強姦描写があります。十分ご注意ください。
カーテンとドアの閉まった、薄暗い部屋。その中で強い光を放つ、モニターが映像を映し出し……それを見て、怒る女が一人。
『ムスカ・ゾディアーツ、中身は小学生だった!?』
『今日の未明、このムスカ・ゾディアーツに変身していた中山 悠馬くんの母親、舞香さんが首を吊って死んでいると通報があり、病院に搬送されましたが、間もなく死亡が確認されました』
『父親の青馬さんは、三日前から行方不明になっており、警察が青馬さんの行方を調べています……それでは次のニュースです』
女の歯軋りが強くなる。ゴミの散乱した机が、思い切り叩かれた。鈍重な音が響き渡り、ゴミが地面に落ちる……
「ふざけるな……ふざけるなぁ!!!」
悪鬼の形相で、ゴミが投げ飛ばされて壁にぶつかる。カップ麺の容器がひしゃげて、汁をぶちまけた。
「こんなことあるはずがない……デルタ様は正義なの!! これは捏造よ、国家がデルタを陥れようとしているのよ!!!」
有り得ない陰謀論を叫んで、デルタを擁護する女……そんな女に、忍び寄る影がひとつ。錫杖が鳴って、女の後ろにリブラが現れた。
「気に入らない情報があるのかね、中田 彩里(なかだ さいり)さん?」
「なっ、お前は……リブラ!?」
「知っているなら、話が早い。会って聞いてみるといいよ、その情報が本当かどうかをな。あとこれは、お守りだ」
そう言って、リブラがスイッチを差し出す。だが女はそれを弾き飛ばした。リブラは弾き飛ばされたそれを、難なくキャッチして、女に向き直る。
「いらない!! それを使ったら、犯罪になるのよ!!」
「ふむ。そうか……いらないというなら、私は帰ろう。もし必要なら、私を呼ぶといい。じゃあな」
「……デルタ様はここにいるのね」
デルタの動向が書かれたメモ。それを握りしめて……女が叫んだ。
「デルタ様から言質を取って、デルタ様が絶対的正義であることを証明するの……!! 待っていてねデルタ様!! あなたを救えるのは私だけ!!」
自信過剰としか言いようのない女が、自信満々で家から飛び出す。その様子を傍から見ていたリブラは、女を鼻で笑った。
「前々から目はつけていた、デルタの狂信者。都合よく適性があったからな……あの疑いよう、真実を知れば……クックック、私の昇進はもうすぐだ!! さて、追いかけねばいかん……見失ったら、ヴァルゴに馬鹿にされかねんからな」
そう呟いて、リブラは女を追った。
あれから、三日。あやめに目立った外傷はなかったので、入院の必要はなかったようだ……俺の怪我も、例によってすぐに治ってしまった。だが……
「……」
「康太様、おはよう!!」
「……あ、あやめか。おはよう」
少し遅れて、返事を返す。仮面ライダーオーガとして学園を守っているので、必然的にあやめもここに住むことになっている。
「……康太様、やっぱり気にしてるの?」
「何のことだ? 最近物忘れが酷くてな、昨日のことも覚えてねぇや。あやめ、俺朝飯食ったっけ?」
「あのことは絶対に康太様のせいじゃない……悪いのは全部、リブラだ」
俺に優しい言葉をかけてくれるあやめ。いつもなら、素直に感謝の気持ちが浮かんでくるはずだが……今日は何故か、罪悪感が増しただけだった。
「ありがとう、あやめ。ちょっと楽になったよ、じゃあ俺走ってくるから」
「待っ……あぁ~、行っちゃった」
「……俺は今、二人の罪のない人間を殺したんだよな」
悠馬くん。そして、それが苦痛で自殺した悠馬くんの母親さん……最後に残った父親さんも行方不明になってしまった。一家離散ってやつだな。その原因は……
「間違いなく、俺だ」
俺は多数と少数を目の前にして……『自分の決断で』子供を殺した。いじめの被害に遭って、そこをリブラにつけ込まれ、挙句の果てには人格を失った子を。
「……これが正義か」
三日前に言ったはずだろう、俺。どちらにしたって、憎まれるのは変わりはなかった。それに、もし殺さずにいて、被害が出たら……あやめも責任を負わされて、非難を浴びることになる。だから……
「いや……言い訳だよな」
あやめも一破さんも関係ない。俺が殺したんだ、大義名分を掲げてな。彼の人生から、全てを奪った……俺のやったことは、財団Xと何も変わりない。
「それでも、俺は戦わなきゃならない」
俺がこんな個人的な理由でボイコットしたら、混乱が起きてしまう。学園長、Aさん、鷹嶺先生……みんなに、大迷惑がかかるだろう。
「もう後戻りはできない、か……」
そう思って走っていると、いつの間にか終わっていた。目の前に学園がある……
「スポーツドリンク……」
寮の冷蔵庫に入れてある、1リットルのペットボトル。コップにそれを注いで……一気に飲み干した。
「あぁ……美味くないな」
罪の無い人を殺して食う飯や水は、全然美味くない。美味い奴の気が知れないな……
「さて、と……そろそろ、あれを使う時間だ。急がないと、パトロールの時間になる」
仕事に私情は持ち込まない。当然のことだ……アンチデモンズスレート、そう書かれた機械から伸びている、ヘルメットを装着する。スタートボタンを押すと……
『電波照射開始』
「……」
『完了しました』
実感が湧かないが……これで収まるようだ。
「おっと、もうこんな時間だ……急げ急げ」
ドアを開けて、スライガーのある場所へ急ぐ。だが、そんな時……女の人の声がした。振り向くと……女の人にこんなことを言うのは嫌だが、みすぼらしい格好の人だ。髪も切っていないみたいだし……
「あの、デルタ様ですよね?」
「え……はい、仮面ライダーデルタですけど……」
「やっぱり!! 大ファンなんです!! サインいただけませんか!? 握手も!!」
握手やサインをまくし立てるように要求してくる女の人……とりあえず、落ち着いてもらわなければ。
「す、すみません! 私はこれからパトロールに行かなくてはならなくて……」
「どうしてしてくれないんですか!? 私はあんなに応援していたのに!!!」
「スライガーの目の前に立たないでくださいよ!!」
座り込んでしまった、してくれない限りどかないってか。くそっ、時間が無い……早めに終わらせよう。
「わかりました! サイン色紙お借りしますね」
「ありがとうございます!! 次は握手を!!」
「はい、握手……これでいいですね、では私は……」
そう言って、今度こそパトロールに行こうとしたら、右腕を掴まれてしまった。まだ何かあるのか?
「待ってください、ニュースの内容について真実を!!」
「……ニュース?」
「あのゾディアーツの中身が小学生だとか、母親がそのせいで自殺したとか……嘘ですよね? デルタ様は正義、そんなことするはずがありません!!! 証拠なんて嘘、国家の陰謀なんですよね!? そうですよねぇ!! 答えてくださいよ!!!」
黙り込んだ俺を見て、女の人がまくし立ててくる……どうする? 真実を言うか、それとも……しばらく悩んだが、決めた。真実を言ってしまおう。失望して、帰ってくれれば楽だし。
「あれは本当ですよ。ニュースの内容に一切、嘘はありません」
「……は?」
「そこをどいてください。パトロールに行きますので」
女の人がそこを動いてくれないと、いつまでも行けない。どうしよう、もう時間は過ぎているのに……!!
「あぁ、わかった!! あなたは学園に脅迫されているんですね!? なんという邪悪な組織!! でも大丈夫、私が潰してあげますからね!! あなたを救うのは私です!!」
「なっ……ちょ、ちょっと!! 待ってくださいよ!!!」
「離して!! あなたを救えるのは私だけなの!!」
この人はさっきから何を言ってるんだ? 握手もサインも、何かとまくし立ててくるし……要求が通らないとわかると、座り込んで仕事の妨害をしたり……答えろと言われて答えても、陰謀論を言い出す。一体何がしたいんだ? そう思って、女の人をどうにか止めていると。
「康太様、どうしたの!?」
「っ、あやめ……!?」
「仮面ライダーオーガ……デルタのパクリに用はないの。帰りなさい」
邪魔な虫を払うかのように、ウザそうな顔であやめを追い払おうとしている。
「この人誰……!?」
「わからない、急に来てまくし立てられた後に……変なこと言ったと思ったら、学園長のところに行こうとし始めて……!!」
「離して、私があなたを救ってあげるのよおおお!!! 学園め、悪質なデマを流しやがってぇ!!!」
あやめもそれを聞いて、明らかに困惑している様子だ。
「デマって何……!?」
「悠馬くんの件が全部デマだって……だから、全部本当のことだって言ってるでしょ!!」
「そんなわけないでしょ!?」
力が弱いので、押さえつけるのは容易だが、もちろん押さえつけている俺も動けない。どうしたものか……
「あなたの気持ちはわかる、でも……本当のことなんです」
「お前の言うことなど誰が聞くものか!!」
「いい加減にしろ!! 本当のことだって、何度言ったらわかるんだ!!! 仕事の邪魔だ、どけ!!!」
焦りと怒りが頂点に達して、怒鳴りつける。それでも女は走るのをやめようとしない。
「あぁ、なんて可哀想!! そんなに強く洗脳されているなんて!!!」
「この……!!」
「どうしたんですか!? 大きな声が聞こえましたが」
一破さんが来てくれた、丁度いい。真実を証明してもらおう……そうでないと、永遠にパトロールに行けないから。
「一破さん! 実は……!!」
「……なるほど。把握しました……すみません、よろしいですか? 警察の者ですが」
「なんですって!?」
ようやく解放されたか、疲れたな……後は一破さんに任せて、パトロールに行こう。
「悠馬くんの件については、本当です。植物人間状態になった悠馬くんも確認されました……情報は以上です、お帰りください」
「……」
「止まったか……よかった」
キッパリと一破さんが言ってくれたな、助かった……今度こそ行くぞ。そう思っていた時……
「……るな」
「は?」
「ふざけるなァァァァ!!!」
真実を知った女は……俺の方へと走ってきた。拳骨を握って、殴る気満々だ。踏み込みが浅く、乱雑な拳……無論避けた。
「お前、何をやっている!?」
「一破さん! 逮捕してください!!」
「わかってます!! おい女、暴行未遂の現行犯で……」
一破さんがそう言って、拳銃を構えた時……後ろに、黒い影が現れた。
「人間様、危ない!!」
「なっ!?」
「防いだか……流石だな、オーガ?」
リブラだ。まさか、この女を尾行していたのか?
「リブラ……!? させるか!!」
「おっと。そう上手くはいかんぞ」
「……!? あやめ、上だ!!」
上から蒼い隕石が降ってきた……間違いない。
「メテオ、お前……!!!」
「……オーガ。アンタの運命は私が決める」
「私が帰るまで頼んだぞ……さて、中田彩里。もう一度聞こう。これは、本当に不要かね?」
そう言われた女が、差し出されたそれを手に取った。ゾディアーツスイッチだ。
「デルタ……アンタには失望したわ。裏切り者め、私が殺してやる」
「フッ、それでいい……メテオ。少し早いが引き上げだ、帰るぞ」
「逃がすか、変身!!」
三度目の正直で、デルタフォンを構える。
『Standing by』
『Complete』
「ファイア!!」
銃を構える、狙いはリブラだ!!
『Burst Mode』
「よそ見をしている暇があるのか?」
「……なっ、その姿は!?」
女はもうゾディアーツに変身していた。体中が真っ黒だ、頭からは二つ黒い鞭のようなものが伸びている。
「かみのけ座か……!?」
「その通り。そいつに相手をしてもらえ、じゃあな」
「じゃあね、オーガ」
リブラとメテオの姿が、一瞬で消えてしまった。ダメだ、もう追えない。
「子供殺しめ……期待を裏切りやがって、許さない!!!」
「許されないのはお前の方だ、覚悟しろ!! 中田!!」
「行きなさい、私のしもべ!!」
奴が髪の毛を千切って投げると……形状が変わって、ゾディアーツの形をとり……ドラゴン・ゾディアーツに変化した。
「なっ……ドラゴン!?」
「これが私の力なのね……!! デルタ、あんなに応援してあげたのに、私の期待を裏切った罰よ!!! 死になさい!!!」
「テメェに期待してくれなんて言った覚えはねぇよ!! 仕事の邪魔だ、帰ってもらう!!!」
帰る先は刑務所だがな。そう思って、銃口を向けた。三発撃ち込んだが……その全てを、ドラゴンが庇った。攻撃が弾かれてしまう……
「なに、効かない!?」
「康太様!! そいつの体は硬い!! 余に任せて!!」
『Ready』
「そうはいくか!!」
奴が髪の毛を伸ばして、それを鞭のように振るっている。あやめを近づかせないつもりか……それなら。
「後ろがお留守だぜ!!」
「なに!? ウガッ!?」
「今だ……!! カァァァッ!!!」
奴の鉄球を斬り裂いて、あやめが空中で体を捻り……落下速度を乗せて、ストランザーを叩きつけた。それと同時に、二人が憑依した刀が青い火の粉と共に追い討ちする……奴は為す術なく、真っ二つになってしまった。
「万策尽きたな、髪の毛野郎!!」
「今のはテストよ!! 行きなさい!!!」
「……なっ!?」
そこに出てきたのは……第三形態の、ムスカ・ゾディアーツだった。悠馬くんの、姿だ。
「遅い!!」
「グッ……!!」
「やめろ!!」
一破さんが俺を殴るムスカを撃ってくれた、だが……奴は本物と同じように、蝿になって躱してくる。
「ダメか……!!」
「それならお前を倒すだけだ!!」
「悠馬くん、私を助けて!!」
わざとらしくそう言って、ムスカが奴を庇う。無論、それに惑わされたりはしない。奴に向かって発砲すると、ムスカにダメージが入った。ここで蝿になられたら自分が喰らうもんな。けど……
『Exceed Charge』
「奥義、鬼神焦熱斬!!!」
「……向かってきた!?」
髪の毛野郎は、剣を振り下ろそうとするあやめに接敵して……あやめの腕を髪の毛で包み、あらぬ方向へ向けさせた。鬼神焦熱斬が、学園の方を向く。
「ッ、まずい……!! 業、不知火!!」
「地面に刺して、被害をゼロにしたか……けど、忘れてないかしら?」
「あやめ、後ろだ!!!」
それを聞いたあやめが、咄嗟に肘鉄を繰り出したが、ムスカは蝿になって躱し……空からエネルギー弾を撃ち込んだ。
「ぐぅ……!!」
「くそっ、卑怯な……!!」
「お前はここで私が殺す!! 覚悟しなさい、裏切り者め!!!」
俺は期待を裏切った裏切り者か……確かに、みんなの応援で成り立っている。感謝してるさ……だが!!
「お前一人の都合で、傷つけられる筋合いはねぇ!!!」
「私一人? 違うわよ、何言ってるの? 私が悠馬くんの代わりに戦ってあげてるのよ」
「なんだと……!? お前に悠馬くんの何がわかる!?」
一破さんが怒りを露にしているが……中田は、それを一笑に付した。ムスカが俺の方を向き、エネルギー弾を乱射してくる……
「わからないの? 悠馬くんはあの世で貴様を恨んでいるのよ。彼も私も、期待していたヒーローに裏切られたのは変わりない……だから、殺す権利は私にある!!」
「悠馬くんの家族でもないのに、何言ってるの!?」
「うるさい!! 私は感謝されるべきことをやっている、みんなの失望を代弁している!!! あんなに、あんなに応援してやったのにィィ!!!」
女はヒステリックに叫びながら、髪の毛の鞭を乱雑に振り回す。学園にもぶつかって、教室や部屋が崩されてゆく。
「なっ……やめろぉ!!」
「悠馬くん、そいつら止めて!!」
「させるかぁ!!!」
あやめが斬りかかる体勢に入ったところに、ムスカが口から粘液を吐き出した。動きが止まってしまったあやめに、無慈悲な中田とムスカの二連撃。
「グ、ゴハッ……!!!」
「百鬼さん!!」
「邪魔するからそうなるのよ。さぁ、デルタ!! 覚悟を決めろ!!!」
どうする。ムスカを倒せないと、こいつはまた学園を盾に、俺達を脅迫するだろう……だけど、あいつは蝿になれる。普通にやってたら、永遠に勝負がつかない……そうだ!!
「覚悟するのは貴様の方だ、反転アンチ野郎!!!」
「構えても無駄よ、悠馬くん!!」
「まぁ、そう来るよな!!」
ムスカを撃って……ダメージが入ると、奴は予想通り蝿になり……反転アンチは、学園を傷つけようとしている。俺がとった行動は……反転アンチを無視して、教室へと走る!!!
「なに!?」
「くそっ、やらせるものか!!」
「悠馬くん、止めといて」
ムスカがあやめと一破さんの前に立ちはだかっているらしい……今すぐ何とかする、少し待っていてくれ!! 俺は自分の教室にあった、ゴミ箱を手に取り……奴らへ走る。走る途中で、奴の鞭を食らったが……俺も、奴の顔にゴミをかけてやった。
「うぎゃっ!? なんてことするのよ、私の顔が……」
「知るか!! 待たせたな、二人とも!!」
「雪村さん、何を!?」
成功しなかったら、万事休すってところだが……やるしかない!! そう思って、俺は……
「チェック!!!」
『Exceed Charge』
「無駄よ!! 避けられるに決まってるじゃない!!」
いつものように飛び上がって、ムスカめがけてポインターを撃ち込んだ……が、それは無論躱されてしまう。だよな!!
「雪村さん、正気ですか!? 隙を晒しただけですよ!!」
「ゴミ箱なんて持って、自分がゴミですって言いたいの? ならお望み通り……生ゴミにしてあげなさい、悠馬くん!! アハハハハハ!!!」
「……黙ってろ!!!」
蝿に変化して、近づいてきたムスカへと……ゴミ箱を投げつける。蝿になっていたムスカは、ゴミ箱の中へと入り……投げた勢いで地面に衝突。意志を察してくれた一破さんが、それを縦にして押さえつけてくれている。
「ムスカが、動かなくなった……?」
「ど、どうして!? 悠馬くん、デルタが憎いでしょ!? 早く出てきなさいよ!! そんなもの破れないわけ……」
「簡単な話さ。こんなに小さいゴミ箱の中で、怪人型に戻れるわけねぇだろ? 蝿のままなら、力は出せない。お前の指示のせいで行動不能だ……残念だったな!!!」
奴を指さして、叫ぶ。上手くいったぞ……!! 奴はまだ余裕そうだ、もう一体呼び出す気か。だが、俺の予想が正しければ……
「そういうことか……本当に、行動の予想がつかない人だな!!」
「調子に乗るな!! 髪の毛を使えば、もう一体出すくらい……え? どうして!?」
「考えてみれば簡単なことだ。そんなに何体も強いのを呼べるなら……失うリスクを冒してまで、まだ未熟なお前を俺に差し向ける理由はない。それをしなかったってことは、期待値はホロスコープスほど高くない。それくらいの制約はあるだろ!!!」
奴は認められないという感じで、拳を握りしめている。
「一破さんはゴミ箱を抑えててください。あやめ、今がチャンスだ!!!」
「言われなくとも!!!」
「グゥゥゥッ、畜生……!! 私だけでも貴様らを殺す位、できるはずだ!!!」
奴は懲りずに、学園へと髪の毛を伸ばしたが……業と不知火がそれを許さない。鞭を弾き飛ばして、切り落として見せた。
「ギャアァァァァ!? 私の髪が……!!」
「散髪代、貰っていくぞ!! チャージ!!」
『Charge』
弾を装填して、奴に光弾を放つ。白い閃光が奴に殺到し、炸裂する……
「ぐわぁぁッ!!!」
「隙あり……!!」
「ッ!?」
大きく踏み込んで、居合の構え。振り抜くと同時に、蒼炎が舞う……同時に三発打ち込まれた剣が、奴の腹を深く傷つけた。
「グガァァァァァ!! く、くそぉぉ……!!」
『Leady』
「チェック!!」
「今度こそ受けてもらう!!」
二人同時に、必殺の構え。確実に仕留める!!
『Exceed Charge』
「や、やめろ……卑怯者が!! 女性を寄ってたかって……生きてて恥ずかしくないのか!? 私を倒してしまえば、私の所属しているコミュニティを敵に回すことにな……ギャッ!?」
「お前みたいな奴にコミュニティの一員を名乗られてるコミュニティの方が可哀想だよ!!」
そう叫んで、ポインターに向かって右足を伸ばし……突撃する。
「必殺!! 鬼神焦熱斬ッ!!!」
「だぁりゃあぁぁッ!!!」
「うぎゃぁぁぁぁーっ!!!」
奴にΔのマークが浮かび上がり……それとほぼ同時に、燃え盛る金色の大剣が叩きつけられた。奴を中心に獄炎が広がった後……爆裂する。
「逃がすか!!」
「ぐぇっ!?」
「逃がさんぞ、中田彩里!! 器物損壊、殺人未遂、及びゾディアーツスイッチの使用の現行犯で、逮捕する!!」
奴に手錠がかけられた。これで解決だ……そう思って俺もあやめも、変身を解いた時。
「ここが彩ちゃんの来てる場所!?」
「デルタ様の居場所よね!?」
「なっ……どうしてこんなに!?」
たくさんの市民が押しかけてくる。何故だ、デモンズスレートはもう無いはず……
「言い忘れてたわね、私はここに来る前……彼らにも、ここに来るように言っておいたの」
「ッ、厄介なことを……落ち着いてください!! 彼女はゾディアーツスイッチを使用し、デルタに襲いかかったんですよ!!」
「彩ちゃん、なんで!?」
そう言われると、奴は突然嘘泣きを始めた。
「ぐすん、こいつは裏切り者なの!! 小学生を殺して、それを何とも思ってないんだって……命よりも、仕事の方が大事だって!! 力が欲しいって思ったら……これをリブラさんがくれて、それで……!!!」
「なんて白々し……っ!? 康太様、避けて!!」
「っ……ギッ!?」
後ろからナイフで刺された。後ろを振り向くと、反転アンチと化した暴徒達が、俺を睨みつけている……まずい。そう思った時には遅く、俺は大量の暴徒に袋叩きにされた。
「この裏切り者ぉぉぉ!!!」
「お前を応援するんじゃなかった!! 投げ銭返せ!!!」
「彩ちゃん、今手錠外すからね!!」
手錠が暴徒の一人に外されて、スイッチが手渡された。一破さんが奴らにやられている……体術で対抗しているが、如何せん数が多すぎるのだ。
「ぐ、うぅ……!!」
「一破さんっ……ご、ガッ!!!」
「やめ……がぁっ!?」
恐らくコミュニティの仲間であろう、男に殴られた。一人何とかしても、どんどん湧いてきてしまう。デモンズスレートの時とは違って、団結力があるせいで厄介だ……奴は逃げてしまった。
「あや、め……!!」
「裏切り者の仲間を殺せ!!!」
「そうだ。どうせなら犯しちまえよ、その方がダメージでかいだろ」
……何だと!?
「なにッ!? やらせるか、この……離せぇぇッ!!!」
「やめ……グゴッ!!!」
「私達の期待を裏切ったお前が悪いのよ!!!」
無茶苦茶な倫理には、無数の肯定が返された。肯定が耳を貫く……布の破ける音が聞こえてくる。止めに行けない……何もできないのか。
「やめろ、やめろ……!! それは余の、お気に入り……!!」
「黙れ!! 恨むなら雪村康太を恨むんだなぁ!!!」
「ゴォ、オ……」
何度も刺されて、血反吐をぶちまける。死ぬのか? こんなところで……あやめの悲鳴と、一破さんの慟哭が聞こえてくる。
「いやぁぁぁっ!! 助けてっ、康太様ぁぁぁぁ!!!」
「助けてくださいって言ってるぞ、デルタ!! まぁ無理だけどな、小学生一人救えない奴が!!! ハッハッハッハッハッハ!!!」
「くそぉぉぉぉッ!! 私は……俺は!!! また、何も……できずにぃ!!!」
内蔵が貫かれている、意識が朦朧とする。布の裂ける音が止んでしまった……あやめが俺に助けを求めてきている。助けにいかなければ、いけないのに……俺は無力なのか……こんな奴らの思い通りになってしまうのか。脳波測定器が、音を立て続けている。頭がすごく痛い……
「嫌だ!! 余は、余の純潔は、康太様の物なのっ!!!」
「黙れ、裏切り者の処刑の余興だよ!!!」
「雪村ァ!! デルタギアを使うんだ、私が許すッ!!! こいつらを……この外道共を、殺せぇぇぇ!!!」
よく聞こえない。何を言っているのか……代わりに、手に力が籠る。拳から血が出ている……こんな、奴らの好きにさせて、たまるか。絶対に、許さない。
殺 し て や る
「ゲェェェアァァァァーッ!!!」
「な……ごげぁ!!!」
「うわぁぁぁぁぁ!! 人殺しっ!!!」
黙れ。人殺しはお前らの方だ……一破さんとあやめを殺そうとし、強姦しようとした。許さん。そう思って、奴らに手をかざす。すると……
「うぎゃあぁぁぁぁ!!!」
「あれは……デモンズスレートの、電撃!?」
「こいつ、刺してるのに……効いてないのか!?」
痛くない。その代わりに、殺意が湧き上がってくる。一人が丸焦げになって、地面に倒れ込んだ。
「死ねぇぇ!!!」
「死ね」
「ゴッ……」
首に拳を叩き込んで、折る。奴らへと、無差別に電撃を繰り出す……これなら届く。手が、届く……やがて数が減り、最後の一人になった頃……
「このっ……化け物めぇぇ!!!」
「……」
「き、効かない……」
銃弾が内蔵を貫いていった。血反吐を吐いた、だからどうした。血反吐なんて、ずっと吐いている……電撃を放たずに握り、そのまま頭を殴りつける。暴徒の頭から湯気が上がって、倒れ込んだ。
「雪村、お前……右眼が……!!」
「……こう、た、さま……ごめんね、余は……触られた、汚された……!!! おぉ、えぇっ……」
「ッ、百鬼さん……くそぉぉっ!! こんな、こんなことあっていいわけがない!!!」
強姦されかけたことにより、あやめは嘔吐している。一破さんは歯軋りをしていて……俺はまた、被害を防げなかった。俺のせいだ……
「……酷い有様だ、早く救急車!!」
「あやめ様、どうしたの!? 何があったの!?」
「が、ぎ……」
一際大きな血だまりを作って、その中に倒れ込んだ。ごめんなさい、乾さん。俺……夢を守れませんでした。
自浄作用がないって、怖くないですか?