※この作品はR-18です。

仮面を被った、人間達の英雄譚   作:とも667

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 新章開始です。


FOURZE編+~Shooting star~
新・型・襲・来


……学園の授業が終了し、トレーニングを終えたあと。休憩時間中に、一破さんと今日のことを話し合う。

 

「いじめ検挙件数は今日だけで3件、これまでの件数を合わせれば10件ですか……多いですね」

 

「やっぱり、財団Xのことによる絶望や鬱屈が表面に滲み出てきているのでしょうか……とはいえ、社会の敵を許しておくわけにはいきません」

 

「ですよね。あと三日、お互い頑張っていきましょう!」

 

 歯を見せて笑うと、一破さんも微笑んでくれた。

 

「ふふっ……そうですね。無理はしすぎないようにしてくださいよ? あなたに惚れている子もいるんですから」

 

「なんで一破さんまで知ってるんですか!?」

 

「あれ、知らないんですか? 癒月先生も鷹嶺先生も、みんなに話してますよ」

 

 ……言うなって言っとけばよかったか。

 

「くそ~、あの二人……!! みんなの目が妙に生温かいと思ったら!!」

 

「では、私はこの辺で……また明日」

 

「あ、ご苦労さまでーす!! さて、と……夜中の見回りもあるし、飯を済ませとかないとな」

 

 そう思って、食堂に向かい……夕食をとっていると。

 

「……電話か? もしもし?」

 

『私だ、雪村くん。すまないね、取り込み中だったかい?』

 

「あ、大丈夫ですよ。食事中なだけなので……」

 

 焼き魚の骨を外しつつ、電話の内容を聞く。

 

『わかった、食べながら聞いてくれ。明日と明後日は、元々休日の部分だ。そして……財団X関係の事象で、寂しさや鬱屈、絶望が蓄積しているのは……君ならわかっていると思う』

 

「もちろん把握しております。それで……何か対策を?」

 

『そうさ。これはみんなには極秘、サプライズで行う。君にも協力して欲しい……私は君にパフォーマーの才能を見出しているからね』

 

 パフォーマー……デルタとしてか。

 

「私はデルタになればいいんですかね?」

 

『その辺も来てくれたら説明しよう。食べ終わったら、とりあえず学園長室に来て欲しい』

 

「わかりました。そちらに向かいます」

 

 骨を取り終わった焼き魚と、ご飯を合わせて食べ進める。

 

「ん、美味い……ありがとうございました。失礼します」

 

「いつも大変だね……頑張りなよ!」

 

「お気遣いどうも!! よ~し、雪村くんも頑張っちゃいますよ~!!」

 

 応援をもらいつつ、笑いながら向かうのは学園長室。さて……何が出るかな。

 

「雪村康太です」

 

「入ってくれ」

 

「失礼します」

 

 笑顔を正して、座る。

 

「来てくれてありがとう。今日話したいことは、他でもない……鬱屈をマシにするため、ホロライブ学園で文化祭を行いたいと思うんだ」

 

「……文化祭ですか。ってことは、クラスごとに出し物を決めたり?」

 

「無論、そうなる。学園側でもいくつか用意はしているが、君にはデルタとして……協力を要請したい」

 

 仮面ライダーデルタとして、パフォーマンスを行う。それが今回の仕事のようだな。

 

「任せてください! もう私は仮面ライダーデルタ……!! やれることは何でもやります!!」

 

「いつも通り、責任感が強いね……いいことだけど。君には、このアトラクションをやってもらいたい」

 

「なになに……ふむ。よし、やりましょう!!」

 

 把握した。全部やりきってみせる……

 

「即決だね。ありがたいんだが……大変な役割ばかり任せてしまってすまない」

 

「謝りすぎですよ、これから謝るの禁止にしません? 私がやりたくてやってるんですから」

 

「ありがとう。じゃあ、明日クラスごとに出し物を決めてもらうから……警備は任せるよ」

 

 背筋を伸ばして、自信満々で胸を叩く。

 

「仮面ライダーデルタにお任せください!!」

 

「……飽くまでも『デルタ』として、か。精神的負担も凄まじいだろうに……それをおくびにも出さないのは、流石と言うべきだが……」

 

「では、失礼します!」

 

 聞こえないふりをして、学園長室を出た。何を言っても心配をかけるなら、言わないほうがいいだろう。

 

「……学園長、ご心配なく。私の苦しみは、誰にも見せやしません。あやめにも……一破さんにも」

 

 苦しみは、俺だけが背負うんだ。俺がやるんだよ……生きる約束はした。でも、何も苦しまないことはできないんだ。

 

「何でも来やがれ、クソッタレ野郎共……誰にも邪魔はさせねぇぞ」

 

 そう言いつつ、俺は一旦寮へと帰り……少しの休憩の後、警備に入るのだった。

 

 

 

 誰もが寝静まった、丑三つ時。ガラスの窓が解錠され、人の家に侵入する不届き者がいた……ただし、その姿は人間とはかけ離れたものであったが。

 

「……目覚めよ、選ばれし者」

 

「な……なんだ? こんな夜中に、って……化け物ォ!?」

 

「驚いたか? 我は天秤、全てを量る天秤なり……君は、デルタが活躍することに不満を抱いている。そうではないかね?」

 

 天秤座、リブラ・ゾディアーツが……その男に声をかける。デルタに不満を覚える、一人の学生に。

 

「な、なんでそれを……お前何もんだ!?」

 

「そんなことはどうでもよい。お前の気持ちを聞いているのだ……当たっているのではないか?」

 

「……あぁ、そうだよ。それだけじゃねぇ、正義の鉄槌の邪魔して……俺を退学に……!! あのクソ野郎!!」

 

 逆恨みを露わにし、拳を強く握るその男を……天秤座の怪人、リブラ・ゾディアーツは闇の中で怪しく輝く眼で見つめている。

 

「いい憎しみだ……そんな君に力をあげよう、仕返しのできる力をね。さぁ、星に願いを……これを押すんだ」

 

「これ、スイッチか……? こんなもん何に使え……うぉわぁぁ!?」

 

「猟犬座、ハウンド・ゾディアーツか。悪くない……明日、その力で学園を襲うといい」

 

 その男の体が変化し、姿が変わる。人が宇宙で活動するための超進化生命体。『ゾディアーツ』である……

 

「わ、わかったよ……アンタ、誰だ? 俺に何をさせたいんだ? 財団Xとかいうのに所属してるのか?」

 

「私は運命を量る者。ただそれだけさ……君は君のやりたいことをやればいい……じゃあな」

 

「俺のやりたい、ことを……」

 

 そう言って、リブラは男の前から消えた。

 

「フン、愚かな者ほど利用しやすい物はないな……精々頑張るといいさ。全ては星の運命のままに……」

 

「……こ、これで復讐できるんだな……待ってろ、雪村!! お前を殺すのは俺だァァァ!! ハハハハ、アッハッハッハッハ……!!」

 

「さてと……当たりか外れか、きちんと見極めなくてはな。当たりなら回収せねばならんし……」

 

 逆恨みを込めて、月に向かって笑うその男は……恰も童話の狼男のようだった。リブラはそれを鼻で笑いつつ、幻覚の中へと消えていく……自分達の目的を果たすために。

 

 

 

 次の日。早速、みんなに文化祭のことが伝えられている。既に変身した俺は、窓からそれを見つめている……

 

「今日はみんなにいいニュースがあるよ!! なんと明日は……文化祭だ!!」

 

「文化祭!?」

 

「そんなの行事になかったぞ!?」

 

 ザワザワしてるな、外にいても聞こえてくる。楽しそうでなによりだ……

 

「みんなを楽しませるために、学園長が用意したんだ! 今日は授業の前に、出し物を考えるよ!!」

 

「はーい!!」

 

「今から楽しみだな~!!」

 

 好評なようでよかった……さてと、俺は仕事を頑張るか。みんなが楽しい文化祭を満喫するためにも、俺がやらなくちゃ。

 

「さて……いないとは思うけど、確認はしないとな」

 

 それが仕事だし、やらないと。そう思って、俺は見回りを始めた。

 

「一階廊下、異常なし。二回廊下も異常なしっと……」

 

 飛び上がって、ざっと見回す。異常なところはないな……玄関を見に行くために、飛び降りて走る。こうするのにも慣れたものだ。

 

「運動場、異常なし。玄関は……って、なんだあれ?」

 

「グルルルルル……」

 

「とりあえず、報告しないと……!?」

 

 奴は分胴付きのチェーンを取り出して、壁に投げつけた。強化コンクリートの壁が易々と砕け散る……間違いなく、ライダー関係のヤツだ。急いで連絡するため、変身を一旦解除する。

 

「もしもし、緊急事態です!! ライダー関係のものだと思われる実体が……!! 財団Xのものかと!!」

 

『なんだって!? 呼びかけて、すぐに避難を……』

 

「いや……明日の文化祭を中止にするわけにはいきません、ここで食い止めます!! これはみんなに内緒で!!」

 

 そう言いつつ、奴に拳をぶち込もうとしたが……避けられた。素早いな……一筋縄ではいかなさそうだ。

 

『わかった……くれぐれも気をつけてな!』

 

「大丈夫ですよ! 変身!!」

 

『standing by』

 

 奴に向かって駆けながら、デルタフォンを差し込む。

 

『Complete』

 

「さて……お前は誰だ?」

 

「雪村康太、よくも……よくもぉ……!!」

 

 どうやら、俺はこいつに何故か恨まれているようだ。それなら、誘導できるな。

 

「おい、チンピラ! こっちに来い! 相手になってやるよ!!」

 

「逃げんな、クソッタレ野郎!!」

 

「うわっ、針か……!? 危ねぇな……針にはいい思い出がないから嫌いだ!! 最近死にかけたしな!!」

 

 どうにか避けながら、怪物を外へと誘導した。見た目的にオルフェノクではない、なら……ミラーモンスターか、ライダーか……

 

「お前が何者なのかは、ぶっ倒して聞いてやる!! 覚悟しろ!!」

 

「覚悟するのはテメェだろうが!!」

 

「グッ……流石は財団X製、パワーも並以上だな!!」

 

 奴に殴られつつも、地面を蹴りつけた反動で膝を奴に突き刺す。効いている、装甲はそこまでじゃないな。

 

「グゥッ……!! 舐めるなよ!!」

 

「ファイア!!」

 

『Burst Mode』

 

 白い光弾を放ったが、その全てが敵のスピードについていけず、地面に炸裂して消えた。速度と分胴付きの鎖、あと針。それがこいつの武器らしい……

 

「チッ、お前はなんでここに来た……!! 危険因子を殺すためか!?」

 

「そんなの興味ねぇ、貴様を殺しに来たんだよ!! ついでにお前のお仲間もな!!」

 

「だったら、殺されてやるわけには……ガッ!?」

 

 分胴が鳩尾に突き刺さり、仮面の中で血反吐を吐いた。怯んだところを逃さずに、鎖で首を絞められる。

 

「窒息死しやがれ、クソ野郎が!!」

 

「放せ……グ、ギッ……」

 

「とっとと死にやがれぇぇ!! ウォォォォォッ!!!」

 

 こいつの恨みの原因はわからないが……とりあえず、鎖をなんとかしないとな。そう思って、俺は……脱力する振りをして、まだ弾が残っているデルタムーバーを向けた。

 

「グ、ォ……」

 

「そろそろ落ちるな……!! そのまま窒息しやがれ、雪村康太!! 苦しんで死にな!!」

 

「俺より、自分の心配、しやがれ……ヘッ……」

 

 そう言って、銃弾をぶち込むと……奴は怯んで、大きく仰け反った。

 

「ガハッ!? なっ、なにぃぃ……!?」

 

「隙あり……決めるなら今しかない!!」

 

『Ready』

 

 ドライバーからメモリを引き抜き、デルタムーバーに装填する。しっかり握って、狙いを定めた。

 

「こいつで焼け死ね!! チェック!!」

 

『Exceed Charge』

 

「死んで、たまるか……俺はお前を殺さなきゃ、死んでも、死にきれ……」

 

 奴が言い終わる前に、紫色の光が奴に向かって飛んでいき……奴を拘束した。

 

「グェッ!?」

 

「だぁぁりゃあぁぁぁーッ!!!」

 

「ギャアァァーッ!!!」

 

 奴にΔの文字が浮かび、奴の体が灰になってゆく……それから、奴は爆発を起こした。

 

「……終わったか? 変身者の死体は……残ってねぇな」

 

 ミラーモンスターやカードデッキのライダーに近いか。何はともあれ、みんなが気づいてしまう前に片付けられてよかった……

 

「雪村さん、大丈夫ですか!?」

 

「あ、一破さん。えぇ、もう終わりました……分胴付きチェーンを持った、針を手から撃てるすばしっこい化け物でしたが……殺したら灰になるんじゃなくて、爆裂したので……ミラーモンスターや、カードを使うライダーに近いと思います」

 

「……なるほど。殺したら爆裂するのか……こういうタイプは珍しいですね」

 

 確かに、オルフェノクやカイザ……あとライオトルーパーとか……全員殺したら灰になっていたからな。

 

「とりあえず、学園長に報告しないとですね。みんなは大丈夫そうですか?」

 

「えぇ、先生方が上手く言ってくれたようで……知らない方がいいこともある、ってことですかね」

 

「私はそう思ってますよ。とりあえず、行かないとな。学園をお願いします」

 

 一破さんにそう言って、俺は学園長室へと向かい……今回のことを説明した。

 

「ふむ……危険な相手だね。分銅を振り回し、遠距離攻撃手段を持つ素早い相手……デルタしか相手はできなさそうだ」

 

「確実にルシファーズハンマーを命中させました。爆裂するところも確認しましたし……死亡したと見ていいと思います」

 

「確かに、爆発したなら死んだと見ていいか……明日の文化祭は予定通り行おう。君には引き続き警備をお願いしたい……」

 

 無論そのつもりだ。悪いものにはさせないさ……絶対にな。

 

「任せてください。奴の仲間が来ても、財団Xが来ても文化祭の邪魔なんかさせませんから」

 

「頼もしくて助かるよ……『何があってもデルタがいてくれる』、この事実はみんなを少なからず安心させている。だから、こんな行事もできるんだ」

 

「そういう日常的なことをできるようにするのが、私や一破さんの役目ですから。気にしないでくださいよ……私がこれからもデルタとして、奴らと戦います。まさかあやめを変身させるわけにもいきませんし……」

 

 そうだ、直接戦えるのは俺だけ。奴らがいつ来ても、みんなが日常を失わないように……俺は戦う。

 

「だよね……君ならそう言うと思った。明日は賑やかな日になるし、行事にも協力してもらわないといけない。月並みな言葉で申し訳ないが……頑張ってくれ」

 

「はい、頑張らせていただきます!! では、仕事に戻りますね!!」

 

「……あの明るさを保てるのも、彼の強さか」

 

 学園長室を出て、もう一度デルタフォンを構える。

 

「変身」

 

『Standing by』

 

『Complete』

 

 体が光に包まれて、デルタに変身する。さぁ、お仕事再開といこうか。

 

「いつでも来い、俺が相手だ!!」

 

 俺はまた、学園内を走り抜ける。学園の治安や平和を守り抜くために。そして……放課後のこと。

 

「……康太様! お疲れ様!!」

 

「あやめ! あれから……いじめとかに遭ってないか? もしそうなら……」

 

「大丈夫だ余、康太様と人間様が抑止力になってるみたい! 明日は色んな出し物やるから……よかったら、来てくれない?」

 

 行ってあげたいのは山々だが……如何せん、こちらもやらなければならないことがあるんだ。

 

「ごめん。それは……できないんだ。みんなを守らないといけないから……もし、財団Xの奴らに襲われたら全部台無しにされちゃうだろ? だから……それをさせたくないんだ」

 

「そっか……じゃあ、しょうがないね。みんなを精一杯楽しませるためにみんなで色々考えたから……見ててね!!」

 

「あぁ、応援してる!! 俺も、『仮面ライダーデルタ』もな!!」

 

 あやめが少し疑問そうな顔をしている……何故だ?

 

「え? デルタと康太様は同一でしょ?」

 

「いや……違う。俺はデルタじゃないんだ、正確には、『大衆が求めてるヒーロー』は『仮面ライダーデルタ』であって、雪村康太じゃない。だから……みんなを財団X側の思考に傾かせないためにも、俺は戦いが終わるまで『デルタ』でいなきゃならないんだ」

 

「……そうなんだね……」

 

 一度仮面ライダーになってしまえば、確実にそうなる。だから……あやめをオーガにするわけにはいかないんだ。『大衆の仮面ライダーオーガ』にされて、圧力に潰されるなんて……絶対にあっちゃならない。

 

「俺は大丈夫だけど、圧力もかかるし……すごく疲れる。だからあやめは、オーガになろうなんて考えるな。俺が……デルタでいればいいだけの話だ。よし、暗い話はやめにしよう! 明日は文化祭、パーッと楽しんでこい!! な!!」

 

「……うん! ありがとう、康太様! また明日ね!!」

 

「おう、明日が楽しみで寝れなかったとかならないようにな~?」

 

 そうだ……俺は、みんなが望むなら生きる。生きて……その後、何をするかはわからないけど。命を捨てるような行為はできない……あやめに怒られちゃうからな。

 

「何はともあれ……明日はいい日になるといいな」

 

「そうですね、みんなが楽しく過ごせる……いい日になるといい……」

 

「一破さん……あなたも同じ気持ちですか?」

 

 微笑を浮かべつつ、一破さんが言う。

 

「もちろん。社会の敵と戦うのも、そのために命を賭けるのも……そのためですからね。あなただって、そうでしょう?」

 

「はい。それ以外ありませんよ……まぁ、もう命は捨てられませんけどね」

 

「あなたはやり過ぎですよ。何事も過ぎれば毒……雪村さんを大切に思う人がいるなら、命を捨てちゃいけません。それこそ……平和のために、必要のない犠牲が出てしまう」

 

 そうだな……あやめが止めてくれて、よかった。

 

「止めてくれたあやめには感謝だな……戦いが終わったらお礼しないと……」

 

「そのためにも、あなたは死んじゃいけない……」

 

「あなたもね、一破さん」

 

 二人で約束した。二人で生き残ってみせる、奴らなんかに殺されてやるものか。

 

「では……私は戻りますね」

 

「私も、ご飯を食べるので」

 

「また明日、頑張りましょう」

 

 そう言って別れて……俺は早めに食事を摂るため、食堂へと向かうのだった。

 

 

 

 ……その日の夜、ゾディアーツスイッチを与えられた男は……誰もいない道を、フラフラと歩いていた。

 

「くっそぉぉ……何が仕返しできる、だよ!! 全然勝てないじゃねぇか!!」

 

「それはお前が弱いからだろ? 俺のせいにしてんじゃねぇよ」

 

「……雪村康太ァァ!!」

 

 男はハウンド・ゾディアーツとなり、雪村康太に殴りかかったが……拳は難なく受け止められた。その瞬間、雪村康太の姿が変わり……リブラ・ゾディアーツとなった。

 

「短気だな、お前は……そういうタイプの男は嫌いなんだ」

 

「て、天秤野郎……!!」

 

「これが私の能力だ。姿を見ただけでこの激昂……もうすぐだな」

 

 リブラが呟いた内容に苛立ち、もう一度殴りかかったが……易々と受け止められた。

 

「なに!?」

 

「不意打ちか……私には無意味だぞ」

 

「ぐふっ!!」

 

 リブラの杖で腹を突かれて、男が倒れ込む。リブラは男に見下しながら、命令した。

 

「私は戦いに来たのではない。元に戻りなさい……今のお前では勝てん」

 

「畜生……何の用だ!?」

 

「何も悪いニュースじゃない、寧ろよいニュースさ……君はもうすぐ、『ラストワン』に達する。その時こそ、君の運命が決まる時だ」

 

 その男に、リブラは淡々と言う。

 

「『ラストワン』……?」

 

「力はさらに高まり……成功すれば、さらに進化することができる。君の運命が良いものであることを祈っているぞ」

 

「ま、待て!! その、進化をすれば……勝てるのか!? 雪村康太には!!」

 

 男がリブラに尋ねると……リブラはまたもや、淡々と言った。

 

「どうだろうな。お前の実力次第だが……勝てる確率は高いだろう」

 

「そ、そうか……!! やってやるぞ!! 明日がお前の最期だ、雪村康太!!」

 

「意気込みだけではなれんのだが……まぁ、いいか」

 

 リブラは呆れたように言って、その場から消えた。

 

 

 

「……文化祭当日だな。みんな準備で忙しそうにしてるよ」

 

「だけど、楽しそうにしてますね」

 

「なら……邪魔をさせるわけにはいかない」

 

 二人で言いながら、体育館へと向かう。開会式があるのだ……俺は、デルタとして登場しなければならない。

 

「……来てくれたね、雪村くん。このマイクをつけておいてくれ」

 

「わかりました……そろそろ始まるかな?」

 

「あぁ……みんなで出し物をやるから、その火付け役になってもらう」

 

 最初の役と、一大アトラクション。これが俺の役目。やってみせるさ……始まるな。Aさんがみんなに向かって呼びかけている。

 

「……皆さん、ホロライブ学園文化祭にお集まりいただき、誠にありがとうございます! 今日を楽しい時間にするために……彼も協力してくれますよ!!」

 

「よし……やるか」

 

「さぁ、仮面ライダーデルタの登場です! 拍手でお迎えください!!」

 

 デルタフォンを構えた。そして……マイクをオンにする。

 

「変身!!」

 

『Standing by』

 

『Complete』

 

 変身して、みんなに見えるところまで走り……ポーズをとった。

 

「仮面ライダーデルタ、ただいま参上!!」

 

「仮面ライダーデルタが今日の文化祭を盛り上げてくれます! デルタさん、なにか一言!」

 

「そうですね……今日はみんな、来てくれてありがとう。財団Xのせいで溜まった鬱屈、ここで全部帳消しにしていって欲しいな!!」

 

 みんなから歓声が上がる……効果絶大だ。

 

「さぁ、皆さんよく聞いてくださいね!! 今日は、デルタも協力のアトラクション! ライダー鬼ごっこを開催しますよ!!」

 

「ライダー鬼ごっこ?」

 

「ルールは簡単、デルタはこの学園中を駆け回るので、それを文化祭が終わるまでに捕まえられたら……なんと、先着一名様に! 文化祭の全施設、無料券がもらえちゃいます!! やるしかないですよね!!」

 

 警備しながらできる上に、みんなも楽しめる……一石二鳥のアトラクションだ。

 

「武器の類は使用禁止ですので、正々堂々追いかけてくださいね!! デルタを最初に捕まえるのは……一体、誰なのか!? ご期待ください!!」

 

「絶対捕まえてやる!!」

 

「デルタと握手するんだ!!」

 

 みんな楽しみにしてくれてる……それなら、頑張らない理由はゼロだ。

 

「捕まってなんかやらないぞ? 仮面ライダーと勝負だ!!」

 

「上等だー!!」

 

「ありがとうございます、みんな楽しそうですね……」

 

 Aさんがお礼を言ってきた……当然のことだ。

 

「えぇ、何よりですね……よし、みんな!! 今から始めるぞ!? よーい……ドン!!」

 

「皆さん! 出し物を巡りながら、見つけたら追いかけてくださいね~!!」

 

「待てー、デルタ~!!」

 

 早速、追いかけてきてる人達がいるな。でも……!!

 

「残念でした!!」

 

「二階まで跳んだぁ!?」

 

「言ったろ、一筋縄じゃいかないって!!」

 

 辺りを見回しつつ、とにかく逃げる。仮面ライダーは戦うだけが仕事じゃないな……そう思っていると。

 

「見つけた余、康太様!!」

 

「うぉ、あやめ!?」

 

「今日は約束通り、戦ってもらう余!! 待て~!!」

 

 こういう戦いもアリか。そう思いつつ……逃げる。

 

「追いつけるかな!?」

 

「もちろん!!」

 

「流石だな……!!」

 

 そう思って、階段を飛び降りると……生徒達が待ち構えていた。

 

「かかれ~!!」

 

「よいしょっと!!」

 

「壁を蹴っただと!?」

 

 囲まれた中から抜け出すために、壁を蹴りつけて逃亡する。トレーニングにもなるし、これはいいな……そう思っていると。

 

「随分楽しそうだな……雪村康太!!」

 

「ん? お前……誰だっけ?」

 

「忘れたとは言わせねぇぞ!! あの時、お前が退学にしやがった奴の片割れだ!!」

 

 あ、思い出した。

 

「そうか……で、なんでここにいるんだよ」

 

「お前を殺しに来たんだ……!!」

 

「逆恨みが過ぎるだろ。何言ってんだ……?」

 

 そう言ったが……奴はさらに苛立っているのか、どんどん顔を真っ赤にしている。茹でダコみたいだ。

 

「舐めてんじゃねぇぞォォ!!」

 

「……なんだ、それ?」

 

「スイッチだよ!! これでお前を殺せる、殺してやるぞ!!」

 

 強くスイッチが握られると……変なスイッチから、音声が鳴った。

 

『Last One』

 

「……見た目が変わった?」

 

「ラストワン……そうか、これが!!」

 

 スイッチが血走った眼球のような見た目になり、ボタンの位置も変化している。

 

「な、なんだよアイツ……?」

 

「大丈夫だ、下がってな!」

 

「余裕ぶってられるのも、今のうちだ!! 覚悟しやがれ!!」

 

 奴がスイッチを押すと……奴の体が闇に包まれて、星座のようなものが浮かび上がり……奴が蚕の繭のようなものに体を拘束され、倒れた。

 

「な……なんだ!?」

 

「グルルルルッ……殺す、ぶち殺す……!!」

 

「お前は……!? バカな、あの時確かにルシファーズハンマーを……!!」

 

 あの時の分銅を持った怪物……まさか、生きていたなんて。ただ倒しただけでは死なないのか? ライダーとも、モンスターとも違う……厄介な相手だ。

 

「死ねぇぇぇっ!!」

 

「お、おい! ヤバいんじゃねぇのか!?」

 

「逃げた方が……」

 

 まずい、みんなが怖がっている。こいつの狙いは俺だ……それなら……!

 

「みんな! 文化祭を止めるな!! こいつは俺が食い止める!!」

 

「なにィ!?」

 

「日常をぶち壊すのがこいつの目的、それに従ってやる道理なんてない!! みんな、俺と一緒にこいつと戦おう!! こいつの思い通りになんか……させるな!!」

 

 今日だけの特別イベント、ここで辞めるわけにはいかない。

 

「でも……!」

 

「大丈夫さ、俺はデルタだぞ!! みんなは楽しく遊んでくるといい!! さぁ……相手は俺だぜ、スイッチ男!!」

 

「バカにすんじゃねぇっ!!」

 

 そう叫んで、向かってきたが……それを躱しつつ、みんなを逃がす。

 

「あやめ、戦いはまた今度だ! 今日は他のことを楽しんでくるといい!!」

 

「……約束だ余、死なないでね!!」

 

「死ね!! ……なに!?」

 

 鎖を掴んで、引き寄せる。

 

「死なないでねって言われた矢先に、攻撃喰らえるかよ!!」

 

「がはっ!!」

 

「……雪村さん!? そいつは……倒したんじゃ!?」

 

 一破さんも来たな……だけど。

 

「こいつは、ただ倒しただけじゃダメみたいなんです! 怪物はどうにかしますから、一破さんはみんなを守ってください!! 文化祭を続けるために!!」

 

「……わかりました!!」

 

「さっきから……よそ見ばっかしやがってぇ!!」

 

 攻撃を受け止めて、挑発する。

 

「悔しいなら、もっと俺に集中するんだな! かかってこいよ!!」

 

「上等だァ!!」

 

「こっちに来い!!」

 

 みんなに攻撃が当たらないように、誘導する。ここで邪魔させたら、また鬱屈が溜まることになってしまう。そうさせない為に、俺は奴を挑発しながら誘導した。




ラストワンの性質に気づけるか、雪村くん。
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