始まります。新しい世界を、ごゆっくりご覧ください。
ある男の話
ある世界にて。その者達は、野望を胸に次元を超えてきた。自分達の計画に邪魔な者達を、この世から消すために……
「……計画実行は、この世界が最適なのだな?」
「えぇ、環境も十分……我らの計画にはピッタリの場所です。様々なことを吟味し、この世界の環境が最適だと判断しました。数ある分岐世界の1つに……こんなものがあるとは」
「忌々しい奴らのいない世界……『死した神』を蘇らせられれば……奴らであろうとも、死は免れない!!」
そう呟いて、準備を始めた。自分達の敵を全滅させるために。
「準備はいいな? ヘマをするなよ」
「お任せ下さい。これと、こいつがいるのに……負ける道理は無い」
「それもそうだな……健闘を祈るぞ」
電話が切られて、四角いもの……『カードデッキ』を握りしめた男が笑う。その後ろには鏡を引っ掻くような音と……人型の、蟹の化け物が立っていた。
……突然だが、俺は覚えてもらう必要性は全くない人間だ。特別な力も持ってない、魔法も使えないし体だって強くない……そんな俺だが、今日は人生で最大のいいことがあった。なんてったって……
「ホロライブ学園、合格……! やった、やった!!」
思わずニヤけてしまう。超有名な名門校だ、その上成績がよければ企業が目をつけてくれるオマケ付き……受けるだけ受けてみよう。そう思って、苦手な勉強を頑張ってみたら……なんと合格できた……運を使い果たしたかもな。
「血反吐吐いて努力したわけではないが……勉強すればいけるもんだな」
何なら努力は嫌いまである。そういうのは好きな人間がやればいいんだ……なんて考えてたら、家に着いた!
「母さん、父さん!! 俺はやったぞ~!!」
そう叫んだ瞬間、これ以上ない程の歓喜が家を埋めつくした。『雪村康太 おめでとう』と書かれた垂れ幕がある……わざわざ用意したのか。
「やったねぇ、康太!!」
「お前ならやれるって信じてたぞ、俺は!!」
「『絶対無理だからやめとけ』とか言ってたのはどこのどいつだ」
まぁ……今の俺は気分がいいし、過去のことは水に流すとしよう。
「わ、悪かったって……」
「今日はごちそう作るよ、パパも手伝って!!」
「俺も手伝うよ!!」
料理の時はこうやって、三人で役割分担する。そうした方が早く済むし……親孝行はしとかないとな。
「はい、唐揚げ!!」
「米研いだよ!!」
「スープはできた!!」
気分がいいと、家事も捗る。美味い飯を食って、洗い物をして、風呂入って寝る……それだけなのに、今日は特別だ。だって、1ヶ月後が楽しみで仕方ないんだもの。
「今から楽しみで眠れないな……」
遠足に行くんじゃないんだぞ? 自分で自分にツッコミながら……その日は結局、2時まで眠れなかった。
次の日から、俺は特に何もしてなかった。それもこれも、軍隊や警察が日々努力して平和を保ってくれているからだ。感謝感謝、俺はその平和を謳歌します。何もしないでいいのが一番だ。
「ちょ、ちょっと……やめてってば!!」
「いいだろ姉ちゃん、俺達と一緒に来てくれよ!」
「楽しいところ行こうぜ?」
……女の子が変なやつに絡まれてる。だが……俺は助けられん。助けに入る力もないし、怪我したら困るし……警察に言っとくか。それくらいはしないと、寝覚めが悪い。そう思って、スマホを操作していると……
「もしもし、警察ですか……って、あ!! スマホ!!」
「何やってんだよ、お前? 俺達が気に食わねぇからってサツにチクるなんてよぉ……」
「正義の味方気取りで楽しいかい?」
やっべ、スマホ盗られた……! 路地裏に引きずり込まれる。
「おい、返せよ!」
「なんだコイツ、トロいぞ!!」
「ちょっとは鍛えとけよ~」
スマホに手が届かない。くそ……!!
「返せっての!!」
「誰が返すかよ!!」
「うぐっ……!!」
殴られた、痛い……この野郎、やってくれたな。
「その目はなんだ? 弱っちい癖にやる気か?」
「身の程知らず野郎め……」
「この、くそったれ!!」
思いっきり殴ってやった……つもりだった。奴は全く痛くなさそうだ……おいおい。俺、弱すぎんだろ。
「グヒヒ、こいつ弱ぇぞ……? おい、やっちまえ!!」
「ぶっ……!!」
「へへっ、悔しかったら取り返してみろよ?」
掴んでも、力が足りない。俺ってこんなに弱かったのか……
「ほれほれ、悔しいか? ん?」
「ぐ、ぎぎ……!!」
「弱いやつが生意気な口……利いてんじゃねぇ、よ!!」
痛い。力の差がありすぎる……これが、恐怖か。親父の雷よりも、ずっと怖い……体が震える。手が動かなくなる……
「こいつ震えてんぞ、情けねぇなぁ……」
「怖いか? しっこちびりそうなのか? ヒヒッ、いい気味だぜ!!」
「あ、ぐ……」
骨が折れたのか、腕が動かない。周りを見てみると、市民達は俺を横目に通り過ぎていっていた……俺と同じだ。普通の人間は……苦しんでる人を助けようなんて、思わない。思っても行動には移さない……自分が殴られるかもしれないから。当然だ……
「おい、お前あの子を連れてけ! 俺はしばらくこいつボコるよ!」
「おう。じゃあこっち来い、楽しいことしようぜ?」
「や、やだ……助けて……!!」
何発も殴られている内に、意識が無くなってきた。これが……力の差か。俺は死ぬのか? それは嫌だ……だが抵抗する手段がない。
「終わりだ、死にやがれ!!」
「待て、警察だ! 動くな!!」
「やべっ、サツだ……ずらかるぞ!」
奴らが逃げていく……激しく抵抗しているようだが、しばらくすると音が止まった。捕まったらしい……来てくれてよかった……助かったんだ。
「あなたもこっちに来て! こっちの人は酷い怪我だ、救急車を!!」
「い……でぇ……」
「もう大丈夫ですよ!」
怖かった……その感情が俺を埋めつくしている。俺はしばらく、何一つ考えられなかった。街の喧騒と野次馬のシャッターが、酷くうるさく聞こえた。
「……あ?」
しばらく放心していたら、病院のベッドにいた。どうやら運ばれたらしい……体中に巻き付けられた包帯と、固定具。わかってはいたが、やはり折れていたんだな。
「とりあえず、警察呼んどいてよかったな」
呼んでなかったら死んでたかもしれない。本気でそう思うくらいには、痛かったし怖かった。
「失礼します」
「どうも、看護師さん」
「お目覚めですか。警察の方々が事情聴取を希望しています。今、大丈夫ですか?」
構わない。警察が希望するなら、そうしよう。
「大丈夫ですよ」
「わかりました。では、その旨をお伝えします」
「……あいつら、ちゃんと捕まったかな?」
そう思っていたら、警察の人が来て……いろいろ聞かれた。何をされたのか、その時の状況……一通り話した後、経過を聞かせてくれた。きちんと奴らは捕まって、女の人は保護されたらしい……聞いたところだと、起訴される方針のようだ。
「……事情聴取はこれで終わりです。ご協力ありがとうございます」
「当然のことですよ。起訴されるってことは、奴らは今留置所で大人しくしてるんですね」
「そうですね、初日は『ここから出せ』とか何とか言ってたみたいですが……すっかり大人しくなったらしいですよ」
それならよかった。法の裁きが一番信頼できるからな……
「では、私はこれで失礼します。あと、スマホも取り返しておいたので……ここに置いて行きますね」
「ありがとうございます……とりあえず、捕まったみたいでよかった」
スマホも返ってきたし、もう俺には関係ないな。弁護士さんが後はどうにかしてくれる。終わったんだ、もう気にすることはない……ないんだ。
「……っ、くそ」
ないはず、なのに……何故だろう。この憤りは、あいつらへの物ではない。どうしてこんなにムカつくんだ? 原因は誰だ? 答えは、わかりきっている。
「俺……こんなに弱かったのか」
その対象は、自分だ。俺は弱すぎた……身体的にも、精神的にも。どうせ無理だと言い訳して努力をせず、強い敵に怯えて戦えなくなる……それでも男か?
「努力しなけりゃ、そうなるに決まってるよな……当たり前だ」
俺は奴らに負けた。至極当然の話だ、自分に負け続けている者が、他人に勝てるわけがないのだから。
「勉強だってそうだ、努力しなきゃホロライブ学園には行けなかった……」
これ以上、自分に負けたくはない。逃げたくはない。精神はわからないけど……まずは、体を鍛えるところから始めよう。何も行動しなければ、絶対に変わらないのだから。
「やってやる……!!」
残り一ヶ月もないが……死ぬ気でやってやるさ。そう誓って、弱々しい拳を握りしめた。
それから俺は、ゲームのために貯めていた貯金を切り崩して、戦術の指南書や効率のいいトレーニングのやり方の本を買った。ジムや道場にも毎日通って、体の動きから矯正していく……
「ぐっ、が……負けて、たまるかぁ……!!」
もう二度と、情けない自分に負けないために。負けたくないなら、戦うしかないんだ。自分とも戦えない者に人は救えない、誰とも戦えない……!! そう思いつつ、今日も40kg重りをつけて、30kmを走り抜ける。負けたくない、その一心で痛みを遠ざけた。弱い自分を殺すために、歯を食いしばる……
「ふぅ、ふぅ……!!」
あと、一週間を切った。筋肉も大分ついてきたが……少しは変われただろうか? たとえ、変われていなかったとしても……俺のやることは変わらない。俺はこれしかできないのだから……弱くなくなるまで、続けるだけだ。弱くなくなったら、今度はもっと強くなるためにする……だって、俺は……
「俺は、男だぁッ……!!」
男が弱くてどうする。モテなくていい、認められなくていい……自分に負けて、どうする。そう思って、軋む足を無理矢理前に進める。地面を蹴り飛ばす俺の足は、丸太のように太くなっていた。そして、次の日……
『またも発生 人の一斉消失事件』
『今回の消失は、刑務所の中で発生しました。囚人達が一斉に消失してしまい、看守は脱走を疑いましたが、逃げた形跡はどこにも見当たらなかったようです』
「うぉ、らっ……!!」
ニュースを小耳に挟みつつ、本に書いてある通りに技を試す。柔道や空手も習ったから、ある程度はできる。動きを応用しつつ、技を試していく……地面を蹴りつけて一気に接近。上に打ち上げて、さらに跳び上がった後に……
「ふんっ!!」
もう一発ぶち込んで、地面に叩きつける。名前は『メテオスマッシュ』か……使えそうだな。他の技も試してみよう……『スマッシュビート』『カウンターファイト』、これもいいな。練習しよう……そう思って、構えをとる。俺はもう一度、的に向かっていった。
『看守は『少し目を離したら、誰もいなくなっていた』と話しています』
「だぁらららららららぁ!!」
『警察は捜査を続ける方針です。それでは、次のニュースです』
俺の叫びで、ニュースはかき消されて聞こえなくなった。
「……いよいよ明日か」
「見違えたな、康太……別人みたいだぞ」
「男らしくなったねぇ、母さん嬉しいよ」
確かに……自分で言うのもなんだが、少しは筋肉がついた気がする。指南書の技も、完璧ではないが使えるようになってきたし……
「ありがとう父さん、母さん……制服はないらしいから、いい服着ていかないとね」
「あぁ。明日は学校紹介で、明後日はお待ちかねのバトルロワイヤル……だったよな」
「確か、校内で戦うんだっけ……テレビ中継されて、実況もつくって言われてるし……頑張ってきなよ!!」
バトルロワイヤル……魔法で校内を半球形に覆って、全員で戦う催し。魔法のおかげで、どんなに強い攻撃を撃っても外に漏れることはない。一定以上のダメージを受ける、または絶対に回避できない状況の時は、張ってある魔法により食らう寸前で脱落となるらしい。だから、絶対に死ぬことはない……回復魔法が得意な先生も待機してるらしいし、怪我しても回復魔法で元通り。便利な世の中だな……
「あぁ、見ててくれよ? 強くなった俺の姿!!」
「楽しみだな~、ついに息子が全国デビューか……!!」
「今日は早く寝なさいよ? 明後日に備えて、ね!」
そう言われて、ベッドに入る。情けないことは考えない……目指すのは優勝だけ。やってやるさ……!! トレーニングがもたらす、心地よい眠気に身を任せて……今日も俺は眠りについた。そして、次の日……
「よく寝た……っと、行く準備しねぇとな!!」
「おはよう康太、元気いっぱいだね!!」
「そうだよ! 今日は待ちに待った日なんだから、当然でしょ!!」
母さんにそう言いつつ、トイレを済ませて手と顔を洗い、用意してくれていた飯を食う。
「ありがとう、用意しといてくれたんだね!!」
「色々準備あるでしょ? 今日は特別!!」
「サンキュー……!!」
いつもは俺がみんなの分も作るんだが、準備が忙しいのだ。バッグに詰め込むものが沢山あるし、弁当だって作らなきゃいけない。忙しなく動く俺は、見る人が見れば滑稽に見えるだろう。
「弁当詰めて……教科書、これとこれと……あと体操服も!」
「これで全部? 忘れ物ない? ハンカチ入ってる?」
「大丈夫!! 行ってきます!!」
駆け足で家を飛び出す。初日から遅刻は洒落にならん、幸い家からはそう遠くない……!! 地面を蹴って走る俺の足は、前よりも格段に速くなっている。
「……着いた! 改めて見てもデカイな……本当に」
昔から続く、名門学園。いい所のお嬢様やお姫様に、一国の令嬢さんまでいると聞く。本当に凄いところだ。俺はこれから、その人達と同じ学校に入って……明日、戦うことになる。前日なのに、少し緊張してきた……
「俺、ここまで努力してきたんだ……自分を信じて進め!」
自分を鼓舞しつつ、歩を進めていく。そんな時……怪しい男が、何かを呟いていた。
「……危険因子、計39。時間だ、計測を終了する」
「あの……何をされてるんですか?」
「……」
その人は何も言わず、ポケットから電話を取りだしつつ、どこかへ行ってしまった。
「何だったんだろう……まぁ、いいか」
とりあえず、明日のライバル達にご挨拶だ。どんな人がいるのかな……? 俺は期待と不安を胸に、教室へと向かっていった。
「……騒がしいな」
入る前から、もう声が聞こえてくる。どうやら騒がしい人達のようだ。
「お邪魔しまーす……えっと、俺の席はあそこか。隣はこの文字、なんて読むんだ?」
「……」
「……なんで?」
俺の席にゾンビが座ってる。席を確認してみたが、ここが俺の席で間違いない。いや、本当になんで? そう思っていると……
「ふ、ふぁんでっどさん……今から緊張するのです……!」
「……!」
「だ、大丈夫だって……? ありがとうなのです、ふぁんでっどさん……!」
緑髪の女の子がゾンビと話してる。なに? そういう趣味なの? 赤色の目をしたその人は、腕は細くてお世辞にも強そうには見えない。髪は2つの団子にしてまとめていて、ドクロのアクセサリーがついている。服は深い青を基調としており、蝶々のアクセサリーが2つ……特徴的な服装だな。
「え~と……すいません。お友達ですか?」
「ひゃあ!? も、もしかして……この席の人、ですか?」
「そうですけど……ゾンビさんの席なんですか?」
どうやら人見知りらしい……悪いことをしたかな。
「い、いえ! そういうわけじゃ……どうぞなのです!」
「あ、ゾンビが消えた……ありがとうございます」
「はい……私、潤羽るしあっていいます……よろしくお願いします、なのです!」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
……どうやら人見知りらしい。無理に話しかけるのはストレスをかけることになるな……やめておこう。
「こんぺこー!!」
「Ahoy~!」
「あ……! ぺこら!! マリン!!」
どうやら仲のいい二人のようだ……顔が明るくなった。一方は獣人らしく、ウサギの耳が頭から生えている。青と白が混ざった髪を三つ編みにしていて、目は蜂蜜のような色をしている……兎らしく、白い服を着てるな。もう一方の人は……赤い髪のショートヘアだ。右目には眼帯をつけていて、真っ赤な服を着ている……瞳は潤羽さんと同じ赤色だ。潤羽さんと同じように、腕は細くて、華奢な体格だ……
「るーちゃーん!!」
「同じクラスになれて嬉しいよ、るしあ~!!」
「るしあも嬉しいのです!!」
仲のいい三人だな……まぁ、人は見かけによらないと言うし、見かけによらず強いかもしれない。
「るしあの隣は、っと……知らない人ぺこだね」
「悪い人じゃなさそう、なんだけど……やっぱり緊張しちゃって」
「大丈夫! 船長がついてるよ!!」
……いい友達を持ってるな。アレを邪魔出来る程野暮ではない、邪魔者は居眠りでも……
「人間様? 寝てるの?」
「あ……?」
「ごめん、起こしちゃった? 余は百鬼あやめだ余!」
百鬼あやめ……赤メッシュの入った銀髪から角が伸びている、鬼か! これは強い人に出くわしたな。俺の強さを試すいい機会になりそうだ……一見すると細い腕だが、中に筋肉が詰まっている。相当修行してるな、流石は鬼人。この人も瞳の色は赤だ……今日は赤い目の人によく出会うな。服は赤と黒を基調とした、和装……でいいのかな?
「百鬼さん、ですね。俺は雪村 康太です……ますます明日が楽しみになってきました」
「余もだ余! 明日が楽しみだ余!!」
可愛らしさとは裏腹に、背中に背負っている二本の刀が鬼人としての力を感じさせる。相手にとって不足なし……!! 修行の成果を試す時だ!!
「明日、戦えるといいですね」
「負けない余、鬼人は強いんだから!!」
「俺だって負けやしませんよ」
明日のライバルが一人できたな。そう思っていると、潤羽さん達がこっちに来た。
「ほーう、この人……中々強そうじゃん」
「……なにか?」
「いや、なんでもないですよ! 自己紹介が遅れちゃいましたね、私は大海賊……に、いつかなる女! 宝鐘マリン、ですよ!! 覚えといてください!!」
……じゃあ、その格好はただのコスプレ? こんな典型的な海賊の格好した海賊はいないと思うんだけど。そういうツッコミはなしか?
「兎田ぺこらぺこだよ、よろしくぺこ! 見ての通り、兎獣人ぺこ!!」
「じゃあ俺も……雪村康太です。見ての通り、何の変哲もない人間ですよ」
「ところであなた……強いですか?」
目つきが変わった……やはり、この人も強そうだな。他の人とはオーラが違う。
「……自信はありますよ」
「厄介な敵になりそうぺこだね……」
「が、頑張って倒すのです……!!」
それぞれ戦闘手段が違いそうだが……兎も角、警戒すべき相手のようだな。
「明日、もし会えたら……勝負ですね」
「るしあ、会えたら組もうね?」
「わかってるのです、マリン!」
仲良しだな……さて、そろそろ先生が来る頃か?
「あ、先生来た!」
みんなが座ったところで、先生が入ってきた。薄いピンク色の髪に羽がある、鳥系の獣人らしい……目の色は青だ、やっと赤色連打から脱却したな。白いスーツに赤いネクタイ、そして黒いズボン。靴はハイヒールだ……大人の女性のオーラをしっかり感じる。
「はじめまして、皆さん。私は鷹嶺ルイ、このクラスの先生です。よろしくお願いしますね」
冷静だ……まともな先生っぽいな。
「……さてと。皆さん、このクラスは気に入ってくれたかね? 鷹嶺だけに!!」
「……は?」
「あれ……? ウケない……」
前言撤回。全然まともじゃない……見た感じ鷹のようだが……寒いギャグをかまされて、空気が一気に氷点下だ。人は見かけによらないとは思ってたけどさ……
「むしろウケると思ってたんですか?」
「……こほん。じゃあ、冗談はこのくらいにしといて……体育館に向かいましょう! バトルロワイヤルの説明と始業式があります!!」
「はーい」
それを待ってたんだ。さて……明日に向けて、覚悟を決めておかないとな。考えを巡らせながら、体育館へと向かい……椅子に座って学園長を待つ。
「……皆さん、お待たせしました。私、学園長のyagooと申します」
「あれが……若く見えるな。温和そうな人だ……」
「狭き門を通り抜け、ここにいるあなた達一人一人が、この国の、ひいては世界を変える人材と成りうるのです」
それから、退屈な学園長の話が始まった。仕方ないことだが、やはり長い……正直、寝そうになる。上の空で聞いてない人に、寝てる人もいるな……
「……では、バトルロワイヤルの説明をします」
「おっ、待ってました!!」
「みんな起きた……」
本当に楽しみにしてるんだな。まぁ、俺もだが……
「まず、学園全体に攻撃が外に漏れないようにする魔法フィールドを張ります。爆撃を受けても壊れませんので、存分に戦ってください」
「流石、魔術師の最高峰を排出してるだけあるな……対策はバッチリだ」
「皆さんには、学園内全体を使って戦闘を行っていただきます。戦法は自由、隠れるも戦うもあなたの自由です。バトルロワイヤルで優秀な成績を残した人は、成績表の点数が上がりますので、各自奮闘してください」
やってやるさ……そのために修行してきたんだ。
「脱落条件は降参するか、一定以上のダメージを受けた場合に、死亡しないように転送されます。また、死亡が回避できない場合も転送されるので、死亡の心配は必要ありません。存分に力を振るってくださいね」
「手加減はいらない……ってことだな」
みんな、やる気満々だ……そりゃそうだよな。
「以上です。各自、教室に戻ってください」
言われた通り、教室に戻って……教科書を貰ったりしつつ、放課後になった。
「……あー、緊張したけど……大丈夫だったな」
帰り道。初日から緊張しっぱなしだった……明日は、もっと緊張することになる。
「覚悟決めろよ、俺はやるぞ……!!」
そう思いつつ、帰り道を進む。ふと、コンビニに目をやると……ちょうど夕方なので、忙しい社会人達がご飯を買いに来ていた。立ち読みをしている人もいるし……あそこでタバコを吸ってるのは、さっき『39人』って言ってた人だな。
「賑わってるなぁ……」
そう呟いて、家への道を歩く……信号待ちの時、もう一度見てみると……
「……あれ?」
中にいた人達が、一人もいなくなっていた。いるのは外でタバコを吸っていた人だけ。車はあんなに沢山あるのに……何故だろう?
「……気にしたって仕方ないよな」
そう思って、俺は走り込みの後、家へと帰った。
「ただいま!」
「おかえり康太、どうだった?」
「いいところだよ、明日のバトルロワイヤルで戦う約束もしたし!」
そう言いつつ、手を洗う。冷たい水が熱くなった体を冷やす……
「そうかい! じゃあ、晩御飯しっかり食べて体力付けとかないとね!」
「うん! 手伝うよ!」
いつも通り、料理を手伝って……父さんが帰ってきたら、三人で食卓を囲む。
「……ごちそうさまでした!」
「俺が洗い物やっとくよ、母さん」
「ありがとう、お父さん! じゃあ、お風呂洗ってくれる?」
そう言われる前に、もう洗っている。やって欲しいことくらいわかるさ。
「もう洗ってます!」
「おっ、早いね!」
「まぁね~!」
いつも通りの光景だ……そう思いつつ、家事をこなして風呂に入って……トレーニングの後、ベッドに寝転がった。ニュースには今日も行方不明者が出たと書いてある。
「……明日はバトルロワイヤル。やるぞ……!!」
やる気は十分。後はどれだけ成長できているかだ……! 明日の作戦を考えながら、俺は眠りに落ちた。
「おはよう母さん!!」
「おはよう! 今日、頑張ってきなよ!!」
「うん!!」
一通りこなして、行く準備はできた。行こう……!
「行ってきます!」
「頑張れよ~!」
「優勝するんだぞ!!」
背中を押されつつ、学園に向かう。人生初の、バトルロワイヤルのために……着いた。教室は緊迫している、昨日とは空気そのものが違うな。全員が全員を警戒している、無論俺もだ。やがて全員が席について、しばらくすると……校内放送の音が鳴った。
『皆さん、お待たせしました。これより、バトルロワイヤルを開始します。5分後に学園内のランダムな場所へ転送しますので、それまでお待ちください』
「……ついに、始まるのか」
「が、頑張るのです……!」
外を見てみると……青いバリアのようなものが、展開されていっていた。あれが、死なないように俺達を守ってくれるんだな。そして、5分が経った時……
『転送開始、制限時間は6時間です。バトルロワイヤルスタート』
そう言われた瞬間には、もう校庭にいた。どうやら、俺はここに飛んだらしい……他の人達もいるし。
「よし、始めるか……!!」
「食らえっ!!」
「おっと!!」
振り下ろされたハンマーを避けて、その勢いのまま踏み込んで膝をぶち込む。カウンターファイト、近づいてきた相手の攻撃を躱したり受け止めたりしながら、逆に攻撃を加える技だ。拳や蹴りの威力が上がるらしい……
「ぐっ、う……!?」
「カウンターファイト!!」
「がはぁ!?」
一人目……次だ!!
「スマッシュビート……1!!」
「ぐぅ!?」
「2、3……!!」
リズム良く敵を倒していく……やっぱり修行や勉強は大事だな!! 一人、また一人と倒す。この技は殴れば殴る程、威力が上がっていく技らしいが……原理はよく分からないけど、勉強した通りにやってみたら上手くいったのだ。
「よっ、ほっ……!!」
「ぐはぁ……!!」
「……こんなもんかな?」
とりあえず、この辺りの人達は倒した。他の人はどこだろうか? 俺が探しに行こうとしていると……
ドゴォォン!!
「……あっちにいるらしいな、行ってみるか!」
教室の方だ。こっそり見に行ってみると……水色髪のエルフと思わしき人が、宝鐘さんと潤羽さんを相手にしていた。
「アイススピア!!」
「ふぁんでっどさん!!」
「オラオラー! 喰らえー!!」
宝鐘さんは二丁拳銃とサーベル、潤羽さんはゾンビやアンデッドを使役している……ネクロマンサーなのか。一方エルフの人は、氷魔法で応戦している……二対一でも遅れをとってない、強いな。横に浮いているのは使い魔だろうか、壺に入ってるけど。花の髪飾りをつけていて、白と青を基調とした服装……どうするかな。戦い終わるまで待つか、それとも……
「……よし、割って入るか!!」
飛び入り参加と行こうじゃないか。そう思っていた時……
「隙あり!!」
「うぉ……!!」
「くそっ、外したか……!!」
二人でかかってきたのか……危なかったな。男の人が悔しそうな顔をしている。もう一人の人は構えを解いてない、目の中には闘志が燃え盛っているな……戦闘は避けられないか。
「諦めるな! 行くぞ!!」
「かかってこい……!!」
そう言って、彼らは二人でかかってきて……あれ?
「もう片方の人がいない……?」
「え……? なんで?」
一瞬で消えた……今の一瞬で、どこに行ったんだ? 俺達が困惑していたその時……
バギィィィッ!!
「な、なんだ!?」
「……バリアが、崩れた!?」
『異常事態発生。バリアが破損しました。ただいま原因を調べています、戦闘を中断してしばらくお待ちください』
アナウンスが流れたが……どうなっているんだ? どうやって破った? 爆撃を受けても壊れないんじゃ……
「……食っていいぞ」
「え……?」
「なっ……!?」
一瞬だった。一瞬だったが……オレンジ色の何かが、その人を……鏡の中に引きずり込んだ。
「邪魔者は排除した……危険因子39番、発見」
「……アンタ、あの時の……!!」
「お前には死んでもらう。我らのためにな……」
そう言って、奴は何かをポケットから取り出した。蟹らしきオレンジ色のものが描かれた、四角い箱のようなものだ。奴がそれを鏡にかざすと……銀色のベルトが、奴に巻きついた。
「なっ……一体どこから!?」
「……変身!!」
「変身って……!?」
奴がそれをベルトに差し込むと……ベルトは機械音を立てて、ランプを点灯させた。鏡像が奴に重なると……奴は、オレンジと白をベースにした姿に文字通り……『変わった』。
というわけで、仮面ライダーシザースの登場です。どうなるのか乞うご期待。