新章開始です。
新・型・襲・来
……学園の授業が終了し、トレーニングを終えたあと。休憩時間中に、一破さんと今日のことを話し合う。
「いじめ検挙件数は今日だけで3件、これまでの件数を合わせれば10件ですか……多いですね」
「やっぱり、財団Xのことによる絶望や鬱屈が表面に滲み出てきているのでしょうか……とはいえ、社会の敵を許しておくわけにはいきません」
「ですよね。あと三日、お互い頑張っていきましょう!」
歯を見せて笑うと、一破さんも微笑んでくれた。
「ふふっ……そうですね。無理はしすぎないようにしてくださいよ? あなたに惚れている子もいるんですから」
「なんで一破さんまで知ってるんですか!?」
「あれ、知らないんですか? 癒月先生も鷹嶺先生も、みんなに話してますよ」
……言うなって言っとけばよかったか。
「くそ~、あの二人……!! みんなの目が妙に生温かいと思ったら!!」
「では、私はこの辺で……また明日」
「あ、ご苦労さまでーす!! さて、と……夜中の見回りもあるし、飯を済ませとかないとな」
そう思って、食堂に向かい……夕食をとっていると。
「……電話か? もしもし?」
『私だ、雪村くん。すまないね、取り込み中だったかい?』
「あ、大丈夫ですよ。食事中なだけなので……」
焼き魚の骨を外しつつ、電話の内容を聞く。
『わかった、食べながら聞いてくれ。明日と明後日は、元々休日の部分だ。そして……財団X関係の事象で、寂しさや鬱屈、絶望が蓄積しているのは……君ならわかっていると思う』
「もちろん把握しております。それで……何か対策を?」
『そうさ。これはみんなには極秘、サプライズで行う。君にも協力して欲しい……私は君にパフォーマーの才能を見出しているからね』
パフォーマー……デルタとしてか。
「私はデルタになればいいんですかね?」
『その辺も来てくれたら説明しよう。食べ終わったら、とりあえず学園長室に来て欲しい』
「わかりました。そちらに向かいます」
骨を取り終わった焼き魚と、ご飯を合わせて食べ進める。
「ん、美味い……ありがとうございました。失礼します」
「いつも大変だね……頑張りなよ!」
「お気遣いどうも!! よ~し、雪村くんも頑張っちゃいますよ~!!」
応援をもらいつつ、笑いながら向かうのは学園長室。さて……何が出るかな。
「雪村康太です」
「入ってくれ」
「失礼します」
笑顔を正して、座る。
「来てくれてありがとう。今日話したいことは、他でもない……鬱屈をマシにするため、ホロライブ学園で文化祭を行いたいと思うんだ」
「……文化祭ですか。ってことは、クラスごとに出し物を決めたり?」
「無論、そうなる。学園側でもいくつか用意はしているが、君にはデルタとして……協力を要請したい」
仮面ライダーデルタとして、パフォーマンスを行う。それが今回の仕事のようだな。
「任せてください! もう私は仮面ライダーデルタ……!! やれることは何でもやります!!」
「いつも通り、責任感が強いね……いいことだけど。君には、このアトラクションをやってもらいたい」
「なになに……ふむ。よし、やりましょう!!」
把握した。全部やりきってみせる……
「即決だね。ありがたいんだが……大変な役割ばかり任せてしまってすまない」
「謝りすぎですよ、これから謝るの禁止にしません? 私がやりたくてやってるんですから」
「ありがとう。じゃあ、明日クラスごとに出し物を決めてもらうから……警備は任せるよ」
背筋を伸ばして、自信満々で胸を叩く。
「仮面ライダーデルタにお任せください!!」
「……飽くまでも『デルタ』として、か。精神的負担も凄まじいだろうに……それをおくびにも出さないのは、流石と言うべきだが……」
「では、失礼します!」
聞こえないふりをして、学園長室を出た。何を言っても心配をかけるなら、言わないほうがいいだろう。
「……学園長、ご心配なく。私の苦しみは、誰にも見せやしません。あやめにも……一破さんにも」
苦しみは、俺だけが背負うんだ。俺がやるんだよ……生きる約束はした。でも、何も苦しまないことはできないんだ。
「何でも来やがれ、クソッタレ野郎共……誰にも邪魔はさせねぇぞ」
そう言いつつ、俺は一旦寮へと帰り……少しの休憩の後、警備に入るのだった。
誰もが寝静まった、丑三つ時。ガラスの窓が解錠され、人の家に侵入する不届き者がいた……ただし、その姿は人間とはかけ離れたものであったが。
「……目覚めよ、選ばれし者」
「な……なんだ? こんな夜中に、って……化け物ォ!?」
「驚いたか? 我は天秤、全てを量る天秤なり……君は、デルタが活躍することに不満を抱いている。そうではないかね?」
天秤座、リブラ・ゾディアーツが……その男に声をかける。デルタに不満を覚える、一人の学生に。
「な、なんでそれを……お前何もんだ!?」
「そんなことはどうでもよい。お前の気持ちを聞いているのだ……当たっているのではないか?」
「……あぁ、そうだよ。それだけじゃねぇ、正義の鉄槌の邪魔して……俺を退学に……!! あのクソ野郎!!」
逆恨みを露わにし、拳を強く握るその男を……天秤座の怪人、リブラ・ゾディアーツは闇の中で怪しく輝く眼で見つめている。
「いい憎しみだ……そんな君に力をあげよう、仕返しのできる力をね。さぁ、星に願いを……これを押すんだ」
「これ、スイッチか……? こんなもん何に使え……うぉわぁぁ!?」
「猟犬座、ハウンド・ゾディアーツか。悪くない……明日、その力で学園を襲うといい」
その男の体が変化し、姿が変わる。人が宇宙で活動するための超進化生命体。『ゾディアーツ』である……
「わ、わかったよ……アンタ、誰だ? 俺に何をさせたいんだ? 財団Xとかいうのに所属してるのか?」
「私は運命を量る者。ただそれだけさ……君は君のやりたいことをやればいい……じゃあな」
「俺のやりたい、ことを……」
そう言って、リブラは男の前から消えた。
「フン、愚かな者ほど利用しやすい物はないな……精々頑張るといいさ。全ては星の運命のままに……」
「……こ、これで復讐できるんだな……待ってろ、雪村!! お前を殺すのは俺だァァァ!! ハハハハ、アッハッハッハッハ……!!」
「さてと……当たりか外れか、きちんと見極めなくてはな。当たりなら回収せねばならんし……」
逆恨みを込めて、月に向かって笑うその男は……恰も童話の狼男のようだった。リブラはそれを鼻で笑いつつ、幻覚の中へと消えていく……自分達の目的を果たすために。
次の日。早速、みんなに文化祭のことが伝えられている。既に変身した俺は、窓からそれを見つめている……
「今日はみんなにいいニュースがあるよ!! なんと明日は……文化祭だ!!」
「文化祭!?」
「そんなの行事になかったぞ!?」
ザワザワしてるな、外にいても聞こえてくる。楽しそうでなによりだ……
「みんなを楽しませるために、学園長が用意したんだ! 今日は授業の前に、出し物を考えるよ!!」
「はーい!!」
「今から楽しみだな~!!」
好評なようでよかった……さてと、俺は仕事を頑張るか。みんなが楽しい文化祭を満喫するためにも、俺がやらなくちゃ。
「さて……いないとは思うけど、確認はしないとな」
それが仕事だし、やらないと。そう思って、俺は見回りを始めた。
「一階廊下、異常なし。二回廊下も異常なしっと……」
飛び上がって、ざっと見回す。異常なところはないな……玄関を見に行くために、飛び降りて走る。こうするのにも慣れたものだ。
「運動場、異常なし。玄関は……って、なんだあれ?」
「グルルルルル……」
「とりあえず、報告しないと……!?」
奴は分胴付きのチェーンを取り出して、壁に投げつけた。強化コンクリートの壁が易々と砕け散る……間違いなく、ライダー関係のヤツだ。急いで連絡するため、変身を一旦解除する。
「もしもし、緊急事態です!! ライダー関係のものだと思われる実体が……!! 財団Xのものかと!!」
『なんだって!? 呼びかけて、すぐに避難を……』
「いや……明日の文化祭を中止にするわけにはいきません、ここで食い止めます!! これはみんなに内緒で!!」
そう言いつつ、奴に拳をぶち込もうとしたが……避けられた。素早いな……一筋縄ではいかなさそうだ。
『わかった……くれぐれも気をつけてな!』
「大丈夫ですよ! 変身!!」
『standing by』
奴に向かって駆けながら、デルタフォンを差し込む。
『Complete』
「さて……お前は誰だ?」
「雪村康太、よくも……よくもぉ……!!」
どうやら、俺はこいつに何故か恨まれているようだ。それなら、誘導できるな。
「おい、チンピラ! こっちに来い! 相手になってやるよ!!」
「逃げんな、クソッタレ野郎!!」
「うわっ、針か……!? 危ねぇな……針にはいい思い出がないから嫌いだ!! 最近死にかけたしな!!」
どうにか避けながら、怪物を外へと誘導した。見た目的にオルフェノクではない、なら……ミラーモンスターか、ライダーか……
「お前が何者なのかは、ぶっ倒して聞いてやる!! 覚悟しろ!!」
「覚悟するのはテメェだろうが!!」
「グッ……流石は財団X製、パワーも並以上だな!!」
奴に殴られつつも、地面を蹴りつけた反動で膝を奴に突き刺す。効いている、装甲はそこまでじゃないな。
「グゥッ……!! 舐めるなよ!!」
「ファイア!!」
『Burst Mode』
白い光弾を放ったが、その全てが敵のスピードについていけず、地面に炸裂して消えた。速度と分胴付きの鎖、あと針。それがこいつの武器らしい……
「チッ、お前はなんでここに来た……!! 危険因子を殺すためか!?」
「そんなの興味ねぇ、貴様を殺しに来たんだよ!! ついでにお前のお仲間もな!!」
「だったら、殺されてやるわけには……ガッ!?」
分胴が鳩尾に突き刺さり、仮面の中で血反吐を吐いた。怯んだところを逃さずに、鎖で首を絞められる。
「窒息死しやがれ、クソ野郎が!!」
「放せ……グ、ギッ……」
「とっとと死にやがれぇぇ!! ウォォォォォッ!!!」
こいつの恨みの原因はわからないが……とりあえず、鎖をなんとかしないとな。そう思って、俺は……脱力する振りをして、まだ弾が残っているデルタムーバーを向けた。
「グ、ォ……」
「そろそろ落ちるな……!! そのまま窒息しやがれ、雪村康太!! 苦しんで死にな!!」
「俺より、自分の心配、しやがれ……ヘッ……」
そう言って、銃弾をぶち込むと……奴は怯んで、大きく仰け反った。
「ガハッ!? なっ、なにぃぃ……!?」
「隙あり……決めるなら今しかない!!」
『Ready』
ドライバーからメモリを引き抜き、デルタムーバーに装填する。しっかり握って、狙いを定めた。
「こいつで焼け死ね!! チェック!!」
『Exceed Charge』
「死んで、たまるか……俺はお前を殺さなきゃ、死んでも、死にきれ……」
奴が言い終わる前に、紫色の光が奴に向かって飛んでいき……奴を拘束した。
「グェッ!?」
「だぁぁりゃあぁぁぁーッ!!!」
「ギャアァァーッ!!!」
奴にΔの文字が浮かび、奴の体が灰になってゆく……それから、奴は爆発を起こした。
「……終わったか? 変身者の死体は……残ってねぇな」
ミラーモンスターやカードデッキのライダーに近いか。何はともあれ、みんなが気づいてしまう前に片付けられてよかった……
「雪村さん、大丈夫ですか!?」
「あ、一破さん。えぇ、もう終わりました……分胴付きチェーンを持った、針を手から撃てるすばしっこい化け物でしたが……殺したら灰になるんじゃなくて、爆裂したので……ミラーモンスターや、カードを使うライダーに近いと思います」
「……なるほど。殺したら爆裂するのか……こういうタイプは珍しいですね」
確かに、オルフェノクやカイザ……あとライオトルーパーとか……全員殺したら灰になっていたからな。
「とりあえず、学園長に報告しないとですね。みんなは大丈夫そうですか?」
「えぇ、先生方が上手く言ってくれたようで……知らない方がいいこともある、ってことですかね」
「私はそう思ってますよ。とりあえず、行かないとな。学園をお願いします」
一破さんにそう言って、俺は学園長室へと向かい……今回のことを説明した。
「ふむ……危険な相手だね。分銅を振り回し、遠距離攻撃手段を持つ素早い相手……デルタしか相手はできなさそうだ」
「確実にルシファーズハンマーを命中させました。爆裂するところも確認しましたし……死亡したと見ていいと思います」
「確かに、爆発したなら死んだと見ていいか……明日の文化祭は予定通り行おう。君には引き続き警備をお願いしたい……」
無論そのつもりだ。悪いものにはさせないさ……絶対にな。
「任せてください。奴の仲間が来ても、財団Xが来ても文化祭の邪魔なんかさせませんから」
「頼もしくて助かるよ……『何があってもデルタがいてくれる』、この事実はみんなを少なからず安心させている。だから、こんな行事もできるんだ」
「そういう日常的なことをできるようにするのが、私や一破さんの役目ですから。気にしないでくださいよ……私がこれからもデルタとして、奴らと戦います。まさかあやめを変身させるわけにもいきませんし……」
そうだ、直接戦えるのは俺だけ。奴らがいつ来ても、みんなが日常を失わないように……俺は戦う。
「だよね……君ならそう言うと思った。明日は賑やかな日になるし、行事にも協力してもらわないといけない。月並みな言葉で申し訳ないが……頑張ってくれ」
「はい、頑張らせていただきます!! では、仕事に戻りますね!!」
「……あの明るさを保てるのも、彼の強さか」
学園長室を出て、もう一度デルタフォンを構える。
「変身」
『Standing by』
『Complete』
体が光に包まれて、デルタに変身する。さぁ、お仕事再開といこうか。
「いつでも来い、俺が相手だ!!」
俺はまた、学園内を走り抜ける。学園の治安や平和を守り抜くために。そして……放課後のこと。
「……康太様! お疲れ様!!」
「あやめ! あれから……いじめとかに遭ってないか? もしそうなら……」
「大丈夫だ余、康太様と人間様が抑止力になってるみたい! 明日は色んな出し物やるから……よかったら、来てくれない?」
行ってあげたいのは山々だが……如何せん、こちらもやらなければならないことがあるんだ。
「ごめん。それは……できないんだ。みんなを守らないといけないから……もし、財団Xの奴らに襲われたら全部台無しにされちゃうだろ? だから……それをさせたくないんだ」
「そっか……じゃあ、しょうがないね。みんなを精一杯楽しませるためにみんなで色々考えたから……見ててね!!」
「あぁ、応援してる!! 俺も、『仮面ライダーデルタ』もな!!」
あやめが少し疑問そうな顔をしている……何故だ?
「え? デルタと康太様は同一でしょ?」
「いや……違う。俺はデルタじゃないんだ、正確には、『大衆が求めてるヒーロー』は『仮面ライダーデルタ』であって、雪村康太じゃない。だから……みんなを財団X側の思考に傾かせないためにも、俺は戦いが終わるまで『デルタ』でいなきゃならないんだ」
「……そうなんだね……」
一度仮面ライダーになってしまえば、確実にそうなる。だから……あやめをオーガにするわけにはいかないんだ。『大衆の仮面ライダーオーガ』にされて、圧力に潰されるなんて……絶対にあっちゃならない。
「俺は大丈夫だけど、圧力もかかるし……すごく疲れる。だからあやめは、オーガになろうなんて考えるな。俺が……デルタでいればいいだけの話だ。よし、暗い話はやめにしよう! 明日は文化祭、パーッと楽しんでこい!! な!!」
「……うん! ありがとう、康太様! また明日ね!!」
「おう、明日が楽しみで寝れなかったとかならないようにな~?」
そうだ……俺は、みんなが望むなら生きる。生きて……その後、何をするかはわからないけど。命を捨てるような行為はできない……あやめに怒られちゃうからな。
「何はともあれ……明日はいい日になるといいな」
「そうですね、みんなが楽しく過ごせる……いい日になるといい……」
「一破さん……あなたも同じ気持ちですか?」
微笑を浮かべつつ、一破さんが言う。
「もちろん。社会の敵と戦うのも、そのために命を賭けるのも……そのためですからね。あなただって、そうでしょう?」
「はい。それ以外ありませんよ……まぁ、もう命は捨てられませんけどね」
「あなたはやり過ぎですよ。何事も過ぎれば毒……雪村さんを大切に思う人がいるなら、命を捨てちゃいけません。それこそ……平和のために、必要のない犠牲が出てしまう」
そうだな……あやめが止めてくれて、よかった。
「止めてくれたあやめには感謝だな……戦いが終わったらお礼しないと……」
「そのためにも、あなたは死んじゃいけない……」
「あなたもね、一破さん」
二人で約束した。二人で生き残ってみせる、奴らなんかに殺されてやるものか。
「では……私は戻りますね」
「私も、ご飯を食べるので」
「また明日、頑張りましょう」
そう言って別れて……俺は早めに食事を摂るため、食堂へと向かうのだった。
……その日の夜、ゾディアーツスイッチを与えられた男は……誰もいない道を、フラフラと歩いていた。
「くっそぉぉ……何が仕返しできる、だよ!! 全然勝てないじゃねぇか!!」
「それはお前が弱いからだろ? 俺のせいにしてんじゃねぇよ」
「……雪村康太ァァ!!」
男はハウンド・ゾディアーツとなり、雪村康太に殴りかかったが……拳は難なく受け止められた。その瞬間、雪村康太の姿が変わり……リブラ・ゾディアーツとなった。
「短気だな、お前は……そういうタイプの男は嫌いなんだ」
「て、天秤野郎……!!」
「これが私の能力だ。姿を見ただけでこの激昂……もうすぐだな」
リブラが呟いた内容に苛立ち、もう一度殴りかかったが……易々と受け止められた。
「なに!?」
「不意打ちか……私には無意味だぞ」
「ぐふっ!!」
リブラの杖で腹を突かれて、男が倒れ込む。リブラは男に見下しながら、命令した。
「私は戦いに来たのではない。元に戻りなさい……今のお前では勝てん」
「畜生……何の用だ!?」
「何も悪いニュースじゃない、寧ろよいニュースさ……君はもうすぐ、『ラストワン』に達する。その時こそ、君の運命が決まる時だ」
その男に、リブラは淡々と言う。
「『ラストワン』……?」
「力はさらに高まり……成功すれば、さらに進化することができる。君の運命が良いものであることを祈っているぞ」
「ま、待て!! その、進化をすれば……勝てるのか!? 雪村康太には!!」
男がリブラに尋ねると……リブラはまたもや、淡々と言った。
「どうだろうな。お前の実力次第だが……勝てる確率は高いだろう」
「そ、そうか……!! やってやるぞ!! 明日がお前の最期だ、雪村康太!!」
「意気込みだけではなれんのだが……まぁ、いいか」
リブラは呆れたように言って、その場から消えた。
「……文化祭当日だな。みんな準備で忙しそうにしてるよ」
「だけど、楽しそうにしてますね」
「なら……邪魔をさせるわけにはいかない」
二人で言いながら、体育館へと向かう。開会式があるのだ……俺は、デルタとして登場しなければならない。
「……来てくれたね、雪村くん。このマイクをつけておいてくれ」
「わかりました……そろそろ始まるかな?」
「あぁ……みんなで出し物をやるから、その火付け役になってもらう」
最初の役と、一大アトラクション。これが俺の役目。やってみせるさ……始まるな。Aさんがみんなに向かって呼びかけている。
「……皆さん、ホロライブ学園文化祭にお集まりいただき、誠にありがとうございます! 今日を楽しい時間にするために……彼も協力してくれますよ!!」
「よし……やるか」
「さぁ、仮面ライダーデルタの登場です! 拍手でお迎えください!!」
デルタフォンを構えた。そして……マイクをオンにする。
「変身!!」
『Standing by』
『Complete』
変身して、みんなに見えるところまで走り……ポーズをとった。
「仮面ライダーデルタ、ただいま参上!!」
「仮面ライダーデルタが今日の文化祭を盛り上げてくれます! デルタさん、なにか一言!」
「そうですね……今日はみんな、来てくれてありがとう。財団Xのせいで溜まった鬱屈、ここで全部帳消しにしていって欲しいな!!」
みんなから歓声が上がる……効果絶大だ。
「さぁ、皆さんよく聞いてくださいね!! 今日は、デルタも協力のアトラクション! ライダー鬼ごっこを開催しますよ!!」
「ライダー鬼ごっこ?」
「ルールは簡単、デルタはこの学園中を駆け回るので、それを文化祭が終わるまでに捕まえられたら……なんと、先着一名様に! 文化祭の全施設、無料券がもらえちゃいます!! やるしかないですよね!!」
警備しながらできる上に、みんなも楽しめる……一石二鳥のアトラクションだ。
「武器の類は使用禁止ですので、正々堂々追いかけてくださいね!! デルタを最初に捕まえるのは……一体、誰なのか!? ご期待ください!!」
「絶対捕まえてやる!!」
「デルタと握手するんだ!!」
みんな楽しみにしてくれてる……それなら、頑張らない理由はゼロだ。
「捕まってなんかやらないぞ? 仮面ライダーと勝負だ!!」
「上等だー!!」
「ありがとうございます、みんな楽しそうですね……」
Aさんがお礼を言ってきた……当然のことだ。
「えぇ、何よりですね……よし、みんな!! 今から始めるぞ!? よーい……ドン!!」
「皆さん! 出し物を巡りながら、見つけたら追いかけてくださいね~!!」
「待てー、デルタ~!!」
早速、追いかけてきてる人達がいるな。でも……!!
「残念でした!!」
「二階まで跳んだぁ!?」
「言ったろ、一筋縄じゃいかないって!!」
辺りを見回しつつ、とにかく逃げる。仮面ライダーは戦うだけが仕事じゃないな……そう思っていると。
「見つけた余、康太様!!」
「うぉ、あやめ!?」
「今日は約束通り、戦ってもらう余!! 待て~!!」
こういう戦いもアリか。そう思いつつ……逃げる。
「追いつけるかな!?」
「もちろん!!」
「流石だな……!!」
そう思って、階段を飛び降りると……生徒達が待ち構えていた。
「かかれ~!!」
「よいしょっと!!」
「壁を蹴っただと!?」
囲まれた中から抜け出すために、壁を蹴りつけて逃亡する。トレーニングにもなるし、これはいいな……そう思っていると。
「随分楽しそうだな……雪村康太!!」
「ん? お前……誰だっけ?」
「忘れたとは言わせねぇぞ!! あの時、お前が退学にしやがった奴の片割れだ!!」
あ、思い出した。
「そうか……で、なんでここにいるんだよ」
「お前を殺しに来たんだ……!!」
「逆恨みが過ぎるだろ。何言ってんだ……?」
そう言ったが……奴はさらに苛立っているのか、どんどん顔を真っ赤にしている。茹でダコみたいだ。
「舐めてんじゃねぇぞォォ!!」
「……なんだ、それ?」
「スイッチだよ!! これでお前を殺せる、殺してやるぞ!!」
強くスイッチが握られると……変なスイッチから、音声が鳴った。
『Last One』
「……見た目が変わった?」
「ラストワン……そうか、これが!!」
スイッチが血走った眼球のような見た目になり、ボタンの位置も変化している。
「な、なんだよアイツ……?」
「大丈夫だ、下がってな!」
「余裕ぶってられるのも、今のうちだ!! 覚悟しやがれ!!」
奴がスイッチを押すと……奴の体が闇に包まれて、星座のようなものが浮かび上がり……奴が蚕の繭のようなものに体を拘束され、倒れた。
「な……なんだ!?」
「グルルルルッ……殺す、ぶち殺す……!!」
「お前は……!? バカな、あの時確かにルシファーズハンマーを……!!」
あの時の分銅を持った怪物……まさか、生きていたなんて。ただ倒しただけでは死なないのか? ライダーとも、モンスターとも違う……厄介な相手だ。
「死ねぇぇぇっ!!」
「お、おい! ヤバいんじゃねぇのか!?」
「逃げた方が……」
まずい、みんなが怖がっている。こいつの狙いは俺だ……それなら……!
「みんな! 文化祭を止めるな!! こいつは俺が食い止める!!」
「なにィ!?」
「日常をぶち壊すのがこいつの目的、それに従ってやる道理なんてない!! みんな、俺と一緒にこいつと戦おう!! こいつの思い通りになんか……させるな!!」
今日だけの特別イベント、ここで辞めるわけにはいかない。
「でも……!」
「大丈夫さ、俺はデルタだぞ!! みんなは楽しく遊んでくるといい!! さぁ……相手は俺だぜ、スイッチ男!!」
「バカにすんじゃねぇっ!!」
そう叫んで、向かってきたが……それを躱しつつ、みんなを逃がす。
「あやめ、戦いはまた今度だ! 今日は他のことを楽しんでくるといい!!」
「……約束だ余、死なないでね!!」
「死ね!! ……なに!?」
鎖を掴んで、引き寄せる。
「死なないでねって言われた矢先に、攻撃喰らえるかよ!!」
「がはっ!!」
「……雪村さん!? そいつは……倒したんじゃ!?」
一破さんも来たな……だけど。
「こいつは、ただ倒しただけじゃダメみたいなんです! 怪物はどうにかしますから、一破さんはみんなを守ってください!! 文化祭を続けるために!!」
「……わかりました!!」
「さっきから……よそ見ばっかしやがってぇ!!」
攻撃を受け止めて、挑発する。
「悔しいなら、もっと俺に集中するんだな! かかってこいよ!!」
「上等だァ!!」
「こっちに来い!!」
みんなに攻撃が当たらないように、誘導する。ここで邪魔させたら、また鬱屈が溜まることになってしまう。そうさせない為に、俺は奴を挑発しながら誘導した。
ラストワンの性質に気づけるか、雪村くん。