※この作品はR-18です。

仮面を被った、人間達の英雄譚   作:とも667

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そろそろ最終決戦です。


暴・虎・馮・河

人気のない山の中。草を踏み分ける音が、二人分響いている。神宮寺と、青髪で長身の女性が一人。二人が森を掻き分けて、歩いてゆく。

 

「……ここにいるんだね? あの子は」

 

「その通り。お前はよく働いてくれた、そろそろ報酬をやろうと思ってな」

 

「これで私の仕事も終わりだね……よかった」

 

 しばらく歩くと、高い壁に突き当たり……神宮寺が、足を止めた。

 

「待っていろ、今解錠する……」

 

「……みこち、今助けてあげるから……!!」

 

「フッ……甘いな」

 

 神宮寺は、鍵を取り出すフリをして、ゾディアーツになり……女性へと襲いかかった。

 

「なっ!? くっ……騙したな!?」

 

「こうも簡単に騙されるとはな。騙し文句を考えてきて損したよ」

 

「黙れ……!! こうなったら、力ずくで聞き出す!!」

 

 女性は、手早くメテオドライバーを装着して、変身の準備を整えた。しかし、神宮寺はそれを黙って見ている。

 

「変身!!」

 

「……フッ、フハハハハ!!」

 

「な、何故変身できない……!?」

 

 神宮寺は笑いながら、女性へと近づいてゆく。女性は後ずさりをしている……

 

「貴様の変身認証をする者はもういない。貴様はここで終わりだ」

 

「っ……こんなところで終われるか!!」

 

「逃すか!! 死ねぇっ!!」

 

 逃げようとした女性に、レオがエネルギー波動を飛ばす。地面を抉りながら襲いかかるそれは……女性に容赦なく、牙を剥いた。

 

「ぐぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「……最期まで愚かだったな、『星街すいせい』。お前のことは覚えておこう……歴史に残る大馬鹿者としてな!! フハハハハハハ!!!」

 

 神宮寺は変身を解除し、星街すいせいを嘲笑いながら、自分の仕事をしに向かうのであった……

 

「おっと、そうだ……これもついでに捨てておこう」

 

 そう呟いて、神宮寺は金色のスイッチを乱雑に投げ捨てた。

 

 

 

 ここは……背中の感触からして、病院のベッドだな。いや、今はそれよりも……!!

 

「っ、一破さん!!」

 

「あ、お目覚めになりましたか……」

 

「看護師さん……くそっ、一発殴られたくらいで……」

 

 自分が不甲斐ない。あの時、俺が動けていれば……

 

「あまり動かないでください。まだデモンズスレートが抜けきってませんから」

 

「くっ……くそぉっ……!!」

 

「先生を呼んできます、少々お待ちを」

 

 その後、すぐにお医者さんが来て……一通り診察された後。

 

「……大丈夫そうですね。骨も折れていませんし、デモンズスレート以外は問題ありません」

 

「じゃあ、今すぐにでも……!!」

 

「あと一時間もすれば、脳波上昇も安定するでしょう。でも、今日はデルタギアを使用しないでください」

 

 いざとなれば、無視してでも使うつもりだが、基本は忠告を聞くべきだろう。俺は頷いて、肯定を返した。

 

「善処します」

 

「それでは、我々は次の診察がありますので」

 

「時間になったら、また来ます」

 

 二人は次の患者さんのところに行ったようだ。だが、不安で仕方ない……

 

「一破さん、どこに行っちゃったんだ……」

 

 怒りのままに探し回っても、今のあいつにはワープがある。自分の足だけで逃げてた昔とは違うんだ……でも気持ちは痛いほどわかる。

 

「一破さんも、家族を奪われたから……」

 

 カエル野郎……フロッグオルフェノクの時と同じだ。俺はあいつが憎いあまり、あいつをバラバラにした……けど、あいつに一人では勝てない。

 

「あのオーラは異常だ……それに、どうして俺とあやめの必殺技を食らっても、立っていられるんだ?」

 

 その上、あの強さでもあいつは本気じゃなかった……力の五割……いや、五割すら出していなかったかもしれない。それ程にあのオーラはすごかった……

 

「……雪村さん。時間です」

 

「あ、ありがとうございます……もうそんな時間か」

 

「お大事に」

 

 看護師さんに見送られながら、病院を出る……だけど闇雲に探しても、一破さんはいないだろうしな。八神も見つかるはずがないし……見つけられたとしても、また殴られるだろう。

 

「どこに行けばいいんだろう……」

 

「康太様!!」

 

「あやめ……ごめんよ、心配かけて。俺は大丈夫だからさ」

 

 あやめは渋い顔をしている……やっぱり、怒ってるかな。

 

「それはいい。けど……」

 

「けど……?」

 

「一破さんを、探すつもり?」

 

 頷く。するとあやめは、更に顔を顰めてしまった……

 

「うん……彼は、俺の大事な仲間だから」

 

「余は嫌だ……だって、康太様を殴ったんだよ!? 倒れかけで、それでも立った康太様をっ……!!」

 

「……そういうこともあるさ。友達同士、喧嘩することもたまにはあっていい」

 

 殴られたことは構わない。彼はもう俺の友人だしな。

 

「でも、一破さんはそう思ってないんじゃ……」

 

「それなら、これからそう思ってもらえばいいだろ? それに……気の迷いってこともある。あやめにもあっただろ、そういうこと」

 

「……わかった。康太様が許してるなら、余も許すことにする」

 

 納得してくれたらしい、ありがたいな……さて、まずどこに行くべきか。

 

「じゃあ、まずはどこに行けばいいと思う?」

 

「……警察署? 一破さんの上司とかいるかもしれないし」

 

「なるほど……だけど、面会の許可とかもらえるかな?」

 

 忙しかったら、出てきてくれないんじゃ……

 

「一破さんの相棒で、仮面ライダーデルタですって言えば、無下にはできないんじゃないかな?」

 

「……よし、とりあえず行ってみるか!! 時間もないし、いつまでもじっとしていられない!!」

 

「うん、行こう!!」

 

 善は急げということで、警察署へ向かい……窓口にて要件を話した。

 

「……というわけなんですが、面会させていただけませんか?」

 

「お願いします、どうしても必要で……!!」

 

「は、はい……少し待っていてください、確認します」

 

 窓口のお姉さんが、確認しに行ってくれた……座って少し待っていよう。

 

「何とかいけたな……こういう時は便利だよな、ネームバリュー」

 

「いいことばっかりじゃない……というか、全然いいことないけどね」

 

「……メリットに対して、デメリットが重すぎるよ」

 

 それから、二人でこの先についての話をしていると……さっきのお姉さんが来た。

 

「すみません、雪村さんと百鬼さん。上司の方……安西さんとの面会は可能だそうです。こちらにどうぞ」

 

「やった!! ありがとうございます!!」

 

「何か聞けるといいな……」

 

 応接室に連れて行かれ、ここで待つように言われた。しばらく待っていると……

 

「失礼……どうも、『仮面ライダー』さん。聞いてると思うが、俺は安西だ……」

 

「あ、初めまして!! 私は……」

 

「自己紹介はいい。二人ともよく知ってるよ、一破から聞いてる……一破が世話んなってるな」

 

 薄暗い雰囲気で、制服を少し着崩している。髪も荒れているし、ストレスが多いのだろうか。

 

「いえ、こちらこそお世話になりっぱなしで……」

 

「今日は一破さんのことを聞きたくて来たんです。何かご存知じゃありませんか?」

 

「……残念ながら、行方はわからんな。あいつ……八神に会っちまったんだろ? ああなるのも無理は無い」

 

 安西さんは遠い目をしながら言った……一破さんのことを気にしているのかな。

 

「八神と因縁があるんですよね? 一破さんには」

 

「あぁ……あれは酷かった。あれからだよ、一破があんなに大人しくなっちまったのは」

 

「大人しく……って、そんなに荒れてたんですか?」

 

 あやめがそう尋ねると、安西さんは過去を懐かしむような目をしながら言った。

 

「あの頃の一破は、とんでもない暴れ馬だった。犯罪者見つけると、怒声張り上げて襲いかかってな……奴らと格闘してる最中は、悪口の機関砲かと思うくらいだ」

 

「そ、そんなに……!?」

 

「だけど……そんなあいつには相棒がいたんだ。同期の井下蒼太ってやつがな……一破とは正反対で、優しくて模範的な警官だったが、何故か一破と仲がよかった」

 

 蒼太さん……あの時、一破さんが叫んだ名前にも含まれていたな。

 

「一破さん、蒼太を返せって言ってました……」

 

「そうか……わかってるとは思うが、そいつらは八神が残酷にぶち殺した。一破を挑発するためだけにな」

 

「酷い……!! なんでそんなこと……」

 

 いや、理由はわかる……殺人鬼が一人の人間に執着する、それも好意的な理由なんてひとつしかない。

 

「……一破さんが唯一、八神を追い詰めたからですか?」

 

「お前さん、勘が鋭いなぁ……そうさ。あいつは昔からとんでもない殺人鬼で……自分で、警察に殺しをしたと通報して、来た警官を殺して悠々と去る……そんな無茶苦茶な野郎だった。けど、そんな中……」

 

「一破さんだけが、あいつを追い詰めた……いや、追い詰めちゃったんだ」

 

 安西さんの顔がどんどん歪んでゆく。八神のことは、彼にとっても嫌な思い出のようだ。

 

「嫌なこと思い出させて、ごめんなさい……」

 

「構わん。アンタ達には知る権利があるだろう、アンタには特にな……雪村さん」

 

「えっ? それってどういう……」

 

 俺が尋ねると、安西さんは少しだけ呆れたような表情をした。

 

「……アンタ、もう忘れたのか? 殴ったんだろ、一破。アンタのことを……」

 

「あぁ、そのことなら気にしてないですよ。そうか、だから教えてくれてたんだな……」

 

「アンタ……蒼太に似てるな。あいつが気に入るわけだ」

 

 蒼太さん……今の俺と似てるって、褒め言葉にならない気がするんだけど……そこはいいか。

 

「話を戻そう。百鬼さん、アンタの言う通り……一破はその荒々しい戦い方で、奴に深手を負わせた。拳銃と、愛用の鉈でな……だが、一破も深手を負わされたから、結局は逃げられた」

 

「……けど、それが執着の原因になったんですね」

 

「そうだ……奴はきっと、無差別に殺していくのが楽しくなくなったんだろう。強い奴……つまり、一破と戦いたい。そう思った奴は……とんでもない暴挙に走った」

 

 それが一破さんが、八神を憎む理由……

 

「八神が殺したのは、彼の子供と相棒と……一破さんの妻、ですよね?」

 

「それで合ってる……が、足りない情報がある。子供はまだ産まれてきてすらいなかったんだ……」

 

「……まさか、妊婦さんを殺したの?」

 

 重苦しい顔で安西さんが頷く。なんということを……たったそれだけのために、罪のない人を……ましてや、身篭っている女性を殺すなんて。

 

「あの子……確か名前は、中山愛華。彼女は一破に高校生の時、暴漢から助けられて……それで一目惚れして、一破になにかと着いて回るようになったらしい」

 

「一破さんなら、さっさと追い払ってそうですけど……」

 

「追い払っても、次の日は懲りずに着いてきたらしい。怒鳴りつけても着いてくるから、もう諦めていたみたいだ」

 

 メンタル強いなぁ……あやめが『その手があったか』みたいな顔をしている。怖いからやめてほしい。

 

「それで……どうして結婚まで?」

 

「あの子が大人になって、猛アタックしてな……周りの目が痛くなったんだろう。ついに一破がそれに折れて、結婚したんだ。弁当まで持ってきて、健気だったな」

 

「そんな人を、八神は……」

 

 あいつは、そんな彼らを殺した。一破さんをおびき出すためだけに。

 

「愛華ちゃんに影響されたのか……あいつもかなり丸くなっててな。子供ができると聞いた時は、今までにないくらい浮き足立ってた……」

 

「まさか、その日……?」

 

「いや、その次の日だ。あれが起こったのはな……忘れたくても、忘れるわけがない」

 

 いよいよ本題だ。事件の全貌を知る時……

 

「……覚悟はできてます」

 

「あれは雨の日だったな。いつも通り仕事をしていると、八神から警察に電話があった……『一破を寄越せ、そうしたら誰も殺さないでやる』とな」

 

「最初から脅しじゃん……!!」

 

 しかし、テロ犯の要求を飲んではならない。国際常識だ……

 

「無論、俺達は要求を飲まなかった。電話を切って……重武装をさせた、警官の部隊を送った。そして、その中には……蒼太もいたんだ」

 

「そうか……だから……」

 

「わかってるだろうが、結果は全滅……『何をしたって無駄だ、一破を寄越せ』の一点張りだ。特殊部隊を送ることも考えたが……そこで、奴が言ったんだよ……『それなら、一破の大切な奴を殺してやる』ってな」

 

 だから……身篭った愛華さんを狙ったのか。

 

「一破さんは、どうしたんですか?」

 

「待機命令が出ていたからな……部隊が殺された時までは、じっとしてたよ。けど……大切な奴を殺すってのを聞いても、なお優柔不断な上層部に痺れを切らし、家の方に走っていったんだ」

 

「それで……あの惨劇が起きたんですね?」

 

 安西さんが、無言で肯定を返す。

 

「あぁ。現場はこれまでにないくらい、悲惨だった……警官達の内蔵や生首が散乱した道、同じような目に遭わされた嫁さん……無論蒼太もな。それを知ってか知らずか、奴は二人の生首を持って……笑ってたよ」

 

「……狂ってる」

 

「その現場を、不幸にも少し見てしまった人達が、数人ほど精神病院行きになったらしい……一破はもちろん、怒り狂いながら奴に襲いかかった」

 

 そういえば、気になることがある……どうしてそんなに詳しいんだろう?

 

「もしかして……安西さんは、一破さんに同行して……」

 

「説明が省けて助かる。あいつは勝手に飛び出したからな、追いかけないわけにもいかん。これまでにない程、酷かった……援護しようと思ったが、暴れる一破を避けた上で、動き回る八神に弾を当てるのは無理だったよ。不甲斐ないな……」

 

「気に病まないでください、当然ですよ……その時の、結果は?」

 

 死んでいないことは、今の状況から確実。また相打ちだろうか?

 

「その時は……一破の負けだ。奴にも傷はついていたんだが、先に深手を負わされた……しかし、奴は一破を見逃した。理由は『こんなに強いヤツは中々いないから、ここで失いたくない』そうだ。確か、ポイントを1残してやるとか言ってたな……ともかく、一破も俺も八神を逃がしちまった」

 

「……だから、一破さんは……」

 

「あれが起こったあと……あいつは何故だか、大人しくなった。今回の罰として、三ヶ月間減給三割を喰らったが……それくらいであいつの性格は歪まない。だけど、煙草を吸うようになった……蒼太の吸ってたやつをな」

 

 確か、一破さんは『もっと似合う人がいた』と言っていた……蒼太さんのことだったのか。

 

「だから、あのタバコに拘るんだね……」

 

「多分……失う物を全部失って、大声を張り上げる力もなくなってしまったんだろうな。仕方ないさ、俺だってしばらく食欲が失せたし……」

 

「でも、康太様と出会って……康太様の前だと、口調が違うようになったよね」

 

 その話になると、安西さんの顔が少し明るくなる。

 

「そうだ……あいつは多分、アンタを蒼太と重ねてる。煙草の回数も減ったし……相棒だと思って、接してるんだろうな。事実、お前の話をしている時、あいつは楽しそうだし……」

 

「そうか……彼の相棒になれるなら、嬉しいです!!」

 

「……ありがとう。あいつに言ってやってくれ、口では悪態つくかもしれんが……きっと喜ぶだろうよ」

 

 彼の助けになれていたのか……それなら、嬉しい。

 

「さて、昔話はここまでにしよう……警察は今、八神がこの街にいるってことで大混乱さ。マスコミが押しかけてきてる……Twitterではデマも広まるし、八神のことで暴動も起きかけてる」

 

「……一破さんの居場所に、心当たりはありますか?」

 

「わからん。怒り狂ったあいつが何をするかは、俺にも予測がつかない……だが、もし八神が姿を現したなら、そこに来ることは間違いない」

 

 つまり、手がかりゼロということか。

 

「あっ、これを言っておかないと……僕が彼に殴られたことは……友人同士、少し喧嘩しただけということにしておいてください。仕掛けたのは僕で……」

 

「……優しいな、アンタ。わかったよ、そういうことにしておく……久々に、あいつに大目玉食らわすのも悪くないか」

 

「じゃあ、余はこれで……ありがとうございました」

 

 そうだ。ここで座っていても仕方がない、安西さんも暇じゃないはずだ。

 

「それでは……色々とありがとうございました」

 

「こっちこそ……一破を頼んだ。一破に今、声をかけてやれるとすれば、お前しかいない」

 

「……とても光栄です。ありがとうございます」

 

 そう言って、部屋を出た時……何かが運ばれてきた。

 

「安西警部はいらっしゃいますか!?」

 

「ここにいる。どうした?」

 

「奴らについて、新しい情報が入りました!! それと、メテオの変身者を確保しました。現在重傷を負っており、警察病院で治療中です!!」

 

 待て。今のは聞き捨てならない……!!

 

「どういうことですか?」

 

「……教えといた方がいいか。奴らの本拠地の牢屋らしき場所から、メッセージが見つかった。『連れていかれる、助けて』とな……それを今、全力で追っている」

 

「やっぱり人質を取ってたのか……!!」

 

 リブラが口を滑らしたから、知ってはいたが……証拠が出たな。これで、あいつらが黒幕であることは確定だ。

 

「証拠品を確保しました、こちらです」

 

「これ、メテオドライバーと……何これ?」

 

「……わかった。預かっておく、お前らは業務に戻れ」

 

 その人達を見送ってから……安西さんは、それを俺に手渡してきた。

 

「えっ……?」

 

「アンタが持っておけ。きっと、アンタの役に立つ……警察のカン、舐めるなよ?」

 

「……わかりました、ありがとうございます!!」

 

 メテオドライバーを鞄にしまって、今度こそ走り出す。

 

「康太様、どこ行くの?」

 

「一破さんを探す。じっとしててもどうにもならん!!」

 

「……そうだね。行こうか!!」

 

 手がかりは何も無い。でも、何もせずにはいられない!! そう思って、走り出そうとした時……突然電話がかかってきた。

 

「ん、電話……もしもし?」

 

『雪村くんだね? まずいことになった、ネットニュースを見てくれ』

 

「ニュース……?」

 

 言われた通りに見てみると……そこには。

 

『奇跡の力!! 全てが完璧に元通り!!』

 

『レオ・ゾディアーツにより破壊された街、それがみるみる治っていく!! これが正しいゾディアーツの力!!』

 

『治すものによって値段は異なりますが、全てを完璧に治してみせます。大怪我の治癒も可能ですので、皆さん是非、ご検討を!!』

 

 その下に電話番号が書いてある……会社名も変わっているが、間違いない。これは……

 

「余達が話を聞いてる間に……!!」

 

「これで金儲けをするつもりか……!?」

 

『そのようだ。マッチポンプで、市民や国から金を巻き上げるつもりらしい……その上、惨殺死体まで出てきた』

 

 惨殺死体……まさか!!

 

「八神ですか!?」

 

『その可能性が高いね……最悪の状況だ。八神の恐ろしさは誰もが知っているし、その混乱に乗じるつもりなんだろう。卑劣な作戦だ』

 

「ッ、止めないと!!」

 

 二人でベルトを腰に巻き付けた。変身の準備をしようとしたところで……

 

『しかし……八神とレオは別行動をしているんだ。今、holoxの協力で、それぞれの居場所は掴めている……警察が部隊を送っているが、焼け石に水だろう』

 

「では、どうすれば……!?」

 

『役割分担だ。どちらかが、どちらかを止めに行く……鷹嶺先生には、レオの方を止めに行ってもらったよ』

 

 ……そうか。なら、やることは決まっている。

 

「わかりました。僕がヴァルゴを倒しに行きます」

 

『わかった。そちらに位置情報を送信するから、そこに向かってくれ』

 

「また別行動するの……?」

 

 電話の内容を聞いていたあやめは、心配そうにしている。まぁ、だよな。

 

「心配するな。終わったら、すぐに駆けつける」

 

「だけど……余が見てないと、康太様は……」

 

「一破さんがいる前だぞ? 心配いらない」

 

 そう。絶対に一破さんも来るはず……根拠はないけれど、確信があった。

 

「……わかった。でも、絶対……絶対に、死ぬような真似しないでね。約束できる?」

 

「うん。死ぬような真似はしない……あんな奴のために死んでやるつもりもないしな」

 

「じゃあ、約束だね!! 余はレオを止めに行くから!!」

 

 あやめが、オーガフォンを手に持つ。それと同時に、俺もデルタフォンを持って……

 

「変身!!」

 

『Standing by』

 

『Standing by』

 

 聞き慣れた電子音が鳴って、あやめもオーガフォンを掲げて叫んだ。

 

「変身ッ!!」

 

『Complete』

 

『Complete』

 

 お互い変身して、行くべき場所へと走り出す……

 

「一破さん……俺が行くまで、死ぬなよ!!」

 

 

 

 一方、ホロライブ学園。holoXの頭脳である博衣こよりは、遂に完成した『変身アイテム』を学園長に見せに来ていた。緑色の四角い物体と、丸い物体が一つずつ。

 

「これが……変身アイテム? ベルトではないのかい?」

 

「財団Xによると、これの名前は『メガウルオウダー』だそうです。この丸い物を入れて、これを押すと変身が完了するようですが……」

 

「……暗い表情だね。どうかしたのかい?」

 

 博衣こよりは……意を決したように言った。このアイテムが動かないということを。

 

「今、これは動きません……理論上は動くはずですが、変身は不可能でした」

 

「……なにか、変身に条件があるのかな。オーガはその典型例だが……」

 

「そこも調べてあります。奴らの資料によりますと……元の『ゴーストの世界』では、『魂を統べる者』が変身していたようです。この世界でも、その条件に近い者が変身可能なものかと……」

 

 Yagooはしばらく考え込んだ後……笑みを浮かべた。

 

「心当たりがあるよ。これを使えそうな人にね……」

 

「本当ですか!? その人とは……?」

 

「……潤羽るしあさん。ネクロマンサー、死に最も近い人さ」

 

 そう言って、Yagooはメガウルオウダーを手に取って立ち上がる。

 

「Yagooさん、どこへ?」

 

「今は一刻を争う。私が向かってお願いしよう……」

 

「ボクも向かいます!!」

 

 二人は戦力を増やすために、潤羽のところへと急ぐのだった……

 

 

 

 歯を食い縛り、血塗れの手で銃と鉈を握る。どこだ、八神。自分がどんな形相をしているか、定かではないが……そんなことはどうでもいい。今すべきことは……

 

「八神ィィィッ!!!」

 

 八神を殺すことだ。どうして、どうして愛華はあんな死に方をしなければならなかった? 蒼真は何故あんな死体を、晒さねばならなかったんだ!? どうしてお腹の子供は生まれてこれなかったんだ!!

 

『よう、一破。やっと来てくれたな……こうすれば来てくれると思ったんだ。嬉しいぜ……さぁ、また殺し合いしようぜぇぇ!!!』

 

 ふざけるな。どうしてそのような理由で、殺されねばならない……死ぬべきは貴様の方だろうに。

 

「隠れていないで出てこい!! 理性のない獣め!! 俺が駆除してやる!!!」

 

 八神はこの街のどこかにいる。さっき通ったところでマスコミが走っていった……だが、そんなことはどうでもいい。

 

『だって仕方ねぇだろ、お前が来てくれないんだから。お前が悪いんだぜ~? 早めに来れば助けられたのに、残念だねぇ……ギィッヒヒヒヒヒ!!!』

 

 黙れ。その薄汚い口で言葉を喋るな。存在することが生命への侮辱、蒼太と愛華と……俺の子供への、侮辱。

 

「……あー、つまんねぇ」

 

「この……が、げっ……」

 

「準備運動にもなんねぇな……ん?」

 

 見つけた。殺す、今すぐ殺してやる!!!

 

「八神!! 八神ッ!! 八神ィィィ!!!」

 

「一破、お前の方から来てくれるなんてな……嬉しいぜ、俺」

 

「死ねっ!!」

 

 黙れ、そう言う代わりに切りかかる。避けられても、撃つ。サイガフォンから青い閃光が放たれたが、それは容易く切り払われた。

 

「荒っぽい挨拶だな……そうこなくちゃ。こんな雑魚共の相手してちゃ、体がなまっちまうよ」

 

「黙れ!! 愛華は……俺の子供は、貴様のせいで!!!」

 

「子供ォ? そんなもんどこにも……まさか、身篭ってたのか?」

 

 奴が少し驚いている……まさか、知らなかったとでも?

 

「知らんとは言わせんぞ!! 私は何度も叫んだはずだ!!!」

 

「……ヒッ、ヒヒ……ギッヒッヒッヒッヒ!!! こいつは傑作だァ!!!」

 

「は?」

 

 何故笑う。殺意が見えない、どうしてだ?

 

「なるほどな~、だからそんなに怒ってんのか……いいこと聞いたよ、得した得した。ありがとさん、教えてくれてよ」

 

「あ……?」

 

「だってよぉ……お前の子供も『ついでに殺せてた』んだろ? やっぱり逃がさずに殺しといて正解だったな!! ギッヒッヒッヒッヒ!!!」

 

 ……こいつの言っていることが理解できない。妊婦を殺せて、よかっただと? 何を、言っている?

 

「妊婦だった方が、よかったのか?」

 

「当たり前だろ? 俺はお前が怒ってくれることを期待して殺した。大事な人を二人殺すより、三人殺した方が来る確率も、怒りだって強くなる。一人殺したら二人分怒ってくれるんだ……これほど得なことはないだろ!!」

 

「もういい」

 

 最早、こいつの声を聞くことも……いや、存在させておくことそのものを許容できない。

 

「お? なんだなんだ?」

 

「お前の存在を俺は許容しない。今すぐ地獄に落ちろ」

 

「そうか、怒ってくれたか……!! 感じたことない怒りだ、あの時よりも強い!! いいぜぇ、今度こそ決着つけようぜ!! お互いのポイント、全部賭けて殺し合いだ!!」

 

 これ以上喋らせはしない。絶対に、この場で殺す。

 

「黙れ」

 

「一回しかない機会だ!! 楽しんでいこうぜ、一破!!」

 

「獣以下の生物が言語を喋ってんじゃねぇ!!!」

 

 そう叫んで、俺は……悍ましい生物を殺すため、奴に飛びかかった。

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