お待たせしました。
……その日の早朝、5時頃。暁が部下に命令を出していた。無論、危険因子の排除のためだ。
「暁様。オルフェノク、数量100体、用意できました……しかし暁様、何故使徒再生に突然切り替えを?」
「そちらの方が質は悪くとも、数を用意できるからな。今回はそれでもいい……何故なら」
「これは……!!」
ブロンズのシンプルなベルト。夥しい量のそれが用意されていた。
「ライオトルーパー部隊を編成する。用意を始めろ……統率のための忠誠装置も忘れずにな」
「ハッ!!」
「……敵を欺くにはまず味方から。それが基本だ」
そう言って、暁はまたどこかに電話をかけ始めた。
……背中が柔らかい。これはベッドか……? 目を開けると、前に見た天井だった。保健室だ。
「ん~、よく寝た気がする」
「起きたのね、おはよう康太様」
「癒月先生……そうだ、あやめは?」
俺と一緒に寝たはずだが、もう帰っただろうか?
「まだ寝てるわ……鷹嶺先生が運んできてくれたのよ? 体調が悪いとか、怪我とかじゃなくてよかったけど……戦いに夢中になるのも程々に、ね?」
「善処します……あやめ、よく寝てるな」
「むにゃむにゃ……」
戦いの時とは打って変わって、可愛らしい寝顔だ。
「どうしたの? もしかして……色恋沙汰?」
「違いますよ。やっぱり戦いの時とは違うなって……」
「そうね……あやめ様の戦いは見たことあるけど、本当に楽しそうなの。でも、普通の時はちゃんと女の子で。オンオフがよくできてるっていうか……育ちがいいのよね、あやめ様は」
そうだったのか? 聞いたこともなかったが。あやめも言わないから、気づかなかった。
「え、そうなんですか? 知りませんでした」
「幽世では、結構有名なのよ? 百鬼家、妖術や刀術に優れた家系。昔から無類の強さを誇っていて、優しさと逞しさを併せ持った家柄……あやめ様はそれの跡継ぎなの」
「……俺、そんなに偉い人にタメ口聞いたり、教えてもらったりしてたのか……大丈夫? 俺、もしかして不敬罪で切腹させられない? 財団X壊滅させるまで死ねないんだけど」
俺がそう言うと、癒月先生はクスクスと笑いを零して言った。
「ふふふ、大丈夫よ。二人は仲良しだし……逆に気に入られちゃうかも? 康太様は強いもの」
「確かに前に比べたら、強くなりましたけど……まだまだですよ。精神も肉体も……全然極めきれてない」
「十分なように思えるけど……そうね、仮面ライダーは強すぎるものね」
理解を示してくれた。そうだ、仮面ライダーに余裕で勝利するにはまだまだ力が足りない。毎回大怪我してるけど、あれじゃダメだろう。
「はい……だからこそ、私は強くならなきゃいけない。みんなが強くならなくていいように、ね」
「ん、くぁ~……」
「あやめ様も起きたみたいね。おはよう、あやめ様?」
大きな欠伸をしながら、あやめが起き上がった。
「おはよう、あやめ。いい夢は見られたかい?」
「ここ、保健室……? 確か、訓練室で人間様と戦って、それから……何したんだっけ?」
「鷹嶺先生が、眠った俺達を運んでくれたんだってさ。苦労かけちゃったな」
二人揃って苦労をかけた。気をつけよう。
「そっかぁ……夢は人間様と戦う夢だった余! いいとこだったんだけど……ちょっと残念」
「逆によかったんじゃないか? 次に俺と戦う時の楽しみができたじゃん! お互い死ねない理由ができた!! ポジティブに考えようぜ!!」
「……うん、言われてみればそうだ!! 次は現実でやろう!! 絶対またやろうな、人間様っ!!」
そう言われて、俺も頷いた。
「うん、絶対だ! 約束は守る!!」
「指切りげんまん、だね!」
「死ねない理由がどんどん増えちゃうな……」
指切り、今度はこっちからだ。あやめは喜んで受けてくれた……いつ死ぬかわからんってのに。
「……死ぬつもりでいるの?」
「いや、嬉しいことですよ。あればある程いい、生き残る確率が上がっていくから……お互いにね」
「余が勝つまでは死なせない余、絶対!!」
それは俺だって同じだ。誰も死なせなくないし、死なせるつもりはない。どんなことをしてでも。
「あやめに負けるまでは死んでやらんさ。それに、仮面ライダーに殺されるなんて、死んでもごめんだし……みんなだってそれは同じだ。絶対に見つけ出して、叩き潰す」
「今のうちから戦う気満々ね……いいことだけど」
「余だって戦う余!!」
あやめもやる気十分だな……そう思っていると、電話がかかってきた。学園長からだ。
「すみません、学園長から電話が……もしもし?」
『雪村くん、起きていたか……助かったよ。まずいことになったんだ。今すぐに戦ってもらわないといけない』
「なっ……仮面ライダーですか!? それともオルフェノク!?」
重苦しい空気。これは相当だぞ……一体、どんな奴が現れた? 体がでかい? すごい武器? スピード? 相手の情報がわからないことには……
『大変言い難いんだが……今回の奴は、そこまで強くはないんだ。そこまで破壊の規模も大きくない』
「……え?」
『拍子抜けなんだろう? 私もそうだったからね、気持ちはわかるよ』
弱い? それなら何故、あんなに焦っていたんだろう? 待てよ。あの時、書類に書いてあったよな……量産型の開発がどうとかって。俺は、修行に2ヶ月程かかってしまっている。
「もしかして……それは『一体だけ』の話ですか?」
『流石だね。もうわかったのか……そう。今回の相手は強さじゃない、物量だ。書類から推察するに、恐らく『ライオトルーパー』と見られる実体が凄まじい物量で襲ってきている、それも街中で暴れ回っているんだ……どうやら潜伏していたらしい』
「クソッ!! やらせるか……!! すぐに向かいます!! 奴らの居場所は!?」
好きにさせるわけにはいかない。早く止めなければ。
『街の中心部で暴れ回っているようだ……狙いは奴らが『危険因子』と呼ぶ39人を誘き出し、物量で潰すことだろうね。罠があるかもしれない、くれぐれも気をつけてくれ』
「策と頭には自信があります!! 奴らのチャチな罠なんか、逆に利用してやりますよっ!!」
「人間様、余も行く!!」
あやめがついて来た。だけど……
「ごめん。あやめは学園を守ってくれないか? これがもし陽動で、俺や強い人がいない所を狙おうとしているなら……それこそ奴らの思うつぼだから」
「私もここに残るわ、康太様。それに鷹嶺先生もいる、こっちは気にしないで。私と一緒に戦いましょう、あやめ様?」
「……わかった余! 学園には指一本触れさせない!! だから、絶対に勝て!!」
俺を信頼して、言ってくれた。俺は口角を上げて、走りながら答える。
「言われなくても……勝ってやるッ!! お前こそ怪我はするなよ、あやめ!!」
そう叫んで、学園の門を超えると……警察の車があった。
「乗ってください、急ぎます!!」
「助かりました!!」
「急がなくては……間に合わなくなる!!」
俺が寝てる間にこんなことに……悔やんでも仕方がないな、これ以上の被害は出させない!!
「到着しました!」
「ありがとうございます……おい、お前ら!! お目当てのエース登場だ!! こっち向け!!」
「……雪村康太か! 直ちに排除する!!」
黒いスーツに、ブロンズの鎧。真っ白な顔のライダーがいた……これがライオトルーパー。それにしたって、凄い量だ。だけど……!!
「やられてやるつもりは無い!! 全員灰にしてやる!!」
『Ready』
「カイザブレイガン……やはり所持していたか!!」
奴らが一斉に銃を構えた。いいチームワーク……だが!
「当たってやるほど、俺も甘くないんでね!!」
「っ、避けられ……グァァァッ!!」
「一人目!!」
落とした銃を拾って、カイザブレイガンと一緒に撃ち込む。こっちも命中率抜群、努力の成果は出ているな!!
「ぐわぁっ!!」
「がぁぁぁぁ!!」
「聞いてたから、わかってはいたが……量だけはいるんだな、お前ら!!」
20人以上いるな。こんな大群を一人で相手するのは骨が折れそうだ……そう考えながら、奴らのナイフを止めて、引き技を繰り出す。
「ぐふっ!!」
「隙ありだ!!」
「っが……!?」
後ろか、大群ともなるとこうなるよな……
「撃て!!」
「そんなもんが……効くかァァ!!」
「ぎぃぃ!?」
撃たれながら、撃ち返す。次々に灰になっていくな……辺り一面、灰の海だ。どんどん斬っていく……すると。
「待ちな!!」
「ん……?」
「助けてぇ!! 怖いよぉ!!」
男の子……? 逃げ遅れてしまったのか!?
「一歩でも動いてみな、こいつの命はねぇぞ!?」
「チッ……人質か……武器を捨てろ、って言うんだろ? お望み通り捨てたぜ」
「わかってんじゃねぇか……オラ!!」
銃で撃たれて、地に伏せる。
「お兄さん!!」
「うるせぇ、今すぐ殺されてぇか!? おい、そこのお前!! こいつにトドメ刺せ!!」
「了解……」
こちらにナイフを持ったライオトルーパーが近づいてくる……
「くそっ……もう、終わりか……!!」
「死ね、危険因子」
「……欲しかった言葉はこれか? 悪いな……カウンターファイト!!」
ナイフを躱し、腹をぶん殴る。鍛えた成果か、きちんと効いているようだな。そして、すぐさまカイザブレイガンを持ち直し、驚いて動きの止まったライオトルーパーに撃つ。すかさず剣をライオトルーパーに殴ったライオトルーパーに突き刺して、トドメを刺しておく。
「なっ……ぐはぁぁ!?」
「ギャアァァ!!」
「……怪我はないか? お父さんやお母さんは?」
「わかんない……先に行っちゃったから……」
こんなに小さいのに……怖かっただろう。
「よく頑張ったな。偉いよ……おんぶしてあげる、乗りな! ここからは俺が守る!!」
「ありがとう……!! 僕は神谷勇気、お兄さんの名前は?」
「雪村康太!! どこにでもいない、変な学生だ!! 覚えとけ!!」
男の子をおんぶしながら、斬りかかる。何発か食らったが、問題ない。こいつらは武器の扱いが下手だ……! 銃を躱して、間合いを保ちながら斬る。ナイフは受け流したり、叩き落としたりしながら、反撃していく。
「康太さん、大丈夫!?」
「平気だぜ……ありがとな。これくらいかすり傷、傷の内に入らん!!」
「わぁ……お兄さんかっこいい!!」
昔の俺なら、見捨ててたかもな……でも、俺は変わった。二度とあんなことはしない……誰かに助けて欲しいなら、まず自分が助けられるようにならなきゃ!!
「だぁりゃあぁっ!!」
「グァァァァ!!」
「……いた、一破さん!!」
ちょうどいいところに……ライオトルーパーを撃ちながら、進んでいく。
「くっ、やはり数が多いな……キリがない!!」
「隊長! あれは……」
「どんどん消えていく……もしかして……」
ライオトルーパーを斬って、みんなの前に姿を見せる。
「お待たせしました!! 雪村康太、ただいま参上!!」
「康太さん……その子は?」
「神谷勇気くんです。逃げ遅れてしまったみたいで……人質にされちゃっててね。でも、何とかなりました!!」
勇気くんを下ろして、語りかける。
「この人達についていけ、後は何とかしてくれるから!」
「お兄さんは?」
「俺はここにいる奴らを全員倒す!! 俺に任せときな、勇気くんの分まで戦うぜ!! ……あとはよろしくお願いします」
笑って語りかけると、勇気くんは言うことを聞いてくれた。
「はい、責任を持って送り届けます!」
「待って! お兄さんは……なんで強いの?」
「努力したからさ! 勇気くんも、大きくなったら努力してみろよ!! きっと……強くなれるから!!」
そう言って、ライオトルーパー共に向き直る。
「まだまだいますね……」
「でも、少なくなっています。これなら……いける!!」
「あともうひと踏ん張りだ、みんな!! 行くぞ!!」
一破さんが声をかけると同時に、俺が先導して突っ込む。後ろからは一破さんが援護をしてくれている……心強い味方ができたな!!
「そこだ!!」
「させるかっ!!」
「ありがとうございます、一破さん!!」
カイザフォンの正確な射撃、流石警察だ。
「このっ!!」
「撃たせるかよ!!」
「ありがとうございます、康太さん!!」
持ちつ持たれつで、戦いを続ける……
「これで……最後!!」
「この野郎!!」
「甘い!!」
剣でナイフを叩き落として、袈裟斬り。もう見当たらない、最後のようだな……
「ぐがっ……」
「康太さん、怪我は?」
「大したことないです、一破さんこそ……」
そう言うと、一破さんも首を横に振った。
「あなたのおかげで、傷は少ないです」
「それはよかった……ッ!? 危ない!!」
「なっ!?」
危険な気配がして、一破さんを思い切り突き飛ばす。案の定、そこに火炎が飛んできた。間一髪、どうにか躱したが……
「やはり、ライオトルーパー如きではお前を殺せんか。雪村康太よ……」
「お前は……オルフェノクみたいだな。なんのオルフェノクだ?」
「名乗っておこうか……俺はライオンオルフェノクだ。ライオトルーパーとの戦いで疲弊したお前なら殺せる、そう言っていた」
「俺も舐められたもんだな……」
そう言って、構える。まだまだやれるぞ。
「ほざくな!!」
「おっと……あちちっ、喰らったら丸焦げだ……!! いい感じに焼かないと、肉は美味しくないぜ!?」
「人間の肉など誰が喰うか!!」
両方に刃のついた槍を取りだし、攻撃を加えてくる。槍は一定の距離を保ちながら突き刺す武器、剣とは相性が悪いか。少し掠ってしまっている、中々上手い。
「だけど……こっちには銃がある!」
「避けられんと思うのか!?」
「私もいることを忘れるなよ!!」
カイザフォンによる射撃。それすらも避けてくる……訓練されてるな。ベトベトオルフェノクみたいに、一筋縄ではいかないか。
「ぬぅぅ、小癪な……!!」
「当たれ!!」
「断る!! 喰らえ!!」
火炎弾を撃ってきた……膠着状態だな。これを崩さない限り、どうにもならなさそうだ。こういう時は……
「……逃げる!!」
「おい、逃げるなっ!!」
「康太さん、どこに……!?」
ドアが完全に破壊されて、火炎弾のせいで燃えている家の中に入った。長居はできない、早く決めないとな。
「燃える家の中に入るとは、自殺か!?」
「康太さん、早く出てきて!!」
「……そこだ!!」
一発目でガラスを割り、次で牽制する。やっぱりこれ当たってないな。天井が崩れてくる、もう持たないか。
「何のつもりだ!?」
「まずい……早くするんだ、康太さん!!」
「言われなくても……見せてやるよ!!」
何発か撃った後、大袈裟に斜め上へと剣を投げた。そこから、わざと大きく足音を立てながら叫ぶ。
「うぉぉぉぉぉっ!!」
「……ジャンプして斬るつもりなのか!?」
「無駄だ!! 火炎弾を喰らえ!!」
撃ち込まれた火炎弾。普通なら、これに当たって丸焦げになるところだが……俺はそこにいない。
「……いない!?」
「なっ……何故だ!? もう家は崩れてきているのに……!! 一体どこから……」
「家を出るなら……玄関から出ないとな?」
玄関を飛び出して、奴の懐に飛び込んでいく。反応が間に合わないだろ……!!
「しまっ……!!」
「スマッシュ……ビート!!」
「ガハァァッ!!!」
当たったな……何発か殴った後、もう落ちてきていたブレイガンを回収して……練習通りに斬り裂いた。
「だりゃっ、だぁぁっ!!! ずぉりゃあぁぁぁ!!!」
「グガァ、ガ……おのれぇぇぇぇ!!!」
「私の存在を失念していたな……喰らえ!!」
二人で銃を構えて、一斉に撃つ。フォトンブラッドの弾幕が、ライオンオルフェノクを襲った。
「ギャアァァァァーッ!!!」
「これで……終わりだ!!!」
「ガ……ァァ……」
最後は、渾身の胴。奴の体が切れていく……蒼い炎が上がりながら、灰になった。
「ふぅ……何とか、倒せたな」
「まさか、燃える家に突っ込むなんて……無茶しすぎですよ!」
「あいつを欺くにはあれしかなかったのでね……」
何はともあれ、俺の勝ちだ。勝ててよかった……
「とにかく、お疲れ様でした。治療を受けに行きましょう……」
「それが終わったら、避難所に行ってもいいですかね? 勇気くんのことが気になってて……」
「お人好しは相変わらずですね……」
そう言われながら、病院に向かった。
「……傷は浅いですね。回復魔法でほとんど治ってるし、入院の必要はないかな……一応、回復薬の錠剤を出しますので、飲んでおいて下さい」
「わかりました。請求はホロライブ学園に!」
「はい、お大事に……毎回これだと嬉しいんだけど」
そんなことを言われながら、薬を貰い……避難所へと向かった。
「あ、お兄さんだ!」
「よう、勇気くん!! 無事で何よりだ!!」
「あなたが雪村さんですか? 勇気がお世話になりました……なんとお礼を言えばいいものか……」
そんなのはいい、勇気くんが無事なだけで十分。
「お礼なんて……勇気くんが無事なだけで十分ですよ。ライオトルーパーは全滅させたので、安心してください」
「またなんかやったのか、康太?」
「父さん!? ってことは……母さんも!」
避難してきていたのか。怪我は無さそうだな……
「その子を助けたの? 優しくなったねぇ」
「いや、人質にされてたから……ほっとけなくて」
「お前も変わったな……とにかく、顔が見られてよかったよ」
全然変わってないや、二人とも元気そうでよかった。
「お兄さんはね、かっこいいんだよ! 痛いことされても、全然気にしないの!」
「昔のお前からは考えられんな、注射が痛いって言って泣いてた奴が……」
「それは忘れてくれよ……」
まぁ、変わったのは事実だ。
「いいことじゃないの、男らしくなったんだから!」
「それもそうだな! でも、あんまり無茶すんなよ?」
「無茶しなきゃ、仮面ライダーは倒せないんだ……でもありがとう。嬉しいよ……」
楽しく話していると、お医者さんと思われる人が避難所に来た。
「こんにちは、私は医者です。重大な事実をお伝えしに参りました……」
「なんだ? 重苦しい雰囲気だな……」
「よく聞いてください。このままでは、あなた達は死亡します!!」
衝撃の真実。それって、俺もってことか?
「な、なに!?」
「オルフェノクの攻撃には、『オルフェノクエネルギー』と呼ばれるエネルギーを流し込む効果があります。それを受けた場合、灰となって死亡してしまうのです。ライオトルーパーの攻撃中にも、それらを撃たれていた人がいますよね? それは感染します……オルフェノクの攻撃を過去に食らっていた人以外は!!」
「そんな……嫌だ!! 死にたくない!!」
みんなパニックだ、俺は大丈夫らしいが……父さんや母さんは!!
「う、嘘だろ……?」
「嘘だって言ってくれ!!」
「本当です、医学的根拠もあります。論文なども、既に発表されています……ですが、ご安心ください。この薬を飲めば、それは打ち消すことができます!! 私はあなた達を救いに来ました!!」
そう言われて、みんなの顔に光が戻る。俺も胸を撫で下ろした。
「なんだ……よかった……」
「さぁ、皆さん早く服用を! 灰になってしまう前に! 一個一万円です!!」
「命に比べたら安い!! 頼むよ、くれ!!」
オルフェノクや仮面ライダーはわからないことが多すぎる。そんな能力があっても、何ら不思議なことじゃない……全員がそれを買った。父さんと母さんも。
「どうなることかと思ったけど……これで一安心だな」
「いや、本当によかったよ……」
「寿命が10年くらい縮んだ気がする……」
おっと、そろそろ帰らないとな。トレーニングとかもしなきゃいけないし。
「じゃあ、俺は警備とかトレーニングとかがあるから! またね!!」
「あぁ、またな!!」
「無茶し過ぎないのよー!!」
学校に向かって、また走る。みんなは大丈夫だろうか? 今日は走り込みをしなくてもよさそうだ、戦闘と移動で走りまくったからな。
「先生! あやめ! 大丈夫か!?」
「あ、戻ってきた! 人間様~!」
「あやめ! 怪我はなさそうだな……よかった」
どうやら、敵はそこまで来なかったようだな……
「10人くらいの小隊が来たけど、余裕だったよ。多少切られたけど、すぐ治ったさ」
「鷹嶺先生……! 無事でよかった!!」
「私も戦ったのよ? 三人で協力したら、すぐ終わったわ……敵はみんな灰になっちゃったけど……」
やっぱり中身はオルフェノクか……というか、ライオトルーパーの『エネルギー』は問題なかったのかな? いや、異種族だからいけたとか? 有り得るな……
「とりあえず、被害を少なくして乗り越えられてよかったです……オルフェノクエネルギーが、攻撃の時に注入されるとか聞いたんですけど……大丈夫でしたか? オルフェノクの攻撃を食らってないと、感染するらしいんですが」
「一応精密検査もしたけど、異常は見られなかったし……多分ないと思うわよ?」
「なら大丈夫か……すみません、変な事聞いちゃって」
先生に謝っておく。変な疑いをかけてしまったからな。
「構わないわよ? 心配するのも当然だし……こっちこそ被害を最小限に抑えてくれて、ありがとうね」
「人間様達のおかげだな!」
「あやめもありがとう、学校を守ってくれて。量産型のライオトルーパーとはいえ、一人でも逃せば大惨事だ」
褒め合う相手ができたのは嬉しいものだ。
「褒めるのが上手いな、人間様は!」
「そうか? でも、褒められて悪い気はしないな……」
「ふふ、仲良しね……」
談話もいいが、俺は修行をするんだった。いけないいけない。
「俺はトレーニングして来ます!」
「今日は戦いの日だったから、警備は免除だってさ……ゆっくり休んでくれよ」
「ありがとうございまーす!!」
トレーニングルームで、一通りのことをこなしたら、飯を食ってベッドに入る。それにしても……ライオトルーパーも恐ろしい能力持ちだな。
「これからは警戒しとかないといかんな……」
そう言いながら、目を瞑ると……俺は疲れもあり、すぐに眠ってしまった。
早朝2時頃。暁は、ある男と面会していた。
「……暁さん、計画は完了しましたよ」
「ご苦労だったな……」
「大変でしたよ。論文や証明の偽装、薬の作成から何から、全てを一週間でやって欲しいと言うなんて……ですが、計画は成功ですね」
暁は笑いながら、ご機嫌に言った。
「本当によくやってくれた。これなら、雪村康太や他の危険因子も……全滅は免れん」
「ナノマシン入りの錠剤……あれは一体? 作った私も、詳細を知らないのですが」
「フム、そろそろ教えてもいいか……あれはな? 特殊な電波、デモンズ・イデアを発するナノマシン……小型デモンズスレートだ。血液に乗り、脳内に侵入して電波を放つ。あれを使った者は、心の強い者でなければ戦闘本能の強制増幅に耐えきれずに狂人と化す……それが最高潮に達すれば、手から電撃を放つことが可能となる……あとはわかるな?」
それの正体を暁が言うと、その男は笑いを堪えるように腹を抑えて……耐えきれずに笑った。
「ハッハッハッハッハ!! そうか、そういうことか!! あなたもよく考えましたね……こんな惨いことを!!」
「だったらなんだと言うのだ……私の目的はただ一つ。命を救ってくれた会長への返しきれぬ恩を、一生かけて返すこと……それだけ。その邪魔をするなら……どんな手段を使ってでも、殺してやるさ」
二人は、この世の何よりもドス黒い笑みを浮かべている。研究者の方が、笑いながら揉み手で話をし始めた。
「へへ……それで報酬の方は……? たんまり貰えるんでしょ? ギャンブルで金が足りなくってねぇ……」
「あぁ、その話か。大丈夫だ、今出してやるよ……報酬はな?」
「報酬は……え?」
ぱん
乾いた音が響き、男の眉間に風穴が空く。その顔から笑みは消え、絶望のみが残っていた。
「鉛玉をくれてやる。あの世で使うといい……」
嘲笑うような笑みを浮かべつつ、暁は懐から何かを取り出した。
「安心しろ。お前の死は無駄にはしないさ……絶対にな。お前も私の力になるのだ……!! 会長、力を使います……」
暁がそう言いながら、手に力を込めると……手が黒く輝いた。そのまま、男の死体に手を向けた。
「お前の『全て』を寄越せ……!!」
暁が男の死体に触れると、その男はたちまち黒い塊になり、暁の手に吸い込まれた。
「悪くない量だ……お前の全て、貰っていくぞ。安心しろ、お前は我が愛しい会長の役に立てるのだから……!!」
笑いながら、手を見つめている。その笑みはさっきとは違い、誰かに心酔している目だった。懐から取り出した、綺麗なケース。その中には、一つの長方形の物体があった。
「会長がくださったこの力……絶対に無駄にはできない……」
真っ暗な夜道を歩いていくその顔は、どこまでも歪んだ忠義に染まっていた。
「ふぁ~あ……うん、いい時間。行くか」
なんだか外が騒がしいな……そう思いながら、外に出てみると……
「ぶち殺す!! ぶち殺すぅぅ!!」
「俺と戦えェェ!!!」
「死ぬのはテメェだぁ!!!」
そこには……地獄が、広がっていた。転がる死体、暴れ回る民衆。一日の内に何があったんだ?
「……なんだよ、これ……嘘、だろ……」
「お前も俺と戦えェ!!!」
「来んじゃねぇ!! 俺の獲物だァ!!!」
俺を狙って喧嘩をしながら、人々が突っ込んでくる。その顔は強い狂気と、本能に満ちていた。
悪夢の始まりです。