お待たせしました。
ジェットスライガーのブースター音を聴きながら、俺は街の上空を飛行している。まだ来たことの無い場所まで来てみたが……
「……まぁ、そんな目立つところにはないよな」
サソリ野郎や天秤野郎、乙女座の野郎の気配もしないし、こっちにはいないのだろうか? 人気のないところまで来てみたが、何もない。
「もっと遠くまで行くか、方向転換するか……」
俺が悩んでいると、通信機のランプが点灯した。一破さんからだ。迷わず通話ボタンを押す。
「もしもし、一破さんですか?」
『雪村さん!! 早く戻ってきて、スコーピオンが……!! 学園に!!!』
「なんだって!?」
俺のいないところを狙ったのか? それとも俺をおびき寄せたいのか……どちらにせよ最悪だ、早く行かないと。
『今は百鬼さんが戦っていますが、全く攻撃が通っていません!! 姿も変わっているし……兎も角、百鬼さんは長く持ちませんよ!! 早く戻ってきてください!!!』
「わかってます、今すぐ帰還しますので……一旦切りますね!!」
『お願いしますよ……!!』
切羽詰まった様子だった、大変なことになっているらしい……あやめまで巻き込まれてしまっているようだ。姿が変わっているという情報はよくわからないが……
「行って確かめるしかない!! 死ぬなよ、二人とも!!」
スライガーのエンジンが唸り、凄まじい勢いで火炎が噴射される。学園に向けて、全速力で向かう……着いた時には、もう遅かった。あやめは地面に叩きつけられて血を流しているし、奴は見たことのない姿になっていた。サソリに近い姿だが、如何せんデカい。
「臆病者め。変身できない者が私に立ち向かう? 全く笑わせる……毒を使う価値もないな」
「やめろッ!!」
「邪魔なんだよ、警察」
一破さんも壁に叩きつけられた……許さん。パネルを操作して、フォトンブレイカーを起動した。狙いはサソリ野郎の横っ面……!! 思い切り、レバーを引く。
「うぐぁ……!!」
「踏み潰してやる。死ね、臆病者が」
「やめろぉぉぉーッ!!!」
間一髪、あやめが踏み潰されるところに割り込んだ。奴にスピードを乗せた、スライガーの必殺技が命中したが……奴は後退しただけで、何ともなさそうだ。
「来たな、雪村康太……!! 待っていたぞ!?」
「俺のいない間に、やってくれたな……!! あやめ、一破さん、大丈夫……じゃないよな……ちょっとデカくなったくらいで、俺に勝てると思うなよ!?」
「フン、臆病者と付き合っているデルタなど……恐れるに足らんわ!! 叩き潰してくれる!!!」
あやめも一破さんもボロボロだ、俺がいなかったせいで……!! あやめの近くには、ぺしゃんこになった何かの袋が落ちている……あれは後で確かめるとして……!!
「臆病者はテメェだろ、サソリ野郎……!! その上卑怯ときた、もっとタチが悪いぜ!!」
「その口……二度と利けぬようにしてくれる!!」
「前にも誰かに言われた気がするよ、その言葉!!」
デカい体の尻尾についた、サソリの針。研ぎ澄まされた針が、俺を狙って次々に飛んでくる。地面に命中する度、地面にヒビが入ってゆく……
「大体、何を根拠にあやめを臆病者だと言っている!? お前に立ち向かって、時間を稼いだんだぞ!?」
「おめでたい眼をしている奴だ……そこに落ちている物が見えんのか?」
「あれは……オーガのベルト!?」
こいつ、まさか……
「奴は私に勝つため、袋からあれを取り出したのだが……手が震えて装着すらできぬまま、地面に落としていたよ。何があったのか知らんが、勇気より恐怖が勝るとは、とんだ臆病者だ!!!」
「お前にあやめの何がわかる……!? 俺にだってわからない、あやめがどれだけ怖かったかなんて!! お前はその事実も知らねぇのに……偉そうにべらべらと!!」
「ハッ、臆病者を臆病者と言って何が悪い? 面白そうだったから、変身するチャンスまでくれてやったのに。促しても一向にしないんだ……つまらん奴だよ、鬼神の名が泣くな」
このサソリ野郎……変身を強制しやがったのか。徹底的に追い詰めた上で、自身の娯楽のためだけに……!!!
「こんのクソサソリィィッ!!!」
「弱い犬ほどよく吠える、お前は弱い!! ハッハッハ、私の超新星の前では……全てが無力なのだァ!!!」
「ッ、レーザーも強化されてるのか……!!」
尻尾から極太の赤い光線が、俺を貫こうと飛んでくる。
「そらそらどうしたァ!? 攻撃してみろ、それとも私が強すぎて近づけんか!?」
「チィッ……!!」
「逃げろ逃げろ、その無様な姿を私に見せよ!!」
こいつ、スライガーで突撃されたのにピンピンしてる。生半可な攻撃は通じないぞ……!!
「ファイア!!」
『Burst Mode』
「無駄だ、そんな豆鉄砲が今更私に通用するか!!」
これも効かないか、超大型犬並だな……!!
「だったら……!!」
『Ready』
「チェック!!」
これしかない。そう思って、ルシファーズハンマーを準備した。
『Exceed Charge』
「来いよ」
「だぁりゃあぁぁッ!!!」
奴の上半身にポインターを打ち込んで、飛び上がり……奴に向かって、片足を突き出して突撃する。俺はポインターに吸い込まれて、奴の体を削り取りに行ったのだが……
「フンッ!!」
「ギッ!?」
「な……あれすら、効かないのか……!?」
弾き飛ばされてしまった、その上奴の体はほぼ削れている様子がない……
「一破さん、動かないで……俺が相手をしますから!!」
「ほう。この圧倒的差の前で、まだそんな口が叩けるか」
「当たり前だろ、気持ちで負けたら終わりだ!!」
一回でダメなら二回、二回でダメなら三回……何回でもやってやるさ。そう思って、もう一度構えた……が。
「二度目はないぞ」
「チェッ……グハッ!?」
「デルタムーバーが……!!」
一破さんが取りに行こうとしてくれたが、そこに尻尾が向けられた。
「貴様を消し炭にするくらい朝飯前だ。そこを動くな」
「ッ……!!」
「畜生……この野郎!!」
銃がない以上、仕方がない。俺は奴に肉弾戦を仕掛けるため、地面を蹴り飛ばして接敵した。その場で踏み込み、地面を蹴った勢いで膝を奴の脚に叩き込んだ……
「効かんなぁ……あれだけ効いた攻撃も、今となっては蚊に刺された程にも感じない」
「何だと……!?」
「そら、お返しだ」
咄嗟に飛び退くと、これまでいた場所に奴の太い脚が振り上げられた。食らっていたら、俺は天高く打ち上げられていただろう。諦めずにもう一度接敵する……
「これならどうだッ!! スマッシュビートォ!!」
「……弱い!!」
「ガフッ!!」
奴の脚に対応しきれず、まともに受けた。腹が潰されて血を吐き、大きく吹っ飛ぶ。
「デルタとて超新星の前ではこんなものか、他愛もないな」
「勝った気に、なるな……!!」
「しつこい。勝てんと言っているのがわからんのか?」
それもどこかで言われたことあるな……立ち上がって奴に向かう。諦めるわけにはいかないから……
「まだ勝ってすらないのに、デカい口叩くなよ!! サソリ野郎!!」
「今すぐに勝ってやる、覚悟しろ!!」
「ッ……グギッ!!」
振り下ろされた針を間一髪避けたが、次の瞬間尻尾が鞭のようにしなり、体中の骨を砕いた。ぶっ飛ばされて柱にぶつかる……柱にヒビが入っている、今ので顔面の骨はバラバラだな。鏡を見たところで、今は仮面があるからわからないけど。
「逃がすか、喰らえ!!」
「グ、ゴァ……ガ……アガッ……!!」
「雪村さんっ!!」
倒れた俺に容赦なく、奴の光線が殺到する。光線の雨を躱しきれるわけもなく、体を焼かれる。そのうち一発が俺の体を貫通した、血反吐が止まらない……
「……チッ、まだ死なんのか。ゴキブリか、お前は?」
「へ、へっ……そうだ、って言ったら、どうする?」
「叩き潰すに決まっているだろうが!!!」
本当にゴキブリを叩き潰すかのように、脳天を狙った尻尾が振り下ろされた。どうにか躱したものの、案の定次の打撃に当たって、打ち上げられた。上空に待っていた尻尾に叩き落とされて、地面に埋まる。
「こう、た……さま……?」
「起きたか、臆病者。貴様のヒーローは今死ぬところだ」
「あ、あぁぁ……そんなっ……!!」
どうにか立ち上がった、が……勝ち筋が見えない、超大型犬の時よりも。奴は知能が著しく低かったから倒せたが、頭もいいからタチが悪い。
「あやめ……大丈夫だ、今勝つ、ところだぜ……見てろ!!」
「馬鹿なことを……どこに勝ち筋がある?」
「今から作るんだよ!!」
隣に落ちていたデルタムーバーを、拾い上げる。メモリは装着されたままだ。
「ほう、運がいいな。だが……どうにもならん!!」
「チェック!!」
『Exceed Charge』
運良く、フォトンブラッドの通り道には当たっていない。おかげで準備ができた、だが……それだけでは勝てない。どこに撃ち込むかをよく考えないと……考えている間に、また俺に尻尾が迫っていた。
「死ね!!」
「グ、フッ……」
「康太様!! 無理だよ、逃げて!!」
そうはいくか……!!
「そういう、わけにも……いかないから、な……」
「黙っていろ!!!」
「ゴガッ!?」
脳天から、叩き伏せられた。そのまま、地面に叩きつけられ続ける。
「もうやめてっ!! お願い、死んじゃやだよぉ!! 康太様ぁ!!」
「あいつも言っているぞ、尻尾を巻いて無様に逃げるなら、見逃してやらんでもないが?」
「嫌だ、ね……ギッ!!」
もう一度、叩かれる。義手が外れてしまった、これはもう使えないな……
「もういい、さっさと殺して……待てよ? このままでは面白くないしな。いいことを考えたぞ」
「なに……!?」
「百鬼あやめ。そこに貴様だけが使えるベルトがあるな? それを手に取れ」
オーガのことか? 体を起こして、見る。
「えっ……」
「さぁ、変身しろ。そうすれば、デルタだけは見逃してやろう。デルタに加えてオーガとやらにも勝てば、私の強さは証明され……社長も私を認めるし、ヴァルゴは二度と私にデカい口を利けなくなるッ!!!」
「……!?」
それだけはダメだ。だが、下手に攻撃すれば反撃されて俺は終わり……
「余が、変身すれば、いいの……?」
「その通りさ。さっさとなるんだ、オーガに……帝王の力とやらを、私に見せてみろ!!」
「ダメだ、百鬼さん!! そいつに従うな!!」
一破さんが叫んでくれたが……サソリ野郎は、それを鼻で笑った。
「フン。なら、こいつの命はないが……いいのか?」
「ッ、くそぉぉ……!!」
「余が……変身すれば……」
あやめが、オーガフォンを開いた。
「やめろ、あや……ゴハッ!!!」
「黙っていろ、ゴキブリめ」
「……はぁっ、はぁっ……」
キーを押す音が、やけに鮮明に聞こえる。一回目、二回目……
「どうした、早くしろ。それとも、自分の身が可愛いか?」
「……そんなこと、ないっ……!!」
「畜生……私はまた、何もできずに……!!」
ついに三回目が、押された。
『Standing by』
「ッ、く……!!」
「いいぞ!! 変身しろォ!!」
震える片腕を、確実に折れているもう片方で押さえつけている。酷く痛々しい……
「ふぅぅ、うぅっ……!!」
「さっさとしろ、百鬼あやめ!!」
「へ、変、し……!!!」
あやめは俺を守ろうとしてくれている。でも……それでも、ダメだ。だから……!!
やめろ、あやめぇッ!!!
「……何だとォ?」
「え……!?」
「雪村さん!?」
その場にいる全員の、動きが止まった。
「ごめんな、心配かけて……でも、変身だけはするな。俺が何とかする!! 絶対に、勝ってみせる!!!」
「だ、だけどっ……!! 余が変身しなかったら、康太様は死んじゃうんだよ!?」
「俺は死なないさ、絶対!! 約束しただろ、あの時に!! 死んだら、針千本飲むことになっちまうからな!!!」
奴の方に、向き直る。
「康太様……!! なんでっ!!!」
「決まってる、だろ……俺、は……!! 仮面ライダーデルタだぞ!!! 絶対に負けない、無敵の仮面ライダーで、いなきゃいけないんだぁっ!!!」
「いい加減にしやがれぇっ!! さっきからべらべらと、できもしないことをッ!! もういいッ、貴様の命もここまでだ!! 本当に殺せば、あの臆病者にもわかるだろう!!!」
……ありがたいな。お前が喋っている間に……弱点が、見えたぜ!!
「自分の弱点に気づかないのは、変わってねぇなぁ……クソサソリ!!!」
「くたばれぇぇぇ!!!」
「くたばるのはどっちかな!?」
その場から飛び退いて、太い尻尾の『ある部分』に、ポインターを打ち込んだ。そのまま、片足を折り畳んでもう片方を突き出す。突撃の体勢だ。
「どこに撃っている!?」
「だぁぁりゃあぁぁぁッ!!!」
「そんなもの……!! 私に通用せんと、何故わからん!?」
奴は案の定、避けようともしない。弾けると思ったのだろう……普通ならな。だが!!
「……弾かれない?」
「は、弾き飛ばせんっ……体が削られるッ!? 何故だ!? 私は無敵のはず!!」
「ぶち抜けぇぇぇ!!!」
そのまま、ルシファーズハンマーは奴の尻尾を貫き、引き裂いてみせた。
「ぐぁぁぁぁぁーッ!!! 馬鹿な、そんな馬鹿な……!!! 何故攻撃が通った!?」
「ごほ、ぐふっ……お前が、喋ってる間に……見つけたんだよ、お前の尻尾にある小さな切れ込みをな!! お前がバカにした、あやめの剣は確かに通ってたんだよ……!! 人を馬鹿にしてなけりゃ、こうはならなかったかもな!!!」
「余の、剣……」
あと……二人もな。
「あと業と不知火も、ありがとうな……おかげで、奴は大事な武器が無くなった!!」
「ち、畜生ッ……ホロスコープスともあろうものが!!」
「お前はクビになってるだろ、弱いからクビになったんじゃないのか?」
挑発して、引きつける。
「貴様ァァ……!!!」
「あやめ、お前は変身しなくても強い!! 自信を持て、ライダーにならなくてもいいんだよ!!」
「……!!」
ライダーは、俺だけで構わない。でも、万が一なるとしたら……完全に自分の意思でなきゃならない。それ以外なんて、絶対に認めてたまるか。
「死ね!!」
「死んでたまるかよッ!!!」
「くそっ、当たれぇ……!!」
尻尾がないだけで、格段にやりやすいなぁ……!! 勝ち筋、ようやく見えてきたぜ!!
「……見つけた!! ファイア!!」
『Burst Mode』
「ぐぉぉぁっ!? ま、またか……!?」
よく見ると、あそこにも小さな綻びがある。あれ程小さければ『普通は』誰も気づかないだろう。けど!!
「お前は超新星とやらで体を大きくした……そのせいで傷まで大きくなっちまったのさ!! 誤算だったな!!」
「おのれ、死ね!! 死ねぇぇ!!!」
「そう何度も……当たってたまるか!!」
地面を蹴り飛ばして、跳んで躱しつつ……メモリーをセットする。
『Ready』
「チェック!!」
『Exceed Charge』
狙いは、銃弾で開かせた傷口……!! 俺の友達を臆病者だと罵った報いは受けてもらう!!!
「し、しまっ……」
「喰らえぇぇぇっ!!!」
「グワァァァァーッ!!!」
傷口を抉りながら、ドリルが奴を抉り取るために回転する……攻撃される前に、蹴り飛ばして飛び退いた。
「うらっ!!」
「がぁぁぁぁ……こんなはずが、こんなはずがッ……!!!」
「お前の敗因は一つ……あやめを罵り、見下し、強さを見誤ったことだ!!」
終わりにしてやる。そう思って、胸にまで達した傷口へとポインターを打ち込もうとした、その時。
「……待て!! 思い出したぞ、いいことを教えてやる!! 社長から聞いていたんだ……この状態のゾディアーツはとんでもなく強い代わり、倒されれば街一つ巻き込んで大爆発するとな!!!」
「何だと!?」
「それじゃ倒しようがない……!!」
奴はデカすぎて、スライガーじゃ超上空までは持っていけない。だがこの場で倒せば、街の罪なき人々を全員道連れにされてしまう……!!
「卑怯だぞ……!! 正々堂々と戦え、スコーピオン!!」
「黙れ、臆病者が!! 私はホロスコープスだ、敗北など有り得ん!! 勝つのは私だ、それが絶対の真理だァ!! 勝てば官軍、負ければ賊軍ッ!! どんなことをしても、勝てばいいんだよォ!!! ヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」
「貴様ァ……!!」
自分が倒せないとわかった瞬間、調子に乗り始めた。卑怯すぎる、本当に倒せない相手だ。街一つ吹っ飛ぶんだぞ? どうする、考えろ。どうすればこいつを安全に倒せる? デカすぎて覆い被さるのは無理だし……
「悩め悩め、どうせ無駄なのだからな!!! 自分の無力さをたっぷり噛み締めて……死んでいくがいい!!!」
「……許さない」
「あ?」
あやめが、口を開いた。とても静かに……それでいて憤怒の感じられる口調で……
「余のことはいい。でも、康太様を……余の好きな人を傷つけて、侮辱して、挙句罪のない街の人達まで人質にした……!!! お前だけは、許せない!!!」
「あやめ……?」
「許さなかったら、なんだ? 私を殺すかね? この街の人間も一緒に死ぬけどなぁ、ヒャヒャヒャ……!!!」
あやめが手を開く。皮が剥けて、血塗れになっている手には……しっかりと、オーガフォンが握られていた。
「百鬼さん、何を!?」
「あやめ、大丈夫だ!! 俺一人で……」
「ありがとう、康太様、人間様。でも……余にだって、怒る権利はある……自分の護りたいものを護るために、戦う権利だって平等に、みんなにある!! やらなきゃならないからじゃない、余がやりたいからやるんだ!!!」
あやめがそう叫ぶと同時に、キーの押される音が三回鳴った。聞き慣れた音声が鳴り響く……
『Standing by』
「あやめ……」
「させるものかぁ!!!」
邪魔をさせるわけにはいかない。そう思って、デルタムーバーを構えた。
「ファイア!!」
『Burst Mode』
「ぬぅぅぐっ、邪魔をするな……!!!」
あやめは深呼吸して、サソリ野郎を見据えた。
「私もやらせてもらうぞ、スコーピオン!!」
「畜生、通せっ……!!!」
「二人とも、ありがとう……だから見ててね。余の……」
変身!!!
天高く掲げられたオーガフォンが、ベルトに差し込まれた。そのまま、横に倒される。
『Complete』
「金色の、光……!?」
「あれが……オーガ……」
あやめの姿が、変わった。あの日見た、忌々しい姿と同じだ。だけど……今回は、決定的に違う点がある。
「余は、仮面ライダーオーガ……ただし、みんなを護るために戦う仮面ライダーの、オーガだ!!!」
「大口を叩きやがって……格の違いをわからせてやる!! 死ね、オーガ!!!」
『Ready』
メモリが剣へと差し込まれて、オーガストランザーが長剣へと変化する。鞭のようにしなり、横からあやめに襲いかかった奴の尻尾は……容易く受け流された。
「なに!?」
「ぬぅりゃあ!!」
「グォォォォォ!? わ、私の脚がっ……!!!」
力強い声と共に繰り出された胴が、脚へと傷を入れてサソリ野郎のバランスが崩れた。
「なんてパワーだ、デルタより上か!?」
「今井が最強のライダーだって言ってましたし……絶対デルタより、スペックは上のはずですよ!!!」
「おのれぇぇ、図に乗るなよォ!!!」
尻尾を上から振り下ろし、あやめがそれを受け止めて『引き技』で引きながら、刺突を繰り出した。サソリ野郎の尻尾は容易く貫かれて、真っ二つになった……だが奴は諦めず、あやめを踏み潰そうとした。
「グゥゥ……!! この野郎!!!」
「ッ!?」
「させるかよ!! チェック!!!」
もう飛び上がって、奴に足を突き出している。無論、狙いはその脚だ!!
『Exceed Charge』
「だぁりゃあぁッ!!!」
「グァァァァァ!!! ち、チクショォォッ……!!!」
トドメを刺したいが、どうしたものか……そうだ!!
「あやめ、俺の作戦に乗ってくれないか?」
「いい余!! どうすればいい!?」
「よし……作戦はこうだ!!」
奴がバランスを崩している間に、作戦を伝える。
「了解!! 早速やる余!!!」
「よし……作戦開始だ!!」
「ぬあぁぁっ、こんなことが、こんなことが有り得て、たまるものかぁぁ!!!」
必殺技の構えだ……!!
「チェック!!!」
「これで終わりだ!!!」
『Exceed Charge』
同時にエクシードチャージだ、まずはあやめがオーガストラッシュを奴に当てる……!!!
「ぬぅあっ!? は、離せッ!!!」
「康太様!!!」
「よっしゃあ!!!」
俺がオーガストラッシュの先端に飛び乗って……そのまま、伸ばしてもらう!!! 酸素は大丈夫だ、デルタは三時間分の酸素を溜め込んでるらしいからな!!!
「ぐぁぁぁぁぁッ……!!!」
「成層圏……ここまで来れば……!!!」
「グハッ!? や、やめろ……!!!」
これで終わりだ。そう思いつつ、その場で思いっきり地面を蹴り……片足を突き出して、もう片方を折り畳んでポインターに突撃した。
「だぁぁりゃあぁぁぁーッ!!!!」
「グギャアァァァァーッ!!!!」
「投げる合図は……剣に飛び蹴りをぶち込むこと!!!」
ぶち抜いた勢いのまま、高速で伸び続ける剣に片足で思い切り蹴り込む。剣が大きく揺れて……先端にいたクソサソリが、宇宙に投げ飛ばされた。俺は収縮していく剣に飛び乗り、奴から距離を取る……凄まじい大爆発を尻目に、俺は地上へと戻ってゆく。奴も落下しているのだろうか?
「……地上が見えてきた!!」
地上が近くなったところで、飛び降りた。華麗に着地して、変身を解除する。あやめも変身を解除した……
「あやめ、やったな!!」
「うん……康太様、ごめんね。変身して欲しくないってあれだけ言ってたのに、余は……」
「あやめが謝ることがどこにある!? 謝るとしたら俺だ、変身しなきゃいけない状況にして……ごめん」
逆に謝った。まぁ、当然だけど。
「余が戦いたいから戦ったの。康太様は何も悪くない余!! だけど……これで、余もリスクを背負うことになるんだよね」
「……そうですね。マスコミを通じて、ネットで大々的に広まるでしょう」
「安心しろ。そんなことは俺がさせない!! ライダーの先輩として……俺が面倒見る!!!」
そうだ、俺は先輩なんだ。シャキッとしないとな……
「そっか……だったら、大丈夫だね!!」
「うん!! ……いや待てよ、師匠ってのもありだな……」
「大怪我してるのに、ブレませんね……」
そこが俺の特徴ですから。
「……そういやあやめ、あの袋の中身はオーガギアか?」
「いや……アヤカシ団子っていって、美味しいお団子、だったんだけど……あいつに踏み潰されちゃって……え、康太様!?」
「……美味そうだ、いただきます!!」
大怪我のことなんか忘れて、目の前の美味い物に齧りついた……砂糖とは違う、優しい甘み。これはサツマイモだろうか? こっちはきなこ、こっちはあんこ……飽きない味だ!!!
「ちょ、ちょっと!? それ、踏み潰されてるし……汚い余!!」
「お腹ぶち抜かれてるのに、なんで食べてるんだ!? 正気ですか!?」
「……ごちそうさまでした!! 超美味かったぜ、あやめ!!」
せっかく約束通り持ってきてくれたんだ、食べないと勿体ない。
「もう……今度はまた、違う味のを持ってくるね?」
「ホント!? ありがとう!!」
「全く、滅茶苦茶だな……」
ズガァァァァァン!!!
そう言っていると……突然、凄まじい轟音が響いた。
「な、なんだ!? 隕石か!?」
「あれは……スコーピオンの中身!?」
「女か……とりあえず、逮捕を……」
一破さんが手錠を取り出す前に、ヴァルゴが奴の隣に立った。
「はい、ゲームオーバー……スコアゼロだぜ、クソサソリ」
「た、助けてくれ、ヴァルゴ……!!」
「ゲームオーバーに救済はねぇ。死にな、最下位」
奴の上空に突如、黒い穴が出現し……奴を飲み込んでゆく。
「い、嫌だぁ!! 私は、私は……わぁぁぁぁぁっ!!!」
「処刑完了~……よっ、デルタ。それにオーガ……」
「知ってるの!?」
ヴァルゴは知っているらしいな……
「見ていたのか?」
「まぁ、そんなとこだ。面白くなってきて嬉しいぜぇ、俺は……」
「おい……大事な証人だったのに、何をしてくれる!?」
「ん? お前、どっかで見た面と声だな……誰だっけな……? あ、思い出した!! お前……ん、電話? 出るまでもなく内容がわかる、早く帰ってこいって言うんだろ? わかってますよ~……」
明らかに退屈そうだ、戦いに来たわけじゃないのか?
「俺を殺しに来たんじゃないのか?」
「漁夫の利を得ろってかァ? それじゃスコアが貯まらないんだよ……強いヤツが一番強い時に倒す。そうすれば、スコアがたっくさん手に入る……そういうことだから、万全な時にまた遊ぼうぜ? それじゃ、また会おうな? デルタとオーガ。それに……一破もな?」
「なに……?」
ヴァルゴは一破さんを知ってるのか……?
「人間様、ヴァルゴのこと知ってる?」
「いや、全く……あいつは一体? って、それよりも!! 救急車呼ばないと!!!」
「……あ、そうだった。確かにかなり痛いや……」
自分でも反応が軽すぎる気がする、ついさっきまで痛かったんだけどな。
「軽すぎ!! もっと痛がるでしょ、普通!?」
「痛がった方がいいかな?」
「しなくてよろしい!! とにかく、喋らずにじっと待っていてください!!!」
二人に釘を刺されつつ……俺は救急車に運び込まれて、病院で手術を受けるのだった。何回目かな、これ。そう思いながら、俺は麻酔で眠りにつくのであった……
仮面ライダーオーガ、登場です。
ホロライブラバーズIGT比較実況【暗き魂の主】実績解除ルート
https://syosetu.org/novel/311839/
こちらの作品からカラーコードをお借りしました。Othuyegさん、ありがとうございます。