死ネタがあります。くれぐれもご注意ください。
帝王のベルトの片割れ、サイガの敗北。財団X日本支部に、その情報はすぐ伝わった。だが、その結果の割には研究員達は冷静だ。今回は暁自身が来て、会話をしている。
「案の定、山崎は死んだか……わかっていたがな。しかし、プラン3は成功だ。なぁ、今井?」
「はい。プラン3の実行によって、百鬼あやめの父親と母親を意識不明にすることに成功しました。これによる精神ダメージは相当重篤でしょう……親を失わせるのは有効、雪村康太で証明されています」
「そこにつけ込むのが、今回の計画なのだ。わかっているな?」
人の心を傷つけることを何とも思わず、それどころか利用しようとする邪悪な精神。それが漏れだしたかのように黒い壁が、二人を見つめる。
「えぇ、準備は出来ていますとも……財団Xスポンサーへのアピールも兼ねているのです、必ず成功させますよ」
「コンピュータの計算では、この計画の成功確率は99.9%だった。雪村康太を死亡させるのには、これ以上ない好機……くれぐれも逃すなよ」
「もちろんです! もしもの時のための『アレ』も準備できていますし……乗り切れるはずがない!!」
断言する今井に、暁が狂気の笑みを浮かべた。今井もそれに合わせて笑いを表に出す。
「仮面ライダーは最早、恐怖を通り越して信仰の対象になっている。それに乗っかって、財団Xを信仰するように仕向ける……雪村康太の死ぬ映像を全世界へ公開することによってな」
「希望が完全に死亡したとなれば、助かりたい世間はこちら側へ一気に傾く……我々が扇動した市民の暴動と、仮面ライダー部隊の襲撃! これに耐えられるはずがない!! もう最高に愉快な気分ですよ!! クヒャヒャヒャヒャヒャ!!」
「チェックメイトだ、雪村康太……この世から消えるがいい!! 私達に多大な利益を齎した後にな!! ハハハハハ、ハーッハッハッハ……!!」
二人の狂気的な笑いは、建物中に響き渡っていった。自分達の勝利を祝うファンファーレのように……
……ここは病院か? そう思って、目を開けると……保健室だった。どうやら、まだ建物の修繕は終わっていないようだ。大分やられてたもんな……こういうこと考えるの、何度目だろう。数えてないけど。
「俺は……サイガを殺して、オルフェノクの群れを斬り倒した後……」
「血反吐を吐いて倒れた、だろ? 無茶する癖は直らないね、雪村くん……あんな大怪我しておいて、二日で起きるのは流石だけど」
「鷹嶺先生……お久しぶりです。仮面ライダーサイガは死にましたよ……これで世間も少しは落ち着くと思います」
恐怖の対象になっていた仮面ライダーサイガは、俺が仕留めた。これでみんな落ち着くだろう……
「あぁ、そうみたいだね……よくやってくれた。でも……問題は簡単じゃないらしい」
「え? サイガは死んだのに……どうして?」
「考えてみれば当然なんだけど……一回目のシザース襲撃から、その次のベルデ……オルフェノクやカイザ、ライオトルーパー……色々なことが起きてきたよね?」
……まさか。
「まさか、サイガじゃなくて……『仮面ライダー』という概念そのものが恐怖の対象に……」
「当たりだ……外れって言えたら、どれだけ良かっただろうね」
「そんな、じゃあ相変わらず……暴動のリスクは変わってないことに……それどころか、もっと酷くなるかも……」
鬱屈も恐怖も、いつ臨界に達するかわからない。もし今、国家転覆を狙われたら……
「うん……国家転覆を狙っての暴動が起これば、人員はそちらに大分裂かれることになる。仮面ライダーやオルフェノクが、そんな時に大量に襲ってきたら……君も私も無事では済まない」
「最大の敵は……世論だったってことかよ……!!」
「私も、私の仲間も……どうにもできない。市民目線から見てみれば、一発が即死の生物兵器軍団がどこかから襲ってきて、その上何度殺してもボーフラのように湧いて出るんだから……落ち着けという方が無茶さ」
原理不明の超パワーに、走れば速度は車並み……その上、どこから湧いてくるのかは一切不明。アイテムをどうにか奪ったと思ったら、今度は原理がわからず、人間では装着不可能だったり、デメリットが重すぎたり……一方的すぎるんだ。人間がどれだけ背伸びしても、強いやつが相手なら、一人殺すだけで精一杯。
「その調子だと……解析は進んでないみたいですね……」
「うん……こよりは最高の科学者だ。わからないことなんて、この世界になかったんだけど……オルフェノクエネルギーも、ミラーモンスターもフォトンブラッドも意味不明。こよりがわからないんだ、普通の科学者がわかるわけない」
「こより……さん? それが、科学者さんの名前ですか?」
今まで名前を聞いたことはなかったが……鷹嶺先生が頷く。
「そうだよ。獣人の科学者でね、うちの総帥や掃除屋と一緒にバカやることもあるけど……頼りになる、大切な仲間さ」
「……大切な仲間がたくさんいるんですね」
「うん、私含めて5人でやってるんだ……せめて、彼女達だけは狙わせたくない。私がここにいるのは……危険因子の誘導のためという理由もあるのさ」
仲間を守るため、か……それはこの学園の生徒にも向けられているみたいだけど。
「護らなきゃならない人が沢山いるって、いいことですよね……いればいるほど、力が湧いてきますもん」
「そうだ……私は何だかんだ言って、みんなのおかげで頑張れてる。『ルイねぇ、大丈夫?』じゃないよ……お前の方が大変だろ、こより?」
「……いい人達、なんですね」
いい人達といえば……そうだ、どうして忘れていたんだ? あの人達はどうなった!?
「そうだ、柊真さんと百合香さんは!? 大怪我してたけど、鬼人だし……まさか死んでませんよね!?」
「あやめちゃんの父親さんと母親さんのことかい……?」
「はい、内蔵をやられてたけど……まさか、そんなことないはず……!!」
そんなことあっちゃいけない。もし死んでしまったら、あやめが俺みたいになってしまう……それじゃあ俺が守った意味がないじゃないか。
「今、癒月先生がお医者さんと一緒に見に行っているはずだけど……行ってみるかい?」
「いいんですか?」
「君は当事者の一人だ。知る権利はあるだろう……動けるかい?」
体は動くな……骨もほとんど治ってる。酷い目に遭いまくった甲斐があった。
「大丈夫です、行きましょう」
「こっちだよ。学園の使ってない部屋を病室にしているんだ……ここだったはず。失礼します」
「僕も失礼します……」
ベッドの前に三人がいる。話し声が聞こえてきた……その声色は明るいものでは全くなく、柊真さんや百合香さんの声は聞こえない。素人が聞いてもわかる、ヤバい状況だ。
「そんな、それじゃあ……」
「うそ、だ……いやだよぉ……父上、母上ぇ……ぐすっ」
「え……まさか……」
顔から血の気が引いていくのがわかった。死んだとでもいうのか? そんな……
「死亡……ですか?」
「鷹嶺先生……違うわ。でも……」
「ダメージが大きすぎたんです……その上、倒れた時の打ちどころが悪かったようで……一命は取り留めましたが、二人の目覚める見込みは、今のところありません」
そんな馬鹿な……確かに死んではいないが、死ぬのと同じくらい酷いじゃないか。こんなことが……あっていいわけない。
「せっかく、雪村くんが命を守ったのに……それじゃ意味がない……!!」
「あやめ様……ごめんね……」
「ひっぐ、うぅぅ……うぁぁぁぁぁっ!!」
あやめは外に走っていってしまった。外は危ない……何が襲ってくるかわからないんだ。あやめの顔も割れている、狙うのは容易だろう。
「あやめちゃん、どこに行くの!?」
「外は危険だ、早く追いかけないと!!」
「待ってくれ、あやめ!!」
泣きながら走るあやめを追いかけて、たどり着いた。しかし……あやめの声色は冷たい。
「着いて、こないで余……」
「外は危険だ。仮面ライダーがいつ来るかもわからん、戻ってきてくれ」
「ここだって、いつ来るかわかんないじゃん……」
確かにそうだが……俺達がいるじゃないか。ここの方がまだ安全だ。
「そうだけど、ここなら俺も一破さんも、先生達もいる。だから……」
「……父上や母上を守れなかったのに?」
「え?」
突然飛び出した言葉に、気の抜けた声が出る。
「康太様も、人間様も……なんで守ってくれなかったの? 父上と母上はどうしてあんなことになってるの!?」
「……俺が、無力だから?」
「そうだ余……無力な奴を信用できるわけないじゃん!! わかってるなら止めないで余!!」
口をついて飛び出したと思わしき、その言葉。俺は、無力だ……手を伸ばしても、零れ落ちるものがある。今回は柊真さんと百合香さんだったんだ……
「ごめん……ごめんな……」
「謝って済むことじゃない……!! 思い出の場所だって、壊されちゃったし……これも全部……ッ!? あ……」
「あやめ? どうした?」
焦っている……あやめの体から、冷や汗がどんどん流れ落ちていく。自分の言っていたことに罪悪感を感じているのか?
「……ごめんなさいっ!!」
「ま、待て……!! なんで、あやめが謝っ……ごぼぁ!!」
「雪村くん!? 血反吐を……やっぱり傷が治ってなかったんだ!!」
走り去っていくあやめは、泣いていた。こんなの……酷すぎる。血反吐の中に顔を突っ込みながら、考えた。二人を起こす方法を……しかし、何も起こらなかった。
「どうして、ここが……」
「患者さん全員に、位置情報と生命活動の有無がわかる装置を取り付けてあるんです。あやめさんの場所も分かりますので、後で迎えに行きます」
「行か、ないと……」
あやめを追いかけるために、立ち上がろうとしたが……先生方に止められた。
「ダメよ、血を吐いてるんだから……!!」
「回復薬の点滴用意! 急げ!!」
「はいっ!!」
俺は余りに無力すぎる、手の届かないものが多すぎるんだ……いくら仮面ライダーを殺せたって、人を救えなきゃ意味がない。手の届く範囲の人しか……助けられる人しか、助けられない。その罪悪感は、思っていたよりずっと重たかった。
「どうして……俺は……」
「用意出来ました!」
「よし、針の準備だ!!」
今のあやめは、俺と同じ状態なんだ。両親も思い出も失って、喪失感と無力感に苛まれている……俺が止めに行ったところで、励ましの言葉は思いつかないし……言う資格もない。
「点滴、刺せました!」
「よし……回復薬と睡眠薬、投与開始!」
「私はあやめちゃんを追いかけます。癒月先生、あとはよろしくお願いします」
睡眠薬だと? そんなに俺を行動させたくないのか……やり過ぎて対策されてるな。俺は睡眠薬に耐えきれず、眠りの中に落ちた……はず、だったんだけど。
ズガッシャアァァン!!!
「……なん、だ?」
「正門、裏門共に侵入されました!! ライオトルーパー部隊、100人侵入!!」
「くそっ……とにかく、患者さん達を安全な場所に!!」
俺が薬で寝ている間に何があったんだ? 状況が理解できない……そう思っていると。
「雪村康太、発見。排除する」
「うぉあっ!? ライオトルーパー……わざわざここまで来たのか!?」
「死ね」
銃弾を避けつつ、枕元にあったカイザブレイガンに、メモリーをセットする。寝起きだが……戦うしかない。
『Ready』
「そんなに相手して欲しいなら、相手してやる!!」
「やってみろ」
点滴を引っこ抜いて、投げ捨てた。さて、戦闘開始といこうか。ダイヤルを普通の一つ上に合わせて、サイクロンスラッシュの構え。
「まとめて喰らえ!! サイクロンスラッシュ!!」
「ガァァァァ!!」
「……わかってるぞ」
後ろに向かって右足を振り上げると、案の定不意打ちをしようとしていたライオトルーパーに命中した。
「ぐふっ!!」
「ダッシュスラッシュ!!」
「ゴハァッ!!」
また、灰になる……どういう状況なのかが知りたい。それを把握しないと、今すべき行動がわからないのだ。
「とりあえず、外のライオトルーパー共も殺さねぇとな……」
「早く避難を! 急いで!!」
「させるか」
それはこっちのセリフだ。敵に向かって踏み込んで、剣を後ろから突き刺した。
「そっくりそのまま返してやるぜ」
「ご、ふっ……」
「先生、おはようございます……どうなってるんですか?」
お医者さんに状況を尋ねてみると……暗い顔をして俯いてしまった。いい状況じゃなさそうだな。
「状況はかなり深刻です……あの後、先生が百鬼さんを追いかけて行きました」
「知ってます、聞いてたので」
「その後……百鬼さんはライオトルーパー隊に囲まれ、攻撃を受けました。途中までは善戦していたらしいのですが、怪我が祟って思うように動けず、そこに増援部隊の銃撃を受けて……」
……まさか、死んだとでも? ゾッとする、吐き気もだ。あやめが死ぬ? 嘘だ、約束したのに。あやめまで死んだら……
「死んだんですか……?」
「まだ、犠牲者は出ていませんよ……あやめさんは瀕死の重傷を負い、そこで鷹嶺先生に救出されました。ですが、今回はしつこく追い回してきているようで……理由はわかりませんが、まずい状況です」
「あやめはどこですか!? 早く助けに行かないと、今度こそ……」
死んでしまう。それを言う前に、後ろからライオトルーパーが襲いかかってきた。剣でナイフを受け止める。
「……なに!?」
「聞こえてないと思うのか!? 甘ぇよ!!」
「ごぉあっ!!」
頭を何発か撃って、撃ち殺した。リロードしてから、場所を尋ねる。
「今、緊急の診療所に収容するために運んでいますが……ライオトルーパーもそちらに向かっているようです」
「わかりました!!」
「あっ、雪村さ……行ってしまった。血が止まっていないのに……」
急げ。間に合わなくなるかもしれんのだぞ……外に出てみると、そこには……見覚えのある、ロボットの姿があった。サイドバッシャーだ……
「サイドバッシャーまで使ってくるのかよ……!!」
「早く運べ、絶対に撃たせるな!!」
「百鬼あやめが最優先だ、他は後でいい!!」
どうしてそこまで、あやめに拘る? あやめに何かあるのか? 別に仮面ライダーのベルトを持ってるわけでもないのに。
「一番の危険因子を、無視してもらっちゃ困るな!!」
「雪村くん!? 何をやってるんだ、吐いたばかりだろ!?」
「そんなこと言ってる場合ですか!?」
とりあえず、サイドバッシャーだ。ミサイルをぶち込ませるわけにはいかない。あれの威力は絶大、犠牲者が出たら……考えただけでもゾッとする。
「雪村康太は無視しろ、百鬼あやめを回収するんだ!!」
「ふざけんじゃねぇよ!!」
「なっ!? しまった、腕が……」
ミサイルを撃ってくる腕をグレイトスラッシュで切り落とし、腕を足場にして飛び上がる。それから剣の出力を最大にして、ライオトルーパーに向けてやった。
「ぐうぁっ!?」
「カイザと違って、耐久は大したことねぇな……あやめ!?」
「早く運び込め!!」
酷い怪我をしている……何故、ここまで執拗に狙う? 意味がわからない……危険因子なら他にもたくさんいるだろう。考えても、答えは出ない。
「おい、貴様ら!! 何故あやめを狙う!?」
「教えてやる義理はない」
「だろうな……!!」
一応聞いてみたが、やはり答えてはくれなかった。
「雪村さん、やっぱりいた……!!」
「一破さん……どう思います? この状況……」
「なにか目的があるのだと思いますが、予測ができない……兎も角今は、こいつらをどうにかしましょう!!」
一破さんはサイガフォンを構えて、ライオトルーパー達に撃ち込んでいる。俺も一緒に、カイザブレイガンを撃っていく……
「グハッ!?」
「ギャアァァ!!」
「チッ、今回は数がこれまでに増して多いな……!!」
一人一人が弱くても、多すぎると全員倒すのが難しくなってくる。ライオトルーパーの強みはそこだ……
「邪魔をするな!」
「こっちのセリフだ!!」
「アキロゼ達は先生なの!! 邪魔してもらっちゃ、困るんだよね!!」
アキロゼ先生が殴り飛ばし、鷹嶺先生が爪で切り裂き……癒月先生はライオトルーパーを動けなくしている。連携がよく取れてるな……
「悪魔を舐めてると痛い目を見る。この世界じゃ当然よ?」
「離せ……ゴァァァ!?」
「ナイス、ちょこ先生!!」
調子よく倒しているが、数が減っていない。どうしてこんな量を投入したんだ? 予算とかは大丈夫なのか? 疑問は止まない……
『Charge』
「こう数が多いと、気が滅入ってきますね……」
「一破さんらしくないですよ。いつもは、責任感抜群の警察官なのに」
俺がそう言うと……一破さんは笑って言った。
「フッ……確かに私らしくなかったな。すみません……私は警察、この体が朽ち果てるまで戦いましょう!!」
「そうでなくっちゃ……!」
「グォォォ!?」
塵も積もれば山となる。その言葉を体現した光景だ……山のように灰が降り積もっている。そんな中でもライオトルーパー達は死を恐れずに向かってくる。
「いい加減に全滅しやがれ……!!」
「な、なんだ!?」
「ギャアァァァ!!」
搬送用の車の中から、突然人が投げ出された。
「どうしましたか、しっかり!!」
「中で何が……まさか!?」
「気づいたか。流石だな、雪村康太」
出てきたのは……やはりオルフェノクだった。
「元のお医者さんは……もう殺したのか?」
「あぁ。一応名乗ってやる、私はピジョンオルフェノク……百鬼あやめ回収のために現れた。悪いがこいつは頂いていくぞ」
「させるか!!」
斬りかかろうとしたところで、空を飛ばれてしまう。こいつも飛べるのか……!!
「ライオトルーパー共、あとは任せたぞ」
「お任せ下さい」
「そうか、貴様らはこのために……!!」
量が多い理由はそれだったのか。しかし、まずいぞ。このままでは……あやめを連れ去られる。
「やらせるものか!! 喰らえ!!」
「……計画を実行する。よく見ていろ? フン!!」
「は?」
べきっ
一瞬だった。手刀一発で、あやめの首が……折れた。殺されて、しまった。
「貴様ァァァァァ!!!」
「そう来るのはわかっていた、お前が持っていけ! 私が時間を稼ぐ!!」
「了解。百鬼あやめの死体を運搬します」
ライオトルーパーが乗ったバイクに、あやめが縛り付けられて……運ばれていく。
「さてと、ここからは私が相手をしてやる。ありがたく思え?」
「あやめぇぇぇっ!!!」
「作戦は成功だ。各自、帰還できる者は帰還せよ」
……こいつらだけは逃がしてやらない。そう決意して、切り裂きにかかる。
「殺してやるぞ、鳥野郎!!」
「やってみるがいい……」
「アキロゼもね、怒る時は怒るんだよ……今回はお前ら全員にだけど!!」
せめて、こいつらだけでも殺さなければ。逃がしてしまったら……最後まで戦えない。ピジョンオルフェノクに切りかかる……飛んで避けられた。
「甘いぞ!!」
「ッ……効くかァ!!」
「病み上がりだというのに……やはり化け物か!!」
次々飛んでくる羽を弾き飛ばしながら、奴に銃弾を撃ち込む……せめて仇を討たないと。
「遅い遅い!! そんな精度の射撃に当たるとでも……グェッ!?」
「フェイントだよ、馬鹿め……」
「カイザブレイガンの出力をアルティメットに合わせたのか……!? クソッ……」
奴の腹をぶち抜いてやった。普通に戻した後、弾を撃ち込んで叩き落とす。
「うぐぉぉぉッ!?」
「死ね、クソ鳥……!!」
「死ぬのはお前だッ!!」
奴の爪が腹に深々と刺さった……最後の抵抗か。
「……ごばっ」
「血を吐いた……痛いか、苦しいか!? いいぞ、もっと苦しんで……」
「痛くも痒くもねぇな……それは俺を殺してから言え」
拳で地面に叩き伏せて、剣を突き刺した。
「ぐふっ!? ……ギャッ!!」
「グレイトスラッシュ!!!」
「グェェアァァァッ!!!」
真っ二つになって、灰になる……終わったな。後ろでは一破さん達が戦っている。ライオトルーパーも、大分少なくなった……
「一人も逃がさん!! この場で射殺する!!」
「ギャアァァッ!!」
「貴様らは……一体何回、私から生徒を奪えば気が済むんだ!! あぁぁぁぁぁっ!!」
鷹嶺先生は、雄叫びを上げながらライオトルーパーの喉を切っていく。
「お、俺は逃げ……」
「逃がさないわよ……ここで死んでもらう」
「ぐぁぁッ!?」
癒月先生が拘束したライオトルーパーに、銃を撃ち込む。また、灰にしてやった。
「この野郎、この野郎ッ!!」
「我々を殺してなんになる!? こんなことになんの意味もな……」
「ふざけんじゃねぇッ!!!」
みんなを……あんな目に遭わせておいて、憎しみを抱くなだと? ふざけるな。そんな綺麗事を言う資格が、貴様らにあるとでも?
「それはお前らの言っていい台詞ではない!! 憎しみは人の正常な感情だ……!! それをなんの意味もないだと!? いい加減にしろ!!」
「私達から、生徒と日常を奪い取っておいて……そんな言葉を言うのか!? 恥を知れッ!!」
「ゴハァァッ!!」
怒りに任せて……殺していく。一破さんも、先生達も同じように……こいつらのせいで。
「お前も死ね!!」
「グハァッ!!」
「ハァ、ハァ……」
ついに、ライオトルーパーがいなくなった。辺り一面灰塗れだ。
「こんな、こんなことが……あっていいわけない……」
「あやめちゃんのお父さんとお母さんに、どんな顔して会えばいいんだ……!!」
「畜生……私はやはり、ただの警察官でしかないのか……!! 余りにも、無力すぎる……」
みんなが無力感に苛まれている……友達を、生徒を、守るべき人を失ったんだ、目の前で……いとも簡単に。余りにも、あっけなさすぎる……
「あ、ア……アァ……」
『最後まで戦え』
「雪村さん……?」
あやめが殺されたショックと、もう一つ……俺の心を蝕む言葉。『最後まで戦え』って、そう言われたんだ。だけど……俺は、なんのために戦っているんだ? 柊真さんも百合香さんも倒れて、起きる見込みが無くなっている。あやめは死んだ、俺の目の前で……いとも簡単に。
「雪村くん? どうしたんだい?」
「すごい汗よ、康太様……!?」
『最後まで戦え』
もう一回聞くぞ。
お前は、何のために戦っているんだ?
守るものがあるから? 守れてないじゃないか。
認められるため? そんなわけない。
……まさか、最後まで戦うために『最後まで戦って』いるのか?
それは手段だ、守るための……手段がそのまま目的になっている。じゃあ……俺は一体……
あの時、何のために生き残ったんだ?
「どこを見てるの、康太くん?」
「明らかに様子がおかしい……毒でも打ち込まれたのか?」
「有り得ない話じゃない……なんてことだ……!!」
周りの声が聞こえなくなっていく。
目の前がまっくらになった。
その日の夜。財団X日本支部……ライオトルーパーが傷だらけのあやめの死体を持って、帰ってきた。カードキーを使用して、中に入る。
「失礼します、今井支部長代理様。百鬼あやめの殺害は完了しました」
「ご苦労。遺体は持ってきたか?」
「もちろん、それが目当てでしょう? 死体は言われた場所に置いてあります、使徒再生せず持ってきましたが……死後硬直が始まっているのに、何をするのですか?」
今井が笑いながら振り向く。この世のものとは思えない程、狂った笑いを隠そうともせずに。
「蘇生手術を行う。スマートブレイン社の技術を利用してな……『ファイズの世界』で、流星塾メンバーは全員受けて成功している。『園田真理』は二回蘇生手術を行ったようだが、結果はどちらも成功。失敗の可能性はほぼゼロだな……あと、記憶の改竄と身体強化も行うが……本命は、オルフェノク因子の埋込みだ」
「オルフェノク因子? あれは……失敗すると、灰化してしまうのでは? もしオルフェノクになってしまえば、寿命は大幅に縮むし……メリットがないような」
「普通の人間なら、な。だが、百鬼あやめは厳密に言うと人間ではない……」
そう言われて、研究員の男が疑問を顔に出した。
「確かに鬼人ですね……それと何の関係が?」
「奴は鬼人であるが故、体が人間と比べて大変丈夫な上、寿命も長い……オルフェノク因子の埋込みにも、財団Xの技術を使えば……99%生き残れる予測が出ている」
「だとしても、万が一オルフェノクになってしまえば……」
その懸念に対し、今井は指を立てて自分の頭をツンツンとつついた。
「頭を使えよ。オルフェノクは何が進化した姿だ?」
「そりゃあ、人間が進化した姿……っ!? まさか!!」
「ようやくわかったか? そうさ、百鬼あやめは人間ではない……鬼人の進化先として『オルフェノク』は用意されていないのさ。因子を埋込んだところでそれは変わらん……だから、絶対にオルフェノクに変化することはないが、因子埋込みには耐えて適合し『草加雅人』のように、鬼人のままでもベルトを使えるようになるということさ……わかったか?」
研究員は笑みを浮かべて、拍手をし始めた。
「気づかなかった……私も頭が固かったな、反省しなくては……」
「手術を早速始めろ、成果報告は早い方がいいからな。その方が暁様もお喜びになるはずだ……これが成功すれば、最低でも危険因子を一人、上手く行けば二人も排除できる……失敗は許されんぞ」
「はっ、仰せのままに!!」
研究員が出ていったところで、今井がリモコンを操作した。顔がいくつかディスプレイに映る……財団Xへの、投資会社の社長達だ。最も、財団Xだということは知らないのだが。
「さてと……改めて今井カンパニーへの投資、誠にありがとうございます。皆様」
「最近負け続きではないか。これでは面白くないぞ? 面白いショーが見られると言うから、多額の投資をしてやっているのに……」
「わかっております……あなた方に面白いショーを提供する見込みがつきました。日にちは明後日、6時から。どうぞお楽しみに……」
架空の会社を作成し、そこに投資させることで金銭を得る。これも財団Xのやり方だ……
「それは楽しみだな。予算の方は大丈夫なのかね?」
「はい、もちろん……最高のショーをお約束します」
「期待しているよ、今井くん」
通信が切れた。今井はニヤニヤしながら、天を見つめている……
「予算面は順調だ……この世界はストレスが多くて、全く助かるよ。お陰様でしばらくは予算も尽きんだろう……異種族がいたり、魔法があるとこういうことになるわけだ。これからも利用されてくれよ、この世界よ……全ては会長の理想のために! クヒャヒャヒャヒャ!!」
「今井様、手術準備整いました」
「おっと……もうできたか。指示を出すから、その通りにやれよ」
今井が椅子から立ち上がって、歩いていった。最悪の計画を準備するために……
敵はバカではありません、頭のいい組織なのです。