性欲が秩序を上回った世界でTSしたオレとインポ疑惑のイケメン 作:ぶるきえ
太陽は頂点に至り、時刻は十二時を迎えた。窓からの日差しが部屋を明るくする。
「いただきます」
「おう」
丸い卓袱台の前で胡坐をかいているセイジは手を合わせた。目の前には白米と味噌汁、そして野菜炒めが並べられている。湯気を立てる料理がセイジの鼻腔を擽る。
セイジは箸を持ち料理を掴んで口に運んだ。よく噛んで味わう。
「…うまい」
「そりゃ良かった」
ぼそりと呟いた。セイジの言葉を聞き、向かいに座っていた男は嬉しそうに目を細めた。料理は男が作ったものである。
「あんたは食わねぇのか?」
卓袱台にあるのは一人分の料理である。セイジは男に尋ねた。
「俺あんま腹減ってねぇから」
男はそう返した。
少し時間を遡る。セイジが泣き止んだ後男は布団を部屋の端に運び、代わりに畳んでいた卓袱台を部屋の真ん中で広げた。
『そこ座って待ってろ。姉ちゃん腹減ってんだろ? 飯作ってやるよ』
男の言葉に反応するかのように、セイジの腹が大きな音を立てた。セイジは恥ずかしさのあまり顔を赤らめた。思わず腹に手を添える。
『うおっ…!?』
『ハハハッ、そう気にすんな。ずっと…、外にいたんだろ』
セイジを卓袱台の側に座らせ、男は台所へ向かった。
そして今に至る。無言で食べ続けるセイジを男は卓袱台を肩肘をつきながら見ている。静かな、そして穏やかな時間が流れていった。
「ごちそうさまでした」
セイジは箸を置いて手を合わせた。料理は全てセイジの腹の中である。
「お粗末さん」
そう返した男は肘をつくのを止めセイジに尋ねた。
「なあ姉ちゃん、お前これからどうしたい?」
すぐに答えることは出来なかった。投げかけられた質問がセイジに与えたのは焦りである。
今のセイジには行く当てが無い。
セイジにとって目の前にいる男は希望の光である。今のセイジを女として扱わない、理性のある男。そんな存在にこの先再び出会える可能性など無いに等しいだろう。
このままでは此処を追い出される。追い出されれば犯される日々に戻ってしまう。
一瞬、不特定多数に犯されるくらいならと、目の前の男に自身の身体を売るという案がセイジの脳裏に過った。しかし、その案は確実に男の逆鱗に触れてしまう。
男の問いかけにどう答えれば良いのだろうかとセイジは思考を巡らせた。
「………」
「…どうした?」
男は、俯いて空いた皿を見つめ続けるセイジの様子に怪訝な顔をした。
「おい」
「………」
「おーい!」
「………はっ!!!」
目の前で手を振られ、セイジはようやく正気を取り戻した。
「やっと気付いたか。…で? どうしたいんだよ」
「そ、それは…」
セイジの頬を汗が走る。
「!」
セイジにとって画期的なアイデアが浮かんだ。セイジは少し後退り、勢いよく頭を下げた。
土下座である。
「は…!?」
男は動揺を露わにした。
「お願いします! 此処に置いてください! 家事は出来ないけど、頑張って覚えるから!!!」
頭を床に着けたままセイジは大きな声で言った。
「お願い! ホントにお願い!」
「土下座をやめろ!」
結果はセイジの粘り勝ちである。
太陽は沈み、時刻は十九時を迎えた。閉ざされたカーテンの隙間から家の明かりが外に零れる。
「いただきます」
「お、おう…いただきます」
卓袱台の上の料理を前に、セイジと男は手を合わせた。二人の前には湯気の立った白米と味噌汁が並べられている。
男は箸を持ち、不揃いな大きさの具が入っている味噌汁を手に取ると口へと運んだ。
「…!」
セイジは自身の料理に手を付けず、緊張した面持ちでその様子を見守る。
「しょっぱ!!!」
「ええっ!?」
汁椀から口を離した男の反応に、セイジは驚いた。
「味噌が濃すぎる! セイジお前ちゃんと味見したのか!?」
「い、いや…」
男に尋ねられたセイジは首を横に振った。
夕食の味噌汁はセイジが作ったものである。学校での調理実習以外で料理の経験が無いセイジの腕前がどれ程かを確認する為だと男は言った。
「初めて作ったにしてもこれは酷いぜ…。次作るときは味噌少なめに溶かして、味見してみて薄かったら足していけ」
「そ、そんなに…?」
「お前も飲んでみろよ」
男に言われて、セイジは目の前の汁椀を手に取った。男のものと同じく、形大きさが不揃いの具材が見える。
「おぶっ…!!!」
味噌汁を口にしたセイジはその味に、思わず吹き出しそうになった。濃すぎる。男が言った通り、味噌を入れすぎたせいであった。
「ア、アズマ…これどうしよう」
目尻に涙を浮かべたセイジが男を見て言った。食べられないということを言外に滲ませている。
男の名前はアズマである。土下座していたセイジの顔を上げさせた後にそう名乗った。
「湯沸かしてくるわ。薄めればいけるだろ」
「…ありがとう」
アズマは立ち上がると、台所へと向かった。セイジはその背中を見送る。
「ぐ、具材はどうだ…?」
セイジは味噌汁の中から歪に切られている大根を箸で掴むと、口まで運んだ。
「かってぇ…」
柔らかくなっているのは表面だけで、大根にはまだ芯が残っていた。食べられない程ではないが、明らかに失敗である。
「は、初めて作ったんだからしょうがないよな!」
虚空に向かって弁明をしているセイジを他所に、アズマが薬缶を片手に戻って来た。
セイジが初めて作った料理は、美味しいとは言えない出来であった。それでも二人はきちんと平らげた。
馬があったのか、セイジはアズマとすぐに打ち解けた。
アズマが風呂に入っている間に、セイジは居間で寛ぎながらスマートフォンでオンラインショップのサイトを見ていた。生活用品を揃える為である。セイジは携帯も財布も、女になった日に学校に置いて行ったせいで何も持っていない。その為スマートフォンはアズマのものであり、商品の支払いもアズマがする。
セイジは防護服を調べていた。画面に表示されている防護服のほとんどが頭の先から足の根本までを覆うものである。
セイジは並んでいる画像の中に、学校でよく見たデザインの防護服を見かけた。
『丈夫過ぎて破けない』
そう文句を言っていた友人の姿がセイジの脳裏に過る。その防護服をカートに入れた。
セイジはその後も必要そうなものをカートに入れていった。
「どうだ、必要なもん全部カートに入れたか?」
風呂から上がったアズマが濡れた髪をタオルで拭きながらセイジに尋ねる。
「おう」
セイジは肯定すると、アズマに向かってスマートフォンを軽く投げた。
「よっと…!」
「ナイスキャッチ!」
アズマはタオルから手を離してそれを掴む。それを確認したセイジは起き上がるとアズマが用意した服を片手に浴室へと向かった。
浴室の前にある洗面所でセイジは一糸まとわぬ姿になった。脱いだシャツは近くの籠に入れた。
「うおぁ…」
セイジは洗面台に設置された鏡に映る自身を見た。体つきが大きく変わってしまったことがよく分かる。男だった頃と比べて、背が縮み身体は丸みを帯びていた。セイジが思わず声を零してしまったのはそれだけが理由ではない。今まで散々犯されてきた証が全身に残っていたのである。強く吸われた痕、噛まれた痕、掴まれた痕…。
「くそっ、治ってくれよ」
セイジは乳輪の外側を囲っている歯形を指でなぞった。誰に噛まれたのかは覚えていない。
身体が冷えるのを感じ、セイジは身体を眺めるのを止めて浴室に入った。先にアズマが入っていた為に浴室の中はまだ温かかった。
セイジはシャワーヘッドを片手で持つ。
「ふぅ」
シャワーから勢いよく流れるお湯がセイジの身体を癒していく。湯気で視界が白くなる。
「…んっ♡」
湯が胸の突起に当たりセイジは鼻から甘い息を零した。
セイジは全身に軽くお湯を流した後、ボディソープを手に取った。手の中にある液体からはほんのりと柑橘系の匂いがする。
セイジは足の爪先から丁寧に洗っていった。ふくらはぎ、太ももを経由して下腹部まで辿り着くと、セイジは躊躇いながら股間へと手を運んだ。
「うお゛っ!!!♡♡」
茂みの奥にある女性の豆に触れたとき、セイジは気持ち良さに襲われた。
「んお゛…♡、くふぅ♡♡ あ゛…っ!♡♡ ひんっ!!♡♡」
洗っているだけなのに。セイジはそう思いながらも豆に刺激を与える手を止めなかった。前屈みになりながら更に奥にある割れ目にも手を伸ばす。中に指を入れずに周りだけを擦っていく。
「そこっ゛…!♡♡ んん゛っ゛♡♡ あ゛ぅ、おぉ゛…ッ!♡♡♡」
セイジは自分を焦らしていく。周りを刺激されボディソープとは異なる滑り気が割れ目から溢れて脚を走る。指を中に入れて掻き回してくれと言わんばかりに下腹部が疼いていた。
「もっと♡、おくに゛ぃ゛…!!♡♡♡ ………はっ!」
欲に吞込まれ、割れ目に指を差し込もうとした瞬間、セイジは気を取り戻した。慌てて下腹部から手を離す。ナカが不満を訴えているのを必死に無視する。
「ふーっ♡、ふーっ♡」
気持ちを落ち着かせようと深く息をする。太ももがふるりと震えた。
さっさと洗って風呂から出てしまおう。
そう思ったセイジは水が滴っている胸に目を向けた。硬くなった乳頭がピンと立ち上がっている。こっちも触ってくれと主張しているかのようであった。
再びポンプを押してボディソープを出し、セイジは胸に手を這わせた。かつて男に後ろから揉まれた感覚を思い出した。
風呂から上がり居間へ向かったセイジを迎えたのは一人分の布団である。その側に、アズマが立っていた。なぜか部屋にある物がセイジが風呂に入る前より増えている。セイジは物を避けながらアズマに近づいた。
「お前なぁ…!」
目が合った途端アズマはセイジの両肩を掴み前後に揺さぶった。サイズの大きなTシャツ一枚を身に着けたセイジはされるがままである。
「な、何だよ」
セイジはアズマの様子に焦りを覚えた。味噌汁のこと以外でやらかしたことがあるのかと、考えを巡らせる。
アズマは顔を赤くして眉尻を上げていた。
「お、怒ってる?」
「怒ってねぇ!」
「じゃあ何だよ」
「何だよって……っ!」
アズマは言葉を詰まらせセイジから手を離すと、片手で自信の顔を覆った。その後盛大なため息を吐いた。
「…もういい。お前今日はここで寝ろ」
アズマは足元にある布団を指さした。
「分かった。…アズマは?」
「押し入れの中で寝る」
部屋の物が増えている原因はアズマが押し入れの下段の物を全て出したことだった。一つの布団を二人で使うという選択肢は選ばれなかった。
現代のオンラインショッピングとは便利なもので、布団含めセイジの為の生活用品は明日の朝に届く予定となっている。
「それにしても」
セイジが話を切り出した。
「お前、部屋汚くしすぎだろ。歩く場所無くなるじゃねぇか」
アズマもそう思っていたのか、後頭部を掻きながら少し考える素振りを見せる。
「あー…。よし、明日セイジが片付けてくれ」
「はぁ!?」
「いいだろ、これも家事の一つだ」
そう言われてしまえばセイジは言い返せなかった。