天雨アコが先生とえっちして負けちゃうお話
本作品はpixivにも投稿しています。
「お疲れ様です」
そう言ってデスクにちょうど淹れたてのコーヒーカップを置くと、彼は眉を上げながら私を見た。大方、私がそういったことをするのが意外だったのだろう。
「昼休憩、とらないんですか?」
「ああ、ありがとう。有難く頂くよ」
「そんなに意外ですか?」
「まあ、うん」
確かに、彼にコーヒーを淹れたのは初めてだった。いや、厳密には二度目だ。一度目は、彼とほとんど初対面の時に良好な関係を築くための社交辞令的に淹れたものだ。つまり、彼を労ってという意味で入れたのは一度目と言える。
こうした心境の変化には、あの事件が少なからず関係している。キヴォトス終焉の危機、私もその全容を把握している訳ではないが、彼の活躍が無ければこのキヴォトスは失われていた、というのは決して過言ではない。
「たまには優しくしておこうと思いまして」と私は笑顔を作って彼に向ける。
「いつもそうしてくれると嬉しいよ」
「ふふ。ああ、そういえば」と、それとなくを装って彼に聞く。「脱出シーケンスを使わなかったとか」
彼はあの時、脱出シーケンスを使わなかった。いや、これも正確な言い方ではない。厳密には他の人に使ったそうだ。彼が脱出シーケンスを使ったあの女性について詳しいことは知らないが、例え先生という立場であっても、生徒のためなら文字通り命を捨てられるものなのだろうか。
「そうだね、結局私は助かったけど」
「裸で落ちてきましたね」
「仕方ないでしょ、服が焼け落ちたんだから!」彼は頬を赤らめて反駁した。
「どうしてそんなことをしたんですか?」
答えは分かっていた。どうせ、「助けるべき生徒がいたからだよ」とか言うのだ。私が聞きたいのは、どうしてそこまで自己犠牲を貫くのか、ということなのに。そして彼は私の質問の本意に気づいているはずなのに。
「助けるべき生徒がいたからだよ」
「はあ」と一つ大げさにため息をつく。「そういう人でしたね」
◯
脱出シーケンスが予定通り作動していると分かったとき、安堵しながら空に浮かぶ赤い構造物を見上げていた。次々に地上に転送が完了したという知らせを受けて、作戦は成功したのだ、と心底安心した。
ミレニアムのリオさんの声色が変わったのは、私が転送されてから二分と十秒後の事だった。
「先生が転送されていないわ!」
悲鳴に似たその言葉を皮切りに、キヴォトスは文字通り阿鼻叫喚の世界になってしまった。泣き出したり、パニック状態に陥る生徒までも現れた。もしもその数分後に彼が何かに保護された状態で落下してきているという情報が入らなければ、後戻りできない事態になっていたかもしれない。
「自己犠牲もいいですが」と私は彼に言う。「もう少しご自分の立場を考えてみてはどうでしょうか」
「心配してくれたの?」
「ええ、多少は」
あれを多少とは呼ばないだろう、と自分を見つめ直して思う。斯く言う私も取り乱し、呼吸が乱れ、喉の浅い所まで何かが差し迫ってくるような感覚を覚えている。視界から色が抜け落ち、テレビの砂嵐のようになってしまった。気がどうにかなってしまったようだった。
「ありがとね」彼はヘラヘラと笑って言った。
◯
性的な疼きを覚えたのは、休憩を終えて午後の業務に取り掛かり始めた時だった。しばらく休む間もなく動き続けたせいで発散する時間が無かったのが主な原因だろう。まともな休暇など、もう一ヶ月もとっていないかもしれない。
考え始めると、途端に頭のほとんどを支配して離れなくなる。ニップレスをしているから、乳首が浮き出る心配は無いはずだが、それでも心配になって確認してしまう。
「どうしたの、アコ」
「な、何ですか? ご自分の仕事に集中されては?」
向かいに座る彼が怪訝そうな目で私を見つめる。何もおかしな所は無いはずだ。逸りだす心臓を抑えながら座り直す。
(……っ!?)
彼には聞こえないくらい小さな音しか立たなかったのは幸いだが、その違和感は不快感となって股下から全身に巡った。座り直した時、股が湿っている感覚があったのだ。これはつまり……
恐る恐る、なるべく自然に左手をタイトスカートの中に忍ばせる。そして人差し指の先だけが触れるようにショーツまで伸ばす。
予想通りだった。ショーツが少し濡れていた。怪しまれないようにすぐ左手を戻してしまったから、具体的にどれだけ濡れていたかは分からないが、おそらく少しだけのはずだ。
「すみません、少し外します」
一言断って、一心不乱にトイレへ駆け込む。個室に入り、スカートを脱ぐ。
「ぁ……」思わず声が漏れてしまう。
薄水色のショーツが、色が変わるほど濡れてしまっていた。クロッチの部分は、もはやその布が元々その色だったのではと思うほどに大きく染みて、濃い青に変色していた。
(……っ、どうして)
一ヶ月程度休暇が取れておらず、つまりその間発散する機会も無かったのは事実だが、しかしどうして今になって一気に性欲が溢れてきたのか分からなかった。性欲について考えるほど余裕がなかった、というのも一因ではあるだろうが、ここ一週間はある程度時間があったのだから、その間に発散しようという気になるはずだ。
家にいるときは気にならなかったのに、どうして……
(……っ)
思い当たる原因があった。しかしそうだと認めるのが癪で、他に原因らしいものを考えたが、考えればかんがえるほどにそうでしかないと思えてくる。
原因はきっと、彼だ。
(なんですか、それ)
腹が立つ。
(彼のことが好き、みたいじゃないですか)
実際そうであることなんて、とっくに分かっていた。
◯
替えのショーツなんて当然持っていないから、トイレットペーパーで染みを拭うのが最大限の応急処置だった。あまり長過ぎると変に思われかねないから、急いでオフィスに戻る。彼は黙々と仕事をしているようだった。
私も冴えきらない頭で残りの仕事を再開する。なるべく性欲のことは考えないように、矢継ぎ早に作業にかかった。そのせいか、随分と早く仕事が終わってしまった。早く、と言っても比較的という話なので、夕陽が窓から差し込む時間帯だ。
「お疲れ、早いね。私はもう少し掛かりそうだから、帰ってもいいよ」彼は忙しそうにしながら言った。
「いえ、手伝いますよ」
どうしてそんなことを言ったのか分からなかった。早く帰って発散したいと散々考えていたのに、どうして彼を待とうとしたのか。期待してしまっている無意識が、隙をついて口にしてしまったのだ。
「助かるよ、こっちお願いできるかな?」
「はい」
書類を渡される時に、彼の手が触れる。私より大きくて、骨太く優しい指。例えばその指で触られたら、どれくらい気持ちいいのだろうか。
ふと、降って湧いた妄想が頭を支配した。
「アコ?」
「……なんでもありません」
やっぱり、帰るべきだったと後悔しても遅かった。
◯
彼に任された仕事が終わる頃には、私はすっかり限界になってしまっていた。考えないようにしても、脳に根を下ろした様に淫靡な妄想が流れ続ける。
少し足を動かすと、確かな水音が小さく聞こえる。触らなくても、もうショーツが粗相をしてしまったくらい濡れそぼっているのが分かる。
「お疲れ様、アコ」彼が私の横まで書類を受け取りに来る。
「先生も、お疲れ様です。どうぞ」
精一杯平静を装って、仕事を終える。やっと帰れる。開放感と安堵感に身を包まれながら、長い性欲との戦いに終止符が打たれる喜びを噛み締めていた。
その時、
「アコ、具合でも悪いの?」
「へっ、い、いえ」
「でも、少し赤いよ」
そう言って、彼は私の椅子のすぐ側まで歩み寄って来てしまう。
(待って、来ないで)
匂いが届いてしまうかもしれない、と考え始めると、予兆もなく心臓が逸り始める。万が一匂いを嗅がれてしまえば、私が仕事場で股を濡らしていた事がバレてしまう。
しかし彼は、そんな心の中の拒絶を他所に距離を詰めてきてしまう。
「ちょっと失礼」
彼の掌が、私の額にあてがわれる。自分の額の温度と比べているようだ。私や、他の生徒より一回りは大きな手だ。少し骨ばっていて、決して触られ心地が良いとは言えないはずなのに、私はどうしてか理性をどろどろに溶かされてしまったかのようになってしまった。
「ひゃっ……!」
くらり、と眩んで椅子から落ちかけてしまった。咄嗟に彼が支えてくれて、尻もちをつくことは無かった。
「えっ」と頓狂な声を出したのは彼だった。
どうしたのだろう。私は病熱を孕んだ眼で、彼の目線の先を辿る……
「っ?!」
冷水を掛けられたように頭が冴え渡る。椅子に引っかかって、スカートが捲れていたのだ。慌てて戻すが、時すでに遅しだった。私のショーツが見えるには十分な時間と捲れ方だったし、そもそも彼はそれを見たから頓狂な声を上げた訳で。
「……あの」
「ごめん。そういうつもりじゃ無かったんだ」
彼はひどく申し訳無さそうに、私から距離を取って頭を下げた。
「い、いえ……その」
濡れたショーツが意味することが分からない彼ではないだろうが、それでも誠実に謝る彼の姿に、恋慕のような感情が芽生えてしまう。
「み、見えました、よね?」
「……うん、ごめん」
「その、……どこまで」
「えっと」彼は本当に困った様子で、目線をあちこち泳がせながら答えた。「……全部、かな」
顔が赤くなる。ショーツの色も形も、濡れていることも、もしかしたら濡れているせいで透けて見えたのかもしれない。彼が恥ずかしそうにするから、私も余計に恥ずかしくなってしまって、お互い何も言えない時間が一分くらい続いた。
「すみません、先生」と私が口を開いた。「シャーレに、雑念を持ち込んでしまって」
「……いや、大丈夫だよ。その、年頃だもんね」
こんなに言葉が出てこない彼は初めて見たかもしれない。いつもすらすらと口からでまかせを言っているとは思えない、舌の回らなさだった。
一方的に私が悪く、彼は完全な被害者だと言うにもかかわらず、あるいは清々しいくらいにそうだからか、段々と彼に腹が立ってきた。二人きりの空間で、ハプニングからであってもショーツが濡れているのを見てしまったのなら、襲ってくれてもいいのではないだろうか? 襲わずに、「年頃」と言って大人の余裕を見せつける彼を、逆に襲ってしまおうかとも考え始めていた。
「先生のことを考えていたら、こうなってしまったんです」
「あ、アコ?」
「最後まで、教えてくれないんですか?」
なるべくいやらしく、彼を誘惑するように言う。流れに任せて、彼に媚びる。彼が喉仏を大きく上下させて唾を飲み込んだのが見えた。息が上がってきて、部屋の温度が上がったのか、身体も熱くなってきた。
「どういう意味で言ってるか、分かってるの?」
「はい。知らない訳、ないじゃないですか」
「……休憩室に行こうか」
「……はい」
また、ショーツに染みを作った感覚があった。
◯
休憩室に入るのは初めてだった。そもそもここは休憩室と銘打たれているだけで実質的には彼の家だという話を聞いたことがあったから、おそらく私以外の生徒も入ったことはないのだろう。オフィスとは異なって、乱雑にものが置かれていたり、着替えがベッドの上に投げ捨てられていたりとあまり綺麗な状態とは言えなかった。電気は付けないまま、ベッドに腰掛ける。
「アコ、本当に良いの?」
「……はい」
「流されてない? 後悔しないかな?」
そうやって何度も聞くのは、きっと彼の優しさなのだろう。そういう人だから、好きになってしまったんではないですか、とは言わないが。
「しませんから、お願いします……」
◯
彼が枕元のチェストの、三番目の引き出しを漁ると絆創膏の箱のようなものが出てきた。コンビニで見たことはあったし、資料としても知っていたが、実物を見るのは初めてだった。
「コンドーム、ですか」
「うん。一応、ね」
「他の生徒ともこういうことを?」
彼はその箱を開けながら言った。
「見ての通り、新品だよ」
◯
いつも彼が眠っているからだろうか、シングルベッドには彼の匂いが染み付いている。布と、汗のような匂いだ。嗅いでいると、下腹部にぬるま湯が掛かるような感覚がする、危険な薬のようでもあった。
どちらからともなく、私達は上着を脱いで、それを簡単に畳んでベッド横に置いた。彼はシャツ一枚で、胸のあたりが開けている。
「……アコ、さ」
「何ですか?」
「結構濡れてたよね」
「っ、……はい、そうですが?」
「見せてくれる?」
彼は優しい手付きで、私のタイトスカートのホックを外した。隠していたものが取り払われてしまうと、ショーツが丸見えになってしまう。反射的に隠そうとする手を、彼が抑えた。
「変態」と私はささやかな抵抗として言った。
「どっちがかな」
「ひゃぅっ?!」
突然触られて、身体がびくりと驚いた。彼の人差し指が、ショーツ越しにちょうど私の秘部をなぞったのだ。自分で触れるのとは比にならない、異常な興奮による性感が火花を散らす電撃のように全身を駆け巡った。
「こんなに濡らしてるアコの方が、変態じゃないかな?」
彼の目が、満月に反応する狼のそれのようにぎらりと妖しく光った。
「っ! うるさいですね」
◯
いつの間にか、私の身につけていた衣服は一枚残らず取り払われていた。自然に彼に脱がされて、私は文字通り裸にされて彼のベッドの上に横たう。
まだシャツを着たままの彼が、上から順にホダンを外してそれを脱ぎ捨てた。
「触るよ、アコ」
耳元で囁かれると、脳みそに直接響く。宣言通り、私を膝の間に座らせて、後ろから胸を触られる。
他人に比べて胸が大きい自覚はあった。ただそれだけでなんの役にも立たないと思っていたが、彼にとってはそうではないようで、執拗に胸を責め立てられる。私が一方的に楽しんでいる訳ではないようで、少し安心した。
胸を鷲掴みにしてみたり、指先で優しくなぞるように触れてみたり、やり方は様々だった。しかし、一向に乳首を触る気配がない。その周辺をなぞるように触るくせに、乳首には手を出さないのだ。
「ぁあっ……んっ♡ くぅっ♡」
嬌声が漏れてしまう。秘部も乳首も触られていないというのに、どんどん愛液が分泌されて、シーツを濡らしてしまう。
乳首に触れて欲しい、近くに当たった時に一瞬期待させて、すぐに遠ざかって裏切られる。早く乳首を摘んで、滅茶苦茶な刺激で満たして欲しい。
「んんっ♡ ぁぁ゛ぅっ……♡」
どうして、乳首に触らないんですか。何度も何度も最高潮まで昂ぶらせる癖に、そこで止めるなんて。
「っ……♡ ぁん、ん……、っ?! イぐっっぅ♡♡♡」
突然のことだった。彼は両方の乳首を同時に摘み上げ、こねくり回した。一気に刺激が流し込まされ、股がぐちゅぐちゅと音を立てる程愛液が漏れ、当然のように絶頂した。頭がぱちぱちと弾ける。
乳首を弄るだけで、こんな快楽が流れるなんて想定していなかった。
「イっちゃった?」彼がいたずらっ子のように聞いてきた。
「……いえ、まだ満足してないので、続けて下さい」
意地を張ってしまうのが、私の癖だった。
◯
「そろそろこっちも触っていいかな?」
彼はそう言うと、右手の掌を私の秘部にあてがった。その掌が私の秘部を隠しているような、守っているような感じになってしまって奇妙だった。実際にはこれから執拗に責め立てられるというのに。
陰毛も、しとどに濡れたせいで湿っていて、いやらしい匂いを漂わせていた。体温の上昇のせいで蒸れてしまっているのが、余計に恥ずかしい。
彼はそんな事お構いなしに、右手の人差し指を私の秘部の入口で滑らせ始めた。
「ぁっ……ん、ぅっ♡ っぅん♡」
雄を誘うための、動物の鳴き声のような嬌声が狭い部屋に響く。まだなぞっているのと変わらないくらいのはずなのに、絶頂がすぐそこまで来ていた。
「もうイきそうなの? アコ」
そう言われると、意地でも絶頂してやるものかと対抗心が燃えてくる。確かに恋い慕う相手に触られる快感は凄まじいものだが、この程度で絶頂してしまうのは、自分が淫乱であると認めているようで悔しくなる。余裕を崩さず責め立てる彼に一矢報いてやろうと、絶頂しないよう秘部から昇ってくる絶頂感をせき止めようとした。
「イっ……♡ っんぁぁっ、ぐっぁっ♡」
(イかない、イかない、イかないっ♡)
彼の指が、私の腟内を探り回るように動く。
(……ぁっん?! そこっ♡ そこ、ダメぇっ♡)
日頃自慰で触る所に指が当たり、抑え込んだ絶頂感がなだれ込もうとしてくる。なんとか身体を捩って彼の指から逃れようとするが、彼は容赦なく私の弱点を追尾してくる。
(無理っ♡ そこダメですっ♡ だ、ダメっ……あ、あ、あっ♡)
ぷしゅ、という情けない音が立ち、それからせき止めていた快楽の分だけ潮を吹き散らしてしまった。びしょびしょに濡れた陰部がぱっくりと開き、彼のベッドが水浸しになっていく。
「あっあっ、ダメっ♡ ダメッ……! っぅ♡♡♡」
途中で止めようとしても、だらしなく開いた陰部はもはや自分の力で締めることができず、両手で抑えつけても指の隙間から吹き出し続けてしまう。
「派手にイったね、アコ」
私が潮を完全に吹いてしまってから、彼は苦笑いしながらそう言った。誰のせいだと思ってるんですか、とは言えず、私は恥ずかしさに身をよじることしかできない。
彼の陰経は、ズボンの上からでも分かるほど主張しており、今すぐにでも私を犯そうとしているようだった。そして自分でも恐ろしいことに、あれ程派手に絶頂してなお、性欲が解消されきっていなかった。
「……挿れて下さいよ、もう、限界なんじゃないですか?」
「うん、これだけ濡れれば大丈夫そうだね」
◯
ズボンを脱ぎボクサーパンツも降ろすと、彼の陰経が露わになった。比較対象を見たことはないが、平均よりも大きいことは分かる。血管が浮き彫りになり、私を犯すために硬くなっている。その事実が、落ち着いてきていた性欲を再び奮い立たせてしまう。
彼に言われるまま四つん這いになる。その間に彼はコンドームをつけた。腰を抑えつけるように掴まれて、彼の陰経が、私の陰部にあてがわれる。
「じゃあ、挿れるよ」
「分かりましたから……早く」
ゆっくりと、腟内を蹂躙するように侵入してくる感覚だった。手で弄ばれた時に触られていた所が全て、同時に刺激されてしまう。ゆっくり動いてくれているお陰で何とか意識を保てているが、激しく動かれてしまったら――想像するだけで、腟が濡れるから恥ずかしい。
ぷつ、と音を立てたような気がした。これが破瓜の音というものなのだろうか、じんわりと訪れる痛みを感じながら、彼に動いていいと伝え、そして完全に奥まで入ってしまった。もう痛みは引いていて、弱い快感がずっと続いている。
「少し、待ってください……慣れるまで」
「うん、無理しないでね」
どうして変な所で紳士的なのか、行動の一貫性が無いような気がして腹が立つ。私は今も彼が微動するせいで与えられる快感に耐えているというのに、彼は余裕そうな声音なのが癪だ。
腰にあてがわれた彼の手が、するすると滑り胸を触ってきた。
「なんですか、そんなに胸がお好きですか?」
「まあ、アコの胸は魅力的だしね」
「胸だけですか?」
「あはは、胸もって言えば良かったかな」
「……そろそろ動いても大丈夫ですよ」
その合図で、彼はゆっくりと抜き始める。
(これっ……♡ これ、だめ♡ めくれるっ♡)
腟内が捲れるような、理不尽な快感だった。少し抜き、そして挿し込まれると、電球を割ったような音と共に脳が揺れる。快楽を伝える信号が過剰に流し込まされてショートするみたいに。
「あんっ!♡ っん♡ あっ♡」
自慰行為では決して届かない、膣の奥深くまでノックするように抉られる。指で触られた時に、少しだけとはいえ絶頂を我慢することができたのは、彼も本気ではなかったからだ。今更力の差を思い知らされて、私は情けなく彼から与えられる刺激に醉がるしかなかった。
「あぁぁっ♡ アんっぅ……くぅぅっ♡」
いつも人畜無害といった人当たりの彼が、今はそんな素振りも見せず乱暴に腰を振っている。獣のような、正しく交尾と呼ぶべき性行為だった。
(イきそう……イっ……♡)
「アコ、イきそうでしょ」
突然、彼が腰の動きを止めてしまう。既の所で絶頂をお預けられた私の秘部は、足りない刺激を補うように彼の陰経に吸い付いた。
絶頂しそうなのは紛れもない事実だ。これほど秘部を濡らし、下品に喘いでいたのだからそう見えるのも当然だろう。しかし、まるで自分が優位に立っているかのような口ぶりで彼にそれを指摘されるのは屈辱的だ。
「先生こそっ、止めてよかったんですか? もう、イきそうですよね」
「いや、せっかくだから、向かい合った体位でしたくて」
彼は一度膣から陰経を抜き取ってしまった。さっきまで満たされていた下腹部が、穴が空いたように感じる。刺激が足りない。
今度は彼と向かい合うように座り、抱き合うようにしながら再び繋がる。彼の身体が正面から見えて、私との差異に少しどきまぎする。平坦な胸板だが、少し筋肉が付いていて魅惑的だ。骨格から、私や生徒たちとは違うのだ。
「動くね」
(はうっ……んっ♡)
顔も、間近に見える。お互いの呼吸の音も混ざり合って聞こえる。お預けされていた刺激を与えられて、すぐに絶頂しかけてしまい、慌てて膣に力を入れる。油断すれば、すぐに潮を吹いてしまいそうなほど、絶頂感が高まってしまっていた。
「可愛いね、アコ」
「余裕っ、ぶってるのも……今のうちだけですよ!」
私も彼を抱き締めるながら、身体を前後させる。予想外の刺激が加えられて驚いたのか、彼が小さく嗚咽を漏らす。
(イっ、イって下さいっ♡ 私よりっ……先にぃっ♡♡♡)
しかし予想外の刺激が加えられたのは私も一緒で、秘部がびくびくと動いているのが脳に直接伝わってくる。そこに打ち付けられる彼の陰経の形を、脳と膣が覚えてしまう。
「アコっ……! もう、出そうっ」
よし、と心の中でガッツポーズをする。彼を先に絶頂させられると、優越感が込み上げてくる。爆発しそうな絶頂感を何とか抑え込みながら、ラストスパートと言わんばかりに腰を振る。
「あっ、あっ♡ んんっ……! イっ♡ ぐっぅ♡」
(イっちゃダメっ♡ 絶対っ、先に♡ イ゛ィっ♡♡♡)
「ひゃぅっ?!♡♡♡」
その時、膣からではない別の刺激が脳に流し込まれた。乳首を摘まれてしまったのだ。完全に秘部に意識を集中させていた所から、青天の霹靂の一撃が加えられて、意識は一気に胸の先端に持っていかれた。
コリコリと両方の乳首を遊ばれて、胸に意識が向いたと思えば、今度は膣がじゅぶじゅぶと下品な音を立てながら抜き挿しされる。
(そんなのっ♡ そん、なっ♡)
全身の弱点という弱点を、余すことなく同時に刺激される。性行為でしかなし得ない、暴力的な快楽が脳みそまでも犯していく。
彼に勝つことなど、最初から不可能だったのかもしれない。私がどれだけ策を講じて彼を絶頂させようとしも、彼の陰経はそんな小手先のテクニックを無視して、私の腟内の弱いところを根こそぎ持って行ってしまう。さらに、乳首までも彼が自由に弄くってしまう。私の身体は、彼に逆らえないのだ。
「イ゛っっ、ぐぅぅぅっ♡♡♡」
高速で膣が痙攣して、意識が飛かける。彼の陰経が詮をしている隙間から、敗北の証のような潮が粗相のように漏れてしまう。情けない顔も、腫れるように勃起した乳首も、無様に潮を吹くことしかできない秘部も、全て見られながら、これまでの人生で一番深い絶頂を迎える。
「お゛っ♡ ぐっぁっっ♡」
(く、来るっ♡)
それからすぐに、彼の陰経がさらに膨張し始め、コンドームの中に射精した。薄いゴム膜なんて突き破ってしまうのではないかと思う程強く、豪快な射精だった。
◯
二人ともしばらく絶頂の余韻に浸ってから、雨でも降ったかのように濡れているベッドを洗濯機に入れた。ついでに私のショーツも一緒に洗濯することになった。
「にしても、凄い濡れてるね」
洗濯機に入れる前に、彼は私のショーツをまじまじと見ながら言った。性行為をしている最中よりもよっぽど変態的だ。
「見ないでくださいっ! 変態っ!」
彼からショーツをひったくって、洗濯機の中に投げ込む。
「はは、アコも十分変態だったでしょ。最後先にイっちゃうし」
「イってませんが?! 貴方との性行為でそんな」
「アコ気づいてなかったの?」
「何がですか?!」
「イくときヘイロー点滅するの」
指摘されて、恥ずかしさがピークに達する。絶頂する時にヘイローが点滅するなんて聞いたことも無いが、していなかったとは断言できない。快楽で意識が飛びかけていたから、もしかすれば私の絶頂は彼に筒抜けだったのかもしれない。
「……っ!」
「またお願いできるかな?」
「また性行為したい、ということですか? 全く、性欲あり過ぎです」
「嫌ならいいや」
「嫌とは言ってませんが?」
何回やっても、きっと彼には勝てないのだろう。しかし私は、そういう行為に期待してしまっていた。