※この作品はR-18です。

仮面を被った、人間達の英雄譚   作:とも667

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 話が動きます。


パラダイス・ロスト

……雨の降り注ぐ夜のこと。暁はまた、誰かと電話をしていた。椅子に座りこんで、冬の雨のように冷たい声で話している。

 

「私だ。計画はどうなった? 簡潔に答えよ」

 

『はっ……『Demons・War』計画は失敗です。全員が警察とホロライブ学園の教師……及び、雪村康太によって鎮圧されました』

 

「やはりか……雪村康太め、やはり忌々しい奴だ。下戸川(げこがわ)の奴はどうなった?」

 

 その男は、さっきより少し軽快な口調で答えた。

 

『フロッグオルフェノクですね? 奴なら死亡しましたが……雪村康太の両親、雪村海斗と雪村美優を道連れにしましたよ』

 

「そうか……! 中々いい働きだな……褒めてやるぞ、下戸川。雪村康太はどうなった? もしも生き残った場合は殺すなと言ったはずだが……」

 

『重傷を負い、集中治療室にいます。絶対安静を言い渡されていますよ。殺してはいませんよ、奴が行動不能になれば、士気も大幅ダウン……危険因子共を殺しやすくなる。そうでしょう? 無闇に殺してしまって、第二の雪村康太が生まれては元も子もない』

 

 暁が笑みを浮かべる。これ以上ない程の狂気を込めて……言った。

 

「うむ。チャンスは今しかないな……精神ダメージも、あるのだろう? 与えるように言っておいたしな」

 

『はい、きちんと与えておきましたよ。意図的に言葉を省くことによってね……精神は身体に影響しますから。奴はしばらく悩むはずですよ、忌々しき仮面ライダーと同じで、優しさなどという世界一無駄なものを持っていますからね……』

 

「よし、よくやった。では……今からFAXでそっちに書類を送る。その通りに計画を遂行せよ」

 

 FAXされた紙を手に取り、男が驚いた様子で叫んだ。その反応を予測していたのか、暁は狂気の笑みを崩そうとしない。

 

『こんな大規模な計画を……!? まだ早いのでは……』

 

「思い立ったが吉日だ。危険因子の相手をするのもいい加減飽きた……そろそろ終わりにしよう。予算だって、無限じゃないしな」

 

『そうですか……私はもう少し遊びたかったのですがね、奴らの心で……』

 

 人の心を弄ぶ醜悪な精神に、笑って返す暁……会長のためなら、ライダーを殺すためならなんでもしていい。それがこの男達の精神だ。

 

「気持ちはよくわかるが、愛しい会長のためだ。早めに良い報告をお届けしたいしな……やってくれ。オペレーション『パラダイス・ロスト』開始だ」

 

『了解……オペレーション、パラダイス・ロスト。開始します』

 

「頼むぞ、山崎……フッ。奴らの顔もこれで見納めか……手間をかけて、奴の脳内チップのデータを消せるだけ消した甲斐があった……今日は祝杯を上げよう。ハッハッハッハ……!!」

 

 電話を切った暁は、子供のように足取り軽くどこかに歩いて行った。奴らの死体が見られることを、この世の何より楽しみにしながら。

 

 

 

 あの後……傷を早く治すには眠るしかないと思い、眠ろうとし続けたが……いつまで経っても、眠ることはできなかった。二人の言葉が脳内で反響し続ける。

 

『最後まで戦え』

 

「わかってるよ、父さんと母さん……仇は討つ。絶対に暁裕二の首を墓にお供えするからね」

 

 自分の命を投げうってまで助けてくれたんだ。俺は、絶対にその願いを叶えなければならない。だって、生き残ってしまったのだから。

 

「でも……俺だけ置いてけぼりだなんて、ちょっと酷いよ……」

 

 そう言って、俺は……誰もいない外を見つめ続けた。濁りきった水溜まりに、雨粒が落ちてゆく。俺にはその音が、失われた命達の嘆きのように聞こえた……結局、一睡もできなかった俺は雨音を聴きながら、医師の診察を受けていた。

 

「そう言えば、俺に状況を伝えてくれたお医者さんは? 忙しいんですか?」

 

「欠勤しているらしくて……何故かはわからないんですけどね」

 

「へぇ……まぁ、しょうがないか」

 

 お礼を言いたかったんだが、それじゃ無理だな。診察を一通り受けたら……

 

「……まだ絶対安静ではありますが、集中治療室にいる程でもないですね。個室に移動しましょう」

 

「ありがとうございます」

 

「病室まで運びますね」

 

 ベッドごと押されて、個室に入った。

 

「いつもお疲れ様です」

 

「いえ、仕事なので。では……」

 

「はーい……毎回迷惑かけちゃって、申し訳ないな」

 

 とはいえ、こればかりはどうにもならない。速やかに暁裕二を地獄に送り、首を跳ね飛ばして墓に供えねばならんのだ。

 

「最後まで戦うよ、約束だ。戦って……殺せるだけ殺す」

 

「人間様、大丈夫!?」

 

「……あやめか?」

 

 口を開こうとしたところで……無理矢理止めた。このまま話したら、迷惑がかかるだろう……あやめは優しい。俺が憎しみの権化になっていることを知ってしまえば、俺を心配して時間を浪費してしまう。なら……やることは一つ。

 

「そうだ余! 大怪我したって聞いて……!!」

 

「……あぁ、大丈夫!! 元気元気、さっさと運動したいんだけど、先生曰くまだダメらしくてな……残念無念!」

 

「それならよかった……先生達もすっごく心配してた余! 眼が無くなっちゃったとか……」

 

 眼や内蔵、血に至るまで全て母さんと父さんのもの。俺は生かされた、『最後まで戦う』ために。それが運命なら、従おう。

 

「うん、無くなった。でも大丈夫、すっかり元気だよ!! 雪村くんはいつだって元気が有り余っているのだっ!!」

 

「……今日の人間様、なんか変じゃない? もしかして、何か無理してる?」

 

「ッ、いや……そんなんじゃねぇよ! その~、あの……あやめが綺麗なもんでな! 動揺しちまって!!」

 

 嘘を考えろ。怪しまれない、自然な方法で。嫌われてもいいさ、これは『俺が』二人の願いを背負ったんだ。一人だけでやるべきなんだ……!!

 

「人間様いつもはそんなこと言わないよね? やっぱり変だ余……」

 

「ぐっ……あー……そうだ! 今は俺が弱ってる、そこを狙って、財団Xが仮面ライダーを送ってくるかもしれないだろ? だから、対策を必死で考えてるんだ!! 敵を騙すのもバリエーションがないとな!!」

 

「……なるほど! それなら納得! でも……なんで隠してたの?」

 

 痛いところを滅茶苦茶突いてくるな……何か誤魔化し文句を考えろ。巻き込んだら本末転倒だ。

 

「ほら、敵を欺くにはまず味方からって言うだろ? でもあやめはダメだったな、俺もまだまだ修行が足りん! 退院したらまた、一緒に修行してくれ!!」

 

「……うん! わかった、ともかく元気そうでよかった余!!」

 

「だから言ったろ? いつでも俺は元気だって! 心配はするな!! 退院したら勝負するんだ、くれぐれも鍛錬を怠るなよ~?」

 

 いつもの調子を再現して、言っておく。笑いは不自然ではないだろうか? 大丈夫かな?

 

「鍛錬は毎日してる余、大丈夫!! 早く病院から出てきてね?」

 

「わかってます! すぐ再生してやるさ!!」

 

「じゃあ、また来るから! お花はここに置いとくね!」

 

 花が置かれて、あやめは部屋を出た……どうやら演技は成功らしい。

 

「はぁ、はぁ……滅茶苦茶疲れるな、これ……俳優さんや声優さんを尊敬するよ……一般人がこんなことをずっと続けてたら、絶対死んじまうな」

 

 ベッドに倒れ込む。汗だくだ……昨日までできてたんだけどな、おかしいなぁ……

 

「憎しみにやられて、性格が捻じ曲がったか……まぁいいや。最優先事項は『最後まで戦う』こと、そして仇討ち。自分の心配をしている暇などない」

 

 戦争をしている軍人に余裕があったらおかしい。俺もそうなる時が来たのだ。甘んじて受け入れて、殺し合いをしよう。

 

「覚悟を決めろってことだな……わかったよ、父さんと母さん」

 

「雪村さん、お食事です」

 

「あ、お疲れ様です……食わねぇとな」

 

 正直、人の死体を見た後なので食欲が湧かないが……『戦う』ためだ。栄養は大事だしな。食事をよく見もせず、味わうこともなく……気がついたら、全て無くなっていた。

 

「よし、栄養は取れたな……さっさと治れよ、俺の体。暁に逃げられる前に!!」

 

 奴だって俺が怖いはずだ。俺は早急に奴らのターゲットを『危険因子全員』から、『雪村康太』一人に移さねばならない。みんなの日常を奪い続けるわけにはいかないのだ。

 

「最後まで俺と一緒に戦ってやる義理なんて、みんなには全くない。日常が無くなるのは誰だって嫌だ……そのために、俺や一破さんみたいな警察がいるんだからな」

 

 真実を口に出すことで、逃げ道を塞ぐ。俺は逃げない、もう二度と……そう思っていた時だった。

 

「うぁぁぁぁぁ!!」

 

「ぐぉぉえぇぇっ!!」

 

「……なんだ? 騒がしいな……」

 

 点滴を引きずって、外に出ようとすると……館内放送が流れた。

 

『緊急事態発生。患者、計947人が精神的不安定状態に陥った。直ちに対処せよ、繰り返す……』

 

「……あのナノマシンの影響を受けた人達か。ここまで計算済みか? 財団Xさんよ」

 

「急げ、間に合わなくなるぞ!!」

 

 看護師さんやお医者さんが走っていく……部屋に戻っていた方がいいな。邪魔になる。

 

「俺が協力しても意味はない……理由はどうあれ、殺し合いをした張本人に言われても仕方ないしな」

 

 ベッドに座り込みながら、そう呟く。トレーニングも出来ないので、とりあえず勉強をしておこう……だが、邪魔が入った。通知で、とんでもないことが送られてきたのだ。

 

『臨時ニュース・裁判所に武装テロ『クズ共に死刑を』テロリスト達の要求は、1000人超のナノマシン被害者達の死刑判決か』

 

「……今度はテロリストか。ナノマシンの一件よりその後の方が恐ろしいな」

 

『警察が鎮圧を試みているが、明らかに異常な数だとのこと。1000人できかない人数だそうです』

 

 そんなに多いのかよ……一体、何が原因なんだ? そう思って、twitterを開くと……

 

「すごい量の陰謀論だ、そりゃそうなるよな……原因は……なっ!?」

 

『速報 ナノマシン偽物の可能性 許されない市民の一斉テロ』

 

『情状酌量という名の狂気にテロを使って抗議します! テロにはテロを!!』

 

 ……ニュース全てで、嘘っぱちの記事が書かれている。こんなことができるのは、してメリットがあるのはひとつしか……

 

「財団、X……!! もう掌握されたってのか!? この国のマスコミは!?」

 

『これから病院にテロを行います!!』

 

『テロ犯に正義の鉄槌を!!』

 

 病院……ここかよ。奴らの目的は……

 

「俺ごと消そうってか……!? ふざけんなっ!!」

 

『武器の提供がどこかからされた!! これは神の恵みだ!!』

 

『今すぐにでも出発だ!!』

 

 まずい。今来られたら、迎撃のしようがない。俺だけじゃ、暴徒全員を止めるなんてとても無理だ。財団Xの武器まで持ってる……今回の奴らの目的は……

 

「病院の破壊か……!!」

 

 俺の復帰を止めるために病院を破壊する気か……国際法違反だぞ!!

 

「無理でもなんでも、行くしかねぇな……!!」

 

「落ち着いてください!!」

 

「あなたは悪くないんです、どうか思いとどまって!!」

 

 騒がしい病院の中を駆け抜けて、外に急ぐ。点滴を引き抜いて、強く圧迫しておく……よし、血は止まったな。カイザブレイガンは落としてきたが、戦わない理由にはならない。

 

「来るなら来い……俺が相手だ!!」

 

「ここだぞ、クズ共がいるってのは!!」

 

「お前ら、構えろ!!」

 

 もう来たか……お早い到着だ。

 

「テロリストご一行様、いらっしゃい……」

 

「なんだテメェ!?」

 

「雪村康太だ。簡潔に言う、お前らはデマに踊らされている、マスコミを信じたら……って、聞いてねぇな」

 

 俺を殺して進む気だ。今いる戦力は俺だけ、なら……守ってみせるさ。

 

「俺達は復讐のためにここに来たんだ!!」

 

「肉親を奪われる気持ちがお前にわかるか!?」

 

「貴様らのせいでぇぇぇ!!」

 

 肉親を奪われた人達……なら、話は通じないな。痛い程気持ちはわかるが、彼らも財団Xがどこかから持ち込んだ、理屈無視電波の被害者なのだ。殺させたら、それこそ財団Xの思うつぼ……

 

「テロに訴えた時点で、お前らはテロリストだ。彼らも財団Xに操られていたんだよ。間違ってるのはマスコミの情報の方だ……それだって、恨むべき財団Xの武器だぜ。それにあなたの肉親も、人を殺そうとしていたぞ。電波がある何よりの証拠じゃないのか?」

 

「嘘をつけ、クソ野郎!!」

 

「お前もテロリストの味方だな!? ぶち殺してやる!!」

 

 話を聞いてくれそうにもない……財団X関連なら、俺の仕事。絶対に止めねばならん……彼らが薬を飲むことを止められなかったんだからな。

 

「大変不本意だが……無理矢理にでも落ち着いてもらう。俺だって、そういう仕事に自分から就いてるんだ……悪く思うな!!」

 

「がはっ!?」

 

「テメェッ!!」

 

 人格を変えられて、操られていた人達を憎んでも仕方ない……そんな事実を知らない人達にとっては、彼らが極悪人に見えるんだ。意図的に隠蔽されていやがる……財団Xはそんなところまで根を張っていたか。日本政府も、もしかしたら……

 

「うぉっ……その武器は、ライオトルーパーの……!!」

 

「ライオトルーパー? まだくだらん屁理屈を並べてんのか!? これは支援者の救世主さんから受け取ったもんだ!! あの人こそ救世主さ!! この腕輪も復讐者の証として授かった!!」

 

「チッ、カルト宗教かよ……!!」

 

 暁の野郎、もうそこまで……そう思っていると、パトカーのサイレンが聞こえた。警察が来たらしい……

 

「待てっ!!」

 

「何度言ったらわかるんだ、さっさと奴らを死刑にしろ無能警察!! もうネタは上がってんだよ!!」

 

「それはデマなんだよ!! ナノマシンには強力な効果があった、人格を破壊する程の!! 今でも意識不明の人もいるんだ……ぐっ!!」

 

 一人撃たれた! やっぱり呼びかけは通じないか!!

 

「黙りやがれぇ!!」

 

「話は通じん、発砲しろ!!」

 

「邪魔すんなら死ね!!」

 

 撃たせるか。後ろから殴り飛ばす。

 

「ごぅっ!?」

 

「一破さん!!」

 

「雪村さん!? 何故ここに……怪我はどうしたんです!?」

 

 全然治ってないが……

 

「もう治りました、どうやら相当早くなっているようで……」

 

「そ、そうなんですね……カイザブレイガンは持ってきていないからな……大丈夫ですか?」

 

「大丈夫です、お構いなく」

 

 連戦……やってやろうじゃないか。

 

「復讐の邪魔を……するなぁぁぁ!!」

 

「一度信じ込んでしまえば、考えが変わることはない! 力ずくで鎮圧する!!」

 

「了解、隊長!!」

 

 デマを信じ込んだテロリスト。小難しい話は抜きにして、本質はそれなんだ……ならば、鎮圧するのみ。皆さんはカエル野郎のような外道じゃない。死んでしまえば悲しむ人がたくさんいる……

 

「死ねぇ!!」

 

「死なせない!!」

 

「げふぅっ!!」

 

 警察の皆さんも麻酔弾を撃っているが……やはり厄介なのは、ライオトルーパーの武装だ。如何せん殺傷能力が高い。既に、何人もの警察さんの死体が転がっている。

 

「今お前らが撃った警察さんにも、悲しむ家族が大量にいた。彼らは仕事をしていただけだ、殺してもなんとも思わないのか?」

 

「邪魔をしたんだ、死んで当然だろ!!」

 

「いくら憎いからって、敵と同レベルに堕ちてどうする!? 罪のない人を殺してなんとも思えないのは、明らかにおかしいだろう!!」

 

 仲間を失った一破さんの叫びは、テロリスト達の罵声にかき消された。

 

「罪がない!? 復讐の邪魔をした!! 殺す理由はそれで十分だぁ!!」

 

「復讐される人達にその筋合いが全くないと何度言えばわかるんだ!?」

 

「テロ犯の味方をするな!!」

 

 やっぱり、人間は恐ろしいな……一つのデマを信じ込んだら、ここまで残酷になれてしまう。財団Xだって、そういう奴らの集まりのはず……!!

 

「ぐっ!!」

 

「山田が撃たれた!!」

 

「今だ、入れ!!」

 

 しまった。こっちの相手をしている間に……気づいた時には既に遅い。もう、沢山の侵入を許してしまった。

 

「待て!!」

 

「行かせるか!!」

 

「くっ……!!」

 

 進めない、このままじゃ……中から破壊音が聞こえてくる。

 

「……そろそろいいか」

 

「なっ……誰だ!? どこから話して……」

 

「あ、あなたは……来てくれたのか!!」

 

 それは……あの時の医者だった。

 

「アンタも……財団Xの構成員だったのかよ!?」

 

「あぁ、そうだよ。自己紹介が遅れたな、私は山崎 聡明……我らが会長の右腕である、暁裕二様から重要な任務を預かった者だ」

 

「お前が黒幕か……!! 大量殺人、器物損壊の疑いで逮捕する!!」

 

 一破さんが前に出ようとしたのを止める。まずい気がする……!!

 

「話に聞いていた通り、いい判断だな、雪村康太……さて。ギミック作動といくか……スイッチオン」

 

「なんのスイッチだ!?」

 

「中継で内部映像を見せてやる、よく見ていろよ!?」

 

 監視カメラの映像が、タブレットに写った……火災用スプリンクラーから、ガスが噴射された。

 

『な、なんだっ!?』

 

『ガスか!?』

 

『なんだこりゃ!?』

 

 それを吸い込んだ人達が……すぐさま、灰になった。

 

「ッ、これはまさか……オルフェノクエネルギーか!?」

 

「ご名答。準備に苦労したぞ……休みの理由をでっち上げるのも簡単じゃない。そして……ここから本番だ!!」

 

『なんだ、これ……俺の体が……!!』

 

 患者の一人が、灰色の体になった……オルフェノクになったのだ。

 

「これは、書類に書いてあった『使徒再生』か……!! 今すぐにこれを止めろ、山崎!! もしも止めないなら……撃つ!!」

 

『Burst Mode』

 

「フォンブラスター程度で私が死ぬと思うのか? ほら、仲間の心配をしなくていいのか!?」

 

 こいつが来たことで士気が上がったのか、警察が押されている……!!

 

「この野郎!!」

 

「くっ……お前らの相手はしてられないってのに!!」

 

「オルフェノクのパワーは常人の何十倍もある……困惑している人達に与えたら、どうなるかな!?」

 

 最初からこれが狙いで……!!

 

「貴様ァ!! それでも……この世界に生きる人間か!?」

 

「私は異世界の人間だ! この世界の倫理なんぞ知らんなぁ!!」

 

『なんだよこれぇ!! 元に戻してくれよぉ!!』

 

 パニックになって暴れる人達が、備品や部屋を壊していく。

 

『この力はきっと救世主様がくださったんだ!! 暴れてやる!!』

 

『選ばれなかった仲間の分まで!!』

 

「……そして、計画はこれで完成する!!」

 

 取り出されたのは、一本のベルトとガラケー……だがカイザとは色が違う。

 

「それは……仮面ライダーのベルトか!?」

 

「その通り!! 思い知らせてやろう、帝王のベルトの力をな!!」

 

『Standing by』

 

 やめさせないといけない。一破さんが銃を構えた。

 

「やめろっ!!」

 

「おっと」

 

「がぁぁ!? 救世主様、何故……」

 

 一破さんがフォンブラスターを打ち込むと、奴はなんと近くにいた人を盾にした。

 

「お前が近くにいたからな。悪いが犠牲になってくれ。正直言って、もう用済みなんだ……お前らはな」

 

「あ、が……」

 

「何故!? 私達はあなたを信じて……」

 

 奴が手の中にあったスイッチを押すと、一斉に人々が苦しみ始めた。

 

「ぐぁぁ、ぁ……!!」

 

「致死毒だ。こういう時のためにな……ハッ。使えない愚か者共めが」

 

「お前、なんて事を……!!」

 

 奴は鳴り続ける携帯を握りしめて、上に放り投げた。

 

「今すぐ永久に黙らせてやるぞ、雪村康太!! ついでに一破誠二!! 変身!!」

 

『Compleat』

 

「今度は……青!?」

 

 青い光が体を包み……光が止むと、白と青のライダーになった。

 

「これが『天』の名を冠する、帝王のベルトの片割れ!! コールナンバー315……サイガだ!!」

 

「サイガだと……!?」

 

「あぁ、病院がどんどんボロボロに……!!」

 

 それを笑いながら見つめるサイガ。俺は殴りかかったが……なんと、奴は驚きの行動に出た。

 

「おっと!」

 

「な……飛んだ!?」

 

「これが『天のベルト』サイガの装備、『フライングアタッカー』さ!! そろそろ破壊もいい感じだし……私がトドメを刺すとしようかな?」

 

 とんでもないスピードだ、飛行機よりもずっと速い。ここに来て、とんでもない奴が出てきたな……!!

 

「何をする気だ!?」

 

「よく見ていろ、こうするんだよ!!」

 

「な……やめろぉぉ!!」

 

 フライングアタッカーから出た銃が、病院に向かって構えられた。撃つ気なんだ……そうはいくか。一破さんと一緒に病院の中に入って、止めようとしたが……

 

「遅いわ!!」

 

「ぐぁぁぁぁっ!!」

 

「一破さ……がぁぁぁっ!!」

 

 二人共食らってしまった。二人で階段を転がり落ちた……病院が崩れていく……

 

「だ、誰!?」

 

「お望み通り殺してやるよ!!」

 

「ひっ……ぎゃあぁぁぁぁ!!」

 

 どんどん患者さんが撃たれていく。これ以上やらせるわけには……!!

 

「ハハハハハッ!! 愉快愉快ィ!! ほら、ムカつくなら止めに来いよ!! 雪村ァ!! ガスはもう消えてるんだ、入ってこいよ!!」

 

「……殺す!!」

 

「やってみろ、人間風情が!!」

 

 奴のいる上階へと登っていく……いた!!

 

「次はお前だ!!」

 

「うぎゃあぁぁっ!! な、何故ぇ……」

 

「くそっ、遅かったか……!!」

 

 一破さんの援護射撃を頼りに、敵に突っ込む。スマッシュビートの構えだ。ただし、手の中には破れたシーツを握りしめて。

 

「スマッシュビートォ!! ……なんてな?」

 

「うぉっ……シーツだと!? ふざけやがって!!」

 

「ふざけちゃいねぇさ、前が見えねぇだろ!?」

 

 そう言って、殴りかかったが……拳は空を切った。

 

「ノロマめ、そんな速度でサイガに追いつけるか!!」

 

「チッ……!」

 

「このっ……くそ、弾切れか!!」

 

 サイガが一破さんに銃を向けた、やらせるか!!

 

「死ね、一破!!」

 

「っ!?」

 

「一破さ……ぐぅあっ!!」

 

 庇って、代わりに食らう。思わず膝をついてしまった……でも、弾の補給はできたな。

 

『Charge』

 

「そんな、どうして……!?」

 

「……最後まで戦って死ぬのは、俺だけでいい!!」

 

 立ち上がって、また構える。

 

「しつこい。敵わんという事実すらもわからんのか?」

 

「どうかな? お前はもう罠にかかってるかもよ?」

 

「ハッタリを言いやがって!! もう一発喰らえ!!」

 

 そう来るよな。そのための仕込みだ!!

 

「……かかったな!!」

 

「は? ……うぐぁ!?」

 

「え……サイガの銃が、片方暴発した!?」

 

 成功。こいつの趣味が悪いからこうなったんだ!

 

「き、貴様……何をした!?」

 

「簡単さ、お前らがスマッシュビートを食らうのを避けたいなんて、今までの行動を見てればわかる。どうせ、避けられちまうなら……そう思って、シーツを詰め物にしてやったんだ!!」

 

「く、くそぉッ……この私に手傷を負わせるとは……!!」

 

 賭けだった。入らなきゃ、次のプランを考えるところだったけど……成功だぜ。

 

「やっぱり頼りになりますね……!!」

 

「ぐぅっ、一破ァ……!!」

 

「話に集中してお前の攻撃を見逃す程、私も甘くはないんだ!!」

 

 フォトンブラッドは奴らの弱点……効いてるはずだ。

 

「自分のフォトンブラッドの味はどうだ!?」

 

「許さん……許さんぞぉっ!!」

 

『Ready』

 

 奴はメモリを差し込んで、剣でも槍でもない何かを取り出した。

 

「一破さん、あれは?」

 

「……トンファーか? 実際に見たことはないが……」

 

「こいつの威力を思い知らせてやる!!」

 

 フライングアタッカーをパージして、こちらに向かってきた。接敵されたら、俺の出番だ。

 

「一破さんは援護を!! 俺が相手します!!」

 

「えぇ!!」

 

「うらぁ!!」

 

 トンファーが突き刺されるのを、体を捻って躱したら……今度こそ。

 

「スマッシュビート!!」

 

「食らうか!!」

 

「なっ、回った!?」

 

 俺を軸にして回転し、後ろに回り込んだサイガ……まずい、食らってしまう。

 

「やらせるか!!」

 

「おっと、危ない」

 

「なに!?」

 

 カイザフォンから放たれた弾は、サイガには当たらずその後ろにいた俺へと向かい……命中した。

 

「ぐぅあ!! くっ……」

 

「雪村さん!! チッ……!!」

 

「隙あり!!」

 

 防ぎきれずに、腹を切り裂かれた。二本持ちなので、次の一撃がすぐさま飛んでくる。カウンターしようとしたが、トンファーで防御されてしまう。

 

「うがっ、ぐ……カウンターファイト!!」

 

「当たってやるものか!!」

 

「がはっ!!」

 

 先端の鉄槌を喰らって、大きく吹っ飛ばされた。部屋に突っ込んで、犠牲者の灰まみれのベッドにぶつかる。

 

「無様だな……撃ってみろよ、一破? どうした?」

 

「くそっ……!!」

 

「撃てないか? 臆病者め。お前から殺させてもらうぞ、雪村ァ!!」

 

 やられる。そんなわけにはいかないんだ……何かないか? 周りを見渡すと……ベッドの下に何かある。それを急いで握りしめた。

 

「死ね、雪村!!」

 

「雪村さん!!」

 

「……ヘッ」

 

 落とし物のお陰で命拾いしたな……! 振り下ろされる前に、銃を撃った。

 

「がぁぁぁぁっ!? それは……!! アクセレイガン!?」

 

「どうやら今ので弾切れのようだが……そら、喰らえ!」

 

「ぐっ!!」

 

 ナイフに変えて、投げつけた。怯みを誘って、そこに全開の一撃。ナイフを押し込みながら、拳を叩き込んだ。

 

「スマッシュビートォォ!!!」

 

「ごふっ、が……ぐぁぁぁっ!!」

 

「よし……!!」

 

 奴は壁を突き破って、違う病室に突っ込んだ。このままいけば……!!

 

「……運が向いているのは、お前だけではないようだぞ? 雪村康太、一破誠二」

 

「やだよぉ!! 助けてぇ!!」

 

「なっ……君は……勇気くん!?」

 

 オルフェノクになっていても、声でわかる。

 

「こんなところに生き残りがいたとはな、嬉しい誤算だ……ごほっ、ごほ……さぁ、攻撃してみろ! こいつを盾にしてやるぞ!!」

 

「ひ、卑劣な……!!」

 

「くそぉ……!!」

 

 攻撃できない。一方的に攻撃を食らってしまう……踏み込みと同時に、青い刃が俺達を切り裂いた。

 

「何とでも言うがいい!!」

 

「がはぁっ!!」

 

「うぐぁぁぁ!!」

 

 トンファーの攻撃と、奴の拳を食らって……体中の骨が砕けた。

 

「さてと、そろそろトドメを刺すか……!!」

 

「お兄さん、僕はいいから……!!」

 

「黙っていろ、クソガキ!!」

 

 このままじゃ、三人共殺されてしまう。何かないか? そう思ったが……何一つとして、思いつかない。助けは来ない。

 

「終わりだ、危険因子よ!! 消えるがいい!! ……ん? なんだ、こんな忙しい時に!?」

 

「電話……?」

 

「もしもし……暁様!? なんの御用で……作戦変更? はい、はい……わかりました。すぐに帰還します……命拾いしたな、危険因子共……だが、こいつだけは殺させてもらう!!」

 

 勇気くんを指さして、奴が叫んだ。そんなのダメだ。

 

「死ね、クソガキが!!」

 

「や、やだぁ……うわぁぁぁぁーっ!!」

 

『Exceed Charge』

 

 無慈悲にトンファーが振り下ろされた。俺は……いつの間にか、勇気くんを庇っていた。火事場の馬鹿力ってやつかな? 胸を切り裂かれて、血反吐をぶち撒ける。

 

「ご、ぼぁぁ……がぼぁっ!!」

 

「うっ、汚いっ……!! くそ、時間がないか……畜生!!」

 

「お兄さん!! お兄さぁん!!」

 

 ダメだ、完全に体力を使い果たした。心臓が傷つけられたのか……血反吐が止まる様子がない……終わったか。

 

「雪村さん、しっかりして!! ……ッ、病院が崩れ始めた!!」

 

「逃げないと……!!」

 

「私についてきて、勇気くん!! 雪村さん……!!」

 

 俺はそのまま、意識を飛ばしてしまった。




 負けてしまいました。
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