※この作品はR-18です。

仮面を被った、人間達の英雄譚   作:とも667

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Gray sky,fall down

……計画実行前夜、財団X日本支部。山崎が明日のことを考えて、そわそわしていた。その顔には、前のような笑みがべったり張り付いている。

 

「あぁ、楽しみだなぁ……どんな風に殺してやろうか? 四肢をもいでやろうかな? それとも蜂の巣にしてやろうかな?」

 

「山崎様。暁様からお電話です」

 

「そうか……お電話変わりました、山崎です」

 

 山崎がそう言うと、暁の声が聞こえてくる。

 

『山崎……傷はどうだ、治ったか』

 

「ご心配には及びません。スマートブレイン社の蘇生技術を応用すれば、この程度の傷……」

 

『ならいい。明日の計画、必ず成功させろ……死んでもな』

 

 念を押す暁に対して、笑みを崩さずに答える山崎。

 

「もちろんです! 必ずや、奴らを殺してご覧に入れましょう!! ……そういえば暁様。何故……そこまで『危険因子』の排除に拘られるので? 奴らは仮面ライダーの力を持たない。こちらの居場所の手がかりも与えてはいないし……さっさと成功させて、撤退すればいいのでは?」

 

『……そうできるなら、そうしている。だがな、理屈では説明できないものがこの世界にはあるのだ……仮面ライダー共の世界と同様にな』

 

「説明できない、もの……?」

 

 暁の声から、怒りが漏れ出す。それは山崎に向けられたものではなく、幾度となく会長の計画の邪魔をした、仮面ライダーに向けられたものだ。

 

『貴様も知っているだろう。これまで、ライダーの力を封じ込めたり、脅威のひとつである『ハイパームテキ』への対抗策を講じたり……様々な手を使った。だが……その度に奴らは強くなり、力を手に入れて……我々を殺しに来る』

 

「それは仰る通りで……しかし、雪村康太はライダーではありませんよ?」

 

『……計画の確実な成功のため、財団Xの技術で平行世界観測を行った。それにより、わかった事実は……強大な敵などは全て、それぞれの並行世界の危険因子達……即ち、ホロライブ学園の構成員計39人によって、必ず討ち倒されてしまっている』

 

 衝撃の事実。山崎も知らなかったのか、驚いている。暁の歯軋りが、電話越しに響く。

 

「なっ……それが本当なら……」

 

『あぁ、我々が計画を進めたところで……一種の『世界法則』により、成長した危険因子に……我々は皆殺しにされるだろう。そうでなくとも、人員や機材の大幅な損失は免れない』

 

「つまり、暁様が危険因子共を殺そうとするのは……」

 

 暁が、頷く。

 

『うむ。お前の言う通り、まだ奴らは未熟……ライダーの力も所持してはいない。今、まだ殺せるうちに殺してしまわねば……会長に無様な敗北を見せることになりかねん』

 

「そうか……やはり、暁様は聡明なお方だ。ライダーになられる前に芽を摘んでしまおう、と……」

 

『奴らは、どんどんこちらの技術に近づいてきている。雪村康太もカイザブレイガンを所持しているし……兎も角、倒すのが遅くなれば遅くなる程、奴らは強くなる。もっとも……今回の作戦はそれを利用するプランもあるがな』

 

 暁がそう言って、山崎が笑った。

 

「暁様……必ずや成功させます。例え、私が死んでも……会長への愛は不滅です!!」

 

『そう、全ては会長のため! 我らが会長に光あれ!!』

 

「光あれっ!!」

 

 電話が切れて、口角をさらに上げる山崎……

 

「……電話を回収します」

 

「私は明日に備えて眠る。じゃあな……覚悟しろ、危険因子共……強くなる前に叩き潰してくれるわ!!』

 

「支部長、おやすみなさい」

 

 山崎は笑いながら、眠りについた。殺しへの悦楽を、隠そうともせずに。

 

 

 

「……ん」

 

 目覚ましが鳴って、起き上がる。今日は決戦の日……覚悟を決めないとな。着替えなどを一通り済ませて、朝食を取るために部屋のドアを開けると、一破さんがいた。もう着替え終わって、準備万端だ。

 

「おはようございます、雪村さん。よく眠れましたか?」

 

「お陰様で。一破さんこそ、寝心地はいかがでしたか? 枕が変わると寝られないとかは……」

 

「ハッハッハ、大丈夫ですよ。どこでも寝られる性分なもので」

 

 あやめは今日、パーティーがあるって言ってた……そういう人達が集まるってことは、しっかりした服装で入らないといけないよな……服、全部破れてたし……着替えはあるけど、正装はない。どうしようか……

 

「タキシード買わないと……パーティー狙いは確実ですし」

 

「そもそも、こういうのって招待状が必要ですよね……入れてもらえるのかな?」

 

「冗談じゃないぞ、入れないなんて……」

 

 あやめの独断じゃ無理だろうし……どうするかな。

 

「とりあえず、タキシードを借りられるところを探しましょうか」

 

「ですね……」

 

「はぁ、悩むところが違うような……」

 

 そう言って、飯を食べたら……チェックアウトして、外に出た。

 

「さてと、服屋さんは……あったな」

 

「礼服とか売っているみたいですよ? 着付けもしてくれるらしいです」

 

「そりゃあいい、ここで買いましょう」

 

 店内に入って……あった。これだな?

 

「9300円……まぁまぁするな」

 

「仕方ありませんよ。安い方です、買いましょう」

 

「すみません、これ下さい」

 

 二人でお金を払って、着付けをしてもらう。高いけどあやめ達を守るためだ……よし、できた。

 

「着ることができたけど……どうやって入ります?」

 

「そこなんだよな……」

 

「……みんな入っていってますね。多分、もうすぐ始まるのでは?」

 

 奴らがいつ行動するかはわからない……早く行かないとならないってのに。

 

「誰かに知らせていいなら、捜査令状を出せるんですが……山崎の脅しを聞く限りだと、無理そうですし」

 

「というか、身体検査とかで気づかれないんですかね? サイガのガラケーとベルト。ガラケーはともかく、ベルトはおかしいですよ」

 

「確かに……何か別の手段を使うのか?」

 

 一破さんと考えながら、屋敷の前で鍵の閉まった扉とにらめっこする。そうしていると……ヘリの音が聞こえた。

 

「……あれ? ヘリからハシゴが出てますよ?」

 

「まさか……天井から侵入するつもりか!?」

 

「嘘だろ!? 行きましょう!!」

 

 サイガフォンはきっと奴らが持っているんだ。追うしかない……天井に気を登ったりしてどうにか登ると、案の定人がいた。

 

「おい、財団X!!」

 

「……無視か!! 入られた、急ぎましょう!!」

 

「はい!!」

 

 サイガフォンを渡させるわけにはいかない。天井に開けられた穴から、俺達も後を追う。

 

「どういう原理で通路を作っているんだ……!?」

 

「……通気口に出ましたね」

 

「ここから手渡すつもりか……!」

 

 後を必死に追う……奴らの姿はなく、開いた通気口のみがあった。

 

「屋敷の中に逃げたか、追いますよ!!」

 

「えぇ!!」

 

「ここは……トイレか? もう逃げられたようだが……」

 

 外に出てみると……SPと思わしき二人が倒れていた。

 

「なっ……大丈夫ですか!? しっかり!!」

 

「……!? 体が灰になって……」

 

「オルフェノクエネルギー……ってことは……!!」

 

 もう侵入されてる、この中にいるんだ。急いで走り、声のする方へと向かう。

 

「ここか……どう説明するんです? 私は思いつきませんよ」

 

「とりあえず、ちょっと開けて中の様子を……」

 

「皆さん、本日はお集まりいただき誠にありがとうございます」

 

 挨拶をしているところだった……あやめがいて、女の人と男の人がいる。どっちも鬼だ、お父さんとお母さんだろう。

 

「皆様との親睦を深めるため、今日は存分に楽しんでいただきたい所存です」

 

「偉い人ばっかりだ……SPもたくさんいるな」

 

「誰が誰かわかりませんね……顔もサングラスでわからないし」

 

 くそっ、判別ができない。誰が山崎なんだ? 自分を探せってか、山崎!?

 

「それでは……我々の親交がより深まることを願って……」

 

「乾杯しようとしてますよ、した瞬間なにか起こりそうです……!!」

 

「くそっ、もう行くしかねぇか……一破さんは何も喋らないで、嘘がつけないんだから!!」

 

 一破さんと同時に、入り込む。そして……全力で叫んだ。

 

「乾ぱ……」

 

「待ってください!!」

 

「警察の者です……怪しい者ではありません」

 

 一破さんが名乗ってくれたのに合わせる。

 

「康太様……それに、人間様? なんで……」

 

「知り合いか? だが……何故ここにいる」

 

「落ち着いて聞いてください。この中に……皆さんご存知の仮面ライダーサイガがいます!!」

 

 全員が一気に慌て始めた、そりゃそうなるよ。

 

「そ、そんな……!! 嫌だ!!」

 

「死にたくないっ!!」

 

「その男の名前は山崎。狙いは……百鬼家の跡継ぎ、百鬼あやめさんです」

 

 あやめとその家族が驚いた様子だ……まぁ、そうなるだろうな。

 

「えっ……な、なんで余なの!? 財団Xの狙いは学園じゃなかったっけ……?」

 

「そうだ……そもそも、情報が不確定すぎる。お前こそサイガではないのか?」

 

「怪しいですね。信用できません」

 

 まぁ、そうなるよな……わかっていた。

 

「そんな……!!」

 

「一破さん、大丈夫です……僕に任せて」

 

「随分と自信たっぷりだな……証拠があるのか?」

 

 今はない。だけど……作ることはできる。

 

「……一破さん、カイザフォンを」

 

「え、いいですけど……何に使うんです?」

 

「そんな怪しい奴、さっさと追い出せ!!」

 

 タイムリミットが近いな。賭けるしかない……メモリだけを抜いて、カイザフォンを握りしめた。

 

「何やってんだよ!?」

 

「……そういうことだ、こっちに来ていただきま……」

 

「そぉらぁぁ!!」

 

 カイザフォンを、人々の中に投げた。

 

「こ、康太様!? 何やってるの!? おかしい余!?」

 

「雪村さん、せっかくの武器を……!! 正気ですか!?」

 

「あー、焦って投げてしまった!! やっとカイザに変身できる人が出てきたのに!! これじゃ水の泡だ!!」

 

 わざと大きな声で叫んでおく……カイザフォンの場所はわかってる、そっちに急いで走った。

 

「どこへ行く!? おい、待て!!」

 

「カイザフォンはどこだぁ!? ……あった!!」

 

「ぐっ!?」

 

 カイザフォンを掴んでいた手に、爪を立てる。成功だ……!!

 

「おかしいな……なんでアンタが、カイザフォンを欲しがるんだ? えぇ!?」

 

「おい、返せ!!」

 

「断る!!」

 

 思いっきり殴り飛ばそうとしたが……躱された。だが見つけたぞ……カイザフォンを投げて、一破さんに渡す。

 

「うぉっ……まさか、全て計算の上で……!?」

 

「そういうことだよ……よく餌に引っかかってくれたな、山崎!!」

 

「チッ……今の話、本当か!? カイザに変身する者が現れたというのは!!」

 

 無論、嘘っぱちだ。だけど……それでも、怖いだろう。忌々しい仮面ライダーが敵になってしまったなら!!

 

「嘘だよ、山崎! 疑似餌ってことさ! 出てきてくれてサンキュー!!」

 

「くそぉ……プラン1失敗、プラン2に移行する!!」

 

「徳山さんが偽物……本物をどこにやった!?」

 

 あやめの父親さんが声を荒らげた……山崎は相変わらず笑みを浮かべている。

 

「さぁな? 私は知らん、見つかりにくい場所に隠せと部下に言ったからな……気になるなら、見つけに行ったらどうだ?」

 

「くそっ……!! サイガァ!!」

 

「お前らの相手をしている暇はない!! 行け!!」

 

 SP達がベルトを出した……ライオトルーパーか!!

 

「変身」

 

『Complete』

 

「ライオトルーパー……!! 皆さん、早く逃げて!!」

 

 一破さんが避難誘導を始めた。俺は戦闘準備をする。

 

『Ready』

 

「今度こそ逃がさん。死んでもらうぞ」

 

「死ぬのはテメェだ……今度こそ思い知らせてやるよ!! サイガの恐ろしさをな!!」

 

 奴が番号を入力して、ガラケーを閉じた。

 

『Standing by』

 

「変身!!」

 

『Complete』

 

 青い光子に包まれて、奴の姿が変化する……仮面ライダーサイガだ。

 

「あれが、康太様の言ってた……」

 

「今度こそ潰す!!」

 

「死ぬのはテメェだ、山崎!!」

 

 奴が飛んだ、フライングアタッカーだ……まずは撃ち落とさねぇとな。

 

「食らえ!!」

 

「おっと……お返しだ!!」

 

「うぉっ、流石だな雪村……だが!!」

 

 やっぱり当たらない、奴は一方的に攻撃してきている。その上……ライオトルーパーもいるしな。

 

「撃て!!」

 

「ぐっ……くそ、あやめと二人も囲まれてんのか……なら助けねぇと……!!」

 

「そんなことができる暇があるのか!?」

 

 できる。しないといけないんだ、最後まで戦うんだからな。

 

「やってやるさ!! サイクロン……スラッシュ!!」

 

「ギャァァァ!?」

 

「新技か? そんなもの……!!」

 

 何人か灰にしたが、また近づいてきた。なら……こうだ!!

 

「もう一発……サイクロンスラッシュ!!」

 

「馬鹿の一つ覚えのように……それしかできんのか!?」

 

「オマケだ、持っていけ!!」

 

 回りながら、引き金を何度も引く。銃弾が周囲に掃射されて、ライオトルーパーを蹴散らす……

 

「グァァァッ!?」

 

「ガァァッ!!」

 

「……ライオトルーパーの数が少ないな。これで十分ってか? 舐められたもんだ」

 

 奴の方に向き直る。攻撃を避けながら、挑発しておいた。

 

「ムカつく野郎だ……!!」

 

「そっくりそのまま返すぜ、山崎」

 

「黙れぇぇッ!!」

 

 こっちに狙いが移ってるな、あやめと二人は大丈夫だろうか?

 

「……らぁぁっ!!」

 

「ぐがぁ!?」

 

「この!! ……なに!?」

 

 後ろから父親さんを刺そうとしたライオトルーパーの腕が、丸太のように太い腕に掴まれた。

 

「そんな程度で……私を殺せるものか!!」

 

「ごぶっ!!」

 

「流石あやめの父親さん、強いな……」

 

 母親さんは避難誘導をしに行ったらしい……もうライオトルーパーもいないな。

 

「これでまた、お前一人だな!?」

 

「何を抜かす……フライングアタッカーがある!! 破壊されなければ、私は無敵だ!!」

 

「どうかな、調子に乗って飛びすぎると……神の怒りを買って、雷が落ちるかもよ!?」

 

 明らかにイライラしている、落とす方法は思いつかないが……色々試すほかないだろう。

 

「サイガは天を支配するライダー……愚か者(イカロス)のように地に堕ちるなど有り得ん!!」

 

「有り得ないは……事故する人の言う言葉だぜ!!」

 

「抜かせ!!」

 

 奴の撃つ弾を避けて、撃ち返して避けられて……膠着だ。なら……

 

「やってみる価値はあるな!!」

 

「康太様、余も……!!」

 

「逃げろ!! 巻き込まれるぞ!?」

 

 大きな声で言ったが……しまった、サイガに気づかれた。

 

「まだいたのか? 好都合だ、お前が食らえ!!」

 

「チッ……グレイトスラッシュ!!」

 

「また新技……それだけあれば、勝てるとでも?」

 

 お互い、笑みを浮かべている。奴も仮面の下で浮かべていることだろう。

 

「それだけじゃないさ……舐めてると、また罠に嵌るかもよ? 精々、気をつけろ!! ほら、あやめもお父さんも逃げて!! 僕は大丈夫ですから!!」

 

「……あやめ、行くぞ。徳山さんも探さねばならんしな」

 

「え……でも!!」

 

 前の件があるから、心配なのだろうか?

 

「心配するな……絶対に負けない!! 安心して、大船に乗ったつもりで逃げてろ!!」

 

「泥舟の間違いじゃないのか、ん?」

 

「お前こそ泥舟だろ。お前に責任を乗っけた暁は余程の阿呆だな」

 

 こちらに注意を引きつける。早く逃げてくれ……

 

「……任せたぞ、雪村さん。私の名は……百鬼 柊真だ!! 妻の名は百鬼 百合香、覚えておいてくれ!!」

 

「任せてください、柊真さん」

 

「一々ムカつく野郎だ……!! 暁様を侮辱するのは万死に値するぞ!!」

 

 撃ってきてるけど……完全にこっち狙いだ。逃げてるから、追っても意味が無いと判断したか。

 

「お前が人の命を侮辱するのは万死に値しねぇのか?」

 

「その辺の有象無象など……使い捨てに決まっているだろう!! 仮面ライダー殲滅のため、そして史上目的である崇高なる計画のための犠牲になれるのだ!! 喜ばしいことだろう!?」

 

「やっぱり……心まで、完全に怪物か!!」

 

 相手だけ高速移動できて、その上空中から攻撃できる。どうするかな……

 

「……やるしかないか!!」

 

「もう引っかからんぞ!!」

 

「食らえ、ダッシュスラッシュ!!」

 

 思いっきり、切り裂く。やはり避けられた……そこでダイヤルを回して、最大出力にした。熱が一気に強くなる……使いにくいから、使ったことはなかったが……!!

 

「フン、そんなものには……!?」

 

「当たれ!!」

 

「ぬぅぅっ!?」

 

 当たるかと思ったが……奴の体を掠めただけで、フライングアタッカーを破壊することはできなかった。すぐ元に戻す……

 

「チッ……この野郎、調子に乗るなよ!!」

 

「な……!?」

 

「空の旅をプレゼントだ、行先は地獄だがな!!」

 

 サイガは俺を掴んで、フライングアタッカーで一気に飛行した。風圧に耐えるために、顔を腕で隠す……腕が嫌な音を立てて折れていく。まずい、落ちたら即死だ。

 

「そら、落下だぁ!! もし私を吹っ飛ばしてみろ、お前はパラシュートなしのスカイダイビング体験をすることになるぞ!? 詰みだ、諦めろ!!」

 

「……どうかな……!? お前も一緒に落ちてもらうぜ!!」

 

「は?」

 

 今思いついた……奴のメモリーを、サイガフォンから引き抜いて……フライングアタッカーに刺してやると……トンファーが出てきたので、投げ捨ててやった。

 

『Ready』

 

「なにィ!?」

 

「ヘッ……」

 

 案の定フライングアタッカーがパージされて、地面に落ちた。このまま落ちれば、仮面ライダーとて無事では済まない!!

 

「ぐぉぉぉぁぁぁっ!? き、貴様……私を道連れにする気かぁ!?」

 

「死なば諸共ってやつさ……!!」

 

「くそぉぉ!! 離せ、この!!」

 

 必死に殴ってきている……さて、俺が助かる方法は……思いついた。こいつには落ちてもらうけどな!!

 

「……悪い。やっぱり死ぬのはお前だけになりそうだ!!」

 

「なに!?」

 

「食らえ、グレイトスラッシュ!!」

 

 それから逃れるために、俺から離れた……だが、奴は落ちていく。

 

「うぉぉぉぉっ!! 雪村康太ァァ!!!」

 

「……見せてやるよ!!」

 

「はぁ……!?」

 

 靴が削れて無くなるだろうが……背に腹はかえられない。落下の勢いを殺すために、足と剣で壁に張り付く。このまま落ちたら、絶対に死んでしまう……そんなわけにはいかないんだ。腕に衝撃がダイレクトに来ている、そろそろ限界か……!!

 

「がぁぁぁぁっ……!!!」

 

「ぐおぉぉあぁぁぁぁ……!! ガハァァッ!!!」

 

「奴は落ちたな……」

 

 限界が来る直前で、剣を引き抜いて壁を蹴る。まだ、勢いはあるが……それでも、大分マシだ。どうにか受け身を取って、衝撃を殺す。奴は立ち上がったが……腕が片方変な方に向いている上、鎧にもヒビが入っている。流石にあそこまでやったら、ダメージも大きいようだな。

 

「ぐぅぅっ、ぎ……よし……!!」

 

「ごぐ、あぁぁぁ……こんな、馬鹿なことは……有り得んのだ……!!」

 

「お互い条件は対等、だな……打ててもあと一発、だろ?」

 

 奴はボロボロの体で、こちらに拾ったトンファーを向けている。俺も……変な方向に曲がった腕で無理やり握っているし、足は折れてるし……本調子じゃないが……

 

「殺してやる、雪村康太……今度こそは……心臓を抉ってやるよ!!!」

 

「やってみやがれ、顔真っ青な帝王さん……!!」

 

「抜かせぇぇぇッ!!!」

 

 奴がエンターキーを押した、来るか。

 

『Exceed Charge』

 

「ウォォォォォッ!!!」

 

「……横からの一撃……」

 

 胴か。ならば……

 

「死ねぇぇーッ!!!」

 

「……」

 

「は?」

 

 胴を打ち落として、ヒビの入った鎧に袈裟斬りを繰り出す。多分……カイザより鎧は硬い。だけど……ヒビがあったおかげで、切り裂ける。思い切り引くと、大量の血が溢れ出してくる……終わったな。心臓を確実に斬り裂いてやった。

 

「終わりだ、山崎……地獄に行け」

 

「ご、ぼっ……が、ごっ……」

 

「……サイガフォンは、貰うぞ」

 

 何かされる前に、奪っておいた。山崎の変身が解除されて、青い光が消える。

 

「ぐ……プラン2も失敗、か……暁様、申し訳ありま、せん……だが……こんな時のため、に……」

 

「なんだ? もう何もできんだろ?」

 

「く、くく……どう、かな……地獄を精々、楽しむがいいさ……財団、Xに……栄光あれ……プラン3、開、始……」

 

 奴はそう言って、青い炎を上げながら燃え尽きた。

 

「何のことだ……? 一体……何を……」

 

 血が止まらない、意識が朦朧とする……また気絶か。だけど、サイガは殺したし……

 

「早く逃げて、こっちに……え?」

 

「計画を開始します」

 

「なっ……オルフェノク!? 全員偽物だったのか!?」

 

 逃げていた人達が全員、オルフェノクに変化した。まさか……最初から……

 

「街に侵入することが、目的で……それなら、俺達に攻撃されることもない、から……!!」

 

「ぐはっ!?」

 

「一破、さ……ごぼぁっ……」

 

 手が届かない。一破さんだけじゃ無理だ、敵が多すぎる……ここは天井だ、すぐ降りることは不可能……あやめ達も戦ってる。けど……多勢に無勢だ。這いずって、奴らに銃口を向けた……その時。

 

「弾、切れ……」

 

 エネルギーを使いすぎたのか……これすらも計算のうちか? 山崎と暁!!

 

「ぎぃっ……ぐぁぁぁっ!!」

 

「かっ、ぐ……うぁぁっ!!」

 

「畜生……畜生……!!」

 

 手が届かない。また、取りこぼす……レバーを引かないと。どうにかレバーを引く……標準を合わせろ、敵を狙うんだ……

 

「邪魔な木だ……!!」

 

「っ、やめ……」

 

「フン!!」

 

 まだ桜が咲いている木が、折られてしまった。大事な木が倒れて、桜が全て落ちる。あやめが怒りの雄叫びを上げた。

 

「お前ぇぇっ!!!」

 

「ぐぎっ……!!」

 

「あやめの、思い出が……」

 

 また、奪われた。俺と同じように……大切な思い出が一つ……

 

「このっ……くそ!! っ、百鬼さん!! 後ろだ!!!」

 

「え……」

 

「あやめ!!」

 

 ぐちゃっ

 

 嫌な音がした。あっけなく、貫かれて……投げ飛ばされた。柊真さんが……簡単に……人って、あんなに脆いのか……無力感を感じると同時に、悔しい……怒りが沸いてくる。何故か立ち上がれるようになった、怒りだろうか。

 

「父上ぇぇぇっ!!!」

 

「この、野郎……!!」

 

「死ぬがいい、百鬼あやめ」

 

 そちらに向かって、走る。やらせるか、絶対に……!! 今度は百合香さんが、あやめを庇った。人の体がひしゃげて、血を吐いている……

 

「ぐっ……」

 

「母上ぇ!!!」

 

「あなたは、逃げなさい……」

 

 あやめは……母親から離れようとしない。

 

「やだよ母上!! 余は戦う!!!」

 

「私は……親です、子供のためなら……命くらい、投げ出せる!!」

 

「……ッ!!」

 

 それはきっと、正しいことだ。そんなことはわかっているが……言わずにはいられなかった。

 

 ふざけんじゃねぇよッ!!!

 

「え……」

 

「それで……残された子供の気持ちを、親の死体を処理する子供の気持ちを……考えたことあんのかよ!? まだやりたいことも、してあげたいことも……いっぱいあるのに!!! 子供の気も知らないで……本当にアンタが親なら、子供に一生残る心の傷を負わせてんじゃねぇ!!!」

 

「ぐうッ!?」

 

 火事場の馬鹿力で、あやめを庇っていた母親を襲おうとしているオルフェノクを斬り裂いた。歯を食いしばって、地面を踏みつけ続ける。

 

「そこから、動くなよ……俺が道を、開く……!! 一破さんッ!!!」

 

「これは……サイガフォン!? 奴を倒したんですね!!」

 

「ざっざど使え゛っ!!!」

 

 一破さんは頷いて、カイザフォンをしまい込んでサイガフォンに持ち替えた。

 

『Burst Mode』

 

「ぐはぁぁ!?」

 

「すごい威力だ……これなら!」

 

 三発当てるだけで、オルフェノク達が灰になって消滅していく……急がないと、間に合わなくなってしまう。

 

「全員、死ね……!!!」

 

「死ぬのは貴様だ」

 

「グガァァァァァッ!!!」

 

 前が歪んでよく見えない。気配や音、匂いだけで切り裂いていく……

 

「ごはぁぁ!?」

 

「ギャアァァァ!!」

 

「グル゛ア゛ァァァァァッ!!!」

 

 一人突き刺した。二人目がいる場所に剣を突き立てて、また刺した。どんどん串刺しにして……灰になっていく。

 

「なんて執念だ……同じ人とは思えないな……」

 

「ぐぎゃあぁぁっ!!」

 

「康太様……すごく苦しそう……」

 

 みんなが何を言っているかは、わからない。目の前で刺した敵の悲鳴と絶叫だけが、鼓膜を貫き続ける。

 

「死ね!!」

 

「ごぶっ……」

 

「雪村さん!? このっ、どけ……!!」

 

 腹の肉を抉られた……怯んだ体勢から立て直して、踏み込み……相手の首に向かって、一閃。手応えあり、首を跳ねた。

 

「あ……」

 

「ダァァリャアァァッ!!!」

 

「ごはぁぁっ!!」

 

 気配はもう、しない。どうやら……殺しきったようだ。

 

「これで最後か……雪村さん、大丈夫ですか? ……雪村さん? どうしました!?」

 

「……」

 

「康太様、どうしたの……!?」

 

 もう、喋る気力もない。その場に膝をつきながら倒れ込んで……血を垂れ流す。

 

「なっ……早く運ばないとまずい、百鬼さんはお父さんをお願いします!! 私が雪村さんとお母さんを背負いますので……!!」

 

「わかった余……あぁ、みんなの桜が……思い出が、消えちゃった……」

 

「百鬼さん、早く!! 間に合わなくなる!!」

 

 その言葉に急かされて、走るあやめ……寂しそうな、悲しそうな……喪失感の籠った声が、俺の耳に残ったまま……失血で気絶してしまった。




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