VSカプリコーン。
「どうする、雪村!?」
「っ、急かさないでください、今考えてるんですから!!」
「何を考えようとも、無駄だぞ!! お前が死ぬことには変わりない!!」
リブラがそう言っている……くそ、認めるしかない。このままでは、死ぬ。変身できないし、頼みの綱のあやめは操られているし……そもそも、どうして操られてるんだ?
「なんであやめが操られてるんだよ、そもそも……!!」
「知らなかったか? この歌に少しでも好意的な感想を抱いた者は、この曲に魅了されるのだ。貴様らは危険とわかっているから、そうは思っていないようだが。タイミングが悪かったな……!!」
「なんて能力だよ……!! くっ、この!!」
どうする、とりあえずあやめに起きてもらわないと、話にならないぞ。多勢に無勢が過ぎる。
『サターン、Leady?』
『OK! サターン!!』
「当たれっ!!」
輪っかが俺に飛んでくる……デルタの体に慣れたからか、上手く避けられない。腹の肉を抉り取られる……
「うぐっ……ごふっ!?」
「無様だな、雪村!! 貴様さえ殺せれば……私の査定もきっと上がる!! 私のために死ぬがいい!!」
「ちく、しょう……!!」
何か手はないのか。やられながら、考える。
「邪魔だって、言ってるでしょ!!」
「あやめ……!! バカ、目を覚ませッ!! 死にたいのか!? このままじゃ……過労死するぞ!!」
「いい加減にしろ、ライブ如きで命を無駄にするな!!」
声はカプリコーンの歌に掻き消されて、全く届かない。どうする、何をすればいい? ……そうだ!!
「一破さん、お願いがあって……」
「なんだ!?」
「ここから出て、買ってきて欲しいものがあるんです!!」
一破さんが目を丸くした、一人で生きていられるのかということか? それなら大丈夫だ、考えがある。
「なっ……バカか!? そんなことをしたら……」
「考えがあるんです!! 買ってきて欲しいものは……」
「……わかったよ、何に使うのかはわからんが、買ってきてやる!! 絶対に死ぬんじゃないぞ!!」
飛び出していく一破さんを見送って……よし、これでいい。
「本当に底抜けの馬鹿だな。自分から頭数を減らすなど愚の骨頂……」
「何考えてんの、アンタ?」
「イェアァァァ!! みんな、盛り上がってきたなぁ!? ライブはまだまだ続くぜ、ロックに行こうじゃねぇか!! イヤッホォーウッ!!!」
みんなが沸き立っているな……利用させてもらうぞ。
「カウントダウン開始ぃ!!」
「……いきなり何を言う?」
「何って……次の曲までのカウントダウンだよ。ライブなら、普通だろ?」
リブラが困惑している、マスクの下では変な顔をしていることだろう。メテオも同じく。
「ノってきたな、アンタも!! それじゃあ行くぜぇ!? スリーッ!!」
「……エイト!」
「ツー!! ワン!!」
これが狙いだ。俺が笑みを浮かべる中、デルタフォンから音声が鳴る……
『Jet Sliger,Come Closer.』
「なんだと!? 貴様、何をした!?」
「知らなかったのか? ジェットスライガーの呼び出しコードは、3821……スリーエイト、ツーワンだ!!」
ライブにノリノリの観客達とカプリコーンを煽れば、こうなることは予測できた。スリーの後に、エイトさえ入力してしまえば……理論上、コード入力は成功するはずだ!!
「はめられた……!? くっ、この……ぐぅぅ!?」
「ナイス、スライガー!!」
「うぉっと!? ハプニングもロックンロールの醍醐味!! 楽しんでいこうぜ!!」
俺に向かってきていたメテオを、突撃してきたスライガーが跳ね飛ばす。奴の演奏は再開されてしまったが、それでも成功だ。首の皮一枚繋がったな……!! だが奴は演奏をやめてない、早く対処すべきだ。
「くっ、う……がっ……!!」
「おのれ!! 雪村ァ!!」
「余の楽しみを邪魔しないでっ!!」
一部の観客と、リブラが怒ってこちらへ向かってきている。あれは一時凌ぎだ、後は自分でなんとかしないといけない……乱雑な拳や錫杖の一撃も、数量が多ければ回避できないものが出てくる。当たりながら、どうにか殴り飛ばしていく……
「ぐっ、くそ……!!」
「当たれ!!」
「お前がな!!」
リブラの顔面に拳をぶち込む。俺も錫杖を食らって、血を吐いてしまったが……少しは効いたようだ。
「うぐ、ぐ……」
「く、くそぉ……おのれ、死ねぇ!!」
「やらせるか!!」
銃声が響いて、青い閃光がリブラに炸裂する。ということは……
「一破さん!!」
「言われた通り買ってきたぞ、それでどうするんだ!? どうしてスライガーが……」
「ありがとうございます……!! よし、やるぞ!!」
買ってきてもらったもの、一つ目は豆だ。何の変哲もない、大豆。
「豆? 鳩にでもやる気か!?」
「いいや、違うぜ……?」
「なに?」
一破さんが市民達の対処に回ってくれている、今しかないな。
「さっきから邪魔ばっかりして……ウザいんだ余!!」
「また来たぞ!?」
「……鬼は外ーッ!!」
そう叫んで、俺はあやめに豆を投げつけた。
「ハッハッハッハ、何をするかと思えば豆まきだと!? ついにとち狂ったな、そんなお遊びが効くわけ……」
「あいたたたっ!! 痛い、痛いっ!!」
「え、効いてる……!?」
一破さんも予想外だったのか、驚愕しているようだ。俺も咄嗟の思いつきでやったんだが、成功してよかったな。
「鬼人って言うくらいだから、豆は嫌いかと思ってたんだよ!! 効いてよかったぜ!!」
「そ、そんな馬鹿な……!?」
「いたた……あれ? 余は、今まで何して……」
よし、元に戻ったな!!
「お、おのれ!! 一人元に戻したくらいでなんだ、まだ100人はいるぞ!!」
「えぇっ!? ここどこ!?」
「実はな……」
俺はあやめに、今までの事を簡潔に説明した。
「そ、そんな……また操られてたなんて、ごめん……余、情けない……」
「仕方ないさ、逆らいようのない力だったんだから……兎も角、変身だ! あやめ!!」
「わかった!! って……あれ? ベルトがない!?」
人混みの中にいる時に落としたのか? まずい、変身できないぞ……!!
「ハッハッハッハッ、万事休すだなぁ!! アホみたいな方法を使うからだ!!」
「いや、それは落としたのと関係ないでしょ……」
「黙れメテオ!! 貴様らも、これで終わりだぁぁ!!」
どうするか……三人で、奴ら全員をどうにかできるか? それは無理だよな……民衆だけならまだしも、メテオとリブラ、カプリコーンまでいる。早くこの歌をどうにかしないと、みんな過労死してしまうし……
「……あやめ、一破さん!! 耳を貸してくれ!!」
「なにか思いついたか!?」
「……え? えぇぇぇぇ~っ!?」
そう言っている間に奴らが迫ってきていたので、対処しておく。
「この……!!」
「同じ手は食わんぞ!!」
「ぬぐっ、くそ……!!」
踏み込んで、奴へとカウンターファイト。久しぶりに使った気がするな。メテオが来ていたが、そちらは一破さんが撃ってくれた。
「チッ……!!」
「正気か、雪村!?」
「もちろん正気ですよ、僕は。あとは、あやめがやってくれるかだけど……」
あやめは意を決したように、こっちを見ている。
「や、やってみる……!!」
「よし!! 一破さんはここの音響をお願いします!!」
「ああもう、わかったよ……!!」
今回は、一破さんとあやめに頑張っていただくことになりそうだ。そう思いつつ、奴らの相手をしていく。
「鬼炎術、幻景の舞!!」
「ぬぅっ……生意気なことを!!」
「お前の相手は俺だぜ、メテオ!!」
メテオはスイッチを腕の機械に入れた、いきなり必殺か!!
『LIMIT BREAK!!』
「悪いけど、終わりにさせてもらうよ」
『OK!』
メテオが指紋認証を行った、例のビームだな。それはわかってる!! なら……!!
「でぇやぁぁぁっ!!」
「ぬぅっ!!」
「逃がさない!!」
俺に向かって殺到する、青い閃光。それを誘導して、その場でしゃがみこむ。そして向いた先には……カプリコーンがいる!!
「焦りすぎたな、メテオ!!」
「イェーイ、ロックンロール!!」
「……演奏して防いだ!?」
楽譜が出てきて、それがカプリコーンを守り……こちらに飛んでくる。まずい、今縛られたらおしまいだぞ。
「小癪な真似を!!」
「こいつでどうだ!! 鬼炎術、二刀……一体!!」
「ハッ、当たるわけがなかろう!!」
奴は姿を消せる、気配だけであれを命中させるのは、至難の業だ……ならば!! そう思って、俺は消える前のリブラに組み付いた。
「な、何を!? ぐぁぁぁぁ!?」
「リブラ!? そんなもの、早く抜け出して……」
「それは早計じゃないか? メテオ……!!」
俺とリブラを縛り上げる、カプリコーンの楽譜。大人しくしてろ、ということなのだろうが……リブラも巻き込めたな。
「おい、何をやっているカプリコーン!? 早く解除せんかぁぁぁ!!」
「無駄だぜ。奴を脅迫したのはお前だろ、リブラ?」
「な、何故それを……はっ!?」
もうあいつは止まれない。こいつのせいでな……自業自得だ!!
「あやめ!! やれ!!」
「……わかった!!」
「お、おいよせ!! 雪村まで焼けてしまうぞ!!」
それはどうかな? そう思いつつ、俺は奴と共に炎に焼かれた。
「ぐぅ、お……お……!!」
「ぐわぁぁぁぁーッ!!!」
「な、なんてヤツ……体中丸焦げ、で……?」
俺の体は少ししか焼けていない。リブラは思いっきり食らってたけどな。
「どうして、だ……何故、貴様だけ……」
「知らないのか? あやめは妖術の達人なんだ。だからある程度、範囲調整は効くんじゃないかと思ってな」
「信頼してくれてありがとう、康太様!!」
こういうことだ。残念だったな!!
『あー、あー……聞こえているか!?』
「聞こえてますよ!! 大丈夫そうですか!?」
『いつでもいいぞ!! 動画サイトから音楽を流せる!!』
よし……あやめの出番だ。予備のマイクを、倉庫から取ってくる。リブラはダメージ、メテオは必殺技を避けられて思考中……今しかない!!
「あやめ、頼んだぞ!!」
「わ、わかった……!! 一破さんっ!! 余の言った音楽でお願い!!」
『よし……行くぞ!!』
カプリコーンの演奏途中で、あやめの曲が割り込む。
「ん……なんだ?」
「カプリコーン!! そろそろ勝負をつけようぜ!! 歌でなぁ!!」
「はぁ!?」
リブラから困惑の声が上がる、まぁ当然だな。だっていきなり、あやめがマイクを持ったのだから。メテオも俺の正気を疑っているようだ。
「正気か……!?」
「いつでも正気だぜ、俺は!! あやめ、頼む!!」
「うん!! 百鬼あやめ……歌います!!」
あやめが知っている曲のカラオケを流してもらって、あやめが歌う。後はカプリコーンと観客の反応だが……
「おい、邪魔すんなって言ってんだろ!?」
「身の程知らずめ!!」
「いいぜ!! この俺……カプリコーン様が受けて立つ!! 負けるとわかって戦う、愚かな貴様の為にな!! カモン、ロックンロール!!!」
よし……カプリコーンは乗り気だ。タイムリミットは過労死までの僅かな時間だけ……!! ここからが本番だ!!
「~♪」
「いいぞ、あやめ!! 声がよく出てる!!」
「引っ込め、百鬼あやめ!!」
断る。そう思いつつ、俺はあやめの応援を続けた。
「……」
「何をやってる、メテオ!! 万が一ということとある、百鬼あやめの息の根を止めるんだ!!」
「わ、わかってるよ……!!」
何故だか、メテオの動きが少し雑になったような気がする……二人が邪魔をするため向かってきたが、それを許容する程甘くない。
「死ねぇ!!」
「攻撃が雑なんだよ!!」
「ぐぅぅっ!?」
やはり、さっきの二刀一体が響いているのか……リブラの動きは相当鈍くなっている。メテオの拳にも迷いがあるし、俺一人でもどうにかなるぞ!!
「っ、この……!!」
『ジュピター、Leady?』
『OK! ジュピター!!』
メテオの拳に、木星を模した球体が現れる。俺を潰すつもりか。やはり、踏み込みが少し浅い……だが、それでも当たれば、無事では済まない威力だ。しかし!!
「うぉぉぉっ!!」
「……挟み撃ちか、リブラ? ワンパターンだな!!」
「な……ぐふぅぅっ!?」
俺が突き出されたメテオの拳を躱すと、それは後ろにいたリブラの顔面に突き刺さり、リブラが壁にぶっ飛んだ。半端に踏み込んだから、止まれなかったようだな。
「リブラ……消えてたのか!?」
「俺にその戦法は通用しねぇぞ、リブラ!! 何回も見たからな!!」
「ど、何処を狙ってやがる、メテオ……!! アイツがどうなってもいいのかぁ!!!」
アイツ? 誰のことだろうか。どうなってもいいのか、ってことは……
「人質を取られてるのか!? リブラ、お前!!」
「ッ、しまったぁ……!!」
「……!! やめて、それだけは!!」
やっぱり人質か。歌の様子は……
「~~♪」
「みんな、まだまだいけるよな!? 今日はオールナイトだぜ!!」
「ワァァァー……」
生気が無くなってきている、まずい。カプリコーンは気づいていないようだが……あやめにも疲れが見え始めている。どうする、どうすればいい?
「……ここだ!! ここでライブやってたんだぁ!!」
「やっと聞けるぺこー!!」
「ま、待って、二人共……ダメ、ダメだって!!」
あれは……宝鐘さんと兎田さん、それに潤羽さんだ。宝鐘さんと兎田さんは正気を失っているみたいだが……潤羽さんはそうではないようで、二人を止めようとしている。
「はぁ、はぁ……まだまだ!!」
「……あやめ!! 時間を稼いでくれ、選手交代だ!!」
「えぇっ!?」
一瞬でいいんだ……俺は、力の無くなってきている人混みを通り抜けて、三人のところに来た。
「潤羽さん、こっち来て!!」
「えっ……!? なんで雪村くんが……きゃっ!?」
「説明は後だ、とにかく頼みたいことがある!!」
手段は選んでいられない。潤羽さんを抱え上げて……ステージに飛び降りる。
「くそぉ、メテオ!! さっさとしろ!!」
「わかってるよ!!」
「……康太様、何を……って、え? 潤羽さん!?」
あやめも驚いているようだ。だが、説明している暇はない。
「ゆ、雪村くん……頼みたいことって?」
「今流れてる曲、知ってるか!?」
「え? 知ってるけど……なんで?」
よし、それなら大丈夫だ……!!
「潤羽さん!! このままじゃ、アイツの歌でみんな過労死してしまう!! 頼む、歌ってくれ!!」
「えぇっ!? る、るしあが!?」
「康太様、余ならまだ……」
そう言っているあやめに耳打ちする。
「大丈夫だ、あやめにはあやめの役割がある!!」
「話すついでに私を殴るな!! ぬがっ……!!」
「殴ってねぇと殺されるだろ?」
とにかく……あやめの声が枯れてきている以上、潤羽さんしか歌える人はいない。
「頼むよ、潤羽さん!! 具体的にはこんな感じで……」
「ぐぇっ!! この、ぐぁっ……!!」
「……わかった、やってみるのです!!」
よし!! 何回か殴ったので、リブラはもうフラフラだ。メテオは動揺しているからなのか、動きがどんどん雑になっているし……
「選手交代か? いいぜ、俺はまだまだやれるからな!!」
「今度は一味違うぜ? 歌バトル続行だ、カプリコーン!! 頼む、二人とも!!」
「う、うん!!」
アンデッドが湧いてきて、潤羽さんの後ろに立った。潤羽さんが歌い出すと、アンデッドがバックダンサーになって、踊り出す。
「あやめ、今だ!!」
「業と不知火も手伝って!! いくよ!!」
「……炎が上がった!? どこからだ!?」
蒼炎での演出と、アンデッドのバックダンサー。お膳立ては十分だ!!
「さ、させるな……メテオ!! 必殺技を使え!! 奴らをまとめて殺すんだ!!」
「わかったよ、やればいいんでしょ!?」
『LIMIT BREAK!!』
メテオがスイッチを腕の機械に差し込んだ、またあのビームか。しかし……!!
「もらった!!」
「わ、私の杖……!! いつの間に!?」
「そんなフラフラで、取れないとでも思ったのか?」
リブラが焦る中、メテオは必殺技を放とうとしている。
「それ一本じゃ……どうにもならないだろ!!」
『OK!』
「やってみなくちゃ、わからないぞ!?」
メテオが拳を突き出して……青い光線を放った。俺はリブラから奪った杖を使用し、光線を叩き落とした。
「なに……!? この!!」
「流石ホロスコープスの武器だ、頑丈だな!!」
「わ、私の武器が……!! やめろメテオ、そんな扱い方をするな!! やめろぉぉ!!」
メテオは聞こえていないようで、俺に光線を放ち続けている。メテオは埒が明かないと思ったのか、俺の懐に潜り込んできた。
「こいつで……どうだッ!!!」
「おぉっ!!」
「……あやめ、今だ!!」
俺の合図で、メテオの足元が青く輝いた。急いでメテオが後退すると……さっきまでいた場所に、蒼炎の柱が吹き上がった。それで避けたつもりだろうが……錫杖のリーチを見誤ったな。
「甘いぞ!!」
「な……ぐぅっ!!」
「喰らえ、スマッシュビートォ!!!」
曲に合わせてリズム良く、メテオに鉄拳を叩き込む。踏み込みの音と拳がぶつかる音が、楽器のように二人の歌を彩る……
「ぐぅ、がっ……ごふっ!?」
「でぇやぁぁぁっ!!」
「がぁぁぁっ!!」
メテオが吹っ飛んで、舞台裏に突っ込む。六発打ち込んだし、大分効いたはずだ!! リブラの錫杖は……先端と柄が分離して、真っ二つになっている。
「あぁぁぁぁぁ!? 私の杖が!! 杖がぁぁぁぁー!!!」
「これでお前の戦力は無くなったな、リブラ!!」
「ち、畜生……くそったれぇ!!」
観客達は疲れているが……一部の人があやめ達に興味を向け始めた。
「頑張って歌ってるな、あの子……」
「綺麗な演出だ……ダンスもいい感じだし」
「何より可愛いしな……頑張れー!!」
よし!! 注意がこっちに向き始めた、いいぞ!!
「ば、バカな……!? なんでだ!? どうしてあいつらに、注意が向いている!?」
「決まってるだろ? ライブは何も歌だけで……それも、一人だけで全てが決まるわけじゃない。演出に選曲に、バックダンサーの皆さんとか……色んな要素で、いくらでも良くなる。お前はそこを、ゾディアーツの力だけで何とかしようとした……勝つのがどちらかは明白だろ?」
「……そ、そんなことない……あるはずない!! 俺の歌はみんなを熱狂させられる!! ここで終わったら……俺の夢は終わっちまう!! うぉぉぉぉっ!!」
カプリコーンが一人で、必死にギターを弾く中、潤羽さんとあやめは演出で会場を盛り上げ、打って変わって楽しそうに歌っている。応援されるのが嬉しいのだろうか。戻ってきたメテオすらも見入って、動かなくなっている。
「おいメテオ、何やってる!? 早くしろ!! 無能が!!! 聞いてんのかぁぁ!!!」
「……綺麗だな……」
「貴様は何を言っている!? くそ、くそぉ!! かくなる上は……カプリコーンを操ってでも!!!」
リブラがカプリコーンに向かって走っていったが……無駄だ。何故なら……
「歌の邪魔すんな!!」
「ギャアッ!? 恩人に何をする、貴様!?」
「今は歌と歌をぶつけ合っている最中だ、邪魔すんじゃねぇっ!!!」
カプリコーンにも、音楽家としてのプライドがある。それは分かっていた……そうでないなら、ギターを手入れする意味が無いから。リブラは俺を縛り上げた楽譜で簀巻きにされて、ゴロゴロ転がって叫んでいる。
「ぐぉぉぉっ、これを解けぇぇ!! 私はリブラ、審判者だぞぉぉぉ!!!」
「いいぞー、るしあちゃーん!!」
「こっち向いてー!!」
二人とも楽しそうだ……いつの間にか自分でマイクを持ってきて、歌い始めているし。そうだ、歌って楽しいもののはずだろ。過労死したり、させたりするような物では、ないはずだろ。
「~♪」
「~♪」
「……ぐぉぉぉぉぉッ!!!」
全員が全身全霊で歌いきった、その時。そこにいる、観客達の目線は……全て、二人に注がれていた。大きな歓声が、上がる。
「うぉぉぉぉぉー!!」
「飛び入りコンビ、最高!!」
「ネクロマンサーと鬼人のコンビ、これは流行る!!」
……それを見た二人が、笑う。笑って……叫んだ。
「みんな!!」
「聞いてくれて、ありがとーっ!!!」
「わぁぁぁぁぁーっ!!!」
みんな疲れた様子だが、死んではいない。正気に戻れたんだ。カプリコーンが膝をついて、座り込む。
「……あいつ、ゾディアーツじゃないか!?」
「こ、殺されるぞ!! 逃げろぉぉ!!」
「助けてぇぇ!!」
みんな逃げていく……それに弱々しく、手を伸ばしたカプリコーン。観客の詰まっていた場所には、オーガフォンが落ちている。
「あ、あぁ、待ってくれ、俺の夢……俺の夢が、消えてゆく……」
「……今なら理解できるだろ? 過労死させてしまった、人達のことも」
「俺は……ただ、証明したかったんだよ……どん底にいる奴でも、仲間から見捨てられても……チャンスはある、それを証明したかった、だけなんだ……だけど、俺には無理だった……俺には才能が、なかったんだ」
カプリコーンが項垂れて、ギターを手放した。そんな時……リブラが迫ってくる。明らかに怒っている様子だ。
「おい!! 諦めるとはどういうつもりだ!? 貴様、夢はどうした!? その力で叶えるんじゃなかったのか!!!」
「無理だったんだよ、俺には……俺は負けたんだ。その事実は揺るがない」
「黙れぇぇッ!! 私の査定を落とすつもりかァ!! このクズ野郎、これでも喰ら……!?」
俺は止めに入ろうとしたが、それよりも先にリブラの頭を抑えつけた人物がいた。それは……
「え、メテオ!?」
「何のつもりだ!? おい、離せ!! 離さんか!!!」
「……歌はみんなを楽しませる物で、自分も楽しい物。人を傷つける道具ではないし……しちゃいけない。歌をそんな物にする奴は……私が許さない!!!」
メテオがスイッチを腕に差し込んだ、まさかリブラに撃つつもりか?
『LIMIT BREAK!!』
「よ、よせ!! 血迷ったか、やめろ!! やめろって!!」
『OK!』
メテオの拳が輝く。青い光線が、ボロボロのリブラに炸裂した。そのままリブラは、天高く打ち上げられてゆく……最後の一発でリブラは、遙か遠くへと吹っ飛んでいった。
「ギャアァァァァ……!!!」
「メテオ……アンタ、人質を取られてるのか? それなら協力……」
「お節介はやめて。今回は、我慢ならなかっただけだ。次こそは本気で殺す……じゃあね」
メテオはそう言って、走り去っていった。後はこいつだけか……逆上して襲ってくるかもしれないし、警戒はしておこう。
「……終わりましたね、雪村さん」
「はい、二人のおかげで大成功です」
「急に歌えって言われた時、どうしようかと思った余。妖術もたくさん使ったし、もうヘトヘト」
だよな。みんなにはゆっくり休んでもらおう。
「でも、楽しかったのです!! みんなの前で歌うのって結構楽しい!!」
「それなら何より……さてと、一破さん。彼はどうなりますか?」
「酌量がかかっても、無期懲役……最悪、終身刑も有り得る」
……だよな。仕方ないことだ、死人が多すぎるもの。
「カプリコーン・ゾディアーツ……宇多田 彩人。お前に殺人罪で、逮捕状が出ている。変身を解除しろ」
「わかりました」
「あれ、やけに素直だな……」
変身の準備をしていたが、それならいいんだ。
「行くぞ」
「待ってください、最後に一つだけ……」
「なんだ?」
変身を解除した宇多田が振り向く……その顔は、笑顔だった。
「俺と全力で勝負してくれて……ありがとう。お陰で、夢に諦めがついたよ……もう会えないと思うけど、応援してる。カッコよかったぜ、三人とも……じゃあな!! 今日の主役はキミ達だ!! ……ありがとう、警察さん。連行してくれ」
「わかった。こっちに来い」
「……ありがとうございました」
道を踏み外し、大好きな歌で人を殺してしまった男。罰を受けるのは当然だけれど……それでも、正々堂々と勝負をした相手。敬意を表するくらい、許されるだろう。そう思って……俺はその背中に、一礼した。
それから……三日程経った頃。あやめと潤羽さんが、突然押しかけてきた。
「康太様、大変なの!!」
「どうした!? 仮面ライダーか!?」
「いいから早く!!」
一体何事だろうか。そう思いながら、外に出ると……新聞が顔に飛んできた。
『電撃参戦!! ライブに殴り込み、アンデッドと鬼のコンビ!?』
『可愛かったです!! もう一回見たい、聞きたい!!』
「……あれ見て」
校門の方を指さされる……なんか、喧騒が聞こえる。嫌な予感のしたまま、振り向くと。
「潤羽るしあさーん!! 百鬼あやめさーん!! 是非とも取材を!! 取材をさせてください!!!」
「一言だけでいいので、お願いします!!」
「学園に入れてください!!」
……校門は、今にも破られそうな勢いだ。こうなった原因は間違いなく……発案者の、俺。
「康太様!!」
「雪村くん!!」
「……な、なんでしょうか」
苦笑いしながら、振り向く。二人が困り顔で、言ってきた。
何とかしてよ!!
「あの数は無理!! 一破さん助けて~!!」
「こら、逃げるな!!」
「うぉっ!? 何事で……って、何だァァ!?」
そんなこと言ってたら破られた、校門は弁償してね。言う暇もなく、マスコミが迫ってくる。
「何か一言!!!」
「一破さん、何とかしてくださいよ~!!」
「発案者はお前だろ、お前が何とかしろォォ!!!」
……こうして、俺達は一日中マスコミと学園を使った鬼ごっこをして過ごすことに、なったのであった。主に俺のせいでね。