※この作品はR-18です。

仮面を被った、人間達の英雄譚   作:とも667

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 お待たせしました。


朋・友・有・信

「何がどうなってるの……!?」

 

 目の前の景色が理解できない。もしアニメだったら、余の目には渦巻きマークが浮かんでいるだろう。本当に何が起こっているの? だって、目の前で……

 

「万バズ確定の大ネタだぜぇ!! 死ね、仮面ライダー共!!!」

 

「死ぬのはどっちだろうね!?」

 

「お前に決まってんだろうがァ!!!」

 

 倒したゾディアーツを、味方のはずのメテオが復活させた上……敵のリブラが、メテオの指揮をしている。メテオは敵だった? じゃあ、どうして康太様を助けたの? 何一つわからない……ドラゴンゾディアーツは高揚しながら、メテオに鉄球を投げつけている。乱雑なそれらをメテオは簡単に避けてみせた。

 

「避けてんじゃねぇ!!」

 

「すぐに黙らせてやるッ……!!」

 

『サターン、Leady?』

 

 メテオが腕の道具を操作すると同時に、電子音声が鳴る。

 

『OK! サターン!!』

 

「喰らえっ!!」

 

「そんなものが……俺に通用するか!!」

 

 ドラゴンゾディアーツは、メテオがどこからか出現させて、投げつけたチャクラムのようなものを簡単に弾き飛ばした。

 

「なに……!?」

 

「さっきより硬くなってる……!?」

 

「勝てねぇって言ったろ!? ヒャヒャヒャヒャ!!!」

 

 さっきから余が動いていない理由はひとつ……どっちにも味方できないからだ。メテオと共にドラゴンを倒したところで、今度はメテオが罪のない人に危害を加え出す可能性が高い。だが、ドラゴンを放置しておけば被害が出てしまう……どちらを助けようとも、被害が出るのだ。なら……

 

「余が二人とも倒す!!!」

 

「俺に勝てるとでも!? 身の程を思い知れ!!!」

 

「チッ……敵が増えたか!!」

 

 余に反応して、二人ともこっちを向いた。だが、ドラゴンはメテオと協力したくないようだ……メテオに攻撃している。

 

「死ね、メテオ!!」

 

「バカか!? 今協力しないと、私もお前もやられるんだぞ!!」

 

「知るかよ!! お前を潰してからでも、オーガは殺せるだろうが!!」

 

 先に狙うべきは……やはり、ドラゴンだろう。そう思って、オーガフォンのエンターキーを押す。

 

『Exceed Charge』

 

「喰らえっ!!」

 

「二度も同じ手を食うか!!」

 

 なんと、ドラゴンは鉄球を思い切り光の剣に叩きつけて、折ってしまった。

 

「折られた!? そんな……」

 

「隙ありぃ!!!」

 

「ガハッ!!」

 

 鈍重な衝撃が脳天を襲う。鉄球を叩きつけられたのだ。もう一度、オーガフォンを操作しようとしたが……

 

「やらせるかよ!!」

 

「け、剣が……あがっ!!」

 

「どうだ、視聴者!? 悪人が痛めつけられるのは気持ちいいだろ!? ほら、俺様に金を落とせ!! ヒャーッヒャヒャヒャ!!!」

 

 こいつはお金のためだけに、こんなことを繰り返しているのか……許せない。そう思って、奴を殴りつけたが……

 

「効かねぇっての!!」

 

「ぐふっ!!」

 

『ジュピター、Leady?』

 

 電子音声が聞こえた、メテオが走ってくる……踏み込みと同時に音声が鳴る。

 

『OK! ジュピター!!』

 

「くたばれぇぇっ!!!」

 

「……それだけか、メテオ?」

 

 木星を模しているであろう、メテオの手に出現した玉は……易々と受け止められた。

 

「まだだっ!!!」

 

『マーズ、Leady?』

 

『OK! マーズ!!』

 

 燃え盛る赤い星がメテオの手に出現して、ドラゴンをもう一度殴りつけた。ドラゴンはそれを防御することもなく、顔面に受けたが……

 

「……知らなかったか? 俺の体に火は効かねぇって!!」

 

「なに!?」

 

「そら、返してやるよ!!」

 

 ドラゴンの顔面から炎が移動して、握り拳に蓄積される。それがメテオの顔面に、容赦なく叩きつけられた。炎を纏った拳が炸裂した瞬間、爆裂と共に熱がメテオを焼く。拳の威力だけでなく、自分の技をそのまま返されたメテオは……大きく吹っ飛ばされて壁にめり込んだ。

 

「ぐっ、は……」

 

「ざまぁみやがれ。トドメだ」

 

「……うぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 スイッチが腕の機械に差し込まれて、電子音声がまた鳴る。なにかする気らしい……

 

『LIMIT BREAK!!』

 

「来いよ、食らってやる」

 

『OK!』

 

 メテオの拳に青い光が集まり……壁から脱出したメテオが、一瞬でドラゴンの懐に潜り込んだ。

 

「うらぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「ぐっ!?」

 

「ハァァァァァッ!!!」

 

 青い光と共に、メテオの拳が何度も奴に叩き込まれる。最後の一撃で、ドラゴンが壁に吹っ飛ばされた。

 

「ぐはぁっ!?」

 

「……やったか!?」

 

「よくやった、メテオ。トドメを……ぐぁぁぁぁ!?」

 

 油断していたリブラの横っ面に、鉄球が飛んできた。ということは……

 

「畜生……痛えじゃねぇかよォォ!!!」

 

「そんな、効いてない……!?」

 

「つ、強すぎる……ホロスコープス……否、それ以上か!?」

 

 奴の殴られていた場所に傷がついている……だが傷は極めて浅い。毎回あれでは倒せないだろう。

 

「もう怒った!! お前ら全員ぶち殺してやるっ!!!」

 

「メテオ、ここは何とかしろ!! 私は逃げる!!」

 

「ちょ、ちょっと待て!! 逃げるな、リブラッ!!」

 

 リブラは逃げてしまった……ドラゴンは怒りのままにメテオへと向かっていき……地面へと思い切り叩きつけた。

 

「し、しまっ……ぐぅッ!!!」

 

「くたばるのはテメェの方だぁぁぁ!!!」

 

「……やめろ!!」

 

 殺してはダメだ、余はメテオに康太様を助けてもらった恩がある。それにここでメテオが死んだら、証人がいなくなってしまう。それはまずい……そう思って、止めに入る。

 

『Exceed Charge』

 

「邪魔すんじゃねぇよ、こいつを俺が倒してやろうってのに!!」

 

「その人に余は恩がある……それに、大切な証人だ!! 殺されたらみんな困るんだ余!!!」

 

 だが、やはり通じない。光の剣は容易く受け止められて、鉄球で叩き割られてしまった。

 

「じっとしてろ、雑魚め!!」

 

「がはぁっ!!」

 

「死ね、死ね、メテオ!!」

 

 メテオは殴られ続けている……何とか、何とかしないと。

 

「ぐ、あぎっ、が……ごっ!!」

 

「トドメだ、死にやがれ!!」

 

「死ぬのはお前の方だろ。調子乗ってんじゃねぇぞ……三下が」

 

 冷酷な声。それが響いて、ドラゴンが後ろを振り向く……

 

「あぁん!?」

 

「死ね」

 

「ぐぎゃあぁぁぁっ!?」

 

 黒いエネルギーがドラゴンに叩きつけられて、大きく吹っ飛ぶ。あれは……余の記憶が正しければ、ヴァルゴだったはず。

 

「ヴァルゴ!? なんでここに……」

 

「やれやれ、メテオも宛になんねぇな。こんな三下すら倒せないとは……」

 

「貴様ァ!!!」

 

 ヴァルゴが杖で地面を突くと、ドラゴンが地面に叩き伏せられた。スコーピオンに使ってた、あの力と同じ力だろうか?

 

「お、重い……何が、どうなって……」

 

「お前のところだけ重力を10倍にした。メテオは失えねぇって話だから……回収させてもらうぜ」

 

「待ち、やがれ……!!」

 

 ヴァルゴはドラゴンに唾を吐きつつ、淡々と言った。

 

「誰が待ってやるか、お前を殺しても楽しくなさそうだしな……」

 

「……百鬼さん!! 大丈夫ですか!?」

 

「人間様!? ごめん、やられちゃった……!! いや、そんなことより……リブラとメテオが仲間だったの!!」

 

 人間様が目を剥いた。それを見て、ピンク色の何かが打って変わって機嫌よく話し始める。

 

「よう、一破。また会ったなぁ?」

 

「ヴァルゴ!! お前もメテオの関係者なのか!?」

 

「おっと、勘がいいのは変わりねぇな。バレちゃ仕方がねぇ、そうだ。俺はメテオの……まぁ、参謀ってとこか」

 

 ヴァルゴは、普通の会話のように秘密を話している。それでいいのだろうか。

 

「そんなに秘密を喋っていいの? 消されるんじゃ……」

 

「おいおい、オーガ……俺があいつらなんぞにやられるかよ。利用のし合いってだけさ」

 

「貴様……私のことを知っているような口ぶりだが。誰なんだ? 声には聞き覚えがないぞ」

 

 人間様がそう言うと、ヴァルゴは悲しそうに言い出す。喜怒哀楽の激しいやつだな……

 

「おい一破、お前随分大人しくなったなぁ……一人称、俺だったはずだろ? それに、鉈はどこにやったんだ? まだ服の中にしまってるのか?」

 

「……!? 貴様、なぜそれを……」

 

「やっぱりわかんねぇか、声が変わってるからか……? もういいや、見せてやるよ。俺はな……」

 

 そう言ってヴァルゴが、スイッチに手をかけると……後ろに白い怪人が立ち、爪を振り下ろした。だがヴァルゴは、危なげなく防御して見せた。

 

「いい加減にしろ、ヴァルゴォ……!!!」

 

「中々いい不意打ちだったな、レオ。だけど……俺には遠く及ばない」

 

「なんだと、試してみるか!? ついてこいッ!!!」

 

 レオがどこかに走ってゆく……ヴァルゴは余と人間様に手を振りながら、羽ばたいて浮き上がる。

 

「どうやら喋りすぎたらしいな……オーガに一破、殺し合いはまた今度な。お前はそんなもんじゃねぇだろ? あいつくらい軽く捻ってみせろ、オーガ!! あと一破、それ似合ってねぇぞ!!」

 

「く、くそっ……覚えてやがれ!! このクズ共め!!」

 

「おい、待てっ!! ……チッ、逃げ足の早い奴らだ」

 

 ドラゴンもヴァルゴも逃げてしまった……追いかけようとしたが。

 

「追いかけないと……!!」

 

「無理ですよ。その様子だとドラゴンには勝てなかったようだし、今の百鬼さんではヴァルゴにもドラゴンにもとても勝てません」

 

「……くそっ」

 

 やむなく変身を解く。康太様なら、きっと勝てていただろう。そう思うと、胸がもっと苦しくなった。

 

「気にしないでください。不測の事態が起きすぎたんです……それにしても、メテオまで敵だとは……レオという奴まで出てきたし、敵が多すぎる……」

 

「ヴァルゴのこと、本当に何も知らないの?」

 

「正直言って、皆目見当がつきません。声も聞いたことがないし……それに何故あのことを……?」

 

 そうだ。一番大事なことを聞き忘れていた……

 

「そういえば、康太様は!? 生きてるよね!?」

 

「はい、一命は取り留めたそうです。ですが、デモンズスレートの作用が酷く……しばらくは昏睡状態だと聞いていますね」

 

「起きる見込みはあるんだね……よかった」

 

 今回で思い知ったことは二つ。デルタの力は、いつでも都合のいい時に使える最強の能力なんかじゃなくて、危険かつ命に関わるものであること。そして何より……自分の弱さだ。

 

「百鬼さん、遅れて申し訳ありません。デマの拡散への対処をしていたら、こんな時間に……」

 

「デマ……そうだった!! あいつを放っておくわけにはいかない!!」

 

「落ち着いて。あなたでは『まだ』勝てません……今、警察が奴を追っています。雪村さんが起きたら、何とかしてもらいましょう」

 

 それはダメだ……ダメだけど。

 

「そんなのダメ、だけど……それしかない……」

 

「デルタギア……使用の凍結すら話に上がった程危険なベルトですが、使わないと到底奴らには勝つことができない」

 

「……ここでずっといたって、何にも始まらない。修行してくる」

 

 余は、奴に勝つための新技を考えるため……幽世へと走った。

 

 

 

 ドラゴンゾディアーツは、ホロスコープスをも上回る力を手に入れ、有頂天になっていた……これで大金持ちだと思っていたのに。

 

「畜生、サツが動き始めやがった……余計なことを!! 今度はテメェらを叩いてやるからな!!」

 

 ヴァルゴから逃げつつ、捨て台詞を吐くドラゴン……そんな中、ドラゴンはギースーとして次の動画を考えていた。

 

「さぁ~て……何を言ってやろうか?」

 

 頭の中に色々な候補が浮かんだ……一番伸びて、金が稼げるヤツがいい。今は警察を叩ける都合のよいネタがドラゴンにはなかった。

 

「作ってもいいが……今の状況だと、バレやすそうで怖いな」

 

 最低なことを躊躇せず口にし、人を中傷する最低の男。そんな男は……ネタを探すために、走りながらスマホをいじっていた。ドラゴンは車道に出てしまい、車が急ブレーキを踏んだものの……その甲斐なく、ドラゴンへと衝突してしまった。

 

「……いってぇなぁ、何すんだこの野郎!!」

 

「ふ、吹っ飛ばないっ……!? お前何者……」

 

「おっと、通報すんなよ。したら、すぐに殺せるぞ……こんな風になァ!!!」

 

 ドラゴンは爆発した車から出ている豪炎を吸収して、スマホを手にした人を焼く。

 

「ひぃぃぃっ!!!」

 

「お前らのことは覚えたぜ、スマホを置いていきな!! さもないと殺すぞ!!!」

 

「うっ、うわぁぁぁぁぁ!!!」

 

 全員が走り去って行く中、ドラゴンがスマホを数える。

 

「……一つねぇ!? あいつだな!? 死ね!!」

 

 ドラゴンは火炎弾を命中させて、罪のない市民を丸焦げにしてしまった。

 

「よし……これ全部回収しとこう。俺を褒めるツイートさせないとな……」

 

 ドラゴンは吐き気のするような行為と惨状の中、悠々と歩いてゆく。自分を褒めるツイートをさせていく中で見つけたのは……一件のツイートだった。

 

「ん? このツイート……俺と相互フォローで、熱狂的な信者がいる垢だ。なになに?」

 

『ネクロマンサーって気持ち悪いよな、死体で人形遊びしてるだけだし~www死体操る前にお前が死体になれよwwww』

 

「リツイート2000、いいね18400か……返信もめっちゃついてる……」

 

 目を疑うような誹謗中傷の数々。それを見たドラゴンが、最悪の笑顔を浮かべて言った。

 

 み ぃ つ け た ァ

 

 

 

「……はっ、はっ!!」

 

 一心不乱に剣を振る。ダメだ、こんなのじゃドラゴンを斬ることはできない……どうすればいい? どうすればあいつを、斬ることができる?

 

「悩んでいるようだな」

 

「父上……!?」

 

「剣に迷いがある。それでは斬れる物も斬れんぞ」

 

 今の余には深く刺さる言葉だ……斬らなければならないものが、斬れない……

 

「……斬らなきゃならないものが斬れない。それを斬らないと、いけないのに」

 

「お前は何のためにそれを斬る?」

 

「それは……守りたい人がいるから……」

 

 守るためには斬らないといけない。わかってるんだ。

 

「……揺らめく鬼火のように静かに、それでいて包み込み焼き尽くす獄炎の如く」

 

「それが百鬼流……だよね」

 

「あぁ。焦るなあやめ、一度心を落ち着けろ。お前は、百鬼流の継承者だ……できないとは言わせん」

 

 そうだ。迷いのある剣は何一つ斬れない、忘れていたな。

 

「ありがとうございます、父上!!」

 

 父上はいなくなっている。その代わりに水筒が置かれていた……それの蓋を開けて、一気に流し込む。

 

「……っは、スポーツドリンクだ……」

 

 父上も厳しいけど、やっぱり優しい。そう思って、深呼吸する。

 

「すぅー、はぁー……よし」

 

「……!」

 

「業、不知火……ごめんね、二人もいるんだもん。情けないとこ見せられない余!!」

 

 そう思って、もう一度練習に戻ろうとした時……頭に百鬼流の言葉が過ぎる。二人の方を振り向いて、言う。

 

「そうだ!! 二人とも……手伝ってくれる?」

 

「……!!」

 

「元からそのつもり? ごめんね、気づかなくて……昔、玩具を浮かせて遊んでたのと同じ要領で、こういうことできない?」

 

 そう言って、考えついたことを二人に説明してゆく。言い終わると二人は、体を動かして頷いてくれた。

 

「……!」

 

「やってみるって? じゃあ、予行演習してみよっか! すぅー、はぁー……よし!!」

 

「……!!」

 

 余は考えついた通りに、剣を振ってゆく。その練習が終わると……的は一分足らずで、全てバラバラになっていた。

 

「よしっ!! これなら、いけるかも……!!」

 

「……!」

 

「二人も嬉しいの? ありがとね、こんな余に着いてきてくれて……」

 

 そう言って、スポーツドリンクと共に二人の優しさを飲み干す。あぁ……美味しいな。そう思っていると……

 

「ん、スマホの通知……?」

 

『臨時ニュース ドラゴン・ゾディアーツ主導での誹謗中傷、次の対象はネクロマンサーか』

 

「あいつ……また!!」

 

 これ以上はやらせない。そう思って、立ち上がる……今度は三人で。

 

「行く余、業!! 不知火!!」

 

「……!!」

 

『Standing by』

 

 オーガフォンを持つことも、もう怖くない。だって、余は一人じゃないから。

 

「変身!!」

 

『Complete』

 

「仮面ライダーオーガ、いざ参る!!」

 

 幽世の外へと走り、奴を探す。そうしていると……

 

「百鬼さん!? どうしてここに……」

 

「人間様!! 心配ならいらない余、今の余には……奴を絶対に倒せるだけの力がある!!」

 

「……わかりました。ここは貴方に任せます」

 

 人間様は余を信じて、任せてくれた……裏切れないな。それと……

 

「あと康太様が起きた時、伝言をお願いしたいんだけど……構わない?」

 

「構いませんが……何を伝えれば?」

 

「……って、言っておいて欲しい」

 

 それを聞いて、人間様は少し笑った後……

 

「フッ……なるほど。わかりました……取り消しは無しですよ、百鬼さん」

 

「武士道に二言はない。安心してて余……行ってきます」

 

「……さてと。そろそろ起きる頃だろうし、行っておくかな」

 

 人間様も康太様のところへ行った。余も余に出来ることをしないと……そう思って、奴を探して余は走った。

 

「余は……余にできることをする!!」

 

 

 

「ぐ、ぎっ……」

 

「お目覚めですか、雪村さん。随分寝坊しましたね」

 

「……僕は何日寝てしまってましたか?」

 

 一破さんに尋ねる。どうしてそうなったかよりも……今は、今の状況把握が先決だ。

 

「三日です」

 

「寝すぎたな……今の戦況は?」

 

「簡潔に説明すると……ネット上で誹謗中傷を繰り返していた人間が、ドラゴン・ゾディアーツとなって暴れています。それと……メテオはリブラとヴァルゴの仲間でした」

 

 ……情報が多いが、慣れている。なるほどな。

 

「よくない状況ってわけか……!!」

 

「デルタギアを手に取って、どうするんです? 貴方はデモンズスレートの負荷に耐えきれず、死にかけていたんですよ」

 

「言ってる場合ですか!? そいつを放っておくわけにはいきませんよ!!」

 

 デルタムーバーを手に取って、音声を入力しようとしたところで……一破さんが言う。

 

「百鬼さんが今、そのドラゴンと戦っています」

 

「何だって!? なら、尚更……」

 

「そんな百鬼さんから伝言ですよ。『もし、余を信じてくれるなら、絶対に助けには来ないで』だそうです」

 

 ……あやめが、そんなことを?

 

「そんなことが……?」

 

「私は嘘をつきませんよ。警察ですから……どうします? 助けに行こうが行くまいが、私は止めませんが」

 

「……そうだよな。俺達は友達だし、信じ合う仲間だ。それを先輩が信じなくてどうする」

 

 いつも通り口角を上げて、一破さんに言う。

 

「決めた!! 僕はあやめを助けには行きません!!」

 

「フッ……良い判断だと思いますよ」

 

「僕は僕にできることをする……ちょっと『ランニング』に行ってきます!! 適当に誤魔化しておいてください!!」

 

 そう言って、立ち上がる。デルタギアを腰に巻いて、扉を開けた。

 

「あぁ、散歩ですか。それなら……行ってらっしゃい」

 

「行ってきますっ!!」

 

「……自分のやるべき事を見つけたようだ」

 

 俺のやるべきこと。スマホは確認済みだ、ドラゴンの被害に遭ってるのはこの人たち……!! 急がないと!!

 

「な、なんで……なんで急にっ!!」

 

「ネクロマンサーなんて消えちまえ!!」

 

「この世から排斥しろ!!」

 

 あれは潤羽さんだろうか。確かに、ネクロマンサーである以上は被害に遭うよな……止めよう。そう思って、割り込む。

 

「生身の女性に寄って集って、ナンパだとしても嫌われちまうぜ?」

 

「あぁん!? 誰だお前!?」

 

「女じゃねぇ、ネクロマンサーだろうが!!」

 

 完全に流されて動いてるな。止めるしか無さそうだ。

 

「俺は仮面ライダーデルタだ……デルタギアが欲しいか? 欲しいなら、奪ってみるといい」

 

「なに!? へへっ、チャンス到来だぁ!!」

 

「寄越せぇぇぇ!!!」

 

 来たな……潤羽さんから俺にターゲットが移った。

 

「ゆ、雪村くん!! 避けて!!」

 

「一斉にかかれぇぇっ!!!」

 

「おっと……!!」

 

 100人はいるな……だが。

 

「ライオトルーパーで慣れてんだよ!!」

 

「なに!? うぐぁ!?」

 

「こ、こいつ鉛玉ぶち込んだのに……ぐぎゃ!?」

 

 目の前の奴らを片付けていると、俺そっちのけで潤羽さんを狙い出す人もいた。

 

「死ね!!」

 

「ひっ……!!」

 

「……いってぇなぁ!!」

 

 手を貫かせて、止める。そのまま地面を蹴って、膝を腹部に突き刺した。相手はくの字に曲がって、その場に倒れ込む。

 

「ごぶ、ぇ……」

 

「ひ、ひぃっ……なんて奴だ!!」

 

「まだやるか、お前ら? 俺に勝ったら、こいつをやるぞ?」

 

 尚も余裕な態度を崩さず、デルタギアを振っておく。

 

「……数人逃げたが、まだ残ってるのがいるな」

 

「死ね!!」

 

「嫌だよ!! 潤羽さん、アンタも死にたくないな!?」

 

 声を張り上げて尋ねる。

 

「……うん、るしあは……まだやりたいことが、たくさんあるんだ!!」

 

「だよな、そういうわけだ!!」

 

「ぐはぁ!!」

 

 眉間に一撃叩き込んで、気絶させる。脳震盪で、暫く動けないだろう。最後の奴が銃を撃ってきたが、射線上からは離れてある。右から接近して、踏み込み……握り拳を構えた。

 

「お前で……最後だ!!」

 

「な……げぶっ!?」

 

「ふぅ、これで最後だな……ん?」

 

 後ろに気配を感じて、振り向くと……サバイバルナイフを構えた男が、俺に迫っていた。

 

「デルタギアは俺の物だぁぁぁ!!!」

 

「……ふぁんでっどさんっ!!」

 

「なに!?」

 

 アンデッドが俺を庇ってくれた……その隙を逃さず、脳天へと拳をぶち込む。

 

「ふんっ!!」

 

「がっ!!」

 

「一丁上がり……大丈夫か? 怪我は?」

 

 潤羽さんは俺を心配してくれている……優しいな。

 

「雪村くんこそ、その怪我……!!」

 

「いつものことだから、気にしないでくれ。そんなことより、ネクロマンサーが誹謗中傷に遭ってるんだろ?」

 

「は……はい。なんで急にこんなことに……?」

 

 ドラゴンゾディアーツのせいだと言っても、理解するのに時間がかかるだろう。それよりも今は、これを何とかしないとな。

 

「説明は後だ!! 俺が何とかする……ホロライブ学園に行けば、先生が守ってくれるから安全だぞ!!」

 

「え、雪村くんは……!?」

 

「俺は俺にできることをする!! それと……助けてくれて本当にありがとう、君は俺のヒーローだ!!」

 

 そう言った後に、今度こそムーバーを握りしめて叫ぶ。

 

「変身!!」

 

『Standing by』

 

『Complete』

 

 デルタに変身した後、頭痛が襲ってきたが……気にしている暇は無いので、すぐに番号を入力する。

 

「スリーエイト、ツーワン!!」

 

『Jet Sliger,Come Closer』

 

「……雪村くん!! るしあも……雪村くんみたいに、みんなを守れる人になれますか?」

 

 なれないはずがない。だって……

 

「君もなれるさ!! 事実、さっきは俺を守ってくれたんだから!! その気持ちを忘れるなよ!!」

 

「……はいっ!!」

 

「マスコミが来たら言うといい、デルタを助けてみんなを助けたのは私だってな!!」

 

 そう言いつつ、ジェットスライガーを飛ばす。向かう先は勿論……ネクロマンサーのいる場所、魔界だ。

 

 

 

「……居た!!」

 

「随分と遅い到着だなぁ、オーガ。俺に勝てないから、角捨てて逃げたのかと思ったぜ」

 

「そんなわけないでしょ? 余は勝てるまで諦めない」

 

 ストランザーにメモリを差し込む。奴も、鉄球を握りしめている……街外れの広い空き地、戦うには十分な広さだ。

 

『Ready』

 

「威勢がいいなぁ、俺に敵わなかった癖に」

 

「戦場で油断してると、死ぬ余?」

 

 その鼻っ柱をへし折る。そのために……この技を編み出したんだ。

 

「一つだけ言っといてやる。これは生配信中だ、空中のドローンでな。これさえ成功すれば、俺は大金持ちなんだ……そして、今度の戦いは勝ち戦!! 俺の未来は約束されている!!」

 

「そうかな……やってみなきゃ、わからない余!!」

 

「身の程を思い知らせてやるよォ!! ドラゴンに勝てる生物なんて、この世にいないんだァ!!!」

 

 奴が鉄球を投げて向かってくる。余は……落ち着いてそれを避けた。

 

「なに!?」

 

「百鬼流、花魁炎舞……『屠龍之技』」

 

「剣が……浮いた!?」

 

 余が生み出した、全く新しい技。二人が刀に憑依して余の両隣に浮き上がる……これをやるには、鬼火とかの不定形の妖怪が必要不可欠。妖怪は手懐けているように見えても、お腹が空いたら襲われることもある。だからこそ、思いついても誰もやらなかった。けど……二人と余にはそんなこと、有り得ない!!!

 

「行くぞ、二人とも!!」

 

「調子乗ってんじゃねぇぞ!!!」

 

「ハッ!!」

 

 踏み込み、それからの胴。右足軸で回転しながら、腰から肩にかけてもう一撃……そして、残心。いつもと違うのは……二人が憑依した刀が、余の動きと一緒に奴を斬り裂いていることだ。

 

「グギャッ!? お、俺の体が……何故!? なんで鬼火が吸えない!?」

 

「決まってるでしょ。触ってる時間が短い上に、完璧な角度で差し込まれた刀が相手に触れる面は小さい。だからだよ」

 

「お前の剣で俺の体は斬れないっ、こんなの嘘だ!!」

 

 嘘じゃない。斬れている理由も単純だ……康太様が、ヒントをくれたんだ!!

 

「同じ場所に斬撃を何度も当てていれば、どんなに硬い相手でも切れる。再生力がいくら高くても、一瞬の内に三発喰らったら、絶対斬れる!!」

 

「ぬぅぅっ……こんなことが、有り得てたまるかァ!!」

 

「ハァァッ!!」

 

 地面を蹴りつけて、跳び上がる。空中で体を捻って、落下の速度を乗せたストランザーを、奴に叩きつけた。そこに二人の追撃が入って、奴の装甲がどんどん削られてゆく。

 

「あがぁぁっ、この野郎ッ!!!」

 

「ふんっ!!」

 

「なにぃっ!?」

 

 三人分の剣が鉄球に叩き込まれ、鉄球を真っ二つにする。奴もこれには驚いているようだ。

 

「そこだ!!」

 

「なっ、速い……!!」

 

「セイヤァッ!!」

 

 思い切り踏み込んで、横一文字……二人が続けて切り裂き、余はその間に奴の後ろに回り込み、唐竹を構えた。

 

「グァッ……!! し、しまっ……」

 

「ウォリャアァァッ!!!」

 

「ギャアァァッ!!!」

 

 踏み込みと共に、思い切り振り下ろした三連撃。奴の装甲に、ついにヒビが入った。脳天からヒビが広がってゆく……!!

 

「次で決める……!!」

 

「ち、畜生……なんだ、こんな時にうるさいな!?」

 

「通知音……?」

 

 そいつがスマホを取り出して……驚愕の声を上げた。

 

「なっ……どうして!? どうして俺を叩くコメントしかないんだッ!? 一体何が……まさか!?」

 

「百鬼さん、大丈夫ですか!?」

 

「人間様!! うん、余は大丈夫。あいつの様子が急におかしくなって……」

 

 そう言うと、人間様がスマホを見せてきた。そこには……

 

『仮面ライダーデルタ、ネクロマンサーを取材してみた!!』

 

『どうもー!! みんなご存知の英雄、仮面ライダーデルタでーす!! 今日はネクロマンサーの皆さんを、魔界まで取材に来ました!!』

 

『ネクロマンサーのトモスです、今日はよろしくお願いしますね』

 

 康太様がネクロマンサーを取材している。すごい量のリツイートや、いいねがついている。あいつのツイートなんて、比べ物にならないくらい。

 

『トモスさん、どんな仕事をしているのか見せていただけますか?』

 

『わかりました。こちらへどうぞ』

 

『おぉぉ……!! アンデッドが農作業をしています!!』

 

 アンデッド達が桑を持って、せっせと働いている。

 

『我々は死刑囚などの死体を回収して、必要な場所へと労力を送る仕事をしています。死体なので、休んでいる間も働いてくれますよ!!』

 

『おぉ、すごい!! 人の役に立つ仕事をしてるんですね!!』

 

『はい。私達は汚らしい仕事などしていません、むしろこの仕事に誇りを持っています!! 労力が足りない方は我々、ネクロマンサーにお任せ下さい!!』

 

 余が戦ってる間に、こんなことを……

 

「ば、馬鹿な……!? 奴は昏睡していたはず!?」

 

「それだけではありませんよ?」

 

「これって……潤羽るしあさんだよね?」

 

 そこには、潤羽さんを褒め称える記事が書かれていた。

 

『潤羽るしあ、暴徒から仮面ライダーデルタを救う!!』

 

『もう少しで死ぬところだったところを救われました、命の恩人ですよ!!』

 

「……雪村さんはネクロマンサーの評判を上げるため、デルタという英雄像を使用した。それによって、お前を賞賛していた層に流されていた浮動票が、一気に寝返ることになったわけだ」

 

 奴は事実を認められない様子で、首を横に振っている。

 

「有り得ない……俺は、俺の未来は……!!」

 

「ドラゴン……いや、ギースー。お前に逮捕状が出ている……殺人、誹謗中傷に脅迫……罪は重いぞ。警察の私が決めることではないが……死刑は免れんはずだ!! お前もアンデッドの仲間入りだな!!」

 

「そんな、そんなこと……有り得てたまるかァァ!!!」

 

 鉄球は余に当たらない。全て避けられる……終わりだ!!

 

『Exceed Charge』

 

「……百鬼流、奥義」

 

「ッ……!?」

 

 二人が刀から抜けて、ストランザーに憑依する。金色の剣を二人が包み込み……金色がさらに広がり、鬼神の金棒のような形を取る。

 

「美しい……」

 

「や、やめっ……」

 

「悔い改めよ!!!」

 

鬼 神 焦 熱 斬 !!!

 

 剣が振り下ろされると……奴の体に、凄まじい炎ごとそれが叩きつけられた。燃え盛る爆炎の竜巻がドラゴンを、上空へと押し上げてゆく……

 

「き、吸収しきれなッ……この俺が、燃えてっ……ウギャアァァァーッ!!!」

 

 奴が爆裂して、炎が消滅し……余の所へ戻ってくる。

 

「ふぅ……二人とも、お疲れ様!!」

 

「……」

 

「疲れたよね? 寝てていい余」

 

 そう言うと、二人とも寝てしまった。余も変身を解除して、転がっているスイッチを取る。

 

「あとはよろしくね、人間様」

 

「任せてください……おっと、来たか」

 

「え……!?」

 

 風を切る音が聞こえて、ジェットスライガーが来た。ということは……

 

「終わったみたいだな、あやめ?」

 

「康太様!!」

 

「相変わらず何をするかわからない人ですね、あなたは」

 

 人間様の言葉にピースサインを送りつつ、変身を解く康太様……傷だらけだ。

 

「あ、また何か無茶したの!?」

 

「ちょっぴりな……これから病院行くんだ」

 

「まぁ……それならいい……か? あ、れ……」

 

 ふらついて、立てない。そうか……妖力が空っぽなのか。

 

「あやめ!? 大丈夫か!?」

 

「うん……ちょっと、疲れちゃったみたい……」

 

「激しい戦いでしたからね。当然でしょう」

 

 そう言うと、康太様は……余をおんぶしてくれた。

 

「康太、様……?」

 

「言ったろ、先輩として面倒見るって!!」

 

「……そっか」

 

 暖かい。寝てもいいかな……いいよね。面倒見てくれるんだもの……そう思って、余は眠気に身を任せた。

 

「あ、百鬼さん寝ちゃいましたね。行きましょうか……お医者さんのお説教が待ってますよ」

 

「えー、勘弁してくださいよ……おやすみ、あやめ」

 

「ふふっ……まぁ、今回だけは一緒に弁解してあげてもいいですよ」

 

 そんな会話を聴きながら、余は……大好きな人の背中で眠った。

 

 

 

「……いいな、想像以上だぜ。殺し合う時が楽しみになるな……けど、今はそれより……一破だ!! 待ってろよ一破!? お前の目を覚まさせるのは俺だぜぇ……!!!」

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