……アリエスが逮捕され、雪村康太達が去った、学園の校庭にて。錫杖の音が鳴り、リブラが現れる。
「チッ……やはり、もうないか」
探し物はアリエスのスイッチ。回収するように命令を受けてきたが……生憎、一破は忘れずに持っていっていた。
「仕方がない。奴は小者だったしな……だが、次の目星はつけてあるんだ。新しいホロスコープスを見つければ、社長もさぞ喜ぶだろう……」
名誉を挽回するために、リブラは目星をつけた『七人目』のところへと向かうことにした。
「それと……鷹嶺ルイだったか。奴は危険だ、気をつけて行動するようにせねば……私もやられかねん」
新しい危険因子の登場に、危機感を覚えながら。
……ここは何の変哲もないボロアパート。そこに住む一人の男が、今日も今日とてギターを弾いている。
「~♪」
哀愁を漂わせながら、誰も聞かないギターを弾いては歌う日々。
「……はぁ。どうして誰も聞いてくれないのかな?」
男の頭をよぎる、昔の仲間の言葉。
『そんな……!! みんなで約束したじゃんか!! どれだけ辛くても、この道を進むって!!』
『だけど儲からなきゃ、生きていけないよ。じゃあな』
『俺たちは方向性が違うようですね。それでは、さようなら』
この男に、歌の才能がないわけではない。だが、この男は流行りに乗れなかった。後一歩届かず、アイドルになり損なった男。今も……夢を諦められずにいるのだ。
「歌いたいなぁ……俺には才能がなかったのか……」
「ほう。それなら、その夢を叶えてやろうか? 宇多田 彩人(うただ さいと)?」
「わぁぁぁっ!? だだ、誰っ!?」
リブラが男の後ろに現れた。驚いた男は飛び退いて、壁にもたれかかる……
「そう身構えるな。私の名前はリブラ・ゾディアーツだ。今日は見事選ばれた君に、プレゼントを上げに来たんだよ?」
「リブラ? リブラって……指名手配中の犯罪者!? ひ、ひぇぇぇぇぇ!!」
「おっと。電話なら壊したぞ、悪く思うな?」
バラバラになった電話を見て、絶望する宇多田。リブラが仮面の下で笑い、スイッチを差し出す。
「あ、ああ……!!」
「逃がさんぞ。逃げられると思ったのか?」
「嫌だ、嫌だぁぁ……なんで、なんで俺が……!!」
道を塞がれて、為す術なく地面に伏せる宇多田。リブラがスイッチを押し付けて、言う。
「何も怖いことはないよ。これを押しさえすれば、君はまた歌を歌えるんだ……大人気になれるぞ。誰もが君の歌に熱狂する……夢のような光景だろう?」
「で、でもっ、化け物になるなんて、俺は……」
「チッ……!! いい加減にしろ!!」
鈴の音がして、リブラの錫杖が宇多田に突きつけられた。宇多田の恐怖が最高潮に達する……
「ヒィッ!!」
「いいか、これは貴様だけの問題ではない……私の首がかかっているんだ!!! 死にたくなかったら、とっとと使えェ!!!」
「あ、あぁ……わ、わかりましたっ……!!! だからお願いします、殺さないでくださいぃ……!!!」
命乞いして当然である。ライダー、オルフェノク……そしてゾディアーツ。その名を知らない者は最早、この世にいない。一人一人が災害級の存在に脅されれば……誰もが従う他ない。
「それでいいんだ……さぁ、押せ!!」
「っ……うわぁぁぁ!?」
「よし……我がラプラスの瞳に一点の曇りなし!! 君は山羊座、カプリコーン・ゾディアーツだ!! さぁ、君の力で市民を熱狂させろ!!!」
自分の体と、虚空から出現したエレキギター。それを見て、卒倒しそうなのを何とか抑えて、その場から逃げ去る宇多田……
「うわぁぁぁぁっ!! 助けてくれぇ!!」
外に走って、助けを呼ぼうとする宇多田。しかし……錯乱状態で気づいていないが、今の宇多田はスイッチで変身している。なので……
「うわぁぁぁ、ゾディアーツだぁぁ!!」
「警察、警察呼んで!!」
「近づくなよ!! きっと罠だ!!」
市民の反応も当然、人類の敵ゾディアーツが目の前にいるのだから。だが今の宇多田にとっては、これが追い討ちとなってしまった。
「ど、どうして……いてっ!!」
「出ていけ、ゾディアーツめ!! 出ていけ!!」
「殺されてたまるか、殺られる前にやっちまえ!!」
人々は武器を取り出して、カプリコーンに襲いかかる。何が何だかわからない宇多田は、市民達に痛めつけられている……何度でも言うが、市民は自分の命が惜しいだけなのだ。当然の思考……だが。宇多田にとってはリブラに恐怖している自分へと追い討ちをかける、集団リンチでしかなかった。
「うぐぁぁっ!! やめてくれぇぇ、痛い、痛いっ……!! うわあぁぁぁーっ!!!」
「ぎゃあっ!?」
「君、大丈夫かい!? 逃げられてしまったか……くそ!! 警察はまだか!?」
その声を尻目に、宇多田は必死で逃げてゆく。何故、自分がこんな目に遭わなければならないのだろう。そう思いながら、必死に走る。
「はぁ、はぁ……みんな、どうしてだ……うっ、うっ……」
涙を流して、疑問を叫ぶ宇多田。その理由は宇多田が変身しているからなのだが、リブラに襲われて錯乱している宇多田はそこまで思考を回せない。
「いつもこうだ……家族みたいな仲間にも捨てられて、会社はライダー不況で、どこも雇ってくれなかった……今度は社会全部が敵になるのかよ……うぅぅ……!!」
人気のない裏路地の中で、泣き続ける宇多田。
「どうすりゃいいんだ? 誰も助けてくれねぇ……お袋、親父……あの世から見てるなら教えてくれよ」
そんな時だった。リブラに言われた言葉が、宇多田の頭をよぎる……
『さぁ、君の力で市民を熱狂させろ!!!』
「力……? この、エレキギターのことか?」
半ばヤケになりながら、いつも通りに歌ってギターを弾く。みんなが興味を持たない自分の歌を。
「~♪」
「おい……なんだこの音色?」
「テンション上がる~」
人々が突然寄ってくる。それにも気づかずに、夢中で歌って弾き続ける宇多田……異変に気づいたのは、一曲目が終わった時だった。
「……ありがとう、ありがとう! って……え?」
「わぁぁぁーっ!!」
「素晴らしい!!」
今までにない量の観客。当然、混乱する宇多田……
「み、みんな……? 見に来てくれたのか?」
「当たり前じゃないか、こんないい歌聞かないでどうする!?」
「アンコール!! アンコール!!」
今まで受けたことがなかった、歌への賞賛とアンコール。
「い……いや、これは俺の力じゃないな。変な化け物になってまで、俺は……」
「早く歌ってくれよ!!」
「次が聞きたい!!」
観客に詰め寄られて、後ずさりする宇多田。思い悩んでいる時、宇多田は昔聞いた言葉を思い出した。
『流行りに乗れない奴にチャンスは無いよ』
「ッ……」
「アンコール!! アンコール!!!」
これが最後のチャンス。そう思う気持ちが強くなる。ゾディアーツスイッチの力は、その者の夢や理想を歪める。宇多田の夢が歪んで、ねじ曲がってゆく。そこで、リブラの声がまた聞こえてきた。
『使え!!』
『使え!!!』
「……使わ、ないと……」
俺はこのまま死ぬだけだ。そう思った宇多田は、半ば強引に自分を立ち直らせて、ギターを弾き始めた。
「うぉぉぉぉぉ!!」
「イェーイ!! みんな、盛り上がって行こうぜぇ!!!」
「イヤッホォォォ!!!」
宇多田のソロライブが始まったのを、傍から見る黒い影。言うまでもなく、リブラだ。
「成功したな。スイッチの毒素が効いたらしい……今度こそ、奴らにスイッチを渡させはせんぞ。まずは社長に報告せねばな……」
そう言って、リブラは姿を消して……その場を去っていった。
……俺は、パトロール中にゾディアーツが出現したという通報が入ったらしく、その場に急行した。しかし、その場にゾディアーツの姿はなかった。
「ここのはずだけど……」
「あ、デルタさん!!」
「皆さん、大丈夫ですか? 怪我人は?」
一撃でも喰らったら、内蔵にダメージが入る威力だ。いるなら早く治療しないと……
「それが……そのゾディアーツ、攻撃してこなかったんです」
「え? ゾディアーツが?」
「はい。でも、なんか『助けてくれ』『警察を呼んでくれ』『殺される』とか言ってて……殺されるのはこっちだっての」
……この人たちの証言を総合すると、ゾディアーツは何かを怖がっていたのか?
「それで、最後まで襲いかかってはこなかったと?」
「はい。囲いこんで殴ってたら、急に叫んだと思ったら俺たちを押しのけて……あっちに逃げていきました」
「ありがとうございます……よくわからない奴だな」
今まで戦ってきたゾディアーツは、大体が周りの物を壊したりして暴れていた。大人しかったであろうペルセウスの人も、スーパーの物を壊したりすることに躊躇がなかったし……それが、人を襲わず物も壊さず逃げる? よくわからないな。
「警察だ!! 動くな……ってあれ? 逃げられてしまった後でしたか?」
「いや、僕が来た時にはもういなくて……」
「そうなの? 一足遅かったね……」
残念だな、ここで倒せれば被害拡大を防げたものを。
「すみません。警察の者ですが、ゾディアーツについて調書を取らせていただけますか?」
「はい、もちろん」
「ありがとうございます、それではまず……」
俺は一破さんが調書を取っている間に、あやめに聞いたことを教えておいた。
「え? 逃げていっちゃったの?」
「そうらしい。怪我人も、壊された物も見当たらないし……何がしたいんだろうな」
「リブラにゾディアーツにさせられちゃって、混乱しながら逃げてるとか?」
やっぱり、その線が濃厚か……
「ありがとうございました、これで終了です……今回のゾディアーツ、雪村さんはどう思いますか?」
「これはあやめが言ってきたんですが、やっぱり自分の意思じゃなくて、無理矢理リブラに変身させられたのかもしれませんね……それで混乱してるとか」
「……それなら、尚更早く止めないとな。力を理解しないまま振るっているなら、どこにどんな被害が現れるかわからない」
そうだな。大量死が起きてからじゃ遅すぎる、早めに見つけてしまわねば。
「他に証言とかは?」
「あの部屋からゾディアーツは出てきたそうです」
「じゃあ……家宅捜索しますか?」
早めに証拠品は持っておいた方がいい。令状が出たらすぐにでも捜査しよう……
「私はこれを持ち帰って、令状を書いてもらってきます。百鬼さんは学園の警護、雪村さんはゾディアーツの捜索をお願いします」
「わかった! またね、康太様!」
「あぁ! 一破さん、よろしくお願いします!!」
そう言って、俺はスライガーに乗り込んで……あの人から聞いた方向へと走らせた。
「……ん? あれは……」
人が集まって、空き地で座り込んでいる。集会か何かだろうか。気になって、降りてみると……
「はぁ、はぁ……サイコー……」
「次のライブが楽しみ、だな……ぜぇぜぇ……」
「……あの、どうしたんですか?」
みんな座っているだけなのに、すごく疲れた様子だ。町内マラソンをやるとは聞いていないが……
「ライブだよ、ストリートライブ……新星が現れたんだ、もう素晴らしくて素晴らしくて……」
「それでどうして疲れるんだ……?」
「次のライブはいつ、かな~」
みんなふらつきながら帰っていく、何があったのだろうか。ただのライブにしては変だぞ?
「……まさかっ!! ちょっとすみません、そのライブをしてた人って……ゾディアーツなのでは!?」
「え、よく見てなかったよ」
「そうですか……う~ん」
明らかにおかしな観客の疲れ様……確証は持てない、だが可能性はあるだろう。
「一人で帰れますか?」
「大丈夫だよ、ありがとう……」
「お大事に……もう少し探してみるか」
そう呟いて、俺はゾディアーツ捜索を続けたものの、結局成果はなかった。残念に思いながら学園に帰ると、一破さんが出迎えてくれた。
「お帰りなさい、雪村さん」
「一破さん、お疲れ様です!!」
「こちらの状況ですが、とりあえず令状は明日には出るでしょう。明日は雪村さんと一緒に家宅捜索に行くのと、引き続きゾディアーツの捜索ですね」
そうだ、これを教えておいた方がいいな。
「すみません、一破さん。お伝えしたいことが……」
「なんです?」
「実は……」
俺は空き地で見た、あの異様な光景を説明した。
「……なるほど。確かに妙ですね、そんなにたくさんの人が一点に集まって疲れ切るなんて……ライブってどういうことだ?」
「ゾディアーツの能力じゃないかと思って、捜索してみたんですが……どこかに隠れたのか、見つけられませんでした」
「落ち込まないでくださいよ。そんなに簡単に逃亡中の犯罪者が見つかるなら、誰一人苦労はしていません」
そうだよな……それにしても、今回の奴は何がしたいのだろうか。行動に一貫性が見えないぞ……
「何がしたいんだろうか……行動が一貫してない、恐怖しながら逃げたかと思ったら、人から元気を奪っていくし……目的はなんだ? ギースーや中田の方がまだわかりやすいぞ」
「家宅捜索でそれがわかるといいんですがね……果報は寝て待てです、明日まで待ちましょう」
「そうですね……悩むなんて俺らしくないや、明日こそ見つけてやるぞ!!」
頬を叩いて気合を入れる、明日こそは奴を捕まえる。
「本当に混乱しているなら、情状酌量が成立します……出頭すれば、罪をさらに軽くすることもできますしね。損害に関しても今のところ、その『ライブ』以外は見られないですし」
「何にせよ……力がなんなのかも分からずに振るうのは危険です。力加減がわからずに、殺したくないのに殺すことになりかねない」
「どちらも幸せにならない、最悪のパターンですね……早く止めなければ」
それからその日は、晩御飯を食べてトレーニングの後、警備をして眠った。
その日の深夜。いつも通り、ホロスコープスの集会でリブラが報告をしていた。
「このような形で、山羊座……カプリコーンを覚醒させることに成功しました」
「羊の次はヤギ? もっと強そうなのにしろよな、羊は期待外れもいいとこだったし……」
「カプリコーン……変わり種を見つけたな。あいつは少々特殊だぞ」
社長がそう言うと、ヴァルゴが文句を言いたげな雰囲気で言った。
「前もそんなこと言ってただろ、お前。信用できねぇな」
「なにィ!? ヴァルゴ、貴様……グァァ!?」
「だから身の程を弁えろっての、雑魚ライオン」
レオ・ゾディアーツに唾を吐きかけて、斧で叩きつつ欠伸をするヴァルゴ。レオは抜け出せないのか、されるがままだ。
「その辺でやめておけ、ヴァルゴ。今こいつを殺したら困るんだ」
「へいへい……またかよ」
「カプリコーンの武器はエレキギターだ。それで音楽を鳴らすことで、楽譜で敵を拘束したり、音符で攻撃したりできる」
それを聞いたヴァルゴが、残念そうな声を上げた。
「なんだ。その辺の三下共と変わらねぇじゃねぇか」
「話は最後まで聞いておけ。こいつの能力の真骨頂は、音楽で人を魅了し……自分の熱狂的ファンに変換できるんだ」
「人を操れるゾディアーツ、ですか……」
それを聞いたヴァルゴは……退屈そうな様子で部屋に戻ってしまった。
「つまんねぇーの……」
「……お言葉ですが、社長。これまでにもドラゴンや、コーマは自分のファンや仲間を操って、ぶつけていましたが……全て失敗していますよ?」
「あぁ、そうだな。だが……この能力の真骨頂は、そこではないんだよ」
?
やけに含みを持たせた言い方に、注目が集まる……
「それは……どういうことですか?」
「まぁ見ていろ、グヒヒヒ……面白い物が見られるぞ?」
「……なるほど! そういうことか……流石は社長、面白いことをお考えになる」
神宮寺と佐々木がそう言うと、神谷が笑いを零す。
「明日は面白いことになりそうだ。しっかり見てこい、佐々木」
「はっ、お任せを!!」
「さてと……どこまでやれるか見せてもらおうか、カプリコーン。グヒッヒッヒッヒ……!!」
そして、次の日……令状が来るまで待機しておくように言われたので、言われた通り待機していると。
「雪村さん、令状が出ました。いつでも発進できるように、スライガーで来て欲しいとのことです」
「わかりました。座標送信、よろしくお願いします」
「では、また現場で」
それからデルタに変身して、スライガーに乗り込む。あのアパートへ向かうと……部屋の前に一破さんが待機していた。
「仮面ライダーデルタです」
「ご苦労さまです!!」
「来ましたね。それでは、捜査を開始しましょう」
変身を解除しておく。無闇に変身してると、デモンズスレートが厄介だ。それから中に入ると……
「……荒れてますね」
「電話が壊されています」
「証言から考えると、自分で潰したとは考えにくいな。スイッチを渡した奴が、通報を避けるため壊したと考えるのが自然か」
スイッチを渡す奴はあいつ以外考えられない。
「クソリブラめ……コソコソしやがって!!」
「ラプラスの瞳……あいつの言っていたことがもし本当なら、渡すのはリブラですよね」
「ん? これは……」
一つの鞄があった。チャックが閉められている、よく手入れされているようだ。これだけは傷一つない。
「……これは、ギターか?」
「争った形跡はないな……やはり、脅されたと見るのが自然か」
「電話は壊されて、通報は不可。ゾディアーツから逃亡するのは至難の業だし、脅迫されて押した……情状酌量の余地あり、ですね」
一破さんが頷く。これなら罪は大分軽くなるだろう、あとは、人が死なないうちに見つけるだけ。
「何のゾディアーツなんでしょうか。ライブができるというなら、楽器を持っているのか?」
「……持ってるとしたら、ギターですかね」
「あぁ、なるほど……鞄の中身はギターだったんですね。よく手入れされている」
ギターを持ったゾディアーツか……兎も角、戦わなくてもいいならそれが一番だ。変身解除の方法を知らないだけかもしれないし、落ち着いてさえもらえれば……
「……あれ、電話鳴ってませんか?」
「本当だ。すみません……もしもし、私だが……なに!? わかった、そちらにすぐ向かうよ」
「どうしました? もしかして、ゾディアーツが目撃されたとか?」
一破さんは焦っている。もしかして、ゾディアーツが見つかったのか?
「いや……道端で、大量死が起こったとの情報が……!!」
「えぇっ!? そんな馬鹿な、逃げてただけじゃ……」
「……何だと!? 死因は過労死!?」
道端で過労死した人が大量にいる? ブラック企業にしたって、死人の数が多すぎるぞ。
「とりあえず現場に向かいます、これ以上放っておいたら……何が起こるかわからない!!」
「私も向かいます、百鬼さんを呼びますので……それまでお願いしますね!!」
「任せてくださいよ、変身!!」
デルタフォンを構えて叫ぶ……人死にが出てしまった以上、容赦するわけにはいかない。力ずくで捕まえる。
『Standing By』
『Complete』
「位置座標、設定……行くぞ!!」
スライガーを飛ばして、現場の方向に急ぐ……そこは酷い有様だった。
「戦争の後みたいだ……こんなのを見るのは、デモンズスレートの時以来か」
「雪村康太さんですね? 被害者の家族の情報によると……何の音もしていないのにもかかわらず、ライブがどうとか言って、毎日のように飛び出して行ったらしくて。そして今日……このザマです」
「くそっ……そいつはどこに!?」
警察の人が首を横に振っている、死人に口なしか……どうする!? 早く見つけないと、また死人が……ん?
「あっちでライブがやってるぞ!!」
「聞こえる!! 聞こえてくるんだ!!!」
「……あれは!!」
俺には何も聞こえない。だが……きっと、あの人たちには聞こえているのだろう。つまり……あの集団についていけば!!
「あとはお願いします!!」
「雪村さん、お願いしますね」
「任せてください!! ゾディアーツ……お前は一体何がしたいんだ!? 人が死んでるってのに!!」
そう言いながら、スライガーで追いかけ回す。集団を追いかけて、十分ほど走った頃だろうか。音が近くなり始めた……
「これは……ギターの音か?」
「あっちだ!!」
「きっとライブをしてるんだ!!!」
この人気、ギースーや中田を思い出すが……今までのことから推測するに、奴らのような下準備もいらない、言い分を考える必要もない……ギターを弾くだけでここまでの人数を……!! なんて力だよ!!
「ゾディアーツは異常なことに気づいてないのかよ!? くそっ……!!」
「着いた!!」
「やっぱりいたぞ!!」
ギターの音と歌声が聞こえてくる。もう観客が大量にいるようだな……ここは小型のライブ会場のようだが。そう思って、入ってみると。
「イヤッホォォ!! みんな、盛り上がってるかぁい!?」
ウォォォォォォォ!!!
「この盛り上がりよう、今井を思い出すレベルだな……おい、カプリコーン!!」
「じゃあ次の曲、いっちゃうよ~?」
「待てって、クソッ!!」
話を聞くつもりはなさそうだ。とはいえ、射撃しようにもみんなの手が邪魔で撃てない。近づくしかないか。人を掻き分けていくのは大変だが、仕方ない。
「よいしょ、よいしょっ……すみません、通してくださ……グゥッ!?」
「邪魔すんじゃねぇ!!」
流石にこうなってるよな……それでも進むしかない。
「きゃああ!? 誰!?」
「はい、ごめんなさいごめんなさい……いててて、こなくそ!!」
「なんだなんだ!?」
殴られながらも前に進む、もう少しだ!!
「……よし!!」
ようやく最前列だ!! ジャンプして、ステージに飛び乗る。
「イェイ、イェーイッ!!!」
「ライブはそこまでだぜ、ゾディアーツ!!」
「ぐぇぇっ!?」
ぶん殴って、演奏をやめさせた。また過労死する人が出てしまう。
「おい、何やってんだよ!?」
「ふざけんな!!」
「警察呼べ警察!!」
俺がその警察の差し金なんだがな。まぁ、ともかく。
「お、お前は……デルタ!?」
「そうだ。お前のせいで大量死が起きた、わかってるのかよ!?」
「大量死? 応援してて、倒れた人達のことか? あれは疲れただけだろ、また起きる」
やっぱり気づいてねぇのか。人を殺したことに……!!
「違う!! あれは死んでるんだよ!! わかってるのか、お前は人を殺したんだぞ!!!」
「そ、そんな……!!」
「そいつの言っていることは真っ赤な嘘だぞ……カプリコーン!」
後ろからリブラの声が聞こえたので、拳を叩き込む。
「おっと……二度目は当たらんぞ」
「なに!? うわっ……!?」
奴は杖で攻撃するのではなく……俺が差し込んでいたデルタフォンを、抜いたのだ。変身が解けてしまう……
「何しやがる!?」
「悪いな。ほら、返してやる……カプリコーン!! 続行しろ!!」
「イエス、リブラさん!! ごめんねみんな、安心して!! ライブはまだまだ続くぜェ!!!」
歓声が上がった……まずい、早く変身しなければ。
「雪村さん!! どうして変身解除しているんですか!?」
「一破さん、あなたも来たんですね……あやめは?」
「それが、どこにもいなくて……」
……どこに行ったんだ? いや、今はそれよりも!!
「奴に抜き取られたんです、でも大丈夫!! 変身し直しますから!! 変身!!」
『Error』
「……なに?」
エラー? どういうことだ? 音声入力は成されたはずだろ? ……もう一回!!
「変身!!」
『Error』
「……何故だ!?」
一破さんと同じ気持ちだ、何故失敗するんだろうか? まさか……!?
「この程度、考えられんとでも思ったか? お前が音声入力で変身することは知っているぞ。だが、カプリコーンの音楽の前では……音声も満足にデルタフォンに入るまい!! フハハハハハ!!!」
「雪村さん、一旦外に出て……」
「させるか!! メテオッ!!!」
仮面ライダーメテオが天井を突き破って、飛び込んできた。
「逃がさないよ、雪村康太」
「そういうことだ。諦めるんだな!! ここで貴様らは、終わりだ!!!」
「チッ……雪村!! 何かないか!?」
そんなことを言われても……ゾディアーツが二体、ライダーが一体、暴徒になりうる人達は百人程……これを変身無しで!? 無理言うなよ……!!
「そう言われても、変身できないんじゃ……!! あやめ、どこ行ったんだ!? くそっ!!」
「ほう、カプリコーンを狙うか……賢いな。だが、そう上手くいくかな?」
「やらせるなぁぁ!!」
観客達が立ち上がって、俺に襲いかかってくる。
「くっ……畜生!!」
「おのれ……!! どけ、貴様ら!! 射殺されたいのか!!」
「だぁぁぁっ!!」
刀が二本振り下ろされた……あの刀、まさか……
「……あやめ!?」
「邪魔しないでっ!!」
「ぐぁっ!!」
困惑している間に、腹を斬られてしまった。傷は浅いが……まさか、この中にいたなんて。
「業、不知火!! 大丈夫だったか!?」
「……!」
「大丈夫だ、どうにかする……隠れてな!!」
強がってそう言うと、二人は俺の服の中に隠れた……そう言ったはいいが、どうする? あやめは敵、変身は不可能だし、過労死の時間制限までついている。戦えるのは、一破さんと俺だけ……明らかに分が悪すぎるぞ!!
「今日が貴様らの命日だ!! 死ね、邪魔者共が!!!」
「そういうことだね……悪いけど、消えてもらうよ」
「あいつをぶっ飛ばせ!!」
……絶体絶命。正にその状況の中で、時間制限付きのバトルが始まった。
逆転できるか、康太くん。