お待たせしました。
……カプリコーンが撃破された後、メテオに吹っ飛ばされたリブラは……ボロボロの状態で何とか歩いていた。錫杖を松葉杖にして、恨み言を言っている。
「く、くそぉぉ……メテオめ、帰ったらタダではおかんぞ、絶対に奴を処刑してやる!!」
足を引きずりながら、壁に手をついて歩くリブラ……その時、リブラの目にあるものが見えた。深夜まで営業している、レストランの中で食事をしている女性だ。
「あれは……?」
「……くそっ、今日もパワハラにセクハラに……どうして私がこんな目に!!」
「痩せているな。だが、この胸騒ぎはなんだ?」
リブラが念の為、ラプラスの瞳でその女を見つめる。すると……
「なっ、これは……この星座は!?」
「……」
「発信機は……あった、壊れてない!!」
リブラが姿を消して……女の背中に発信機を貼り付ける。最後の力を振り絞り、リブラが走っていく。
「早く、早く報告を……!! ワハハ、ハハ、ハ……!!」
ホロスコープスの集会場へと駆け込むリブラ。そこには、明らかに不機嫌そうな神谷達がいた。
「また失敗したようだな、佐々木」
「サビ取り付けたって、無能は無能だったらしいなァ。ギヒヒヒ、いい加減死んどけよ」
「そう言えるのも今のうちだ……神谷様、ご報告がございます」
リブラが変身を解除して、満面の笑みで言う。
「なんだ、言ってみろ」
「下らないことを言ってみろ、私が切り裂いてやる!!」
「……水瓶座を、発見しました……!!!」
そこにいる者達の顔つきが、一気に変わる。
「何だと!?」
「お、ようやく見つかったのか……お目当てのモン」
「どこだ、どこにあった!? 発信機はつけたか!?」
リブラは笑って、報告を続ける。
「はい、発信機はつけてありますので……今すぐ渡しに行けますよ」
「や、やっと……やっと、私の夢が叶う日が来たぞ!!」
「おめでとうございます、社長!!」
水瓶座……アクエリアス・ゾディアーツ。これこそ、神谷の求めるスイッチだ。
「よくやった、佐々木。とりあえず、今日はもう休め。明日、もう一仕事頼もうか」
「何なりと!!」
「確実にスイッチを押させてくるんだ。アクエリアスのスイッチは我々のもの……取り逃すなよ」
神谷からスイッチを取って、変身し直すリブラ。傷を負っていたのが嘘のように、元気になっている。
「承りました!!」
「頼むぞ……ふぅ、やっとだな」
「これで一破とも殺し合えるな……だろ、社長サン?」
神谷は八神に頷いて、肯定を返す。
「あぁ、そうだな。それと神宮寺、リブラを処分するのはお前に任せる。後は適当に泳がせて……給料日前までには殺してしまえ」
「はっ……お任せを」
「ギッヒヒヒ、腹黒いこったねぇ……まぁいいさ、俺は一破と戦いたいだけだ。俺はいつもの仕事だろ? 頑張りま~す」
気だるげにそう言って、立ち去っていく八神。そんな中、神谷は電話を手に取った。電話先は……財団Xだ。
『……もしもし。神谷社長ですか?』
「あぁ、私です……関田主任はいらっしゃいますか?」
『はい、今代わりますね』
しばらくすると、電話から聞こえる声が変化して……関田に変わった。
「関田主任、お久しぶりです……スイッチの売買の件はお世話になりました」
『こちらこそ。それで、今回はどのようなご要件で? また追加注文ですか?』
「いや、今回は……アフターサービスをお願いできないか、と思いましてね」
神谷から出た言葉の意味がわからず、そのまま返す関田。
『アフターサービス、ですか……?』
「はい。私は水瓶座のスイッチを絶対に今すぐ手に入れたい。警察に奪われることなく、ね。だから……財団の技術で支援をお願いしたくて」
『……成程。暁様に確認してみます、少々お待ちください』
しばらくの沈黙の後……関田が帰ってきた。
『お待たせしました。暁様からは『金さえ払うならば、研究室にある物を使ってもいい。試作品でも時間稼ぎには十分なはずだ』とのことです……いかがですか?』
「……わかりました。また請求書を会社宛に送ってください……補助をお願いします」
『交渉成立ですね。それでは……また後で』
電話が切れたのを確認して、神谷が電話を置く。
「これで酒がもっと美味くなるな……良い報告が楽しみだ、グヒッヒッヒッ……!!」
そう言って神谷は、手元の酒を気分よく一気飲みした。
マスコミ達をどうにかして、一日が経った。リブラがいつ誰にスイッチを渡すかわからない、警戒しないとな。
「……目撃情報はない、か」
今日も手がかりはなし、と。さて……見つけられるといいんだが。
「渡す前に止めるのが一番なんだ、さっさと向かおう」
スライガーを発進させて、街をパトロールする。今のところ、これといった成果はないけど……何もしないより、ずっとマシなはずだ。そう思ってやり続けている。
「……あれ?」
ゾディアーツではないが……おかしな物を見つけた。明らかにおかしい車がいる。信号が赤なのにも関わらずスピードが上がって……
「ま、まずい……!!」
エンジンを吹かす。このままじゃ、人や車を巻き込んで大事故になるぞ……俺は止めに入ったが、もう遅い。
「止まれぇぇぇぇ!!!」
「きゃあああ!?」
「うわぁぁぁぁっ!!」
……間一髪、横断歩道の直前で止まった。だが、一人轢かれている人がいる。急いでいたのだろうか……横断歩道でない場所を走ったらしい。内蔵が零れているし、もう助からないだろう。
「上手くいったな……クククッ」
「ッ、リブラァ!!」
「お前の相手をしている暇は無い!!」
リブラが姿を消した……そこにメテオが飛んでくる。
「……メテオか!!」
「今度こそ、アンタを殺す。悪く思うな」
「チッ、仕方ない……!!」
構える……リブラが何かを言い始めた。まさか、あの人に言ってるのか? 助からないのに、何故?
「おい。そこのお前……死にたくはないだろう? これを押せ、そうすれば生きることができる。ほら……死にたくないなら、さっさと押すんだ!!」
「ファイア!!」
『Burst Mode』
させるわけにはいかない、ホロスコープスを生み出してはならないのだ。弾を撃ち込んで、妨害する。
「何をする? こいつを助けてやろうというのに……罪のない市民が死んでもいいのか?」
「ホロスコープスが生まれた場合、さらに多くの死人が出てしまう。どちらか天秤にかけた時、重いのは多数の方だ……」
「ハッ、随分と冷酷な英雄だな。しかし……私がそんな正義に従う義理はないのだ。妨害しろ、メテオ」
メテオが立ち塞がってくる……邪魔をするなら、潰すしかない。
『マーズ、Leady?』
『OK! マーズ!!』
「当たらねぇよ!!」
突き出された灼熱を回避し、拳を腹部にえぐり込む。そこから更に踏み込み、もう一発を構えた。
「ごっ、は……!!」
「スマッシュビート!!」
「ぐ、うっ、ぎぃ……がっ、あ、ぐぅっ!!」
六発打ち込んで、吹っ飛ばす。今しかないと思って、リブラに近づいたが……
「……甘いぞ」
「なに!? グォッ……!!」
「それで私を倒せると思ったか?」
地面に刺さっていた杖からエネルギーが放たれ、俺は吹っ飛ばされた。
「イ、たい……な、んで……」
「うるさい!! とっとと押せ!!」
「もう、ころ、し……」
殺されることを望むその人にも、リブラは容赦しない。スイッチを押させようとしている……
「させねぇぞ、リブラ!!」
『LIMIT BREAK!!』
「なに!?」
『OK!』
その音声が聞こえて、咄嗟に振り向くと……メテオが青い光線を放ってきた。避けきれずに何発か命中して、怯んでしまった一瞬のうちに、懐に潜り込まれた。
「でぃやぁぁぁぁっ!!!」
「うぐ、あァァ……!!」
「これでいいでしょ、さっさとしてよ!!」
メテオがリブラに向かって叫ぶ。リブラは溜息をつきながらも、スイッチをその人に押し付けている。かなり喰らってしまった、装甲がひび割れてしまっているし。
「そう急かすな。ほら……押せぇ!!」
「あ、ぎぃ……!!」
「変身された……やっぱりホロスコープスか!!」
水色の姿だ、何が起こるのだろう。そう思っていた、その時。肩にある何かから、液体が飛び出して……あの人の体を治してしまった。無惨な姿だったのが嘘のようだ。
「なっ……!?」
「カタログ通りの力だな……!!」
「雪村さん、あれは!?」
わからない。だが、今の再生能力は異常だ。一秒足らずで怪我の全てが治った。
「わかりません……でも、あの水色の奴は再生します!! 気をつけて!!」
「再生……? わかりました、百鬼さん!! お願いします!!」
「任せて!!」
あやめが走ってきた。そのまま飛び上がって、二本の刀と共に空中で体を捻り……剣を三連続で叩きつける。奴の体に、切り裂かれた跡が深々と残った。
「ぐぉぉぉっ!? 百鬼あやめか……!! まぁいい、目的は達成した……後は頼むぞ、メテオ!! アクエリアスを、絶対に回収するんだ!!」
「わかってるよ!!」
「な、なんで、どうして私は化け物になってるのよ!? ちょっと!!」
アクエリアスは、意味のわからない状況に当惑している。メテオが向かっていっているが……させるか。
「させねぇよ、メテオ!!」
「っ、くそ!!」
「変身を解いてください。そうすれば、あなたは無罪になることも可能です」
そう言って説得しているが、男は言うことを聞く気がないらしい。
「ふざけんな!! サビ残はあるし、休み無し、パワハラだらけだってのに……なんで、どうして!! 私がこんな目に遭わなきゃいけないんだぁぁッ!! ウォォォォォォォ!!!」
メテオと格闘していると、アクエリアスが逃げ去ってゆく。ホロスコープスなだけあって、凄まじいスピードだな。そう思いつつも、銃を構えて……撃った。光弾がアクエリアスの体を貫く……
「喰らえ!!」
「ぎゃっ……!!」
「……一瞬で再生した!?」
やっぱり攻撃は効かないらしい、これまで以上に厄介だ。硬いならどうにかして貫けばいいが、再生されるんじゃ、全て無駄弾になってしまう。
「捕まってなんかたまるかぁぁぁぁ!!!」
「会話をする余裕は無い、か……!!」
「余に任せて!!」
あやめが一歩前に出て、逃げるアクエリアスに対してストランザーを向けた。
『Exceed Charge』
「再生なんてさせない、塵一つ残さず燃やしてやる!!」
「っ、やらせるか……!!」
メテオが邪魔をしようとしているが……甘いな。
「させると思うか!!」
「何回も同じ手は……がぁっ!?」
「私もいるんだ。警察官を舐めるなよ!!」
そう言って、サイガフォンをメテオに向けている一破さん。あやめは思い切りぶちかませばいい……!!
「うわぁ!? こっち来ないでっ!!! この、この!!」
「鞭……!? でも、そんなに雑な使い方じゃ……余には、当たらない余!!!」
「いいぞ、あやめ!! 逃がすな!!」
メテオの妨害を二人で阻止しながら、あやめを応援する。蒸発させてしまえば、再生だってできないはず!! 金色の剣が炎に包まれ、音を伴って大きくなってゆく。あやめがそれを両手で構えて……最上段から、振り下ろす!!
「奥義!! 鬼神焦熱斬ッ!!!」
「ぐぎゃあぁぁぁぁぁぁー!!!」
「よし……決まった!!」
確実に命中した! 爆発させたし、これでスイッチが出るはずだな……そう思っていたけど、現実はそう甘くなかったらしい。
「……なにっ!?」
「いってぇぇ……このクズ野郎!!!」
「ぐぅっ!?」
油断していたのか、あやめの顔面に鞭が命中する……威力が特別異常なわけではないようだが、再生するのと合わせられると、厄介だ。攻撃して止めるという手段が取れない……
「なんて再生力……!? 逆にどうやったら死ぬの、こいつ!?」
「アクエリアス・ゾディアーツ……能力は異常なまでの再生能力、か……雪村、何か思いついたか!?」
「急かさないでください、今考えてるんです!!」
ルシファーズハンマーで灰にするか? それは無理だ、鬼神焦熱斬ですらダメなら……灰になっても戻ってくるだろう。それなら、どうするか……中の人は戦いの素人、再生されない作戦を考えてやれば、確実に成功はするだろう。
「よし……!! 二人は奴の注意を引き付けてください!!」
「何かやるんだな!?」
「わかった!!」
やってみる価値はあるだろう。そう思って、構え直すと……奴はもう、かなり遠くまで逃げていた。
「逃げ足の早いやつ……!!」
「バイク!? メテオにもバイクがあるのか……!! なら、俺も使わせてもらうぞ!!」
「スライガーで追いかけるんだな? 位置情報を頼むぞ」
頷いて、乗り込む。スライガーを発進させて、アクエリアスを追いかけてゆく……メテオはバイクで車の間を器用にすり抜けて、走るアクエリアスを追いかけていた。
「追いかけて来ないでよぉぉ!!」
「なっ……!?」
「道を塞いだ!?」
鞭を車のタイヤにひっかけて、車を事故らせ……メテオ達を止めてしまった。自分が逃げるためならば、他はどうでもいいようだな。だが、あれではみんなが……
「道が塞がってる……!?」
「アクエリアスがやったのか、なんてことを……犠牲がまた増えてしまった……!!」
「……アンタと私は飛び越えられる。オーガ、行くよ」
見失ってしまったら、それこそ被害が増大してしまうだろう。どうやら、ブラック企業勤めらしいが……次は刑務所で作業に励んでもらう。そう思って、俺はスライガーのスピードを上げた。
「見つけた……あれだな?」
あいつは逃げるために、一心不乱に走っている。奴はこっちを見上げて……どうやら気づかれたらしい、奴は周りを見回すと……街路樹や工事現場の壁など、色々な物を鞭で絡め取り、投げつけてくる。
「ついて来るなぁぁ!!」
「これも仕事なんでな……悪く思うなよ!!」
「悪く思うに決まってるでしょうが!!」
奴はなりふり構わなくなったのか……人を絡め取り、此方に投げてきた。人質を取るつもりらしいな……それなら。
「うわぁぁぁ!?」
「はい、キャッチ……!!」
「え!?」
投げられた人を受け止めて、地面に降りる。ここから走っていこう。
「大丈夫ですか?」
「は、はい……」
「それならよかった、では!!」
被害者に怪我がない事を確認した後、アクエリアスに向かって走る。さて……奴を動けないようにするには、どうすればいいか。
「来ないでって、言ってるでしょ!!」
「チッ……何でもかんでも投げやがって!!」
「康太様!!」
あやめが来てくれた、いいタイミングだ!! ということは……
「物を投げてくるなら……こっちだって、投げ物だ!!」
『サターン、Leady?』
『OK! サターン!!』
いつも通りに、メテオの掌に土星の輪を模した武器が生成されて……バイクに乗ったまま、投げつけた。しかし……
「うわっ!? 何するんだっ!!」
「弾かれた!?」
「ホロスコープスだけあって、パワーはあるようだな。あやめ、一破さんは?」
一破さんのことだし、何かをしているのだろうが……
「道路の混乱を抑えるために、交通整理に入るって!!」
「なるほど、納得……!! あやめ、奴を捕まえる!! 協力してくれ!!」
「わかった!! どうすればいい!?」
あやめにやって欲しいことを、走りながら簡潔に説明する……
「……というわけだ、頼む!!」
「諒解!! 絶対捕まえよう、康太様!!」
「よし……作戦開始だ!!」
奴に向かって、全力で走る。最初にやることは……!!
『Leady』
「チェック!!」
『Exceed Charge』
追いかけっこもここまでだ……!! 標準を合わせて……ポインターを撃った。だが、奴も黙ってはいない。
「喰らうか!!」
「物にポインターを付けさせたか……だが!!」
「ハッ……えっ、いない!? どこに行ったの!?」
メモリーを外して、ポインターモードを解除する……奴の視界が、投げた物で埋まった時を狙ったんだ。奴はド素人だからな。そのまま、ブラスターモードに移行させる。
「ファイア!!」
『Burst Mode』
「ぐぅ……効かないってわからないの!?」
案の定再生された、だろうな。だが……その油断が命取りだ。
「あぁ、わからんな!!」
『Leady』
「チェック!!」
もう一度準備をする。今度こそ、ポインターを打ち込む。
『Exceed Charge』
「無駄よ、また物で防げばいいじゃない!!」
「それは……どうかな!!」
脳波測定器が音を立て始めた、決着をつけてやる!! そう思って、投げられた街路樹を避けた後、奴にポインターを打ち込む。奴は、近くにあった放置自転車で防いでみせた。
「バカね!! 投げ返して……」
「甘いのはお前の方だ!!」
「なっ……ぐぅ!?」
地面に雷を叩きつけて、目眩し。目が眩んだ状態で、物を投げようとは思わないだろう……その一瞬で、俺は奴に接近して……足裏をポインターへ、突き出す。
「だぁぁりゃあぁぁぁッ!!!」
「喰らってなど……やるものかぁぁぁ!!!」
「ごふっ!?」
奴は最後の足掻きで、適当に自転車を振り回してきた。それは俺の顔面に命中して、思わず怯んでしまう……その隙を逃さず、奴が鞭を振り上げた。
「そこだ!! くたばれぇぇ!!」
「死ぬ前に、一ついいか……? 調子に乗ってると、足を掬われるぜ」
「は? ……がぁっ!?」
後ろから伸びてきた、オーガストラッシュ。俺自身が囮……本命はこっちだ。足を掬われた奴は、剣の先端に捕まって、動けなくなっている。
「成功だ!!」
「ってことは、今までの全部陽動……!?」
「そういうことだね!!」
捕獲完了。奴はもう動けない……さて、ここからどうするかだな……
「くそぉ、離せ!! 離せぇぇ!!」
「断る。あやめ、そのまま持っててくれよ」
「うん!」
攻撃すれば、再生で抜け出されるかもしれない。そうなったら、この作戦は水の泡だ。いくらど素人とはいえ同じ手は通じないだろう。
「……とりあえず、変身を解いておこう」
「なに? このまま放置するってこと? それじゃ困るんだよね」
「違う。これを使い続けると、俺は脳が物理的に壊れて死ぬことになる……デルタギアの『デモンズスレート』でな」
それを言うと……メテオは困惑しているようだった。そんなデメリット聞いたことがない、ってか?
「あるのは知ってたけど……死ぬの? スペックに対してデメリットが重すぎるでしょ……」
「それでも使うしかないんだよ。これしか、俺が使えるベルトは無い」
「早く装置を使わないと、まずいんじゃ……?」
確かに、耐え切れるラインをオーバーしかかっているな。早くしなければ、俺は死ぬかもしれない……装置を使いに行く必要があるな。とはいえ、学園までは相当に遠いぞ。
「離せって言ってるでしょ!?」
「……あやめ、腕疲れてないか?」
「ちょっとだけ……でも、大丈夫!!」
暴れ続けるアクエリアスを抑え続けるのは、あやめの体力が持たないかもしれない。早く考えないと……どうすればいいだろうか。
「早く考えてよ!! あの子の命がかかってるんだ……!! 失敗できないのっ!! 私も協力するから、早く!!」
「うるせぇ、メテオ!! 考えてんだから、黙ってろ……ぐぅぅ……!!」
「康太様……デモンズスレートが……!!」
どんどん上がっている、まずい。早く何とかしなければ……全員が焦っていた、その時。
「メテオ、デルタ、オーガ……どんなものかと期待して来てみたが、拍子抜けだな。これくらいのゾディアーツすら倒せないとは」
「まぁ……払ってもらった分は、キッチリやらせてもらいますけど……」
「仕事中に私語を挟むな。我々の任務はアクエリアスの撃破……準備はできているな!?」
どこからか声が聞こえたかと思うと、三人の男の人が出てきた。一人目は赤、二人目は黄、三人目は青の服を着ており、髪も目も服装と同じ色をしている。彼らは、一体?
「誰だ……?」
「何あれ? 聞いてないんだけど……?」
「待って、なにか腕に付けてない?」
あやめの言う通り、腕に黒っぽい何かがついている。その三人は懐から、丸い何かを取り出した。色は三人の色と対応しているようだ……あれは、一体?
「行くぞ、戦闘準備だ!! 見てろよ、雑魚ども!!」
「ま、やってやりますか」
「……ハッ!!」
丸っこい物を持って、全員がポーズを取る。そして、一斉に腕の何かへと差し込んだ。
「……変身!!」
「変身……」
「変身ッ!!」
三人の口から出た言葉に、耳を疑う。
「変身だって!?」
「ってことは……ライダーなの!?」
「嘘……!? 聞いてないぞ、ヴァルゴ!?」
メテオがヴァルゴに呼びかけている……そこで、腕の機械から音がした。そして、何かがその機械から飛び出す。
『ローディング!!』
『ネ ク ロ ム !!』
「……三色の、ライダー!?」
赤、青、黄色の三色のパーカー……のような、生物を身に纏って現れた、三人のライダー……ネクロム。
「貴様ら、ゴーストが見えるのか……まぁいい。見えたところでどうにもならん……どけ、邪魔だ」
「ぐっ!? つ、強い……!?」
「なんてパワーだ……!!」
オーガは為す術なく、吹っ飛ばされてしまった。奴が解放されたが……
「よし!! に、逃げ……」
「逃がすな」
「了解」
三人が奴を囲いこんだ。奴は怒り、鞭を奴らに向けている……
「邪魔すんじゃ、ねぇ!!」
「……弱いな」
「受け止めた!?」
思い切り振られた鞭を受け止めたのに、ネクロム達はダメージを負った様子がない。それどころか、受け止められたアクエリアスの方が動けていない。
「は、離せぇ!!」
「プランAだ。実行せよ」
「はい、隊長」
どうやって倒す気だろう。奴はどんな攻撃をしても、再生してしまうが……そう思っていると、青いネクロムは、腕の機械から大きな剣を取り出した。
「相変わらず物理法則も何も無いな……!!」
「終わりだ、ド素人」
「じゃあな」
そう言って、残りの二人が腕の機械のスイッチを押すと……また音声が鳴り、足元にエネルギーが溜まってゆく。
『Destroy!!』
「足にエネルギーが……」
「フン!!」
青いネクロムが取り出した剣を振り……両肩の水瓶を同時に破壊した。奴の首筋に大きな傷が入る……
「グェェェッ!?」
「再生しない……同時に破壊すればよかったのか!!」
「ドォリャアァァァ!!」
「シャアァァァァ!!」
残りの二人が、すかさず黄色と赤のエネルギーが充填された足裏を、奴に叩き込んで……吹っ飛ばした。
「ギャアァァァァァ……!!!」
「……強い……」
「奴を一瞬で……!? あのシステムも見たことがないし、ネクロムって一体何者……!?」
そこで、一破さんが来てくれた。一破さんも、状況が分からないようだ。
「な、なんだ……? 三色のライダー? 味方なのか……? 雪村! 何がどうなっている!?」
「僕にもよく、わからなくて……急に来たと思ったら、すごい力でアクエリアスを……一瞬で……」
「余がすぐに吹っ飛ばされた。ただ者じゃない余……」
一破さんもよくわからない様子でいる……が、俺から鳴る音を聞いて血相を変えた。俺に抑制装置を被せてくれている……
「これは……危険域に入っているぞ!! 何をやってる、早くこれを使え!!」
「あ、りが、とう、ござい、ます……」
「百鬼さん! 早く雪村を寮に連れていけ、オーガならそこまで時間はかからん!!」
自分で歩く、と言いたいところだが……目眩がして、強い吐き気がしている。体にも力が入らない……運んでもらうしかないか。
「ごめん、なさい……」
「いい余、気にしないで!! デルタギア使っちゃダメだ余!!」
「メテオ。これが約束のスイッチだ……ほら」
そう言って、ネクロムはアクエリアスのスイッチを、メテオに渡してしまった。
「な……何をやっているんだ!? メテオは敵の刺客なんだ、そんなことも知らないのか!?」
「知っていてやっているんだよ……」
「ひ、ひぃぃっ……!!」
アクエリアスになっていた奴が逃げようとしている、捕まえないと。そう思って、手を伸ばす。
「待て……ッ……」
「私が追いかける、お前はじっとしていろ!!」
「そんなことしなくても……手伝ってやるよ」
そう言って、赤い奴が今度は手のようなものを取り出した。あれも武器の一種なのだろうか、そう考えていると……
「なに?」
「喰らいやがれぇ!!」
「ぁ」
ズドン、と。大きな音と共に……エネルギー弾が放たれ、逃げようとしていた奴の首から上を、消し飛ばしてしまった。首を無くした体が、地面に倒れる。
「はい、被疑者死亡~……へへへ、喜べ!! 捕まえやすいだろぉ? 感謝しやがれ!!」
「お遊びが過ぎるぞ、遊佐」
「へいへい、鳳隊長はお堅いねぇ」
人の死体を前にそう言って、笑う三人。
「何をやっている!! 貴様らがやったのはただの私刑だ!! 奴にはもう、戦う能力は完全になかった。殺すとしても、それを実行するのは警察だ!! お前らが勝手にやっていいことではない!!!」
「テメェらが弱いから、やってやっただけだよ。バーカバーカ……ペッ」
「人様に戦わせといて何言ってんだか……ケッケッケ」
死体を前に嘲笑うネクロム達。三人のネクロムが……構えを取った。
「な、なに!?」
「俺達は財団Xの小隊。暁様から賜った、命令により……貴様らを殺害する」
「財団、X……!!」
再び俺達の前に立ち塞がった、財団X。その上、俺は戦闘不能状態……大幅に不利な状況下で、戦いの火蓋は切られた。
財団X、再登場。