※この作品はR-18です。

仮面を被った、人間達の英雄譚   作:とも667

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 始まります。新しい世界を、ごゆっくりご覧ください。


序章~alive a life~
ある男の話


ある世界にて。その者達は、野望を胸に次元を超えてきた。自分達の計画に邪魔な者達を、この世から消すために……

 

「……計画実行は、この世界が最適なのだな?」

 

「えぇ、環境も十分……我らの計画にはピッタリの場所です。様々なことを吟味し、この世界の環境が最適だと判断しました。数ある分岐世界の1つに……こんなものがあるとは」

 

「忌々しい奴らのいない世界……『死した神』を蘇らせられれば……奴らであろうとも、死は免れない!!」

 

 そう呟いて、準備を始めた。自分達の敵を全滅させるために。

 

「準備はいいな? ヘマをするなよ」

 

「お任せ下さい。これと、こいつがいるのに……負ける道理は無い」

 

「それもそうだな……健闘を祈るぞ」

 

 電話が切られて、四角いもの……『カードデッキ』を握りしめた男が笑う。その後ろには鏡を引っ掻くような音と……人型の、蟹の化け物が立っていた。

 

 

 

 ……突然だが、俺は覚えてもらう必要性は全くない人間だ。特別な力も持ってない、魔法も使えないし体だって強くない……そんな俺だが、今日は人生で最大のいいことがあった。なんてったって……

 

「ホロライブ学園、合格……! やった、やった!!」

 

 思わずニヤけてしまう。超有名な名門校だ、その上成績がよければ企業が目をつけてくれるオマケ付き……受けるだけ受けてみよう。そう思って、苦手な勉強を頑張ってみたら……なんと合格できた……運を使い果たしたかもな。

 

「血反吐吐いて努力したわけではないが……勉強すればいけるもんだな」

 

 何なら努力は嫌いまである。そういうのは好きな人間がやればいいんだ……なんて考えてたら、家に着いた!

 

「母さん、父さん!! 俺はやったぞ~!!」

 

 そう叫んだ瞬間、これ以上ない程の歓喜が家を埋めつくした。『雪村康太 おめでとう』と書かれた垂れ幕がある……わざわざ用意したのか。

 

「やったねぇ、康太!!」

 

「お前ならやれるって信じてたぞ、俺は!!」

 

「『絶対無理だからやめとけ』とか言ってたのはどこのどいつだ」

 

 まぁ……今の俺は気分がいいし、過去のことは水に流すとしよう。

 

「わ、悪かったって……」

 

「今日はごちそう作るよ、パパも手伝って!!」

 

「俺も手伝うよ!!」

 

 料理の時はこうやって、三人で役割分担する。そうした方が早く済むし……親孝行はしとかないとな。

 

「はい、唐揚げ!!」

 

「米研いだよ!!」

 

「スープはできた!!」

 

 気分がいいと、家事も捗る。美味い飯を食って、洗い物をして、風呂入って寝る……それだけなのに、今日は特別だ。だって、1ヶ月後が楽しみで仕方ないんだもの。

 

「今から楽しみで眠れないな……」

 

 遠足に行くんじゃないんだぞ? 自分で自分にツッコミながら……その日は結局、2時まで眠れなかった。

 

 

 

 次の日から、俺は特に何もしてなかった。それもこれも、軍隊や警察が日々努力して平和を保ってくれているからだ。感謝感謝、俺はその平和を謳歌します。何もしないでいいのが一番だ。

 

「ちょ、ちょっと……やめてってば!!」

 

「いいだろ姉ちゃん、俺達と一緒に来てくれよ!」

 

「楽しいところ行こうぜ?」

 

 ……女の子が変なやつに絡まれてる。だが……俺は助けられん。助けに入る力もないし、怪我したら困るし……警察に言っとくか。それくらいはしないと、寝覚めが悪い。そう思って、スマホを操作していると……

 

「もしもし、警察ですか……って、あ!! スマホ!!」

 

「何やってんだよ、お前? 俺達が気に食わねぇからってサツにチクるなんてよぉ……」

 

「正義の味方気取りで楽しいかい?」

 

 やっべ、スマホ盗られた……! 路地裏に引きずり込まれる。

 

「おい、返せよ!」

 

「なんだコイツ、トロいぞ!!」

 

「ちょっとは鍛えとけよ~」

 

 スマホに手が届かない。くそ……!!

 

「返せっての!!」

 

「誰が返すかよ!!」

 

「うぐっ……!!」

 

 殴られた、痛い……この野郎、やってくれたな。

 

「その目はなんだ? 弱っちい癖にやる気か?」

 

「身の程知らず野郎め……」

 

「この、くそったれ!!」

 

 思いっきり殴ってやった……つもりだった。奴は全く痛くなさそうだ……おいおい。俺、弱すぎんだろ。

 

「グヒヒ、こいつ弱ぇぞ……? おい、やっちまえ!!」

 

「ぶっ……!!」

 

「へへっ、悔しかったら取り返してみろよ?」

 

 掴んでも、力が足りない。俺ってこんなに弱かったのか……

 

「ほれほれ、悔しいか? ん?」

 

「ぐ、ぎぎ……!!」

 

「弱いやつが生意気な口……利いてんじゃねぇ、よ!!」

 

 痛い。力の差がありすぎる……これが、恐怖か。親父の雷よりも、ずっと怖い……体が震える。手が動かなくなる……

 

「こいつ震えてんぞ、情けねぇなぁ……」

 

「怖いか? しっこちびりそうなのか? ヒヒッ、いい気味だぜ!!」

 

「あ、ぐ……」

 

 骨が折れたのか、腕が動かない。周りを見てみると、市民達は俺を横目に通り過ぎていっていた……俺と同じだ。普通の人間は……苦しんでる人を助けようなんて、思わない。思っても行動には移さない……自分が殴られるかもしれないから。当然だ……

 

「おい、お前あの子を連れてけ! 俺はしばらくこいつボコるよ!」

 

「おう。じゃあこっち来い、楽しいことしようぜ?」

 

「や、やだ……助けて……!!」

 

 何発も殴られている内に、意識が無くなってきた。これが……力の差か。俺は死ぬのか? それは嫌だ……だが抵抗する手段がない。

 

「終わりだ、死にやがれ!!」

 

「待て、警察だ! 動くな!!」

 

「やべっ、サツだ……ずらかるぞ!」

 

 奴らが逃げていく……激しく抵抗しているようだが、しばらくすると音が止まった。捕まったらしい……来てくれてよかった……助かったんだ。

 

「あなたもこっちに来て! こっちの人は酷い怪我だ、救急車を!!」

 

「い……でぇ……」

 

「もう大丈夫ですよ!」

 

 怖かった……その感情が俺を埋めつくしている。俺はしばらく、何一つ考えられなかった。街の喧騒と野次馬のシャッターが、酷くうるさく聞こえた。

 

 

 

「……あ?」

 

 しばらく放心していたら、病院のベッドにいた。どうやら運ばれたらしい……体中に巻き付けられた包帯と、固定具。わかってはいたが、やはり折れていたんだな。

 

「とりあえず、警察呼んどいてよかったな」

 

 呼んでなかったら死んでたかもしれない。本気でそう思うくらいには、痛かったし怖かった。

 

「失礼します」

 

「どうも、看護師さん」

 

「お目覚めですか。警察の方々が事情聴取を希望しています。今、大丈夫ですか?」

 

 構わない。警察が希望するなら、そうしよう。

 

「大丈夫ですよ」

 

「わかりました。では、その旨をお伝えします」

 

「……あいつら、ちゃんと捕まったかな?」

 

 そう思っていたら、警察の人が来て……いろいろ聞かれた。何をされたのか、その時の状況……一通り話した後、経過を聞かせてくれた。きちんと奴らは捕まって、女の人は保護されたらしい……聞いたところだと、起訴される方針のようだ。

 

「……事情聴取はこれで終わりです。ご協力ありがとうございます」

 

「当然のことですよ。起訴されるってことは、奴らは今留置所で大人しくしてるんですね」

 

「そうですね、初日は『ここから出せ』とか何とか言ってたみたいですが……すっかり大人しくなったらしいですよ」

 

 それならよかった。法の裁きが一番信頼できるからな……

 

「では、私はこれで失礼します。あと、スマホも取り返しておいたので……ここに置いて行きますね」

 

「ありがとうございます……とりあえず、捕まったみたいでよかった」

 

 スマホも返ってきたし、もう俺には関係ないな。弁護士さんが後はどうにかしてくれる。終わったんだ、もう気にすることはない……ないんだ。

 

「……っ、くそ」

 

 ないはず、なのに……何故だろう。この憤りは、あいつらへの物ではない。どうしてこんなにムカつくんだ? 原因は誰だ? 答えは、わかりきっている。

 

「俺……こんなに弱かったのか」

 

 その対象は、自分だ。俺は弱すぎた……身体的にも、精神的にも。どうせ無理だと言い訳して努力をせず、強い敵に怯えて戦えなくなる……それでも男か?

 

「努力しなけりゃ、そうなるに決まってるよな……当たり前だ」

 

 俺は奴らに負けた。至極当然の話だ、自分に負け続けている者が、他人に勝てるわけがないのだから。

 

「勉強だってそうだ、努力しなきゃホロライブ学園には行けなかった……」

 

 これ以上、自分に負けたくはない。逃げたくはない。精神はわからないけど……まずは、体を鍛えるところから始めよう。何も行動しなければ、絶対に変わらないのだから。

 

「やってやる……!!」

 

 残り一ヶ月もないが……死ぬ気でやってやるさ。そう誓って、弱々しい拳を握りしめた。

 

 

 

 それから俺は、ゲームのために貯めていた貯金を切り崩して、戦術の指南書や効率のいいトレーニングのやり方の本を買った。ジムや道場にも毎日通って、体の動きから矯正していく……

 

「ぐっ、が……負けて、たまるかぁ……!!」

 

 もう二度と、情けない自分に負けないために。負けたくないなら、戦うしかないんだ。自分とも戦えない者に人は救えない、誰とも戦えない……!! そう思いつつ、今日も40kg重りをつけて、30kmを走り抜ける。負けたくない、その一心で痛みを遠ざけた。弱い自分を殺すために、歯を食いしばる……

 

「ふぅ、ふぅ……!!」

 

 あと、一週間を切った。筋肉も大分ついてきたが……少しは変われただろうか? たとえ、変われていなかったとしても……俺のやることは変わらない。俺はこれしかできないのだから……弱くなくなるまで、続けるだけだ。弱くなくなったら、今度はもっと強くなるためにする……だって、俺は……

 

「俺は、男だぁッ……!!」

 

 男が弱くてどうする。モテなくていい、認められなくていい……自分に負けて、どうする。そう思って、軋む足を無理矢理前に進める。地面を蹴り飛ばす俺の足は、丸太のように太くなっていた。そして、次の日……

 

『またも発生 人の一斉消失事件』

 

『今回の消失は、刑務所の中で発生しました。囚人達が一斉に消失してしまい、看守は脱走を疑いましたが、逃げた形跡はどこにも見当たらなかったようです』

 

「うぉ、らっ……!!」

 

 ニュースを小耳に挟みつつ、本に書いてある通りに技を試す。柔道や空手も習ったから、ある程度はできる。動きを応用しつつ、技を試していく……地面を蹴りつけて一気に接近。上に打ち上げて、さらに跳び上がった後に……

 

「ふんっ!!」

 

 もう一発ぶち込んで、地面に叩きつける。名前は『メテオスマッシュ』か……使えそうだな。他の技も試してみよう……『スマッシュビート』『カウンターファイト』、これもいいな。練習しよう……そう思って、構えをとる。俺はもう一度、的に向かっていった。

 

『看守は『少し目を離したら、誰もいなくなっていた』と話しています』

 

「だぁらららららららぁ!!」

 

『警察は捜査を続ける方針です。それでは、次のニュースです』

 

 俺の叫びで、ニュースはかき消されて聞こえなくなった。

 

 

 

「……いよいよ明日か」

 

「見違えたな、康太……別人みたいだぞ」

 

「男らしくなったねぇ、母さん嬉しいよ」

 

 確かに……自分で言うのもなんだが、少しは筋肉がついた気がする。指南書の技も、完璧ではないが使えるようになってきたし……

 

「ありがとう父さん、母さん……制服はないらしいから、いい服着ていかないとね」

 

「あぁ。明日は学校紹介で、明後日はお待ちかねのバトルロワイヤル……だったよな」

 

「確か、校内で戦うんだっけ……テレビ中継されて、実況もつくって言われてるし……頑張ってきなよ!!」

 

 バトルロワイヤル……魔法で校内を半球形に覆って、全員で戦う催し。魔法のおかげで、どんなに強い攻撃を撃っても外に漏れることはない。一定以上のダメージを受ける、または絶対に回避できない状況の時は、張ってある魔法により食らう寸前で脱落となるらしい。だから、絶対に死ぬことはない……回復魔法が得意な先生も待機してるらしいし、怪我しても回復魔法で元通り。便利な世の中だな……

 

「あぁ、見ててくれよ? 強くなった俺の姿!!」

 

「楽しみだな~、ついに息子が全国デビューか……!!」

 

「今日は早く寝なさいよ? 明後日に備えて、ね!」

 

 そう言われて、ベッドに入る。情けないことは考えない……目指すのは優勝だけ。やってやるさ……!! トレーニングがもたらす、心地よい眠気に身を任せて……今日も俺は眠りについた。そして、次の日……

 

「よく寝た……っと、行く準備しねぇとな!!」

 

「おはよう康太、元気いっぱいだね!!」

 

「そうだよ! 今日は待ちに待った日なんだから、当然でしょ!!」

 

 母さんにそう言いつつ、トイレを済ませて手と顔を洗い、用意してくれていた飯を食う。

 

「ありがとう、用意しといてくれたんだね!!」

 

「色々準備あるでしょ? 今日は特別!!」

 

「サンキュー……!!」

 

 いつもは俺がみんなの分も作るんだが、準備が忙しいのだ。バッグに詰め込むものが沢山あるし、弁当だって作らなきゃいけない。忙しなく動く俺は、見る人が見れば滑稽に見えるだろう。

 

「弁当詰めて……教科書、これとこれと……あと体操服も!」

 

「これで全部? 忘れ物ない? ハンカチ入ってる?」

 

「大丈夫!! 行ってきます!!」

 

 駆け足で家を飛び出す。初日から遅刻は洒落にならん、幸い家からはそう遠くない……!! 地面を蹴って走る俺の足は、前よりも格段に速くなっている。

 

「……着いた! 改めて見てもデカイな……本当に」

 

 昔から続く、名門学園。いい所のお嬢様やお姫様に、一国の令嬢さんまでいると聞く。本当に凄いところだ。俺はこれから、その人達と同じ学校に入って……明日、戦うことになる。前日なのに、少し緊張してきた……

 

「俺、ここまで努力してきたんだ……自分を信じて進め!」

 

 自分を鼓舞しつつ、歩を進めていく。そんな時……怪しい男が、何かを呟いていた。

 

「……危険因子、計39。時間だ、計測を終了する」

 

「あの……何をされてるんですか?」

 

「……」

 

 その人は何も言わず、ポケットから電話を取りだしつつ、どこかへ行ってしまった。

 

「何だったんだろう……まぁ、いいか」

 

 とりあえず、明日のライバル達にご挨拶だ。どんな人がいるのかな……? 俺は期待と不安を胸に、教室へと向かっていった。

 

「……騒がしいな」

 

 入る前から、もう声が聞こえてくる。どうやら騒がしい人達のようだ。

 

「お邪魔しまーす……えっと、俺の席はあそこか。隣はこの文字、なんて読むんだ?」

 

「……」

 

「……なんで?」

 

 俺の席にゾンビが座ってる。席を確認してみたが、ここが俺の席で間違いない。いや、本当になんで? そう思っていると……

 

「ふ、ふぁんでっどさん……今から緊張するのです……!」

 

「……!」

 

「だ、大丈夫だって……? ありがとうなのです、ふぁんでっどさん……!」

 

 緑髪の女の子がゾンビと話してる。なに? そういう趣味なの? 赤色の目をしたその人は、腕は細くてお世辞にも強そうには見えない。髪は2つの団子にしてまとめていて、ドクロのアクセサリーがついている。服は深い青を基調としており、蝶々のアクセサリーが2つ……特徴的な服装だな。

 

「え~と……すいません。お友達ですか?」

 

「ひゃあ!? も、もしかして……この席の人、ですか?」

 

「そうですけど……ゾンビさんの席なんですか?」

 

 どうやら人見知りらしい……悪いことをしたかな。

 

「い、いえ! そういうわけじゃ……どうぞなのです!」

 

「あ、ゾンビが消えた……ありがとうございます」

 

「はい……私、潤羽るしあっていいます……よろしくお願いします、なのです!」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 ……どうやら人見知りらしい。無理に話しかけるのはストレスをかけることになるな……やめておこう。

 

「こんぺこー!!」

 

「Ahoy~!」

 

「あ……! ぺこら!! マリン!!」

 

 どうやら仲のいい二人のようだ……顔が明るくなった。一方は獣人らしく、ウサギの耳が頭から生えている。青と白が混ざった髪を三つ編みにしていて、目は蜂蜜のような色をしている……兎らしく、白い服を着てるな。もう一方の人は……赤い髪のショートヘアだ。右目には眼帯をつけていて、真っ赤な服を着ている……瞳は潤羽さんと同じ赤色だ。潤羽さんと同じように、腕は細くて、華奢な体格だ……

 

「るーちゃーん!!」

 

「同じクラスになれて嬉しいよ、るしあ~!!」

 

「るしあも嬉しいのです!!」

 

 仲のいい三人だな……まぁ、人は見かけによらないと言うし、見かけによらず強いかもしれない。

 

「るしあの隣は、っと……知らない人ぺこだね」

 

「悪い人じゃなさそう、なんだけど……やっぱり緊張しちゃって」

 

「大丈夫! 船長がついてるよ!!」

 

 ……いい友達を持ってるな。アレを邪魔出来る程野暮ではない、邪魔者は居眠りでも……

 

「人間様? 寝てるの?」

 

「あ……?」

 

「ごめん、起こしちゃった? 余は百鬼あやめだ余!」

 

 百鬼あやめ……赤メッシュの入った銀髪から角が伸びている、鬼か! これは強い人に出くわしたな。俺の強さを試すいい機会になりそうだ……一見すると細い腕だが、中に筋肉が詰まっている。相当修行してるな、流石は鬼人。この人も瞳の色は赤だ……今日は赤い目の人によく出会うな。服は赤と黒を基調とした、和装……でいいのかな?

 

「百鬼さん、ですね。俺は雪村 康太です……ますます明日が楽しみになってきました」

 

「余もだ余! 明日が楽しみだ余!!」

 

 可愛らしさとは裏腹に、背中に背負っている二本の刀が鬼人としての力を感じさせる。相手にとって不足なし……!! 修行の成果を試す時だ!!

 

「明日、戦えるといいですね」

 

「負けない余、鬼人は強いんだから!!」

 

「俺だって負けやしませんよ」

 

 明日のライバルが一人できたな。そう思っていると、潤羽さん達がこっちに来た。

 

「ほーう、この人……中々強そうじゃん」

 

「……なにか?」

 

「いや、なんでもないですよ! 自己紹介が遅れちゃいましたね、私は大海賊……に、いつかなる女! 宝鐘マリン、ですよ!! 覚えといてください!!」

 

 ……じゃあ、その格好はただのコスプレ? こんな典型的な海賊の格好した海賊はいないと思うんだけど。そういうツッコミはなしか?

 

「兎田ぺこらぺこだよ、よろしくぺこ! 見ての通り、兎獣人ぺこ!!」

 

「じゃあ俺も……雪村康太です。見ての通り、何の変哲もない人間ですよ」

 

「ところであなた……強いですか?」

 

 目つきが変わった……やはり、この人も強そうだな。他の人とはオーラが違う。

 

「……自信はありますよ」

 

「厄介な敵になりそうぺこだね……」

 

「が、頑張って倒すのです……!!」

 

 それぞれ戦闘手段が違いそうだが……兎も角、警戒すべき相手のようだな。

 

「明日、もし会えたら……勝負ですね」

 

「るしあ、会えたら組もうね?」

 

「わかってるのです、マリン!」

 

 仲良しだな……さて、そろそろ先生が来る頃か?

 

「あ、先生来た!」

 

 みんなが座ったところで、先生が入ってきた。薄いピンク色の髪に羽がある、鳥系の獣人らしい……目の色は青だ、やっと赤色連打から脱却したな。白いスーツに赤いネクタイ、そして黒いズボン。靴はハイヒールだ……大人の女性のオーラをしっかり感じる。

 

「はじめまして、皆さん。私は鷹嶺ルイ、このクラスの先生です。よろしくお願いしますね」

 

 冷静だ……まともな先生っぽいな。

 

「……さてと。皆さん、このクラスは気に入ってくれたかね? 鷹嶺だけに!!」

 

「……は?」

 

「あれ……? ウケない……」

 

 前言撤回。全然まともじゃない……見た感じ鷹のようだが……寒いギャグをかまされて、空気が一気に氷点下だ。人は見かけによらないとは思ってたけどさ……

 

「むしろウケると思ってたんですか?」

 

「……こほん。じゃあ、冗談はこのくらいにしといて……体育館に向かいましょう! バトルロワイヤルの説明と始業式があります!!」

 

「はーい」

 

 それを待ってたんだ。さて……明日に向けて、覚悟を決めておかないとな。考えを巡らせながら、体育館へと向かい……椅子に座って学園長を待つ。

 

「……皆さん、お待たせしました。私、学園長のyagooと申します」

 

「あれが……若く見えるな。温和そうな人だ……」

 

「狭き門を通り抜け、ここにいるあなた達一人一人が、この国の、ひいては世界を変える人材と成りうるのです」

 

 それから、退屈な学園長の話が始まった。仕方ないことだが、やはり長い……正直、寝そうになる。上の空で聞いてない人に、寝てる人もいるな……

 

「……では、バトルロワイヤルの説明をします」

 

「おっ、待ってました!!」

 

「みんな起きた……」

 

 本当に楽しみにしてるんだな。まぁ、俺もだが……

 

「まず、学園全体に攻撃が外に漏れないようにする魔法フィールドを張ります。爆撃を受けても壊れませんので、存分に戦ってください」

 

「流石、魔術師の最高峰を排出してるだけあるな……対策はバッチリだ」

 

「皆さんには、学園内全体を使って戦闘を行っていただきます。戦法は自由、隠れるも戦うもあなたの自由です。バトルロワイヤルで優秀な成績を残した人は、成績表の点数が上がりますので、各自奮闘してください」

 

 やってやるさ……そのために修行してきたんだ。

 

「脱落条件は降参するか、一定以上のダメージを受けた場合に、死亡しないように転送されます。また、死亡が回避できない場合も転送されるので、死亡の心配は必要ありません。存分に力を振るってくださいね」

 

「手加減はいらない……ってことだな」

 

 みんな、やる気満々だ……そりゃそうだよな。

 

「以上です。各自、教室に戻ってください」

 

 言われた通り、教室に戻って……教科書を貰ったりしつつ、放課後になった。

 

「……あー、緊張したけど……大丈夫だったな」

 

 帰り道。初日から緊張しっぱなしだった……明日は、もっと緊張することになる。

 

「覚悟決めろよ、俺はやるぞ……!!」

 

 そう思いつつ、帰り道を進む。ふと、コンビニに目をやると……ちょうど夕方なので、忙しい社会人達がご飯を買いに来ていた。立ち読みをしている人もいるし……あそこでタバコを吸ってるのは、さっき『39人』って言ってた人だな。

 

「賑わってるなぁ……」

 

 そう呟いて、家への道を歩く……信号待ちの時、もう一度見てみると……

 

「……あれ?」

 

 中にいた人達が、一人もいなくなっていた。いるのは外でタバコを吸っていた人だけ。車はあんなに沢山あるのに……何故だろう?

 

「……気にしたって仕方ないよな」

 

 そう思って、俺は走り込みの後、家へと帰った。

 

「ただいま!」

 

「おかえり康太、どうだった?」

 

「いいところだよ、明日のバトルロワイヤルで戦う約束もしたし!」

 

 そう言いつつ、手を洗う。冷たい水が熱くなった体を冷やす……

 

「そうかい! じゃあ、晩御飯しっかり食べて体力付けとかないとね!」

 

「うん! 手伝うよ!」

 

 いつも通り、料理を手伝って……父さんが帰ってきたら、三人で食卓を囲む。

 

「……ごちそうさまでした!」

 

「俺が洗い物やっとくよ、母さん」

 

「ありがとう、お父さん! じゃあ、お風呂洗ってくれる?」

 

 そう言われる前に、もう洗っている。やって欲しいことくらいわかるさ。

 

「もう洗ってます!」

 

「おっ、早いね!」

 

「まぁね~!」

 

 いつも通りの光景だ……そう思いつつ、家事をこなして風呂に入って……トレーニングの後、ベッドに寝転がった。ニュースには今日も行方不明者が出たと書いてある。

 

「……明日はバトルロワイヤル。やるぞ……!!」

 

 やる気は十分。後はどれだけ成長できているかだ……! 明日の作戦を考えながら、俺は眠りに落ちた。

 

 

 

「おはよう母さん!!」

 

「おはよう! 今日、頑張ってきなよ!!」

 

「うん!!」

 

 一通りこなして、行く準備はできた。行こう……!

 

「行ってきます!」

 

「頑張れよ~!」

 

「優勝するんだぞ!!」

 

 背中を押されつつ、学園に向かう。人生初の、バトルロワイヤルのために……着いた。教室は緊迫している、昨日とは空気そのものが違うな。全員が全員を警戒している、無論俺もだ。やがて全員が席について、しばらくすると……校内放送の音が鳴った。

 

『皆さん、お待たせしました。これより、バトルロワイヤルを開始します。5分後に学園内のランダムな場所へ転送しますので、それまでお待ちください』

 

「……ついに、始まるのか」

 

「が、頑張るのです……!」

 

 外を見てみると……青いバリアのようなものが、展開されていっていた。あれが、死なないように俺達を守ってくれるんだな。そして、5分が経った時……

 

『転送開始、制限時間は6時間です。バトルロワイヤルスタート』

 

 そう言われた瞬間には、もう校庭にいた。どうやら、俺はここに飛んだらしい……他の人達もいるし。

 

「よし、始めるか……!!」

 

「食らえっ!!」

 

「おっと!!」

 

 振り下ろされたハンマーを避けて、その勢いのまま踏み込んで膝をぶち込む。カウンターファイト、近づいてきた相手の攻撃を躱したり受け止めたりしながら、逆に攻撃を加える技だ。拳や蹴りの威力が上がるらしい……

 

「ぐっ、う……!?」

 

「カウンターファイト!!」

 

「がはぁ!?」

 

 一人目……次だ!!

 

「スマッシュビート……1!!」

 

「ぐぅ!?」

 

「2、3……!!」

 

 リズム良く敵を倒していく……やっぱり修行や勉強は大事だな!! 一人、また一人と倒す。この技は殴れば殴る程、威力が上がっていく技らしいが……原理はよく分からないけど、勉強した通りにやってみたら上手くいったのだ。

 

「よっ、ほっ……!!」

 

「ぐはぁ……!!」

 

「……こんなもんかな?」

 

 とりあえず、この辺りの人達は倒した。他の人はどこだろうか? 俺が探しに行こうとしていると……

 

 ドゴォォン!!

 

「……あっちにいるらしいな、行ってみるか!」

 

 教室の方だ。こっそり見に行ってみると……水色髪のエルフと思わしき人が、宝鐘さんと潤羽さんを相手にしていた。

 

「アイススピア!!」

 

「ふぁんでっどさん!!」

 

「オラオラー! 喰らえー!!」

 

 宝鐘さんは二丁拳銃とサーベル、潤羽さんはゾンビやアンデッドを使役している……ネクロマンサーなのか。一方エルフの人は、氷魔法で応戦している……二対一でも遅れをとってない、強いな。横に浮いているのは使い魔だろうか、壺に入ってるけど。花の髪飾りをつけていて、白と青を基調とした服装……どうするかな。戦い終わるまで待つか、それとも……

 

「……よし、割って入るか!!」

 

 飛び入り参加と行こうじゃないか。そう思っていた時……

 

「隙あり!!」

 

「うぉ……!!」

 

「くそっ、外したか……!!」

 

 二人でかかってきたのか……危なかったな。男の人が悔しそうな顔をしている。もう一人の人は構えを解いてない、目の中には闘志が燃え盛っているな……戦闘は避けられないか。

 

「諦めるな! 行くぞ!!」

 

「かかってこい……!!」

 

 そう言って、彼らは二人でかかってきて……あれ?

 

「もう片方の人がいない……?」

 

「え……? なんで?」

 

 一瞬で消えた……今の一瞬で、どこに行ったんだ? 俺達が困惑していたその時……

 

 バギィィィッ!!

 

「な、なんだ!?」

 

「……バリアが、崩れた!?」

 

『異常事態発生。バリアが破損しました。ただいま原因を調べています、戦闘を中断してしばらくお待ちください』

 

 アナウンスが流れたが……どうなっているんだ? どうやって破った? 爆撃を受けても壊れないんじゃ……

 

「……食っていいぞ」

 

「え……?」

 

「なっ……!?」

 

 一瞬だった。一瞬だったが……オレンジ色の何かが、その人を……鏡の中に引きずり込んだ。

 

「邪魔者は排除した……危険因子39番、発見」

 

「……アンタ、あの時の……!!」

 

「お前には死んでもらう。我らのためにな……」

 

 そう言って、奴は何かをポケットから取り出した。蟹らしきオレンジ色のものが描かれた、四角い箱のようなものだ。奴がそれを鏡にかざすと……銀色のベルトが、奴に巻きついた。

 

「なっ……一体どこから!?」

 

「……変身!!」

 

「変身って……!?」

 

 奴がそれをベルトに差し込むと……ベルトは機械音を立てて、ランプを点灯させた。鏡像が奴に重なると……奴は、オレンジと白をベースにした姿に文字通り……『変わった』。




というわけで、仮面ライダーシザースの登場です。どうなるのか乞うご期待。
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