新米気弱病弱未成熟ロリ魔法少女の災難 作:ソフトリョナ研究家
数週間後、制服も届きようやく学校生活にも慣れ始めた日菜香は魔法少女について考えていた。魔法少女になって1ヶ月ほど経つが、悪魔など一度も現れていないからだ。
「もしかしたら、見えるところにはいないのかも……」
そう考えた日菜香は登校の途中、普段は入らないような路地に入っていく、この道は学校への近道になる道だが、日菜香は今まで通ったことがなかった。
日菜香は、普段通らない道に若干の不安を覚えながら恐る恐る歩いていく。しばらく歩くと、前方の角の奥から何やら気配を感じた。日菜香は思わず立ち止まった。
(なんだろう……?)
不思議に思った日菜香はさらに近づいてみる。そしてそっと角の先を覗いた。
「え……?」
それは日菜香にとって初めて見る光景だった。角の生えた男性が、日菜香と同じ制服の少女に組み付き、首筋に歯を立てていたのだ。少女は気絶しているのか、抵抗することなくぐったりとしている。
(あ、あれが……悪魔……)
日菜香は角の手前に顔を引っ込めた。
(た、助け……ないと。でも……)
日菜香はぎゅっとスカートの裾を握りしめる。その小さな手は震え、呼吸は浅く、荒くなっていく。
(怖い……どうしよう……!)
今見たのは紛れもなく悪魔の姿だ。しかも襲われているのは同じ学校の女子生徒である。魔法少女としての使命感から助けなければならないことは分かっている。しかし気弱な日菜香には恐怖で体が動かなかった。
(助けなきゃなのに……怖くて、動けない……!)
助けたいが怖い。相反する感情がぶつかり合い、一歩も動けない日菜香。そしてそんな精神状態は日菜香に強いストレスを与えてしまっていた。その結果、日菜香は強い尿意を感じてしまった。
「あ……こんな、ときにっ……」
日菜香は慌ててスカートの上から股間を押さえる。しかし尿意はどんどん高まっていく。
(だ、だめ……もう、我慢できない……!)
ただでさえ我慢ができない体質であることに加え、体が震えて力が入らない状況では尿意を抑えることなどできるはずもない。あっという間に限界を迎えてしまった日菜香はその場でおもらしを始めてしまった。びちゃびちゃと水音が響き渡り、足元に大きな水溜まりができる。そしてその音と臭いが日菜香の存在を悪魔に気付かせるのに十分すぎるものだった。
「誰だ!」
日菜香の存在に気付いた悪魔が角の奥から現れる。
「あ……」
後退りする日菜香だったが、足をもつれさせ自分が作った水溜まりの上に転んでしまう。下半身は完全にずぶ濡れになり、冷たい感触に襲われる。
「ガキか。ちょうどいい。お前に魔力も吸い取ってやるよ」
悪魔はそう言ってゆっくりと近づいてくる。日菜香は必死に逃げようとするが、腰が抜けて立ち上がることすらできない。やがて悪魔の手が目前に迫る。そのときだった。
「う、なんだ!?」
日菜香の変身アイテム。夢の中で天使にもらった、鍵の形をしたペンダント「セラフィムブースター」が光を放った。悪魔は怯んで後退し、そしてその光は日菜香の心に勇気を与えた。日菜香はスクっと立ち上がると、鍵を掲げて叫んだ。
「セラフィムリリース!」
その瞬間、光が日菜香の全身を包み込んだ。着ていた制服は光に分解され、粒となって消える。戸惑いの表情を見せる日菜香をよそに変身は続く。一糸纏わぬ姿になった日菜香の髪が薄い緑色に変色し、光がフリルのついた衣装となって上から順に実体化していく。最後に背中にライム色の翼が現れ、鍵が風車のついた長い杖「ラファエルロッド」に変形する。そして日菜香の頭の中にある「名前」が浮かび上がった。
「ま、魔法少女「ラファエルロリータ」……です!」
変身が完了し、名乗りを終えた日菜香改め、ラファエルロリータ。変身アイテムに与えられた勇気に乗って悪魔に向けて杖を突きつける。
「貴様、魔法少女だったのか」
悪魔の姿が歪み、足のたくさん生えた蜘蛛のような意匠の怪人に変身する。
「ひ、人を襲うのは許しません!や、やあっ!」
ラファエルロリータは身の丈ほどある長大な杖を振りかぶると、悪魔に向けて振り下ろした。
「ふんっ」
しかし悪魔はスッと体を引くと、ラファエルロリータの攻撃をあっさり回避してしまう。勢いよく地面に激突した杖を通して、衝撃が腕に伝わる。
「あうぅっ……。え、えいっ!」
諦めずに今度は横凪に杖を振るうが、やはり回避されてしまう。長い杖の遠心力に引っ張られ、ラファエルロリータの小さな足がたたらを踏む。
「当たって……!」
がむしゃらに杖を振り回すラファエルロリータ。しかし非力なラファエルロリータの腕では身の丈ほどの長さの杖を振り回すには力不足であった。スピードも足りず、杖の運動エネルギーに振り回されてバランスを崩してしまう。
「あっ……きゃあっ!」
ついに遠心力に負けてしまったラファエルロリータは、バランスを大きく崩して転倒してしまった。
「うぅ……」
「ふん。どうした?その程度か?」
思わず涙目になってしまうラファエルロリータを嘲笑う悪魔。戦えないことへの焦りを隠せないラファエルロリータは立ち上がると、大きく振りかぶって再び杖を叩きつける。
「やああぁっ!」
しかし大ぶりで動きの遅いその攻撃は、悪魔によって簡単に受け止められてしまう。そのまま杖を強い力で掴む悪魔。
「えっ……?」
受け止められたことに動揺し、慌てて杖を引っ張るラファエルロリータだったが、まるでびくともしない。非力なラファエルロリータの力では、いくら引っ張っても引き抜くことはできなかった。
「lは、離して!」
焦ったラファエルロリータは踏ん張って杖を引っ張り続ける。その姿は隙だらけで無防備だった。悪魔が杖を引くと、ラファエルロリータは簡単に悪魔の目の前に引き摺り出される。
「あうっ……」
悪魔は目の前の日菜香に向かって拳を振り上げた。
「ひうっ……!」
隙だらけのラファエルロリータは防御も回避もできず、目を瞑って身をすくめることしかできなかった。しかし、備えていた痛みはいつまで経っても訪れなかった。
「……?」
ラファエルロリータは体に入れていた力を抜き、目を開く。しかしラファエルロリータの緊張が解けたその瞬間、強烈な一撃が無防備なお腹に叩き込まれた。
「あ……!?」
油断してしまったところに容赦のない一撃を叩き込まる。ラファエルロリータの幼い精神はその揺さぶりに耐え切れず、簡単に限界を迎えてしまった。ガクリと膝をつき、その場に崩れ落ちる。
「ふぇ……」
小さな口から嗚咽が溢れ出す。ぽろぽろと涙がこぼれる。そして決壊したように泣き始めてしまった。
「ふぇえええん……!わあああん!」
大粒の涙をこぼしながら大声で泣き叫ぶラファエルロリータ。乱れた精神によって再び失禁してしまい、足元の水溜まりを広げていく。そんな無様な姿に、悪魔は笑い声を上げた。
「ははは、満足にトイレも行けないのか?まったく、なんて情けない魔法少女だ」
完全に戦意を失ったラファエルロリータの変身が解けていく。それと同時にコスチュームが消え去り、元の制服姿に戻る。
「うう……ぐすっ……うえぇえん……!」
泣きながら座り込む日菜香。そんな日菜香を見下ろして悪魔はニヤリと笑った。
「さて、それじゃあ魔力を吸い取らせてもらおうか」
そう言って近づく悪魔。しかしその瞬間、悪魔の体がチカチカと明滅した。
「チッ、時間切れかよ」
舌打ちをする悪魔。どうやら活動時間の限界が来たらしい。
「まあいい、今日のところは見逃してやるよ」
そう言うと悪魔は体を霧状に変化させ、その場から姿を消したのだった。