話が動きます。
時間は少し遡り、リブラがヴァルゴを連れ帰ってきた後のこと……ボロボロのリブラを、ヴァルゴが乱雑に投げ捨てる。
「ごふっ!! がは、ぁ……」
「言われた通り連れて帰ってきましたぜ、社長……おい錆びた天秤、社長のお優しい心に感謝しろよォ?」
「っ、く……」
二人が同時に変身を解除し、元の人間に戻る……恨めしそうに睨みつけてくる佐々木を、八神は鼻で笑った。
「じゃ、俺は疲れたんで昼寝してきま~す」
「おい!! ヴァルゴ!! 仕事はまだあるぞ!!」
「お前らがやっとけ。デルタと戦わせてくれるってんなら別だけどな? そういうことで、おやすみ。無能共」
神宮寺がたまらずスイッチに手を伸ばしたが、神谷がそれを腕で静止した。
「さて……デルタにやられたようだね、佐々木」
「も、申し訳ありません……! どうかお許しを……!!」
「だが、収穫もあった。君達の戦いは見させてもらっていたよ? おかげでいいデータが取れたんだ……」
巨大なディスプレイに、デルタの姿や戦闘映像が映し出された。体の細部の詳細な情報も、余すことなく収集されている。
「ということは……」
「勝ってくれてもよかったが……負けてしまったとしても、デルタには利用価値がある。怪我の功名というやつだね」
「な、なんと……そこまで考えていらっしゃったとは!」
佐々木が驚愕の声を上げている。ディスプレイの画像が切り替わり、別のライダーが映し出された。
「そして……これが、我々の作ろうとしているライダーシステムさ」
「これも、財団Xから……?」
「いや、これは雪村康太達が財団Xから奪取した書類を参考にしている。見た目は完全にコピーさせてもらったよ」
ライダーの武装の詳細が、ディスプレイに次々映し出されてゆく。
「アストロ、スイッチ……?」
「スイッチそれぞれが役割を持っていて、『フォーゼの世界』のライダーは、これを使い分けて戦うらしい……拡張性なら、今までのライダーを遥かに凌駕するだろう」
「こ、このライダーの名は……グッ!!」
傷が痛むのか、佐々木はその場に膝を着いた。
「神宮寺。治療室へ連れて行ってやれ……傷が治ったら、君にやって欲しいことがある。すぐに来てくれ」
「はっ。来い、佐々木」
「ありがとうございます……社長」
そう言いながら、二人は治療室の方へ歩いていった。一人になった神谷の口が、弧を描く。
「グヒヒヒ、私の部下はチョロくて助かる……財団Xから渡された『カタログ』によれば、ゾディアーツには『超新星』という覚醒を起こすことがあるという。リブラの超新星である、『ラプラスの瞳』……覚醒すれば、利益はすぐそこだ。さてと、ライダーシステムの開発は進んでいるかな?」
もうすぐ完成する、新たな力に期待を寄せながら……男は邪悪な笑いをやめない。
「頼むぞ、スコーピオン? お前の協力なしでは、ライダーシステムが宝の持ち腐れだ……グヒヒヒヒッ!!」
そう言って、神谷はこれから入ってくるであろう巨額の金に夢を馳せつつ、邪悪に笑い続けた。
「……くそっ!! イライラする!!」
男の周りには、酒瓶が大量に転がっている。男は怒りのままに、酒瓶を地面に叩きつけた。尖ったガラス片が辺りに飛び散る。
「社会も女房も俺を見捨てやがって、全員バラバラにしてやりてぇよ……!!」
「その願い、叶えてやろうか?」
「は……? うわぁぁっ、サソリの化け物!?」
男は腰を抜かして、後ずさりをしている。しかし、スコーピオンはゆっくりと男に近づいて……言った。
「そう恐れるな。私は君の味方だ……お前に報復の力を与えに来た。これを使うといい……さぁ、星に願いを」
「スイッチ? こんな玩具、なんの役に……うぉわっ!?」
「これは……やまねこ座、『リンクス』か。悪くない、行け。君は今、強者への一歩を踏み出したのだ」
ガラス片に写った自分の顔を見て、男は困惑を隠せない様子でいる。耐えきれず、スコーピオンへと怒りの声を上げた……
「おい、力が欲しいとは思ったが……こんなバケモンになりたいだなんて、言った覚えはねぇぞ!?」
「化け物? 違う……人間を超えた生物だよ。スイッチをもう一度押してみなさい」
「人間を超えた、生物……?」
困惑しながらスイッチを押すと……男の姿がたちまち元に戻った。
「な? 心配はいらない、君は強くなったのだから」
「……アンタ、何もんだ? 人間じゃなさそうだが……」
「我が名は『スコーピオン』。星に選ばれし十二星座、『ホロスコープス』さ。君もいずれ、私達の仲間になることになる。期待しているといい」
さそり座はそう言うと、その場から走り去っていってしまった……男はそれをしばらく見つめた後、スイッチを握りしめた。
「へ、へへっ……俺にもツキが回ってきたなァ!! クズども!! 待ってろよォ!!」
「私は天秤とは違う。それを社長にお見せせねば……」
「ギャハハハ、いい気分だぜぇぇ!!!」
力を持って増長する男を見つめた後、ため息を吐きながら……スコーピオンは、社長に与えられた『もうひとつの仕事』を果たしに行くのだった。
「では、今日もパトロールに行ってきます!!」
「すっかりジェットスライガーの操縦にも慣れましたね、雪村さん」
「毎日乗ってますから!!」
置き場に少々困る大きさだが、誰もいない校庭があるので、そこを置き場にできている。航空法の方も何とかなってるみたいだし……
「私は離れていますね。行ってらっしゃい、雪村さん」
「はい、行ってきます……って!?」
「あれは……ゾディアーツか!? 追いかけないと……!!」
出発しようと思ったら、目の前に現れてしまった……追いかけないわけにはいかないな!!
「スライガーで追いかけます、一破さんもお願いしますね!!」
「わかりました、雪村さんは先に行って鎮圧を!!」
「もちろんです!!」
レバーを引いて、スライガーを発進させる。ジェット噴射のおかげで、すぐに追いつくことができた。ミサイルはもうないけど……追いかけることはできる!!
「おい、そこのゾディアーツ!! 止まれー!!」
「うぉぉぉぉっ!!」
「まぁ、大人しく止まっちゃくれないよな……!!」
先回りして、大通りに出る前に止めた。スライガーを着地させて、飛び降りる。
「道塞いでんじゃねぇ!! 死にてぇのか!?」
「お前も何かに怒っているみたいだな。だが、暴れても何も変わらんぞ。今なら間に合う、変身を解け」
「ふざけんな!! 俺の邪魔するヤツも、俺に冷たくするヤツも……皆殺しだァァ!!!」
すごいスピードで、こちらに走ってくる……話を聞くつもりはなさそうだな。まぁ、わかってたけど……
「なら、力ずくで止めてやる!!」
「どけぇぇぇっ!!!」
「うぉっと……!!」
振り下ろされた爪は、アスファルトを簡単に引き裂いてしまった。ライダー系統の刃物は鋭利だな……!!
「包丁に加工したら……さぞかし、よく切れるんだろうな!!」
「ほざけぇ!!」
「だが、使うやつの腕が悪いと意味がない……!!」
切れ味に任せて、爪をこちらに振っているが……技も何もない、滅茶苦茶な太刀筋だ。
「何を……ぐぶっ!?」
「メテオ……スマッシュ!!」
「ごはぁぁ!!」
その場で踏み込み、顎へのアッパーで高く打ち上げて跳び上がり……顔面を横から殴りつけて、叩き落とした。ダメ押しに、デルタムーバーを構える。
「ファイア!!」
『Burst Mode』
「当たるかぁ!!」
撃ち込んだ弾が高速移動で避けられて、懐に潜り込まれた。奴の鋭利な爪が、俺の肉をデルタの装甲ごと引き裂いてゆく。
「グガッ、ギッ……この野郎!!」
「へっ、貰ったぜ……?」
「なに!?」
なんと奴は俺の手から、デルタムーバーを奪い取ってしまった。銃口がこちらに向けられる。
「お前が喰らいな!!」
「危ねっ……!!」
「逃げられるわけねぇだろ!? そこだぁ!!」
次々放たれる銃弾を、なんとか避けていたが……遂に命中してしまった。三発分の閃光が、俺の体を貫いてゆく。
「ごっ、ぐ……!!」
「へへっ、いい気味だなぁ……今だ!!」
「グハッ!!」
ボールを蹴るかの如く、足の甲の一撃を装甲が削られた腹に食らって地面を転がる。俺の傷口が奴に晒され……そこを踏みつけられた。神経が露出しているので、無論激痛が走る。
「グォ、ア……!!」
「知らなかったのか? 俺の邪魔するやつはみんなこうなるんだよ。地獄の底でみんなに教えてやるといい」
「それを、返せ……!!」
デルタムーバーを掴もうとしたが、奴は手が届く直前で上にあげた。
「はい、あーげた……ってかぁ!? ギャハハハハッ!!! 仮面ライダーデルタの最期だ……自分の武器で死にやがれ!!!」
「や、めろ……やめろ!!」
「誰がやめるか!! 大人しく死んどけ!!!」
銃口が傷口に向けられた……撃たれれば、致命傷だ。
……ただし、撃つことができればの話だけどな。
「は? 弾切れ……? ライダーの銃なのに!?」
「返してもらうぞ……!! チャージ!!」
『Charge』
これの弾は、全部で12発。撃ち切ったら、再装填を行わないといけない。そこまでは知らなかったらしいな!!
「なっ……ギャアァァァ!?」
「ライダーの銃もちゃんと弾切れする。まんまと引っかかったな……!!」
「ち、畜生……騙しやがったな!!」
騙してなんかいないさ、ただ……
「お前が知らずに物を使うからだろ、説明くらい受けてから使え!!」
「雪村さん!! 大丈夫……みたいですね」
「はい、大丈夫です!! 今、勝負をつけるところですよ!!」
奴は歯軋りをしながら、こちらへと走ってくる。相当ムカついたらしい……冷静さを失った相手は、俺の一番得意なタイプだ!!
「ふざけんなぁぁぁッ!!!」
「どこ狙ってんだよ!! スマッシュビート!!!」
「ガフッ!!」
顔面を狙った、横薙ぎの一撃。屈んでそれを躱して、鳩尾に一撃を叩き込んだ。決めるなら今だ……!! 顔面に一発、頬に一発……最後に、眉間に一発。
「ゴガ、ギッ、ゲァッ!!!」
『Ready』
「チェック!!」
銃を構えて……必殺技の準備だ。奴は起き上がろうとしているが、間に合わない。
『Exceed Charge』
「っ、くそぉ……あの、詐欺師め……!! 全然強くなってねぇじゃねぇか!!!」
「今だ!!」
ポインターを撃ち込んで、拘束。それと同時に、デルタムーバーを元の位置に戻し……大きくジャンプしながら、片足を伸ばして、もう片方を折りたたむ。そのまま、ポインターの中へと突撃した。
「だぁぁりゃあぁぁぁッ!!!」
「グギャアァァァッ!!!」
「逃がさんぞ、未確認生命体!!」
俺も一破さんに続く。奴を今日こそ捕まえてやる……後ろ姿が見えた!!
「待てぇ!!」
「逃げても無駄だ、大人しく……」
「その台詞、そっくりそのまま貴様にくれてやる」
一破さんの後ろから、忌々しい声がする。咄嗟に一破さんを庇った。奴はもう左足を軸にしてその場で回転し、こちらに足裏を突き出している……防御姿勢すらも取れず、俺は壁まで吹っ飛ばされた。
「ガァッ……!!」
「雪村さん!! お前は……『ホロスコープス』か!?」
「その通り。名乗っておこうか、私は……ガッ!!」
すぐに戻ってきた俺も、その場で右足を軸にして一回転し……奴に足裏を突き出した。虚をついたそれは奴の顔面に命中して、大きく仰け反らせた。
「一破さん!! こいつはスコーピオン、あの時のサソリ野郎です!!」
「そうか、お前が……!!」
「相変わらず、お人好しは抜けていないな……だが見てみろ、確かに一破は助かったが……奴は逃げてしまったぞ」
それは確かに悔しい。でも……
「お前を倒して、本拠地の場所を聞き出せれば……プラマイゼロどころか、お釣りがくるぜ!!」
「図に乗るな……と言いたいが、今日は社長から直々に仕事を預かっているのでな。貴様に構っている暇はないのだ……代わりに、こいつらに遊んでもらえ」
「なっ……こいつらはなんだ!? 一体どこから……」
奴が逃げてしまう……追いかけようとすると、無数の忍者っぽい奴らに囲い込まれた。刀を持っており、黒服に赤い小手……忍者じゃねぇか。
「一破さんは奴を追ってください、俺も片付けてすぐに向かいます!!」
「わかりました、気をつけて!!」
「おっと、お前らの相手は俺だぜ!!」
一破さんを追わんとしていた忍者達を殴って止める。後ろから来ていたので、そいつの攻撃も止めたが……
「強さはライオトルーパーと同じくらいか……!! なら、余裕だ!!」
「……」
撃たれたのに、奴らは悲鳴ひとつ上げず、倒されるとばら撒かれた銀紙のようになって、消えてしまった。
「生き物じゃないのか……? よくわからん奴らだ!!」
「……」
「遅い!! あやめに鍛えてもらってこいッ!!!」
忍者を一人倒して、消える前に刀を奪い取った。斬りかかってきたので、相手の刀を押して……引き技で胴を切り裂いた。
「残り三人……まとめて来いよ!!」
一人目は居合の構えで、胴を切り裂いてやった。二人目は巻き落としからの逆袈裟……最後の一人、大きく振りかぶった面。打ち落として、面を構えた。
「だぁりゃあ!!」
「……」
「一丁上がり、だな……今度はしっかり練習してこいよ?」
そんなことを言っていると、俺が奴らから奪った刀も消滅してしまった。
「よくわからんことが多い奴らだな、本当に……!!」
ボヤきながら、一破さんを追いかけると……いた。
「雪村さん……すみません、見失ってしまいました」
「気にしないでください! 聞き込みの方は……?」
「焦った様子で北西へ走っていったようですが……それ以外は何とも……」
裏道を走ったんだろうか……厄介だな。
「とりあえず、スライガーで上から見てみます。一破さんは引き続き学園の方をお願いしますね」
「わかりました」
「逃げられると思うなよ、ゾディアーツ!!」
俺はまたジェットエンジンを点火して、空中から奴らを探したが……結果は出なかった。
「すみません、あんなこと言っといて……」
「いえ、気にしないでくださいよ。ゾディアーツを二人被害ゼロで撃退できただけでもよかったです……あと、ありがとうございました」
「え? 俺なんかしたっけな……?」
記憶を探ると……あ、もしかして。
「もう忘れたんですか? あの時、スコーピオンの蹴りから庇ってくれましたよね?」
「やっぱりそれか! すみません……奴を探すことに必死だったもので、忘れてました。庇ったのも咄嗟でしたし……」
「意外ですね……記憶力はいい方だと思っていたんですが」
まぁ……忘れても、問題ないだろう。
「というか、そこまで痛くもなかったので!! お礼なんていいですよ、それよりご飯食べに行きましょう!!」
「結構酷い傷だったのに、元気ですね……わかりました、行きましょうか!」
「はい!!」
最近はさらに治りが早い気がする……体ってやっぱり慣れてくるものなんだな。同じような怪我なら、尚更。そう思いつつ、俺は晩御飯を食べるために、一破さんと一緒に食堂へと向かった。
「う~ん……やっぱりここのご飯、いつ食べても美味しいです!!」
「今日は親子丼ですか……もう無いし」
「ごちそうさまでした!!」
食器を返却して、日課のトレーニングをこなした後、いつものように警備に入った。
「異常なし、っと……」
今日も奴らはいない。いいことではあるのだが……違う場所に現れたら、意味が無い。
「今度、学園長に提案してみるか……ん、電話? こんな時間に……?」
変身を解いて、ポケットからスマホを取り出した。相手は……警察?
『もしもし、雪村さんですか!?』
「はい、そうです……どうしました?」
『未確認生命体が出現したとの通報があって……すぐに向かってください!! 位置情報をスライガーの方に送ります!!』
そんな改造してたのか……すごいな、博衣さん。鷹嶺先生が褒めるだけある……
「わかりました、急いで向かいます!! 変身!!」
『Standing by』
『Complete』
何が狙いかは知らんが、お前らの思い通りにはさせんぞ。電話を切って、スライガーに乗り込む。
「よし……場所はここだな!? 行くぞ、スライガー!!」
ジェットスライガーのエンジンがかかり、静かな夜に轟音が響く。起きちゃったらごめんなさい……そう思いつつ、目的地に急行すると……へたりこんでしまっている女の人と男の人、そして男の子が一人。三人家族のようだな。
「大丈夫ですか!?」
「で、デルタが来てくれたか……はぁぁ、助かった……」
「うぇぇぇぇん!! 怖いよぉぉー!!!」
怪人が怖かったのだろう、震えながら泣き叫んでいる。両親がなだめているが……暫くは泣き止まないだろうな。
「もう大丈夫だよ、デルタが来てくれたから!!」
「わぁぁぁぁん!!」
「仮面ライダーデルタ、参上!! もう安心していいぞ、よしよし……」
男の子の頭を撫でて、俺も宥めるのを手伝う。
「う……デルタ? デルタなの?」
「その通り!! 仮面ライダーデルタだぜ!!」
「……ホントだ、デルタだぁ!! わーいわーい!!」
俺の姿を見ると、涙が引っ込んで笑い出してくれた。
「現金な子だねぇ……すみません、うちの子が……」
「いえいえ、喜んでくれて嬉しいです!! それで、化け物はどっちへ?」
「私達に家の名前を聞いてて……知らないって答えたら、舌打ちしてあっちに走り去っていきました」
家の名前……?
「なんて言ってましたか?」
「そこまでは聞いてなくて……でも、珍しい苗字だったのは覚えてます」
「わかりました! ご協力感謝します!!」
スライガーを飛ばして、追いかける。すると、本当にいた。スコーピオンだ……家の中を覗き込んでいるのか?
「おい、スコーピオン!! 能力を使って、今度は好きな人のストーカーかよ!?」
「……何を言い出すかと思えば。デルタではないか……今ここから走り去るところだ、邪魔をするな」
「注意されたからって、逆ギレかよ? 教えといてやる、ストーカーは犯罪なんだぜ?」
こんなところで戦ったら、迷惑がかかるだろう。そう思って、挑発した。
「さっきからうるさい奴め……違うわ!! 私は情報収集を行っていただけだ!!」
「それをストーカーって言うんだよ、サソリ野郎!!」
「おのれ……来い、相手になってやる!!」
上等だ。そう思って、走るスコーピオンを追いかけ回す。
「ここまで来ればいいか。さぁ、サソリ野郎……決戦と行こうか!!」
「よかろう。あの日の言葉通り……今度こそ、刺し殺してくれるわ!!」
「お前こそ……サソリの黒焼きにしてやる!! 覚悟しておけ!!」
こいつを逃がしたら、どんな被害が出るかわからない。ここで仕留め切る!!
「その減らず口、二度と聞けぬようにしてやる!!」
「うぉっ、と……その針で攻撃するのは変わってないな!!」
「フッ……様子見で全てを見せる程、私もバカな奴ではないのでな!!」
腕から光線が飛んできて、間一髪躱す。そんなこともできるのか……流石は幹部クラス、他とはできることの多彩さも違うな。
「ファイア!!」
『Burst Mode』
「おっと……これならどうだ!?」
撃ち込んだ弾が地面に炸裂した後、頭の尻尾が伸びてきた。無論躱す、パターンが分かってきたぞ。
「甘いな、お返し……ッ!?」
「甘いのは貴様の方だ……」
「ッ、縛られた……!! そんな使い方もあるのかよ!!」
まずいな……このままだと毒をぶち込まれてしまう。奴がゆっくり近づいてくる……
「無様だな!! そのまま死ね!! 致死毒だ、一瞬で昇天させてやる!!!」
「ッ……!!」
「何をしようとも無駄だ、この状態から何が出来る!?」
……そうだ、あの時書いてあった番号……もうひとつ!!
「スリーエイト、ワンフォー!!!」
『Jet Sliger,get into the action.』
「何を言うかと思えば……これで終わりだ、デルタ!!!」
終わりなのは……お前の方だ。
「死ぬ前にひとついいか……? 外にいる時は、車に気をつけろよ」
「は? 何を……ぐふっ!!」
「ナイス、スライガー……!!!」
スライガーが奴に突撃して、拘束を解いてくれた……よし、奴の倒し方を思いついたぞ!! 倒れている奴に近寄り……奴の尻尾の先端を掴んだ。
「馬鹿め……掴む場所を間違えたな!! こいつは伸びるんだ!!!」
「伸びろ、もっと伸びろ……!!!」
「ん……? わ、私の尻尾が!?」
尻尾を街路樹にくくりつけた……これであいつは動けない!!
「これが狙いさ……これでお前は、ご自慢の武器が使えないわけだな!!」
「ふざけるな……!! 私がそれだけで終わると思うなよ!?」
「最大の武器をお前は使ってる……噛まれたらチャンス、刺されたらチャンスだぜ!!!」
奴に向かって、銃口を向けた。奴も負けじと腕を向けてきたが……
「ッ、当たらん……!! 何故だ!?」
「単純明快、練習してないからだよ!!」
「ぐぁぁぁっ!!」
やっと命中した。奴も尻尾が絡まったままなのは気になるのか、何度も引っ張っている……いいぞ、好きなだけ引っ張れ。
「尻尾がないと、やっぱり弱いな!!」
「チィィ……!! おのれぇぇッ!!!」
「……もらったァ!!!」
怒りのままに放たれた、『乱雑』と言う他ない足先。足先についた針で、俺の顔面を突き刺すつもりだったのであろうが……屈んで躱して、鳩尾に一撃。密着したまま踏み込んで、膝を脇腹に突き刺した。奴が横に大きく吹っ飛ぶ……一気に吹っ飛ばされたからか、木が軋む音がしている。もうすぐだな。
「グフッ……!!!」
「その尻尾があれば、違う結果になるかもな!?」
「何を!? 見ていろよ、こんなものすぐに外して……!?」
木がへし折れた。確かに尻尾は戻ってきたな……ただし、先端の針は木に刺さったまま。無論、ただでは済まない。帰ってくる勢いで加速した街路樹が、奴の後頭部に炸裂した。
「がぁっはァ!? バ、バカな……!? まさか、ここまで……」
『Ready』
「計算済みだったってわけさ!! チェック!!!」
奴は動けていない……傷ついた体でのしかかってきた木を持ち上げるのは、怪人といえども難しいようだ。
『Exceed Charge』
「畜生ッ!! うぐぅぅ……!! ガハッ!!」
「だぁぁりゃあぁぁーッ!!!」
地面から俺を見上げるあいつに、ポインターを撃ち込んで……蹴りこんだ。今度こそ、跳ね飛ばせない!!!
「グァァァァーッ!!!」
「……俺の勝ちだな、サソリ野郎」
「社長、申し訳……ありませ……グギャアァァッ!!!」
社長? 会長でも、暁でもなく? 少し疑問を覚えたが、とりあえず勝った。
「死んではないだろうし、連行しないとな……とりあえず、顔の確認だ」
「……」
「は……? 俺!?」
確かに俺だ、どうなってるんだ? そう思っていると、後ろから聞き覚えのある声がした。
「隙あり」
「グフッ!? その声は……天秤野郎!!」
「リブラと呼んで欲しいな、デルタ……こいつはまだ、利用価値がある。これからもよろしく頼むよ、デルタ?」
そうはいくか。そう思って、銃を構える。
「チャージ!!」
『Charge』
「今回はこれ以上、事を荒らげるつもりはないのでね。こいつらに相手をしてもらえ」
また忍者軍団が現れて、俺の道を塞いだ。くそっ……ウザい奴らめ!!!
「邪魔すんじゃねぇ!!」
「……」
「なに!? 煙玉……ごほっ、ごほ!!」
煙玉で目眩しを食らって……視界が晴れると、奴らはもう完全に消えていた。
「くそっ……取り逃したかッ!!」
「……」
「お前らだけでも倒す!! 悪く思うなよ!!」
幸い数は少ない、五人だけだ。一人に銃弾を撃ち込むと、すぐに消えてしまった。弱いな……天秤野郎の戦闘能力がそこまでじゃないからか?
「スマッシュビートォ!!!」
思い切り踏み込んで、顔面をぶん殴っていく。奴らが全員消えたが……痕跡すら残ってねぇ。
「畜生……!! せっかく勝ったのに、これじゃ意味が無いじゃねぇか!!」
とりあえず、スライガーに戻ったが……
「ヤバい、もう交代の時間だ……行かないと!!!」
急いでエンジンを点火し、俺は学園に戻るのだった。
時を同じくして、リブラとスコーピオンが帰還してきた。
「リブラ、ただいま戻りました。指示通り、スコーピオンを回収しましたよ」
「ご苦労だったね……さて、嬉しいニュースがあるよ。ライダーシステムが完成した」
「おぉ……漸くですか!! それで、変身者は……? もしかして、私だったり?」
変身を解いた佐々木が期待を込めてそう言うと、神宮寺が怒りを込めて言った。
「図に乗るなよ、佐々木……貴様如きに任されるわけがないだろう」
「変身者はもう決まっている。そのために……ちゃんと『準備』もしてあるからね……佐々木は医療室に八神を連れて行ってあげなさい」
「はっ、仰せのままに……」
佐々木が行った後……計画が上手くいったことの喜びが、神谷の顔に溢れ出した。
「神谷様。変身者というのは、一体?」
「グヒヒ、そう焦るなよ神宮寺ィ……何のために八神に時間稼ぎをさせたと思う?」
「その書類は……?」
差し出された書類を見て、神宮寺が驚いている。
「ホロライブ学園、前々回バトルロワイヤルの優勝者さ。優勝の常連らしい……ピッタリだと思わんか?」
「なるほど……!! あなた様が言うなら、さぞピッタリな人材でしょう……!!」
「教育役はヴァルゴに任せる。あいつは怠け者だしな……寝ながら口出しするだけなら簡単だ。やる気のない有能は参謀にしろ、ってね……グヒヒヒヒ!!!」
そう言って笑う二人の顔は、どこまでも欲望に満ちている。
「それで……ライダーシステムの名前は?」
「……だよ。それが、書類に書いてあった名前さ」
「そのライダー……必ずや、あなた様の敵に降り注ぐ隕石となることでしょう!!!」
そう言った後……登ってくる朝日の中、二人は眠るまでずっと笑い続けていた。
ライダーシステム、完成。