性欲が秩序を上回った世界でTSしたオレとインポ疑惑のイケメン 作:ぶるきえ
セイジは一人、目の前の屹立に唾を飲んだ。先日購入したディルドが卓袱台の上で真っ直ぐ立っている。
「…」
窓へと顔を向け、日差しの眩しさに目を薄めた。日が沈む時間はまだまだ先だと分かる。そうであるにも関わらず、現在セイジがディルドを前に心を落ち着かせずにいるのは、一重にアズマが不在の時間帯を狙ってのことであった。アズマの居ないうちに己の欲を満たそうとしているのである。
セイジは葛藤を覚えていた。自身の小さくなった手で恐る恐る身体を弄っていたことが自慰としてはちゃちなものであったのだと気付き、今目の前にある玩具を受け入れたが最後、男として取り返しのつかない境地に至る気がしていた。
「うう…」
模した物ではあれど、男性器は男性器。躊躇うのも無理はないことだ。けれど、セイジはディルドを前に興奮している現実と向き合わざるを得ない。火照ったままの身体で、帰宅したアズマと対峙する選択肢は無かった。
「しょ、しょうがねぇよな…」
息を吐き逸る気持ちを落ち着かせ、セイジはズボンと下着を下ろした。少しの解放感を覚えつつディルドを手に持った。上には先日アズマから貰った白のパーカーを身に着けている。
…これを今から入れるのか。セイジはそう思った。そして、どのような体勢をとるべきなのか戸惑った。寝転んで挿入するのか、立ったまま挿入するのか、経験のないセイジには想像がつかない。
「っ…」
身体を屈め、手に持っているディルドを割れ目の下へと動かす。傍からは滑稽な姿に見えるだろうが、セイジは至って真面目である。
―――ガチャッ
「!?!?!?」
玄関の扉が開く音がした。セイジは驚きのあまり、その場に座り込んでしまった。ディルドは割れ目に挿入されなかった。
声はせず、足音が近付いて来る。襖の向こうの廊下に誰かがいるという現状。セイジの鼓動は速まった。
「篠ちゃん、鍵を閉めないなんて不用心だなぁ。泥棒が入ったらどうす……誰?」
「そ、そっちこそ誰…ですか…」
襖が開かれ現れたのは、セイジの知らない、目鼻立ちの整った顔を持つ男だった。
「へぇ~…セイジ君、篠ちゃんと暮らして結構長いんだね」
上品な顔に似合わず、セイジの向かいで胡坐をかいて卓袱台に肩肘をついている男はヨウタと名乗った。セイジが今着ているパーカーは、元々ヨウタがアズマに渡したものである。
「ま、まぁそうだな」
「篠ちゃんって普段どんな感じ? 一緒にお風呂入ったりする?」
「はっ!? 入るワケねぇよ!」
「ごめんごめん……冗談だよ」
距離を測りかねているセイジとは対照的に、ヨウタは笑みを浮かべて飄々とした態度である。
ヨウタはセイジを犯そうとしなかった。けれども、ヨウタの怪しげな雰囲気に、セイジは彼を心の底から信用することができなかった。
「可愛い子と一緒に暮らせるなんて羨ましいな。…でも、良いことばかりじゃなさそうだ」
「?」
ヨウタの視線がセイジの手に注がれていることに気付いたとき、セイジはディルドを持ったままだということを思い出した。セイジの顔が急激に熱くなる。
「あ゛っ!」
「邪魔しちゃったなぁ」
「い、いや…これは…っ」
恥ずかしい。セイジの心はこの言葉で満たされた。そして、保身に走った末に嘘をついてしまう。
「ア、アズマのやつだよ!」
「え、篠ちゃんの!?!?!?」
よほど衝撃を受けたのかヨウタは目を見張った。大きく口を開けていて、先程まで顔に浮かべていた笑みは無い。
「し、篠ちゃんが…それを…」
「そうだぜ…吃驚するよな…」
ヨウタは平静さを失ってしまった。どうか騙されてくれ、セイジはそう願った。
「で、でも…どうしてセイジ君がそれを…?」
アズマの物をどうしてセイジが持っているのか、ヨウタが疑問に思っても無理はない。
「えぁ…っ!? そ、それはっ…ええと…ア、アズマの奴、いつもこれ使ってるからさ…! どんだけ気持ち良いんだって気になって…わ、分かるだろ? お、俺は今日初めてコレ触ったんだぜ!?」
「い、いつも…? こんなに大きなやつを…あそこに…?」
セイジの挙動は明らかに怪しい。しかし、ヨウタは自身が動揺していることもあって、そのことに気付かなかった。
「……………………」
「ええと…」
顎に手を当てて無言で考え込んでいるヨウタにセイジは声を掛けてみたが、返事は無かった。
「…………セイジ君」
「お、おう」
セイジの名を呼んだヨウタの声は、何の感情も乗せられていなかった。セイジの身体に力が入る。
「それ使うつもりだったよね?」
「き、気になったんだよ! しょうがねぇだろ!?」
必死に弁解するセイジに対してヨウタが言ったことは、セイジにとって予想のつかないことであった。
「…そんな玩具じゃなくてさ、僕にしなよ」
布団の上で、セイジはこの上ない幸福感を味わっていた。自身を押し倒すヨウタの下で、素肌が露わになっている。
「ん…ふぅ♡、んあ゛っ♡、んはぁ゛…っ♡♡」
「セイジ君、可愛いね」
「あっ♡、はうぁ゛!♡」
首筋、胸、脇腹…。ヨウタが舌を這わせ甘噛みをする度に、セイジの口から甘い声が漏れる。
口元を手で抑えているセイジを揶揄うように、ヨウタは態とリップ音を立ててセイジの滑らかな肌を吸った。
「や、やめ…っ♡」
セイジの身体が小さく震える。
「お、俺は…っ♡、か、かわいくねぇ…んあっ!♡」
「照れないで…可愛いよ」
「ち、ちがっ…!♡♡」
心臓がうるさい。セイジは今までに感じたことのない心地よさを覚えていた。男なのに、男に可愛いと言われて胸がときめいた。
「し、知らないっ♡、ああんっ…!♡ こんなっ♡♡…はうぅ!♡♡♡ あ、あついっ♡♡」
セイジの身体は火照っていた。割れ目がしとどに濡れ、脚は震える。
「もっと気持ち良くなろうね」
そう言ったヨウタは手をセイジの秘部に添え、指を割れ目の中へと入れた。割れ目はヨウタの手を味わうように吸いついた。
「あ゛っ!♡♡ も、もう…!♡ いけるっ、から゛っ゛…!♡♡♡」
指の動き一つ一つにセイジの身体は歓喜し、快感を脳へと訴えた。弄ばれている割れ目から、水音が部屋に響く。
「こういうのは慎重にしないと」
「ひい゛ッ!!♡♡♡ ぐ、ぐじゅぐじゅってぇっ♡♡…するな゛っ!♡ わ、わざとだろっ♡、んお゛!♡♡…や、やめろっ♡、ばかぁ!♡♡♡」
「はは、ごめん。セイジ君可愛いからちょっと意地悪しちゃった」
「い、いじわるぅ゛…!♡♡」
顔を赤らめ涙を浮かべているセイジにヨウタは微笑み、まるで褒美を与えるかのように、スキンをつけた己の屹立を見せた。
「あの玩具と比べると流石に小さいけど…セイジ君、一緒に気持ち良くなろうね」
ヨウタがセイジの脚を広げる。セイジは既に相手を受け入れる準備が出来ていた。
「お゛ぁ゛っ…!♡ はあ゛ぁ゛ぁ゛!!!♡♡♡♡♡♡」
セイジのナカは咥えこんだものの熱さに蠢動する。ヨウタは挿入してすぐに腰を振らず、セイジの様子を見ていた。それによって、セイジはじっくりと男根をしゃぶり、味わうことができた。
「んに゛い゛ぃ゛…っ♡♡♡」
「セイジ君大丈夫? 痛くない?」
「だ、だいじょうぶ…!♡♡ はやくっ♡、うごいて…っ♡♡♡」
甘い痺れに、セイジの頭は考えることを放棄してしまった。心の底から抱かれることを望んでいて、今すぐにナカを屹立で攻められたかった。
ヨウタはセイジの望みに応え、腰を打ち付けた。
「お゛あ゛っ゛!!!♡♡♡♡」
身体を仰け反ったことで、大きな胸がヨウタへと突き出される。ヨウタは硬くなっている乳房の頂を咥えて舌で転がした。
「ほあ゛っ♡♡、き、きもちっ…!♡ ん、んお゛っ♡、あ゛っあ゛っ…!♡♡♡ そこっ゛♡、ついて♡♡♡、あ゛ぁ゛っ…!?♡♡♡ お、おぐぅ♡、んお゛お゛ぉ゛!♡♡ ひんっ゛…!♡♡ あっ♡、ばちゅんってぇ…ひあ゛んッ!!!♡♡♡♡♡」
涎を垂らし、目の焦点が合わないまま、セイジは絶頂を迎えた。襲い来る激しい快感を逃そうと藻掻くが、背に回されたヨウタの腕がそれを許さなかった。セイジは空っぽになった頭で与えられた甘い刺激を享受する。
「はぁーっ♡、はぁーっ…♡♡」
肩で息をしているセイジに、ヨウタは前髪をかき上げ微笑みかける。
「可愛い」
「はぁーっ…!♡♡ か、かわいぐ、ない゛…っ!♡♡♡」
ヨウタが再びナカを突くと、セイジは艶やかに嬌声を上げた。
布団の中で目を覚ましたセイジは、ヨウタに抱かれている途中で気を失ったのだと気付いた。西日が窓から部屋を照らす。
「んんっ…」
セイジは身体を起こした。吸われた痕はあれど汗や精液は残ってなかった。ヨウタが清潔にしたのだろう。
「あ、セイジ君起きたね。…はい、これ」
台所にいたらしい、エプロンを身に着けたヨウタがセイジに水の入ったコップを渡した。料理をしていたのか良い匂いがセイジの鼻腔を擽る。
ヨウタはしゃがみ、セイジと目線を合わせる。
「…ありがとう」
「どういたしまして。無理させちゃったかな」
「べ、べつに…あれくらい平気だしっ」
「ははは、そう?」
「飯作ってたのか?」
セイジの問いに、ヨウタはお詫びだと言った。
「もう少しで篠ちゃんが帰って来るだろうから、一緒に食べてね」
「お、おう…」
セイジとヨウタの身体の関係は、二人だけの秘密である。
布団を片付け卓袱台を広げて暫くすると、アズマが玄関の扉を開けた。
「お、おかえり」
「ただいま。…ってヨウタさん、来てたのか」
アズマは襖を開け、居間にセイジとヨウタがいることに気付いた。二人は卓袱台の側で胡坐をかいている。
「おかえり篠ちゃん。セイジ君と暮らしてること、教えてくれても良かったのに」
ヨウタはセイジを一瞥した後にアズマへと微笑んだ。
「ああ…」
「ふふふ、『ああ…』じゃないよ。あ、もしかして僕がセイジ君を襲っちゃうと思った?」
「!」
セイジの心臓がドキリとした。アズマに知られたらどうなるのかと不安に駆られる。
「………」
「篠ちゃん否定してよ~」
「は、早く飯食いたい! 俺腹減ったよ…!」
セイジは話題を変えたかった。
その言葉を受けて、ヨウタが立ち上がって言う。
「今日はもう帰るよ。ちょっとこれから用事があってね。…篠ちゃん、ちょっと玄関先まで一緒に来てくれない?」
「? 良いですよ」
居間を出て玄関へと向かうヨウタの後にアズマは続く。
「セイジ、夕飯の準備をしていてくれ」
「わ、分かった…」
そう言われたセイジは台所へ向かい、コンロの火をつけて味噌汁の入った鍋を温めた。
「篠ちゃん…」
帰り際、ヨウタは緊張した面持ちでアズマを見つめる。
「ヨウタさん?」
そんな様子を怪訝に思いながらアズマはヨウタが話始めるのを待った。
「…」
「…セイジが何かしましたか」
「ううん、違うよ。ええと…その…、僕が…」
「ヨウタさんが?」
「僕が…、僕で良ければ協力するから、いつでも相談してね…!」
「…? はぁ…分かりました」
普段は飄々としている男が理由は分からないけれど明らかに動揺している。そのことをアズマは気になったが、ヨウタ本人に理由を尋ねることはなかった。
一方、ヨウタは腕程の大きさのグロテスクなディルドの持ち主が、アズマであると信じてしまっていた。