※この作品はR-18です。

仮面を被った、人間達の英雄譚   作:とも667

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お久しぶりです。よければ、またよろしくお願いします。


契・約・破・棄

リブラがメテオによって殺害された、その日の深夜……いつもとは打って変わって、明るいムードで会議は開始された。

 

「これで邪魔者はいなくなった……ここまで、長かったな」

 

「あぁ、本当にな……我々の計画が果たされる日も近いぞ」

 

「それで……メテオの処遇は? 一応『フォームチェンジ』用のアイテムが出来上がったと、報告が上がっていますが……」

 

 神谷は微小を浮かべながら、神宮寺の問いに答えた。

 

「メテオか……もう用はないしな。後はお前と私がいればいい。殺してしまえ……例のアイテムも捨てておけ、抵抗されたら面倒だしな」

 

「はっ、お任せを……!!」

 

「やっといなくなるのか。睡眠時間が増えて助かる……ようやく一破と戦えるんだろ? 最高の場所で……!!」

 

 メテオへの無慈悲な宣告が下されても、八神は気に留める様子もなく、一破への執着を露にする。

 

「もちろんだとも。お前の望みがようやく叶うぞ……? その前に一仕事してもらうがな」

 

「いいぜ、準備運動にはピッタリだ……待ってろよォ、一破ァァ!!!」

 

「……神宮寺。わかっているな? 手筈通りに頼むぞ」

 

 その言葉を聞いた神宮寺が、跪いて頭を垂れる。

 

「はっ!! 私にお任せを、社長!!」

 

「お前達でも倒しきれないようなら……私が出ることも考えよう。全力で行け」

 

「ご安心を、社長のお手を煩わせはしません。世界の王となる社長に歯向かう者には……等しく死あるのみ!!」

 

 それから、三日後に行う計画について話しながら……嵐の前の夜はふけていった。

 

 

 

 あれから二日経過した。俺の怪我は例によって治り、取れた足の代わりをつけて……退院し、重りをつけて、いつものメニューをこなした後……

 

「……とりあえず、今日はこれでいいかな」

 

「お疲れ様、康太様!! はい、スポーツドリンク!!」

 

「あ、あやめ! ありがとう、もう体はいいのか?」

 

 まぁ、その理由はわかりきっているのだが……あやめは右頬を膨らませている。

 

「余は大丈夫だけど……自分の心配して余、康太様は」

 

「確かにな。俺はいつ何をするかわからない」

 

「だから否定して余!?」

 

 怒られてしまった。まぁ、当然だ……好意を抱いている相手の四肢が飛んだら、心配なんてものじゃないだろう。

 

「否定したって、あやめにはバレるだろ?」

 

「そうだけどさ……とりあえず飲もう?」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて……」

 

 受け取ったペットボトルを傾けて、口の中に流し込む。運動した体に染み渡る酸味と塩味……

 

「美味い……運動の後は、やっぱりこれだな」

 

「そういえば……リブラはあれで死んだみたいだし、もうゾディアーツは来ないのかな?」

 

「新しいのは来ないと思う。あとは……ホロスコープスの三人だけだ」

 

 今わかっているのは、レオとヴァルゴ……獅子座と乙女座の二人。そして、もう一人……奴らが『社長』と呼んでいた存在。あいつも恐らくホロスコープスだろう。ここまで追い込まれて、ふんぞり返っているだけだとは思えない。

 

「獅子座と乙女座と……社長は、なんなんだろうね」

 

「わからない。けど、あいつらが言うんだから……強いことに疑いは無い」

 

「でも、余と康太様と人間様なら負けない余!!」

 

 そうだ。あいつらに勝てるように、今まで努力してきたんだから……負けるはずがない。

 

「呼んだか?」

 

「一破さん!? いつからそこに……」

 

「あっちで一服していた。お前達の声が聞こえたのでな……ああ、そうだ。例の『見学』は明日だ……お前にも来てもらう。またバレないように特殊メイクを施すようだから、準備しておけ……鷹嶺先生も来るらしいからな」

 

 ついに明日か……先生も来るなら、尚更見つけない訳にはいかないな。

 

「余は行っちゃダメなの?」

 

「その間に街を襲われては困る。百鬼さんには万が一のため、防衛をお願いします」

 

「もしそうなったら時間を稼いでくれ、あやめ。すぐに戻るから」

 

 あやめは納得してくれたのか、頷いてくれた。

 

「わかった。でも、危険なことはしないでね?」

 

「多分ないと思うが……注意するよ、ありがとう」

 

「目立つ物品は全て捨てられているだろうから、隠れた何かがないかを調べる……気合いを入れろよ」

 

 決まりだな、明日は調査だ……街のことは、あやめに任せる。

 

「はい!!」

 

「絶対何か見つけてきてね、康太様!!」

 

「任せろ!!」

 

 探し物は得意だ……ガルーダコーポレーションの時はカイザがいたし、またいないとも限らない。デルタギアは持っていこう……

 

「じゃあな。私も書類などをまとめねばならん……また明日」

 

「はい!! 明日頑張りましょう!!」

 

「来るなら総力戦で来るよね……余も明日に向けて休んどく!! また明日、康太様!!」

 

 そう言って、あやめも走り去っていった……俺も早めに休むか。そう思って、俺は寮に向けて足を動かした……そして次の日。俺は別人のような顔になった後、あやめに挨拶をしに来た。あやめはもう変身して、準備万端だ。

 

「おはよう、あやめ!!」

 

「康太様……じゃない!? 誰っ!?」

 

「そ、そんなに身構えるな!! 俺だ、俺!!」

 

 あやめから見ても別人らしい、これなら安心だな。

 

「……そっか、特殊メイクするとか言ってたもんね。挨拶に来てくれたの?」

 

「うん。街のことは頼んだぜ」

 

「任せて!! 指一本触れさせないから!!」

 

 気合いが入ってるな……俺も負けていられない。

 

「雪村、挨拶は終わったな? 行くぞ」

 

「はい! じゃあ、行ってきます!!」

 

「行ってらっしゃい、康太様!!」

 

 あやめに見送られながら、俺は奴らの本拠地へと出発した。二時間ほど車に揺られて……車が止まる。

 

「ここか……流石にデカい会社だな」

 

「怖気づいてはいられません、行きましょう」

 

「じゃあ、私が行くから……一応下がってて」

 

 ホロライブ学園は私服登校なので、みんな違う服装をしている。これならバレることはないだろう……硬そうなドアをノックして、先生が言う。

 

「すみません。今日見学を申し込んだホロライブ学園の者ですが」

 

『……確認しました。ドアを解錠します』

 

「うわっ、開いた……」

 

 ハイテクだな。そう思いながら、俺たちは建物の中へ入ってゆく。中は綺麗だ、最近建ったのだろう。

 

「……ようこそ、ホロライブ学園の皆様。今日は、私がこの会社を案内させていただきます」

 

「お願いします」

 

「……わかっているな?」

 

 全員が小型の調査機材を隠し持っている……調査開始だ。一破さんに言われて、全員が装置を起動する。耳につけている小型のイヤホン……何かあると、これから音声が鳴る仕組みだ。

 

「では、まず一階をご案内します。こちらへどうぞ」

 

「はい」

 

「こちらが、ロビーになります。ここから上がっていく形になりますね」

 

 今のところ反応はない。どうやら、一階には何も無いようだ……

 

「次は二階ですね」

 

「二階は社員達の仕事場です。ご案内します」

 

「よろしくお願いします」

 

 それから、俺は会社を案内してもらいながら……調査を進めた。しばらく何も無かったので、むず痒い気持ちだったが……四階に来た時。

 

「ここは社長室などがある階層になります。一応ご案内しますね」

 

「お願いします」

 

「まず、こちらが……」

 

 イヤホンから電子音が鳴る。どうやら当たりらしい。

 

「すみません、少しトイレに……」

 

「そうですか。では、ここで少し休憩しましょうか」

 

「ありがとうございます……」

 

 トイレに行く……フリをして、一番反応が強い場所へ近づく。一番近い部分をマーキング、みんなに伝わるようにしておいた。

 

「お待たせしました、行きましょうか」

 

「えぇ、出発しましょう」

 

「……今だな」

 

 一破さんが、こっそり抜け出した。どうやら、上手くいったらしい。声が伝わってくる……

 

『こちら、一破。それらしき扉を見つけたが、どうやらカードキーが必須らしい』

 

「……奪いますか?」

 

『見学という名目だ、やめておけ……ロック部分を破壊して入る。私のタイミングで物音を立ててくれ』

 

 よし、俺の出番だ……準備をしておこう。

 

『……今だ』

 

「うわぁっ!?」

 

「大丈夫かい!?」

 

 俺は地面につまづいて転んだ。大袈裟に音が立つように、顔以外を床に思い切りぶつける……

 

『成功だ、侵入する……油断するなよ』

 

「はい、大丈夫です……すみませんでした」

 

「構いませんよ。続けましょうか……」

 

 気づかれてはいなさそうだな。服の中にデルタギアは隠してあるが……

 

『……暗い。電気は……ここか』

 

「こちらは資料室になります……」

 

『これは……何の部屋だ? スイッチらしきものはないが……なにっ!? くっ……!!』

 

 一破さんの様子がおかしくなった、どうしたのだろう。そう思っていると……

 

「お前達、伏せろッ!!」

 

「伏せて!!」

 

「なっ……!?」

 

 ドカァァァァン!!!

 

 轟音と共に、瓦礫とドアが吹き飛ぶ……まさか爆弾が仕込んであったのか?

 

「一破さん、大丈夫ですか!?」

 

「ああ、私なら大丈夫だ……ジェミニの分身がいたぞ、どうやら仕込んであったらしい……どういうことだ?」

 

「わ、私は何も……何がどうなってるんだ!?」

 

 この人は何も知らされていないらしいな……どうやら一足遅かったようだ。

 

「間違いない。ここはゾディアーツ共の本拠地だ……!!」

 

「ゾ、ゾディアーツって……あの怪物の!? そんな馬鹿な……!!」

 

「他のところも案内してください。何かあるかもしれない」

 

 俺達が言うと、その人は困惑しながらも了承してくれた。

 

「何が何だかわかりませんが……わかりました、ご案内します」

 

「……ここにもあるな」

 

「ここは……トイレか。確かに隠し場所にはなるな」

 

 反応がいちばん強いのは壁の先……不自然な切れ込みがある、どうやらここにカードを入れるらしい。

 

「またこじ開けますか?」

 

「それしかないな……ん? 電話か?」

 

「……まさかっ!?」

 

 ジェミニ爆弾を仕込んであったということは……ここはもぬけの殻!! それなら、奴らは……

 

『雪村くんかい? まずいことになった……』

 

「ヴァルゴとレオですね!? 今すぐ向かいます!!」

 

『あぁ、その通りだ……頼むよ』

 

 ここは皆さんに任せて、俺はあやめの加勢に行こう。そう思って、皆さんに呼びかける。

 

「皆さんにここはお任せします!!」

 

「わかった。護衛は私が引き継ぐよ、安心して行ってくるといい」

 

「早く行け、間に合わなくなるぞ!!」

 

 頷いて、走り出す。走りながらデルタフォンを口元に持っていく……

 

「変身!!」

 

『Standing by』

 

『Complete』

 

 白い光が目の前を包み……デルタになって、疾走する。急がないと……!!

 

「スリーエイト、ツーワン!!」

 

『Jet Sliger, Come Closer.』

 

「……来たな!!」

 

 スライガーに乗り込んで、発進させる……行先は勿論あやめのところだ。

 

「無事でいてくれよ、あやめ……!!」

 

 

 

 しばらく飛んで、上空に到着すると……あやめは二人相手に善戦していた。

 

「うぉぉりゃあっ!!」

 

「おぉ、中々やるようになったなぁ……嬉しいぜ」

 

「ヴァルゴ!! ふざけていないでさっさと殺せ!!」

 

 レオは必死のようだが、ヴァルゴはまだ手を抜いているようだ。やはり、ヴァルゴは最強格のようだな……

 

「うるせぇな、準備運動くらいゆっくりさせろよ……」

 

「やらせるもんか!! 康太様と約束したんだから!!」

 

「そういえば、雪村康太はどこだ……? 姿が見えんが、怖気付いて逃げ出し……ガハァッ!?」

 

 俺の噂をしていたようなので、ジェットスライガーでレオに突っ込んでやった。不意打ちだったからなのか、少しはダメージが入ったようだ。

 

「よう、レオにヴァルゴ……さっきからクシャミが止まらないのはお前らのせいか!?」

 

「お出ましか、雪村……ちなみに一破はどこだ?」

 

「逆に聞くが、教えると思うか?」

 

 俺が尋ねると、ヴァルゴは心底愉快そうに笑いながら言った。

 

「ギヒヒヒ……そりゃ教えねぇよな、大事な仲間だもんなぁ? おい無能、とっとと立てよ。それとも、皮だけ剥いでカーペットにしてやろうか?」

 

「ふざけるな……!! 不意打ちとは、卑怯だぞ!! 英雄は英雄らしく戦え!!」

 

「随分と上からだな。一般人にその姿で襲いかかったり、子供にスイッチを渡すことは正義なのか?」

 

 レオは苛立っているが、ヴァルゴはずっと笑っている。

 

「ギヒヒ、違いねぇ……」

 

「貴様!! 社長を侮辱するかっ!!」

 

「お前らのやり方がつまんねぇって言ってんだよ。俺は俺のやり方でやる……さぁ、第二ラウンドだ!!」

 

 ヴァルゴが斧を肩に構え直した……強い殺気だ、だが今の俺たちなら……!!

 

「許さんぞ、貴様ら……!! 私の手で粉々に砕いてくれるわ!!」

 

「行く余、康太様!!」

 

「よし……ここで終わりだ!! 覚悟しろ!!」

 

 銃を構える。ここで倒してしまおう、絶対に倒せるはずだ……!!

 

「できるものなら……やってみるがいいさ!!」

 

「なっ……アクエリアスだと!?」

 

「まさか……他のゾディアーツになれるの!?」

 

 レオの傷が癒えて、元に戻ってしまった。まずいぞ、あれを持たれているのでは……!!

 

「残念だったな……貴様らの勝ち目はゼロになったぞ!!」

 

「……それはどうかな!! 行くぞ!!」

 

「来いよォ!!!」

 

 奴らに向かって疾走する。まずはこいつだ……!!

 

「ファイア!!」

 

『Burst Mode』

 

「そんなものが効くか!!」

 

 レオはそれを爪で弾きながら、こちらに走ってきている。しかし……!!

 

「スマッシュビートォ!!」

 

「当たるか!! 死ね!!」

 

「カウンターファイトッ!!」

 

 爪の一閃を躱して……重い拳を、奴の腹に打ち込む。

 

「ぐぅぅっ!?」

 

『Leady』

 

「チェック!!」

 

 怯んだところに、すかさず必殺。これで大ダメージを与える!!

 

『Exceed Charge』

 

「ぬぅっ……こんなもの……!!」

 

「だぁぁりゃあぁぁっ!!!」

 

 地面を蹴りつけて、足を伸ばしてポインターに飛び込む。奴の装甲が削れる音がする……

 

「ぐぬぅぅぅっ……無駄だァァ!!!」

 

「ぐっ……!!」

 

「こんな傷など、これで……!!」

 

 アクエリアスのスイッチを取り出し、奴の姿が変わる。また再生しようとするが……それこそが狙いだ!! 俺はその場でしゃがみながら、あやめに呼びかけた。

 

「今だ、あやめ!!」

 

『Exceed Charge』

 

「でぇやぁぁぁっ!!」

 

 ヴァルゴの相手をしてくれていたあやめが、俺の合図でオーガストラッシュを伸ばし……後ろを向いて、金色の一閃。奴の肩にあった水瓶が、二つとも割れる……!!

 

「ぐわぁぁぁぁぁーっ!! な、なにぃぃ……!! 再生が、できない……!!」

 

「倒し方はもう知ってるんだよ……!! 無限の再生も無敵じゃないってことだ!!」

 

「そんな小細工に頼るからだぜ、クソライオン……無様だなぁ」

 

 レオは元に戻ったが、かなり消耗している様子だ……いけるぞ!!

 

「おのれ、おのれおのれぇぇっ!! 仮面ライダー共め、どこまでも私と社長の邪魔を……殺す、絶対に殺して……ん? 社長ですか!?」

 

「社長……ってことは、イヤホンでもつけてるのか?」

 

「はい、はいっ……わかりました。おい、ヴァルゴ!! ここは貴様がやっておけ!! 社長のために私は帰る!!」

 

 レオはそう言って、逃げ出そうとしている……だが、逃がす道理はない。ここで仕留めてやる!!

 

「逃がすわけねぇだろ!?」

 

「それはどうかな……!!」

 

「ッ、今度はリブラ!?」

 

 奴は、リブラの幻覚能力で姿を消して……逃げ出してしまった。

 

「くそっ、逃がしたか……」

 

「ハッ、臆病者が……さてと、じゃあ二対一といくか」

 

「上等だ!! ここで倒そう、康太様!!」

 

 一破さんに因縁があるようだが、知る必要もない……ここで倒してしまおう。

 

「あぁ!! 覚悟しろ、ヴァルゴ!!」

 

「久しぶりに楽しめそうだ……来いよ!! 楽しくやろうぜ!!」

 

「いつまで余裕でいられるかな!?」

 

 こちらに重力弾が飛んでくるが……無論当たらない。躱しながら、奴に接近する……銃弾は落とされてしまうからな。

 

「オラッ!!」

 

「ぐっ……!?」

 

「重力を十倍に引き上げたのさ。そこだァ!!」

 

 俺が動けないと思って、奴は斧を大振りに振ってきたが……俺は笑って、その場で飛び上がった。

 

「ぬぅん……りゃあぁっ!!」

 

「なに!?」

 

「チェック!!」

 

 いつもより、ジャンプの高さは落ちたが……それでも躱せた。俺の成長を見誤ったな!!

 

『Exceed Charge』

 

「残念、当たらねぇよ!!」

 

『Exceed Charge』

 

 今は二人だ……!! あやめも必殺技の準備をしている、そして今はワープした直後……!! 絶対に当たる!!

 

「はぁぁっ!!」

 

「ぐっ!? これは……!!」

 

「だぁぁりゃあぁぁっ!!!」

 

 オーガストラッシュに拘束されたヴァルゴに、ポインターを打ち込んで、重力が消える。それを逃さず、飛び上がり……右足を伸ばして、蹴り込む。

 

「グゥッ……!! この程度、振り払って……!!」

 

「まだだぁぁっ!!」

 

「……雷!? ぬぅっ……!!」

 

 ちょうど時間のようだ、デモンズスレートの雷を更に加えて、力を増す。しかし……

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

「ぐぅぅぅ……がぁぁぁぁっ!!!」

 

「うぐっ……!! ダメか!!」

 

 しかし、まだこちらの手は残っている。あやめのストラッシュは健在だ!!

 

「はぁ、はぁ……やるじゃねぇの……!!」

 

「これで決める!! 鬼神焦熱斬!!!」

 

「うぉぉぉっ……!? ぐはぁっ!?」

 

 ヴァルゴの脳天に、金色に燃え盛る剣が叩きつけられた。普通なら、これでゲームセットだが……奴は、まだ動いている。だが、ここまできて振り払わせるか……!! 手を伸ばして……手から電撃を放つ。

 

「ぐぎ、ぎ……ぐっ!? この雷……お前か!!」

 

「今だ、あやめ!! 切り裂け!!!」

 

「うぉぉぉぉぉーっ!!!」

 

 鬼神焦熱斬が、地面に達し……爆炎を伴って、地面ごとヴァルゴを切り裂く。やった……!!

 

「……やったか!?」

 

「はぁ、はぁ……確かに切り裂いた、これで倒したはず!!」

 

「これで……最大の脅威は……っ!?」

 

 恐ろしい気配がした。ヴァルゴの気配だ……しかし、何故? 煙の中から出てきたあいつは、変身が解除されており……満身創痍だ。

 

「ふぅ、ふぅ……ごほっ、ここまでやるとはなぁ……俺のポイント、また半分やるよ……今のは、久しぶりに結構効いたぜ……」

 

「立ってる……どうして!? 確かにやったはず……」

 

「真っ二つになるギリギリで、自分の体を斧で飛ばしたのさ……おかげで腹の傷が深くなったよ、滅茶苦茶痛いぜ……だが、それでこそ殺し合いだ……こうでなくちゃ、面白くないッ!!!」

 

 ヴァルゴは体中から血を流しているが、まだ戦えそうだ。なんて戦いへの執着……いや、それよりも。

 

「お前の顔、どこかで……」

 

「そうか、お前は見たことなかったな。自己紹介しとくぜ、俺はな……」

 

「おい、雪村!! 百鬼さん!! 大丈夫か!?」

 

 一破さんの声だ、来てしまったのか。

 

「気をつけて!! ヴァルゴがいます!!」

 

「ヴァルゴだと!? どこ……に……!?」

 

「……人間様? どうしたの?」

 

 一破さんがピクリとも動かなくなった。それに対してヴァルゴは……恍惚とした表情を浮かべている。

 

「あぁ、一破……やっと会えたな、この姿で……久しぶりだな、覚えてるよなァ?」

 

「……貴様、は……」

 

「改めて自己紹介。俺の名は八神 雷牙……今までに何人殺したかも覚えてねぇ……『最凶最悪の殺人鬼』様さ!!!」

 

 思い出した。ニュースで幾度となくやっていた、殺人事件……毎回こいつとの関わりがあるか、警察が探っていたらしい。なのに、一度たりと捕まったことはない。だからこそ『最凶』……

 

「道理で強いわけだ、そんな奴が中身じゃ……!!」

 

「余たち、そんなヤバい奴を相手にしてたの……!?」

 

「一破、なんか言ってくれよ。お前に会えて、俺は今、最高に嬉しいんだよ……!!」

 

 一破さんの手が震えている……そして、一破さんは……聞いたことがないような怒号を上げた。

 

「黙れぇぇぇぇぇ!!!!」

 

「い、一破さん……!?」

 

「あれって、あの時の鉈……!?」

 

 鉈とサイガフォンを持って、八神へと突っ込んでゆく。こちらのことなど目に入っていなさそうだ。

 

「そうだ、お前はそうでなくちゃ!! 昔のお前に戻ってくれて嬉しいよ、一破!!」

 

「死ね!! 死ね!! 死ねぇぇぇぇッ!!!」

 

「懐かしいなぁ、昔こうやって殺し合ったよな……あの時がいちばん楽しかった!! お前もそうだろ!?」

 

 とにかく止めないと、一破さんが殺されてしまう……八神に変身されたら分が悪い……!! 走り出そうとした瞬間、頭に激痛が走る。これはまさか……

 

「ぐっ……!!」

 

「康太様!? 早く変身解いて!!」

 

「こんな、時に……くそっ……」

 

 デルタフォンが外れて、変身が解かれる……一破さんのやり方は技も何も無い。怒りのままに振り回しているだけだ……あれでは当たるものも当たらない。

 

「私の子供を、蒼太を、愛華を返せ!!! 返せぇぇ!!!」

 

「死んだやつは戻ってこねぇよ、しょうがねぇだろ? もう殺しちまったんだから……」

 

「……!? お前が、一破さんの家族を……!?」

 

 怒り狂う一破さんを楽しそうに見ながら、スイッチを押し……奴がヴァルゴに姿を変えた。逃げるつもりか!?

 

「ふざけるな!!! 地獄の底であいつらに詫びろ!!!」

 

「このままやり合いたいところだが……今は、俺も準備運動で死にかけてる。すぐに治してくるからよ……少し待っててくれよ、楽しみは後にとっとくべきだろ?」

 

「ふざけないで!! 逃がすもんか!!」

 

 あやめがオーガストラッシュを構えようとしたが……その瞬間、奴から感じたことの無いオーラが溢れ出した。鳥肌が立ち、死の危険を感じるオーラ……まだ何もしていないのに、今にも殺されそうだ。

 

「久しぶりに、テンション上がってきたぜ……またな、一破。今度会おうぜ? あとそこの二人、ウォーミングアップに付き合ってくれて、ありがとさん……じゃ」

 

「待てぇぇぇっ!!!」

 

「……一破、さん……」

 

 今の一破さんには、憎しみのみが詰まっている。十中八九、当てもなくあいつを追いかけるだろう。だけど、それじゃ見つかるわけがない。

 

「待って、ください……」

 

「康太様!? 立っちゃダメ、デモンズスレートが……!!」

 

「まだ、居場所はわかってません……闇雲に探しても、出てきませんよ……一旦、戻りましょう……」

 

 必死に、声を絞り出す。でも、止めないと……無駄な労力を使ってしまう。そうなったら、勝てるものも勝てないぞ。

 

「離せ」

 

「ダメです、行っちゃ……!!」

 

「離せと言うのがわからんか!!!」

 

 一破さんの拳が、俺の顔面に突き刺さる……俺は為す術なく、後ろにぶっ飛んだ。

 

「ごはっ……ごほっ……」

 

「こ、康太様っ!! お前、なんてこと……!!」

 

「死にたくなかったら、邪魔するんじゃない!! あいつだけは、あいつだけは……俺が殺すんだ!!!」

 

 血走った目と、強く食い縛られた口……手は強く握りすぎて、血が出てしまっている。

 

「ダメ……です……」

 

「追ってくるなよ。もしも追ってきたら……命はないと思え!!」

 

「っ……康太様!! とりあえず救急車……!!」

 

 一破さんを止められなかった。それだけが心残りのまま、俺は意識を失った……

 

 

 

 ヴァルゴと一破が行方知れずになった、その日の夜。ついに人数が二人にまで減ったホロスコープスは、会社とは違う場所に集まっている。裏路地にある、一見さんお断りのバーにて……

 

「お洒落な酒場だろう? 私の行きつけなんだよ……マスター、いつものを」

 

「えぇ、とても良いところだと思います……私も、彼と同じものを」

 

「……さて。八神と一破はもう邪魔してこないし、そろそろ計画実行といくか」

 

 神谷はそう言って、計画を話し始める。話し終わる頃には、ワイングラスも空っぽになっていた……

 

「はい。わかりました……とても素晴らしい作戦かと。やはり、この事業を選んだ社長の眼に狂いはなかった」

 

「だろう? ただの暴力的な化け物というだけではないのさ、ゾディアーツは……さてと。あの暴力装置はもう使えんし……レオ、ついでにメテオも始末しておけ」

 

「承知いたしました。私に全てお任せを。奴などいなくとも……計画を遂行してみせます」

 

 少し顔の赤くなった神宮寺がそう言うと、神谷が真面目な顔で言った。

 

「……しかし、デルタとオーガが相手ではお前でも分が悪い。そうではないか?」

 

「……申し訳ありません」

 

「構わん。私だって、奴らの強さは想定外だったよ……私が出よう。いい加減、出し惜しみはしていられんからな」

 

 そう言った瞬間、神宮寺はほんのり赤くなっていたのが嘘のように、青ざめた。

 

「そ、そんな……!! 社長の手を煩わせるなど、そのようなことは……」

 

「計画を遂行する前に死なれては困る。私は最強の力を手に入れているんだ……負けはしない。『対策』もあるしな」

 

「……わかりました。くれぐれも、お気をつけて」

 

 神宮寺は心配そうにそう言ったが……神谷は、邪悪な笑みを浮かべながら言う。

 

「心配はいらないさ……私は野望を遂げる日まで死なんよ。だからお前も、全力で計画を執行しろ……いいな?」

 

「はい!! 社長の……世界の王の、仰せのままに!!!」

 

「ハッハッハ、気が早いな神宮寺!! それならば、王らしく……マスター、神宮寺の分も含めて二つ追加!!」

 

 二人は野望を胸にして、新しい酒を飲み交わしながら夜を明かしていった……




一破誠二、暴走。
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