※この作品はR-18です。

仮面を被った、人間達の英雄譚   作:とも667

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 大変なことになってきました。


危・急・存・亡

新しい怪人への対抗手段となり得る、『仮面ライダーネクロム』。その素質があると思われる人……潤羽るしあを、二人は学園に呼び出していた。

 

「……というわけだ。これを使用できる条件に当てはまるのは、私の知る限り君しかいない」

 

「る、るしあが……これで変身するんですか?」

 

「あなたが使えなかったら、たぶん誰にも使えない。お願い、時間がないの!!」

 

 少し悩んだ後……潤羽るしあは、その申し出を受けた。

 

「わかりました、るしあでよければ……」

 

「ありがとう、感謝するよ!!」

 

「じゃあ、さっそくこれをそれに差し込んで!」

 

 差し出された緑色の物体……メガウルオウダーを、潤羽るしあが装着する。眼魂を差し込み、変身の準備が整った。

 

「こう……ですか?」

 

「そのまま上のボタンを押して‼」

 

「は、はい! 変身!!」

 

 その場の全員が期待の眼差しで見つめる中、潤羽るしあはそう叫んで……メガウルオウダーのボタンを押し込んだ。しかし、期待とは異なり……姿が変わるどころか、音も光も出ることはなかった。

 

「……これでもダメなのか!?」

 

「えっ、どうして、なんで……!?」

 

「そんなはずないのに……これじゃ、みんなの苦労が水の泡に……‼」

 

 全員が混乱を隠せない状況で……そこに、金色の弓矢が放たれた。それに獣人特有の反応速度で気づいた博衣こよりが、二人に叫ぶ。

 

「伏せて‼」

 

「なっ……!?」

 

「だ、誰!?」

 

 全員が振り向いた先に立っていたのは……レオ・ゾディアーツと、もう一人。見たことのないゾディアーツが立っている。

 

「随分と楽しそうな談合だったが、ここで打ち止めとしてもらおう」

 

「社長。生身の相手なら、私一人で十分です。私の後ろに……」

 

「いや……強い気配が近づいてくる。警戒しろ、レオ」

 

 『社長』と呼ばれた男の注意で、殺気に気づいたレオが咄嗟に爪を盾にする。数秒後、そこに燃え盛る刀剣が三連続で襲い掛かった。構えていたサジタリウスにも、赤い爪の一撃が襲い掛かる。

 

「貴様か、仮面ライダーオーガ……!!」

 

「三人とも、怪我はない!?」

 

「無事でよかった、間に合ったんだね……!!」

 

「鷹嶺ルイは撒いたと思ったのだが……まぁいい。他人の心配より、自分が死なないことを優先するのがいいと思うがね」

 

 今度はオーガへと襲い掛かる、金色の弓矢。しかし、オーガはそれらを三本の刀で全て弾き落とした。社長と呼ばれた男が、思わず感嘆の声を上げている。

 

「そんな小細工、余には通用しないぞ!!」

 

「ほう……流石は鬼神とまで呼ばれる女、一筋縄ではいかんな」

 

「図に乗るなよ!! デルタがいない貴様など、恐れるに足らんわ!!」

 

 そう啖呵を切るレオだが、社長と呼ばれた男がそれを諫めた。

 

「お前一人ではオーガに勝てん。あまり思い上がりすぎるなよ……申し遅れた、私はホロスコープス最後の一人、サジタリウスだ」

 

「下がってて、こいつは強い……多分、こいつが大ボスだよ!!」

 

「そういうことだな、以後お見知りおきを……する必要もないか。どうせ、ここで死んでもらうのだし」

 

 そう言って、本格的に戦闘態勢をとるサジタリウス。それに合わせて、レオもサジタリウスを守るように立った。

 

「社長が世界の王になるため、今度こそ死んでもらう……!!」

 

「さて、最初から私も本気で行かせてもらおう……!! 超新星ッ!! はっ!!!」

 

「あれは……スコーピオンの時と同じ……いや、色が違う!!」

 

 他の者たちとは違う、赤い球体を取り込み……凄まじい覇気とともに、サジタリウスの装甲が弾け飛ぶ。体中が赤くなり、よりスリムになった。

 

「ふぅ……これが真の力、サジタリウス・ノヴァだ。さぁ、覚悟してもらおう」

 

「覚悟するのはお前だ!! 行くぞぉぉ!!」

 

「社長の前にひれ伏せ、小娘ぇ!!」

 

「あやめちゃん、こいつの相手は私がする‼ 君はそいつを片付けて‼」

 

 サジタリウスは、より輝きを増したエネルギーの弓矢を放ち……レオはスコーピオンに姿を変えて、レーザーを連射した。対して、百鬼あやめは一切剣の体勢を崩さず、致命傷になる攻撃のみ回避しながら、レオに突貫していく。鷹嶺ルイも、高速で飛んでくる矢を避けながら、確実に攻撃を加えている……

 

「図に乗りおって!! 喰らえ、超新星!!」

 

「あれは……ジェミニ!! ふぁんでっどさん、あいつを……」

 

「邪魔だ、どいていろ!! 腐肉ども!!」

 

 レオが元の姿に戻り、雄叫びの波動を飛ばす。ジェミニに纏わりつこうとしたアンデッドが、軒並み吹き飛ばされてしまった。しかし、百鬼あやめは怯まない。

 

『『Exceed Charge』』

 

「同じ手は食わない‼ お前が喰らえ!!」

 

「な、なんだと!? グアァァァァ!!」

 

 百鬼あやめは、オーガストラッシュの先端で捕まえたジェミニを、レオにぶつけて起爆させたのだ。無論、爆発の大ダメージはレオにも平等に襲い掛かる。そして、百鬼あやめがその隙を逃すわけもなく……オーガストラッシュが、レオに振り下ろされた。

 

「これで、終わりだぁっ‼」

 

「しまっ……グッ、グォォォォォッ!!!」

 

「レオをいとも簡単に……なるほど。噂は伊達ではないようだ」

 

「よそ見してる暇があるのか!!」

 

 仲間がやられているにも関わらず、サジタリウスはオーガの戦いに感嘆して拍手まで送っていた……が、今は一方的にやられている。一方のレオ……否、神宮寺は地に伏せながらも、そんなサジタリウスを気遣っていた。

 

「社長……この者達は、危険です……最終プランを‼」

 

「ぐがっ、そうだな……相手が相手だ。そろそろあれの使いどころか……ごふっ‼」

 

「何をしたって、余たちには勝てないぞ‼」

 

「そういうことだ、お前もやられてるし……お前たちも、大したことないね‼」

 

 一対一に持ち込めれば、こちらのもの。そう思って、百鬼あやめにも余裕が出てきている。鷹嶺ルイも、ここぞとばかりに全力で潰しにかかっている……しかし、サジタリウスはやられながらも、懐から何かを取り出した。

 

「それは、ぐっ、どうかな? こんなにも早く、使うことになるとは思わなかったが……さよならだ、百鬼あやめ」

 

「何だか知らないけど、押させるかっ‼ 必殺……‼」

 

「もう遅い……」

 

 サジタリウスが冷徹に言い放った、その瞬間……必殺技を発動しようと、百鬼あやめがオーガフォンのエンターキーを押した。しかし。

 

「……あれ? どうして!?」

 

「フフフ……君達の負けだ。残念ながらね」

 

「変身が解けて……一体何が!?」

 

 サジタリウスは腕を組みながら、笑っている。それを見ていた鷹嶺ルイが、『オーバード』を起動した。

 

「まだまだ、私がとどめを……ぐぅぅっ!?」

 

「お前たちのことは全てわかっている。鷹嶺ルイ、お前が脅威であることもな……だから、お前を撒いた時の煙に毒を仕込んでおいたんだ。それ、血液の流れを早くする技なんだろう? 毒の通りも早いはずだ」

 

「そん、な……く、そ……」

 

 鷹嶺ルイが体中に回った猛毒に為すすべなく、膝をつく。

 

「鷹嶺先生‼」

 

「ちなみに、お前の変身を解除させたのは……私の打ち上げた衛星が放つ妨害電波さ」

 

「妨害電波……やっぱり、最初から協力する気なんてなかったんだね‼」

 

 百鬼あやめが刀を構え直しながら、怒りの声を上げる。

 

「だまして悪いが、私の計画のためには貴様らは邪魔なんだ。ここで消えてもらおう」

 

「まだだ‼ 余は生身だって戦えるぞ‼ お前だって弱ってるだろ!?」

 

「わからないのか? 私は最強のゾディアーツだ……生身の貴様に負けるほど弱くはない。それに……神宮寺、寄越せ」

 

 神宮寺が差し出したスイッチを押して、アクエリアスに姿を変えたサジタリウス。傷を治して、元の姿に戻ってしまった。

 

「回復された!?」

 

「神宮寺にできることは私にもできる。当たり前だろう? さて、お喋りは終わりだ……そろそろ死ね‼」

 

「っ、く……‼」

 

 サジタリウスが、百鬼あやめに容赦なく襲い掛かる。周囲の人間たちも、それを黙って見ていることしかできない……絶望的な戦いは、続いてゆく。一方その頃、雪村康太は……

 

 

 

「一破さん、どこだ!?」

 

 一破さんの名前を呼びながら、しらみつぶしに走り回る。行き先がわからないから、こうするしかないのだ。そんな時……

 

「っ!? 変身が……」

 

 なぜだがわからないが、変身が解除されてしまった。その上、音声認識すらしなくなってしまっている。

 

「あいつら、何かやったのか……!?」

 

 もし奴らのせいで、俺が変身解除されたなら……あやめもやられているのか。まずい、鷹嶺先生がいても、流石に分が悪いだろう。

 

「……だけど、一破さんはもっと危ない‼」

 

 ヴァルゴの危険性は俺にも想像がつかない。それくらい、あいつはとんでもない奴だ。あのオーラは尋常じゃない、常人なら奴がいるだけで気絶するだろう。

 

「一破さん、俺に人を信じろって言っといて……それは勝手だろ‼」

 

 ここにいない一破さんに愚痴りながら、走っていると……警察官の人たちと思われる、死体が転がっていた。八神に挑んだのだろうか……

 

「惨すぎる……なんて野郎だ!!」

 

 早く止めないと、本当に大変なことになってしまう。この人たちのためにも、奴を倒さなくては……そう思って、先を急ぐと……聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「いいねぇ、何回ぶっ飛ばしても立ち上がってくる……そんなに俺が憎いか!?」

 

「黙れゴミクズ!! 貴様はこの世の害悪だ!!! とっととこの世から消えろ!!!」

 

「この声……八神と一破さんだ‼」

 

 声が聞こえた方向へ急ぐ……そこでは、ボロボロの一破さんが変身したヴァルゴにやられ続けていた。切りかかったところを殴り飛ばされ、そこに重力をかけられて地面に伏せさせられている。

 

「オラ、立てよ。もうおしまいか? 憎い殺人鬼を殺さなくていいのかぁ!?」

 

「一破さん……‼ やらせない‼」

 

「邪魔すんじゃねぇ、雪村……後で遊んでやるからよ」

 

 強烈な重力がかかって、まともに動けなくなる。いや、それよりも……駄目だ一破さん、逃げてくれ‼

 

「く、ぐぅ……‼」

 

「そうだ、いいぞ‼ 全力でかかってこい、そうじゃなきゃ燃えられねぇ‼」

 

「殺す、殺して、やる……蒼太と愛華の、仇を……‼」

 

 あそこまでボロボロなのに、一破さんはまだ立とうとしている。でも無理だ、このままやられ続けたら……いずれ死んでしまう。一破さんはあんなに頑張っているのに、俺だけじっとしていられるか‼

 

「ぐぅぅ、一破さん……逃げろっ‼」

 

「まだ動くのか……そんなに死にたいのかよ?」

 

「ふざけるな、雪村……愛華も、俺の子供も、怖くても逃げられなかった‼ なのに、俺だけ逃げるだと!? お前に俺の、何がわかるッ‼」

 

 そう言って、まだ鉈と殺意を握りしめ続ける一破さん。ヴァルゴはそれを、楽しそうに見続けている。ふざけやがって……‼

 

「わかる……わかるから、俺に頼ってほしいんだよ‼ 俺だって、カエル野郎に父さんと母さんを殺された‼ 何より……俺たちは仲間だろ、一破‼」

 

「うるせぇ雪村、黙ってろ‼」

 

「ごっ、がはぁ‼」

 

 斧を腹に叩き込まれて、血反吐を吐きながらぶっ飛ぶ。生身で攻撃喰らうのは、久しぶりだな。

 

「雪村!? くそっ、貴様‼ 雪村をよくも‼」

 

「なんだなんだ、怒ったのかぁ? 怒らなきゃお前は殺しに来てくれねぇ、もっと怒れよ‼」

 

「まだ、まだ……‼」

 

 歯を食いしばり、腹を押さえながら立つ。一破さんはやはりやられている……ダメだ、分が悪すぎる。今はメテオドライバーも使えないし……‼

 

「この野郎ッ‼ がは……ごげっ‼」

 

「オイオイ、そんなもんか? 俺が強くなりすぎたか、それともお前が弱くなったのか……」

 

「やめろって、言ってんだろうが……‼」

 

 ヴァルゴは俺に興味がないのか、無視して一破さんを痛めつけている。すぐそこにサイガフォンが落ちているが……ダメ元で撃つしかないか。

 

『Burst Mode』

 

「そんな豆鉄砲が効くかよ。そんなこともわからねぇのか? お前も堕ちたもんだな」

 

「今だ、死ね‼」

 

 一破さんの鉈が、奴の首筋に突き刺さる。しかし、ヴァルゴは一破さんの鉈を持った手を握り、自分の首から離す……よく見ると血が垂れている、効いてはいたようだ。

 

「いいねぇ、やっぱりお前はそういうやつだよ。俺にどこまでも食らいつく……だから、殺してやりたいんだ‼」

 

「ぐが、っは……」

 

「一破さんっ‼」

 

 ヴァルゴの斧を食らったうえに、拳で打ち上げられて……そこに右足裏を食らった。血を吐きながら、こちらに吹っ飛ばされてくる。顔が青白くなっている……そんな一破さんに、ヴァルゴは心底残念そうな声を上げている。

 

「おい一破、立ってくれよぉ……お前なら、まだやれるはずだろ!?」

 

「に、げろ、雪村……お前も、こいつには、勝てん……」

 

「勝手に決めつける、な……俺はまだ、やれるぞ‼」

 

 今の重力が何倍なのか定かではないが、どうにか立ち上がった。拳を握り、攻撃の準備をする。

 

「どけ」

 

「スマッシュビートォ‼」

 

「……はぁ」

 

 奴の腹部をひたすらに殴る。こいつに通用しないとしても、俺だけ何もせずにいられるか……仲間がピンチなんだぞ。立ち上がらないでどうするんだ。

 

「そこだ‼」

 

「そんなもん喰らわな……あぁ?」

 

「もらった‼」

 

 俺の拳を片手で止めたヴァルゴの腕を握りしめると、ヴァルゴの腕が俺の腕とともに下がる。それで少しバランスが崩れたところに、もう一方の腕で顔面を殴りつけた。

 

「ぐ……テメェ、何をしやがった?」

 

「お前の自業自得さ、急に重いもん乗せられてビックリしただろ? 俺に何倍の重力かけてんのか知らねぇが……重くするんじゃなかった、な‼」

 

「グギッ……」

 

 二発目も、叩き込んだ。奴に攻撃が通ったぞ‼

 

「うぉらぁっ‼」

 

「やるじゃねぇの、褒めてやる……でも死ね」

 

「っ、しまっ……ぐぁぁぁ‼ がほっ、げぇあ……」

 

 斧で体を切り裂かれ……殴り飛ばされた後、一気に重くなって地面に埋まった。その重みも合わせて、三回血を吐き出した。

 

「雪村ッ‼ くそ、くそぉ……‼」

 

「もう立てねぇだろ、一破。諦めろ……あぁ、悲しいよ、お前を殺さなきゃいけないなんて‼ でも、それが決まりなんだ……さよなら、一破‼ お前のこと、忘れねぇから!!!」

 

「ふざ、けるな……!!」

 

 地面を這って、奴の足を掴んだ。足の重みで、奴の手が止まる。

 

「……せっかく生き残ったのに、そんなに死にたいか?」

 

「一破さん、逃げろぉ!!」

 

「馬鹿言え、死ぬぞ!! 百鬼さんに、お前は死んだと言えというのか!?」

 

 でも、逃げないと彼もお陀仏だ。彼を死なせて、俺だけのうのうと生きられるか。

 

「俺はあんたを犠牲にして生きたくない!!」

 

「うるさい。もういいよ、お前から死ね」

 

「……!!」

 

 咄嗟に避けようとしたが……さらに重力を強くしてきている。俺を確実に真っ二つにするつもりだ。何かないか、考えろ……しかし、時間は無慈悲に俺から命を奪いに来た。

 

「死ね、邪魔者!!」

 

「……ぐうぁぁぁぁぁっ!!」

 

「い……一破さん!? 一破さんっ!!!」

 

 死を覚悟した、その時。一破さんの腕と、鮮血が宙を舞った。

 

 

 

 一方、時間は少しさかのぼり、学園側。変身を解除させられた百鬼あやめは、サジタリウスの前になす術がない。頼みの綱だったネクロムは、いまだに変身できる気配もなく……絶体絶命というほかない状況だ。

 

「ぐぁぁぁっ!!」

 

「鬼神ですら、一方的に蹂躙できる力。素晴らしい、これがサジタリウスの力か!!」

 

「流石は社長、奴らとは格が違いますね!!」

 

 ライダーの力を持たない、或いは使えないものを一方的に叩きのめし、喝采を受ける。そんな、戦いとすらいえない蹂躙は続いている。

 

「くそっ、どうにもならないのか……⁉」

 

「せめて、衛星の制御装置の在処が分かれば……」

 

「……待てよ。メテオは確か意識があったはず、それなら……少し連絡を取ってみる‼」

 

 Yagooは急いで電話をし始めたが、その間にも百鬼あやめは蹂躙されている。振った刀をゾディアーツの身体能力で躱し、自分だけ攻撃を加えていく。

 

「まだ立つのか。さっさと楽になったほうが良いと思うが」

 

「そんなわけない‼ 今頃、康太様も人間様も必死に戦ってる‼ 余だけ諦められるか‼」

 

「往生際の悪いやつだな……‼」

 

 サジタリウスは、傷を受ければアクエリアスの能力ですぐに回復し……圧倒的な力とスタミナで殺しにかかる。それに対し、今の百鬼あやめは生身。受けた傷はそのままだし、激しく動けば疲れも溜まっていく。前提からして不平等である。

 

「百鬼さん、あんなにやられてるのに……このままやっても勝てないのに、どうして?」

 

「簡単だよ。意地さ、こんな奴に負けたくないという意地……それは理屈じゃない、雪村君だってそうさ」

 

「Yagooさん、電話は終わったの?」

 

「ああ、有意義な情報を聞けた。しかし……間に合うかどうか」

 

 サジタリウスは百鬼あやめに、容赦ない矢の雨を浴びせた。致命傷は防いだが、ダメージがどんどん蓄積している。

 

「そら、止まっていていいのか⁉」

 

「くっ……‼」

 

「おっと、隙あり‼」

 

 超高速での踏み込みとともに繰り出された、サジタリウスの拳が百鬼あやめに突き刺さる。くの字に曲がった百鬼あやめは、大きく吹っ飛び……壁にめり込んで、血を吐いた。

 

「ぐごっ、がは‼」

 

「社長、今です‼ とどめの一撃を‼」

 

「そうだな、痛めつけるのもそろそろ飽きてきた。終わりにしようか」

 

 サジタリウスが全身にエネルギーを溜めながら、構えをとっている。誰が見てもわかる、あれが当たればどんな生物も死ぬだろう。

 

「百鬼さん、早く逃げるんだ‼」

 

「くそっ、くそぉぉ……どうして、こんな時に私の体は動かないんだっ‼」

 

「どうしたら、どうしたらいいの……⁉」

 

 百鬼あやめは戦いでの疲れや骨折もあってか、壁から抜け出せないようだ。潤羽るしあは、自分はどうするべきかと必死に考えている……そんな時。ふと、潤羽の脳裏を言葉がよぎる。

 

『……雪村くん!! るしあも……雪村くんみたいに、みんなを守れる人になれますか?』

 

『君もなれるさ!! 事実、さっきは俺を守ってくれたんだから!! その気持ちを忘れるなよ!!』

 

「……るしあは……‼」

 

 その時、エネルギーを溜め終わったサジタリウスが足を捻り、飛び上がる。太陽のようなオーラを纏いながら、サジタリウスが右足を突き出す。

 

「終わりだ‼ この世から消えてしまえ、仮面ライダーオーガ‼」

 

「ッ……‼」

 

「やらせない‼」

 

 地面から大量のアンデッドが湧いてきて、サジタリウスの前に肉壁として立ちはだかった。サジタリウスの矢のようなキックを、アンデッドたちが受け止めて……爆炎の中から、アンデッドを粉々にしたサジタリウスが現れた。

 

「……何のつもりだ、貴様も死にたいのか?」

 

「雪村くんが教えてくれた……目の前の人を助けられれば、誰だってヒーローになれるって‼ できることがあるのに、ただ見てることなんてできない‼ ここからは……るしあが相手だ‼」

 

「震えているぞ。怖いのに、よくもまぁ出てこれたものだな。その度胸に免じて、一撃で殺してやる」

 

 そう言ったサジタリウスが、また力を溜め始めた。

 

「ダメだ‼ アンデッドの出しすぎで、魔力はもうほとんどないはず……喰らったら死ぬんだぞ⁉」

 

「でも、ヒーローなら……雪村君なら逃げない‼ 何かになりたいなら、今から行動しないと……いつまでたっても、なれるわけない‼」

 

「無謀なことを……その傲慢ごと貫いてやる‼」

 

 サジタリウスにエネルギーが集中するのを見ながら、潤羽るしあが髪留めを外す。その眼には、もう怯えはない。

 

「……なんだ⁉ 髪の色が……髪が伸びているぞ⁉」

 

「あの色と長さ、ジェミニの時の……‼」

 

「『いつかなる』じゃない……『今』なるんだ‼ ヒーローにも、ネクロマンサーのお姫様にも‼」

 

 大きく伸びて、ピンク色になった髪……ネクロマンサーの憧れ、『お姫様』の証。潤羽るしあの成長に応えるかのように、メガウルオウダーが輝きだす。

 

「あれは……‼」

 

「メガウルオウダーが、起動した‼」

 

『Stand by』

 

誰も聞いたことのない、音声が鳴る。だが潤羽るしあは、冷静に操作を続けている。

 

『Yes sir』

 

「ッ、させるものかぁ‼ 死ねぇぇぇ‼」

 

『Loading』

 

 その音声とともに、パーカーのような何かがメガウルオウダーから飛び出し、必殺技を放ったサジタリウスを容易く弾いた。

 

「ぐわぁぁっ‼」

 

「ば、バカな⁉ 社長の必殺技を弾くとは……どうなっているんだ⁉」

 

「……すぅーっ……」

 

 変身ッ!!!

 

 深呼吸をして、目を見開いた潤羽るしあはそう叫んだあと、メガウルオウダーのスイッチを押した。

 

『テンガン!!』

 

『ネクロム!!』

 

『メガウルオウド!!』

 

 宙を舞っていたパーカーが、潤羽るしあに覆いかぶさる。装甲を纏った潤羽るしあが、腕を袖に通してゆく。新しいライダーの産声とともに。

 

『Crash Invader!!!』

 

「あれが、ネクロム……」

 

「仮面ライダーネクロム、参上ッ!!」

 

 潤羽るしあ……いや、仮面ライダーネクロムは、頭からパーカーを外してポーズを取り、高らかにそう宣言したのだった。

 




仮面ライダーネクロム、降臨。
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