「ホロスコープスを……発見しました!!」
「なにっ!?」
「……ふわぁーあ」
リブラのその言葉は正に、青天の霹靂であった。八神だけは興味なさげに欠伸をしているが、社長と神宮寺の驚きと喜びだけでも、重い空気を吹き飛ばすには十分である。
「佐々木、本当なのか!?」
「天秤が嘘をつくとでも? あれは確かに、十二星座の輝きでしたよ」
「それで、どの星座なんだ!?」
神宮寺がまくし立てるように尋ねている。それを見た佐々木が、変身を解除して……社長の目を見て言った。
「今回発見したのは、牡羊座……『アリエス』です」
「羊……? 弱そうだな、喜ぶほどのことか?」
「八神、結論を出すのは早いぞ。カタログの通りなら、アリエスの能力には目を見張るものがあるはず……よくやったぞ、佐々木」
社長も神宮寺も、それから佐々木も。これまでにない程の笑顔を浮かべている……八神も強いという話を聞いて興味が湧いたのか、少しだけ頬が緩んだ。
「へぇ……じゃあ、いつか戦いを挑んでみるかな」
「佐々木。そいつにはもうスイッチを渡したのか?」
「いえ。周りに人間がいたので……ライダーや警察達に囲い込まれることを危惧して、まだ渡してはいません。これから向かいます」
そう言って、またスイッチを押し……佐々木はリブラに変身する。
「急いで行ってこい。失敗は許さんぞ」
「わかっております、では」
「……漸くか、ここまで長かったな。なぁ、神宮寺?」
神宮寺が頷いて、肯定を示す。
「この日をどれだけ待ちわびたことか……!!」
「ヴァルゴ。お前はメテオの指示をしてくれ……覚醒をスムーズに行うには、それが一番だ」
「へいへい……やりゃあいいんだろ? はぁ……」
ヴァルゴがため息をつきながら、自分の部屋へ歩いてゆく。それを見つめながら、神谷が笑う。
「アリエスが見つかったということは、他のホロスコープスもすぐ見つかるだろう……そうなれば」
「えぇ、社長の大願はすぐそこに……!!」
「待っていろよ……『水瓶座』。お前の力を手にした時こそが、私が王となる時だ……!!!」
中田を逮捕して、三日が経過した。マスコミ達の目の前であんなことを言ったので、もちろんアンチは増えているが……直接殴りに来る奴らが多くなった。お陰様で逮捕しやすくて助かる、らしい。
「よし、フォロワーも増えてるな」
俺の人気は下がってる……と思ったが、今は上がってきていた。これは学園長から聞いた話だが……『悪貨は良貨を駆逐する。厄介ファンやアンチのせいで、善良なファンの人々までイメージダウンを受けていたから……その人達や、その人達の仲間が君を支持しているんだろう』ということらしい。
「人気があるのはいいことだ、ギースーや中田のような奴がいつ現れないとも限らんからな」
ギースーの時はデルタファンの皆さんがいなければ、本当に詰んでいた。感謝している……
「さて……今日も頑張ろう」
今日もどこかで、天秤野郎が誰かをゾディアーツへと変えているかもしれない。事前に止められるようにしておかないとな。さて、朝飯を済ませに行くか……
「康太様、おはよう!!」
「あやめ! おはよう、元気そうで何よりだ!」
「今日も一緒に頑張ろうね!!」
そう言って、笑うあやめ……あんな目に遭ったというのに、本当に強いな。そう思いつつ、俺も笑顔を見せておく。
「後輩に応援されちゃったら、やる気出さないとな!! 先輩も頑張るぞー!!」
「それと……いつでも頼ってね? 余はもう仮面ライダーオーガ。余と二人に斬れない物はない!!」
「あぁ、頼りにしてるぜ? オーガ!!」
デルタギアを見せつつ、笑ってそう言う。もう一人で抱え込むことはしない……みんなでやった方が効率いいもんな。
「それならよかった……もし、今度一人で抱え込む様なことがあったら……」
「……あったら?」
「……なんでもない、お腹減っちゃった! 朝ご飯食べに行こうか!!」
そう言って、食堂へ走ってゆくあやめ。俺も、それを追いかけて走る……さっき、あやめの眼が暗く染まったように見えたのは、きっと気の所為だ。
「あやめ、急がなくても飯は逃げないぞ~!!」
その後、朝飯を済ませて食堂を出ると……一破さんが来た。煙草を吸っていたのか、ポケットから箱が顔を出している。
「雪村さん、ちょっとすみません。ゾディアーツのことなのですが」
「大丈夫ですよ、どうしました? もしかして……」
「真実かどうかはわかりませんが、目撃情報が入りました。毎日、同じ場所で目撃されているらしくて」
規則性があるが……被害報告がないってことは、大人しくしてるのか?
「被害はまだ出てないんですよね?」
「えぇ。なので、今のうちにスイッチを没収してしまいたいところです」
「わかりました。あやめにも伝えておいてください!! 僕はその場所に向かいます!!」
そう言って、腰にデルタギアを巻きつけた。口元へとデルタフォンを近づけて、いつも通り叫ぶ。
「変身!!」
『Standing by』
『Complete』
スライガーに乗り込んで、発進の準備をする。今度は邪魔が入る気配はないな……
「あ、それと……お医者さんに言われたこと、守ってくださいよ?」
「覚えてますよ! デモンズスレートの電撃を使うと、脳に負担がかかるから控えろ、ですよね? 善処します!!」
「善処してください……あんまり信用できないな」
そんなことを言われつつ、スライガーを発進させた。空を飛んで、表示されている位置まで飛ばす。
「……ここら辺だな?」
この辺に出現するらしいが……見当たらないな。どこだろう。そう思って、ゾディアーツを探していた時。
「ぐぁぁぁぁっ!!」
「なんだ!?」
「待て……!!」
誰かがやられている? まさか、もう街を襲っていたのか!? まずい、急がないと……!! そう思って、連絡をした後に、悲鳴の方へと走って……俺の目に飛び込んできた光景は。
「お、お前は誰だ……!? どうして俺を襲うんだ!?」
「悪いけど、それを話すわけにはいかないんだよね……ここで倒されてもらうよ」
「メテオ……!? それと、あっちの奴は……ゾディアーツだよな……」
とりあえず、メテオが敵であることはわかっている。さて、どちらから狙うべきか……
「畜生、この力でやりたいことがあるってのに!! 俺は逃げる!!」
「逃がすかっ!!」
「……ファイア!!」
どちらも逃がすわけにはいかない……ゾディアーツを狙おう。ゾディアーツは耳が長く、全体的に白っぽい。うさぎ座ってところか……? 高く跳ぶのがこいつの能力らしいな。
『Burst Mode』
『サターン、Leady?』
「逃がさんぞ!! うさぎ座!!」
奴がビルの上を飛び跳ねながら逃げているので、俺もビルの上に飛び乗って追いかける。
『OK!』
「喰らえ!!」
「ぐぎゃあ!?」
サソリ野郎に投げてた輪っかが、うさぎ座を切り裂いた。そこまで強くないし、まだラストワンではないはずだ……なら、こいつを倒すのは簡単だな。追い討ちで、フォトンブラッドの弾を五発撃ち込んだ。
「こいつも喰らえ!!」
「ぐぁぁぁぁぁ!! 畜生ォォォ!!!」
『Leady』
こいつでトドメだ、そう思ってメモリを差し込もうとした時……輪っかが俺に飛んできた。輪っかは俺を掠めて、空高く飛んでゆく……
「メテオ、邪魔をするな!!」
「こっちのセリフだ、デルタ!!」
「……チェック!!」
メテオはこいつを倒した後に倒して、全部聞き出してやる。奴らのことを洗いざらい吐いてもらおうじゃないか。だが、その前に……
『Exceed Charge』
「この野郎ッ!! ……グゥッ!?」
「だぁりゃあぁぁっ!!!」
ポインターを打ち込み、空中から右足を突き出して、蹴り込む。この動きにも慣れたものだな……うさぎ座を貫通して、後ろから飛び出した。
「グッ、ギ……アァァァァ!!」
「逃げ場はないぞ!! 大人しく捕まれ!!」
「は、離せ!! このっ!!」
後は一破さんにお願いすれば、万事解決だな。さて、こいつはどうするか……そう思っていた時。
「おっと!!」
「ッ、避けられた……!!」
「ファイア!!」
後ろから、メテオが炎を纏った拳を突き出してきていた。確か『マーズ』だっけな……とはいえ、それに気づかない程鈍くない。
『Burst Mode』
「ッ、く……!!」
「これを避けるか、中々やるな!!」
一筋縄ではいかなさそうだ。だが、倒せない相手ではない……メテオと睨み合い、お互いに次の手を考えていると、後ろから殺気を感じる……クソリブラだな? 俺は後ろに肘鉄を繰り出し、奴へ先制攻撃する。
「後ろが甘いな、仮面ライダーデル……ぐふっ!?」
「どこの誰が甘いって……? お前こそ前方不注意だろ、クソリブラ!!」
「ぐぅぅ……早く奴を確保しろ、メテオ!!」
させるわけがない。銃を構えて、メテオに撃ち込む。今度は外さないぞ……!!
「ぐぁぁっ!!」
「何をやっている、メテ……ガハッ!?」
「スマッシュ……ビートォ!!」
リブラの腹を狙って、拳の連撃を叩き込む。六発目でぶっ飛ばして、柵に激突させた。
「ギィ、アガッ……!!」
「クソリブラもメテオも、覚悟しとけよ……ここで逮捕してやる!!」
「……流石に四人目は無理だったようだな、デルタ」
声が聞こえて、俺がうさぎ座の方を振り向くと。また見た目の違う、白いゾディアーツがいた。
「レオ!? 何故ここに……」
「お前がレオ……ライオン野郎か!! 丁度いい、ここでお前も始末してやる!!」
「威勢がいいな。だが、それよりも先に……この無能の代わりに、やらねばならんことがある」
クソリブラにそう言った後、ライオン野郎がうさぎ座へと視線を移し……首筋に爪を向けた。
「ひっ!!」
「生きていたいか。ならば、そのスイッチを押すんだ。もう一度な……それとも、このまま死ぬか!?」
「させるわけねぇだろ!!」
そう叫んで、銃弾を撃ち込んだが……片手で全て叩き落とされてしまった。
「少し大人しくさせておけ、メテオとリブラ」
「ッ……邪魔するな!!」
「私にだって、守りたいものがあるんだよ!! 邪魔を、するなぁ!!」
メテオがそう叫んで押さえつけてくる……リブラは、後ろから羽交い締めにして来ていた。
「くっ、くそぉ……勝手に渡しといて、ふざけんなよ!! お前ら全員、殺してやるっ!!」
『Last One』
「そうはさせるかぁぁ!!」
俺は奴を止めようと撃ったが……レオは弾を弾き落としながら、こちらに近づいてきた。拳と拳がぶつかって、奴の力を身を持って味わう。
「ッ、強い……!!」
「ほう、吹き飛ばないどころか怯みもしないか……中々骨があるようだな」
「骨はしっかりしてるぜ、小魚は好物だからな!!」
軽口を叩けるくらいの余裕はまだある。力はあいつの方が若干上、そこをどう埋めるかだ。
「うぉぉぉぉっ!!」
「変身したか。メテオ、倒せ」
「了解……!!」
メテオが俺を無視して駆けてゆく。これまでで奴らの言う『アタリ』……『ホロスコープス』の候補だったのは、ペルセウス一人だけ。今回も多分外れだろうし、それまで持ちこたえれば……その時、俺の横から、金色の剣が伸びてきた。レオはそれを躱し、飛び退く……
「もう来たか、早いな……」
「オーガか!? くそっ、厄介な奴が増えた……!!」
「仮面ライダーオーガ、参上!! 康太様、怪我はないか!?」
来てくれて助かった……これで二対二だ。
「かっこいい登場だな、あやめ! 俺も今度、真似させてもらうぜ!!」
「軽口を叩くな……ギャア!?」
「二人がいて、私がいないとでも思ったか?」
一破さんがサイガフォンを構えて、ドアから出てきた。そりゃあいるよな。
「これで三対二、逆転だな!!」
「クゥゥ……おいメテオ、さっさと終わらせてしまえ!! この無能が!!」
「無能に無能と言われるのは、メテオも心外だろう」
レオが淡々とそう言って、クソリブラを煽った。
「なんだと!? おのれ、超新星もない癖に……!!」
「まるでお前にはあるような言い草だな、クソリブラ? あるようには見えんがな」
「きっとハッタリだ余、早く倒しちゃお!!」
あやめにそう言われて、構え直す。レオも構え直し、リブラはこちらに錫杖を向けてきている。
「ハッタリ……? 違うな!! 私の超新星は『ラプラスの瞳』!! その者の星座を見通す力……奴は私が選んだ、絶対にハズレではない!!」
「なにっ!? もしそうなら……」
「ッ、危ない!!」
レオの爪を急いで掴んで、止める……だが、後ろから殺気を感じた。クソリブラのものだ。
「死ね!! ……ウグッ!!」
「私は手すきなんだ、忘れるなよ」
「おのれ、人間風情が……!! ホロスコープスに偉そうな口を!!」
クソリブラは大したことないが、何せレオが強い……それが真実だとしたら、ペルセウスの時の例からして、倒させるわけにはいかない。だが……こいつとついでにクソリブラを、同時に突破するのは至難の業だぞ。
「……あやめ、ライオン野郎を頼む。一破さんは、クソリブラを止めてください……お願いできますか?」
「できないと言うとでも?」
「了解!! 任せて!!」
よし……俺はメテオを狙おう。うさぎ座は、今もボコボコにされている。
「そう上手くいくと思うなよ!?」
「姿を消せるのか……だがっ!!」
「ぐわぁぁ!? な、何故……人間如きが!?」
一破さんを舐めてかかったな、クソリブラ。
「人間如き……? 人間を見下すから当たるんだ、犯罪者め!!」
「ナイス、一破さん!!」
「早く行って!!」
頷いて走り出す。無論、ライオン野郎が立ちはだかるが……
「行かせてやると思うか?」
「いいや、押し通る!!」
「高い壁があるなら……余が斬り裂いてみせるッ!!」
俺の後ろからあやめが飛び出し、ストランザーと蒼い炎を纏った刀が叩きつけられた。ライオン野郎はそれを爪で防いだが……
「……私の爪に傷を!? なんという切れ味……」
「よそ見するな、お前の相手は余だ!!」
「ッ、邪魔はさせんぞ!!」
二人とも食い止めてくれている……クソリブラは苦し紛れに、忍者を出しているが……撃たれてすぐに消えてゆく。リブラもレオも大丈夫そうだ、あとは……!!
「ぐぎぃぃ!!」
「もう一発……グッ!?」
「メテオ、喰らうのはお前だぜ! スマッシュ……!!」
二の矢を構える。これで終わりだ、メテオ!!
「ッ……!!」
「ビー……ゴハッ!?」
「ハッハッハ、ざまぁみろ!!」
俺を指さして笑うのは、ウサギ野郎だ。どうやら頭を蹴り付けられたらしい。
「ッ……何故だ!? お前はこのままじゃ……」
「知るかよ、お前だって俺を倒すんだ!! だったら……お前だけでも道連れにしてやる!!」
「くそっ、道連れ狙いかよ……!!」
予想外だ……ここまで痛めつけられても、メテオではなく、俺の方にヘイトを向けるとは。
「ハァァァッ!!」
「そんなもの……カァッ!!」
「私の咆哮を斬り裂くか。まともに相手をしていては、日が暮れてしまう……ならば」
奴が忍者を呼び出した……だが、見た目が違う。赤い髪の奴と、白い髪の奴が一人ずつ。数は少ないが、力は強そうだ。
「こんな奴らで、余は止められな……ッ!?」
「幾らお前でも……二人相手ならば、少々時間がかかるだろう。一破は来れんだろうしな」
「ッ、くそ……!!」
レオがこちらに向かってくる……まずいぞ。三対一、それも一番強いのが来た。その上、一人は倒すと大爆発しかねない。そこで、腕の脳波測定器が警報を出し始めた。
「……何だ、この音は?」
「喰らえ!!」
「ぐっ……なに!?」
ライオン野郎の体を感電させた。ダメージはそこまでじゃないようだが、驚いてはいるようだな。
「デモンズスレートパンチ……これは知らないようだな!!」
「味な真似を……!!」
「そこだ、死ねぇ!!」
ウサギ野郎が跳び上がって、左足を突き出した。銃を構えていないから安全と見たか……
「甘いぞ!!」
「うぐぁっ!?」
「電撃は普通に飛ばすこともできるんだ、覚えとけよ」
この状態は長く持たない、またあの時のようなことになったら、もう一度倒れてしまうことになる。さっさと勝負を決めよう。
「まだ二対一だぞ、デルタ!!」
「ここで倒させてもらう!!」
『ジュピター、Leady?』
奴らが同時に向かってくる。それなら……俺は、ギリギリまで引きつけて……
『OK!』
「潰れろ!!」
「切り裂いてくれるわ!!」
当たる直前で、地面を蹴りつけて跳び上がる。ウサギ野郎は高所からの落下で、痛みに悶え苦しんでいる……あいつらはギリギリで攻撃を止めて、隙ができた。
「あ、危ない……」
「甘い!! 私に遠距離攻撃手段がないとでも!?」
「……甘いのはどっちかな!?」
そう言って、デモンズスレートの雷を両手に出し……二つ合わせた後、地面へと放った。無論、それは躱されたが……雷の音と閃光が、奴らの視界と聴覚を一瞬だけ妨害する。
「ぬっ……!!」
『Leady』
「狙いが甘いぜ、ライオン野郎!! チェック!!」
奴の口から放たれたエネルギーは、俺から少しズレた方向に飛んでゆく。体を捻って避けながら、銃の準備をした。先に片付けるべきはやはりこっちだろう……そう思って俺は、ライオン野郎に銃口を向けた。
『Exceed Charge』
「ぐっ……」
「だぁぁりゃあぁぁぁッ!!!」
右足を突き出して蹴り込む。メテオが俺を狙っているが、遅い。俺はもう、ポインターに入っていた。電撃が迸り、奴を感電させながら削り取る。
「グゥゥゥゥッ……!!」
「うぉぉぉぉぉっ!!!」
「ヌゥゥ……ガァァァァ!!!」
渾身の力で、弾き飛ばされた。少しバランスを崩したが、すぐに持ち直して構える。奴は削られた部分を押さえているが……爪の間から煙が出ている、感電はしてるらしい。
「やるな。だが……今のは効いたはずだ!!」
「お、おのれぇっ……!!」
「ぬぅりゃっ!!」
ライオン野郎が出した二人組が切り裂かれて、銀紙のようになって消える。あそこまで弱ってるんだ……もう呼べないはず。
「流石だね、康太様!!」
「あやめ、お前もな!! そういうことだ、もう勝ち目はないぞ!!」
「……それはどうかな」
ライオン野郎がそう言う。何を根拠に……と言おうとしたところで……一破さんの周りに、忍者が群がっていることに気づいた。
「雪村!! うさぎ座の後ろに……!!」
「はっ……お前!?」
「進化しろ、ラビット!!」
クソリブラがそう言って……奴に錫杖を突き刺した。ボロボロなのに、まだそんな力があったのか。
「ギャアァァァーッ!!!」
「ッ、みんな伏せろ!!」
「……待て、おかしいぞ!!」
爆発しない……これはペルセウスの時の? いや、何か違う。あの時と同じように、スイッチが引き寄せられてゆく……続けて、クソリブラが奴の抜け殻を禍々しい光の中へ放り込むと……違う星座が浮かび上がって、姿が大きく変化した。
「ぐ……こ、これは?」
「君は進化したのだ、ラビット……いや、栄えある六人目のホロスコープス……アリエス・ゾディアーツよ」
「アリエス……牡羊座!? ホロスコープスというのは、やはり本当だったのか……」
自分の姿に戸惑ううさぎ座……あらため、アリエス。進化したとしても、俺のやるべきことは変わりない……スイッチごと叩き壊してやる。
「今回は帰らせてもらおう、私もレオも手負いだからな」
「覚えていろ、デルタ……!!」
「素晴らしい力だ……見てろよデルタ!! すぐにお前を殺してやるからな!!」
「……」
そう言って、奴らの姿が消えた。逃がしてたまるかと追いかけようとしたが……
「待て!! 逃がさな……っ、ぐ……」
「康太様!! 変身解いて、早く!!」
「くそっ、もう時間切れなのかよ……」
デルタフォンを抜き、体から光が消える。戦いが終わると、激しい頭痛に襲われた。
「私の責任ですよ、ごめんなさい。私がリブラを逃がさなければ……」
「気にしないで、ください……僕だって、あれは無理、ですよ……なってしまったものは、仕方ないし……」
「康太様!? 歩けないの!?」
足も腕も動かない……やりすぎたか。後の祭りだな……
「電撃の使いすぎでしょう……私にもわかります。肩を貸しますから、立ってください」
「はい……面目ない」
「気にしなくていい余、仲間でしょ?」
一破さんに肩を貸してもらいながら、俺はとりあえず病院に行くことにした。
あの後、俺は例の装置でデモンズスレートを抑え込んだ後……お医者さんに叱られていた。日に日にあんまり強く言われなくなってきている気がする……
「……はぁ。使うなと言いましたが、あなたのことですから、使いますよね。わかってましたよ」
「もう察されてる……ご迷惑おかけしてます」
「やめろと言ってもできないでしょうし……一つだけ。電撃を使えるようになる状態……『デモンズモード』とでも呼びましょうか。あの状態でいられるのは、多くて二分程度です。それ以上、戦闘を続けると……今度こそ助からないかもしれませんよ」
あの状態に入ったら、戦っていられるのは二分だけ。制限が多くて困るな……
「どんどん制限が増えますね……」
「英雄が死んでいなくなるよりはマシでしょう、世間的にはね」
「まぁ、そうですね」
デモンズスレート。デルタの唯一にして最大の欠点。無理矢理メリットに変えようとしてはいるが、常に命の危険が伴う力であるのは変わりない。
「デルタギアの活動限界は、あなたの体だと戦闘しなければ一時間、戦闘を行うと半分以下にまで落ち込む……といったところです」
「やっぱり不便だな……」
「財団Xがどれだけズルをしているのか、こうして見るとよく分かりますね」
奴らはライダーのデメリットを簡単に無視できるし、変身条件があっても簡単に満たしてくる。
「元々、奴らの戦い方は格闘技に銃どころか、ロケットランチャーを持ち込むようなもの……まともに相手するのが間違いなのかも」
「そう出来れば苦労しない、でしょう?」
「ですねぇ……」
道具に文句を言っても仕方がない……できる限り利用して、奴らを倒すしかないだろう。
「とりあえず、怪我自体は表面の出血と軽い骨折や捻挫だけだったので……回復魔法はかけましたし、雪村さんなら、一日で治るでしょう。お大事に」
「ありがとうございました!」
「また明日も待ってますよ」
そう、苦笑いしながら言われた。本当に申し訳ない。
「とりあえずランニングだな、運動はしないと……あ、その前に」
スマホを開いて、Twitterで火種がないか確認しておく。炎上して、中田の時の繰り返しになってはいけないからな。
『デルタとオーガ 警察と協力して、四人の敵を撤退に追い込んだか』
『有能』
『相変わらずかっこいい』
よし……悪い書き方はされていないようだな。アリエスを逃がしてしまったが……『追い詰めて撤退させた』ので、そこは帳消しになっているようだ。
「レオは大ダメージを負っていたしな……まぁ、嘘ではない」
そう呟きつつ……俺は寮に戻って重りをつけ、日課のランニングを始めた。
時間は少し遡り、ホロスコープスの会議場にて。リブラとレオが、アリエスを連れてきた。
「……こちらがアリエス・ゾディアーツになります」
「ここどこだよ……? アンタ誰だ?」
「よくやった、二人共……そして、はじめまして。私は神谷 冬馬……この会社の社長で、ホロスコープスのボスさ」
レオとリブラが変身を解いて距離を取り、跪いた……アリエスは何が何だかわからず、困惑している。
「ホロスコープスってなんだ? 会社ってなんだよ!? 俺はこれを好きに使える約束のはずだぞ!!」
「あぁ、好きに使っていいとも。私の言うことを聞いてくれればね……デルタやオーガを、私の仲間と共に殺すんだ。君にとっても悪い話では……」
「断る!! お前みたいなジジイの言うことなんざ、誰が聞くかよ!! 奴らは俺だけで殺すんだ、獲物を取るならお前らも殺すぞ!!!」
そう言って、自分の手の中にあった杖を構えるアリエス。社長は余裕を崩さず、後ろの八神へ指示を出した。
「なら、仕方ないな。八神、こいつを少し……」
「……嫌だね。お前の犬になってるこいつらより、余程見込みがありそうだ。泳がせて成長させろ」
「生意気な口をッ!!」
そう言って変身し、向かってきたリブラへ……アリエスの杖が叩きつけられた。先端には筒状の物体がついており、打撃武器となっている……脳天を叩かれて、リブラが怯む。
「ぐぅっ……!? な、なんだ……力が抜け……」
「お? これが俺の力か? オラ、喰らえ!!」
「う、ぐぉぉ……」
杖から放たれるオーラで、リブラは眠ってしまった。生体エネルギーを奪われたのだ。
「中々やるじゃねぇか……」
「おい、社長とライオン!! お前らもこうなりたいか!?」
「……わかったよ。好きにすればいいさ」
アリエスがガッツポーズをして、会議場を飛び出していった。
「じゃ、俺は寝るんで。おやすみ」
「……よかったのですか、社長? あいつを野放しにしても」
「構わんさ。どちらにしても、水瓶座のスイッチを入手するためには、デルタやオーガは障害になる。八神との契約条件の一破さえ残せばいい……こちらの指示を大人しく聞いて協力してくれるのが一番だったが、面倒そうだったからな」
そう言ってアリエスの向かった出口を、恨めしそうに睨む社長。
「奴がやられた場合は……?」
「無論、殺すさ。スイッチはお前に渡す……飽くまで、狙いは水瓶座。忘れるなよ……リブラは部屋に放り込んでおけ」
「はっ!」
神宮寺がリブラを乱雑に載せて、部屋の方へ向かってゆく。それを見ながら、社長はため息をついた。
「……やれやれ。メテオの人質の飯代も馬鹿にならないというのに……いっそ、暗殺してしまうか?」
そう、冷酷に呟きながら……神谷は頬杖をついて、居眠りを始めた。
アリエス・ゾディアーツ。その実力はどれ程か。