お待たせしました。
……午前3時、草木も眠る頃。十二星座のゾディアーツ、『ホロスコープス』の集合時間だ。複数の足音が響いてくる……全員共通して、黒い服に金色の線が走った服を着ている。
「よし、全員集まったな……神宮寺。点呼を」
「仰せのままに……スコーピオン!」
「はい」
現れたのは、若々しい女性。女性は普通のゾディアーツスイッチとは違う、赤と黒のスイッチを取り出し……押した瞬間、姿が変化した。
「次! リブラ!!」
「社長のお望みとあらば、喜んで」
「そして、ヴァルゴ! ……おいヴァルゴ!! 出てこい!! いるのはわかっているぞ!!!」
神宮寺が強く叫ぶと、耳を塞ぎながらやつれた様子の男が現れた。明らかに気怠げで、髪も髭も長い間剃っていないのが一目見てわかる。
「お前は相変わらずうるさいな、レオ……忠誠心も程々にしとけよ」
「何だと……!? 図に乗るなよ、八神!!!」
「お? やる気か? いいぜ、遊んでやるよ。楽しくなりそうだ」
二人が同時にホロスコープススイッチを押す。二人の姿が変化して……ヴァルゴとレオ、乙女座と獅子座のゾディアーツとなった。二人とも、凄まじい力を持ったゾディアーツだ。
「待て待て。喧嘩をさせるために呼んだのではない……落ち着け」
「社長がそう仰られるなら……」
「へいへい、わかりましたよー」
全員が決められた席に座り、変身を解除する……
「みんな揃ったな。佐々木、ペルセウスゾディアーツはどうなっている?」
「はい、奴ならデルタに一度倒されました。恐らく……『ラストワン』は近いかと」
「なるほど。ところで天知、腹を抑えているがどうした?」
天知と呼ばれた女性が、微笑を浮かべて話す。
「ご心配なく……デルタの力を見たかったのと、ペルセウスを逃がすために戦闘を行いまして……」
「……それで、どうだった?」
「ハッキリ言って、想定以上の強さでしたね。カタログスペック以上の力を持っています……舐めてかかったが最期、返り討ちに遭うでしょう」
そう言った天知を、八神は鼻で笑った。
「テメェが弱ぇだけじゃねぇのか? ん? テメェはホロスコープスでは落ちこぼれ……そんな奴に警告されても、説得力ねぇな」
「何を言うか!? 私が本気を出せば、デルタ如きの相手など……!! 軽く捻ってやるわ!!」
「負け犬の遠吠えか……サソリは遠吠えしねぇけどな? ギヒヒヒヒ……」
八神の傲慢な姿勢に耐えきれず、スイッチを取り出す天知。
「……刺し殺す!!」
「やってみろ、できるもんならな!!」
「はぁ……やれやれ、こうなったらどうしようもないな。リブラ、ペルセウスへの干渉は済ませているかね?」
説得を諦めて、神谷は佐々木と話を始めた。
「いえ、こちらを優先したので……まだ済んでいません。これから、ラストワンへの布石を打ってきます」
「頼んだよ、佐々木」
「はい……必ず成功させます!!」
佐々木がリブラ・ゾディアーツに変身した。そんな中、八神と天知は……
「死ねぇ!!」
「ヒャハハハ、どうした!? 遅せぇぞォ!? ほれほれ、一発くらい当ててみろ!!」
「図に乗るなぁぁっ!!」
仲間割れを起こして戦い続ける二人に、リブラはため息をつきながら……ペルセウスのいる場所へと向かうのだった。
「……畜生!! 俺は、俺は……こんなにも素晴らしい物を作っているのに!! 何故だ、何故誰にも評価されない!? あの時の評価は……どこに行ったんだァ!!」
「お前に才能がないだけだろ?」
「なっ、貴様……ここまで追ってきたのか!?」
男の目の前にいたのは、仮面ライダーデルタだった。男はその言葉に憤慨し、ゾディアーツに変身する。
「ムカついたか? ならかかってこいよ」
「この野郎!! よくも、よくもぉぉ!!」
「ノロマめ……」
怒りに任せて大剣を振り回すペルセウスへ嘲笑を送りながら、デルタが地面を蹴りつけて、その場で一回転。その勢いのまま、足裏がペルセウスの顔面に炸裂する。
「げふっ……!! バカにすんじゃねぇ!!」
「ハッ……やはり遅いな」
「なに!?」
剣を片手で受け止めながら、デルタの姿が変化し……リブラ・ゾディアーツになった。否、元に戻ったのだ。ペルセウスはそれを見て驚愕している……
「私のことを覚えているかね? ペルセウス」
「お前は……よくも騙したな!! グガッ!?」
「まぁ、落ち着け。芸術には平常心が大事だぞ」
手に持った杖で、向かってきたペルセウスの腹を突き刺し……その場に倒れさせた。リブラはその姿を見下している……地面を舐めさせられたペルセウスが、恨めしそうにリブラを睨む。
「偉そう、に……」
「偉いから偉そうにしているんだよ。さぁ、変身を解きたまえ」
「くそっ……俺に何の用だ!?」
スイッチが押され、男の姿が人間に戻る。すると突然リブラが、天を指刺して言った。
「君はあの星をどう思う?」
「どう、って……綺麗だと思うぞ」
「そうだな。君自身が芸術となる日が近いのさ……あの星のようにね」
リブラの言った言葉に、男が目を丸くする。
「俺自身が、だと……?」
「それだけじゃない。さらに強く、完璧な存在になれるかもしれない……全ては星の運命次第だがね」
「星の運命……俺が、芸術に? なぁ、どういうこと……いない!? 一瞬でどこに行った!?」
困惑する男が再び前を向いた時、リブラはもうそこにいなかった。
「今回こそ、当たりであることを願おう……私の天秤が狂うことなど、絶対に有り得てはならんのだから」
「と、とにかくやるぞ……これが最後のチャンスだ!!」
「奴が覚醒すれば、私の査定も上がるだろう……私のために働いてくれよ? ペルセウス!!」
そう呟いて、今度こそリブラはその場から姿を消した。
あれから一日経った。俺は一破さんに、進展を尋ねてみている。
「ペルセウスやスコーピオンについては……やっぱり、何もわからないんですね」
「残念ですが……すみません。奴らも、オルフェノクやライダー同様、見た目で見分けることはできない……アイテム自体が小型だから、尚厄介です」
「スイッチ一個ですもんね……例の衛星、役に立ってるのかな」
ふと、打ち上げられた衛生の話を思い出す。確か監視衛星だって……
「確かに……よく覚えてましたね」
「気になってたので……おーい、衛星くん見てる~?」
「相変わらずですね、雪村さんは……見ていたとしても、返事は来ないと思いますよ」
衛星に向かって、手を振ってみる。あっちからは見えてるのかな。
「というか、情報が取れたとしてどこに来るんだろう? 警察かな、学園かな?」
「さぁ、そこまで教えられてはいないので……」
「奴は学園には来ないだろうし……かといって、ここを離れたら、財団Xの襲撃が心配だし……」
あっちを立てれば、こっちが立たない。警察の皆さん総動員で探しても、どうにもならん以上は……俺が出ても変わらんだろう。ただ警備を薄くするだけだ。
「もう一人、ライダーが欲しくなりますが……ベルトはありませんしね」
「はい……あやめを戦わせるわけにはいかないし」
「私もそんなことはしたくない……あんなことがあった後に、もう一度変身しろという方が無茶ですよ」
その通りだ……とはいえ、このまま学園を走り回っていても、みんなの心配は取れないだろう。
「どうすれば奴らに見つからずに、奴らを探せるかな? 一応、デルタの力で大分遠くまで見えてるけど……そうだ!!」
「何か思いついたんですか?」
「はい! 危険な賭けにはなるけど……空の上から探します!!」
陸ではなく、空から探す……すぐ戦える体勢も整えられるやつがあるじゃないか。
「空? ヘリコプターを使うんですか?」
「それじゃ、撃ち落とされる危険がある。すぐに戦闘を開始できるやつで探します」
「……もしかして、あれを使うんですか!?」
流石は一破さんだ。気づいてくれたようだな……
「当たりです!! スリーエイト、ツーワン!!」
『Jet Sliger, Come Closer.』
「なるほど……確かにそれなら、すぐに戦いを始められますね。もしも学園が襲撃されてしまっても、それならすぐに戻ってこられる」
今の今まで思いつかなかったのは、俺の思考力が足りなかったからであろう。反省しないとな……
「最近使う機会が多かったので、やっと思いつけました! ……あ、来ましたよ!!」
「相変わらず大きいな……バイクか? いや、ジェット機?」
「基本的な操作方法はわかるけど……兵装とかついてるのかな? ちょっと聞いてみるか……」
ジェットスライガーから降りた時、音を聞いた鷹嶺先生が来た。
「雪村くん! 大きな音がしたけど、なにか……って、これは!?」
「あ、僕が呼んだんです。説明書とか、書類の中にありましたか? 博衣さんに聞いてみたいんですが……」
「よくわからないけど……いいよ。君のことだし、何かしら思いついたんだろう? ……こよりだよね? 私だよ」
そう言って話をし続けて、30分程度経ち……電話が切られた。
「どうでしたか?」
「あるらしいから、学園にFAXしてくれるって。これで使いこなせるね」
「雪村さん、よかったですね」
読んだらすぐにでも探しに行く……待ってろよ、迷惑芸術家にサソリ野郎!!
「はい! 早速取りに……」
「もう行ってきたよ!」
「早っ!? 流石ですね~……」
思わず拍手が漏れてしまう。スピードなら、デルタを超えてるかもな。
「なんたって鷹ですから! 遅くちゃ猛禽類名乗れないよ!!」
「ありがとうございます……ふむ、なるほど……」
「雪村さんがいない間、学園の警備は私に任せてください。サイガフォンがあれば、ある程度は持ち堪えられるでしょう」
そう言ってもらえると、心強いな。一破さんが言うから、尚更だ。
「はい、お願いします!! ……よし、読んだ!!」
「読むのも早いね。本当にわかった?」
「バッチリです!! よし、早速東京をパトロールして……いや、待てよ」
一つ問題がある、重大なやつが……
「え? もしかして……動かせないんですか?」
「動くんですけど……航空法とかって、大丈夫なんですかね? バイク免許は一応取ってるけど……これ、飛行機に当たるのかな?」
「……大丈夫なようにしておきます。ライダーの捜索のためなら、上も納得するでしょうから……」
少しコケそうになりながら、一破さんがそう言った。
「過剰に心配して損したよ……行ってらっしゃい」
「すみません……よし、今度こそ!! 行ってきます!!」
「頑張ってくださいね」
ジェットエンジンが点火され、空高く飛んでいくスライガー……みんながどんどん小さくなっていく。すごいスピードだ……
「これなら、すぐに東京全域はいけるな……見つからなかったら、範囲を広げてもいい」
デルタの視力で下を見ながら、高層ビルとかにぶつからない高さを飛行する……
「ここにもいないな……どこ行ったんだ?」
結構回ったが、奴の姿は見えない。俺が見落としているのか? そう思っていた時……
「……ん、なんだあれ?」
怪しい動きをしている人がいる。周りをきょろきょろ見回して……何かする気か? そう思って、ゆっくり降りる。
「あ、あれはなんだ!?」
「飛行機だ!!」
「UFOだ!!」
全部ハズレ……正解は。
「空飛ぶバイク、参上!!」
「デルタだ!! デルタが来たぞ!!」
「な、デルタだと!?」
やっぱり怪しすぎる……人混みからジャンプして抜け出し、その人の前に立つ。
「はい。ところで、あなたは何を? 動きが不審でしたが」
「何もねぇよ……!! なんでお前がここにいるんだ!?」
「ペルセウス・ゾディアーツ。そして、スコーピオン・ゾディアーツが現在……東京のどこかに潜伏しているとみられています。そのため、私がこうしてパトロールをさせてもらっているんですよ」
目が泳いでる、何かあるな。
「……じゃあ、忙しいから俺は……」
「そういえば……ペルセウスの奴、芸術がどうとか叫んでたけど……そのために犯罪をしていいわけないのにな。早く自分の罪を償って欲しいですね~」
「ッ……」
ペルセウス本人なら反応しそうな言葉を、何気なく呟く。奴の足が止まった……あと少しだな。
「人や社会のものを壊して、迷惑かけて……それで芸術家を名乗っていいわけがないのに。本当に何を考えてるんだろうな」
「お前に俺の何がわかるッ!!」
「……正体を表したな、ペルセウス!!」
みすぼらしい男が、懐からスイッチを取り出した。
「皆さん逃げて! こいつはゾディアーツです!!」
「黙って聞いていれば……!! せっかく、芸術で食っていけると思っていたのに!! 『芸術なんて見てる暇ない』だと!? ここまで来るために、俺は死に物狂いで努力してきたんだぞ!! もう一回わからせてやる、俺の芸術の素晴らしさを……そして、それで食っていくんだ!!」
「今はみんな余裕がないんだ、生きるだけで精一杯なんだよ!! 物や人に当たっても意味はない、寧ろ逆効果になるぞ!! 今からでも遅くないから、考え直せ!!」
説得を試みたが……奴はさらに怒りを強めている。
「黙れ、黙れ黙れぇぇっ!!! お前らが俺の食っていく道を潰すなら……芸術の良さを、力ずくでもわからせてやる!!!」
『Last One』
「やめろ!! それを押すんじゃない!!!」
止めようとしたが……もう、遅かった。男が禍々しいスイッチを押すと、男の体が排出されて……ペルセウス・ゾディアーツが現れる。
「まずはお前からだ、デルタ!!」
「このわからず屋め!!」
「ば、化け物!? 助けてくれぇ!!」
ここで倒すわけにはいかないよな……ジェットスライガーの出番だ。
「わからず屋は世間の方だ!! 畜生ォォ!!」
「悪いが……さっさと勝負を決めさせてもらうぞ!!」
「なに!?」
ジェットスライガーを発進させて、奴に突撃する。
「ぐふぅぅっ!?」
「確か、兵装の使い方は……こうだったよな!!」
「ガハッ!!」
空中で静止させて、大きく吹っ飛ばし……奴の高度がさらに上がったところでボタンを押した。
「喰らえ、フォトンミサイル!!」
「な……!? ぐぎゃあぁぁぁーっ!!!」
「よし!!」
計32発のミサイルは、奴に命中しては爆裂し……天高く吹っ飛んでいった後に大爆発した。終わったな……
「よし、スイッチを回収しないと……あれ? どこだ!?」
……すごいスピードで、スイッチが爆発の中に戻っていく。どうなってるんだ!?
「まだだッ!! 俺の芸術は……こんなもんじゃ、ないんだぁぁー!!!」
「復活しただと!? きちんとラストワンで倒したのに……!?」
「死ね、デルタァ!!」
こちらに石化させる腕が向けられ……腕についた装飾から、赤いビームが飛んできた。それに命中したジェットスライガーが、みるみる石になってゆく……
「なっ……!? くそ!!」
「逃がすか!!」
「くそ、空中だってのに……ファイア!!」
石化していた部分を殴り飛ばして壊し、石化を止めたが……もう飛べない。どうにか着陸させたが、奴がまた石化光線を放とうとしてきたので、応戦のためにデルタムーバーを起動した。
『Burst Mode』
「当たれぇ!!」
「当たってたまるか!!」
奴が地面に着地した……奴の体に描かれた模様のひとつが輝いている。あれは一体……
「おぉ、ついに……!! 最輝星が輝いたか!!」
「お前……ゾディアーツ!? その黒い服は……ホロスコープスだな!?」
「察しが良くて助かる。如何にも、私はホロスコープスさ。天秤座のリブラ・ゾディアーツだ、よろしく」
ホロスコープス、それなら相当強いはず……厄介なのが来たな!!
「これが覚醒ってやつか!?」
「その前段階……といったところだな。まぁ、どちらにせよ、倒させるわけにはいかん……ついでだから、お前には死んでもらおうか」
「殺せると思うなら……試してみろよ!!」
構えをとる。相手が強くても、俺がやる他ないんだ。二人まとめて倒してやるよ……!!
「果たして……お前にできるかな?」
「うぉぉぉーっ!! くたばれ、デルタァ!!!」
「……やれやれ、感情的過ぎるのがこいつの欠点だな。少し手助けしてやるか」
奴の武器は……あれは確か、『錫杖』だったか。実際に持っている人は見たことがないけど……
「チッ……死んでなんか、やるものか!!」
「ゴフッ!?」
「その素早い動き……スコーピオンがやられたのも納得いくな」
やっぱり仲間か、それなら……
「サソリ野郎に言っとけ、死ぬのはお前だってな!!」
「その必要はない。君の人生はここで終わるのだから」
「……なに!?」
奴の姿が、一瞬で消えた。言うだけ言って、逃げたのか?
「こっちだ」
「なっ……グッ!!」
「防御力は我々と変わらんようだな」
凄まじい力で、錫杖が腹部に突き刺された。後ろから奴も来ている……
「オラァァ!!!」
「ッ、が……ぎぃ!!」
「こちらも忘れてくれるなよ?」
背中を袈裟斬りにされて、振り向こうとした瞬間にリブラの膝が腹に突き刺さる。嫌な音を立てて、骨がバラバラになった。
「グ、フッ……」
「油断するな。まだ死んではいないぞ?」
「うぉぉぉぉぉっ!!!」
奴は話を聞いていなさそうだ、リブラがため息をついている……奴の腕から、赤い石化光線が放たれた。どうにか転がって避けたが……後ろの車が丸ごと石化する。
「くっ、う……!!」
「お前なんか、お前なんか死んじまえっ!!」
「フッ……憤怒も悪いことばかりではないな」
車が何個か石化した後……奴の動きが、突然止まる。
「……ん?」
「どうした、ペルセウス? 奴にトドメを刺すなら今だぞ」
「それどころじゃない……インスピレーションが湧いてきたんだ!!!」
剣を手に、車へと向かうペルセウス。リブラは困惑を隠せていない……
「お、おいペルセウス!? 何をやっている、憎いやつを片付けるのが先だろうが!!」
「そんなの知るか、作れる時に作らないでいつ作る!!」
「チッ……なら、私だけでも!!」
リブラがまた姿を消した。どこから襲いかかってくるか……見られないなら、見るのをやめよう。そう思って目を瞑り……これまでの経験から、気配や微かな音を探る。そして……
「そこだな!? ファイア!!」
『Burst Mode』
「ぐわぁぁぁっ!? な、何故わかった……!?」
奴が虚空から姿を現し、その場に膝をつく。
「俺は魔法もなければ、獣人や鬼人みたいな特殊能力もない……ごく普通の人間なもんでな。策をこねくり回す以外の能がないんだ!!!」
「ち、畜生ォォ……!! ペルセウスッ!!! こいつがお前のことをバカにしているぞ、殺してしまえ!!!」
「完成だ!! これは会心の出来だぞ……!!!」
ペルセウスが作ったのは……馬車だった。石で作られた二匹の馬が、馬車を引いている。見事と言う他ない、これぞ芸術だ。
「す、すごい……」
「車のガラスに写った自分を見て、閃いたんだよ……!! どうだ、デルタ!?」
「何をやっているんだァ!!! 戦闘中だぞォ!?」
リブラの叫びは、興奮するペルセウスには届いていない。
「すごいな……特に馬の毛並みとか、今にも動き出しそうなくらい繊細だ……」
「そこに気づいてくれるとは……その通りさ!! そこは拘って作ったんだよ!!!」
「いい加減にしろォォォ!!!」
激昂したリブラが向かってきた、迎撃するために構えたが……その必要はなかったらしい。
「邪魔をするなァ!!!」
「グォォォォォ……!? いかん、錫杖が石にッ……!!」
「もらった!! スマッシュ……!!!」
奴の懐に潜り込んで、拳を握る。今頃反応したようだが、間に合わない。
「しまっ……!!」
「ビートォォ!!!」
「がふぁっ!!」
鳩尾に一撃。次に顔面、その次は顎……何発かぶち込んだ後、下腹部への一撃を構えた。
「だぁりゃあぁぁっ!!!」
「グァァァァーッ!! こ、こんなはずは……!!!」
『Ready』
奴が怯んでいる間に、必殺技の準備をする。終わりだ!!
「チェック!!」
『Exceed Charge』
「こんな、こんなことあるはずが……ぐッ!!」
ポインターを撃ち込むと同時に飛び上がり、足を片方折り曲げて、もう片方を伸ばし……ポインターの中へと突撃する。
「だぁぁりゃあぁぁぁーッ!!!」
「ッあ……!!!」
『オイオイ。あんだけ言っといて、もう死ぬのかよ? 情けねぇこったな……』
謎の声が聞こえた。何処にいるか確認する間もなく、硬いもので殴られて叩き落とされる。
「がっ……誰だ!? 出てこい!!」
「あんだけやられてたのに、元気だねぇ……遊ぶ時が楽しみだ」
「ヴァ、ヴァルゴ……!!! 何故ここに!?」
ヴァルゴ? あいつも服装を見る限りだと、ホロスコープスのようだな。ピンク色が目立つゾディアーツだ。
「社長からのご命令だよ、お前はまだ失えねぇんだと。何考えてんのかは分かんねぇが、逆らうわけにもいかんからな……助けてやる。ありがたく思いやがれ」
「え、偉そうにッ……!!!」
「偉いから偉そうにしてんだよ。何が悪いんだ、え?」
二人とも、仲が悪いな。一触即発って感じだ……何かきっかけを与えたら、同士討ちしてくれないだろうか?
「劣勢になったら即逃げるのかよ!?」
「な、なんだと……!?」
「天秤クンは煽り耐性0で困るな……また会おうぜ、デルタ? 今度は俺が遊び相手になってやるからよ」
そう言って、ヴァルゴは一瞬で姿を消した。
「待て!! くそっ、逃がしたか……」
「それにしても……我ながら、よく出来たもんだ」
「あぁ、本当によくできてる……」
お世辞抜きで、芸術品として最高だと思う。彼の体の光が消えて、元に戻っている……
「なぁ、デルタ。俺は……間違ってたのか?」
「あぁ……間違いだよ。アンタは物をたくさん壊したし、人を恐怖に陥れた。やっちゃならないことだ」
「雪村さん、大丈夫……そうですね」
一破さんが来てくれた、このまま出頭させたいけど。
「俺、出頭します……アンタの言う通り、罪を償うよ」
「そうか、なら……一破さん!」
「わかりました。未確認生命体……15時26分、逮捕」
これで解決だな……そう思って、手錠をかけられるペルセウスを見つめていた時。空が光って……何か降ってくる!?
「二人とも危ないッ!!!」
「なっ……っ!?」
「ウグァァァ!?」
空からレーザーが降ってきて、一破さんは間一髪躱したが、ペルセウスには当たってしまった。
「これはもしかしなくても……おい、やめろっ!! もう逮捕してるんだよ!!!」
「ダメですよ、衛星に声は聞こえません!!」
「グアッ、アァァ……!!」
何発もレーザーを食らって……これじゃ、爆発してしまう。
「やめろ!! 街中で爆発させるつもりか!?」
「ダメだ、間に合わない!! 離れましょう!!!」
「が、ぐぁっ……ギャアァァァ!!!」
彼の体から、光が漏れる。爆発してしまう……くそ、仕方ない!!
「……雪村さん!? 何を!?」
彼に覆い被さる。爆発を抑えるために……次の瞬間、ペルセウスは大爆発を起こしてしまい……俺の意識は途切れた。
次に目覚めた時はやはり、病院にいた。大爆発を体で無理矢理押さえつけたので……デルタの装甲があっても尚、大火傷だったらしい。義手は完全にお釈迦になり、早々に取り替えることになった。ジェットスライガーは修理中のようだ……幸い、燃料となるフォトンブラッドを作り出して濃縮する部分は壊れていなかったようで、持って帰ってきた設計図があれば、修理可能らしい。
「……色々すみませんでした。一破さん、ペルセウスは?」
「あの人なら……私がラストワンのスイッチを切って、元に戻しました。その後の衛星攻撃もあって……罪はある程度軽くなるそうです」
「そうなんですね……彼の芸術は素晴らしかったし、罪を償った後、また芸術の道に進んで欲しいな」
本気で思ってる、それくらいあれはいい出来だった。
「それと……あの衛星攻撃の件ですが、どうやら事情を知らなかったらしく……リアルタイムの情報共有ができていなかったようです」
「だから、ペルセウスをまだ敵だと思って……」
「はい。あなたが気絶している間に、謝罪会見も行われましたよ」
とりあえず、この感じだと爆発での街への被害は無さそうだ。
「とりあえず……爆発で被害が出なくてよかったです」
「まったく、本当に……デルタの装甲があるから、無茶に磨きがかかっていませんか?」
「多少の攻撃を無視できるようになったので、その節はありますね……気をつけないと、あやめに怒られちゃうよ」
生き残るって約束したんだ……デルタの装甲をアテにしすぎちゃいけないな。
「……そうだ、思い出したっ! 一番大事なことを話してなかった!!」
「大事なこと?」
「はい、実は……」
俺はペルセウスとの戦いの時に乱入してきた、リブラとヴァルゴについて、知っている全てを話した。
「ホロスコープス……リブラにヴァルゴ、てんびん座とおとめ座か……まさか、割って入ってくるなんて……」
「今の今まで、すっかり忘れてましたよ。ペルセウスのことで頭がいっぱいだったので……」
「撤退に追い込んだのは流石ですが……手がかりが掴めなかったのは痛いですね」
完全に逃げられた……次出てきたら、今度こそ逃がさない。
「すみません……次こそは逃がしません。奴らの尻尾を掴んでやりますよ」
「期待していますよ、雪村さん。では……そろそろ失礼しますね」
「ありがとうございました!!」
一礼して見送った後……これからについて、考える。
「とりあえず、ジェットスライガーでホロスコープスを探さないとな。奴らを止めないと、ゾディアーツは増える一方だ」
最優先事項は決まった、あとはそれに突き進むのみ。
「ホロスコープス……どこからでもかかってこい!!」
今度は逃がさん、絶対に倒す。そう思いながら、俺は怪我を治すのに専念するのだった……
ホロスコープス、本格登場です。