※この作品はR-18です。

仮面を被った、人間達の英雄譚   作:とも667

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 前回に続いて修行回です。


修行の日々

……目が覚めた。今、何時だろうか……見てみると、かなり時間が経っていた。放課後からしていたので、遅いのは当然だが……もう朝じゃないか。

 

「電気はついてるな……」

 

 体が軽い。どうやら、休んだのは正解だったらしい。

 

「あら、起きた?」

 

「癒月先生……警備の方は?」

 

「学園長に事情を説明して、お休みにしてもらったわ。過労死しかけだったんだから、しょうがないわよ」

 

 まさか、過労で倒れるなんて思っていなかった。

 

「悪いことしちゃったな……」

 

「そう思うなら、今度は無理し過ぎないようにすること。いいわね?」

 

「はい……気をつけます」

 

 早く強くならなきゃいけないが……俺は超人になれない。キャパシティを大幅にオーバーすれば、倒れてしまう……当然の話だ。そう思っていると……腹の虫が鳴ってしまった。

 

「お腹空いてるのよね?」

 

「すみません……食堂、開いてるかな?」

 

「今はお休みの時間ね……でも大丈夫! 雪村くんが起きたら、そう言うと思って……用意しておきました!」

 

 わざわざ作ってくれたのか? 優しいな……

 

「ありがとうございます!」

 

「食材とかをちょっと倉庫から拝借してね……みんなにはナイショよ?」

 

「俺のためにそこまで……優しさが身に染みるなぁ……」

 

 マーガリンのトーストが二枚、あと牛乳……今の俺には丁度いい。

 

「自分で食べられる? 食べさせてあげよっか?」

 

「いや、大丈夫です。自分で食べられますので……」

 

「そう? 遠慮しなくていいのよ?」

 

 本当に大丈夫だ。体は軽いし、今日も学校には行けそうだな。

 

「そんなに心配しなくても……僕は元気ですよ、この通り!」

 

「なら、いいんだけど……ストイックなのはいいけど、程々にね?」

 

「わかってますって!」

 

 今度からは自分自身のキャパシティにも気をつけて、行動しないとな……反省しつつ、朝ご飯を食べる。美味しいな……

 

「美味しい?」

 

「とっても! 癒月先生の優しさが身に染みて2倍美味しいです!!」

 

「もう、褒めるのが上手いんだから……」

 

 すぐに食べ終わった、そろそろ学校行かないと……

 

「荷物はそこに置いてあるから、食べ終わったら行ってね? 私は職員会議に行ってくるわ」

 

「色々ありがとうございました!!」

 

「じゃあね、雪村くん」

 

 荷物を持って、学園に急ぐ。さて、どう誤魔化すかな……?

 

「ギリギリセーフッ!!」

 

「雪村くん! 怪我は大丈夫なのかい?」

 

「怪我……それって……?」

 

 鷹嶺先生が寄ってきて、小声で言われた。

 

「……訓練室の使いすぎで倒れたとは言えない。だから仮面ライダーとの戦闘での怪我が残っていたってことにしてる……君もその体で頼むよ」

 

「わかりました……ありがとうございます」

 

「雪村くん、大丈夫!?」

 

 潤羽さん……みんなにはもう知れ渡ってるらしいな。流石学園、広まるのも早いや。

 

「大丈夫です、一日寝たらバッチリ! 元気100倍雪村くんですよ!!」

 

「はぁ……よかったのです……」

 

「ご心配なく、生命力だけは高いもので!」

 

 別にそんなことはないが……嘘でも、百回言えば本当になるんだ。人に心配かけないためなら、百回でも千回でも言ってやる。

 

「雪村くんはふぁんでっどさんじゃないのです……バラバラになったら戻らない……無理はしないで、なのです」

 

「大丈夫ですよ、バラバラになんかされてやりませんし……させませんから」

 

「そう、だよね……安心したのです! いつもの雪村くんなのです!」

 

 いつもの、か。そう見られているなら、俺のやってることは正しかったということだ……

 

「人間様! 大丈夫かぁ!?」

 

「百鬼さんも……私は平気です! ご心配なく!」

 

「でも、この調子だと戦うのはまだ先になりそうだな……残念だ余」

 

 確かに……いつまでも待たせているのは少し悪い気がする。どうにかできないかな?

 

「さてと、そろそろ始めようか? みんな席について!」

 

「あ、時間だ……予定が開いたら言って余、人間様!」

 

「早めに開けられるように頑張ります!」

 

 その後、滞りなく学園の予定は進み……いつも通り、放課後。銃の練習をこなす……

 

「全員撃破……お疲れ様。安定してきたね」

 

「はい!」

 

「この調子なら、剣の練習に移ってもいいかもしれないね」

 

 剣か……また素人からやり直しだと思うと、少し気が遠くなるな……

 

「誰か教えてくれる人がいればいいんだけど……」

 

「そうだね。知り合いに一人いるから、その人に頼もうかと思ってるけど」

 

「……いや、いい人がいる!!」

 

 そうだ、こうすれば一石二鳥じゃないか……!

 

「もしかして……百鬼さん?」

 

「そうです! あの人は刀を背負ってたし……鬼人なら、強さだって折り紙つきのはず!!」

 

「確かに……でも、どう説明するんだい? バレるわけにはいかないし」

 

 口上ももう考えてある。そう言って、連れてきてもらった。

 

「人間様! 予定が開いたって本当!?」

 

「本当ですよ。でも、お願いがあって……」

 

「できることがあるならなんでも言って余!」

 

 よし……いい感じに誤魔化せそうだ。

 

「百鬼さんの武器って、刀ですよね? だから俺も……剣で戦いたくて」

 

「剣? でも、人間様のはどこにあるの?」

 

「ここですよ!」

 

 一破さんから貰っておいたメモリーを、挿入口に差し込む。すると……

 

『Leady』

 

「剣が生えてきた余!?」

 

「こういう剣なんです。しかし、私は剣に関しては素人でして……百鬼さんに教えていただきたくて。百鬼さんは俺と戦える、俺は剣の扱いを学べる……いかがですか?」

 

 どちらにもメリットがある提案だ……彼女との約束をいつまでも先延ばしにするのは心が痛む。だが、修行をサボるわけにはいかないからな……

 

「……なるほど! 人間様、あったまいい~!!」

 

「じゃあ、早速始めようか……とりあえず姿勢からだね」

 

「よろしくお願いします、師匠!」

 

 師匠、一回呼んでみたかったんだ。

 

「いいなぁ、その呼び方! じゃあ、背筋を伸ばして、余の真似をして構えてみて!」

 

「こう……かな?」

 

「う~ん、やっぱりぎこちないな……先生、姿勢直すの手伝って!」

 

 百鬼さんと先生に姿勢を直してもらいつつ、体に姿勢を染みつかせる。

 

「そうそう、その状態をキープしながら振るんだ余!」

 

「……ちゃんと道場とか行っててよかった、前だったら姿勢だけで一ヶ月かかるところだ……」

 

「流石、成長スピードが早いね……」

 

 教えてもらえる時間を全て剣に注ぎ込む。今度はあのようにはいかない……敵だってバカじゃないんだ。同じ戦法ばかりだったら、読まれるのは必然。それなら修行あるのみ……

 

「あ、もうこんな時間……余はそろそろ帰る余、心配されちゃうから! 人間様、また明日な!」

 

「はい、また明日! さてと、走り込みとかも行かないとな……!」

 

「大丈夫? また倒れないでくれよ?」

 

 今度は大丈夫だ。

 

「倒れないギリギリで切り上げますんで! 大体は掴めました!!」

 

「なら、いいんだけど……警備の時までには帰ってくるんだよ?」

 

「わかってます、仕事ですからね!」

 

 仕事をこなす。修行もする……どっちもしなきゃいけない。誰かに押し付けるのはもうやめたんだ……黙々とトレーニングをこなしていく。前よりずっと走れるようになった……30kmが60kmまで伸びたし、重りもどんどん増やせている。銃の感覚を忘れないように、銃の自主練もしておく。

 

「この調子で、頑張らないとな……!!」

 

 そう呟きつつ、俺は思いっきり踏み込んで、トレーニングコースを駆け抜けた。それから……一週間経った。

 

「踏み込みと同時に打つ……それを連続で、横からも打てるように!」

 

「いい感じ、いい感じ!」

 

「ありがとうございます、師匠!」

 

 姿勢は正しい。踏み込みは踏み込みすぎる位でいい、怖がってたら勝てない……踏み込む時は倒れるように、その勢いで足を出して走り出す……!!

 

「うん……よくなってきたね。構えや、踏み込みなどの基本はできてきたし、そろそろ実戦に移ってもいいかもね」

 

「習うより慣れろ、ですね!」

 

「やっとだ余……すっごく楽しみだった! 楽しくやろう余!!」

 

 仮想フィールドが展開された。剣を構えて、向き直る。

 

「よろしくお願いします、師匠」

 

「もう始まってる余、人間様ぁ!!」

 

「うぉっ……!!」

 

 硬いものがぶつかり合う音がして、百鬼さんの刀とカイザブレイガンが鍔迫り合いの体勢になった。

 

「押し合いじゃあ……鬼には勝てない余!?」

 

「わかってます、よ……!!」

 

「さっすが人間様!」

 

 刀を受け流して、切り裂こうとしたが……躱された。やっぱり、熟練者は格が違うな……でも、彼女を超えなければ仮面ライダーには到底勝てないだろう。

 

「習うより慣れろ! どんどん行く余!!」

 

「っ、これなら……!」

 

「甘い余!!」

 

 とっさに体を逸らしたが、掠ってしまった……刀の一振りを受け止めようとしたら、剣を避けてきたのだ。

 

「っぐ、今のは……!?」

 

「影抜きだ余!! 鍔迫り合いは時間がかかる、できるなら避けるのが一番だ余!!」

 

「参考になるな……!!」

 

 体を前に倒し、その勢いで走り出す。彼女も刀を構えてる、さっきのを真似して……

 

「甘いッ!!」

 

「ッ、そうか……二本あるんだったな……!!」

 

「そういうこと……!!」

 

 受け止められてしまった……それにしても、凄まじいパワーだ。鬼の名前は伊達じゃないな。もう一方の刀で正確に心臓を突こうとしてくる。

 

「はぁッ!!」

 

「がっ……くそ!!」

 

「どんどん行く余!!」

 

 俺よりも移動の仕方が上手い、やはり経験の差だな。どうにか受け止めて、防いでいるが……反撃する隙がない。煽るわけにもいかんし、利用できるものもない……

 

「防いでるだけじゃ、勝てない余!?」

 

「わかってるさ……ここから考える!!」

 

「そうこなくっちゃ!!」

 

 百鬼さんは俺との戦闘が余程楽しいのか、汗をかいても笑いっぱなしだ。俺には余裕がないが……無理してでも、笑っておく。苦しい顔をしてたら、仮面ライダーはそこにつけ込んでくるだろう。そうは言っても、どうするか……

 

「……やるだけやってやるさ!!」

 

「それを待ってたんだ余!!」

 

「ご期待に添えるかは……わからんがな!!」

 

 彼女に刀で受け止められたら、俺は流すか引く以外の方法が無くなる。俺は流すのも引くのもまだまだ下手な以上、一撃を入れるための絶対条件は……受け止めさせないことだ!! 避けてから思いっきり踏み込んで、小手の一撃を狙う。

 

「シィッ!!」

 

「遅い余ッ!!」

 

「わかってたさ……!!」

 

 ここまでは計算内。俺も初めての技だから、上手くできるかはわからないが……これしか思いつかないのだ。俺が受け流して一撃を決めようとすれば、今度はもう片方で防御されるから……それは論外だ。

 

「流しても……無駄だ余!!」

 

「どうかな、師匠!?」

 

「同じ手は通じない余!!」

 

 また受け止める体勢に入る、その方が刺突もしやすいからだろう。二刀流の百鬼さんには一番合理的な判断だ……だが。俺はそれを当てるのではなく、直前で少し位置をずらした。それは空を切って、地面の方向に向かう。

 

「っし……!!」

 

「え……!?」

 

「だぁりゃあぁぁっ!!」

 

 日本では有名な技、燕返しだ。刀を下に向けたら受け止めることはできない。だからやってみた……黄色の刃は、百鬼さんの腰を捉えている……避けられないことを悟ったのか、百鬼さんは避けるのではなく、袈裟斬りの体勢に入った。

 

「グギッ……!!」

 

「ぐごぅっ……!!」

 

「まさか、そう来るとは……予想外だった余……」

 

 お互いにダメージを受けた、同じ手は二度と通じないだろう。状況はイーブンだが……一撃入ったぞ。

 

「初めてだったもんで……不安でしたが、初めてなりによく出来た気はしてます」

 

「ダメージを最小限に抑えるために、途中で体を少し逸らしたね……? 切れ込みが思ったより浅いし」

 

「あなたも、凄まじい反応速度だ……切れてるのはほぼ服だけ。傷はかなり浅い……」

 

 そして百鬼さんが、気づいたことを言ってくれた。

 

「この剣……カイザブレイガン、だっけ? ただの剣じゃない余。これは熱で物を斬ってる……とんでもない高温で、装甲や細胞を焼き尽くすことで切り進む剣だ余」

 

「仮面ライダーの剣だけあって、殺意は高いな……」

 

「人間様の実力はわかった、やっぱり強い余……このまま戦ってたら、多分癖を読まれて余が負ける。だから、本気の本気で戦う余……!!」

 

 まだ本気じゃなかったのか? 今のでも相当受け止めるのが辛かったのにな……でも。

 

「それは楽しみだ……後学のために、見せてくださいよ!!」

 

「業、不知火。久々にお願いね……!!」

 

「鬼火か……?」

 

 鬼の角が生えた鬼火は、頷くような仕草をした後……刀の中に入っていった。

 

「これは式神、ずっと昔から余の友達……そして武器! 『鬼炎術・妖炎憑依』!!」

 

「剣が……燃えた!?」

 

「正確には、刀の形に合わせて二人が燃えてくれてるの。鬼火で鎧を灼き、そこに刀の切れ味が加わる……!! もし迂闊に斬りかかれば、斬りかかった方の剣が溶ける!!」

 

 攻防一体……その言葉が一番似合う。こんな隠し玉があるとはな。刀に合わせて、蒼炎が静かに燃える。

 

「これを乗り越えられなきゃ……ライダーには勝てねぇよな!!」

 

「そういうこと!! さぁ、行く余!?」

 

「っ、く……熱い……!?」

 

 直接触れていなくても、凄まじい熱だ。カイザブレイガンが溶けるのではないかと錯覚する程に。

 

「妖炎は普通の炎よりも熱い!! 触れたら、ヤケドじゃ済まない余!!」

 

「そうらしいな……!!」

 

「でりゃあ!!」

 

 硬いものがぶつかり合う音に加えて、百鬼さんの動きに合わせて響く静かな炎の音と、散っていく青い火の粉。あたかもそれは、踊り子を彩る花のようで……舞うように攻撃を躱し、確実に俺に攻撃を加えようとする姿は正しく、狩人と言うに相応しい。

 

「っ、ぬぅっ!!」

 

「流石、悟ったか!!」

 

「避けるので精一杯、だな……!!」

 

 一方での小手、それからの胴。空振っても体勢は崩れず、その勢いのまま回転して、残心。芸術品のようにも見える美しさだ……このままじゃ、削りきられて終わるのが目に見える。なら……無理にでも仕掛ける。

 

「ぬぁぁぁっ!!」

 

「いい判断!!」

 

「シィィッ!!」

 

 二三段の技で、小手と面を打ち込む。無論、受けてなどくれない。次は胴だ……!!

 

「やっぱり面白いな、人間様は……!」

 

「だぁぁりゃぁぁぁーっ!!」

 

「……」

 

 百鬼さんは笑って、動かなくなった。当たった、いける。そう思った時……百鬼さんが、『消えた』のだ。これはまさか……

 

「蜃気楼……!?」

 

「『鬼炎術・幻景の舞』」

 

「っ……が……」

 

 豪快な音がすることもなく、そこまでの痛みもなく。易々と、後ろから……俺は体を袈裟斬りにされた。

 

「……やられたか」

 

「ふぅ……楽しかったぁ!! 業と不知火もお疲れ様!!」

 

「はぁ、まだまだ修行が足りんな……」

 

 これでは、今度仮面ライダーが来たら負けてしまう。それでは駄目だ……!

 

「そんなことない余? 初めてなのにすっごく楽しかった余!!」

 

「いえ、それではダメなんです。俺は早急に師匠よりも強くならなければならない。そうでなければ……仮面ライダーはこれ以上に強いから。改善点など、ありましたら教えていただけませんか?」

 

「う~ん、そうだなぁ……基本はきちんとできてるから、技の種類を増やすのがいいんじゃない? いくつか技を覚えて、順番を変えながら打つだけでも大分違うと思うし」

 

 ありがたい……勉強になるな。

 

「二人ともお疲れ様。はい、スポーツドリンクね」

 

「ありがとうございます!」

 

「美味しいなぁ……やっぱり! はぁぁ……」

 

 二人でスポーツドリンクを飲む……体に染み渡るな。

 

「やっぱり効くな……!!」

 

「あ、こんな時間だ……また明日も戦おうね、人間様!」

 

「はい、よろしくお願いします!!」

 

 たくさんの技を覚える。指南書とかも借りてこないとな……そう思って、まだ開いている図書館に行って……剣術指南書を全て借りてきた。素振りのやり方から、応じ技などのやり方まで、事細かに書いてある。走るついでに読んでいく。

 

「はっ、はっ……!」

 

 誰よりも強くなければ、仮面ライダーには勝てない。当然の話だ、奴らは人間の範疇の強さで勝てる相手じゃない。もっと走らなければ……! 終わった後、体が熱いうちに剣の練習をしておく。素振りだけでなく、踏み込み方や振り方の無駄も矯正する。

 

「……まだまだ!」

 

 やれることはこれだけ。俺は普通の人間だからな……能力も何も持ってない。でも、強くなることはできる。自分を信じてやり続けるしかないんだ。夜中までずっと練習に明け暮れている……最近は母さん達にも連絡できてない。仕方ないよな、それも覚悟の上なんだ。

 

「今日は、この辺でいいか……」

 

 深夜の11時前。警備に入るために、俺は学園へと向かうのだった。

 

 

 

 それからは、百鬼さんに修行を手伝ってもらいながら剣を鍛えた。無論、すぐに勝てるわけがない……習いたての素人と、剣の達人なら……たとえ男女であろうが、勝つのがどちらかは火を見るより明らかだ。

 

「幻影……ってことは!」

 

「流石!! でも……!!」

 

「うっ!?」

 

 百鬼さんが剣を押して、少しバランスが崩れる。百鬼さんはその反動で下がりながら、一撃を打ち込んできた。

 

「そこだっ!!」

 

「ぐがっ!!」

 

「ふぅ……今日の分終わり!」

 

 今のが『引き技』だな……覚えたぞ。次の日も、また次の日も同じようにやっていく……

 

「また明日もお願いします!」

 

「余はいいけど……人間様は大丈夫? 疲れてまた倒れないでね?」

 

「わかってます!」

 

 そのためにギリギリを攻めてるんだ。倒れたら意味がないからな……それから、自主練や打ち合いを1ヶ月くらい続けて。

 

「今日もよろしくお願いします!」

 

「うん、見違えた! 最初の頃とは全然違う……!!」

 

「ありがとうございます! 今日こそは……勝つッ!!」

 

 機械が起動される。目の前の景色が変わって、いつも通り構えた。背筋を伸ばして、剣先が真っ直ぐ相手を見据える……

 

「余だって、負けてなんかあげない……余ッ!!」

 

「そうしてもらわないと困ります……!!」

 

「だよね!!」

 

 百鬼さんの刀が炎を纏う。俺もカイザブレイガンに、メモリを差し込んだ。

 

『Leady』

 

「……」

 

「……」

 

 お互い、声は出さず……間合いを見計らう。地面を蹴る音がしたのは、同時だった。百鬼さんの攻撃をすり上げて、一撃を狙う。

 

「……らぁっ!!」

 

「っぐ……!」

 

「そこまで効いてないな……」

 

 まともに入るかと思っても、寸前でダメージは最小限に抑えられた。それからすぐに体勢を立て直して、距離を取られる。手馴れてるな……

 

「日に日に楽しくなってく……人間様、最高だよ!!」

 

「そりゃ……どう、もっ!!」

 

「速くなったね……でも!」

 

 目の前の姿が、打った瞬間消えた。これは……

 

「『鬼炎術・幻景の舞』!!」

 

「っ……!!」

 

「手応えあり!!」

 

 後ろからの一撃、避けきれずに当たってしまった……だが、傷は深くない。反応速度もますます上がってきているな。

 

「師匠も強くなってますね……流石は鬼か?」

 

「人間様は強い……強い人と戦ってたら、余だって成長する余!!」

 

「まぁ、それもそうか……!!」

 

 少し焼かれたな。前ならこのままジ・エンド、ってところだが……そうはいかんぞ。またタイミングを見計らう……ここだ! 百鬼さんが前に出てきたところで……!! 刀を払う!!

 

「ふっ!!」

 

「払い技……!!」

 

「そういうこと、です!!」

 

 もう一方でやられないように、右の刀を半円に払ったあと、右から胴を打ち込む。だが……

 

「甘いっ!!」

 

「ッ、打ち落とし……!!」

 

「そこだぁ!!」

 

 胴を打ち落として、面の体勢。後ろに大きく引いて、どうにか躱す。同時に引き技を打ってみたが、それは躱された。

 

「当たらんか……!!」

 

「危ない危ない……!!」

 

「そう簡単に倒れちゃくれないよな!」

 

 今度はあっちから向かってきた。狙いは面か……!!

 

「シィッ!!」

 

「それはわかってたさ!!」

 

「計算内だ余!!」

 

 片方の刀を逸らしたが、すぐさま胴への一撃が飛んでくる。それを大人しく受けるわけがない。

 

「うらっ!!」

 

「っ……!?」

 

「だぁりゃあ!!」

 

 今度は俺が胴を打ち落とし、反撃が来ないように間合いを取りながら、袈裟斬りの要領で斬り裂いた。引こうとしているが、これは引ききれない。

 

「うぐッ……!!」

 

「よし、手応えあった!!」

 

「最高だ余、人間様ぁ……!!」

 

 思いっきり傷がついている。浅いが、お互い傷があるな。

 

「余裕は?」

 

「あるように見える……?」

 

「いや、見えませんね」

 

 どうやら効いてるらしいな……俺もなんだけど。

 

「そういう人間様は?」

 

「まだまだ余裕……と言いたいけど、俺にもない……」

 

「じゃあ、さっさと決めよう!!」

 

 お互い飛び出して、仕切り直し。踏み込んで、お互い急所を狙う。百鬼さんが『巻き落とし』で俺の剣を叩き落とそうとしてきたが……構えを変えて、落とされないようにする。逆袈裟の要領で切り裂こうとしたが……

 

「止められたか……」

 

「そこっ!!」

 

「ちぃぃ……!!」

 

 引きながらの一撃も躱され、隙を与えず突っ込んでくる。素早い横一文字や唐竹が俺に迫る……!

 

「これなら……どうだ!!」

 

「くっ……!!」

 

「届け!!」

 

 思いきり体を引く。否、間に合わない。どうしても、食らってしまうなら……肉を切らせて骨を断つ!! その場で踏み込んで、刺突を狙う。あちらも俺を袈裟斬りにしてきたので、俺の体にも傷がついたが……それはあちらも同じだ。

 

「っぐぅ……!!」

 

「っっ!? ぐぎぃ……!!」

 

「ただじゃ転んで、やらないぜ……」

 

 また、イーブン。最初の時と同じだな。

 

「ふ、ふふっ……あっはっはっは、本当に面白いっ!! その成長性も、反応速度も……他には真似できないよ!! こんなに楽しいのは久しぶりだぁ!! 何百年ぶりだろう!?」

 

「それはどうも、師匠……まだ、やるんでしょう?」

 

「当然……!! こんなところで終わったら勿体無いっ!! 最後まで楽しみ切りたいッ!!」

 

 汗を振り払い、妖炎を纏う刀を構え直す百鬼さん……もう男女も経験も関係ない。これは……戦士同士の戦いだ!!

 

「俺も……ここで終わったら、あなたを越えられない!! 絶対に今日ここで、百鬼さんを超える!!」

 

「上等ッ!! やってみせろッ、奇術師(トリックスター)!!!」

 

「ああ、やってやろうじゃねぇのッ!! 狩人(ハンター)!!」

 

 あと一発で決まる。先に喰らった方が負けだ……感覚でわかるようになった。剣を二本使って、全力で向かってくる……炎が強くなった!?

 

「全ての力、出し切らせてもらう余!! 業、不知火!! 力を貸して!! 奥義!! 『鬼炎術・二刀一体』!!!」

 

「炎が、ひとつになった……!!」

 

「受け止めることは不可能ッ!! 燃え尽きろォォ!!」

 

 二つの刀をくっつけて、強くなった焔が合わさり……巨大な炎の一刀になっている。受け止めることは不可能という言葉に嘘がないことを、刀自身が気配で伝えてきている……小細工なし、本当に一刀で終わる。これまでできたことはないが……対抗するなら、これしかない!!

 

「こっちもやってやるぜ……見てろ、鬼神!! これが、俺の修行の集大成だ!!」

 

「何をする気!?」

 

「見て驚けぇっ!!」

 

 啖呵を切った、もう失敗できない。自分で自分を追い詰めて……成功させてやろう。非常に習得が難しいらしいが、できなきゃ終わりだ。逸らすのも受け止めるのも無理なら……打ち落とすしかない。極意の欄に、書いてあった技。全力で集中して、雑念を取り払う……ここだ!!

 

「っ、え……!?」

 

「当たれぇぇぇ!!」

 

「っっっ……!!」

 

 全開の一撃を打ち落として、僅かに出来た隙。そこにもう一発、上からの一撃を構える。これの名は……

 

「『面打ち落とし面』ッ!!」

 

「ぐ……がぁぁ!?」

 

「だぁぁりゃあぁぁぁぁーッ!!!」

 

 当てて、思いっきり引く。とてつもなく大きい手応えだ……これまで感じたことがないほどの。目を開けると百鬼さんが消えている。つまり……俺の、勝ちだ。仮想空間が消えて、起き上がると……百鬼さんも起き上がっていた。

 

「あ~、余の負けだなぁ……でも本当に楽しかった!! ありがとうございましたっ!!」

 

「……ありがとうごさいました、師匠!!」

 

「これで免許皆伝! 余に教えられることは全部教えた余! 業と不知火もお疲れ様!!」

 

 二人で握手する……勝てたんだ。俺でも、一般人でも死に物狂いで努力すれば、鬼にも勝てる。やってやったぞ……!!

 

「ありがとうございます!! これからもよろしくお願いしますね、百鬼さん!!」

 

「あやめでいい余、もう友達でしょ?」

 

「……よかったら、また勝負しような! あやめ!!」

 

 もう一回、握手。今度のは意味が違うけどな。

 

「今度は負けない余、絶対!!」

 

「俺だって、もっと強くなってやるさ!!」

 

「やぁ、結果はどうだった?」

 

 鷹嶺先生が来てくれた……

 

「人間様の勝ちだ余!! 負けた負けた!!」

 

「そうか……強くなったね、顔もなんだか変わった気がするよ」

 

「まだまだ僕も発展途上、ここからが本番ですって!!」

 

 いつも通り笑いながら言うと、あやめも続けて言った。

 

「余だって負けてられないっ!! もっと、もーっと強くなって……今度は勝つ!!」

 

「二人とも、すっかりいいライバルだね……」

 

「俺としても、高め合う相手がいるのは嬉しいです!」

 

 そう言って笑ったところで……少し、ふらつく。

 

「うっ……ちょっと頑張りすぎたかな……?」

 

「あ、余も……ごめん、先生……」

 

「まったく、しょうがない子達だね……」

 

 そう言われつつ、俺達は強い眠気に耐えきれずに……眠ってしまった。




 これで、剣も銃も使えるようになりました。
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