※この作品はR-18です。

仮面を被った、人間達の英雄譚   作:とも667

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 恰も、赤い靴を履いた孤児の様に。


花魁淵に鬼一人

目が覚めた、疲れは取れているな……時間は朝の7時だ。丁度いい時間……起き上がって、二人を見る。

 

「よく寝てるな……起きろ、業。不知火……朝だぞ」

 

「……?」

 

「おはよう。いい夢は見られたか?」

 

 機嫌よく飛び回っている……悪い夢は見ていないらしい。よかった……

 

「絶対にあやめを助ける。だから、一破さん達と一緒に待っててくれよ」

 

「……」

 

「不安か? 安心しろ、俺は負けないさ……俺は二人のご主人様のあやめに、一回は勝ってるんだ。どんな奴が出てきたって……絶対に勝つよ」

 

 そう言ってやると、安心してくれたのか俺に擦り寄ってきてくれた。さて……ウォーミングアップのために、体操やストレッチをしておこう。

 

「……よし。体が温まった……飯食いに行くから、着いてこい。食べ終わったら、すぐにあやめのところに向かうからな」

 

「……!」

 

「しっかり体を整えていかないとな、奴らが何をしてくるかわからない……」

 

 カイザブレイガンを背負い、体を捻りながら食堂へと向かうと……温かい出迎えがあった。

 

「雪村さん、待ってたよ。ほら、座って!」

 

「え? どうしたんですか?」

 

「今日、大切な戦いがあるんだろ? ほら、ご飯でスタミナつけてから行きな」

 

 そこには肉や揚げ物など、体力のつきそうな物が並べられている……朝からこれを食べるのか。

 

「胃もたれしちゃいそうだな……」

 

「しないよ、若いのに! 血だって毎回流すんだから、鉄分取らないと!!」

 

「……じゃあ、いただきます」

 

 食べてみると……案外いけるな。いい肉を使っているのか、お腹に溜まることもなく……スムーズに胃に入ってゆく。揚げ物はきつね色に揚がっていて、見た目に違わず食感と匂い、味……その全てで俺を激励してくれた。肉も炊きたてのご飯も、優しい味の野菜スープもだ……

 

「味はどうだい?」

 

「ありがとうございます……とても美味しかったです。だけど、どうしてここまで?」

 

「口に合ってよかった……私達にはこのくらいしかできないけど、できることがないかと思ってね」

 

 十分だ……ずっとここでご飯を作っているであろう、おばさんやおじさんの心も確かに受け取った……

 

「そんなことはありません、確かに僕の力になりましたよ……皆さんも一緒に戦ってください」

 

「あぁ、もちろんさ! 前々から気に入らなかったんだよ、一発ぶん殴ってきてよ!!」

 

「わかりました。絶対に一発……奴らにぶち込んでやりますよ。あなた達の恨みも込めて! 行ってきます!!」

 

 戦うのは一破さんや、警察の人達……鷹嶺先生。色んな人達が来るけど……ここにいない人の気持ちも、俺は背負ってるんだ。

 

「尚更、負けられない戦いだな……覚悟しやがれ!!」

 

「……!」

 

「もちろん、二人の気持ちも持っていくよ。誰がやったかわからんから、探し出してぶん殴ってやるさ!!」

 

 自信満々で、今の俺にできる精一杯の笑顔。作り笑いでも……ないよりマシだ。学園に行くと、警察の車が学園前で待っていた。車の前に一破さんがいる……サイガフォンがポケットに入ってるな。

 

「……おはようございます、雪村さん。よく眠れましたか?」

 

「えぇ、お陰様で……準備の方は?」

 

「整いました。ライオトルーパーから回収した、アクセレイガンを私の仲間に持たせて、三方向から一斉に突入します……そのためにはあなたが必要不可欠なんですがね」

 

 十分だ、後は俺に任せてくれればいい。

 

「後は俺に任せてください、合図があるまではコーヒーでも飲んで、リラックスしていてくださいよ」

 

「そう言ってもらえると、ますます気合いが入りますね。地図に書いてある場所は……ここです」

 

「今井カンパニー……デカいな、如何にもって感じだ」

 

 高さはそこまでないが、幅が広い……凄まじい財力だ、どこから出ているんだろう。やっぱり、出資者からだろうか。

 

「雪村さん……絶対に勝ってくださいね」

 

「わかってます。それだけは約束しますよ」

 

「……では、出発します」

 

 アクセルが踏まれて、警察車両の行列が街を通っていく。いつも人通りの多い街中は静まり返ってしまって、廃墟のようだ……

 

「経済打撃も凄まじいでしょうね……」

 

「はい。経済的にも物資的にも、最悪の状況……雪村さんが敗北すれば、この国に未来はない」

 

「それはわかってます……奴らを野放しにしたらどうなるかは、火を見るより明らかですもの」

 

 罠をかけて、ネズミ捕りにかかったネズミを見てやるつもりなんだろうが……自分でかけたネズミ捕りに手を挟んで、苦しむことになるぞ。そう思っていると、到着した。

 

「……ここだな」

 

「三方向に分散しろ。それぞれ、指定位置で待機だ……では、私も行きますね」

 

「また後でお会いしましょう……二人も、一破さんと一緒に行きな」

 

 こちらに敬礼して、指定の場所へと向かうために車に乗り込む一破さん……鷹嶺先生もきっともう、いるんだろう。

 

「……!」

 

「大丈夫さ、俺を信じろ……一破さん、二人も連れていってあげてください!!」

 

「わかりました! さぁ、乗って!」

 

 こちらを何度か振り向きながらも、二人は車に乗り込んで……指定の場所に行った。

 

「……さてと。ネズミ捕りにかかってやるとするか」

 

 中に入ると、順路がご丁寧に書いてあった。そこで、アナウンスが流れ始める。

 

『やはり来たな、雪村康太……自己紹介をしておく、私は今井 星光(いまい ほしみつ)……財団X日本支部の支部長代理にして、この会社の社長さ。以後よろしく』

 

「テメェの自己紹介なんざどうでもいいんだよ。仲良くしてやるつもりもねぇし……それよりも、あやめは生きてるんだろうな?」

 

『おー、怖い怖い。百鬼あやめだろ? もちろん生きているぞ、ピンピンしている……五体満足だ。あと安心しろ、ちゃんと処女のままだぞ? 私が止めておいたからな』

 

 黙れ。その話題を出す時点で、精神性が透けて見えるんだよ……

 

「俺はそんなこと聞いてねぇんだよ……それで人が喜ぶと思ったのか? 風呂の排水溝にこびりついたチンカス野郎が……」

 

『言葉が汚いなぁ……その辺に吐かれて、ネズミすらたからない酔っ払いのゲロ以下の汚さだ。恥ずかしいと思わんのか?』

 

「お前の心はさらにそれ以下の汚さだがな。自覚がないからもっと汚い……恥ずかしいと思わねぇのか?」

 

 奴の声に怒気が混じってきている……怒りは俺の方が強いけどな。

 

『口の減らないゴミクズめ……!! 今すぐ百鬼あやめを殺してやろうか!? できないと思うなよ!?』

 

「それをやった瞬間に、俺は貴様や暁を皆殺しにするまで止まらない殺戮マシンになるぞ。できないと思うのか?」

 

『チッ!! 貴様のせいで最悪の気分だ……!! 覚えておけよ、その汚わしい口をすぐに塞いでやるぞ!!』

 

 アナウンスが終了した……順路に沿って、長い廊下をとにかく進み続ける。どこから敵が出てくるかわからないから、カイザブレイガンをしっかり握りしめながら。

 

「……デカい扉だ、あそこが目的地か?」

 

 扉を開けて、中に入る……真っ暗な部屋だ。不意打ちでもするつもりか? そう思って、カイザブレイガンを構えたが……そこで、明かりがついた。とんでもなく広い部屋だ、テレビで見た東京ドーム並にデカいぞ……ここが『ショー』とやらの会場か?

 

『レディース&ジェントルメン!! お待たせしました!! 皆さんお待ちかね、財団X主催……仮面ライダーショーの始まりです!!』

 

「……今井ィィィッ!!!」

 

『あちらにいるのが……我ら財団Xの敵にして、口汚い最低の男……今回のやられ役、雪村康太です!! 皆さん、盛大なブーイングをお送りください!! せーのっ!!』

 

 Boo!! Booo!! Booo!! Boooo!!

 

「嫌がらせのつもりか、今井……!? 俺を見せ物にして何が楽しい!?」

 

『何やらうるさく叫んでいますね……私はこの最高の舞台にて、皆様に仮面ライダーの力を見せられることを心待ちにしていました!! 皆様もそうですよね!?』

 

『あぁ、楽しみだ!! もう待ちきれないよ!!』

 

 歓声が一気に上がる……人の死ぬ姿がそんなに見たいのかよ。人々の趣味の悪さに吐き気がする……

 

「貴様ら!! こんなことの何が楽しい!? 人が死んでいるんだぞッ!!」

 

『黙ってろ、雪村康太!!』

 

『やられ役は喋るな!!』

 

 Boo!! Booo!! Booo!! Boooo!!

 

 激しいブーイングが俺の耳を貫く……今井がまた話を始めた。

 

『ありがとうございます、皆様!! ここでルール説明です、今回のルールは単純……雪村康太VS最強の仮面ライダーです!! どちらかが死亡すれば終了、簡単でしょう?』

 

「あやめを出す約束だろうが、早く連れ帰らせろ!!」

 

『そんなに叫ばなくても出してやるよ……それでは、皆さんお待ちかね、主役の入場です!! 今度は、盛大な拍手でお迎えください!!』

 

 重たそうな扉が開いて、ゆっくりと人が歩いてくる……間違いない、あやめだ。凄まじい量の拍手に包まれながら、こちらに来ている。有り得ないとわかっていても、一縷の望みに賭けている自分がいた……

 

「あやめ!! よかった……!!」

 

『あれが最強の仮面ライダー……? そうは見えんのだが……』

 

『見た目で判断してはいけませんよ、堀川様!! あれは種族の中でも最強と謳われる鬼人、その中でも特に強い血統書付きの物です……!! 名を百鬼あやめ、そして……今から、最強の仮面ライダーとなるのです!!』

 

 業と不知火の教えてくれたことを思い出して、思わず冷や汗を流した……俯いたあやめに話しかける。

 

「あやめ……どうした? 帰ろう、みんな待ってるぞ?」

 

「……ア、は」

 

「な……ッ!!」

 

 その顔は笑顔だった。光のない目で、笑っている。

 

『さぁ、皆様!! 練習はしてきましたよね!? みんなで一緒に叫びましょう!!』

 

「今井ッ!! 貴様やっぱり……!!!」

 

『ん? もう知ってんのか? それなら話が早いなァ……』

 

 ……忌々しい記憶が思い起こされた。あの日の記憶、母さんと父さんが死んだ日の……ナノマシン。

 

「あの電波……!!」

 

『そうさ!! デモンズスレートをたっぷりくれてやったんだよ!! あと、記憶を少しだけ弄って、幻覚剤と身体強化薬を投与したんだ……!! 皆さんお待たせしました、今度こそ!! せーのっ!!』

 

「……今井、貴様ァァァァァッ!!!」

 

 オーガ!! オーガ!! オーガ!! オーガ!!  オーガ!!

 

 俺の憤怒の叫びは、夥しい数の大声にかき消された。あやめがそれに反応して、他とは床の色が違う場所に歩いてゆく。何か仕掛けがあるのは、遠目でもわかった。あやめに俺を殺させるために、こんな用意周到なことを……!!

 

「やめろ、あやめ!!!」

 

『お前も叫べ、楽しいぞ!?』

 

「ふざけるな!! よくも、あやめを……俺の友達をこんな目に!!!」

 

 オーガ!!! オーガ!!! オーガ!!! オーガ!!! オーガ!!!

 

 あやめがその場所に辿り着くと、ベルトがあやめに取り付けられた。カイザやサイガと同じようなガラケーが、あやめの手に渡される……すると、あやめが笑い始めた。

 

「あハハハアははアははッ!! 康太様、鍛錬しようよ!! 今日も一緒に!!!」

 

「あやめ、やめてくれ!!!」

 

「何言ってるの!? 今……余はこんなに楽しいのに!!!」

 

 オーガ!!! オーガ!!! オーガ!!!  オーガ!!! オーガ!!!

 

 モニターにあやめの手元が映し出されている。あやめが、0のキーを三回押した。待機音が冷酷に鳴り響く……どうして、何故こんなことに……答えは出ない。

 

『Standing by』

 

「アははハはははァ!! 変身ッ!!!」

 

『Complete』

 

 オーガ!!! オーガ!!! オーガ!!!  オーガ!!!! オーガ!!!!

 

 泣き叫ぶような音と共に、金色の線があやめの体に走り……あやめは黒と赤のライダーになってしまった。黒いローブはまるで、あやめの絶望を表しているかのように、どこまでも黒く……赤い顔の部分は血を流しているようにも、泣き腫らした目にも見える……あやめの悲しみが、ライダーにそのまま現れているように見えた。

 

「そ、んな……嘘、だろ……」

 

『皆さん、ご覧あれ!! あれこそ……帝王のベルトの片割れ……サイガを超えるスペックを備える、真の帝王!! 仮面ライダーオーガでございます!! 皆様、最強の帝王の誕生に盛大な拍手をお送りください!!!』

 

「アハッハッハッハッハ!!!!」

 

 ワァァァァァァァッ!!!!

 

 歓声とあやめの悲痛な笑い声が、俺の耳を二重に貫いていく。

 

『さぁ、戦え!! 百鬼あやめ、雪村康太!! 真の絶望を味合わせてやるよ!! 絶望に染まりきって死ぬがいい!!!』

 

「ふざけんじゃねぇぇぇッ!!!」

 

『Ready』

 

 カイザブレイガンにメモリを入れて、剣を出す。どうにかして、元に戻さないと……あやめはそう思っている間に、斬りかかってきていた。

 

『Ready』

 

「ぐぅッ……一撃が、重い……!!」

 

「どうしたの!? いつもみたいに、切りに来てよぉ!! 余の刀を流してさぁ!!!」

 

『クヒャヒャヒャヒャヒャ!! 昨日よりも酒が美味いぞ、もっと苦しめ雪村康太ァ!!! 暁様にこの映像を渡せば、会長からお褒めの言葉を賜ることができるのだから!!!』

 

 Fooooooo!!!

 

 さらに歓声が上がり、あやめの剣がカイザブレイガンを押してくる……どうにか受け流して、距離を取った。

 

「目を覚ませ、あやめ!! これは訓練じゃない、殺し合いだ!! お前が気づいてないだけなんだよ!!!」

 

『無駄だ、そいつは幻覚を見てる!! 百鬼あやめはすごく楽しそうなお前と戦ってるだろうさ!!!』

 

「そんなこと言って、楽しそうじゃん!! 康太様も!!」

 

 言っていることは本当らしい、あやめは殺す気で来ている……ガラケーのスイッチが押された。必殺技を出す合図だ。

 

『Exceed Charge』

 

「……なっ、剣が伸びた!?」

 

『出ました!! あれこそ仮面ライダーオーガの必殺技、オーガ・ストラッシュ!!! その射程は無限、逃げ場は地球上のどこにもありはしないッ!!!』

 

 無限に伸びる剣だと……!? ふざけるな、間合いを取る意味ゼロじゃねぇか!!! 剣を使うという基本を無視した剣が、こちらに振り下ろされた。

 

「アはハハ、アハハハははっ!!!」

 

「なんて振り回し方してんだよ……!!」

 

「うりゃあぁ!!!」

 

 子供のような掛け声で振り下ろされたそれは、容赦なく地面や後ろの壁を切り裂いた。凄まじい切れ味だ……いや、仮面ライダーそのものの力か? どちらにせよ、食らったら無事で済まないことだけは確かだ。

 

「いい加減に目ぇ覚ませよ、あやめッ……!! いつまで夢見てんだ!?」

 

「何言ってるか……全然聞こえない余!!」

 

『いいぞ、殺せ!! そいつを真っ二つにしろぉ!!』

 

 今度は剣が縦ではなく、横になった。俺を切り裂くために横なぎに振られる、無限射程の剣……どうにか飛び越えたが、次の一振りが来た。喰らったら真っ二つになるのは確実、絶対に当たれない……!! 奴らへの怒りを込めて、全力で叫んだ。

 

「貴様ら……それでも人間かぁぁ!?」

 

『あぁ、立派な人間だとも!! 辛い時に何かに縋りたくなるのは人間の心理、それに従っているのみさ!!!』

 

「そんなことのためにあやめを……俺の父さんと母さんを、柊真さんに百合香さんを……罪のない人達をあんな目に遭わせたのか!? ふざけるな!!! ミラーモンスターよりも、オルフェノクよりも……貴様らこそ、化け物だ!!!」

 

 Boo!! Booo!! Booo!! Boooo!!

 

 全力で叫んでも、返ってくるのは激しいブーイングのみ。今が楽しければそれでいい、今の絶望から逃れるためならば……それが人間なのか。

 

「やっぱり楽しいや!! 康太様躱すの上手いもん!!!」

 

「楽しくない!!! あやめ、お前は人殺しが好きなやつなんかじゃねぇだろ!? 奴らに利用されて……悔しくないのか!?」

 

『あー、言い忘れてたな……記憶を弄ったって言ったろ? それで……私達のことを恩人として刷り込んだ。だから、その言葉は意味ないんだよ……他のを試してみろ? 頑張れ~』

 

 淡々と言う今井……奴はそれを酷いことだとすら思っていない様子だ。気でも狂ったか? こんなことをしておいて……

 

「財団Xッ!! 貴様らは一体どこまで腐り切ってやがるんだァァ!!!」

 

『愛しき会長の崇高なる計画のための尊い犠牲だ!! 我慢して大人しく運命を受け入れろォ!! クヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!』

 

「今井さんも優しいよね、康太様と戦うために、こんないい場所を用意してくれるなんて!! 最高だよ……!! ありがとう今井さん!!!」

 

 操られたあやめを見ていると、すごく辛い……だけどこのまま逃げ回ってるだけじゃ、埒が明かない。やるしかないか!!

 

「うぉぉぉぉぉっ!!」

 

『……剣の上に乗って走った!? 無駄だ、振り落とせ! 百鬼あやめ!!』

 

「康太様らしい、けど……甘い余!!!」

 

 振り落とすために、剣が思いっきり振られる。そこで飛び降りて、銃弾を撃ち込んだ。

 

「うぉらぁぁぁっ!!!」

 

「ッ……!!」

 

「目を覚ませってんだよ、あやめ!!」

 

 銃弾は目くらまし……こっちが本命だ。急所は外して、胴を狙った……これは当たる、切った……はずなのに。

 

『ハッ……愚かな』

 

「な……切れないだと!? 馬鹿な……!?」

 

「うりゃぁぁっ!!」

 

 思いっきり殴り飛ばされて、壁に激突する。そこから落下して、血を吐いた。

 

「ご、ぶっ……な、何故……!?」

 

『言い忘れていたな、仮面ライダーオーガが帝王である証、ワイズマンローブは太陽の表面温度にも耐え切る。カイザブレイガンに切断能力はなく、熱で切り裂く剣なんだ……あとはわかるな?』

 

「カイザブレイガンは、効かない……」

 

 嘘だろ、それじゃあ……カイザブレイガンはただの棒きれだ。

 

『ついでに言っとくと、銃弾もそこまで効いてねぇぞ。サイガと同等の装甲だからな……ほら、よそ見するな!!』

 

「がッ!?」

 

「捕まえた……!!」

 

 オーガ・ストラッシュの先端に胴体を挟まれて……そのまま、壁に叩きつけられた。壁がヤスリの様になって、俺の肉を削っていく……

 

「ご、ぐっ、が……かっ……!!」

 

『オーガ、いいぞぉ!!』

 

『もっとやれー!!』

 

 あやめが目を覚ます気配はない。奇跡は起きず、俺は壁に叩きつけられている……

 

「アはハハハは!! どうしたの!? いつもみたいにかっこよく反撃してよ!!」

 

『無様だな、雪村康太……それは決して外れんぞ、もう諦めろ!!』

 

「嫌、だ……ごぉぉっ!!」

 

 振りかぶって、地面に投げられる。俺は地面を削りながら転がり……体中の骨が砕けてしまった。

 

「どうしたの!? もうおしまい!?」

 

『馬鹿め……無駄だといつになったらわかる!? 立つのをやめろ、そうすれば楽になれるぞ!! お前のような一般人にはそれがお似合いだ!! 地面を這いつくばって一生強い者に媚びていろ!!』

 

「……断る。それが嫌だから、努力してんだよ……」

 

 立ち上がる。諦めない、負けるわけにはいかないんだ。奴らを殺すまでは、まだ死ねない……!!

 

「そうこなくっちゃ、面白くない余ね!! 最後まで楽しもう余、康太様!!」

 

「来いよ……!!」

 

『無駄だ、力の差を思い知らせてやれ!! 百鬼あやめ!! お前は仮面ライダーオーガなんだからな!!』

 

 それなら俺は……みんなの思いを背負ってる、戦士だ。絶対にあやめを止めるし、奴らも殺してみせる。

 

「うぉらぁぁっ!!」

 

「効かない、余っ!!」

 

「カウンターファイトォ!!!」

 

 剣を躱して、無理矢理体を動かす……あやめの顔面を殴った。だが……効いていない。剣が振り下ろされる……カイザブレイガンが真っ二つにされて、壊れてしまった。

 

「その程度かぁぁ!!」

 

「っ、カイザブレイガンが……ごふっ!!」

 

『だから無駄だと言ったんだよ……やれやれ、まだ立つのか? しつこい男は嫌われるぞ?』

 

 まだだ。終われない……立ち上がれ、無理やりにでも拳を握れ……倒すんだ。仮面ライダーオーガを……!!

 

「嫌われても、いい……あやめが死なないなら……!!」

 

『何を抜かす? お前、まさか百鬼あやめに恋愛感情を……』

 

「あると、思うか……?」

 

 ゆっくり近づいてくるあやめを、しっかり見据える。

 

『そう見えるがな。気色悪い男だ……』

 

「ねぇよ、そんなもん……あやめを大切に思ってる人達がたくさんいるんだ!! 俺もそうだけど……みんなの気持ちを背負ってきてる以上、裏切るわけにはいかないんだ!!」

 

『もっとくだらん理由だった……はぁ、さっさと終わらせてやれ。百鬼あやめ』

 

 酒を飲みながら、呆れたように言う今井……

 

「これで……終わりだ余!!!」

 

「誰が終わって、やるか……みんなの、ためにも!!」

 

『……いつもそうだな。貴様も仮面ライダー共も、そうやって、みんなのためだとか……くだらん大義名分を掲げて、我々を殺しに来る。正義の味方を気取って何が楽しいんだ? 裁判官にでもなったつもりかよ?』

 

 答えを少し考えて……思いついた。

 

「じゃあ……お前らは、自分の行動が間違っていると思ってやってるのか?」

 

『そんなわけがないだろう。我々は会長の下僕……その責務を果たすのみだ』

 

「だろうな……お前らだって、お前やお前の仲間から見たら正義に見える……!!」

 

 奴の酒を飲む手が止まっている……怒りか、それとも困惑か。

 

『……で? そんな当然のことを言って、どうした?』

 

「だからだよ……正義程、不確かで変化が激しいものもない……!! お前らがこの世界の人間じゃないのも知ってる……でもな!! お前らはこの世界の常識とか、法律に著しく反してる!! 法律とか、マナーとか常識とか、全部正義が生み出した……正義がないと、俺達人間は生きていけないんだよッ……!! それが凄まじく危険なものだとしてもな!!!」

 

「喰らえ!!」

 

 攻撃をどうにか避けながら、叫ぶ。

 

「だから警察や軍隊がある、平和を維持するための……正義が生み出した暴力機関として!! それが、警察や軍隊なんだ……!! そしてお前らは全員、この世界で人が生きていくのに不都合極まりないッ!! だから、俺はお前らを憎む……わざわざこの世界にまで来て、自分の正義を押し付けるお前らを!! 俺は……俺の周りの人の、この世界で精一杯生きている人達の『正義』の味方で、お前らの敵だ!!!」

 

『ご高説ありがとうございました、っと……感想言うぞ、二度と口開くな。以上!! ぶっ殺せ、仮面ライダーオーガ!!!』

 

『さっさと死ね、ウザいんだよ!!』

 

 精一杯生きている人達を害し、傷つける……精一杯生きることを諦めて、悪に堕ちた者達。奴らも警察に逮捕され、場合によっては軍隊に撃たれる者達。要するに、俺にとっての敵……向かってくるなら、殺害対象だ。

 

『Exceed Charge』

 

「ふんっ!!」

 

「ぎっ……ぐっ、がぁぁ……ごぉ、ぐがっ!!!」

 

 また、掴まれた。体を削られて、壁の方に吹っ飛ばされる……壁に突っ込んで、瓦礫と一緒に倒れた。意識が朦朧とする……どうすれば、どうすればオーガを倒せる? あやめを救える? 考えろ……俺はそれが得意技だろ!?

 

『まだ生きてるぞ、早くトドメを刺せ!!』

 

『もう一回エクシードチャージだ!!』

 

「……これは、なんだ?」

 

 突っ込んだ衝撃と、落下した衝撃で鍵が壊れてしまったらしい……鍵の開いた箱がある。デカデカと『使用禁止』って書いてあるが……それを開けると……

 

『危険!! デモンズスレートによる暴走の危険あり』

 

「……デルタ、ギア……?」

 

『さっさとトドメを刺せ、敵はあそこだぞ!!』

 

 どうする? 使うか、使わないか……暴走してしまったら、それこそ奴らの思う壷だろう。悩んでしまっていると……あの言葉が頭をよぎった。

 

『リスクを背負って行動しろ!!』

 

「父さん……そうだよな」

 

『雪村康太もこれで終わりだな!!』

 

 終わってなんかやるものか。ここからが本番だ……!! 急いで説明書を読み、使い方を頭に叩き込む。ベルトを腰に巻きつける……

 

『Exceed Charge』

 

「これで……余の勝ちだね!!」

 

「……それはどうかな」

 

 あやめには多分、聞こえてないけど……そう言って説明書の通りにデルタフォンを持ち、トリガーを引く。

 

『行け、百鬼あやめ!! あのクソッタレ野郎を……地獄に落とすんだ!!!』

 

『トドメだ、仮面ライダーオーガ!!!』

 

「……スゥーッ……」

 

 大きく息を吸い込んで……全力で叫んだ。

 

 変身ッ!!!

 

『Standing by』

 

『……変身? 何のことだ? 奴は変身アイテムを持っていない、何かの適合者でもない……幻覚でも見ているんだろう。あやめ、トドメを刺してやれ!! 生かしておくのが可哀想だ!!!』

 

「これで終わりだぁぁ!!!」

 

 デルタギアの待機音が鳴り響くなかで、オーガ・ストラッシュが振り下ろされた。俺は読んだ通りに、デルタフォンを差し込んだ。体に青白い線が次々に現れて、目の前が光に包まれてゆく……

 

『Compleat』

 

『やった、死んだッ!! 早く死体を回収して、暁様に献上するんだ!!! そうすれば……ん? 百鬼あやめ、何をしている?』

 

「あれ……切れない、どうなってるの? 剣が先に進まない余?」

 

 間に合ったな……頭にケーブルが何本か刺さってる。それのせいで戦いたい衝動が湧き出してきているが……あやめは今、これで苦しい思いをしてる。ならば、俺も同じ状態で戦おうじゃないか。

 

『まさか……止めているのか!? オーガの必殺技を!? どうやって!? 何が起こったんだッ!!!』

 

「……うぉぉぉぉぉッ!!!」

 

「ッ……逸らされた!?」

 

 ゆっくりと歩いて、壊れた壁からジャンプして飛び降りる。

 

『あれは……!!』

 

「……康太様、なの?」

 

「あぁ。俺は雪村康太であり……仮面ライダー……」

 

 デルタだッ!!!




花魁淵で踊らされた花魁達は、踊っている最中に床を落とされ、滝に落ちて全員死亡したとされています。悲しき花魁の踊りを、落ちる前に止められるか。
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