※この作品はR-18です。

仮面を被った、人間達の英雄譚   作:とも667

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 後始末、という名の一破さんコミュ回。


幕間2
後始末


あの壮絶を極めた戦いの後、俺達はもちろん病院送りになった。いつもは、俺だけかあやめと一緒だが、今回は一破さんと一緒だ。なにせ腕が飛んでいたので……みんなビックリしていた。腕はくっつけられないらしいので、二人仲良く義手にすることとなった。

 

「一破さん、調子はいかがですか?」

 

「まぁ、悪くない。気分もいいしな……」

 

「そうですよね、人生の目的が果たされたんですから」

 

 一破さんの生きる目的は、あの日から復讐になった。最凶最悪の殺人鬼、八神雷牙。それが果たされたんだから、清々しいことこの上ないだろう。

 

「八神の死体は回収されたらしい。然るべき手続きの後に火葬するそうだ」

 

「……本当に、やったんですね。俺達」

 

「そういえば、お前はもう動けるのか? 私の見舞いに当然のように来ているが」

 

 あぁ、それなら平気だ。なぜなら……治るのが早いからである。

 

「治療を施したら、二日くらいで治っちゃいましたよ。どんどん回復が早くなってて、嬉しいです」

 

「……そうか。私も、あと一週間もすれば退院はできるらしい。あとは通院でいいそうだ……私は私で、怪我に慣れてしまったな」

 

「一緒にサイガの攻撃を受けたりしましたもんね、ははははは!!」

 

 俺はそう言って、過去の出来事を笑い飛ばした。一破さんにはため息をつかれたが、その顔には優しい笑みが見える……

 

「はぁ……あの時は大怪我を負わされて、あんなに落ち込んでいたというのに、元気だな」

 

「どっちにも慣れました!!」

 

「慣れでどうにかなるのか? お前の体は便利だな……」

 

 一破さんとしばらく雑談をしていると……部屋に看護師さんが飛び込んできた。どうやら、俺を連れ戻しに来たようだ。

 

「ちょっと、雪村さん!! いくら怪我がほとんど治ったからって、まだ入院中なんですよ!? 大人しくしていてください!!」

 

「でも、ずっと病室にいたら体がなまっちゃいますよ?」

 

「入院が長引いたらどうするんですか!! 帰りますよ!! ほら、みんなも引っ張って!!」

 

 看護師さん達に腕を掴まれた。俺は抵抗を諦め、手を振りながら引き摺られていく。

 

「それでは、今日はこの辺で~!!」

 

「ほら、行きますよ!!」

 

「……今度来る時は退院してから来いよ」

 

 一破さんがそう言ってくれたので、俺は満面の笑みで手を振りながら、病室へと引き摺られていった。一日後、俺は精密検査を受けて……かかりつけ医にため息をつかれた。

 

「あなたは本当に傷の治りが早いですね……傷つく度に高速になっていく」

 

「なにかまずいんですか?」

 

「その原因が分からないんですよ。ただの『慣れ』では片付けられない早さですから」

 

 まぁ、そりゃそうだよな。慣れたら治りが早いなら、病気の人は苦労しない。

 

「でも僕にとっては都合いいんですよ、早くパトロールしないと」

 

「はぁ……とりあえず、体に問題はありませんでした。退院して大丈夫です……できる範囲でお大事に」

 

「できる範囲で、ね!! ありがとうございました!!」

 

 お医者さんは深いため息をついている。仕事を増やしてしまってごめんなさい。

 

「さて、とりあえず学園に戻って重りつけて、走り込みするか……」

 

「康太様ぁー!!」

 

「あやめ、わざわざ来てくれたのか? いつもありがとう」

 

 毎回あやめは絶対に来てくれる。理由はわかっているが、それでも来てくれるのは嬉しいものだ。

 

「えへへ……これから走り込み? 余もやるんだ、一緒にやらない?」

 

「よしきた!! 何なら、どっちが先に疲れるか勝負するか?」

 

「いい余? 余の体力、舐めちゃいけない余!! そうと決まれば、学園までダッシュだ!!」

 

 あやめはそう言って、俺と一緒に学園に走り……それから、走り込みに臨んだ。その結果……

 

「はぁ、はぁ……すごいね、康太様……」

 

「ふぅ……やっぱり引き分けか」

 

「余と引き分けの人なんて、父上くらいしかいなかったけど……康太様と一緒にいると、やっぱり楽しい!!」

 

 褒められて悪い気はしない……俺は笑いながら、スポーツドリンクを二人分買ってきた。

 

「じゃあ、両者共に一位ってことで……乾杯といこうぜ?」

 

「かんぱーい!!」

 

「乾杯!! ……うん、美味い!!」

 

 運動のあとにはやっぱりこれだよな。あやめも両手で持って、一気に飲んでいる。

 

「二人とも、トレーニングの後なのですか?」

 

「あぁ、とりあえず走り込みを……って、潤羽さん!?」

 

「こんにちは、雪村くん!! るしあでいいよ?」

 

 るしあの髪の毛の色は緑に戻っている。どうやら切り替え可能らしい……いや、今はそうじゃなくて。

 

「どうしてここに? もしかして、潤羽さんも……」

 

「仮面ライダーなら、日々の鍛錬は怠っちゃいけないと思って……とりあえず始めてみたの!!」

 

「そうか、いいことだな……そうだ、ちょっと待ってろよ」

 

 るしあを椅子に座らせて……もう一つスポーツドリンクを買ってきた。そして、るしあにもスポーツドリンクを差し出す。

 

「これ……スポーツドリンク?」

 

「走り込みの後だし、汗かいただろ? 飲むといい」

 

「あ、ありがとう! こんなの初めてで……美味しい!!」

 

 さて、他にも色々とトレーニングがあるし……そろそろ行こうか。空き缶をゴミ箱に入れて、歩を進める。

 

「次のトレーニング行くの? 余も行く!!」

 

「もう行っちゃうのですか?」

 

「あぁ、悪いな……また会ったら奢るよ、じゃあ!!」

 

 そう言って、俺はトレーニング道具を取りに行った。後ろを見ると、あやめも走ってこようとしている。何かるしあに言っているようだが……

 

「お待たせ、康太様。今度は何するの?」

 

「あやめもいるし、実践式でやろうと思ってる」

 

「わかった!! まず何からやろうか?」

 

 とりあえず、体がなまらないようにダンベルでフリーウェイトして……剣と銃の訓練かな。その旨をあやめに話しながら、俺達は歩いていった。

 

「……『康太様は譲らない』って、どういうこと?」

 

 

 

 あれから一週間ほど経過し……そろそろ、一破さんが退院してくる日だ。俺は早めにトレーニングを切り上げて、病院の前で待機していた。

 

「……やっぱり、いたな」

 

「一破さん!! 退院おめでとうございます!!」

 

「少々憂鬱だがな。あの日の独断行動で、始末書も何枚か書かねばならんし……電話越しで上司に怒鳴られたよ」

 

 上司……安西さんのことだな。

 

「安西さん、いい人ですよね」

 

「会ったのか?」

 

「はい、一破さんについて聞こうと思って……」

 

 俺がそう言うと、一破さんは頭を押さえてため息をついた。

 

「はぁ……妙に俺の事情に詳しいと思ったら、そういうことか。全くあの人は……」

 

「昔からこうなんですか?」

 

「……愛華に、俺のことを色々と喋ったのも彼だ。お陰様で、俺の好物だらけの弁当が届いたよ」

 

 一破さんは愛華さんを懐かしんでいるようだ……つまり、懐かしむ余裕があるってこと。

 

「あっ、そういえば……メテオは、どうなりましたか?」

 

「メテオ……『星街すいせい』のことだな? 本来なら、神谷や神宮寺への協力もあって、仲良く終身刑か死刑になっているが……人質を取られていたことや、人質の『さくらみこ』が残酷に痛めつけられた痕もあった……それらを踏まえて、結局不起訴になったよ」

 

「そうですか、よかった……」

 

 彼女だって奴らの被害者だった、責め続けるのは酷であろう。

 

「……あれ、ここって警察署?」

 

「言っただろう。仕事をしに来てるんだ……終わるまでトレーニングしてろ」

 

「あ、はい……」

 

 一破さんの隣をついて回っていたら、いつの間にかここまで来てしまった。一応、中に入ってみる……

 

「お邪魔します……」

 

「……久しぶりだな」

 

「安西さん! お久しぶりです!!」

 

 安西さんは俺の隣に座って、腕を組んだ。

 

「一破のヤツは始末書書いてるよ。散々怒鳴ったから、あいつも大人しい」

 

「程々にしてあげてくださいね……?」

 

「わかってるよ……色々とありがとな。あんな量の始末書を書いてんのに、清々しい表情してやがる」

 

 復讐を果たせたからか……でも。

 

「彼がいなかったら、助けにいった僕も殺されてました。僕も彼には感謝してます」

 

「でも、あいつもお前がいなきゃ死んでた。お互い様、だろ?」

 

「そうですね!!」

 

 安西さんも何だか清々しそうだ。悩みの種が取れたからだろうか。

 

「俺としても、あいつは憎かった……やれるなら撃ち殺してやろうと思ってたが、俺じゃとても無理だった……だから、死んだ時は嬉しかったよ。他の奴らも、八神に仲間を殺されてる奴はいた……みんな大喜びさ」

 

「本当にとんでもない男でした……どうしてあれほどの強さと狂気を? いくら変身していたとはいえ、人間が持てる強さだとは思えない」

 

「そこも含めて『狂ってる』のさ、あいつは。そうでもなきゃ、もう射殺されてるよ」

 

 二人じゃなきゃ勝てなかった、ってわけか……やはり滅茶苦茶だな。

 

「滅茶苦茶ですね……」

 

「あぁ……そういや、知ってるか? 星街すいせいの嘆願書、被害者のさくらみこだけじゃなくて……一破も書いたんだぜ」

 

「えっ、一破さんが!? どうして……」

 

 安西さんは笑っている……一破さんも、メテオを助けたかったのだろうか。

 

「元々情状酌量の余地はあったからな。だが、不起訴になった決め手はそれだ」

 

「でも、書く理由がないような……」

 

「あいつは何だかんだ優しい奴だからな。メテオの事情知ったら、放っておけなかったんだろう……まぁ、心の余裕ができたってのも大きいだろうが……」

 

 心の余裕……そうだ、余裕がなきゃ優しくはできないもんな。

 

「ともかく、アンタのお陰で色んな人が助かった。礼を言うよ」

 

「……気にしないでください。私は自分の友達を助けただけです!!」

 

「友達、か……そうだな。あいつとずっと、友達でいてやってくれ。もうあいつが、失わないように」

 

 そこに関しては心配いらない、何故なら……

 

「心配ご無用です!! 憎まれっ子世にはばかるって言うでしょ? 敵からもゴキブリかって何度も言われましたしね!!」

 

「はっはっは、自慢になってねぇぞ? ……おっと、そろそろ仕事しないとな。また会おうぜ、俺達のヒーローさん」

 

「ありがとうございました!! ……ヒーローか」

 

 彼らのヒーロー……俺にその資格があるのだろうか。

 

『……おとー、さーん、おかー、さー……』

 

「やめよう……今頃悔やんでも、誰のためにもならん。さて、基本トレーニングは終えてるが、追加しようかな……?」

 

『それでは、次のニュースです。ギャラクシー・コーポレーションの社長とその秘書、神谷容疑者と神宮寺容疑者が犯罪組織『財団X』と取引をしていたことが正式に判明しました。二人はこれに関し、『間違いありません』と容疑を認めています』

 

 後始末はきちんと成されているようだ。あとは手がかりが見つかることを祈るばかりだが……そう思いながら、外に出る。すると……女の人と鉢合わせた。

 

「あっ、すみません……」

 

「……いたんですね。ちょうど良かった」

 

「え? どちら様……?」

 

 水色の髪をした、綺麗な女の人だ……誰だろうか。

 

「星街すいせいです。名前はもう聞いてますよね?」

 

「あっ、メテオの!? ここに何を……?」

 

「一破さんも、いらっしゃいますか?」

 

 いるけど……多分、今は会えないな。

 

「はい、いますが……会うのは難しいかと。仕事中なので」

 

「そうですか……ごめんなさい、あなたにも謝りに来たのに」

 

「……気にしないでください。仕方なかったと思いますよ、僕も一破さんも」

 

 明らかに落ち込んでいる、仕方ないとは思うけど……それでも悲しい。

 

「ありがとうございます……」

 

「そうだ、知ってますか? 一破さんもあなたの嘆願書、書いたらしいですよ」

 

「えっ!? どうして……!?」

 

 当然、星街さんはとても驚いている。俺は笑いながら言った。

 

「あなたの事情を知ったら、放っておけなかったみたいです。あの人、カッコイイし優しい人ですから……僕も憧れてるんです」

 

「……かつての敵なのに、そんな簡単に水に流せるの?」

 

「えっ? 僕はわからないけど……一破さんは、犯罪者に接してきてるだろうし……冷静に接するとかも得意だと思いますよ? だからじゃないかな……」

 

「そう、なんだ……」

 

 ついでだ、一破さんを立てておこう。俺は一破さんの功績を並べ立てることにした。

 

「それに、ギャラクシーコーポレーションで調査したのは一破さんですから!! 彼がいなかったら、さくらみこさんは助かってなかったかも……」

 

「……一破さんのこと、好きなんですね」

 

「そりゃあもちろん!! 大事な友達ですから!!」

 

 そう言って、歯を見せて笑う。彼のことはいくらでも話せる気がする……

 

「……私も一応、ホロライブ学園の二年生なんだ。あなたもそうだって知って、少し驚いたけど……復学できたらするから、よろしくね」

 

「わかりました!! 僕の方からも説得しておきます!!」

 

「……そこまでしなくていいよ? じゃあね」

 

そう言って、星街さんは去っていった……というか、先輩だったんだな。知らなかったよ……さて、どうやって時間をつぶすかだが……

 

「そうだ、いいこと考えた……」

 

 そう呟いて、俺はあるものを買いに行った。帰ってきてからしばらくして、一破さんが署から出てくる……

 

「……本当に律義に待っているとはな。手に持っているのは労いのためのものか?」

 

「へへへ……これなーんだ!!」

 

「花か? やけに数が多いが……しかし何のために? ……いや、そういうことか」

 

 一破さんは俺の思惑に気づいたらしい。少し渋い顔をしている。

 

「……復讐は終わったんですし、そろそろ行ってもいいのでは?」

 

「夜中だぞ。肝試しでもする気か?」

 

「愛華さんに会えるかもしれませんよ?」

 

 すると、一破さんがため息をついて言う。

 

「はぁ……花を買ってくるから、待っていろ」

 

「よしきた!!」

 

「遠足に行くんじゃないんだぞ、全く……」

 

 少々呆れられながら、一破さんも花を買ってきて……お墓へと向かった。電灯が何個かついているが、それでも怖いな。

 

「ここですか?」

 

「あぁ……愛華と、子供の墓だ」

 

「お花生けないと……」

 

 花瓶の水を替えて、花を何本か差す。そして、黙祷を捧げた。

 

「……終わったよ。愛華、亮太」

 

「子供さん……名前があったんですね」

 

「男の子だとわかっていた。だから、亮太って名前に決めたんだ……生まれることは叶わんかったがな」

 

 亮太くんか……きっと、満足しているさ。

 

「亮太くん、君のパパが敵を討ってくれたよ……」

 

「……蒼太のところに行くぞ」

 

「あ、はい!!」

 

 蒼太さん……一破さんの相棒らしい。そこに向かい、お墓に花を活けて……また黙禱する。

 

「蒼太……あとはお前の仕事だ。地獄の鬼に突き出してやれ」

 

「優秀な人だったんですよね?」

 

「あぁ。明るい奴で、煙草が好きだった……そんな煙たいもの誰が吸うか、なんて言ったのにな」

 

 一破さんはお墓を見ながら、懐かしさに浸っているようだ。しばらく、一破さんの思い出話を聞いた後……

 

「……お前は先に帰っていろ。帰り道がわからなくなるぞ」

 

「一破さんは大丈夫ですか?」

 

「このあたりの道はわかる。心配せずに帰っていろ」

 

 そう言われて、立ち上がる。

 

「では……ごゆっくり」

 

「……」

 

「一破さんを……僕の友人を、ありがとうございました」

 

 お墓全体に頭を下げた、その時。

 

『あの人をよろしくね』

 

『俺の相棒を、頼む』

 

「……はは」

 

 ほら。やっぱり、会えたじゃないか。俺は笑顔のまま、帰路についた。

 

 

 

「蒼太。そっちでも煙草を吸っているか?」

 

 誰もいない墓場に、声が響く。

 

「お前のことだから、これを機に禁煙する……なんてことはしないんだろうな」

 

 優しく笑いながら、一破が懐から何かを取り出した。

 

「……プレゼントだ。お前にくれてやる、ライターもサービスだ」

 

 煙草の箱が二箱、そしてライターが一つ墓に置かれた。

 

「……俺か? 俺はしばらくいい、このまま禁煙してやる……お前の振りはもうやめだ」

 

 そう言って、一破も立ち上がる。

 

「タバコ臭いのは嫌いなんでな。前にも言ったろ? 俺は離れておくよ」

 

 墓に背を向けて、一破が歩いて行く……すると。

 

『もういっちゃうの?』

 

「……」

 

『ぼく、まだねむくない……ねぇ、あそんでよ』

 

 一破は袖を引っ張られるような感覚を感じた。しかし、一破は……

 

「……今日はもう遅い。今度遊んでやるから、今日はもう寝なさい」

 

『はーい……おやすみ、パパ』

 

「あぁ、おやすみ……亮太」

 

 一破の目元を涙が伝う。一破は今度こそ、墓場に背を向けた。

 

「……今度はジュースでも買ってやるか」

 

 

 

 寮に帰ってきた俺は、食堂で夕飯を済ませて……パトロールの時間まで寝ていようと思った時、電話がかかってきた。

 

「これは、あやめからか……もしもし」

 

『もしもし、康太様? こんな時間にごめんね』

 

「別にいいよ、暇だったし。どうしたの?」

 

 あやめは何故かどもっている、言いにくいのだろうか。

 

『えっと、あの、その……』

 

「ゆっくりでいいから、聞かせて?」

 

『すぅー、はぁー……その、康太様。約束、覚えてる?』

 

 約束……どれのことだ。

 

「針千本飲むやつ?」

 

『それじゃなくて……ジェミニの時の』

 

「あ、デートのこと?」

 

 そうだ、あの戦いが終わったらデートする約束だったよな。

 

『うん、だからさ……明日とか、空いてないかな?』

 

「明日か……わかった、学園長に言って休みにしてもらうよ。有給を使わせてもらうとしよう」

 

『ほ、ホント⁉ やった!! じゃあ、明日学園の前で一時に待ち合わせね!!』

 

 時間も決まった。予定が決まれば、あとはやるだけだ。

 

「明日のプランとか、考えとくよ」

 

『余が考えるからいいの!! かわいい服着ていくから、楽しみにしてて!!』

 

「わかった、楽しみにしとくよ」

 

 最後まであやめのテンションが高いまま、電話は切れた。そうと決まれば、電話しないとな。

 

『……もしもし。雪村くん、急に電話してきてどうしたんだい?』

 

「突然すみません。明日、有給って使えませんか? 理由は私用なのですが」

 

『うん、わかった。明日は休みにしておくよ』

 

 二つ返事で了承してもらえた。ホワイト企業だな。

 

「ありがとうございます、それでは‼」

 

『うん。百鬼さんとデートだろ? どちらから誘ったのかは気になるが……楽しんでくるといい』

 

「……バレてた」

 

 あやめもここでオーガとして警備しているのだから、当然であることに気づくのには時間はかからなかった。

 

「とりあえず、今日の仕事を頑張ろう」

 

 そう呟いて、俺はデルタギアを装着しながら警備に向かうのだった。




次回、デート回です。
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