※この作品はR-18です。

性欲が秩序を上回った世界でTSしたオレとインポ疑惑のイケメン   作:ぶるきえ

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第七話 手には身を守る道具が

 身体から熱が引いたセイジは浴室に行きシャワーを浴びる。不幸中の幸いと言うべきか、配達員である男の挿入は未遂に終わった為、身体に湯をかけるだけで良かった。

 

「くそっ、油断も隙もねぇ」

 

 湯の温かさを感じながら、セイジは先程までのことを思い出していた。男は仕事中にも関わらず俺を襲いやがった。気持ち悪い手で自分勝手に揉みやがって…! 柔らかな肌を手で優しく擦る。

 

「……」

 

 怒りとともにセイジが思い出したのは、床に仰向けとなって倒れていた自身を見下ろすアズマの姿であった。

 

『た、たすけっ…!』

 

『おい』

 

『なん…うぐぇ゛!!!』

 

 男に挿入されそうになったときセイジは助けを求めた。まるでその声に応えたかのように、アズマは男を蹴り飛ばしたのである。

 

「…礼くらい言っとかないとダメだよな」

 

 セイジは一人、そう呟いた。

 しばらくシャワーを浴びた後、栓を閉めて浴室から出た。セイジはバスタオルを手に取り、身体を拭いていく。

 

「あ」

 

 十分身体を拭いた後にセイジは思い出した。着替えを用意していないのである。

 

「……」

 

 忘れてしまったものはしょうがない。そう思い、髪を拭き始めた。腕の動きにあわせて重量のある胸が揺れる。

 頭にタオルを巻く方法を知らないセイジは、まだ水の滴る頭にタオルを被せ、身体にバスタオルを一枚巻いた姿で廊下へと出て居間に入った。辛うじて巻くことのできたバスタオルは今にも解けてしまいそうだ。

 一昨日、アズマが押し入れの上段から服を取り出していたことを思い出し、そちらを見た。目当てである押し入れは開いていた。上段にはいくつかの段ボール箱が置かれている。下段にはアズマが寝ていた跡が残っていて、布団代わりに敷いていたらしい生地の厚そうな数着の服には皺が出来ていた。

 

「こっから取っちまえば良いか」

 

押し入れの前にしゃがんで服を物色していると、セイジはふと床が軋む音が聞こえた。

 

「…?」

 

セイジは居間と廊下を繋ぐ扉の方を見た。そこには、信じられないものを見る目をしたアズマがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、結構図太い神経してんな」

 

 炊飯器から米を装った茶碗と温め直した具の無い味噌汁が卓袱台に並ぶ。それを囲んで二人で朝食を食べているとき、アズマがセイジに言った。

 茶碗と箸を両手に、アズマの服を着ているセイジは首を傾げた。髪は乾いている。

 

「んー…、そうかぁ?」

 

「お前さっきまで…。よくもまぁタオル一枚で出ようと思ったな」

 

「ええ? …あっ」

 

 そういえば、まだ礼を言っていない。溜め息を吐くアズマの様子を見てセイジは思い出した。

 

「あ、あのよぉ」

 

「…何だよ?」

 

「えっと…」

 

 セイジが言うのをアズマは待っている。ただ、「ありがとう」と礼を言うだけなのに。セイジは礼を言い慣れていない。

 

「…あ、ありがとう。その、助けてくれて…」

 

 言えた。言えて安心した後、セイジは身体が強張っていたことを知る。セイジは少し緊張していたようだった。

 

「ああそのことか、気にすんな」

 

 むしろ遅れて悪かったなと、礼を言われたアズマは続けた。

 

「ぜ、全然! 全然遅れてねえよ! まだ入ってなかったし!!!」

 

 セイジは大きな声で言う。アズマを励ます為の空元気などではなく、本気でそう思っていた。

 女になってからというもの、挿入が未遂に終わったことは今日の朝まで一度も無かった。行く先々に現れた男達は皆、力の差を良いことにセイジを隅々まで喰い尽くしたのである。

 

「なっ? だからすげぇんだぜ!?」

 

「……」

 

 何故か誇らしげなセイジを前に、アズマは複雑な心境のまま味噌汁を口に運んだ。

 

「あっ、…アズマ、今日のはどうだ?」

 

 どうだとは、料理の味についてのことである。

 

「…昨日よりだいぶマシになってんな」

 

「ホントか!?」

 

 アズマに上達を認められたセイジは上機嫌になって箸を進めた。

 

「やっぱ俺って天才か…?」

 

「マシってだけだからな」

 

 有頂天になっているセイジにはアズマのツッコミが届かなかった。

 朝食を終え、セイジは届いた荷物を開ける。

 

「おお…これが防護服…」

 

 防護服は透明なビニールで梱包され、段ボールの一番上に置かれていた。セイジはそれを手に取って初めてその重さを実感した。

 

「結構ずっしりしてる」

 

「丈夫な分、重いんだろうな」

 

 新品の、それも未開封の防護服はセイジだけでなくアズマにとっても珍しい物だったようで、セイジの手にある防護服をしげしげと見ている。

 

「着てみろよ」

 

 アズマに促され、セイジはビニールの梱包を解いた。やや光沢のある厚い生地の感触がセイジの手に伝わる。畳まれている防護服を床に広げた。防護服は上下が繋がっており、そのサイズはセイジの今の体格よりも一回り大きい。

 

「どうやって着るんだこれ…?」

 

 一見、防護服にはどこにもチャックやボタンが無いように見える。防護服を着た女を犯した経験の無いセイジには防護服の仕組みが分からない。

 

「ん~…?」

 

「おいセイジ」

 

「あ? 何だよ」

 

 考えを巡らすセイジにアズマが一枚の紙を見せた。

 

「説明書付いてたぞ」

 

「おー、サンキュ」

 

 説明書を受け取ったセイジは、書かれている文章を読み上げ始めた。

 

「ええと、『この取扱説明書を男性に見せてはいけません。』、『この取扱説明書に記載されている内容を男性に教えてはいけません。』…」

 

「…」

 

 セイジの言葉を聞き、アズマは無言でセイジに背を向けた。単純な構造ではあっという間に男に脱がされてしまうため、防護服の着脱には複雑な手順を踏む必要があるらしい。

 セイジは説明書を読みながら防護服を手に取った。

 

「どうだ?」

 

 防護服の向こうから聞こえるのはくぐもった女性の声だった。セイジが説明書を見ながら防護服を着ている間背を向けていたアズマは振り返り、その姿を見た。防護服により女性特有の体格は隠れている。

 

「…こんな間近で防護服を見たのは初めてだ」

 

 アズマはそう言い、感心しているようだった。

 

「なぁ触ってみろよ」

 

「は?」

 

「ほら、来いよ」

 

 セイジは両手を広げ、アズマが触るのを待っている。

 

「………」

 

 アズマは緊張した面持ちで恐る恐る手を伸ばし、セイジの鳩尾辺りに触れた。

 

「あんっ♡」

 

「っ!?」

 

 セイジの甘い声を聞いた途端、アズマは勢いよく手を離した。一歩後退ったアズマの様子が可笑しかったらしくセイジは笑っている。

 

「ㇰッ、ハハハ…冗談だよっ」

 

 ほらもう一回と、セイジはアズマの手首を掴んで胸の下へと導く。疲労を顔に浮かべているアズマは再びセイジの鳩尾に手を添えると、今度は力を込めて押した。

 

「……どうだ?」

 

「すげぇ、全然触られてるって感じがしねぇわ。板かなんかを軽く押しつけられてるみてぇ。そっちは?」

 

「何て言や良いか…あー、布越しに段ボールを触ってるような感覚…?」

 

 アズマは良い例えを考えながら、掌で何度かセイジの腹の位置を叩く。その優しい衝撃がセイジの身体を伝わっていった。

 防護服が手に入った。であればすることは一つ、外出である。今朝届いた荷物の中には防護服以外に衣類が無い。どのサイズを購入するべきか分からなかったせいだ。

 

「なぁここら辺ってデパートとかないの? 俺服だけじゃなくてブラとかパンツとかも無いんだよね、サイズ分かんなかったし」

 

 防護服から顔だけを出したセイジがアズマに尋ねた。

 

「買わなかったんだな…いや、まぁそれは仕方ねぇ。デパートなら電車で一本で行ける所にあんぞ。防護服あるし今日行くか」

 

 金は出してやると、アズマは続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 簡単な支度を終え、セイジとアズマは外へ出た。青い空には白い雲が点々と見える。二人は最寄り駅に向かって歩き始めた。隣にアズマを連れ防護服を身に纏っているセイジに町中の男達は視線を向けはするものの、犯そうとはしなかった。セイジは内心、そのことに感動を覚えた。対し、ジロジロと見られているせいでアズマの眉間には皺が出来ている。

 セイジは顔をアズマに向けた。

 

「防護服ってすげぇな…着てなかったら俺、絶対犯されてるもん」

 

「…そうだな」

 

 アズマの眉間の皺がより深くなったことを、防護服のせいで若干視界が狭まっているセイジは気付かなかった。

 最寄り駅に着き、セイジは券売機で買った切符を、アズマは自身のICカードを使って改札を潜る。そして、ホームに降りたと同時に到着した電車へと乗り込んだ。

 

「何駅くらいあんの?」

 

「こっから七駅」

 

「ふーん」

 

 車内はほどほどに混み合っていて、二人は手摺りや吊革を持ち揺られていた。セイジの様に防護服を着た女が数人、同じ車両に乗っている。

 

「…」

 

 セイジは防護服越しにアズマの様子を眺めていた。アズマはそれに気付かず、車窓に見える景色へと目を向けていた。

 こいつ結構顔整ってんな…。Tシャツにジーパンだけなのに様になってんじゃねぇか。

 セイジはアズマを見てそう思った。その感想を本人に伝えるつもりはなかった。

 目的の駅に到着したことを車内アナウンスが知らせる。ドアが開き、セイジとアズマは電車を降りた。

 

「んお゛お゛ぉ゛ぉ゛ッ!!♡♡ あ゛…ッ、ぅはぁ゛ッ♡♡♡、お゛ぉッ♡、や゛ぁ゛ッ…っ!♡♡ み、み゛ぢゃ…!♡♡♡ みな゛い゛でぇッ!!!♡♡♡ い゛ぁ…ッ!!♡ ひ、ひろげっ♡、ひろげない、でぇ゛!♡♡ あ゛んぅ゛ッ♡♡、え゛…ッ♡、んお゛ほッッ!!!♡♡♡♡♡」

 

「おらッ! 利用者様に挨拶しろ!」

 

「お゛お゛…ッ!!!♡♡♡ ほんじづはぁ゛♡♡ わ゛ッ…♡、わだしのぉ゛!!♡♡♡ お゛ッ、おまん゛、ごをぉ…んあ゛ぁッ!♡ はっ、はげしッ…!♡♡♡ んぎ゛ぃ!♡♡ ごりよ…ッ♡♡、い゛んッ♡、ごりよっ♡、い゛ただぎィ…ほぁ゛ッ!!♡♡♡ あ゛、あ゛!♡♡ あ゛りがとう゛♡、ございましゅう゛う゛ぅ゛ぅ!!!♡♡♡♡♡」

 

「こ、こんなサービスがあるなんて…」

 

 別の車両から最早絶叫と化している嬌声が聞こえたのを、セイジは気のせいだと思いたかった。

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