘いに、男は乗った。

 何も我慢せずに、あっという間にまぐわえば、きっとこれ以上ない程の快楽に溶け合えるだろう。

 それは女も男も分かっていたし、察していた。

 

 でも、まだだ、と願う。

 

 抱き締めあって、呼吸をして、触れ合って体温を分かち合う。この愛おしくて仕方がない時間を大切にして、頭と心に深く刻みつけて離さないようにしたい。

 何より、もっと深く、強く、相手を求められるように『仕込み』を怠りたくはない。

 

 だから二人は、我慢することを選んだ。

 疼く体を、なけなしの理性でねじ伏せる。

 お互いの匂いで満たされて、安心しきった心と体で、だけど湧き上がる欲望に、壊れそうな蓋をした状態で。

 

「ん……ぅ」 

 

 キスをする。

 

 擦り合わせるように、何度も何度も。

 唇で触れ合うだけの、軽いキス。

 頭を痺れさせる麻酔が何回も。

 

 当然、次第に物足りなくなる。

 女はわなわなと、ゆっくりと口を開いて、更にその先へと行為を進めようとする。

 男の蒼白色の目に、赤色が映った。

 濡れた赤い肉の虚(うろ)、唾液に塗れて、ぬるりと光る柔らかな中身が、誘惑するように、淫らに蠢いている。

 

「ふぁ……」

 

 自分の口の中を睨め回す男の視線。

 それに気づいたアマネは、蕩けた顔を見せる。

 その次の瞬間だった。

 彼女の口の中へぬるり、と生暖かい感触が伝わる。男から舌を入れられたと把握出来たのは、唇を重ねられた後。

 

 少し乱暴で、強引なキス。

 それでも、愛しいからこそ気持ちいい。

 思考が焼き切れそうな程の感覚。

 砂糖菓子のような優しい甘さとは程遠い、脳に刻まれて振り払えないような甘たさ。

 頭がバクバクとうるさいのに心地良くて、幸せで頭が真っ白になって、中毒になってしまいそう。

 

「ふ、あッ…ゃ、ぅぁ…?ふ゛ぁ…ゃ、ぅ…っ」

 

 そう思っている彼女は、自身が喘ぎながら、口の端からだらだらとよだれを零して、壊れたように体を震わせている自覚はあるのだろうか。

 

 これも一種のトランスと言える。

 退廃的に震える体。何度も揺れ動く腰。

 舌を絡ませ、咥内を舐られ、上顎から責められてこの有様。口から伝わる柔らかな感覚で、あっという間に背骨から体が震えて、ぞくりとした快楽に犯されて堕ちる。

 そんな光景を目の当たりにする少年。

 下手人でもある彼の頬は、歪な笑みの形を作っていたけれど、その自覚などないのかもしれない。

 

 ずりゅ、ちゅぽ、と水音が暗室で鳴った。

 男の舌と女の舌が離れる音だ。唇を離しても、二人の唾液は糸を引くほど粘ついていて、それが離れることを拒むように伸びて、ずっと繋がったまま。

 

「…んっ…」

 

 ふつり、と音もなくそれが切れた時。

 

「へ、ぁ…はー…っは…ぁッ…んぇっ…?」

 

 少しだけ外に晒されている舌がある。

 男は女のそれを掴んで、口の外へ出す。外気に触れる以前に、男の指が愛でるように小さな舌を弄り回す。

 ぐちゃり、くちゅりと水音が鳴り、女の口端から唾液が零れていく。

 

「ふぁ、ぁ…ぁえ…?」

 

 キスをしてもらえると思っていたのか、虚を衝かれたように女は呆然とする。あるのは羞恥。舌をいい様に触られて、だらしない顔を晒していることへの自覚。

 欲しいと思っていたものが、もらえないと分かった途端、ひどく寂しく、それでいて心細くなる。

 既に溶け落ちた理性は、女が涙を溢すことを許した。

 

「…や、やぁ…っ!…っ、いじ、ぁる…!」

「っ……」

「んぁ…きす、したいのに…なんぇ……!」

 

 子どものように泣きながら強請るアマネ。その有様は、普段の姿からは想像もできないほど幼くて、可愛らしい。

 少年は思わず見惚れてしまう。嗜虐心、支配欲、独占欲、そんな暗い喜びが彼の中で満たされてしまう。

 

「ん、んぅ…!ねぇ、ぁ───ッ!」

 

 だから、ここで優しい接吻を。暴力的に犯すのではなく、飴玉を溶かす様に丹念な舌使い。お互いの舌だけではなく、意識までドロリと溶け合うような、深い交わり。

 微かに聞こえる水の音。

 下からか、上からかはわからない。どちらも距離が無くて、離れることなどお互い考えられなかったから。

 

「……ん、……っ……♡」

 

 ぷはっ、と息を求めて二人が喘ぐ。

 何度も責められた女の方は重症で、ぼんやりとした顔のまま、呆然と、定まらない目で男を見ていて、そして蕩けた、誘うような笑みを見せる。

 溶かされきった理性。酸素不足に失う思考。

 それは本能をむき出しにする。彼女の吐息は荒いまま。まるで仔を強請る猫、歌声を紡ぐはずの喉も、今となっては甘やかな声で鳴るばかりだ。

 

「う、っおあ!? …あー…弱っ、たなぁ…」

 

 女が男を寝台に押し倒す。

 見下ろされた少年は、興奮ともにつかない笑顔。言葉とは裏腹に、困った様子はどこにもない。

 少女の方は、赤い顔を仄暗く歪ませる。

 興奮のせいか、呼吸が薄いせいか、震えておぼつかないまま、少年の服に手をかけた。

 

「───ッ…!」

 

 張り詰めた剛直を目の当たりにして、喉が鳴る。

 我慢の限界なのか、少女は自分からショートパンツを脱いで、その辺りに散らかす。濡れきって役目を果たさなくなったショーツも、脱ぐ時間すら惜しいのか、片足に引っかかったままで放置する。

 

 露わになった女の下半。

 白い肌は上気して、桃色に汗ばんでいた。

 

 外気に触れ、蠢動する秘肉。肉の口から、欲しがるようにと溢れる蜜は唾液のよう。太ももを伝い、シーツに染みて、女の持つ欲望を痕跡として残していく。

 まだ男が一度も触れていないのに、どうしようもないほどに、女の体は我慢も知らず出来上がっていた。

 

「まだ、痛いだろ…」

「だぃ、じょうぶ…だい、じょうぶだから…」

 

 濡れた媚肉を、屹立に充てがう。

 だが震えた体ではうまく定まらないのか、女はいたずらに蜜を剛直に塗りつけるばかりだ。

 熱く柔らかな肉が、何度も擦れる。

 粘度を持つ淫蕩な水音が、静かに鳴る。

 

「ひぅ…っ! だ、め…ふるぇ、て…はいらな…ぁ!」

 

 女がまるで己のモノを使って、自らを慰めているかのような光景。男はどうしようもなく興奮を覚える。

 仰向けのまま、されるがままも限界だ。

 だけど男は堪えたままで、思考を回せる余地を残している。息も絶え絶えだが、彼は声を詰まらせながら言う。

 

「…っ、ばかっ…煽んな…って…!

 ぃ…!ちょっと、まって……!」

 

 必死な声。まるで何かを堰き止めるような、怯えているかのような。彼は耐えるように奥歯を噛んでいて、強くシーツを握っている。

 内側から何度も這い出る声があった。到底表に出せない本音があった。心の中から始まり、脳を苛んでいくそれは、今も彼の理性を壊そうとしている。

 

 彼女を自分のものに出来る。食い『契る』べき花。彼女を独占出来る。彼女を愛する事が出来る。奪うべき海。それだけじゃ足りない。得るべき実り。もっと欲しいものがある。彼女が自分に溺れて、抜け出せないよう沈めたい。喰らいたい。呑み込むべき水。欲しい欲しい。

 そんな願いが、何度も何度も男の腹の底で煮えたぎっている。狂気に入りかけるそれを抑えようと、動きそうな体を留めて、どうにか堪えていた空白の時間。

 

「ん゛ぅぁ……ッ! はぁ、ぁ……っ!」

 

 だから、女が腰を落とすのを止められなかったし、その瞬間に、男の理性も建前も、あっという間に砕け散った。

 男が葛藤する間にも、蜜口は怒張を喰らおうと何度も擦られ、ようやく女の体は男のモノを呑んだ。

 伴侶が、自ら喰われにやって来た。

 

 ほぐれてもいない肉壁は、男の屹立で押し広げられて、男の形を強制させられていく。少女は痛みと快楽の両方を感じ、苦痛の表情が悦楽に染まりはじめる。

 言えば怒られそうだと、少女は本音を心に閉じる。この感覚は嫌いじゃない。愛しい人から、無理矢理に犯されているような、みちみちと体の奥から響く音。

 

「ぁぎ、ッ…! ん、んんぅ……!!」

「っぐ……!」

「ふ、ぅ ぁ……あ つ、ぃ……!」

 

 恍惚と、蕩けた声でアマネは溢す。

 体勢は完全に女が優位。男は組み敷かれたまま。所謂、騎乗位の形で、女は自重に任せて男を貪ろうとする。

 前戯を欠いた女の中は狭く、だというのに柔らかく、絡みつくように男のモノを締め付ける。気遣いを忘れたような、暴力的なまでの快楽を与えにくる。

 ただでさえ我慢していたブラスには、あまりにも毒すぎる刺激だった。

 

「ぅあ…っ、おなか、…すご、ぃ…! これ、うごけな、ぁあ…!? まっ、…これ、だめだよ…! だめだってぇ…!」

 

 しかし、不慣れどころか未経験の体位に、女が翻弄される。自分が主導権を握れると思っていたのに、実際は真逆だ。男の上で、女はただ震えながら喘いでいるだけ。

 自分の体に、少年のモノが、奥深くまで。

 言ってしまえば自爆。自らの重さで、男のモノをどんどんと呑み込んでしまって、飲み込むほどに快楽が押し寄せて来て、どうしようもなくなってしまう。

 

「うぁ、ィぃ、ぁア…ッ!」

 

 それでも女はいじらしく、動く。

 自分だけが果ててはいけないと、自ら上下に体を、少しづつ揺らして、僅かでも良くなってもらおうとする。

 その健気さは男の胸を焦がした。愛おしさが溢れ出て止まらない。だというのに、これが興奮につながるのだから、どうしようもない。倒錯にも程がある。

 

「…ね、ぶらす…きもち、いぃ…? ぼく、だけ…じゃ、だめだよね…っ…!」

「…っ! あん、た…なぁ…っ!」

「あ、ッはぁ…ッ! おっきく…なった、ぁ…!」

 

 ぐぐ、と肉壁を更に押し広げる感覚。

 更に肥大する雄は、少女を体の中から蹂躙する。届いているはずの奥を押し潰そうとして、締まるはずの肉壁を内から広げ、強い快楽が走る。

 少女は下腹部に強い疼きが溜まって行くのを感じている。それがもう直ぐ爆ぜてしまいそうなことも。

 

「ぅ、ぎ…ッ! ぁっ、ぁああ…!」

 

 だが大きく腰を上に動かした時。

 ずるりと、男のモノが抜けてしまった。

 女の腰が落ちる。支えるものが無くなる。

 途端に訪れる喪失感。まだ女の中には熱がこもっていて、中途半端に火照って仕方がない。

 

「ご、ごめん…っ! ごめ、なさ…ぁあ…!」

「…っ!」

 

 だから、女は男の腹に濡れた秘所を擦り付ける。お互いに気持ちよくなるだとか、そんな考えはなくて、単に自身に溜まった疼きを解消したいだけの動き。

 だから少女は何度も謝っていて、その都度に喉にある錠前を模した飾りが、音を立てて揺れていた。

 

「ぅあ、っやぁ…っ!ぁ、あぁ、〜〜〜…ッ!」

 

 びくん、と少女の体が一際強く震える。

 情けない果て姿。自身の快楽を優先して、男の腹を使って自らを慰め、絶頂したまま男の体に倒れ込む有様。

 荒い呼吸で、薄い体が揺れる。蕩けた瞳が、上目に遣われる。だらしなく出た舌は、少年の体を濡らした。

 

 …女は男の上に倒れたまま、息を整えている。

 少女は動けないと『使われた』彼は悟る。

 

 ブラスは起き上がりながらアマネを抱き抱えて、向き合うように座り直す。抱きしめ合えるような体勢。

 実際、少女は抱きしめられている。

 彼女は喜ぶような蕩けた声を出したが、それだけでは終わらないと、考えられる思考力も今はないらしい。

 だから、囁かれた声に、理解が及ばなかった。

 

「…勝手に人様使ったんだ。

 今度はあんたが使われてくれよ…」

「へ、ぇ…? …ぅ゛っ゛あ゛っ…!?」

 

 ずぷ、と深くまで突き上げられる音。

 2度目の挿入のせいか、一気に最奥まで。

 逃れようにも、抱きしめられて動けない体は、もがくように腕と足だけがばたばたと揺れた。

 男は女の首の後ろに腕を回す。

 そしてその状態で、更にぐりぐりと、女の最奥に自身の怒張を味合わせる。

 

「ぁがァ…ッ!? ひゃめ、ふかぃ…ふかぃぃっ……!! おく、ぅ…!や゛ッ…ぁ! ぶらす、これ、やらぁ…っ!!」

「…ははっ…! やばいなこれ…!」

「ぉ゛あ゛あぁぁ…! ん ぎィッ……!!」

 

 熱くうねる肉の洞が蠢く。熱く蕩けた媚肉が張羅に吸い付き、甘く締め付けて責め立てる。

 水音と、肌と肌がぶつかる音。

 濡れた肌と肌が擦り合わせられる音。

 男に抱きすくめられて、逃げ場のない快楽を受け止め続けるしかない女は、獣のような声で喘ぎ続ける。

 

「やぁ…ッ!? ぉ…ほ…ッ…ぁ、あ…ぁ…ッ!」

 

 どちゅ、と少年の剛直で奥まで突き上げられる度に、少女の頭の中で火花が散るような快楽が弾ける。

 かひゅ、と掠れたような音を鳴らす喉。

 それと同時に、ベッドに潮が散らされる。

 女の体が吐くそれに、男の肌と女の肌が濡れて、部屋に響く水音を大きくする。

 アマネの体は、既に何度も絶頂に沈められていた。

 

「ふうぅっ…! ふうぅっ…!」

「…いっ……!」

 

 がり、と少年の首筋に歯が立つ。

 抵抗ではない、ただ快楽に翻弄される中、縋ろうと噛んだのが少年の肌だった話。

 彼の背中には、既に赤い爪痕が残っている。

 それを気にする余裕は、今の2人にはなかったが。

 

「ごめ、ん……っ! ぃまは、ゆるして……ッ! またイッちゃうからぁ…!」

「…っ、…わりぃ、抑えられねぇ」

「やだぁ……! こわぃ、こわいぃ……!からだ、ばらばらになり、そうっでぇ…!」

 

 首を振る。いやいやと駄々をこねるように。

 だけどそれが本心じゃないことは明らかで。少女とまぐわっている彼が、それを最も理解していた。

 

 少女の蜜壺が、奥底を突かれる度に強く締まる。

 その都度に少年のモノを離さないというかのように絡みつき、痙攣するように震えた。

 

 ごちゅ、どちゅ、と重たく激しい抽送が繰り返される。

 ただでさえ敏感な場所を男のモノが蹂躙している。それに加えて、耳元で聞こえる男の荒い息遣い。

 感覚の全てが、少女を昂らせていく。

 

「ぅ、ぁあ゛っ!あ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛〜〜……ッ!」

「っぐ、……っ!」

 

 男のモノを強く締め付ける。

 それと同時に、少女は大きく仰け反った。

 彼女の中で、張羅が強く脈打ちながら、少女の中に白濁を吐く。熱い精が、女の体と感覚を襲う。

 そうして彼女の体が壊れたように何度も跳ねた。

 

「ぁ……あぁ……あ…ぁは…♡」

 

 どろり、と己の内側を伝う、熱く重い感覚。

 抱きしめあったままの男女。愛しく思う者達なら、何ら不思議でもない成果。

 女も、男も、昂ったまま。

 いまだに燻る疼きのやり場を求め、お互いの体を擦り合わせる。緩い快楽を永く得ようとする。

 

「ぁ…っ、きみ、の…きたぁ……っ♡」

「…ん、すこし、かおあげろ」

 

 ブラスの声に従い、アマネは顔を上げる。

 すっかり少年に落とされた翡翠の瞳。

 汗で乱れた緑色の髪。

 髪は額に張り付いたものもあれば、大きく外に跳ねたものも。普段ならまずしない乱れ方。自身がこうも崩したのか、そう思うほどに少年の心は波立っていく。

 

 こつり、と合わさる額。

 お互いに目を閉じながら唇を擦り合わせる。

 やがては唇を重ね、舌を合わせる。

 軽い水音、単なるスキンシップ。お互いに体を震わせてから、静かに唇が離れて、女の体が仰向けに倒れた。

 

「…ぁ、っ…ぁぁ…っ…ん、ぅ…っ!」

「…っ…はなれたく、ないって…っ?!」

 

 女の体から剛直が引き抜かれようとする。

 しかし、肉壁は惜しむように強く吸い付き、事の終わりを許さない。それどころか、またもや強くうねり、続きをねだろうと淫らに蠢く。

 男はそれに腰を崩しそうになる。

 それでも、半ば無理矢理に剛直を抜いた。

 

「あ゛ッ」

 

 瓶から栓を抜くような、そんな音だった。

 男のものが抜け切った瞬間、女の秘裂からは白濁とした欲の塊が、愛液と共にどろりと微かに零れ落ちる。

 それはベッドに敷かれたシーツに染みを作って行く。

 女はその光景を見て、口の端からよだれを垂らし、蕩けた表情で静かに微笑んでいる。

 

 男は女の下腹部を撫でた。労わるつもりだった。些細な気遣いのつもりだった。だが、力加減を間違えたのか、軽く下腹部を圧迫してしまう。

 

「〜〜〜〜〜〜ッ!??!」

 

 ごぷ、と下腹よりくぐもった音が聞こえる。

 同時に、きゅうと女の媚肉が無くなったはずのものを締め上げようと、強く収斂した。

 呑んでいた筈の白濁は、その圧で押し出されて行く。

 

 少女の体が浮いた。快楽を感じる薄いそれは、寝そべったまま足だけが立っていて、浮いた腰を起点にがくがくと揺れる。

 その間にも白濁は押し出される。相当な量を飲まされたのか、長く吐き続ける肉の洞。

 腰がシーツに落ちてもそれは変わらない。

 

「ゃ゛ぁ゛ッ…? だ、め…っ…」

 

 それでも、女が弱々しく動く。

 出て行こうとする白濁を、指で押し留めようと、秘所に手を当てながらぐちぐちと淫靡な音を立てる。

 それを目の当たりにして、少年のタガは壊れた。

 

 彼は無言のまま、少女の体をうつ伏せに転がす。まだ快楽から抜けきってないのか、彼女は何が起こっているかわからない様子。

 そんな少女の体の下腹部に左手を置き、腕を右手で掴んで起き上がらせ、いまだ濡れている秘裂に、持ち直した己の張羅を当てがい、躊躇いなく一気に最奥まで突く。

 

「…おお゛っ…!?…ぇ、ぁ…?」

「……ごめん」

 

 後ろから突かれ、意識の定まらぬまま深く突き刺された少女の脳は、弾けたような快感に浸る。視界が白く明暗してチカチカと瞬いていて、思考もまとまらない。

 

 少年は、蒼白色の瞳を爛々と滾らせている。

 彼の視界に少女が映る。ぴんと張るように伸ばされた背中。汗で張り付いた、着崩れたキャミトップス。無防備に晒されているうなじ。乱れた緑色の髪。

 その全てが独占欲を燃え上がらせた。

 

「……どうしようもねぇなぁ」

 

 寝台側の姿見に、一人の少女の痴態を映す。膝でベッドに立たされ、開いた肉の口に男の屹立を飲み込まされ、攻め立てられながら潮を散らして、快楽に歪む顔。

 少女とまぐわう少年は、嗜虐的な笑みを浮かべながら、うねる彼女のナカを自身のモノで乱していく。

 

「や゛ッ…♡これ、やらぁ…っ!!♡」

「…わりぃ、おさえられねぇ…ッ!」

「ひッ、ぃ……あぅッ……ッ~〜!!!」

 

 乾いた音が寝室に響く。肌と肌をぶつける音。節操も躊躇いもない一方的な捕食。

 少年は少女のうなじに何度も噛みつきながら、番と交わる獣のように女を責め立てる。

 その都度に、女の首輪が揺れる。

 僅かに締まるそれが、気道を微かに狭めた。

 

「かひっ…!? ぁ゛…ひゅぅーっ……♡っオ゛…♡ぇひ…ぃ♡」

 

 その感覚に、善がりながらぴくぴくと小刻みに痙攣する少女。淫猥に顔が蕩け、陶酔が故に歪に笑う顔が鏡に映る。少年は、それを見て舌舐りをした。

 

 そうして、更に激しく腰を打ち付け始める。まるで、彼女に自身が誰のものかを分からせるかのように。

 だが激しさのあまり、少女の体は溢れるように落ちた。

 

「ぁ゛っぅ゛… ふぁっ…ふ、ぅ…っ!」

 

 どちゃり、と濡れきったシーツの上にアマネの身体が倒れる。まるで所有物、モノ扱い。好きな人から、一方的に都合の良い欲望の捌け口にされているような有様。

 そんな状況に、彼女は仄暗い喜びを覚える。

 

「あぁ……ぁ……ッ♡」

 

 人として最も大切な部分を、愛している人に掌握されて、滅茶苦茶にされる感覚。それに酔いしれて、溺れそうになる。

 だが、まだ終わりではない。そのことを忘れていた少女は、背後から掛かるよく知る重さに、微かな恐怖を抱く。

 

「…逃げんな」

「……ひッ……ごめ……なさ……」 

 

 耳元で囁かれる、拗ねたような声。

 それだけで背筋が震えた。男はそのまま、女の体に覆い被さり、抜けてしまった剛直を再度突き入れた。

 ばたばたと抵抗するように揺れる足も、必死に力を込めた上半身も、全て背中から押さえつけられて無駄に終わる。

 

 ぱんっ、ぱちゅ、と肉がぶつかる音。

 粘液がかき混ぜられる音。

 その二つが間も無く響く。快感を逃す術もなく、ただ壊される少女の悲鳴が鳴る。それを笑う少年の声がする。

 

「やめっ…!…おお゛っ!?ご、え゛ぇっ♡ごぇん、なさっ♡あ゛あ゛ぁゔっ…! うぁっ、ひぎっ…! ん゛ぅっごめっ♡ごめんなひゃっあ♡」

「…あやまんな…っ、ぁ…ッ!」

「ゆるひっ…ぇ…お、くぅっ…!おく、せめる、のッ、やめっ… こわい、きもちいいの、こわい…ぃ!」

 

 女は過ぎた快楽に怯えている。

 それは少年も同じだった。

 それでも、彼女のうなじに歯を立てれば、膣内が一層強く締まり、子種を求めるように吸い付いてくる。

 本能的に求めるのか、理性で求めたのか。どちらにせよ、彼女は彼に溺れ堕ちた。もう、這い上がることも無い。

 

「…………ッッ!!?♡♡♡」

 

 途端に、喉元から巡る強い感覚。脳が痺れるような甘い刺激。思考が焼き切れそうな程の悦楽に、少女の意識が一瞬飛びかける。同時に、膣内の締まりが強くなっていくのを、少女は自覚した。

 それを感じ取った少年は、一気に抽挿を速めて追い詰めていく。最奥をぐりぐりと押し潰せば、面白いくらいに体が跳ねて反応を示す。

 

「あ゛っ…!? ぉ゛っ…あぇ゛っ?!?ひ…ぃ゛♡」

「……うっ、ぁ…!」

「〜~〜っ♡ 〜っ……!!……ぁ゛ぇ゛……っ…」

 

 どぷりと、熱い白濁が最奥で弾ける。

 それと同時に、一際大きな絶頂を迎えた少女は、伏したままぐったりと脱力して、時折微かに体を震わせている。

 少年は、息を切らしながらも女の首元に強く噛み付く。甘い、とぼんやりした頭で思いながら、彼女の背に覆い被さったまま荒い息を吐き続ける。

 

「んっ……」

「ぁ…ぅぁ…ぁぁっ…ぅ…ッ」

 

 やがて、落ち着きを取り戻した彼は、ゆっくりと起き上がって自身のモノを引き抜いた。

 散々に咥え込んで、受け入れていたものが無くなっても収斂を繰り返す秘裂からは、どろりとした欲が溢れ出し、シーツに染みを作る。

 

「………ぁ…んっ、んん…」

 

 少女は自身の体を、少しづつ動かす。震えた腕や足は、微かばかりしか動かせないが、それでも彼女はやっと仰向けになりつつ、ベッドのヘッドボードへ背中を預けた。

 そのまま、荒い息を繰り返す。

 呆然としながらも天井を見つめて、呼吸を整えようと胸元を抑える。だが、上手くいかない。先程まで少年に愛されていた余韻が強すぎて、体の火照りと疼きがぐずぐずと溜まっているのが分かる。

 

「…かげん、してよ…っ」

「…ごめん」

 

 アマネはブラスをきっと睨んだ。

 涙を溜めた目や、赤らめた頬で迫力は無いが。

 

 少女は自身の下腹部に手を置く。

 緩くも、しかし止まらない昂り。何の制限もしがらみもない夜。それが彼女の欲を、際限のない奈落へと変えている…今まで感じていたストレスのせいもあるのだろうが。

 それは少年にとっても同じこと。二人の間に『お開き』なんて空気は微塵も無かった。

 

「ん…ぅ…〜…ッ…まだ、…欲しい、かも…?」

「……そう、だな」

 

 かさり、と紙の箱が開く音がする。

 男の手元には、回数を示すように連なったゴムが。

 

「………今更だと思う?」

「…ぁ……はぁッ……♡」

 

 歪んだ笑みで、女は応えた。

 

 夜空のような蒼白が、女を塗り潰していく。

 彼も彼女も気づいているだろうか。まぐわう中で、お互いの瞳の色が、薄く混ざっていたことに。

 いや、気付けぬ程には夢中なのだろう。

 相手の色に染まり、溶け合う夜は始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

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