※この作品はR-18です。

仮面を被った、人間達の英雄譚   作:とも667

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 お待たせしました。


財・団・支・援

……カプリコーンが撃破された後、メテオに吹っ飛ばされたリブラは……ボロボロの状態で何とか歩いていた。錫杖を松葉杖にして、恨み言を言っている。

 

「く、くそぉぉ……メテオめ、帰ったらタダではおかんぞ、絶対に奴を処刑してやる!!」

 

 足を引きずりながら、壁に手をついて歩くリブラ……その時、リブラの目にあるものが見えた。深夜まで営業している、レストランの中で食事をしている女性だ。

 

「あれは……?」

 

「……くそっ、今日もパワハラにセクハラに……どうして私がこんな目に!!」

 

「痩せているな。だが、この胸騒ぎはなんだ?」

 

 リブラが念の為、ラプラスの瞳でその女を見つめる。すると……

 

「なっ、これは……この星座は!?」

 

「……」

 

「発信機は……あった、壊れてない!!」

 

 リブラが姿を消して……女の背中に発信機を貼り付ける。最後の力を振り絞り、リブラが走っていく。

 

「早く、早く報告を……!! ワハハ、ハハ、ハ……!!」

 

 ホロスコープスの集会場へと駆け込むリブラ。そこには、明らかに不機嫌そうな神谷達がいた。

 

「また失敗したようだな、佐々木」

 

「サビ取り付けたって、無能は無能だったらしいなァ。ギヒヒヒ、いい加減死んどけよ」

 

「そう言えるのも今のうちだ……神谷様、ご報告がございます」

 

 リブラが変身を解除して、満面の笑みで言う。

 

「なんだ、言ってみろ」

 

「下らないことを言ってみろ、私が切り裂いてやる!!」

 

「……水瓶座を、発見しました……!!!」

 

 そこにいる者達の顔つきが、一気に変わる。

 

「何だと!?」

 

「お、ようやく見つかったのか……お目当てのモン」

 

「どこだ、どこにあった!? 発信機はつけたか!?」

 

 リブラは笑って、報告を続ける。

 

「はい、発信機はつけてありますので……今すぐ渡しに行けますよ」

 

「や、やっと……やっと、私の夢が叶う日が来たぞ!!」

 

「おめでとうございます、社長!!」

 

 水瓶座……アクエリアス・ゾディアーツ。これこそ、神谷の求めるスイッチだ。

 

「よくやった、佐々木。とりあえず、今日はもう休め。明日、もう一仕事頼もうか」

 

「何なりと!!」

 

「確実にスイッチを押させてくるんだ。アクエリアスのスイッチは我々のもの……取り逃すなよ」

 

 神谷からスイッチを取って、変身し直すリブラ。傷を負っていたのが嘘のように、元気になっている。

 

「承りました!!」

 

「頼むぞ……ふぅ、やっとだな」

 

「これで一破とも殺し合えるな……だろ、社長サン?」

 

 神谷は八神に頷いて、肯定を返す。

 

「あぁ、そうだな。それと神宮寺、リブラを処分するのはお前に任せる。後は適当に泳がせて……給料日前までには殺してしまえ」

 

「はっ……お任せを」

 

「ギッヒヒヒ、腹黒いこったねぇ……まぁいいさ、俺は一破と戦いたいだけだ。俺はいつもの仕事だろ? 頑張りま~す」

 

 気だるげにそう言って、立ち去っていく八神。そんな中、神谷は電話を手に取った。電話先は……財団Xだ。

 

『……もしもし。神谷社長ですか?』

 

「あぁ、私です……関田主任はいらっしゃいますか?」

 

『はい、今代わりますね』

 

 しばらくすると、電話から聞こえる声が変化して……関田に変わった。

 

「関田主任、お久しぶりです……スイッチの売買の件はお世話になりました」

 

『こちらこそ。それで、今回はどのようなご要件で? また追加注文ですか?』

 

「いや、今回は……アフターサービスをお願いできないか、と思いましてね」

 

 神谷から出た言葉の意味がわからず、そのまま返す関田。

 

『アフターサービス、ですか……?』

 

「はい。私は水瓶座のスイッチを絶対に今すぐ手に入れたい。警察に奪われることなく、ね。だから……財団の技術で支援をお願いしたくて」

 

『……成程。暁様に確認してみます、少々お待ちください』

 

 しばらくの沈黙の後……関田が帰ってきた。

 

『お待たせしました。暁様からは『金さえ払うならば、研究室にある物を使ってもいい。試作品でも時間稼ぎには十分なはずだ』とのことです……いかがですか?』

 

「……わかりました。また請求書を会社宛に送ってください……補助をお願いします」

 

『交渉成立ですね。それでは……また後で』

 

 電話が切れたのを確認して、神谷が電話を置く。

 

「これで酒がもっと美味くなるな……良い報告が楽しみだ、グヒッヒッヒッ……!!」

 

 そう言って神谷は、手元の酒を気分よく一気飲みした。

 

 

 

 マスコミ達をどうにかして、一日が経った。リブラがいつ誰にスイッチを渡すかわからない、警戒しないとな。

 

「……目撃情報はない、か」

 

 今日も手がかりはなし、と。さて……見つけられるといいんだが。

 

「渡す前に止めるのが一番なんだ、さっさと向かおう」

 

 スライガーを発進させて、街をパトロールする。今のところ、これといった成果はないけど……何もしないより、ずっとマシなはずだ。そう思ってやり続けている。

 

「……あれ?」

 

 ゾディアーツではないが……おかしな物を見つけた。明らかにおかしい車がいる。信号が赤なのにも関わらずスピードが上がって……

 

「ま、まずい……!!」

 

 エンジンを吹かす。このままじゃ、人や車を巻き込んで大事故になるぞ……俺は止めに入ったが、もう遅い。

 

「止まれぇぇぇぇ!!!」

 

「きゃあああ!?」

 

「うわぁぁぁぁっ!!」

 

 ……間一髪、横断歩道の直前で止まった。だが、一人轢かれている人がいる。急いでいたのだろうか……横断歩道でない場所を走ったらしい。内蔵が零れているし、もう助からないだろう。

 

「上手くいったな……クククッ」

 

「ッ、リブラァ!!」

 

「お前の相手をしている暇は無い!!」

 

 リブラが姿を消した……そこにメテオが飛んでくる。

 

「……メテオか!!」

 

「今度こそ、アンタを殺す。悪く思うな」

 

「チッ、仕方ない……!!」

 

 構える……リブラが何かを言い始めた。まさか、あの人に言ってるのか? 助からないのに、何故?

 

「おい。そこのお前……死にたくはないだろう? これを押せ、そうすれば生きることができる。ほら……死にたくないなら、さっさと押すんだ!!」

 

「ファイア!!」

 

『Burst Mode』

 

 させるわけにはいかない、ホロスコープスを生み出してはならないのだ。弾を撃ち込んで、妨害する。

 

「何をする? こいつを助けてやろうというのに……罪のない市民が死んでもいいのか?」

 

「ホロスコープスが生まれた場合、さらに多くの死人が出てしまう。どちらか天秤にかけた時、重いのは多数の方だ……」

 

「ハッ、随分と冷酷な英雄だな。しかし……私がそんな正義に従う義理はないのだ。妨害しろ、メテオ」

 

 メテオが立ち塞がってくる……邪魔をするなら、潰すしかない。

 

『マーズ、Leady?』

 

『OK! マーズ!!』

 

「当たらねぇよ!!」

 

 突き出された灼熱を回避し、拳を腹部にえぐり込む。そこから更に踏み込み、もう一発を構えた。

 

「ごっ、は……!!」

 

「スマッシュビート!!」

 

「ぐ、うっ、ぎぃ……がっ、あ、ぐぅっ!!」

 

 六発打ち込んで、吹っ飛ばす。今しかないと思って、リブラに近づいたが……

 

「……甘いぞ」

 

「なに!? グォッ……!!」

 

「それで私を倒せると思ったか?」

 

 地面に刺さっていた杖からエネルギーが放たれ、俺は吹っ飛ばされた。

 

「イ、たい……な、んで……」

 

「うるさい!! とっとと押せ!!」

 

「もう、ころ、し……」

 

 殺されることを望むその人にも、リブラは容赦しない。スイッチを押させようとしている……

 

「させねぇぞ、リブラ!!」

 

『LIMIT BREAK!!』

 

「なに!?」

 

『OK!』

 

 その音声が聞こえて、咄嗟に振り向くと……メテオが青い光線を放ってきた。避けきれずに何発か命中して、怯んでしまった一瞬のうちに、懐に潜り込まれた。

 

「でぃやぁぁぁぁっ!!!」

 

「うぐ、あァァ……!!」

 

「これでいいでしょ、さっさとしてよ!!」

 

 メテオがリブラに向かって叫ぶ。リブラは溜息をつきながらも、スイッチをその人に押し付けている。かなり喰らってしまった、装甲がひび割れてしまっているし。

 

「そう急かすな。ほら……押せぇ!!」

 

「あ、ぎぃ……!!」

 

「変身された……やっぱりホロスコープスか!!」

 

 水色の姿だ、何が起こるのだろう。そう思っていた、その時。肩にある何かから、液体が飛び出して……あの人の体を治してしまった。無惨な姿だったのが嘘のようだ。

 

「なっ……!?」

 

「カタログ通りの力だな……!!」

 

「雪村さん、あれは!?」

 

 わからない。だが、今の再生能力は異常だ。一秒足らずで怪我の全てが治った。

 

「わかりません……でも、あの水色の奴は再生します!! 気をつけて!!」

 

「再生……? わかりました、百鬼さん!! お願いします!!」

 

「任せて!!」

 

 あやめが走ってきた。そのまま飛び上がって、二本の刀と共に空中で体を捻り……剣を三連続で叩きつける。奴の体に、切り裂かれた跡が深々と残った。

 

「ぐぉぉぉっ!? 百鬼あやめか……!! まぁいい、目的は達成した……後は頼むぞ、メテオ!! アクエリアスを、絶対に回収するんだ!!」

 

「わかってるよ!!」

 

「な、なんで、どうして私は化け物になってるのよ!? ちょっと!!」

 

 アクエリアスは、意味のわからない状況に当惑している。メテオが向かっていっているが……させるか。

 

「させねぇよ、メテオ!!」

 

「っ、くそ!!」

 

「変身を解いてください。そうすれば、あなたは無罪になることも可能です」

 

 そう言って説得しているが、男は言うことを聞く気がないらしい。

 

「ふざけんな!! サビ残はあるし、休み無し、パワハラだらけだってのに……なんで、どうして!! 私がこんな目に遭わなきゃいけないんだぁぁッ!! ウォォォォォォォ!!!」

 

 メテオと格闘していると、アクエリアスが逃げ去ってゆく。ホロスコープスなだけあって、凄まじいスピードだな。そう思いつつも、銃を構えて……撃った。光弾がアクエリアスの体を貫く……

 

「喰らえ!!」

 

「ぎゃっ……!!」

 

「……一瞬で再生した!?」

 

 やっぱり攻撃は効かないらしい、これまで以上に厄介だ。硬いならどうにかして貫けばいいが、再生されるんじゃ、全て無駄弾になってしまう。

 

「捕まってなんかたまるかぁぁぁぁ!!!」

 

「会話をする余裕は無い、か……!!」

 

「余に任せて!!」

 

 あやめが一歩前に出て、逃げるアクエリアスに対してストランザーを向けた。

 

『Exceed Charge』

 

「再生なんてさせない、塵一つ残さず燃やしてやる!!」

 

「っ、やらせるか……!!」

 

 メテオが邪魔をしようとしているが……甘いな。

 

「させると思うか!!」

 

「何回も同じ手は……がぁっ!?」

 

「私もいるんだ。警察官を舐めるなよ!!」

 

 そう言って、サイガフォンをメテオに向けている一破さん。あやめは思い切りぶちかませばいい……!!

 

「うわぁ!? こっち来ないでっ!!! この、この!!」

 

「鞭……!? でも、そんなに雑な使い方じゃ……余には、当たらない余!!!」

 

「いいぞ、あやめ!! 逃がすな!!」

 

 メテオの妨害を二人で阻止しながら、あやめを応援する。蒸発させてしまえば、再生だってできないはず!! 金色の剣が炎に包まれ、音を伴って大きくなってゆく。あやめがそれを両手で構えて……最上段から、振り下ろす!!

 

「奥義!! 鬼神焦熱斬ッ!!!」

 

「ぐぎゃあぁぁぁぁぁぁー!!!」

 

「よし……決まった!!」

 

 確実に命中した! 爆発させたし、これでスイッチが出るはずだな……そう思っていたけど、現実はそう甘くなかったらしい。

 

「……なにっ!?」

 

「いってぇぇ……このクズ野郎!!!」

 

「ぐぅっ!?」

 

 油断していたのか、あやめの顔面に鞭が命中する……威力が特別異常なわけではないようだが、再生するのと合わせられると、厄介だ。攻撃して止めるという手段が取れない……

 

「なんて再生力……!? 逆にどうやったら死ぬの、こいつ!?」

 

「アクエリアス・ゾディアーツ……能力は異常なまでの再生能力、か……雪村、何か思いついたか!?」

 

「急かさないでください、今考えてるんです!!」

 

 ルシファーズハンマーで灰にするか? それは無理だ、鬼神焦熱斬ですらダメなら……灰になっても戻ってくるだろう。それなら、どうするか……中の人は戦いの素人、再生されない作戦を考えてやれば、確実に成功はするだろう。

 

「よし……!! 二人は奴の注意を引き付けてください!!」

 

「何かやるんだな!?」

 

「わかった!!」

 

 やってみる価値はあるだろう。そう思って、構え直すと……奴はもう、かなり遠くまで逃げていた。

 

「逃げ足の早いやつ……!!」

 

「バイク!? メテオにもバイクがあるのか……!! なら、俺も使わせてもらうぞ!!」

 

「スライガーで追いかけるんだな? 位置情報を頼むぞ」

 

 頷いて、乗り込む。スライガーを発進させて、アクエリアスを追いかけてゆく……メテオはバイクで車の間を器用にすり抜けて、走るアクエリアスを追いかけていた。

 

「追いかけて来ないでよぉぉ!!」

 

「なっ……!?」

 

「道を塞いだ!?」

 

 鞭を車のタイヤにひっかけて、車を事故らせ……メテオ達を止めてしまった。自分が逃げるためならば、他はどうでもいいようだな。だが、あれではみんなが……

 

「道が塞がってる……!?」

 

「アクエリアスがやったのか、なんてことを……犠牲がまた増えてしまった……!!」

 

「……アンタと私は飛び越えられる。オーガ、行くよ」

 

 見失ってしまったら、それこそ被害が増大してしまうだろう。どうやら、ブラック企業勤めらしいが……次は刑務所で作業に励んでもらう。そう思って、俺はスライガーのスピードを上げた。

 

「見つけた……あれだな?」

 

 あいつは逃げるために、一心不乱に走っている。奴はこっちを見上げて……どうやら気づかれたらしい、奴は周りを見回すと……街路樹や工事現場の壁など、色々な物を鞭で絡め取り、投げつけてくる。

 

「ついて来るなぁぁ!!」

 

「これも仕事なんでな……悪く思うなよ!!」

 

「悪く思うに決まってるでしょうが!!」

 

 奴はなりふり構わなくなったのか……人を絡め取り、此方に投げてきた。人質を取るつもりらしいな……それなら。

 

「うわぁぁぁ!?」

 

「はい、キャッチ……!!」

 

「え!?」

 

 投げられた人を受け止めて、地面に降りる。ここから走っていこう。

 

「大丈夫ですか?」

 

「は、はい……」

 

「それならよかった、では!!」

 

 被害者に怪我がない事を確認した後、アクエリアスに向かって走る。さて……奴を動けないようにするには、どうすればいいか。

 

「来ないでって、言ってるでしょ!!」

 

「チッ……何でもかんでも投げやがって!!」

 

「康太様!!」

 

 あやめが来てくれた、いいタイミングだ!! ということは……

 

「物を投げてくるなら……こっちだって、投げ物だ!!」

 

『サターン、Leady?』

 

『OK! サターン!!』

 

 いつも通りに、メテオの掌に土星の輪を模した武器が生成されて……バイクに乗ったまま、投げつけた。しかし……

 

「うわっ!? 何するんだっ!!」

 

「弾かれた!?」

 

「ホロスコープスだけあって、パワーはあるようだな。あやめ、一破さんは?」

 

 一破さんのことだし、何かをしているのだろうが……

 

「道路の混乱を抑えるために、交通整理に入るって!!」

 

「なるほど、納得……!! あやめ、奴を捕まえる!! 協力してくれ!!」

 

「わかった!! どうすればいい!?」

 

 あやめにやって欲しいことを、走りながら簡潔に説明する……

 

「……というわけだ、頼む!!」

 

「諒解!! 絶対捕まえよう、康太様!!」

 

「よし……作戦開始だ!!」

 

 奴に向かって、全力で走る。最初にやることは……!!

 

『Leady』

 

「チェック!!」

 

『Exceed Charge』

 

 追いかけっこもここまでだ……!! 標準を合わせて……ポインターを撃った。だが、奴も黙ってはいない。

 

「喰らうか!!」

 

「物にポインターを付けさせたか……だが!!」

 

「ハッ……えっ、いない!? どこに行ったの!?」

 

 メモリーを外して、ポインターモードを解除する……奴の視界が、投げた物で埋まった時を狙ったんだ。奴はド素人だからな。そのまま、ブラスターモードに移行させる。

 

「ファイア!!」

 

『Burst Mode』

 

「ぐぅ……効かないってわからないの!?」

 

 案の定再生された、だろうな。だが……その油断が命取りだ。

 

「あぁ、わからんな!!」

 

『Leady』

 

「チェック!!」

 

 もう一度準備をする。今度こそ、ポインターを打ち込む。

 

『Exceed Charge』

 

「無駄よ、また物で防げばいいじゃない!!」

 

「それは……どうかな!!」

 

 脳波測定器が音を立て始めた、決着をつけてやる!! そう思って、投げられた街路樹を避けた後、奴にポインターを打ち込む。奴は、近くにあった放置自転車で防いでみせた。

 

「バカね!! 投げ返して……」

 

「甘いのはお前の方だ!!」

 

「なっ……ぐぅ!?」

 

 地面に雷を叩きつけて、目眩し。目が眩んだ状態で、物を投げようとは思わないだろう……その一瞬で、俺は奴に接近して……足裏をポインターへ、突き出す。

 

「だぁぁりゃあぁぁぁッ!!!」

 

「喰らってなど……やるものかぁぁぁ!!!」

 

「ごふっ!?」

 

 奴は最後の足掻きで、適当に自転車を振り回してきた。それは俺の顔面に命中して、思わず怯んでしまう……その隙を逃さず、奴が鞭を振り上げた。

 

「そこだ!! くたばれぇぇ!!」

 

「死ぬ前に、一ついいか……? 調子に乗ってると、足を掬われるぜ」

 

「は? ……がぁっ!?」

 

 後ろから伸びてきた、オーガストラッシュ。俺自身が囮……本命はこっちだ。足を掬われた奴は、剣の先端に捕まって、動けなくなっている。

 

「成功だ!!」

 

「ってことは、今までの全部陽動……!?」

 

「そういうことだね!!」

 

 捕獲完了。奴はもう動けない……さて、ここからどうするかだな……

 

「くそぉ、離せ!! 離せぇぇ!!」

 

「断る。あやめ、そのまま持っててくれよ」

 

「うん!」

 

 攻撃すれば、再生で抜け出されるかもしれない。そうなったら、この作戦は水の泡だ。いくらど素人とはいえ同じ手は通じないだろう。

 

「……とりあえず、変身を解いておこう」

 

「なに? このまま放置するってこと? それじゃ困るんだよね」

 

「違う。これを使い続けると、俺は脳が物理的に壊れて死ぬことになる……デルタギアの『デモンズスレート』でな」

 

 それを言うと……メテオは困惑しているようだった。そんなデメリット聞いたことがない、ってか?

 

「あるのは知ってたけど……死ぬの? スペックに対してデメリットが重すぎるでしょ……」

 

「それでも使うしかないんだよ。これしか、俺が使えるベルトは無い」

 

「早く装置を使わないと、まずいんじゃ……?」

 

 確かに、耐え切れるラインをオーバーしかかっているな。早くしなければ、俺は死ぬかもしれない……装置を使いに行く必要があるな。とはいえ、学園までは相当に遠いぞ。

 

「離せって言ってるでしょ!?」

 

「……あやめ、腕疲れてないか?」

 

「ちょっとだけ……でも、大丈夫!!」

 

 暴れ続けるアクエリアスを抑え続けるのは、あやめの体力が持たないかもしれない。早く考えないと……どうすればいいだろうか。

 

「早く考えてよ!! あの子の命がかかってるんだ……!! 失敗できないのっ!! 私も協力するから、早く!!」

 

「うるせぇ、メテオ!! 考えてんだから、黙ってろ……ぐぅぅ……!!」

 

「康太様……デモンズスレートが……!!」

 

 どんどん上がっている、まずい。早く何とかしなければ……全員が焦っていた、その時。

 

「メテオ、デルタ、オーガ……どんなものかと期待して来てみたが、拍子抜けだな。これくらいのゾディアーツすら倒せないとは」

 

「まぁ……払ってもらった分は、キッチリやらせてもらいますけど……」

 

「仕事中に私語を挟むな。我々の任務はアクエリアスの撃破……準備はできているな!?」

 

 どこからか声が聞こえたかと思うと、三人の男の人が出てきた。一人目は赤、二人目は黄、三人目は青の服を着ており、髪も目も服装と同じ色をしている。彼らは、一体?

 

「誰だ……?」

 

「何あれ? 聞いてないんだけど……?」

 

「待って、なにか腕に付けてない?」

 

 あやめの言う通り、腕に黒っぽい何かがついている。その三人は懐から、丸い何かを取り出した。色は三人の色と対応しているようだ……あれは、一体?

 

「行くぞ、戦闘準備だ!! 見てろよ、雑魚ども!!」

 

「ま、やってやりますか」

 

「……ハッ!!」

 

 丸っこい物を持って、全員がポーズを取る。そして、一斉に腕の何かへと差し込んだ。

 

「……変身!!」

 

「変身……」

 

「変身ッ!!」

 

 三人の口から出た言葉に、耳を疑う。

 

「変身だって!?」

 

「ってことは……ライダーなの!?」

 

「嘘……!? 聞いてないぞ、ヴァルゴ!?」

 

 メテオがヴァルゴに呼びかけている……そこで、腕の機械から音がした。そして、何かがその機械から飛び出す。

 

『ローディング!!』

 

『ネ ク ロ ム !!』

 

「……三色の、ライダー!?」

 

 赤、青、黄色の三色のパーカー……のような、生物を身に纏って現れた、三人のライダー……ネクロム。

 

「貴様ら、ゴーストが見えるのか……まぁいい。見えたところでどうにもならん……どけ、邪魔だ」

 

「ぐっ!? つ、強い……!?」

 

「なんてパワーだ……!!」

 

 オーガは為す術なく、吹っ飛ばされてしまった。奴が解放されたが……

 

「よし!! に、逃げ……」

 

「逃がすな」

 

「了解」

 

 三人が奴を囲いこんだ。奴は怒り、鞭を奴らに向けている……

 

「邪魔すんじゃ、ねぇ!!」

 

「……弱いな」

 

「受け止めた!?」

 

 思い切り振られた鞭を受け止めたのに、ネクロム達はダメージを負った様子がない。それどころか、受け止められたアクエリアスの方が動けていない。

 

「は、離せぇ!!」

 

「プランAだ。実行せよ」

 

「はい、隊長」

 

 どうやって倒す気だろう。奴はどんな攻撃をしても、再生してしまうが……そう思っていると、青いネクロムは、腕の機械から大きな剣を取り出した。

 

「相変わらず物理法則も何も無いな……!!」

 

「終わりだ、ド素人」

 

「じゃあな」

 

 そう言って、残りの二人が腕の機械のスイッチを押すと……また音声が鳴り、足元にエネルギーが溜まってゆく。

 

『Destroy!!』

 

「足にエネルギーが……」

 

「フン!!」

 

 青いネクロムが取り出した剣を振り……両肩の水瓶を同時に破壊した。奴の首筋に大きな傷が入る……

 

「グェェェッ!?」

 

「再生しない……同時に破壊すればよかったのか!!」

 

「ドォリャアァァァ!!」

 

「シャアァァァァ!!」

 

 残りの二人が、すかさず黄色と赤のエネルギーが充填された足裏を、奴に叩き込んで……吹っ飛ばした。

 

「ギャアァァァァァ……!!!」

 

「……強い……」

 

「奴を一瞬で……!? あのシステムも見たことがないし、ネクロムって一体何者……!?」

 

 そこで、一破さんが来てくれた。一破さんも、状況が分からないようだ。

 

「な、なんだ……? 三色のライダー? 味方なのか……? 雪村! 何がどうなっている!?」

 

「僕にもよく、わからなくて……急に来たと思ったら、すごい力でアクエリアスを……一瞬で……」

 

「余がすぐに吹っ飛ばされた。ただ者じゃない余……」

 

 一破さんもよくわからない様子でいる……が、俺から鳴る音を聞いて血相を変えた。俺に抑制装置を被せてくれている……

 

「これは……危険域に入っているぞ!! 何をやってる、早くこれを使え!!」

 

「あ、りが、とう、ござい、ます……」

 

「百鬼さん! 早く雪村を寮に連れていけ、オーガならそこまで時間はかからん!!」

 

 自分で歩く、と言いたいところだが……目眩がして、強い吐き気がしている。体にも力が入らない……運んでもらうしかないか。

 

「ごめん、なさい……」

 

「いい余、気にしないで!! デルタギア使っちゃダメだ余!!」

 

「メテオ。これが約束のスイッチだ……ほら」

 

 そう言って、ネクロムはアクエリアスのスイッチを、メテオに渡してしまった。

 

「な……何をやっているんだ!? メテオは敵の刺客なんだ、そんなことも知らないのか!?」

 

「知っていてやっているんだよ……」

 

「ひ、ひぃぃっ……!!」

 

 アクエリアスになっていた奴が逃げようとしている、捕まえないと。そう思って、手を伸ばす。

 

「待て……ッ……」

 

「私が追いかける、お前はじっとしていろ!!」

 

「そんなことしなくても……手伝ってやるよ」

 

 そう言って、赤い奴が今度は手のようなものを取り出した。あれも武器の一種なのだろうか、そう考えていると……

 

「なに?」

 

「喰らいやがれぇ!!」

 

「ぁ」

 

 ズドン、と。大きな音と共に……エネルギー弾が放たれ、逃げようとしていた奴の首から上を、消し飛ばしてしまった。首を無くした体が、地面に倒れる。

 

「はい、被疑者死亡~……へへへ、喜べ!! 捕まえやすいだろぉ? 感謝しやがれ!!」

 

「お遊びが過ぎるぞ、遊佐」

 

「へいへい、鳳隊長はお堅いねぇ」

 

 人の死体を前にそう言って、笑う三人。

 

「何をやっている!! 貴様らがやったのはただの私刑だ!! 奴にはもう、戦う能力は完全になかった。殺すとしても、それを実行するのは警察だ!! お前らが勝手にやっていいことではない!!!」

 

「テメェらが弱いから、やってやっただけだよ。バーカバーカ……ペッ」

 

「人様に戦わせといて何言ってんだか……ケッケッケ」

 

 死体を前に嘲笑うネクロム達。三人のネクロムが……構えを取った。

 

「な、なに!?」

 

「俺達は財団Xの小隊。暁様から賜った、命令により……貴様らを殺害する」

 

「財団、X……!!」

 

 再び俺達の前に立ち塞がった、財団X。その上、俺は戦闘不能状態……大幅に不利な状況下で、戦いの火蓋は切られた。




財団X、再登場。
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