大変なことになってきました。
新しい怪人への対抗手段となり得る、『仮面ライダーネクロム』。その素質があると思われる人……潤羽るしあを、二人は学園に呼び出していた。
「……というわけだ。これを使用できる条件に当てはまるのは、私の知る限り君しかいない」
「る、るしあが……これで変身するんですか?」
「あなたが使えなかったら、たぶん誰にも使えない。お願い、時間がないの!!」
少し悩んだ後……潤羽るしあは、その申し出を受けた。
「わかりました、るしあでよければ……」
「ありがとう、感謝するよ!!」
「じゃあ、さっそくこれをそれに差し込んで!」
差し出された緑色の物体……メガウルオウダーを、潤羽るしあが装着する。眼魂を差し込み、変身の準備が整った。
「こう……ですか?」
「そのまま上のボタンを押して‼」
「は、はい! 変身!!」
その場の全員が期待の眼差しで見つめる中、潤羽るしあはそう叫んで……メガウルオウダーのボタンを押し込んだ。しかし、期待とは異なり……姿が変わるどころか、音も光も出ることはなかった。
「……これでもダメなのか!?」
「えっ、どうして、なんで……!?」
「そんなはずないのに……これじゃ、みんなの苦労が水の泡に……‼」
全員が混乱を隠せない状況で……そこに、金色の弓矢が放たれた。それに獣人特有の反応速度で気づいた博衣こよりが、二人に叫ぶ。
「伏せて‼」
「なっ……!?」
「だ、誰!?」
全員が振り向いた先に立っていたのは……レオ・ゾディアーツと、もう一人。見たことのないゾディアーツが立っている。
「随分と楽しそうな談合だったが、ここで打ち止めとしてもらおう」
「社長。生身の相手なら、私一人で十分です。私の後ろに……」
「いや……強い気配が近づいてくる。警戒しろ、レオ」
『社長』と呼ばれた男の注意で、殺気に気づいたレオが咄嗟に爪を盾にする。数秒後、そこに燃え盛る刀剣が三連続で襲い掛かった。構えていたサジタリウスにも、赤い爪の一撃が襲い掛かる。
「貴様か、仮面ライダーオーガ……!!」
「三人とも、怪我はない!?」
「無事でよかった、間に合ったんだね……!!」
「鷹嶺ルイは撒いたと思ったのだが……まぁいい。他人の心配より、自分が死なないことを優先するのがいいと思うがね」
今度はオーガへと襲い掛かる、金色の弓矢。しかし、オーガはそれらを三本の刀で全て弾き落とした。社長と呼ばれた男が、思わず感嘆の声を上げている。
「そんな小細工、余には通用しないぞ!!」
「ほう……流石は鬼神とまで呼ばれる女、一筋縄ではいかんな」
「図に乗るなよ!! デルタがいない貴様など、恐れるに足らんわ!!」
そう啖呵を切るレオだが、社長と呼ばれた男がそれを諫めた。
「お前一人ではオーガに勝てん。あまり思い上がりすぎるなよ……申し遅れた、私はホロスコープス最後の一人、サジタリウスだ」
「下がってて、こいつは強い……多分、こいつが大ボスだよ!!」
「そういうことだな、以後お見知りおきを……する必要もないか。どうせ、ここで死んでもらうのだし」
そう言って、本格的に戦闘態勢をとるサジタリウス。それに合わせて、レオもサジタリウスを守るように立った。
「社長が世界の王になるため、今度こそ死んでもらう……!!」
「さて、最初から私も本気で行かせてもらおう……!! 超新星ッ!! はっ!!!」
「あれは……スコーピオンの時と同じ……いや、色が違う!!」
他の者たちとは違う、赤い球体を取り込み……凄まじい覇気とともに、サジタリウスの装甲が弾け飛ぶ。体中が赤くなり、よりスリムになった。
「ふぅ……これが真の力、サジタリウス・ノヴァだ。さぁ、覚悟してもらおう」
「覚悟するのはお前だ!! 行くぞぉぉ!!」
「社長の前にひれ伏せ、小娘ぇ!!」
「あやめちゃん、こいつの相手は私がする‼ 君はそいつを片付けて‼」
サジタリウスは、より輝きを増したエネルギーの弓矢を放ち……レオはスコーピオンに姿を変えて、レーザーを連射した。対して、百鬼あやめは一切剣の体勢を崩さず、致命傷になる攻撃のみ回避しながら、レオに突貫していく。鷹嶺ルイも、高速で飛んでくる矢を避けながら、確実に攻撃を加えている……
「図に乗りおって!! 喰らえ、超新星!!」
「あれは……ジェミニ!! ふぁんでっどさん、あいつを……」
「邪魔だ、どいていろ!! 腐肉ども!!」
レオが元の姿に戻り、雄叫びの波動を飛ばす。ジェミニに纏わりつこうとしたアンデッドが、軒並み吹き飛ばされてしまった。しかし、百鬼あやめは怯まない。
『『Exceed Charge』』
「同じ手は食わない‼ お前が喰らえ!!」
「な、なんだと!? グアァァァァ!!」
百鬼あやめは、オーガストラッシュの先端で捕まえたジェミニを、レオにぶつけて起爆させたのだ。無論、爆発の大ダメージはレオにも平等に襲い掛かる。そして、百鬼あやめがその隙を逃すわけもなく……オーガストラッシュが、レオに振り下ろされた。
「これで、終わりだぁっ‼」
「しまっ……グッ、グォォォォォッ!!!」
「レオをいとも簡単に……なるほど。噂は伊達ではないようだ」
「よそ見してる暇があるのか!!」
仲間がやられているにも関わらず、サジタリウスはオーガの戦いに感嘆して拍手まで送っていた……が、今は一方的にやられている。一方のレオ……否、神宮寺は地に伏せながらも、そんなサジタリウスを気遣っていた。
「社長……この者達は、危険です……最終プランを‼」
「ぐがっ、そうだな……相手が相手だ。そろそろあれの使いどころか……ごふっ‼」
「何をしたって、余たちには勝てないぞ‼」
「そういうことだ、お前もやられてるし……お前たちも、大したことないね‼」
一対一に持ち込めれば、こちらのもの。そう思って、百鬼あやめにも余裕が出てきている。鷹嶺ルイも、ここぞとばかりに全力で潰しにかかっている……しかし、サジタリウスはやられながらも、懐から何かを取り出した。
「それは、ぐっ、どうかな? こんなにも早く、使うことになるとは思わなかったが……さよならだ、百鬼あやめ」
「何だか知らないけど、押させるかっ‼ 必殺……‼」
「もう遅い……」
サジタリウスが冷徹に言い放った、その瞬間……必殺技を発動しようと、百鬼あやめがオーガフォンのエンターキーを押した。しかし。
「……あれ? どうして!?」
「フフフ……君達の負けだ。残念ながらね」
「変身が解けて……一体何が!?」
サジタリウスは腕を組みながら、笑っている。それを見ていた鷹嶺ルイが、『オーバード』を起動した。
「まだまだ、私がとどめを……ぐぅぅっ!?」
「お前たちのことは全てわかっている。鷹嶺ルイ、お前が脅威であることもな……だから、お前を撒いた時の煙に毒を仕込んでおいたんだ。それ、血液の流れを早くする技なんだろう? 毒の通りも早いはずだ」
「そん、な……く、そ……」
鷹嶺ルイが体中に回った猛毒に為すすべなく、膝をつく。
「鷹嶺先生‼」
「ちなみに、お前の変身を解除させたのは……私の打ち上げた衛星が放つ妨害電波さ」
「妨害電波……やっぱり、最初から協力する気なんてなかったんだね‼」
百鬼あやめが刀を構え直しながら、怒りの声を上げる。
「だまして悪いが、私の計画のためには貴様らは邪魔なんだ。ここで消えてもらおう」
「まだだ‼ 余は生身だって戦えるぞ‼ お前だって弱ってるだろ!?」
「わからないのか? 私は最強のゾディアーツだ……生身の貴様に負けるほど弱くはない。それに……神宮寺、寄越せ」
神宮寺が差し出したスイッチを押して、アクエリアスに姿を変えたサジタリウス。傷を治して、元の姿に戻ってしまった。
「回復された!?」
「神宮寺にできることは私にもできる。当たり前だろう? さて、お喋りは終わりだ……そろそろ死ね‼」
「っ、く……‼」
サジタリウスが、百鬼あやめに容赦なく襲い掛かる。周囲の人間たちも、それを黙って見ていることしかできない……絶望的な戦いは、続いてゆく。一方その頃、雪村康太は……
「一破さん、どこだ!?」
一破さんの名前を呼びながら、しらみつぶしに走り回る。行き先がわからないから、こうするしかないのだ。そんな時……
「っ!? 変身が……」
なぜだがわからないが、変身が解除されてしまった。その上、音声認識すらしなくなってしまっている。
「あいつら、何かやったのか……!?」
もし奴らのせいで、俺が変身解除されたなら……あやめもやられているのか。まずい、鷹嶺先生がいても、流石に分が悪いだろう。
「……だけど、一破さんはもっと危ない‼」
ヴァルゴの危険性は俺にも想像がつかない。それくらい、あいつはとんでもない奴だ。あのオーラは尋常じゃない、常人なら奴がいるだけで気絶するだろう。
「一破さん、俺に人を信じろって言っといて……それは勝手だろ‼」
ここにいない一破さんに愚痴りながら、走っていると……警察官の人たちと思われる、死体が転がっていた。八神に挑んだのだろうか……
「惨すぎる……なんて野郎だ!!」
早く止めないと、本当に大変なことになってしまう。この人たちのためにも、奴を倒さなくては……そう思って、先を急ぐと……聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「いいねぇ、何回ぶっ飛ばしても立ち上がってくる……そんなに俺が憎いか!?」
「黙れゴミクズ!! 貴様はこの世の害悪だ!!! とっととこの世から消えろ!!!」
「この声……八神と一破さんだ‼」
声が聞こえた方向へ急ぐ……そこでは、ボロボロの一破さんが変身したヴァルゴにやられ続けていた。切りかかったところを殴り飛ばされ、そこに重力をかけられて地面に伏せさせられている。
「オラ、立てよ。もうおしまいか? 憎い殺人鬼を殺さなくていいのかぁ!?」
「一破さん……‼ やらせない‼」
「邪魔すんじゃねぇ、雪村……後で遊んでやるからよ」
強烈な重力がかかって、まともに動けなくなる。いや、それよりも……駄目だ一破さん、逃げてくれ‼
「く、ぐぅ……‼」
「そうだ、いいぞ‼ 全力でかかってこい、そうじゃなきゃ燃えられねぇ‼」
「殺す、殺して、やる……蒼太と愛華の、仇を……‼」
あそこまでボロボロなのに、一破さんはまだ立とうとしている。でも無理だ、このままやられ続けたら……いずれ死んでしまう。一破さんはあんなに頑張っているのに、俺だけじっとしていられるか‼
「ぐぅぅ、一破さん……逃げろっ‼」
「まだ動くのか……そんなに死にたいのかよ?」
「ふざけるな、雪村……愛華も、俺の子供も、怖くても逃げられなかった‼ なのに、俺だけ逃げるだと!? お前に俺の、何がわかるッ‼」
そう言って、まだ鉈と殺意を握りしめ続ける一破さん。ヴァルゴはそれを、楽しそうに見続けている。ふざけやがって……‼
「わかる……わかるから、俺に頼ってほしいんだよ‼ 俺だって、カエル野郎に父さんと母さんを殺された‼ 何より……俺たちは仲間だろ、一破‼」
「うるせぇ雪村、黙ってろ‼」
「ごっ、がはぁ‼」
斧を腹に叩き込まれて、血反吐を吐きながらぶっ飛ぶ。生身で攻撃喰らうのは、久しぶりだな。
「雪村!? くそっ、貴様‼ 雪村をよくも‼」
「なんだなんだ、怒ったのかぁ? 怒らなきゃお前は殺しに来てくれねぇ、もっと怒れよ‼」
「まだ、まだ……‼」
歯を食いしばり、腹を押さえながら立つ。一破さんはやはりやられている……ダメだ、分が悪すぎる。今はメテオドライバーも使えないし……‼
「この野郎ッ‼ がは……ごげっ‼」
「オイオイ、そんなもんか? 俺が強くなりすぎたか、それともお前が弱くなったのか……」
「やめろって、言ってんだろうが……‼」
ヴァルゴは俺に興味がないのか、無視して一破さんを痛めつけている。すぐそこにサイガフォンが落ちているが……ダメ元で撃つしかないか。
『Burst Mode』
「そんな豆鉄砲が効くかよ。そんなこともわからねぇのか? お前も堕ちたもんだな」
「今だ、死ね‼」
一破さんの鉈が、奴の首筋に突き刺さる。しかし、ヴァルゴは一破さんの鉈を持った手を握り、自分の首から離す……よく見ると血が垂れている、効いてはいたようだ。
「いいねぇ、やっぱりお前はそういうやつだよ。俺にどこまでも食らいつく……だから、殺してやりたいんだ‼」
「ぐが、っは……」
「一破さんっ‼」
ヴァルゴの斧を食らったうえに、拳で打ち上げられて……そこに右足裏を食らった。血を吐きながら、こちらに吹っ飛ばされてくる。顔が青白くなっている……そんな一破さんに、ヴァルゴは心底残念そうな声を上げている。
「おい一破、立ってくれよぉ……お前なら、まだやれるはずだろ!?」
「に、げろ、雪村……お前も、こいつには、勝てん……」
「勝手に決めつける、な……俺はまだ、やれるぞ‼」
今の重力が何倍なのか定かではないが、どうにか立ち上がった。拳を握り、攻撃の準備をする。
「どけ」
「スマッシュビートォ‼」
「……はぁ」
奴の腹部をひたすらに殴る。こいつに通用しないとしても、俺だけ何もせずにいられるか……仲間がピンチなんだぞ。立ち上がらないでどうするんだ。
「そこだ‼」
「そんなもん喰らわな……あぁ?」
「もらった‼」
俺の拳を片手で止めたヴァルゴの腕を握りしめると、ヴァルゴの腕が俺の腕とともに下がる。それで少しバランスが崩れたところに、もう一方の腕で顔面を殴りつけた。
「ぐ……テメェ、何をしやがった?」
「お前の自業自得さ、急に重いもん乗せられてビックリしただろ? 俺に何倍の重力かけてんのか知らねぇが……重くするんじゃなかった、な‼」
「グギッ……」
二発目も、叩き込んだ。奴に攻撃が通ったぞ‼
「うぉらぁっ‼」
「やるじゃねぇの、褒めてやる……でも死ね」
「っ、しまっ……ぐぁぁぁ‼ がほっ、げぇあ……」
斧で体を切り裂かれ……殴り飛ばされた後、一気に重くなって地面に埋まった。その重みも合わせて、三回血を吐き出した。
「雪村ッ‼ くそ、くそぉ……‼」
「もう立てねぇだろ、一破。諦めろ……あぁ、悲しいよ、お前を殺さなきゃいけないなんて‼ でも、それが決まりなんだ……さよなら、一破‼ お前のこと、忘れねぇから!!!」
「ふざ、けるな……!!」
地面を這って、奴の足を掴んだ。足の重みで、奴の手が止まる。
「……せっかく生き残ったのに、そんなに死にたいか?」
「一破さん、逃げろぉ!!」
「馬鹿言え、死ぬぞ!! 百鬼さんに、お前は死んだと言えというのか!?」
でも、逃げないと彼もお陀仏だ。彼を死なせて、俺だけのうのうと生きられるか。
「俺はあんたを犠牲にして生きたくない!!」
「うるさい。もういいよ、お前から死ね」
「……!!」
咄嗟に避けようとしたが……さらに重力を強くしてきている。俺を確実に真っ二つにするつもりだ。何かないか、考えろ……しかし、時間は無慈悲に俺から命を奪いに来た。
「死ね、邪魔者!!」
「……ぐうぁぁぁぁぁっ!!」
「い……一破さん!? 一破さんっ!!!」
死を覚悟した、その時。一破さんの腕と、鮮血が宙を舞った。
一方、時間は少しさかのぼり、学園側。変身を解除させられた百鬼あやめは、サジタリウスの前になす術がない。頼みの綱だったネクロムは、いまだに変身できる気配もなく……絶体絶命というほかない状況だ。
「ぐぁぁぁっ!!」
「鬼神ですら、一方的に蹂躙できる力。素晴らしい、これがサジタリウスの力か!!」
「流石は社長、奴らとは格が違いますね!!」
ライダーの力を持たない、或いは使えないものを一方的に叩きのめし、喝采を受ける。そんな、戦いとすらいえない蹂躙は続いている。
「くそっ、どうにもならないのか……⁉」
「せめて、衛星の制御装置の在処が分かれば……」
「……待てよ。メテオは確か意識があったはず、それなら……少し連絡を取ってみる‼」
Yagooは急いで電話をし始めたが、その間にも百鬼あやめは蹂躙されている。振った刀をゾディアーツの身体能力で躱し、自分だけ攻撃を加えていく。
「まだ立つのか。さっさと楽になったほうが良いと思うが」
「そんなわけない‼ 今頃、康太様も人間様も必死に戦ってる‼ 余だけ諦められるか‼」
「往生際の悪いやつだな……‼」
サジタリウスは、傷を受ければアクエリアスの能力ですぐに回復し……圧倒的な力とスタミナで殺しにかかる。それに対し、今の百鬼あやめは生身。受けた傷はそのままだし、激しく動けば疲れも溜まっていく。前提からして不平等である。
「百鬼さん、あんなにやられてるのに……このままやっても勝てないのに、どうして?」
「簡単だよ。意地さ、こんな奴に負けたくないという意地……それは理屈じゃない、雪村君だってそうさ」
「Yagooさん、電話は終わったの?」
「ああ、有意義な情報を聞けた。しかし……間に合うかどうか」
サジタリウスは百鬼あやめに、容赦ない矢の雨を浴びせた。致命傷は防いだが、ダメージがどんどん蓄積している。
「そら、止まっていていいのか⁉」
「くっ……‼」
「おっと、隙あり‼」
超高速での踏み込みとともに繰り出された、サジタリウスの拳が百鬼あやめに突き刺さる。くの字に曲がった百鬼あやめは、大きく吹っ飛び……壁にめり込んで、血を吐いた。
「ぐごっ、がは‼」
「社長、今です‼ とどめの一撃を‼」
「そうだな、痛めつけるのもそろそろ飽きてきた。終わりにしようか」
サジタリウスが全身にエネルギーを溜めながら、構えをとっている。誰が見てもわかる、あれが当たればどんな生物も死ぬだろう。
「百鬼さん、早く逃げるんだ‼」
「くそっ、くそぉぉ……どうして、こんな時に私の体は動かないんだっ‼」
「どうしたら、どうしたらいいの……⁉」
百鬼あやめは戦いでの疲れや骨折もあってか、壁から抜け出せないようだ。潤羽るしあは、自分はどうするべきかと必死に考えている……そんな時。ふと、潤羽の脳裏を言葉がよぎる。
『……雪村くん!! るしあも……雪村くんみたいに、みんなを守れる人になれますか?』
『君もなれるさ!! 事実、さっきは俺を守ってくれたんだから!! その気持ちを忘れるなよ!!』
「……るしあは……‼」
その時、エネルギーを溜め終わったサジタリウスが足を捻り、飛び上がる。太陽のようなオーラを纏いながら、サジタリウスが右足を突き出す。
「終わりだ‼ この世から消えてしまえ、仮面ライダーオーガ‼」
「ッ……‼」
「やらせない‼」
地面から大量のアンデッドが湧いてきて、サジタリウスの前に肉壁として立ちはだかった。サジタリウスの矢のようなキックを、アンデッドたちが受け止めて……爆炎の中から、アンデッドを粉々にしたサジタリウスが現れた。
「……何のつもりだ、貴様も死にたいのか?」
「雪村くんが教えてくれた……目の前の人を助けられれば、誰だってヒーローになれるって‼ できることがあるのに、ただ見てることなんてできない‼ ここからは……るしあが相手だ‼」
「震えているぞ。怖いのに、よくもまぁ出てこれたものだな。その度胸に免じて、一撃で殺してやる」
そう言ったサジタリウスが、また力を溜め始めた。
「ダメだ‼ アンデッドの出しすぎで、魔力はもうほとんどないはず……喰らったら死ぬんだぞ⁉」
「でも、ヒーローなら……雪村君なら逃げない‼ 何かになりたいなら、今から行動しないと……いつまでたっても、なれるわけない‼」
「無謀なことを……その傲慢ごと貫いてやる‼」
サジタリウスにエネルギーが集中するのを見ながら、潤羽るしあが髪留めを外す。その眼には、もう怯えはない。
「……なんだ⁉ 髪の色が……髪が伸びているぞ⁉」
「あの色と長さ、ジェミニの時の……‼」
「『いつかなる』じゃない……『今』なるんだ‼ ヒーローにも、ネクロマンサーのお姫様にも‼」
大きく伸びて、ピンク色になった髪……ネクロマンサーの憧れ、『お姫様』の証。潤羽るしあの成長に応えるかのように、メガウルオウダーが輝きだす。
「あれは……‼」
「メガウルオウダーが、起動した‼」
『Stand by』
誰も聞いたことのない、音声が鳴る。だが潤羽るしあは、冷静に操作を続けている。
『Yes sir』
「ッ、させるものかぁ‼ 死ねぇぇぇ‼」
『Loading』
その音声とともに、パーカーのような何かがメガウルオウダーから飛び出し、必殺技を放ったサジタリウスを容易く弾いた。
「ぐわぁぁっ‼」
「ば、バカな⁉ 社長の必殺技を弾くとは……どうなっているんだ⁉」
「……すぅーっ……」
変身ッ!!!
深呼吸をして、目を見開いた潤羽るしあはそう叫んだあと、メガウルオウダーのスイッチを押した。
『テンガン!!』
『ネクロム!!』
『メガウルオウド!!』
宙を舞っていたパーカーが、潤羽るしあに覆いかぶさる。装甲を纏った潤羽るしあが、腕を袖に通してゆく。新しいライダーの産声とともに。
『Crash Invader!!!』
「あれが、ネクロム……」
「仮面ライダーネクロム、参上ッ!!」
潤羽るしあ……いや、仮面ライダーネクロムは、頭からパーカーを外してポーズを取り、高らかにそう宣言したのだった。
仮面ライダーネクロム、降臨。