※この作品はR-18です。

仮面を被った、人間達の英雄譚   作:とも667

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 敵は財団Xだけではありません。


獅子身中の虫

……次の日。ランニングやトレーニングを終えて、テレビを見ていると……

 

『異常気象! 腐敗の黒い雨?』

 

『ご覧下さい。黒い液体が辺りに散乱しています……生えていたはずの木々や植物も、一気に枯れてしまいました』

 

「……これも仮面ライダー関係か?」

 

 規模がデカイな……大きな森が謎の黒い雨を浴びて、四分の一くらいが消し飛んだらしい。

 

『採取しようとしても、容器が腐敗して採取不可能なようです。この異常な液体についてはまだ何もわかっていません、続報が待たれます』

 

「そんなことができるのは……ライダーだけだよな」

 

『ありがとうございました。では、次のニュース……』

 

 テレビを切った。場合によっては、今すぐ出なければならないかもしれない。一応、デルタギアを持っておく。

 

「来ないな……ってことは、大丈夫なんだろうか」

 

 独断で動くつもりはないし……電話が来ないなら今はまだ大丈夫ってことだろう。

 

「だが、不安だ……仮面ライダー関係としか思えん」

 

 そんな時、電話がかかってきた。学園長からだ……

 

「……もしもし? 黒い雨のことについてですか?」

 

『いや、違うよ。少し話があってね、学園長室に来てもらえるかい?』

 

「わかりました」

 

 そうでないとしても、なにか重要な話かもしれない。なら、行かなければならないだろう。そう思って、学園長室に足を運ぶ。

 

「雪村康太です」

 

「うん、入ってくれ」

 

「失礼します……」

 

 学園長はいつも通り、笑みを崩していない……そこまで深刻な話ではなさそうだな。

 

「よく来てくれたね……話というのは、この学園についてさ」

 

「学園について……ですか」

 

「うん。お茶でも飲みながら話そうか、Aくん。いつも通り頼むよ」

 

 Aさんがお茶を入れてくれたので、それを飲みながら話す。

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございまーす……ん、美味しい」

 

「……さてと。今、この学園が平和な状態であることは知っての通りだ。君や先生、それに警察の方々のおかげでね」

 

 急に褒められた、照れちゃうな。

 

「お褒めの言葉、ありがとうございます」

 

「平和である以上は……いつまでも休みにしておくわけにもいかないのでね。警戒態勢を敷いた上で、明日から一週間、開校することにしたんだ」

 

「つまり……私はデルタとして見回り、ですかね?」

 

 学園長が頷いた。やはりか……まぁ、しょうがないよな。

 

「そうなるね……君には勉強の遅れが生じることになるが、戦いが完全に終わった後には、サポートすることを約束しよう」

 

「流石学園長、痒いところに手が届く話ですね……」

 

「そう言ってもらえると、私も嬉しいよ。君が警備員として働いていることを隠す必要も、最早ない……戦いの影響で君は元々知名度が高かったが、デルタに変身したことで、知名度が急速に上がっているからね」

 

 寧ろ好都合……この学園のイメージアップに貢献してやるさ。

 

「私が頑張れば頑張る程、学園のイメージアップになりますよね? そうなったら……私も嬉しいですし」

 

「あぁ……無論、副次的効果としてそちらも期待しているよ。この学園で才能を磨く者達が増えるのは、私の望みだからね」

 

「その願い、私が叶えてみせます!!」

 

 サムズアップしながら、笑って言う。どうせやるなら、メリットの多い方がいいもんな。

 

「心強いね……必要性があれば、人員の増加や備品の補填も前向きに考えよう。遠慮なく言って欲しい」

 

「わかりました!」

 

「無論給料も出すから、将来の生活費にあててくれ……何か質問はあるかい?」

 

 これで将来食ってゆくことには困らなさそうだな……だが、不安なことがひとつある。

 

「学園長。警備には……あやめも参加させられるんですかね? あやめはオーガに変身するのに恐怖を覚えているみたいで……できれば……」

 

「もちろん、そこは本人の意思を尊重するさ。君は仕事としてやってくれているが……あやめちゃんはそうではないからね」

 

「はぁ……よかった」

 

 それならいいんだ、安心した。

 

「ふふふ、優しさは変わっていないね……」

 

「褒めすぎですよ! では、失礼しますね!!」

 

「うん。明日からは忙しくなるから、今日は有給休暇にしておくよ。ゆっくり休んでくれ」

 

 優しい心遣いが身に染みる……そう思いながら、家に帰っていく。明日は早くなるし、早めに寝ないとな。

 

「……とはいえ、心配だな」

 

 あやめはオーガとして、俺と戦った。そのせいで叩かれたりしてしまうかもしれない。

 

「警戒しておかないと……もしそうだったら、対策を考えないとだし」

 

 一縷の不安を覚えつつ、その日は早めに眠りについた。そして、次の日……ご飯を食べて、学園に急ぐ。

 

「おはようございます、鷹嶺先生!」

 

「おはよう、雪村くん。まずはみんなを安心させるために、デルタが守ってくれることを紹介するから……変身しておいてもらっていいかな?」

 

「わかりました! 変身!」

 

 デルタフォンに音声を入力して、待機状態にする。

 

『Standing by』

 

『Complete』

 

「よし、できたね……ここに立っていてくれ」

 

 時間になると、人が次々入ってきた。一人一人に挨拶していく……

 

「皆さん、おはようございます!」

 

「うわ、デルタ!?」

 

「雪村康太くんだよね……」

 

 ザワザワしているが……気を引く必要はないし、力は見せなくていいかな。

 

「……康太様、デルタに変身してるの?」

 

「あやめ、おはよう! うん、みんなを安心させるためにね!! ライダーやオルフェノクは俺が来させないから、安心して授業を受けてくれ!!」

 

「そうなんだ……康太様がいるなら、安心だね!!」

 

 期待されてるな、これはやる気が湧いてくるぞ。

 

「その期待、応えてみせるぜ……!」

 

「仮面ライダーデルタ……雪村くん、ですか?」

 

「潤羽さん……はい! 雪村康太で、仮面ライダーデルタですよ!! 私がいるので、安心していてください!!」

 

 デルタとして……みんなを守る決意をしつつ、サムズアップしておく。

 

「ちょっと怖かったけど……これなら、大丈夫なのです!」

 

「……みんな揃ったね。ホームルームの前に……みんなはもう気づいているだろうが、雪村康太くんもとい仮面ライダーデルタが、この学園を守ってくれることになったよ。何も心配せず、安心して授業を受けて欲しい」

 

「ただいまご紹介に預かりました、仮面ライダーデルタです!! 誰にも負けませんよ、ご安心ください!!」

 

 自信もやる気も十分だ、この学園のために全力を尽くす。

 

「まぁ、デルタがいるなら安心だな……」

 

「……チッ」

 

「みんな思うところはあるかもしれないが、安全のためだ。わかってくれ……では、授業を始めるよ。雪村くんは警備を頼む」

 

 不満の声もあるようだが……頷いて、外に出る。さてと……お仕事開始だ。

 

「指一本触れさせねぇぞ、財団X? 俺が相手になってやる!」

 

 そう言って、走り出す。デルタになっていれば、広い学園を駆け回るのも自由自在だ。そう思いつつ、しばらく見回りをしていると……とんでもないものが目に入った。

 

「……あ?」

 

「おい、オーガ!! 自分が何したのかわかってんのか?」

 

「罪が許されたとでも思ってんのかよ!?」

 

 あやめがいじめを受けている。オーガの一件をダシにされて、反論すらできないようだ……ふざけるな。

 

「それは……」

 

「おい」

 

「あ? なんだ?」

 

 変身を解いて、近づく。

 

「俺がそのオーガの被害者だ。双方の問題なんだよ、お前らがダシにして叩いていい事象じゃねぇ……失せろ」

 

「あぁん!? 正義の鉄槌の邪魔すんのかよ、正義の味方の癖してッ!!」

 

「『正義』……法律も倫理も常識も全部無視して、好き放題やるのがお前らの正義なのか?」

 

 答えを待つ。それが俺の行動を決めることになるから。

 

「無視してねぇよ、無視したのはこの女の方だ!! この学園のゴミをボコすのが正義だろ!!」

 

「……お前らの正義はよくわかった」

 

「やっとわかったか、ならどけよ!!」

 

 あやめに語りかける。怖かっただろうに……

 

「よく頑張ったな、あやめ。少し下がっていろ、危ないから」

 

「わ、わかった……」

 

「おい、何やってんだ!? わかったんじゃなかったのか!?」

 

 奴らは勘違いしているらしいな……

 

「わかったとは言ったが……それを認めるとか、肯定するとは一言も言ってねぇぞ。お前らがそういう奴らだっていうのを受け入れた……暴力機関として、痛めつけられそうな人がいるなら、やることは一つ」

 

「……やる気か?」

 

「あぁ、そうだ。やられる前に……叩き潰してやる。二対一でいいからかかってこい」

 

 構える。このシチュエーションも懐かしいな、路地裏でボロ負けした時のことを……あれのおかげで、俺は今頑張れている。

 

「上等だ!!」

 

「やってやるよ!!」

 

「……来い」

 

 学園の警備を任されたんだ、こういうのも仕事のうちだろう。

 

「デルタを使ってないお前なら勝てる!!」

 

「二対一なら負ける道理はねぇ!!」

 

「……! 康太様、危ない!!」

 

 男の拳が光り輝き、顔面に炸裂した。後ろのガラスに突っ込んで、体に破片が突き刺さる。

 

「ざまぁみろ!! 必殺グレイトストライク、炸裂!!」

 

「流石、いい音だったなぁ!!」

 

「……弱いな。そんなもんかよ」

 

 強いのかもしれないが、ライダーの拳の後では酷く弱く感じる。ガラス片を無理矢理引き抜いて、投げ捨てた。

 

「しぶといな、今のでダウンしねぇなんて……お前決めろ!!」

 

「へへへ!! 食らいな、グレイトキック!!」

 

「……」

 

 踏み込みが浅い、勢いもそこまでない足裏。軌道、スピード共にさっきの一撃と同じだ……読めた。どこに当たるかも、どうすれば避けられるかも……

 

「へ? 今のを避け……」

 

「カウンターファイト」

 

「ぎゃふん!!」

 

 顔面に一撃、横から重い拳を叩き込んだ。その勢いのまま、奴はきりもみ回転し……地面に墜落した。

 

「な……なに!?」

 

「さっき食らってやったのは、攻撃を読むためだ。仮面ライダーと違って、見るだけじゃなく当たる余裕もありそうだったからな……降参しろ。このことは学園長に報告する」

 

「そうはさせるかぁ!!」

 

 もう一撃……今度は当たらない。全ての軌道を読んで躱していく。仮面ライダーやあやめの攻撃と比べれば、全てが鈍く思える。

 

「……もういいだろう。これ以上やっても意味はないぞ」

 

「ち、畜生……わかったよ」

 

「よし、来い。処分は学園長に決めていただくからな。悪いけど……あやめも来てくれるか?」

 

 これ以上巻き込みたくはないが……被害者である以上関わらせないことは出来ない。

 

「うん……いい余」

 

「ありがとう。着いてきてくれ」

 

「……今だ!!」

 

 後ろを急いで振り向くと……もう、遅かった。銀色の刃が、俺の体を貫き……肉を引き裂いていたのだから。まさかナイフを隠し持っているなんて……学園に申請して、学生証で所持を明確にしないと禁止のはずだろ? いや……校則を守ってくれるはずもないか。

 

「康太様!! お前、なんてこと……!!」

 

「へへ、いい気味……ぶげっ!?」

 

「……やっぱり、気絶させとくべきだったか」

 

 自分の選択の間違いを悔いながら、奴を殴り飛ばした。今度こそ気絶したな……

 

「康太様、ナイフが……!! あぁぁ……」

 

「大丈夫だよ、自業自得だし……そこまで痛くもない」

 

「それでもダメ!! 普通の人なら死んじゃう余!? 自分も生きてるって約束したでしょ!?」

 

 肩を掴まれて、必死に言われる。相当心配らしいな……

 

「わかってるよ、連行し終わったら保険室行くから……」

 

「先に保健室!!!」

 

「わかった!! わかったから!! 引き摺らないでください!!」

 

 結構怒ってるなぁ、あやめ。やっぱりエラスモテリウムの一件があったから、過敏になっているんだろうか。そう思いつつ、引き摺られて……保健室にて。

 

「もう……康太様ったら。擦りむくとか、切り傷とかならわかるけど……ナイフで刺されて来る子は聞いた事ないわよ?」

 

「ごめんなさい……」

 

「こんな大怪我なのに、先に学園長のところに行くって言ってたんだ余!? ちょこ先生もなんか言って余!!」

 

 チクられた。自業自得だけどさ……

 

「そうなの? 昔から全然変わらないわね……ダメよ? 恋する乙女が近くにいる身で……」

 

「癒月先生まで……耳が早いですね~」

 

「や、やめて余ちょこ先生……」

 

 あやめの様子を見て、先生は笑みを零している……

 

「こんなに可愛い子に言われてるのに、何の反応もないなんて……恋愛とか興味ない?」

 

「あんまりないですね……花より団子、団子より肉なもので……今はそんなことしてる場合じゃないと思いますしね」

 

「真面目ねぇ……いいことだけど。とりあえず……これでよし!」

 

 話している間に終わったようだ……回復魔法のおかげで細胞分裂が促進されて、傷もそこそこ塞がった。

 

「ありがとうございました。そこで伸びてる奴らも連れていきますね」

 

「もうケガしないようにね?」

 

「余がさせない余、ちょこ先生!!」

 

 厳しい監視の目の下じゃ、迂闊に無茶はできないな。

 

「程々に頼むぜ? 多少は無茶できないと困るんだ」

 

「……わかってる余」

 

「あ、不満ですか……」

 

 明らかに不機嫌そうだ、俺の多少が信用できないからか? 大丈夫、俺も信用してないから。そう思いつつ、学園長室のドアを叩く。

 

「いいよ、入ってくれ」

 

「失礼します……」

 

「……雪村くんと……おや、珍しい来客だね。何かあったのかい?」

 

 伸びている二人を降ろして、事情を話す。

 

「というわけで、あやめがスクール・カーストの被害に遭っていたため……助けました」

 

「そうだったのか……大体予想はついていたけど、見たくはなかったね」

 

「再発防止のためにも、厳しい処罰を要求します」

 

 罪を犯させない一番の方法は、正義ではない。処罰だ……秩序を保つためにも、中途半端な処罰ではいけないと思う。

 

「そうだね……残念だが、退学処分にさせてもらおう。あやめちゃんはそれでいいかい?」

 

「うん、大丈夫だ余」

 

「わかった、ではその方向で手配をしよう。雪村くんはまた変身して、警備に戻ってくれ。あやめちゃんも大丈夫そうだったら、授業に戻って欲しい」

 

 そう言われたので、立ち上がって一礼する。

 

「わかりました、失礼します」

 

「じゃあ、またね!」

 

「あぁ!!」

 

 また変身しながら、俺は学園内を駆け抜ける。平和を保つために……それから放課後。走り回っていたから、時間もわからんな。

 

「……ここにもスクール・カーストはあるんだな」

 

 これまでの学園でも見てきたが……あの頃の俺は、他人事だと思って気にしてすらいなかった。

 

「敵は財団Xだけじゃないってことだ……」

 

 やることは山積みだが……とりあえず、交代のようだな。

 

「交代です、雪村さん。お疲れ様でした」

 

「あとはお願いしますね」

 

「わかりました」

 

 一旦交代した……トレーニングするために、寮の方に行く。

 

「よし、いつもの日課を始めよう」

 

 いつも通りこなす。平和とはいえ、これを辞めてはいけないだろう……

 

「あとは重りつけて走るだけだな……行くか」

 

 重さは60kg。地面を蹴って、全力で走る……そうしていると。

 

「……ん?」

 

「やっ、やめてください、なのです……」

 

「弱っちい癖に抵抗すんじゃねぇよ!!」

 

 あれは……潤羽さんか? どうも絡まれているみたいだが……放ってはおけないな。今日はこういう奴らを多く見る。財団X騒動で溜まった鬱屈のせいか? とはいえ、それに巻き込まれる筋合いは潤羽さんにない。

 

「何をやってる。今すぐやめろ」

 

「あぁん? お前誰だよ?」

 

「ゆ、雪村くん……!」

 

 デルタギアは持ってないが……大丈夫だろう。その男はあの時、俺に舌打ちしていた男だった。

 

「雪村……まさか、お前がデルタか!?」

 

「如何にもそうだ。仮面ライダーデルタさ」

 

「だったら好都合だな……デルタギアとかいうのを寄越せ、俺がヒーローになってやるよ!! 俺の気に入らない奴もぶっ飛ばすんだ!!」

 

 あれは一般人が使っていいものじゃない。そんなことしたら最後……デルタのデモンズスレートにやられて、気が狂う。

 

「やめとけ。お前に扱える物じゃない……お前じゃデモンズスレートに耐えられないし、気に入らないやつをぶん殴った瞬間に、殺人でお縄だ」

 

「少なくとも、お前よりは精神力強いだろ!! チャラ男にやられて泣いてた癖によぉ!!」

 

「……見ていたのか」

 

 撮っていた民衆の中にいたんだろうな……

 

「そうだよ、わかったらとっとと寄越せ!! お前の代わりにデルタになって、チヤホヤされてやる!!」

 

「……期待を背負うのはすごく辛いぞ。チヤホヤされるなんて、いいものじゃない……やっぱりやめておけ」

 

「馬鹿すぎて良さがわかんねぇだけだろ!? もういい、身ぐるみ剥いで力ずくで奪ってやる!!」

 

 潤羽さんを下がらせて、振りかぶられた拳を受け止める。

 

「その程度じゃ……仮面ライダーには到底勝てんぞ」

 

「雪村くん……が、頑張って!」

 

「俺を応援しやがれ、潤羽!! もう一発殴られたいか!?」

 

 殴られたいか、だと? ……もう殴ったのか?

 

「ひっ……!」

 

「お前まさか……潤羽さんを殴ったのか」

 

「昔からすごく弱っちいやつだったからな……殴れば金が出る、便利なやつで……ぐぶぁ!?」

 

 全力で殴ってはいない。だが……我慢ができず、次の一撃が飛んでくる前に、拳をぶち込んでしまった。顔の骨を折ってしまったかもしれない。

 

「……お前には、デルタギアを渡すわけにはいかない。罪のない人を……それも、俺の知り合いをぶん殴るような奴には……絶対に」

 

「うっ、ぎぎぃ……」

 

「雪村くん……大丈夫?」

 

 心配してくれているのか? 優しいな……

 

「ありがとう、潤羽さん。俺は大丈夫だよ……さて、警察呼ばねぇとな」

 

「こんなところで絡まれるなんて、思わなくて……マリンもぺこらもいないから、どうしようかと……」

 

「アンデッド召喚は騒ぎになるもんな……潤羽さんこそ怪我はないか?」

 

 ……潤羽さんが不思議そうな顔をしている。何故だろうか?

 

「意外なのです……もしかしたら、弱虫とか臆病なヤツとか言われるかも、って思ってたのに……」

 

「言えるわけないでしょ? それが普通だよ、殴られたら人は抵抗できない。自分よりデカくて強いんだから……無理だよ。みんなが戦わなくていいようにするのが、俺やみんなの役目なんだから……ね、一破さん?」

 

「流石ですね……気配でわかったんですか?」

 

 パトカーから一破さんが降りてきた……

 

「事情聴取……させてもらえますか? 雪村さんのことだし、殴ったなら相当の事情があるはずだ……」

 

「相当なことじゃないですよ……ただ、潤羽さんがカツアゲされてたのを助けて……これまでに何回か殴られてたことを知って、気に入らなかったので……ああなりました」

 

「み、見逃してあげてほしいのです……雪村くんは、るしあを助けるために……!」

 

 奴が気絶しているのを見て……一破さんが笑みを零した。

 

「フッ、なるほど……安心してください、処罰はしませんよ。その調子だと、雪村さんも殴られたんでしょう? もう大丈夫です……後は何とかしておきますので」

 

「流石一破さん、手際がいい~!」

 

「茶化さないでくださいよ……では、面倒な手続きもありますし、私はこれで」

 

 そう言って、一破さんはパトカーで走り去っていった。

 

「ふぅ……来たのが一破さんでよかった。じゃあ、ランニングの途中なので!」

 

「ま、待ってなのです……!! 雪村くんは怖くないの? 戦うのは……」

 

「うーん、怖かったけど……頑張って克服しました!

何かしらきっかけがあって、急に頑張れるようになったんですけど……とにかく! 困ったら呼んでくださいね、飛んでいきますから!! あなたが辛い戦いや努力をしないでいいようにするのが、私のやりたいことなので! では!!」

 

 そう言って、走り去る。このままスクールカーストを放置するわけにもいかんな……俺だけでは手が回らんし、どうしたものか……そうだ!

 

『……雪村くんか。君からとは珍しい、どうしたんだい?』

 

「少しお願いがありまして……実は……」

 

『なるほど……わかった、頼んでみよう。明日を楽しみにしていてくれ』

 

 電話が切られた、流石学園長だ。トレーニングを終えて、次の日。

 

「……今日から、警備の人が増えたよ。警察の一破 誠二さんだ」

 

「よろしくお願いします……雪村さん、何故私を? あなただけで十分なのでは……」

 

「まぁ、こっちも考えがあるんですよ……二人で頑張りましょう」

 

 一破さんを指定したのは俺だ……理由はライダーに着いていける警察官だから、というのもあるが……本命はそっちじゃない。

 

「おい……お前、こっち来い!」

 

「えっ、嫌ですよ……!!」

 

「何をやっている!?」

 

 早速効果が出てるな。スクールカーストが低いであろう、メガネの男の子が虐められそうなところで、一破さんが割り込んだ。俺が行くまでもなさそうだな……

 

「げっ、警察!?」

 

「た、助けて……いつもこの人に殴られて……!!」

 

「そんなことしてねぇよ!!」

 

 シラを切っているが……一破さんが疑ってくれている。

 

「本当か? 場合によっては、あなたに同行してもらうことも考えさせてもらう……すみません、虐めを証明してくれそうな人はいますか?」

 

「い、います……!」

 

「待ちやがれ、テメェ!! またぶん殴られ……って、あ……」

 

 奴が青ざめた。もう、手遅れだ。

 

「どうやら、自滅したらしいな……署まで来てもらおうか」

 

「く、くそぉ……なんで警察が!!」

 

「警察は一番の抑止力……犯罪には抑止力をぶつけないとな」

 

 俺だけじゃない……法的機関が常に見回りをしていて、バカなことをすれば逮捕される。スクールカーストを無くすには、これが一番だと思ったんだ……成功らしい。

 

「おい、あいつ捕まってるぞ……」

 

「やめなきゃ捕まるんじゃ……」

 

「前科持ちなんて冗談じゃねぇよ……!!」

 

 効いてるな……大成功だ。一破さんが俺の前を通り過ぎながら、言ってきた。

 

「相変わらず、頭が回りますね?」

 

「一破さんこそ、頼りになりますね?」

 

「では……職務の最中なので、私は行きます」

 

 これで、スクールカーストもマシになればいいな……そう思いながら、俺は警備を続けた。

 

 

 

 財団X本部にて。高速で建設が進められる財団X日本支部……そして、建設風景を見つめる暁。そんな中で、幹部研究員、森本が口を開いた。

 

「……暁様。私には教えていただけないでしょうか……件の『死した神』について」

 

「そうだな……いいだろう。お前は財団への貢献度も高いしな、隠すこともないか」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 暁が『死した神』のことを話し始めた。研究員が唾を飲んでいる。

 

「奴はライダーに勝利できる、現在で唯一の因子だ……知っての通り……最早、ライダーはどのような法則も通用せぬ化け物と化している」

 

「はい……仰る通りです」

 

「……たとえば、このようにな」

 

 モニタの画面が切り替わって、映像が映し出された。

 

『リボルケインッ!!!』

 

『ハイパームテキィ!!!』

 

『平成ライダー!! キーック!!!』

 

 次々に怪人や敵が爆裂していく……その様子を、歯軋りしながら暁は見ている。

 

「BLACK RXは何故か四人に増えるし、ハイパームテキは一切の攻撃が効かないし、ジオウに至ってはライダーの力が無効化されるはずのバールクスですら……」

 

「……これに勝てる因子が、この世界に?」

 

「あぁ、いる……否、『存在した』という方が正しいな。現在はいない……殺されたんだ、一人の人間に」

 

 研究員が驚愕の声を上げた、当然だろう。ここまでのことを言っておいて、人間に殺された? 意味がわからないだろう。

 

「たった一人の人間に!? そんなヤツ……頼りになるんですか?」

 

「なるさ。その男の方が意味がわからんのだからな……おかしな力を体に流し込まれたらしい。この世界に入ることすら難しかったんだ、その力のせいでな」

 

「……どうやってゲートを開いたんですか?」

 

 暁が懐から取り出したのは、一枚の板にスイッチが付いたもの……『ガシャット』だった。

 

「『ホロライブラバーズX』ガシャット。これで無理矢理、この世界との繋がりを作った。これは元々、ただのゲームだったはずだが……その神によって、一つの平行世界にまで発展した。最早、ただのゲームとは言えない力を持ち……現実すら侵食できる力を有していたんだ。とはいえ、元がゲームだったからな……こいつを使って、『ゲームを始める』ことでゲートを開けるようにした。後は最上の遺したエニグマ技術*1でどうとでもなる」

 

「……その、神の死因は?」

 

 研究員は疑問が止まないという顔をしている……当然だろう、何故そんな神が敗北を喫したのか? 誰にもわからないだろう……暁すらわかっていないのだから。

 

「何発か殴られただけさ……たったそれだけで、消えてなくなってしまったのだ。何故かは知らんがな」

 

「……死んだのではなく?」

 

「あぁ、その場から元々なかったかのように……データすら取るのが難しく、破損したデータも大量にあった。だが……その力を見たところ、ライダーに勝てる因子であることがわかり、私から会長に提案すると……許可をいただけたのだ」

 

 神の力が気になる研究員は、それを尋ねることにした。

 

「その……神の力というのは?」

 

「わかっている力は『絶対に死なない』『無限補給可能な残機』『所持品の消去』『この世の全てを知り、即座に対応する力』『人同士で感染する洗脳と人格改変』『自己の宣言したシナリオに作り替える』『神に祈れば助けてもらえる』……こんなところか。これらの能力を死した神は……好きに与え、使役できるようだ」

 

「……何故? 何故そんな神が死んでいるんですか!?」

 

 暁ですらわかっていないのに、聞いても仕方がない。森本はわかっていても、そう言わずにいられなかった。

 

「意味不明だろう? だが……ライダーにこんな能力を持つ軍隊を差し向ければ、どうなるかな?」

 

「奴らといえど……流石にそれは……」

 

「あぁ、死ぬかもしれんし……悪くても消耗するだろう。そこに最高戦力を叩き込めば……絶対に殺せる」

 

 暁の狂気が、顔に染み出す。勝利を確信した目だ……

 

「だから、ここまでの予算を使ってでも……その神の名は?」

 

「名前はわからん……記録から完全に抹消されていたからな。まぁ、名など大した問題ではない。こいつを甦らせ、ライダー共に差し向けることこそ我らの目的。貢献するようであれば、世界を何個かやってもいいと会長も仰られているしな……それを条件に取引すればいいさ」

 

「な、なるほど……ありがとうございます」

 

 その瞬間、モニタが切り替わった。暁に報告が来たのだ。

 

「暁様、建設が終了しました……また、何か製造するのですか?」

 

「あぁ……ガイアメモリにしようかと思ったが、伸び代や被害の大きさも考えれば、こちらの方がいい……『ゾディアーツスイッチ』を作成して、売りつけろ。設計図をFAXする……金も稼げるし、奴らへの被害も出るからな。いい時間稼ぎだ……」

 

「わかりました。では、そのように……」

 

 そう言って、モニタの電源が落ちる。モニタから目を放し、研究員の方を向いて一言。

 

「行け」

 

「は、はい!」

 

「……死した神よ。会長に協力してもらうぞ? 全次元の総ては、会長の手の中に無ければならないのだから!!」

 

 そう言って笑った、暁の顔は……一段と強い狂気と、会長への心酔に満ちていた。

*1:
『平成ジェネレーションズFINAL』にて登場した、平行世界の移動及び融合装置。並行世界の最上魁星同士が不老不死になるため、共同して作成した。




次回から新章開始です。
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