※この作品はR-18です。

仮面を被った、人間達の英雄譚   作:とも667

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冠・前・絶・後

「ホロスコープスを……発見しました!!」

 

「なにっ!?」

 

「……ふわぁーあ」

 

 リブラのその言葉は正に、青天の霹靂であった。八神だけは興味なさげに欠伸をしているが、社長と神宮寺の驚きと喜びだけでも、重い空気を吹き飛ばすには十分である。

 

「佐々木、本当なのか!?」

 

「天秤が嘘をつくとでも? あれは確かに、十二星座の輝きでしたよ」

 

「それで、どの星座なんだ!?」

 

 神宮寺がまくし立てるように尋ねている。それを見た佐々木が、変身を解除して……社長の目を見て言った。

 

「今回発見したのは、牡羊座……『アリエス』です」

 

「羊……? 弱そうだな、喜ぶほどのことか?」

 

「八神、結論を出すのは早いぞ。カタログの通りなら、アリエスの能力には目を見張るものがあるはず……よくやったぞ、佐々木」

 

 社長も神宮寺も、それから佐々木も。これまでにない程の笑顔を浮かべている……八神も強いという話を聞いて興味が湧いたのか、少しだけ頬が緩んだ。

 

「へぇ……じゃあ、いつか戦いを挑んでみるかな」

 

「佐々木。そいつにはもうスイッチを渡したのか?」

 

「いえ。周りに人間がいたので……ライダーや警察達に囲い込まれることを危惧して、まだ渡してはいません。これから向かいます」

 

 そう言って、またスイッチを押し……佐々木はリブラに変身する。

 

「急いで行ってこい。失敗は許さんぞ」

 

「わかっております、では」

 

「……漸くか、ここまで長かったな。なぁ、神宮寺?」

 

 神宮寺が頷いて、肯定を示す。

 

「この日をどれだけ待ちわびたことか……!!」

 

「ヴァルゴ。お前はメテオの指示をしてくれ……覚醒をスムーズに行うには、それが一番だ」

 

「へいへい……やりゃあいいんだろ? はぁ……」

 

 ヴァルゴがため息をつきながら、自分の部屋へ歩いてゆく。それを見つめながら、神谷が笑う。

 

「アリエスが見つかったということは、他のホロスコープスもすぐ見つかるだろう……そうなれば」

 

「えぇ、社長の大願はすぐそこに……!!」

 

「待っていろよ……『水瓶座』。お前の力を手にした時こそが、私が王となる時だ……!!!」

 

 

 

 中田を逮捕して、三日が経過した。マスコミ達の目の前であんなことを言ったので、もちろんアンチは増えているが……直接殴りに来る奴らが多くなった。お陰様で逮捕しやすくて助かる、らしい。

 

「よし、フォロワーも増えてるな」

 

 俺の人気は下がってる……と思ったが、今は上がってきていた。これは学園長から聞いた話だが……『悪貨は良貨を駆逐する。厄介ファンやアンチのせいで、善良なファンの人々までイメージダウンを受けていたから……その人達や、その人達の仲間が君を支持しているんだろう』ということらしい。

 

「人気があるのはいいことだ、ギースーや中田のような奴がいつ現れないとも限らんからな」

 

 ギースーの時はデルタファンの皆さんがいなければ、本当に詰んでいた。感謝している……

 

「さて……今日も頑張ろう」

 

 今日もどこかで、天秤野郎が誰かをゾディアーツへと変えているかもしれない。事前に止められるようにしておかないとな。さて、朝飯を済ませに行くか……

 

「康太様、おはよう!!」

 

「あやめ! おはよう、元気そうで何よりだ!」

 

「今日も一緒に頑張ろうね!!」

 

 そう言って、笑うあやめ……あんな目に遭ったというのに、本当に強いな。そう思いつつ、俺も笑顔を見せておく。

 

「後輩に応援されちゃったら、やる気出さないとな!! 先輩も頑張るぞー!!」

 

「それと……いつでも頼ってね? 余はもう仮面ライダーオーガ。余と二人に斬れない物はない!!」

 

「あぁ、頼りにしてるぜ? オーガ!!」

 

 デルタギアを見せつつ、笑ってそう言う。もう一人で抱え込むことはしない……みんなでやった方が効率いいもんな。

 

「それならよかった……もし、今度一人で抱え込む様なことがあったら……」

 

「……あったら?」

 

「……なんでもない、お腹減っちゃった! 朝ご飯食べに行こうか!!」

 

 そう言って、食堂へ走ってゆくあやめ。俺も、それを追いかけて走る……さっき、あやめの眼が暗く染まったように見えたのは、きっと気の所為だ。

 

「あやめ、急がなくても飯は逃げないぞ~!!」

 

 

 

 その後、朝飯を済ませて食堂を出ると……一破さんが来た。煙草を吸っていたのか、ポケットから箱が顔を出している。

 

「雪村さん、ちょっとすみません。ゾディアーツのことなのですが」

 

「大丈夫ですよ、どうしました? もしかして……」

 

「真実かどうかはわかりませんが、目撃情報が入りました。毎日、同じ場所で目撃されているらしくて」

 

 規則性があるが……被害報告がないってことは、大人しくしてるのか?

 

「被害はまだ出てないんですよね?」

 

「えぇ。なので、今のうちにスイッチを没収してしまいたいところです」

 

「わかりました。あやめにも伝えておいてください!! 僕はその場所に向かいます!!」

 

 そう言って、腰にデルタギアを巻きつけた。口元へとデルタフォンを近づけて、いつも通り叫ぶ。

 

「変身!!」

 

『Standing by』

 

『Complete』

 

 スライガーに乗り込んで、発進の準備をする。今度は邪魔が入る気配はないな……

 

「あ、それと……お医者さんに言われたこと、守ってくださいよ?」

 

「覚えてますよ! デモンズスレートの電撃を使うと、脳に負担がかかるから控えろ、ですよね? 善処します!!」

 

「善処してください……あんまり信用できないな」

 

 そんなことを言われつつ、スライガーを発進させた。空を飛んで、表示されている位置まで飛ばす。

 

「……ここら辺だな?」

 

 この辺に出現するらしいが……見当たらないな。どこだろう。そう思って、ゾディアーツを探していた時。

 

「ぐぁぁぁぁっ!!」

 

「なんだ!?」

 

「待て……!!」

 

 誰かがやられている? まさか、もう街を襲っていたのか!? まずい、急がないと……!! そう思って、連絡をした後に、悲鳴の方へと走って……俺の目に飛び込んできた光景は。

 

「お、お前は誰だ……!? どうして俺を襲うんだ!?」

 

「悪いけど、それを話すわけにはいかないんだよね……ここで倒されてもらうよ」

 

「メテオ……!? それと、あっちの奴は……ゾディアーツだよな……」

 

 とりあえず、メテオが敵であることはわかっている。さて、どちらから狙うべきか……

 

「畜生、この力でやりたいことがあるってのに!! 俺は逃げる!!」

 

「逃がすかっ!!」

 

「……ファイア!!」

 

 どちらも逃がすわけにはいかない……ゾディアーツを狙おう。ゾディアーツは耳が長く、全体的に白っぽい。うさぎ座ってところか……? 高く跳ぶのがこいつの能力らしいな。

 

『Burst Mode』

 

『サターン、Leady?』

 

「逃がさんぞ!! うさぎ座!!」

 

 奴がビルの上を飛び跳ねながら逃げているので、俺もビルの上に飛び乗って追いかける。

 

『OK!』

 

「喰らえ!!」

 

「ぐぎゃあ!?」

 

 サソリ野郎に投げてた輪っかが、うさぎ座を切り裂いた。そこまで強くないし、まだラストワンではないはずだ……なら、こいつを倒すのは簡単だな。追い討ちで、フォトンブラッドの弾を五発撃ち込んだ。

 

「こいつも喰らえ!!」

 

「ぐぁぁぁぁぁ!! 畜生ォォォ!!!」

 

『Leady』

 

 こいつでトドメだ、そう思ってメモリを差し込もうとした時……輪っかが俺に飛んできた。輪っかは俺を掠めて、空高く飛んでゆく……

 

「メテオ、邪魔をするな!!」

 

「こっちのセリフだ、デルタ!!」

 

「……チェック!!」

 

 メテオはこいつを倒した後に倒して、全部聞き出してやる。奴らのことを洗いざらい吐いてもらおうじゃないか。だが、その前に……

 

『Exceed Charge』

 

「この野郎ッ!! ……グゥッ!?」

 

「だぁりゃあぁぁっ!!!」

 

 ポインターを打ち込み、空中から右足を突き出して、蹴り込む。この動きにも慣れたものだな……うさぎ座を貫通して、後ろから飛び出した。

 

「グッ、ギ……アァァァァ!!」

 

「逃げ場はないぞ!! 大人しく捕まれ!!」

 

「は、離せ!! このっ!!」

 

 後は一破さんにお願いすれば、万事解決だな。さて、こいつはどうするか……そう思っていた時。

 

「おっと!!」

 

「ッ、避けられた……!!」

 

「ファイア!!」

 

 後ろから、メテオが炎を纏った拳を突き出してきていた。確か『マーズ』だっけな……とはいえ、それに気づかない程鈍くない。

 

『Burst Mode』

 

「ッ、く……!!」

 

「これを避けるか、中々やるな!!」

 

 一筋縄ではいかなさそうだ。だが、倒せない相手ではない……メテオと睨み合い、お互いに次の手を考えていると、後ろから殺気を感じる……クソリブラだな? 俺は後ろに肘鉄を繰り出し、奴へ先制攻撃する。

 

「後ろが甘いな、仮面ライダーデル……ぐふっ!?」

 

「どこの誰が甘いって……? お前こそ前方不注意だろ、クソリブラ!!」

 

「ぐぅぅ……早く奴を確保しろ、メテオ!!」

 

 させるわけがない。銃を構えて、メテオに撃ち込む。今度は外さないぞ……!!

 

「ぐぁぁっ!!」

 

「何をやっている、メテ……ガハッ!?」

 

「スマッシュ……ビートォ!!」

 

 リブラの腹を狙って、拳の連撃を叩き込む。六発目でぶっ飛ばして、柵に激突させた。

 

「ギィ、アガッ……!!」

 

「クソリブラもメテオも、覚悟しとけよ……ここで逮捕してやる!!」

 

「……流石に四人目は無理だったようだな、デルタ」

 

 声が聞こえて、俺がうさぎ座の方を振り向くと。また見た目の違う、白いゾディアーツがいた。

 

「レオ!? 何故ここに……」

 

「お前がレオ……ライオン野郎か!! 丁度いい、ここでお前も始末してやる!!」

 

「威勢がいいな。だが、それよりも先に……この無能の代わりに、やらねばならんことがある」

 

 クソリブラにそう言った後、ライオン野郎がうさぎ座へと視線を移し……首筋に爪を向けた。

 

「ひっ!!」

 

「生きていたいか。ならば、そのスイッチを押すんだ。もう一度な……それとも、このまま死ぬか!?」

 

「させるわけねぇだろ!!」

 

 そう叫んで、銃弾を撃ち込んだが……片手で全て叩き落とされてしまった。

 

「少し大人しくさせておけ、メテオとリブラ」

 

「ッ……邪魔するな!!」

 

「私にだって、守りたいものがあるんだよ!! 邪魔を、するなぁ!!」

 

 メテオがそう叫んで押さえつけてくる……リブラは、後ろから羽交い締めにして来ていた。

 

「くっ、くそぉ……勝手に渡しといて、ふざけんなよ!! お前ら全員、殺してやるっ!!」

 

『Last One』

 

「そうはさせるかぁぁ!!」

 

 俺は奴を止めようと撃ったが……レオは弾を弾き落としながら、こちらに近づいてきた。拳と拳がぶつかって、奴の力を身を持って味わう。

 

「ッ、強い……!!」

 

「ほう、吹き飛ばないどころか怯みもしないか……中々骨があるようだな」

 

「骨はしっかりしてるぜ、小魚は好物だからな!!」

 

 軽口を叩けるくらいの余裕はまだある。力はあいつの方が若干上、そこをどう埋めるかだ。

 

「うぉぉぉぉっ!!」

 

「変身したか。メテオ、倒せ」

 

「了解……!!」

 

 メテオが俺を無視して駆けてゆく。これまでで奴らの言う『アタリ』……『ホロスコープス』の候補だったのは、ペルセウス一人だけ。今回も多分外れだろうし、それまで持ちこたえれば……その時、俺の横から、金色の剣が伸びてきた。レオはそれを躱し、飛び退く……

 

「もう来たか、早いな……」

 

「オーガか!? くそっ、厄介な奴が増えた……!!」

 

「仮面ライダーオーガ、参上!! 康太様、怪我はないか!?」

 

 来てくれて助かった……これで二対二だ。

 

「かっこいい登場だな、あやめ! 俺も今度、真似させてもらうぜ!!」

 

「軽口を叩くな……ギャア!?」

 

「二人がいて、私がいないとでも思ったか?」

 

 一破さんがサイガフォンを構えて、ドアから出てきた。そりゃあいるよな。

 

「これで三対二、逆転だな!!」

 

「クゥゥ……おいメテオ、さっさと終わらせてしまえ!! この無能が!!」

 

「無能に無能と言われるのは、メテオも心外だろう」

 

 レオが淡々とそう言って、クソリブラを煽った。

 

「なんだと!? おのれ、超新星もない癖に……!!」

 

「まるでお前にはあるような言い草だな、クソリブラ? あるようには見えんがな」

 

「きっとハッタリだ余、早く倒しちゃお!!」

 

 あやめにそう言われて、構え直す。レオも構え直し、リブラはこちらに錫杖を向けてきている。

 

「ハッタリ……? 違うな!! 私の超新星は『ラプラスの瞳』!! その者の星座を見通す力……奴は私が選んだ、絶対にハズレではない!!」

 

「なにっ!? もしそうなら……」

 

「ッ、危ない!!」

 

 レオの爪を急いで掴んで、止める……だが、後ろから殺気を感じた。クソリブラのものだ。

 

「死ね!! ……ウグッ!!」

 

「私は手すきなんだ、忘れるなよ」

 

「おのれ、人間風情が……!! ホロスコープスに偉そうな口を!!」

 

 クソリブラは大したことないが、何せレオが強い……それが真実だとしたら、ペルセウスの時の例からして、倒させるわけにはいかない。だが……こいつとついでにクソリブラを、同時に突破するのは至難の業だぞ。

 

「……あやめ、ライオン野郎を頼む。一破さんは、クソリブラを止めてください……お願いできますか?」

 

「できないと言うとでも?」

 

「了解!! 任せて!!」

 

 よし……俺はメテオを狙おう。うさぎ座は、今もボコボコにされている。

 

「そう上手くいくと思うなよ!?」

 

「姿を消せるのか……だがっ!!」

 

「ぐわぁぁ!? な、何故……人間如きが!?」

 

 一破さんを舐めてかかったな、クソリブラ。

 

「人間如き……? 人間を見下すから当たるんだ、犯罪者め!!」

 

「ナイス、一破さん!!」

 

「早く行って!!」

 

 頷いて走り出す。無論、ライオン野郎が立ちはだかるが……

 

「行かせてやると思うか?」

 

「いいや、押し通る!!」

 

「高い壁があるなら……余が斬り裂いてみせるッ!!」

 

 俺の後ろからあやめが飛び出し、ストランザーと蒼い炎を纏った刀が叩きつけられた。ライオン野郎はそれを爪で防いだが……

 

「……私の爪に傷を!? なんという切れ味……」

 

「よそ見するな、お前の相手は余だ!!」

 

「ッ、邪魔はさせんぞ!!」

 

 二人とも食い止めてくれている……クソリブラは苦し紛れに、忍者を出しているが……撃たれてすぐに消えてゆく。リブラもレオも大丈夫そうだ、あとは……!!

 

「ぐぎぃぃ!!」

 

「もう一発……グッ!?」

 

「メテオ、喰らうのはお前だぜ! スマッシュ……!!」

 

 二の矢を構える。これで終わりだ、メテオ!!

 

「ッ……!!」

 

「ビー……ゴハッ!?」

 

「ハッハッハ、ざまぁみろ!!」

 

 俺を指さして笑うのは、ウサギ野郎だ。どうやら頭を蹴り付けられたらしい。

 

「ッ……何故だ!? お前はこのままじゃ……」

 

「知るかよ、お前だって俺を倒すんだ!! だったら……お前だけでも道連れにしてやる!!」

 

「くそっ、道連れ狙いかよ……!!」

 

 予想外だ……ここまで痛めつけられても、メテオではなく、俺の方にヘイトを向けるとは。

 

「ハァァァッ!!」

 

「そんなもの……カァッ!!」

 

「私の咆哮を斬り裂くか。まともに相手をしていては、日が暮れてしまう……ならば」

 

 奴が忍者を呼び出した……だが、見た目が違う。赤い髪の奴と、白い髪の奴が一人ずつ。数は少ないが、力は強そうだ。

 

「こんな奴らで、余は止められな……ッ!?」

 

「幾らお前でも……二人相手ならば、少々時間がかかるだろう。一破は来れんだろうしな」

 

「ッ、くそ……!!」

 

 レオがこちらに向かってくる……まずいぞ。三対一、それも一番強いのが来た。その上、一人は倒すと大爆発しかねない。そこで、腕の脳波測定器が警報を出し始めた。

 

「……何だ、この音は?」

 

「喰らえ!!」

 

「ぐっ……なに!?」

 

 ライオン野郎の体を感電させた。ダメージはそこまでじゃないようだが、驚いてはいるようだな。

 

「デモンズスレートパンチ……これは知らないようだな!!」

 

「味な真似を……!!」

 

「そこだ、死ねぇ!!」

 

 ウサギ野郎が跳び上がって、左足を突き出した。銃を構えていないから安全と見たか……

 

「甘いぞ!!」

 

「うぐぁっ!?」

 

「電撃は普通に飛ばすこともできるんだ、覚えとけよ」

 

 この状態は長く持たない、またあの時のようなことになったら、もう一度倒れてしまうことになる。さっさと勝負を決めよう。

 

「まだ二対一だぞ、デルタ!!」

 

「ここで倒させてもらう!!」

 

『ジュピター、Leady?』

 

 奴らが同時に向かってくる。それなら……俺は、ギリギリまで引きつけて……

 

『OK!』

 

「潰れろ!!」

 

「切り裂いてくれるわ!!」

 

 当たる直前で、地面を蹴りつけて跳び上がる。ウサギ野郎は高所からの落下で、痛みに悶え苦しんでいる……あいつらはギリギリで攻撃を止めて、隙ができた。

 

「あ、危ない……」

 

「甘い!! 私に遠距離攻撃手段がないとでも!?」

 

「……甘いのはどっちかな!?」

 

 そう言って、デモンズスレートの雷を両手に出し……二つ合わせた後、地面へと放った。無論、それは躱されたが……雷の音と閃光が、奴らの視界と聴覚を一瞬だけ妨害する。

 

「ぬっ……!!」

 

『Leady』

 

「狙いが甘いぜ、ライオン野郎!! チェック!!」

 

 奴の口から放たれたエネルギーは、俺から少しズレた方向に飛んでゆく。体を捻って避けながら、銃の準備をした。先に片付けるべきはやはりこっちだろう……そう思って俺は、ライオン野郎に銃口を向けた。

 

『Exceed Charge』

 

「ぐっ……」

 

「だぁぁりゃあぁぁぁッ!!!」

 

 右足を突き出して蹴り込む。メテオが俺を狙っているが、遅い。俺はもう、ポインターに入っていた。電撃が迸り、奴を感電させながら削り取る。

 

「グゥゥゥゥッ……!!」

 

「うぉぉぉぉぉっ!!!」

 

「ヌゥゥ……ガァァァァ!!!」

 

 渾身の力で、弾き飛ばされた。少しバランスを崩したが、すぐに持ち直して構える。奴は削られた部分を押さえているが……爪の間から煙が出ている、感電はしてるらしい。

 

「やるな。だが……今のは効いたはずだ!!」

 

「お、おのれぇっ……!!」

 

「ぬぅりゃっ!!」

 

 ライオン野郎が出した二人組が切り裂かれて、銀紙のようになって消える。あそこまで弱ってるんだ……もう呼べないはず。

 

「流石だね、康太様!!」

 

「あやめ、お前もな!! そういうことだ、もう勝ち目はないぞ!!」

 

「……それはどうかな」

 

 ライオン野郎がそう言う。何を根拠に……と言おうとしたところで……一破さんの周りに、忍者が群がっていることに気づいた。

 

「雪村!! うさぎ座の後ろに……!!」

 

「はっ……お前!?」

 

「進化しろ、ラビット!!」

 

 クソリブラがそう言って……奴に錫杖を突き刺した。ボロボロなのに、まだそんな力があったのか。

 

「ギャアァァァーッ!!!」

 

「ッ、みんな伏せろ!!」

 

「……待て、おかしいぞ!!」

 

 爆発しない……これはペルセウスの時の? いや、何か違う。あの時と同じように、スイッチが引き寄せられてゆく……続けて、クソリブラが奴の抜け殻を禍々しい光の中へ放り込むと……違う星座が浮かび上がって、姿が大きく変化した。

 

「ぐ……こ、これは?」

 

「君は進化したのだ、ラビット……いや、栄えある六人目のホロスコープス……アリエス・ゾディアーツよ」

 

「アリエス……牡羊座!? ホロスコープスというのは、やはり本当だったのか……」

 

 自分の姿に戸惑ううさぎ座……あらため、アリエス。進化したとしても、俺のやるべきことは変わりない……スイッチごと叩き壊してやる。

 

「今回は帰らせてもらおう、私もレオも手負いだからな」

 

「覚えていろ、デルタ……!!」

 

「素晴らしい力だ……見てろよデルタ!! すぐにお前を殺してやるからな!!」

 

「……」

 

 そう言って、奴らの姿が消えた。逃がしてたまるかと追いかけようとしたが……

 

「待て!! 逃がさな……っ、ぐ……」

 

「康太様!! 変身解いて、早く!!」

 

「くそっ、もう時間切れなのかよ……」

 

 デルタフォンを抜き、体から光が消える。戦いが終わると、激しい頭痛に襲われた。

 

「私の責任ですよ、ごめんなさい。私がリブラを逃がさなければ……」

 

「気にしないで、ください……僕だって、あれは無理、ですよ……なってしまったものは、仕方ないし……」

 

「康太様!? 歩けないの!?」

 

 足も腕も動かない……やりすぎたか。後の祭りだな……

 

「電撃の使いすぎでしょう……私にもわかります。肩を貸しますから、立ってください」

 

「はい……面目ない」

 

「気にしなくていい余、仲間でしょ?」

 

 一破さんに肩を貸してもらいながら、俺はとりあえず病院に行くことにした。

 

 

 

 あの後、俺は例の装置でデモンズスレートを抑え込んだ後……お医者さんに叱られていた。日に日にあんまり強く言われなくなってきている気がする……

 

「……はぁ。使うなと言いましたが、あなたのことですから、使いますよね。わかってましたよ」

 

「もう察されてる……ご迷惑おかけしてます」

 

「やめろと言ってもできないでしょうし……一つだけ。電撃を使えるようになる状態……『デモンズモード』とでも呼びましょうか。あの状態でいられるのは、多くて二分程度です。それ以上、戦闘を続けると……今度こそ助からないかもしれませんよ」

 

 あの状態に入ったら、戦っていられるのは二分だけ。制限が多くて困るな……

 

「どんどん制限が増えますね……」

 

「英雄が死んでいなくなるよりはマシでしょう、世間的にはね」

 

「まぁ、そうですね」

 

 デモンズスレート。デルタの唯一にして最大の欠点。無理矢理メリットに変えようとしてはいるが、常に命の危険が伴う力であるのは変わりない。

 

「デルタギアの活動限界は、あなたの体だと戦闘しなければ一時間、戦闘を行うと半分以下にまで落ち込む……といったところです」

 

「やっぱり不便だな……」

 

「財団Xがどれだけズルをしているのか、こうして見るとよく分かりますね」

 

 奴らはライダーのデメリットを簡単に無視できるし、変身条件があっても簡単に満たしてくる。

 

「元々、奴らの戦い方は格闘技に銃どころか、ロケットランチャーを持ち込むようなもの……まともに相手するのが間違いなのかも」

 

「そう出来れば苦労しない、でしょう?」

 

「ですねぇ……」

 

 道具に文句を言っても仕方がない……できる限り利用して、奴らを倒すしかないだろう。

 

「とりあえず、怪我自体は表面の出血と軽い骨折や捻挫だけだったので……回復魔法はかけましたし、雪村さんなら、一日で治るでしょう。お大事に」

 

「ありがとうございました!」

 

「また明日も待ってますよ」

 

 そう、苦笑いしながら言われた。本当に申し訳ない。

 

「とりあえずランニングだな、運動はしないと……あ、その前に」

 

 スマホを開いて、Twitterで火種がないか確認しておく。炎上して、中田の時の繰り返しになってはいけないからな。

 

『デルタとオーガ 警察と協力して、四人の敵を撤退に追い込んだか』

 

『有能』

 

『相変わらずかっこいい』

 

 よし……悪い書き方はされていないようだな。アリエスを逃がしてしまったが……『追い詰めて撤退させた』ので、そこは帳消しになっているようだ。

 

「レオは大ダメージを負っていたしな……まぁ、嘘ではない」

 

 そう呟きつつ……俺は寮に戻って重りをつけ、日課のランニングを始めた。

 

 

 

 時間は少し遡り、ホロスコープスの会議場にて。リブラとレオが、アリエスを連れてきた。

 

「……こちらがアリエス・ゾディアーツになります」

 

「ここどこだよ……? アンタ誰だ?」

 

「よくやった、二人共……そして、はじめまして。私は神谷 冬馬……この会社の社長で、ホロスコープスのボスさ」

 

 レオとリブラが変身を解いて距離を取り、跪いた……アリエスは何が何だかわからず、困惑している。

 

「ホロスコープスってなんだ? 会社ってなんだよ!? 俺はこれを好きに使える約束のはずだぞ!!」

 

「あぁ、好きに使っていいとも。私の言うことを聞いてくれればね……デルタやオーガを、私の仲間と共に殺すんだ。君にとっても悪い話では……」

 

「断る!! お前みたいなジジイの言うことなんざ、誰が聞くかよ!! 奴らは俺だけで殺すんだ、獲物を取るならお前らも殺すぞ!!!」

 

 そう言って、自分の手の中にあった杖を構えるアリエス。社長は余裕を崩さず、後ろの八神へ指示を出した。

 

「なら、仕方ないな。八神、こいつを少し……」

 

「……嫌だね。お前の犬になってるこいつらより、余程見込みがありそうだ。泳がせて成長させろ」

 

「生意気な口をッ!!」

 

 そう言って変身し、向かってきたリブラへ……アリエスの杖が叩きつけられた。先端には筒状の物体がついており、打撃武器となっている……脳天を叩かれて、リブラが怯む。

 

「ぐぅっ……!? な、なんだ……力が抜け……」

 

「お? これが俺の力か? オラ、喰らえ!!」

 

「う、ぐぉぉ……」

 

 杖から放たれるオーラで、リブラは眠ってしまった。生体エネルギーを奪われたのだ。

 

「中々やるじゃねぇか……」

 

「おい、社長とライオン!! お前らもこうなりたいか!?」

 

「……わかったよ。好きにすればいいさ」

 

 アリエスがガッツポーズをして、会議場を飛び出していった。

 

「じゃ、俺は寝るんで。おやすみ」

 

「……よかったのですか、社長? あいつを野放しにしても」

 

「構わんさ。どちらにしても、水瓶座のスイッチを入手するためには、デルタやオーガは障害になる。八神との契約条件の一破さえ残せばいい……こちらの指示を大人しく聞いて協力してくれるのが一番だったが、面倒そうだったからな」

 

 そう言ってアリエスの向かった出口を、恨めしそうに睨む社長。

 

「奴がやられた場合は……?」

 

「無論、殺すさ。スイッチはお前に渡す……飽くまで、狙いは水瓶座。忘れるなよ……リブラは部屋に放り込んでおけ」

 

「はっ!」

 

 神宮寺がリブラを乱雑に載せて、部屋の方へ向かってゆく。それを見ながら、社長はため息をついた。

 

「……やれやれ。メテオの人質の飯代も馬鹿にならないというのに……いっそ、暗殺してしまうか?」

 

 そう、冷酷に呟きながら……神谷は頬杖をついて、居眠りを始めた。




 アリエス・ゾディアーツ。その実力はどれ程か。
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