※この作品はR-18です。

仮面を被った、人間達の英雄譚   作:とも667

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 仮面ライダーの、仮面の意味は。


仮面の理由

時間は少し遡り、今井カンパニー外部。一破達は、雪村康太からの合図を今か今かと待っていた。ここはA班、一破がいる班だ。一破には珍しく落ち着きがなく、壁の前を意味もなく歩き回っている。

 

「……遅いな。雪村さんなら、もう終わってもいいような気もするが」

 

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ、一破さん。雪村くんのことだし……手間暇かけて、罠でも張ってるんじゃないですか?」

 

「鷹嶺先生……雪村さんのことを信頼しているんですね。あなたが一番心配しているものかと……」

 

 心底意外そうに、一破が言う。だが、鷹嶺ルイは首を横に振った。

 

「昔はそうでした。彼が毎回酷すぎる目に遭うものだから、寿命がどんどん縮む……けれど、彼はいつだって自信満々で挑んで、最後には勝つ。もう、心配するのはやめました」

 

「フッ、なるほど。一理ありますね……じゃあ、私も彼を信頼することにします」

 

「それがいいかと……寿命が縮んで、この場でショック死しちゃったら、本末転倒ですよ?」

 

 一破はそれを聞いて、少し笑う。

 

「ふふっ、そうですね……殉職もショック死も御免ですから、反省しないとな」

 

「彼は絶対に勝つ。彼がそう宣言したんですから、信じていましょう」

 

「はい。そういうことだ、二人とも……信じて待っていてくれよ」

 

 鬼火二人に、一破が言う。鬼火に首は無いが……体を振って、頷いた。その時……

 

「……隊長! 雪村さんから合図が!!」

 

「何だって!? 噂をすればだな……やってくれたらしい、一斉に突入するぞ!! 壁を爆破しろッ!!」

 

「ほら、言った通りでしょ……彼はやるって言ったら、やるんですよ!!」

 

 ズガドォォォン!!

 

 爆裂音と共に、壁が吹っ飛ぶ。三方向からの一斉突入……今井の部下達も大混乱だ。

 

「仮面ライダーオーガ、機能停止!! 今井様も一方的にやられています!!」

 

「くそっ、何とかならんのか!?」

 

「警察だ!! 両手を上げて、兵器類や変身道具を全て捨てろ!!」

 

 一破はサイガフォン、他はアクセレイガンを構えている。

 

「なっ……馬鹿な!? どうなって……」

 

「課長、西方向と東方向からの侵入が確認されました!! ライオトルーパー警備隊は壊滅!!」

 

「はぁ!? 重要な資料や設計図もあるんだぞ、奪われたら我々は処刑だ!!」

 

 財団X職員が、大慌てしながら対応に追われている。

 

「ライオトルーパー警備隊だ、お前らが両手を……」

 

「お前らに構ってる暇はないんだ!! 『オーバード』!!」

 

「グハァ!?」

 

 ライオトルーパー達の急所が突き刺されて、全員蒼炎と共に灰になる。

 

「流石ですね、鷹嶺さん……体は?」

 

「フゥ、フゥ……まだまだ、やれますよ!」

 

「……そういうことだ。戦っても意味はないぞ、やめておけ!! 最終警告だ、応じない場合は撃つ!!」

 

 夥しい量の銃が構え直されて、鷹嶺ルイも自分の魔力で生み出した光の爪を輝かせる……

 

「わ、わかった……!! ほら、全て捨てたぞ!!」

 

「それでいい、そこを動くなよ……ん? 警報?」

 

「課長!! 今井様が……最終コード『Genocide』を実行しました!!」

 

 その言葉と共に、そいつの顔が一気に青ざめる。

 

「なんだと!? 今井様は……私達を見捨てたのか!? そんな、嫌だ……死にたくない!! 助けてくれぇ!!」

 

「おい、どこへ行く!? 待てっ!!」

 

「これは何が起こっているんだ? 説明しろ」

 

 一破が説明を求めると、研究員らしき男が震えながら答えた。

 

「正気か!? お前らも全員殺される!! あいつにだけは誰も勝てない、たとえ今井様でも、仮面ライダーでも!! エラスモテリウムが来る、みんな殺されて……」

 

「グギャアァァァァッ!!!」

 

「なんだっ!? ……あれは!?」

 

 課長と呼ばれた男が逃げていた道が、えぐり取られている。落ちた床を見てみると、まるでプレス機でプレスされたかのような……無残な姿になっていた。

 

「あ、ああ……来た、奴が来た……建物が崩れる!!」

 

「エラスモテリウム……? どういうことかはわからんが、ともかく回収できるものを回収するぞ!! 回収前に建物が崩れたら、せっかくの努力が水の泡だ!!」

 

「正気かよ!? とにかく俺は逃げ……うげっ!?」

 

 どさくさに紛れて逃げようとした男に、手錠がかけられた。

 

「一緒に来てもらう、参考人としてな。他の奴らも順に逮捕して、外に出しておけ」

 

「了解!!」

 

「さてと……目ぼしいものはあるかな」

 

 今回は準備万端だ、書類を入れるための鞄などがきちんと用意されている。目に付いた書類を次々に放り込んでいく……

 

「あ、あっちとこっちにも資料室がある……雪村康太なら、このコロシアムにいるはずだけど……」

 

「そちらの資料室は、B班とC班に回収させるとして……よし、資料を回収した者から撤退してくれ。私と鷹嶺さんは雪村さんを追いかける。それで構いませんか?」

 

「嫌だなんて言うとでも? どんなことになったって、彼は私の生徒さ……」

 

 外に連れられて、職員が警察と共に逃げてゆく。それを見守りながら、一破が思考していた。

 

「エラスモテリウム……何のことだ? 確か、恐竜の名前だった気が……」

 

「雪村くんにあやめちゃん、無事でいてくれよ……!!」

 

「そうですね、ともかく早く向かわないと……! 雪村くんなら、何か知っているかもしれない!!」

 

 希望を抱きながら、コロシアムへ向かう一破達。その希望が叶うかはまだわからない。一方、雪村康太は……

 

 

 

 目の前のデカブツを退かすために、全力で走る。こいつさえ退かすことができれば……あやめを救えるんだ。気合入れろよ、俺!!

 

「聞こえねぇなら……無理やり退かして進むだけだ!!」

 

「ギャオォォォォン!!」

 

「うるせぇよ、騒音被害で訴えられるぞ!?」

 

 エラスモテリウムのうるさい咆哮に文句をつけながら、地面を踏みつける。勢いを利用して、膝を奴の足に突き刺した……だが。

 

「……効かないのか!?」

 

「グォォォォッ!!!」

 

「うぉっと……!! 危ない危ない、こいつは一発が即死級だ……だけど、何とか退いてもらわねぇとな……!!」

 

 でも、どうしようか……攻撃は効かない、多分この感じだと銃も通用しないだろう。なら、あと効果があるのは……

 

『Leady』

 

「これっきゃないな!! チェック!!」

 

『Exceed Charge』

 

 漏れ続けるフォトンブラッドを手で抑えながら、光を銃に収束させる……ただ撃つんじゃダメだ、今の目的はあやめを助けること……なら!! 

 

「ほら、恐竜!! こっち向け!!」

 

「ギャオォォォ!!」

 

「喰らえ!!」

 

 暴れているが……構わず蹴り込む。

 

「だぁりゃあぁぁっ!!」

 

「グギ……グォォォォォッ!!!」

 

「うぐっ!?」

 

 やっぱりダメだ、貫ききれない。こいつ、アホみたいに硬いな……だけど!! それも計算のうち!! 崩れた体勢を空中で立て直して……壁を蹴る。ライダーのジャンプ力で大きく跳んだ。

 

「……っし、乗った!!」

 

「ウギャオォォォン!!」

 

「すぐ降りてやる……よ!!」

 

 あやめの方へと飛び降りて、オーガフォンとあやめを回収する。

 

「あやめは……寝てるな、疲れてたんだろう……うぉあっ!?」

 

「ギャウゥゥゥッ!!!」

 

「背中に乗られたのが、余程ご不満だったと見える……短気だな!!」

 

 あやめとオーガフォンを持って、攻撃を避ける。とりあえず、安全な場所に向かわせないとな……そう思っていたのだが。

 

「いい加減にしろよ、デカブツ……この子は関係ないんだよ!!」

 

「ガルアァァァァッ!!!」

 

「しまった、避けられな……」

 

 咄嗟にあやめを安全な方へ投げる。まともに食らって壁にめり込んだ。血反吐が止まらない、内蔵が大分傷ついたらしい……なんて威力してんだよ。

 

「ぐ、ぶっ……あやめ!!」

 

「……こう、た、さま……?」

 

「グルオォォォォォッ!!!」

 

 血反吐を吐きながら、奴を見つめていたが……赤色が目についたのか……俺を執拗に狙ってくる。針を避けたが、奴に踏みつけられた。

 

「うっ……グゴッ!!」

 

「康太様ぁ!!」

 

「ギャウゥゥゥン!!」

 

 怒りのままに何度も、何度も踏みつけられる。地面に埋め込まれながら、内蔵が傷つく度に目の前が紅に染まる。地面に重たいものが叩きつけられる音が、体に響いて骨を叩き割る。

 

「ギ、ゲァッ、ガ……カ……」

 

「ヴォォォォォォッ!!!」

 

「やめてっ!! やめてよ!! 康太様が死んじゃう!! お願い、やめてぇぇ!!」

 

 あやめが必死に叫んでくれている……優しいなぁ、あやめは。だけど、こいつに言葉は通じないんだ。攻撃が避けられないから、地面に埋まり続けるしかない……やがて、地面の方が耐えきれなくなって……地盤沈下が起きた。地盤と一緒に崩れ落ちて、岩の中に埋まる。

 

「ゴ、ガッ……」

 

「ギャオォォォォッ!!」

 

「そんな、康太様……やだよ……!! ねぇ、返事してよっ!!」

 

 奴の勝利の雄叫びが聞こえた。それと同時に、あやめの悲痛な声も聞こえる……奴の足音が響く、あやめを殺すつもりか? させるかよ……そう思って、瓦礫を殴り飛ばす……

 

「……勝手、にっ、殺す、な……ごふっ、ガハァ!!」

 

「ギャウゥゥゥゥン!!」

 

「効か、ねぇな……もっと強い攻撃はできねぇのか!? 怪獣、野郎が……!!」

 

 ぶっ飛ばされても、声を張る。こちらに注意を引きつけろ……あやめを逃がすんだ。

 

「康太様!! やめて、死んじゃう!! 勝てないよ、お願いだから逃げて!!」

 

「言った、だろ? ついちゃいけない嘘はつかないさ……絶対にな。俺は……あやめを助ける。今言ったから、嘘はつけなくなった、なぁ……わかったら逃げろ、あやめ!!」

 

「やだよぉ……!! もう二度と会えなくなるのに、なんで行かなきゃならないの!?」

 

 あやめは言うことを聞いてくれない……二度と会えなくなるから、か。確かにな……まずい状況だ、でも言ったからには守らないといけないんだよ。

 

「グォォォォォーッ!!!」

 

「え……こっちを向いた!?」

 

「おい!! ふざけんな、こっちを向けぇ!!」

 

 叫びながら殴っても……効果がない。ルシファーズハンマーは間に合わないだろう。

 

「……いいよ。食べるなら、余を食べて!!」

 

「なっ……あやめ!! お前何を……!!」

 

「グルルルルルッ!!」

 

 あたかも、餌の前で『よし』と言われた犬のように、あやめに向かっていくエラスモテリウム……何故?

 

「いいの。康太様は逃げてよ……お願い!! だって、余は康太様を苦しめた……痛い思いも、たくさんさせた。だから、もういいの。二人だって……起きないだろうし」

 

「ガァァァァァッ!!」

 

「……じゃ、ねぇ……」

 

 俺の顔が仮面で見えないのはわかっている。でも……今だけはわかる。俺の顔は……混じりっけなし、100%の怒りに満ちていた。

 

 ふざけんじゃねぇぇぇッ!!!

 

「グォォォォォォ!! ……グッ!?」

 

「え……なんで……? なんで!!」

 

「俺に痛い思いさせたのがなんだ、それはあやめのせいじゃねぇだろ!! 二人が起きない!? 未来予知でもできんのか!? そんなわけねぇだろ、これからの運命なんて誰にも分からない!! だからこそ……運命ができる限りいいものになるように、人生を精一杯生きるんだろうが!! それをもういいとか……ふざけんな、お前が俺を嘘つきにする気か!! 柊真さんも百合香さんも、業も不知火も、先生だって……みんなあやめの帰りを待ってる!! 勝手に自分の人生を……諦めてんじゃねぇぇッ!!!」

 

 折れている腕で、エラスモテリウムの足を受け止めた。ブチブチと音が鳴っているが……気にしない。気にしている余裕はない。

 

「康太、様……でも、だって……」

 

「どうしても生きてるのが嫌なら……俺を痛めつけた罰だ、生きろ!! どんなに嫌でも、精一杯生き切れ!! 一生かけて償うんだ!!」

 

「……ぐすっ、うっ……なん、で、どう、して……そんな、にっ……」

 

 また泣いている……そんなに嫌なのか。でも、生きてくれないと困るんだよ。俺も、業も、不知火も先生も。だから頼む、生きてくれ。

 

「ウォォォォォッ!!」

 

「この……クソッタレが!! チェック!!」

 

『Exceed Charge』

 

 一瞬手を離して、無理矢理ドリルを打ち込む。そこから、急いで蹴りこんだ。

 

「だぁぁりゃあぁぁぁッ!!!」

 

「グォ、ォ……ガァァァァッ!!」

 

「……ようやく、もう一撃、入った、な……痛ぇ、だろ……?」

 

 周りから顔は見えないだろうが、仮面の下でニヤニヤと笑っている。いつもの俺の十八番、挑発的な笑いだ。奴はバランスを崩して横転した……

 

「康太様……余は……」

 

「続きは帰ってから、聞いてやる……帰れたらだけど、な……」

 

「えっ……康太様、後ろ!!」

 

 後ろを振り返った……奴が針を撃ってきていたのだ。あやめを突き飛ばして、咄嗟に腕で防御したが……いとも容易く貫かれ、腕に大穴が何個も開いた。そこから何か注入されている……

 

「康太様ぁぁぁっ!!!」

 

「グルルルルッ!!」

 

「……痛くて怒り心頭か? 超大型犬よ……ぬぁぁっ!!」

 

 抜いた地点から、血が溢れ出す。ダメだ、毒はどんどん回っている……だけど。

 

「康太様、やだよ……!!」

 

「やだも何もあるか、お前だけは……」

 

「うぉらぁっ!!」

 

 ここにいない人の声がして、扉が吹っ飛ぶ。一破さんと鷹嶺先生……来てくれたらしい。エラスモテリウムはまだ倒れたままだ……攻撃が当たって満足か、エラスモテリウム?

 

「あれが……エラスモテリウム!? デカい……!!」

 

「灰色ってことは、オルフェノクなのか!? 大きすぎるぞ、本当に人間が変身しているんだろうな!?」

 

「……二人とも、ちょうどいいところに!! 待ってましたよ!!」

 

 精一杯、元気な声を出す。二人に心配をかけないようにだ。

 

「雪村さん……ですか? でも、その姿は……!?」

 

「仮面ライダーデルタ……要するに、仮面ライダーになれたんですよ!!」

 

「そうなのか……とりあえず、あいつはどうにもできない!! 一旦撤退だ!!」

 

 先生達に撤退を促されたが……それはできないな。

 

「そうだよ、早く撤退して……」

 

「いや、僕はこいつを灰にします。あやめを連れて逃げてください」

 

「なっ……無謀だ!! こんなデカブツと一人でやり合うなんて、それにこの建物は崩れる!! 生き埋めになりますよ!!」

 

 一破さんが訴えかけてくるが、聞けない。聞くわけにはいかないんだよ。

 

「こいつを放っておいたら……絶対に被害が出る!! たくさんの人が犠牲になる!! そんなことは許しておけない……だから、戦う!! 絶対に殺すんだ!!」

 

「無理だよ、何度も血反吐吐いてたし……踏みつけられすぎて、骨だって砕け散ってるよ!!」

 

「なんだって!? なら、尚更無謀で……」

 

 その時だけは……仮面ライダーが、『仮面ライダー』であったことに感謝した。何故なら。

 

「……でも証拠がないぜ、あやめ?」

 

「え?」

 

「俺は血反吐なんて吐いてない、攻撃だって少し受けただけだ。胸の傷も浅いし……大丈夫だと思いますよ?」

 

 嘘だけど……バレることはない、何故なら『仮面』があるからだ。顔が見えないなら、確認のしようがない。

 

「確かにそうだけど……でも!!」

 

「僕はまだまだやれます、だってほぼ無傷なんですもの!! 早くあやめを連れて、撤退してください!! 記憶も混濁しちゃってるみたいで!!」

 

「そ、そんなっ……!!」

 

 これで戦い続ける理由ができたな。オーガフォンも、一破さんに預ける。

 

「勝てるんですか、こんな化け物に!? うわっ……!?」

 

「勝てる見込みがないのに、僕がこんなこと言ったことありますか!? それは仮面ライダーオーガの携帯ですよ!!」

 

「……そうだね。君はこれまでも、無謀に思える戦いに勝ってきたし……わかったよ。あやめちゃんは私が持ちます、一破さん。しつこいようだけど……死なないでね、雪村くん!!」

 

 よかった、信じてくれた……そしてごめんなさい、平気なのは嘘だ。でも、これは……最悪の嘘を避けるための嘘だから許して欲しい。

 

「ここは僕が食い止めます……!! 早く行ってください、建物が崩れる前に!!」

 

「わかりました……行きましょう、鷹嶺先生!! 百鬼さん!! B班とC班に告ぐ、直ちに調査を終了して帰還しろ!! 繰り返す……!!」

 

「ダメぇっ!! 康太様が死んじゃう!! 離してよっ!! なんで、なんでなの!? 康太様ぁぁぁぁ!!!」

 

 あやめの叫びが遠ざかる。三人が逃げてゆく……ハンデなしのタイマンだ、絶対に勝たねばならない。たとえ死んでも……こいつは道連れにする。奴らの嫌いな仮面ライダーとして……!!

 

「ごぶっ、がはっ、ごほ……!! かかってこいよ、超大型犬!! 火葬して灰にしてやるぜ!!」

 

「ガァルルルルルッ!!!」

 

「食うはずだった餌を取られて、イライラしてるのか!? 俺を殺してみろよ、俺に集中しやがれ!!」

 

 明らかに怒っている。なら、あとは殺処分するのみ……なんだけど、攻撃が効かない。

 

「手の光が消えて……胸を切られたのが痛かったか……!!」

 

「グルァァァァァッ!!!」

 

「グガッ!!」

 

 突撃を受けて……壁に叩きつけられた。毒はどんどん回っている、腕から灰が漏れてきた……もう、長くは持たないか。

 

「まだ、まだ……ここから、だぜ……」

 

「ウォォォォォッ!!!」

 

「ッ……ゴ、カァァ……ァ……」

 

 腹を角に貫通されて、思い切り投げ飛ばされた。何個も部屋を突き破って、頭をぶつける。頭から血が出てる、ダメだ……何も出来ずに死ぬのか? ふざけるな、約束を守れ。無理矢理立ち上がる……目の前が片方見えないな、カメラが壊れたんだろうか。

 

「へ、へっ、それで、勝ったつもり、か?」

 

「グルルルルッ!!!」

 

「……まだ、やれる……」

 

 どうにか針を躱した。腕がどんどん灰になって、使い物にならなくなっていく。

 

「何か、ないか……奴を殺せる、手立ては……あ?」

 

「グルァァァァッ!!!」

 

「これは……金庫?」

 

 厳重すぎる……デルタギアより厳重だ。ならば……そう思って、こちらに向かってきているエラスモテリウムに投げた。案の定、俺と他の物の区別はつかないらしく……奴はその場で停止した。金庫が無理やり開けられる。

 

「これは……なんだ? 赤い道具?」

 

『万が一撃破された場合、神谷勇気に使用される可能性あり。よって、ファイズアクセルと共に使用を永久凍結する』

 

『不良品。ブラスターフォームへの変身に必要な、人工衛星のイーグルサット開発断念のため、廃棄する。フォトンブラッドの充填をしていないので使用不可』

 

 ……その横に、『555』の数字が描かれていた。赤くて一際大きな道具に、付箋が貼り付けられている……

 

『555 BLASTER Blade Mode→143+ENTER』

 

『555 BLASTER Buster Mode→103+ENTER』

 

「やってみるっきゃねぇな……」

 

 というか、賭ける以外に方法がない。充填をしてないなら、バスター……銃は無理だ。なら、剣しかないだろう。番号を入力する……

 

『Blade Mode』

 

「出たけど……消えかけ、か。こいつも長く持たないな」

 

「グォォォォォッ!!!」

 

 気づかれたらしい、こっちを見ている。どうにか避けているが……クソ、隙がない。本当にどうする? 攻撃を俺が喰らえば、こいつは止まるだろうけど……急がないと剣が消える。そうなったら、また振り出しだ……待てよ、攻撃を食らったら止まる? それなら。

 

「うぉぉぉっ!!」

 

「ガォォォォーッ!!!」

 

「……ほら、念願の餌だぞォ!!」

 

 灰になって消えかけの腕を奴に差し出す。目の前に何かあることがわかったのか、腕に食らいついてきた……そのまま引き抜く。血が凄まじい勢いで溢れているが、奴は止まった。腕を味わっているようだ。

 

「最後の晩餐、よく味わって食べやがれ!! 隙ありだ!!」

 

「グギャアァァァァーッ!?」

 

「効果抜群だな……!!」

 

 そのまま切り下ろそうとしたのだが……やはり、失敗した。暴れるあいつに跳ね飛ばされたのだ。

 

「ぐぶっ……人生初の激痛は、どうだ?」

 

「ギャオォォォォン!!!」

 

「……仮面が割れた……」

 

 仮面の片側が割れて、顔が出た。血溜まりに顔が映る……あぁ、青白い。ほとんど死んでる……でも。

 

「諦めて……たまるかァァ!!」

 

「ギャオォォォッ!!!」

 

「滅茶苦茶な撃ち方しやがって……それが命取りだ!!」

 

 隙をついて……飛び上がる。奴から剣が抜けかけてる、このチャンスを逃したら、絶対に勝つことはできないだろう。だから、頼む。俺に力を貸してくれ……!!

 

「チェック!!!」

 

『Exceed Charge』

 

「ウガァァァァァッ!!!」

 

 力が溜まって、フォトンブラッドの光が消える。もう残量がないらしい……放てるのはこれ一発だけだ。跳んで、狙いを定めた。練習の時を思い出せ……冷静になるんだ。

 

「そこだァ!!」

 

「グォォォォォォッ!!!」

 

「よし!!」

 

 ジャストヒットだ。あとは……俺の力に賭けるしかない。

 

「だぁぁりゃあぁぁぁーッ!!!!」

 

「グゥオォォォォォッ!!!!」

 

「ぎ、ぎぎぃ……!!!」

 

 ルシファーズハンマーで、剣を無理矢理押し込んだ。剣にヒビが入っているが、気にしている暇はない……今にも吹っ飛ばされそうだ。意識がどんどん、消えていく。

 

「こんな、ところでっ……終われ、ない……お前だけは、殺さないと……!!!」

 

「グギャアァァァァァッ!!!」

 

「く、そ……」

 

 意識を失いかけた、その時。『何か』が見えた。走馬灯? いや、こんな記憶俺にはないぞ。聞こえてくる、鮮明な音声が……

 

『俺はオルフェノクとして生きていく!!』

 

『ファイズは……闇を切り裂き、光を齎すのよ!!』

 

『キッついなぁ、お前の期待に応えるのは……!!』

 

 オーガだ。でも、あやめじゃない……誰だ? 女の人が囚われていて、その人に応えるように赤いライダーが立ち上がっている。

 

『木場さん!!』

 

『約束して……俺のできなかったことを、君が……!!』

 

『どけ。俺の歩く道だ!!』

 

 ……木場さん? 仮面ライダーオーガは、木場という名前の人が変身するのか? 最後に映ったあの人は……? 状況は何ら変わりない……

 

「ぐぅぅ……!!」

 

「ギャアァァァァッ!!!」

 

「ッ……!!!」

 

 ダメだ、振り払われる。そう思った時……誰かに背中を押された気がした。

 

『……諦めんな。行け!!』

 

「ぐっ……だあぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

「グ……ガ……」

 

 キックが終わって、ドリルから飛び出した。バラバラになったファイズブラスターが、横たわっている……暴れていたエラスモテリウムは静止して、ピクリとも動かない。だが、すぐに……理由はわかった。

 

 Δ

 

 大きな青白い記号が浮かんで、奴が赤い炎に包まれていく。灰の零れ落ちる音が聞こえる……死んだんだ。

 

「……あ……」

 

 血溜まりに沈む。終わった、俺も死ぬんだな……そう思って、目を閉じる。次に目を開けると、そこには……静かな原っぱがあった。

 

「ここは? 天国って感じじゃないけど……」

 

「それの一歩手前だ」

 

「あなたは、さっきの声の人……あの、ありがとうございました!!」

 

 お礼を言うと、その人は俺の隣に座って言った。

 

「別に、礼言われるようなことはしてねぇよ。ただ……見てられなかっただけだ」

 

「それでも、ありがとう……!! あなたのおかげで勝てました!!」

 

「あー……お前、啓太郎みたいだな」

 

 啓太郎? 誰だろうか?

 

「もしかして……友達の名前?」

 

「……そうだな。あいつは友達だよ、大切な。ふぅ、ここは落ち着くな」

 

「そうですね、なんか安心します」

 

 一緒に寝転がる。風が心地いい……

 

「俺は色んな世界を旅してきた。俺みたいに、人の夢や平和を守る奴らが、他の世界にもいて……見る度に嬉しくなってたもんだ」

 

「……旅人なんですか?」

 

「そんなところだ。まぁ……もう死んでるけどな」

 

 死んでいる? そうか、だから……

 

「幽霊って……ことですか?」

 

「まぁ、そうなんのかな……なんだよ、幽霊だったら悪いか?」

 

「悪いわけじゃないです、そうか……死んでるのか。この世界にも旅をして?」

 

 彼はゆっくり頷く。

 

「あぁ……それと、ありがとな」

 

「え? 感謝されるようなこと、したっけ?」

 

「お前、変なもん見ただろ。あれ……別世界の俺の記憶なんだ。俺も見たんだよ、死んだ後に……だけど、俺の世界でも、その世界でも……木場は死んでた。たくさん守りたいヤツがいたけど、みんな死んじまった」

 

 悲しそうに言うその人は、ぶっきらぼうな雰囲気だけれど……誰よりも優しいってことが、わかる。

 

「でも、それとどう関係が?」

 

「あいつに殺されたんだよ、別世界の木場は。でも……お前はあいつを倒して、木場じゃなくても……いいやつを助けてくれた。だから……ありがとな」

 

「……こちらこそ。力になれて嬉しいです」

 

 お礼を言い返す……

 

「俺はしばらく、この世界を見て回る。お前はどうする?」

 

「戻りたいですけど……無理ですよね」

 

「まだ行ける。お前は死んでねぇ……戻るなら急げ」

 

 そう言われて、少し急いで走る。

 

「あ、そうだ!! あなたの……名前は?」

 

「……乾巧だ。お前は?」

 

「雪村康太です……!! あなたはなんで、戦ったんですか? どうしても気になって……」

 

 聞いてみると、話してくれた。

 

「みんなの夢を守りたかったからな……そのおかげで俺も夢を持てたんだ」

 

「……その夢、教えてください!!」

 

「いいぜ。……だ」

 

 とても素敵な夢を聞かせてくれた、乾さん……なら。

 

「最高じゃないですか……僕も同じ夢を持ちたい。あなたの夢を継いでいきたい!!」

 

「……勝手にしろ」

 

「ありがとうございます! じゃあ、ボンボヤージュ (いい旅を)!!」

 

 そう叫んで、光の方へと全力で走る。

 

「……ありがとな、雪村」

 

「どういたしまして……」

 

「ヘッ……」

 

 その声を最後に……草原は消えた。激しい苦痛が襲いかかる。

 

「グ、ごはっ……建物、が……」

 

 どんどん崩れている。ダメだ……走れない。どうする? 何ができる? 考え込んで……やっと思いついた。あそこに書いてあった、コードが使えれば……!!

 

「スリー、エイト、ツー、ワン……」

 

『Jet Sliger, Come Closer.』

 

「ジェット、スライガー……?」

 

 ファイズブラスターの欠片を持つ。これは持ち帰りたいんだ……そう思っていると、地面から大きなバイクが出てきた。

 

「これが……く、そ……」

 

 這って乗り込む。もう崩れる、間に合わないか……タッチパネルを急いで操作した。

 

「フォトン、ブレイカー……方向、上……行けぇぇッ!!」

 

 タッチパネル通りにレバーを引いて、出発させた……エンジン音が鳴り響き、上空に向かって大きく飛ぶ。目の前に光の壁のようなものが生成されて、瓦礫を吹き飛ばしてゆく。外が見えた……風圧がマシなのは、これの機能なんだろうか。

 

「うっ、ぐ……こっち、だよな……!!」

 

 思いっきりレバーを動かして、入口の方へと行った。下に降りて……ブレーキの警告が出たので、その通りにする。勢いを殺しきれず、放り出された。

 

「あれは……まさか!?」

 

「雪村くんなのか!?」

 

「康太様!!」

 

 地面を転がって、光が消える……変身が解けたんだ。

 

「酷い怪我……ハッタリだったのか!? この怪我で!?」

 

「腕がない!? なんてことだ、これじゃ戻せないぞ……!!」

 

「康太様ぁ、死なないで……!!」

 

 もう、意識を保てない。でも……勝ったんだ。それくらいはいいか……いつものことだし。そう思って、俺はいつものように気絶した。




 仮面ライダーは、みんなのヒーロー。
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