※この作品はR-18です。

仮面を被った、人間達の英雄譚   作:とも667

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 ゾディアーツVSデルタ。ご覧あれ。


猟・犬・憤・怒

……だいぶ文化祭会場から離すことができたぞ……これで存分に戦えるな。奴は相変わらず、俺に憎悪を向けているが……そっちの方がありがたい。

 

「力が湧き上がってくる……これならお前を殺せるぞ!! 雪村康太!!」

 

「どうだかな。やれると思うなら……やってみたらどうだ?」

 

「調子に乗るなよ!!」

 

 奴は憤怒に身を任せ、分銅付きチェーンを振り回して俺にぶつけようとしてくる。だが……

 

「何度も当たってやる程、俺も素人じゃないんでね!! ファイア!!」

 

『Burst Mode』

 

「バトルロワイヤルでTOP10に入ったこともあるんだ、そっちこそ舐めてんじゃねぇぞ!?」

 

 ……元学園生だけあって、一筋縄ではいかないようだ。白い光の弾が奴に当たることはなく、地面に炸裂して消えてしまった。だが……もう二の矢は放ってある。こちらに飛んできていたチェーンを、体を捻って躱し……踏みつけた。大事な武器を失うわけにはいかないらしく、必死に引っ張っている。

 

「なっ……放せ!!」

 

「断る!! 自分の攻撃で墓穴を掘ったようだな、『元』TOP10さん!!」

 

「武器がそれだけだとでも!?」

 

 無論わかっていた。奴はもう片方の手から針を放ち、俺を串刺しにしようとしてくるが……俺がそれを避けることで、奴のチェーンが自由になった……お前がチェーンを握り直す、その一瞬が命取りだ。

 

「……デルタのスピードを見誤ったな?」

 

「ッ、速い!?」

 

「スマッシュビート!!」

 

 速いのはそっちだけじゃないんだよ。こっちだって、速さは時速60km超。一般道を走る車並みなんだ。

 

「ぐぎっ、ごぶ、げぇっ……!!」

 

「だぁりゃあぁっ!!」

 

「ごふぅっ!!」

 

 四発入った。普通の人間なら、これでKO……だけど、相手は財団X関係の奴だ。

 

「……やっぱり、立つよな」

 

「ちぃぃっ……!! 舐めてんじゃねぇぞォ……!!」

 

「舐めちゃいない、殴ってるだけだ」

 

 こっちに意識を集中させるため、奴をさらに怒らせた。狙い通り、奴は憤怒の雄叫びを上げている。

 

「ふざけんじゃねぇぇぇっ!! ウォォォォォン!!」

 

「そんな犬みたいな……犬? そうか、こいつ犬怪人か!!」

 

「死ねぇっ!!」

 

 犬型だとわかったが、それで何か変わったわけでもない。奴の針を避けながら、銃弾を撃ち込む。

 

「死んでやるかよ、俺はお前と違って……破滅したくないんだ!!」

 

「俺が破滅を望んでるだぁ!? 何を根拠に!!」

 

「望んでんだろ!! もう解決した問題に首を突っ込んで、人を私刑にかけるんだから!! それが破滅への道でなくてなんだ!? それとも……それすらも理解できん程アホなのか? どちらにせよ……お前はここにいていい存在じゃない!! 出ていけッ!!」

 

 漸く命中した、奴が怯んだ隙に弾を装填する。

 

「ぐぎゃぁっ!!」

 

「チャージ!!」

 

『Charge』

 

 弾をまた撃ち込もうとしたが……奴はそこで、衝撃の行動に出た。

 

「……そうだ!! 喰らえ!!」

 

「なっ……ぐぁぁぁ!!」

 

「やっぱりな。こっちに撃たれるのは嫌なんだろ!!」

 

 学園に向かって、奴は針を放ったのだ。大分離れているとはいえ、針の射程がわからない以上……当たったら何もかも台無し。文化祭は成功させねばならないんだ。そのためにも、攻撃させるわけにはいかない。

 

「考えたなぁ、お前にしては……!!」

 

「何だとォ!? ほら、もう一回だ!!」

 

「ごっ……」

 

 内蔵が針に突き破られて、仮面の中が赤く染まった。針を撃たれる時に弾も撃ってはいるが……全て避けられている。

 

「万事休すだろ!! ハッハッハ、お前も死ぬ時は死ぬんだな!! そういうことだから……諦めて死ね!!」

 

「そうは、いくかよ……あやめと約束した以上、約束は破れない!! 破っちまったら、針千本飲まないといけないからなぁ!!」

 

「俺が代わりに針千本飲ませてやるよ!! こいつで……千本目だ!!」

 

 奴が俺に向かって、針を放とうとする。学園は狙ってない、次で仕留められると思っているから……この体勢から避けるのは無理。確かに、全て合っているな。でも奴にないものがある……それは。

 

「情報不足だったなぁ、犬野郎!!」

 

「なに!?」

 

「だぁりゃあぁぁっ!!!」

 

 針を撃ってきた犬野郎に、フォトンブラッドを込めたタックルで突っ込む。ショルダーアーマーの分厚い装甲は、貫通を許さず……フォトンブラッドと走るスピードが合わさり、針を弾きながら奴に向かっていく。それは見事、奴に炸裂した。

 

「ぐふぅっ!!」

 

「この技は知らなかったらしいな……下調べはちゃんとしとけよ!!」

 

「そ、そんな技ありかよ……」

 

 これで決めてやる。奴が倒れている間に、銃にメモリを装填した。

 

『Ready』

 

「チェック!!」

 

『Exceed Charge』

 

 白い光がデルタムーバーに向かって走ってゆく。今度こそ、こいつをお見舞いしてやる。

 

「くっそぉぉ……邪魔すんじゃねぇぇーっ!!!」

 

「邪魔するのが俺の仕事だ!!」

 

「グギッ!?」

 

 ポインターを撃ち込んだ。こいつで……トドメだ。

 

「喰らえ、ルシファーズ……!!」

 

「雪村さん!! そいつを倒しちゃダメだ!!」

 

「えっ!?」

 

 キックするための助走をつけていたので、勢いを殺しきれずに尻餅をついた。

 

「な、なんだ……?」

 

「一破さん、どうして!?」

 

「研究者の博衣さんから連絡です……『その怪物が何なのかは不明だが、高エネルギー反応がある。倒してしまうと、大爆発で学園にまで被害が及ぶ』と……!!」

 

 そんな……嘘だろ? それじゃあ……

 

「こいつは、倒せないのか……!?」

 

「へへへ、いいこと聞いたぜぇ……!!」

 

「な……ぐっ!!」

 

 分銅を叩きつけられた。何度も、体中を殴られている。腕も足も折られてる……殴り返そうとしたが、奴は避けようともせずに言った。

 

「おぉ~っと、いいのかァ? あとちょっと攻撃されたら、俺は爆発するぜ?」

 

「くっ……ガハァ!!」

 

「雪村さん!! くそっ、卑怯者めぇ……!!」

 

 一破さんもサイガフォンを構えてはいるが、撃てないようだ。それもそのはず……こいつは手元にいなくとも、学園を人質に取れるのだから。

 

「何とでも言いやがれ!! 俺は勝つ、勝って……今度こそ、正義の鉄槌を下してやるさ!!」

 

「何かないのか……奴への対抗策は!? 被害の及ばない場所に連れていく? だけど、そんな暇は……」

 

「……一破さん、今いいこと言った!!」

 

 殴られながらも一破さんに感謝する。勝利の鍵は……それだ。

 

「何言ってんだよ!! とっとと死ね、仮面ライダー!!」

 

「やっぱり、死ぬのはお前らしいぞ!!」

 

「……なに!? 止めただと!?」

 

 鎖を掴んで、奴の動きを止めた。無論、奴は針を放つ準備をするが……メモリを抜いて、腕に銃を押し当てる。

 

「喰らえ!!」

 

「ぐぉぉあぁぁっ!?」

 

「腕なら爆発しなかったようだな……! そりゃあそうだ、急所じゃないんだから!!」

 

 鎖を奪った、これでアイツは片手落ち……一破さんは困惑しているな、倒し方がわからないらしい。当然だ、俺も今思いついたところだからな。一破さんのおかげで……!

 

「雪村さん、どうするんですか!?」

 

「決まってますよ、一破さんの言った通りにするんです!!」

 

「なっ……連れていかれてくれるとでも!? ここは住宅街、こいつは大人しくパトカーに乗ってはくれませんよ!!」

 

 分かっているさ……だからこそ。

 

「そのための策ですよ!! スリーエイト、ツーワン!!」

 

『Jet Sliger, Come Closer.』

 

「ジェットスライガーって……まさか、あの時の乗り物!? 確かに回収はしたが、あれも音声認識で呼び出せるのか!?」

 

 すぐに風を切る音がし始める……来たな!

 

「なっ、デカいバイクだと……!?」

 

「ただのバイクじゃないぜ、空飛ぶバイクさ!!」

 

「この野郎……!!」

 

 奴は針をぶち込もうとしてきたが、奴から奪った分銅付きチェーンを投げて止める。奴はフリスビーを投げられた犬の如く、それを取りに行った……自分で自分の武器を破壊しちゃ意味無いもんな。

 

「うぉっ、危ない危ない……」

 

「車道に立ったら……もっと危ないぞ!!」

 

「ぐげっ!!」

 

 風を切る音とジェット噴射の轟音を聞きつつ、上空に飛んでゆく……奴をジェットスライガーの突進で巻き込みながら。

 

「グァァァァーッ!!」

 

「……まだ、もっと高くだ……!!」

 

「グゥオォォォッ……!!」

 

 雲を突き抜けて、さらに上へ。行けるところまで来たな。あとは……トドメを刺すだけ!!

 

『Ready』

 

「今度こそ喰らってもらうぞ!! チェック!!」

 

『Exceed Charge』

 

 そこでブレーキをかけて、奴を吹っ飛ばした。隙だらけのあいつに、ポインターを撃ち込む。

 

「ッ、ぐァ……」

 

「そこだ!!」

 

「ギッ……」

 

 ジェットスライガーから飛び出し……展開されたドリルに突っ込む。今度こそ……こいつで終わりだ!!

 

「だぁぁりゃあぁぁーッ!!!」

 

「グギャアァァァァッ!!!」

 

「……灰になりやがれ、犬野郎」

 

 ぶち抜いた犬野郎に文字が浮かび……少し灰になった後、そのまま大爆発した。大爆発で、俺も吹っ飛ぶ。

 

「ぐっ……スリーエイトツーワン!!」

 

『Jet Sliger, Come Closer.』

 

「よし!! これで……!!」

 

 一気に下降して、学園の方に戻る。そうしていると、ひとつ小さなものが目に入った。

 

「……あいつが持ってたスイッチ? 回収しないと……!」

 

 手を伸ばして、取っておく……もう地上は近いな。

 

「あ、戻ってきた……! 雪村さん!! 大丈夫でしたか!?」

 

「成功ですよ、奴の爆発は学園を巻き込むことにはならなかった……」

 

「全く、どこまでも予想外な考えをする人だ……!!」

 

 それくらい奇想天外じゃないと、あいつを倒すことはできなかっただろう。それだけ厄介な相手だった。

 

「……あと、これはあいつが落としたものです」

 

「これは……スイッチ? 眼球のような見た目で不気味だな……」

 

「あの男はこれで変身してました。だから、分類はライダー型ですね」

 

 スイッチが入ったままになっている……どうしよう。

 

「そうですね……とりあえず、スイッチを切りますか?」

 

「……気絶したあいつはどうなってます?」

 

「気絶したままですが……どうかしましたか?」

 

 こいつを切ることで、奴に影響が出るかもしれない。なんたって変身アイテムだ……

 

「これを切ったら、あいつに何か起こるかもしれない。奴を拘束してからにしましょう」

 

「なるほど……分かりました。手錠をかけて、連れてきます」

 

「すみません、お願いしますね」

 

 大分怪我してるし、あやめやみんなを不安にさせてしまうかもしれない。文化祭を中止にしないためにも……出ていかないのが適切だろう。

 

「雪村さん、お待たせしました」

 

「……それじゃあ、切ってみます」

 

「はい……」

 

 スイッチをもう一度押すと……スイッチから異音がした後、ブラックホールのような物に包まれ……消えてしまった。

 

「き、消えた……どういう仕組みなんだ?」

 

「ッぎ、いてて……なっ!? 俺はいつの間にこんな……」

 

「起きたか、スイッチを切ると意識が戻るようだな……」

 

 こいつのことは一破さんに任せよう、俺は治療を受けねばならない。

 

「私は治療を受けてきます、そいつはお願いしますね」

 

「わかりました。来い、殺人未遂の現行犯で逮捕する」

 

「け、警察……!? やめろ!! いや、許してください!! お願いしますぅぅ!!」

 

 連行されてるな……あとは取り調べでなにがわかるかだが。そう思いながら、変身を解除して病院に走っていると……

 

「……ん?」

 

 後ろから視線を感じたような気がして、振り向いてみたが……誰もいない。気のせいか。

 

「感覚が過敏になりすぎてるのかな……?」

 

 成長の代償をボヤきながら、俺は病院へ足を進めた。

 

 

 

「……ハウンドはハズレだったか。次を探さねばな」

 

 

 

 病院に向かった俺は、結論から言って入院させられた。まぁ、当たり前だろう。内臓損傷してるんだからな……

 

「ねぇ先生、退院まだですか?」

 

「気が早すぎます、手術してまだ一日ですよ? はぁ、もう慣れてきたけど……」

 

「慣れてきてくれて大変助かります!」

 

 俺がそう言うと、溜息を吐かれてしまった。

 

「患者の方が大怪我に慣れちゃってる現状がおかしいんだけどな……」

 

「おかしいのは財団Xですよ」

 

「それはそうですけど……とりあえず、安静にしていてくださいね。あなたのことだし、無視するかもしれないけど」

 

 そんな度々無視はしないさ。

 

「とんでもない! 余程のことがない限りしません!!」

 

「余程のことが度々起こるから困るんです……では、また来ます」

 

「いつもありがとうございまーす……超巨大犬の後に、犬怪人を相手にするとは……何の因果だ? 俺が犬派だからって……超大型も怪人もお断りだ」

 

 財団Xにクレームをつけても、奴らは付け上がるだけだろうけど、それでも言わずにいられない。そんな時、ドアがノックされた。

 

「どうぞ?」

 

「失礼します」

 

「あ、一破さん! こんにちは!」

 

 俺に話をしに来たということは、収穫があったのだろうか。少し楽しみな自分がいる……一破さん有能だからな。

 

「こんにちは、元気そうで何よりです。怪人の正体がわかりましたので……連絡をさせてもらいに来ました」

 

「やっぱり! それで、あいつの名前は?」

 

「……男の証言によれば、自分が変身したのは『ハウンド・ゾディアーツ』だそうです」

 

 ゾディアーツ、聞いた事のない名前だ。

 

「やっぱり、新型ですか……」

 

「なんでも『天秤』を名乗る怪人から、スイッチを譲り渡されたらしいですよ。そいつもスイッチを使っていたらしいので……その『ゾディアーツ』で間違いないかと」

 

「倒しても、スイッチを切らないと復活する……厄介すぎますね」

 

 仮面ライダー関係の敵はただでさえ強い……それが、スイッチを切らなければ無限復活だと? ズルすぎる。

 

「えぇ……男は『ラストワン』で進化できるはずだったらしいですが……どうやら、失敗したようですね」

 

「不幸中の幸いか……とはいえ、ゾディアーツはこれまでの敵よりも、一層厄介ですね」

 

「復活もそうですが、倒すためにいちいち超上空でやらないといけないのも厄介だし……財団Xもようやく本腰を入れ始めたか」

 

 あれでまだ、本腰を入れてなかったのか。そう考えると、ゾッとした……

 

「奴らの技術は底なしか……!?」

 

「本当にそうかもしれませんね……余りに厄介すぎる」

 

「……そういえば、文化祭は?」

 

 成功しただろうか? そこが気になって仕方ない。

 

「それなら大成功でしたよ、みんな楽しそうにしていました。雪村さんが大怪我したことにも気づいてなかったみたいです」

 

「はぁ……よかった……これで失敗だったら、やった意味ないし」

 

「それはいいんですが、ただ……」

 

 なんだ? 何かあったのだろうか?

 

「まさか、ゾディアーツ……!?」

 

「違います。デルタギアを腰に巻き付けないでください……」

 

「あ、すいません……それで、何があったんですか?」

 

 デルタフォンをもう構えていたのだが……止められた。

 

「百鬼さんがね、あの後……雪村さんを捕まえたかったって言ってました。不完全燃焼だったんでしょうね」

 

「そうですか……悪いことしちゃったかなぁ」

 

「私は悪い判断だとは思いません。文化祭を続けさせるために戦うのも、立派な仕事の一環ですよ」

 

 そう言ってもらえると、ありがたいな。

 

「一破さんにそう言ってもらえると、特別嬉しいですね」

 

「どうしてです? 私はそんなに偉い人じゃありませんよ?」

 

「暴力機関としても、みんなを守ってきた実績も一破さんの方が多いので……私は一破さんのこと、すごく尊敬してるんです!」

 

 俺がそう言うと、一破さんは……目を伏せてしまった。照れているのかな?

 

「……私はそんなにいい警官じゃ、ありませんよ」

 

「え? 一破さん……?」

 

「あっ……いや、すごく嬉しいですよ。ありがとうございます! これからも一緒に頑張りましょう!!」

 

 なんか変だが……深入りしない方が良さそうだな。

 

「はい、もちろん!!」

 

「では……失礼します。ゾディアーツについて調べないといけないので」

 

「そっちはお願いしますね!」

 

 一破さんは微笑んで、病室を去っていった。さて……勉強でもするか。全然できてないもんな。

 

「……あー、全然わからねぇ。やっぱり、戦いをするとこっちは疎かになるよな」

 

「康太様、失礼しまーす……」

 

「あやめ! お見舞いに来てくれたのか? ありがとう! 俺はこの通り、元気だぜ!!」

 

 噂をすればなんとやら、あやめが来た。

 

「康太様、また戦ってたけど……ちゃんと自分も死なないように戦った? 約束破ったら、針千本だ余?」

 

「あぁ、気をつけたよ。おかげで傷は少ない……文化祭どうだった? 楽しかったか?」

 

「……うん! 康太様が頑張ってくれたから、何事もなく楽しめた余!!」

 

 そう言って笑ってくれたが……嘘だな。一緒に修行して、表情見てきたからわかる。

 

「ごめんな……追いかけっこ、中断にしちまって」

 

「ううん……しょうがない余。みんな楽しそうだったし、余は全然大丈夫!!」

 

「また今度、いつになるかわからんが……今度は、生身同士でやろう。正々堂々とな……約束だ」

 

 そのためにも、生き残らなければ。奴らに殺されてやるわけにはいかない……

 

「……うん! そうだ、これ……お菓子!! 作ってきたの!!」

 

「え、作ってくれたの!? 心遣いに涙出ちゃう……」

 

「だから、ほら! 口開けて!!」

 

 いや、そんなことしなくても……腕は折れてても動かせるしな。

 

「いや、自分で食べられるよ。心遣いは嬉しいが……」

 

「腕折られてるんでしょ? 酷使して、入院が長引いたらどうするの?」

 

「うぐっ……それは……」

 

 痛いところを突かれて、何も言えなくなる。早く退院しないといけないのも、絶対的な事実だ。

 

「わかったね? はい、あーんして!!」

 

「わかりましたよ……」

 

「どう? 美味しい?」

 

 口の中にクッキーが放り込まれた……うん、優しい味だな。俺のために作ってくれたと思うと、余計美味い。

 

「うん、超美味い……」

 

「あ、腕動かさないの! ほら、もう一個!」

 

「すいませーん」

 

 クッキーを口の中に放り込んでもらいつつ、スマホで勉強しておく……

 

「戦いが一段落したら、ノート写させてあげるね!!」

 

「色々ありがとう、あやめ……優しさが身に染みる~」

 

「こちらこそ……いつも休みなく警備してくれて、すごく助かってる余」

 

 そうだ、文化祭は成功で終わった。俺と一破さんが、休みなく警備をしているのは無駄じゃないってこと……

 

「そう言ってもらえると、やる気が出てくるな! これからもみんなの夢は……デルタが守る!!」

 

「……ごめんね、何にもできなくて……」

 

「え? お見舞い来てくれるだけで、もう十分嬉しいんだけど……オーガのことを言ってるのか?」

 

 あやめはゆっくり頷いた。やっぱり気にしてるのか? そんな必要ないのに……

 

「余が変身したら、楽になるかもしれないのに……どうしてもダメで……」

 

「……これはデルタとしてじゃなく、雪村康太としての言葉だが……あやめにはライダーになって欲しくない。絶対にな」

 

「え……?」

 

 楽になるかもしれないのに、そのチャンスをみすみす捨てるのがわからないって顔かな? 簡単なことだ。

 

「『期待』っていうのは、凄まじく重たい重りだ。デルタなら何とかしてくれる……みんなが、そう思ってる。当然だよな、財団Xに出会ったらまず殺される……だから一度の負けも許されないし、その瞬間期待は憎悪に変わる。ネットリンチにも遭うだろう、現実での立場を失うことにもなるだろうな……『仮面ライダー』っていう、凄まじい力を持った強化戦士だから、尚更だ」

 

「そんなの勝手だ余!! 期待を大量に載せといて、一度でも失敗したら、全員で殺しにかかるなんて……!!」

 

「そうかもな。でも……人間は安心がないと生きていけないんだ。仮面ライダーっていう、『希望』を失った世間が逃げ込むのは……間違いなく、『絶望』だよ。希望が持てないから、絶望して安心しようとする。だから、財団Xを信仰する向きが一時期出てたんだ……俺のせいでな」

 

 あのまま信仰されていたら……この世界は確実に財団Xのものになっていた。そんな世界がディストピアそのものであることは、最早言うまでもないだろう。

 

「希望を失ったら、絶望に……」

 

「『仮面ライダーデルタ』は、みんなの希望でいなければいけない……絶対に負けないヒーローでなければならないんだ。他にも背負う責任は大量にある……あやめ、お前が期待を持ちきれずに潰れて、世間に殺されるところなんて……絶対に見たくない。だから……オーガにはならないでくれ」

 

「……」

 

 誰かが『デルタになってチヤホヤされてやる!』とか言ってたけど、そんな甘い精神でやれるものじゃない。確実にすぐ潰れて……殺されるだろう。俺だって、いつかそうなるかもしれない。元々は弱い人間だからな……『仮面ライダー』とはそういうものだ。

 

「仮面ライダーなんていいものじゃない。寧ろ、世界一ハードなくらいだ……給料が高いのも納得いくくらいにな」

 

「自分を殺してくるかもしれないのに……それでもやるの?」

 

「やる。夢も希望も俺が守るんだ……約束したからな、あの時に……何一つリスクを背負わずにできることなんて、この世にないんだよ」

 

 だが、『ライダーとして戦うリスク』なんて危険すぎる爆弾を抱えさせるわけにはいかない。そのために仮面ライダーデルタはいるんだ。

 

「……康太様なら、そう言うよね。わかってた余……でも約束は守るんだ余!!」

 

「それは任せとけ。あやめの夢や希望も、もちろん守るさ。絶対、桜をもう一回咲かせるから……」

 

「咲いたら一緒にお花見、だ余! それまで死なないでね! じゃあ……余はこれで! またね!!」

 

 そう言って、あやめは病室を出た……改めて考えてみれば、あやめはもう『なれてしまう』んだよな。

 

「あやめは仮面ライダーオーガに変身することができてしまうんだ……だからって、変身しなきゃいけないわけじゃないけどな」

 

 変身した経緯が経緯だし、あやめもトラウマになってしまっている……『一緒に戦おう』だなんて、とても言えない。それはあやめにとって、精神ダメージを加速させる要因にしかならないことは明白であるからだ。

 

「オルフェノクでも仮面ライダーでも、ゾディアーツでもなんでも来やがれ……デルタがお前らを灰にしてやるぞ!!」

 

 その場に居ない相手に啖呵をきって、気合いを入れる。みんなの明日をできる限りいい物にするために……あの人の代わりに、夢を守り抜くために。

 

「ゆっくり旅してください、乾さん……夢も明日も、私が守りますから」

 

 聞こえているかはわからない。でも、彼がこの世界を笑顔になって去れるように……願いながら、その日は眠った。

 

 

 

 ……一寸先も見えぬ、暗闇の中から足音がする。こんな暗い中をライトも無しで歩くのは、余程の怖いもの知らずか、ライトを忘れたドジだけだろう。最も……この男はそのどちらでもないが。

 

『指紋認証完了。佐々木 浩司様、お帰りなさいませ』

 

「ただ今帰りました」

 

「おかえり、佐々木。『ゾディアーツ』第一号はどうなった?」

 

 男が首を横に振る……それを見つめるのは、吸い込まれそうな赤い眼をした老人だ。

 

「申し訳ありません。猟犬座はハズレでした……」

 

「そうか……まぁ、仕方あるまい。君はすぐに覚醒した数少ない人間だからね、処分はしないさ……ねぇ、リブラ?」

 

「寛容なお言葉をありがとうございます……神谷様」

 

 佐々木がスイッチをオンにすると、姿が変わり……あの男にスイッチを渡したゾディアーツ、リブラに変身した。

 

「『財団X』から提供された『ゾディアーツスイッチ』100個とその設計図……目当てのホロスコープスが覚醒すれば、これによる多大な損失もすぐさま取り返せる」

 

「……アイツですか。例の『カタログ』、便利ですね」

 

「あぁ、この情報を持つのは私達だけ……我々の狙いは水瓶座の『アクエリアス』。この能力があれば、政府から多額の金を巻き上げることができるぞ……」

 

 そう言って、笑う二人。混乱に乗じて、金儲けをする気なのだ。

 

「覚醒条件は『素質のある者がラストワンを超えること』だが……確かめるために手っ取り早いのは」

 

「『一度倒してみること』……ですか」

 

「そう。デルタだけでは時間がかかりすぎるからな……反旗を翻されても困るし、こちら側でも用意すべきか」

 

 計画を練る佐々木と神谷……自分達の金銭だけのために人の命や、尊厳を危険に晒すことを何とも思わないその精神が、笑みに滲んでいる。

 

「とはいえ、こちらにはその技術がない……どのようにしましょうか?」

 

「まぁ、そう焦るな。当てはある……表舞台でスコーピオンに動いてもらって、こちらで作成するんだ」

 

「なるほど……やはり聡明なお方ですね。あなたにかかれば、財団Xも便利な道具の一つでしかないというわけか……」

 

 財団Xが平行世界にまで及ぶ死の商人だということも知らず、神谷の傲慢な考えを褒め称える佐々木。

 

「いい金ヅルが入ってきたものだよ……権力も軍事力も金で買える。それらがあれば、友情も恋愛も自由自在。本当に便利だよ、金というものは……」

 

「そうですね……!! ガハハハハハ!!」

 

「グヒヒヒヒッ……さて、また配布に行ってきてくれ。君の天秤には期待しているよ、リブラ」

 

 それを言われて、胸に手を当てる佐々木。

 

「はい……必ずや、無尽蔵の金銭を我らに!! マネー・イズ・ライフ!!」

 

「グヒヒッ……ブタもおだてりゃ木に登る。無能もおだてれば、いつか成功するだろう……期待しといてやるよ、錆びた天秤さん?」

 

「神谷社長の期待を一身に背負っているのだ……絶対にやってみせる!!」

 

 いいように利用されていることも知らず、やる気満々で金ヅルを作りにゆく佐々木。新たな魔の手は、着々と準備を進める……




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