前回に続いて修行回です。
……目が覚めた。今、何時だろうか……見てみると、かなり時間が経っていた。放課後からしていたので、遅いのは当然だが……もう朝じゃないか。
「電気はついてるな……」
体が軽い。どうやら、休んだのは正解だったらしい。
「あら、起きた?」
「癒月先生……警備の方は?」
「学園長に事情を説明して、お休みにしてもらったわ。過労死しかけだったんだから、しょうがないわよ」
まさか、過労で倒れるなんて思っていなかった。
「悪いことしちゃったな……」
「そう思うなら、今度は無理し過ぎないようにすること。いいわね?」
「はい……気をつけます」
早く強くならなきゃいけないが……俺は超人になれない。キャパシティを大幅にオーバーすれば、倒れてしまう……当然の話だ。そう思っていると……腹の虫が鳴ってしまった。
「お腹空いてるのよね?」
「すみません……食堂、開いてるかな?」
「今はお休みの時間ね……でも大丈夫! 雪村くんが起きたら、そう言うと思って……用意しておきました!」
わざわざ作ってくれたのか? 優しいな……
「ありがとうございます!」
「食材とかをちょっと倉庫から拝借してね……みんなにはナイショよ?」
「俺のためにそこまで……優しさが身に染みるなぁ……」
マーガリンのトーストが二枚、あと牛乳……今の俺には丁度いい。
「自分で食べられる? 食べさせてあげよっか?」
「いや、大丈夫です。自分で食べられますので……」
「そう? 遠慮しなくていいのよ?」
本当に大丈夫だ。体は軽いし、今日も学校には行けそうだな。
「そんなに心配しなくても……僕は元気ですよ、この通り!」
「なら、いいんだけど……ストイックなのはいいけど、程々にね?」
「わかってますって!」
今度からは自分自身のキャパシティにも気をつけて、行動しないとな……反省しつつ、朝ご飯を食べる。美味しいな……
「美味しい?」
「とっても! 癒月先生の優しさが身に染みて2倍美味しいです!!」
「もう、褒めるのが上手いんだから……」
すぐに食べ終わった、そろそろ学校行かないと……
「荷物はそこに置いてあるから、食べ終わったら行ってね? 私は職員会議に行ってくるわ」
「色々ありがとうございました!!」
「じゃあね、雪村くん」
荷物を持って、学園に急ぐ。さて、どう誤魔化すかな……?
「ギリギリセーフッ!!」
「雪村くん! 怪我は大丈夫なのかい?」
「怪我……それって……?」
鷹嶺先生が寄ってきて、小声で言われた。
「……訓練室の使いすぎで倒れたとは言えない。だから仮面ライダーとの戦闘での怪我が残っていたってことにしてる……君もその体で頼むよ」
「わかりました……ありがとうございます」
「雪村くん、大丈夫!?」
潤羽さん……みんなにはもう知れ渡ってるらしいな。流石学園、広まるのも早いや。
「大丈夫です、一日寝たらバッチリ! 元気100倍雪村くんですよ!!」
「はぁ……よかったのです……」
「ご心配なく、生命力だけは高いもので!」
別にそんなことはないが……嘘でも、百回言えば本当になるんだ。人に心配かけないためなら、百回でも千回でも言ってやる。
「雪村くんはふぁんでっどさんじゃないのです……バラバラになったら戻らない……無理はしないで、なのです」
「大丈夫ですよ、バラバラになんかされてやりませんし……させませんから」
「そう、だよね……安心したのです! いつもの雪村くんなのです!」
いつもの、か。そう見られているなら、俺のやってることは正しかったということだ……
「人間様! 大丈夫かぁ!?」
「百鬼さんも……私は平気です! ご心配なく!」
「でも、この調子だと戦うのはまだ先になりそうだな……残念だ余」
確かに……いつまでも待たせているのは少し悪い気がする。どうにかできないかな?
「さてと、そろそろ始めようか? みんな席について!」
「あ、時間だ……予定が開いたら言って余、人間様!」
「早めに開けられるように頑張ります!」
その後、滞りなく学園の予定は進み……いつも通り、放課後。銃の練習をこなす……
「全員撃破……お疲れ様。安定してきたね」
「はい!」
「この調子なら、剣の練習に移ってもいいかもしれないね」
剣か……また素人からやり直しだと思うと、少し気が遠くなるな……
「誰か教えてくれる人がいればいいんだけど……」
「そうだね。知り合いに一人いるから、その人に頼もうかと思ってるけど」
「……いや、いい人がいる!!」
そうだ、こうすれば一石二鳥じゃないか……!
「もしかして……百鬼さん?」
「そうです! あの人は刀を背負ってたし……鬼人なら、強さだって折り紙つきのはず!!」
「確かに……でも、どう説明するんだい? バレるわけにはいかないし」
口上ももう考えてある。そう言って、連れてきてもらった。
「人間様! 予定が開いたって本当!?」
「本当ですよ。でも、お願いがあって……」
「できることがあるならなんでも言って余!」
よし……いい感じに誤魔化せそうだ。
「百鬼さんの武器って、刀ですよね? だから俺も……剣で戦いたくて」
「剣? でも、人間様のはどこにあるの?」
「ここですよ!」
一破さんから貰っておいたメモリーを、挿入口に差し込む。すると……
『Leady』
「剣が生えてきた余!?」
「こういう剣なんです。しかし、私は剣に関しては素人でして……百鬼さんに教えていただきたくて。百鬼さんは俺と戦える、俺は剣の扱いを学べる……いかがですか?」
どちらにもメリットがある提案だ……彼女との約束をいつまでも先延ばしにするのは心が痛む。だが、修行をサボるわけにはいかないからな……
「……なるほど! 人間様、あったまいい~!!」
「じゃあ、早速始めようか……とりあえず姿勢からだね」
「よろしくお願いします、師匠!」
師匠、一回呼んでみたかったんだ。
「いいなぁ、その呼び方! じゃあ、背筋を伸ばして、余の真似をして構えてみて!」
「こう……かな?」
「う~ん、やっぱりぎこちないな……先生、姿勢直すの手伝って!」
百鬼さんと先生に姿勢を直してもらいつつ、体に姿勢を染みつかせる。
「そうそう、その状態をキープしながら振るんだ余!」
「……ちゃんと道場とか行っててよかった、前だったら姿勢だけで一ヶ月かかるところだ……」
「流石、成長スピードが早いね……」
教えてもらえる時間を全て剣に注ぎ込む。今度はあのようにはいかない……敵だってバカじゃないんだ。同じ戦法ばかりだったら、読まれるのは必然。それなら修行あるのみ……
「あ、もうこんな時間……余はそろそろ帰る余、心配されちゃうから! 人間様、また明日な!」
「はい、また明日! さてと、走り込みとかも行かないとな……!」
「大丈夫? また倒れないでくれよ?」
今度は大丈夫だ。
「倒れないギリギリで切り上げますんで! 大体は掴めました!!」
「なら、いいんだけど……警備の時までには帰ってくるんだよ?」
「わかってます、仕事ですからね!」
仕事をこなす。修行もする……どっちもしなきゃいけない。誰かに押し付けるのはもうやめたんだ……黙々とトレーニングをこなしていく。前よりずっと走れるようになった……30kmが60kmまで伸びたし、重りもどんどん増やせている。銃の感覚を忘れないように、銃の自主練もしておく。
「この調子で、頑張らないとな……!!」
そう呟きつつ、俺は思いっきり踏み込んで、トレーニングコースを駆け抜けた。それから……一週間経った。
「踏み込みと同時に打つ……それを連続で、横からも打てるように!」
「いい感じ、いい感じ!」
「ありがとうございます、師匠!」
姿勢は正しい。踏み込みは踏み込みすぎる位でいい、怖がってたら勝てない……踏み込む時は倒れるように、その勢いで足を出して走り出す……!!
「うん……よくなってきたね。構えや、踏み込みなどの基本はできてきたし、そろそろ実戦に移ってもいいかもね」
「習うより慣れろ、ですね!」
「やっとだ余……すっごく楽しみだった! 楽しくやろう余!!」
仮想フィールドが展開された。剣を構えて、向き直る。
「よろしくお願いします、師匠」
「もう始まってる余、人間様ぁ!!」
「うぉっ……!!」
硬いものがぶつかり合う音がして、百鬼さんの刀とカイザブレイガンが鍔迫り合いの体勢になった。
「押し合いじゃあ……鬼には勝てない余!?」
「わかってます、よ……!!」
「さっすが人間様!」
刀を受け流して、切り裂こうとしたが……躱された。やっぱり、熟練者は格が違うな……でも、彼女を超えなければ仮面ライダーには到底勝てないだろう。
「習うより慣れろ! どんどん行く余!!」
「っ、これなら……!」
「甘い余!!」
とっさに体を逸らしたが、掠ってしまった……刀の一振りを受け止めようとしたら、剣を避けてきたのだ。
「っぐ、今のは……!?」
「影抜きだ余!! 鍔迫り合いは時間がかかる、できるなら避けるのが一番だ余!!」
「参考になるな……!!」
体を前に倒し、その勢いで走り出す。彼女も刀を構えてる、さっきのを真似して……
「甘いッ!!」
「ッ、そうか……二本あるんだったな……!!」
「そういうこと……!!」
受け止められてしまった……それにしても、凄まじいパワーだ。鬼の名前は伊達じゃないな。もう一方の刀で正確に心臓を突こうとしてくる。
「はぁッ!!」
「がっ……くそ!!」
「どんどん行く余!!」
俺よりも移動の仕方が上手い、やはり経験の差だな。どうにか受け止めて、防いでいるが……反撃する隙がない。煽るわけにもいかんし、利用できるものもない……
「防いでるだけじゃ、勝てない余!?」
「わかってるさ……ここから考える!!」
「そうこなくっちゃ!!」
百鬼さんは俺との戦闘が余程楽しいのか、汗をかいても笑いっぱなしだ。俺には余裕がないが……無理してでも、笑っておく。苦しい顔をしてたら、仮面ライダーはそこにつけ込んでくるだろう。そうは言っても、どうするか……
「……やるだけやってやるさ!!」
「それを待ってたんだ余!!」
「ご期待に添えるかは……わからんがな!!」
彼女に刀で受け止められたら、俺は流すか引く以外の方法が無くなる。俺は流すのも引くのもまだまだ下手な以上、一撃を入れるための絶対条件は……受け止めさせないことだ!! 避けてから思いっきり踏み込んで、小手の一撃を狙う。
「シィッ!!」
「遅い余ッ!!」
「わかってたさ……!!」
ここまでは計算内。俺も初めての技だから、上手くできるかはわからないが……これしか思いつかないのだ。俺が受け流して一撃を決めようとすれば、今度はもう片方で防御されるから……それは論外だ。
「流しても……無駄だ余!!」
「どうかな、師匠!?」
「同じ手は通じない余!!」
また受け止める体勢に入る、その方が刺突もしやすいからだろう。二刀流の百鬼さんには一番合理的な判断だ……だが。俺はそれを当てるのではなく、直前で少し位置をずらした。それは空を切って、地面の方向に向かう。
「っし……!!」
「え……!?」
「だぁりゃあぁぁっ!!」
日本では有名な技、燕返しだ。刀を下に向けたら受け止めることはできない。だからやってみた……黄色の刃は、百鬼さんの腰を捉えている……避けられないことを悟ったのか、百鬼さんは避けるのではなく、袈裟斬りの体勢に入った。
「グギッ……!!」
「ぐごぅっ……!!」
「まさか、そう来るとは……予想外だった余……」
お互いにダメージを受けた、同じ手は二度と通じないだろう。状況はイーブンだが……一撃入ったぞ。
「初めてだったもんで……不安でしたが、初めてなりによく出来た気はしてます」
「ダメージを最小限に抑えるために、途中で体を少し逸らしたね……? 切れ込みが思ったより浅いし」
「あなたも、凄まじい反応速度だ……切れてるのはほぼ服だけ。傷はかなり浅い……」
そして百鬼さんが、気づいたことを言ってくれた。
「この剣……カイザブレイガン、だっけ? ただの剣じゃない余。これは熱で物を斬ってる……とんでもない高温で、装甲や細胞を焼き尽くすことで切り進む剣だ余」
「仮面ライダーの剣だけあって、殺意は高いな……」
「人間様の実力はわかった、やっぱり強い余……このまま戦ってたら、多分癖を読まれて余が負ける。だから、本気の本気で戦う余……!!」
まだ本気じゃなかったのか? 今のでも相当受け止めるのが辛かったのにな……でも。
「それは楽しみだ……後学のために、見せてくださいよ!!」
「業、不知火。久々にお願いね……!!」
「鬼火か……?」
鬼の角が生えた鬼火は、頷くような仕草をした後……刀の中に入っていった。
「これは式神、ずっと昔から余の友達……そして武器! 『鬼炎術・妖炎憑依』!!」
「剣が……燃えた!?」
「正確には、刀の形に合わせて二人が燃えてくれてるの。鬼火で鎧を灼き、そこに刀の切れ味が加わる……!! もし迂闊に斬りかかれば、斬りかかった方の剣が溶ける!!」
攻防一体……その言葉が一番似合う。こんな隠し玉があるとはな。刀に合わせて、蒼炎が静かに燃える。
「これを乗り越えられなきゃ……ライダーには勝てねぇよな!!」
「そういうこと!! さぁ、行く余!?」
「っ、く……熱い……!?」
直接触れていなくても、凄まじい熱だ。カイザブレイガンが溶けるのではないかと錯覚する程に。
「妖炎は普通の炎よりも熱い!! 触れたら、ヤケドじゃ済まない余!!」
「そうらしいな……!!」
「でりゃあ!!」
硬いものがぶつかり合う音に加えて、百鬼さんの動きに合わせて響く静かな炎の音と、散っていく青い火の粉。あたかもそれは、踊り子を彩る花のようで……舞うように攻撃を躱し、確実に俺に攻撃を加えようとする姿は正しく、狩人と言うに相応しい。
「っ、ぬぅっ!!」
「流石、悟ったか!!」
「避けるので精一杯、だな……!!」
一方での小手、それからの胴。空振っても体勢は崩れず、その勢いのまま回転して、残心。芸術品のようにも見える美しさだ……このままじゃ、削りきられて終わるのが目に見える。なら……無理にでも仕掛ける。
「ぬぁぁぁっ!!」
「いい判断!!」
「シィィッ!!」
二三段の技で、小手と面を打ち込む。無論、受けてなどくれない。次は胴だ……!!
「やっぱり面白いな、人間様は……!」
「だぁぁりゃぁぁぁーっ!!」
「……」
百鬼さんは笑って、動かなくなった。当たった、いける。そう思った時……百鬼さんが、『消えた』のだ。これはまさか……
「蜃気楼……!?」
「『鬼炎術・幻景の舞』」
「っ……が……」
豪快な音がすることもなく、そこまでの痛みもなく。易々と、後ろから……俺は体を袈裟斬りにされた。
「……やられたか」
「ふぅ……楽しかったぁ!! 業と不知火もお疲れ様!!」
「はぁ、まだまだ修行が足りんな……」
これでは、今度仮面ライダーが来たら負けてしまう。それでは駄目だ……!
「そんなことない余? 初めてなのにすっごく楽しかった余!!」
「いえ、それではダメなんです。俺は早急に師匠よりも強くならなければならない。そうでなければ……仮面ライダーはこれ以上に強いから。改善点など、ありましたら教えていただけませんか?」
「う~ん、そうだなぁ……基本はきちんとできてるから、技の種類を増やすのがいいんじゃない? いくつか技を覚えて、順番を変えながら打つだけでも大分違うと思うし」
ありがたい……勉強になるな。
「二人ともお疲れ様。はい、スポーツドリンクね」
「ありがとうございます!」
「美味しいなぁ……やっぱり! はぁぁ……」
二人でスポーツドリンクを飲む……体に染み渡るな。
「やっぱり効くな……!!」
「あ、こんな時間だ……また明日も戦おうね、人間様!」
「はい、よろしくお願いします!!」
たくさんの技を覚える。指南書とかも借りてこないとな……そう思って、まだ開いている図書館に行って……剣術指南書を全て借りてきた。素振りのやり方から、応じ技などのやり方まで、事細かに書いてある。走るついでに読んでいく。
「はっ、はっ……!」
誰よりも強くなければ、仮面ライダーには勝てない。当然の話だ、奴らは人間の範疇の強さで勝てる相手じゃない。もっと走らなければ……! 終わった後、体が熱いうちに剣の練習をしておく。素振りだけでなく、踏み込み方や振り方の無駄も矯正する。
「……まだまだ!」
やれることはこれだけ。俺は普通の人間だからな……能力も何も持ってない。でも、強くなることはできる。自分を信じてやり続けるしかないんだ。夜中までずっと練習に明け暮れている……最近は母さん達にも連絡できてない。仕方ないよな、それも覚悟の上なんだ。
「今日は、この辺でいいか……」
深夜の11時前。警備に入るために、俺は学園へと向かうのだった。
それからは、百鬼さんに修行を手伝ってもらいながら剣を鍛えた。無論、すぐに勝てるわけがない……習いたての素人と、剣の達人なら……たとえ男女であろうが、勝つのがどちらかは火を見るより明らかだ。
「幻影……ってことは!」
「流石!! でも……!!」
「うっ!?」
百鬼さんが剣を押して、少しバランスが崩れる。百鬼さんはその反動で下がりながら、一撃を打ち込んできた。
「そこだっ!!」
「ぐがっ!!」
「ふぅ……今日の分終わり!」
今のが『引き技』だな……覚えたぞ。次の日も、また次の日も同じようにやっていく……
「また明日もお願いします!」
「余はいいけど……人間様は大丈夫? 疲れてまた倒れないでね?」
「わかってます!」
そのためにギリギリを攻めてるんだ。倒れたら意味がないからな……それから、自主練や打ち合いを1ヶ月くらい続けて。
「今日もよろしくお願いします!」
「うん、見違えた! 最初の頃とは全然違う……!!」
「ありがとうございます! 今日こそは……勝つッ!!」
機械が起動される。目の前の景色が変わって、いつも通り構えた。背筋を伸ばして、剣先が真っ直ぐ相手を見据える……
「余だって、負けてなんかあげない……余ッ!!」
「そうしてもらわないと困ります……!!」
「だよね!!」
百鬼さんの刀が炎を纏う。俺もカイザブレイガンに、メモリを差し込んだ。
『Leady』
「……」
「……」
お互い、声は出さず……間合いを見計らう。地面を蹴る音がしたのは、同時だった。百鬼さんの攻撃をすり上げて、一撃を狙う。
「……らぁっ!!」
「っぐ……!」
「そこまで効いてないな……」
まともに入るかと思っても、寸前でダメージは最小限に抑えられた。それからすぐに体勢を立て直して、距離を取られる。手馴れてるな……
「日に日に楽しくなってく……人間様、最高だよ!!」
「そりゃ……どう、もっ!!」
「速くなったね……でも!」
目の前の姿が、打った瞬間消えた。これは……
「『鬼炎術・幻景の舞』!!」
「っ……!!」
「手応えあり!!」
後ろからの一撃、避けきれずに当たってしまった……だが、傷は深くない。反応速度もますます上がってきているな。
「師匠も強くなってますね……流石は鬼か?」
「人間様は強い……強い人と戦ってたら、余だって成長する余!!」
「まぁ、それもそうか……!!」
少し焼かれたな。前ならこのままジ・エンド、ってところだが……そうはいかんぞ。またタイミングを見計らう……ここだ! 百鬼さんが前に出てきたところで……!! 刀を払う!!
「ふっ!!」
「払い技……!!」
「そういうこと、です!!」
もう一方でやられないように、右の刀を半円に払ったあと、右から胴を打ち込む。だが……
「甘いっ!!」
「ッ、打ち落とし……!!」
「そこだぁ!!」
胴を打ち落として、面の体勢。後ろに大きく引いて、どうにか躱す。同時に引き技を打ってみたが、それは躱された。
「当たらんか……!!」
「危ない危ない……!!」
「そう簡単に倒れちゃくれないよな!」
今度はあっちから向かってきた。狙いは面か……!!
「シィッ!!」
「それはわかってたさ!!」
「計算内だ余!!」
片方の刀を逸らしたが、すぐさま胴への一撃が飛んでくる。それを大人しく受けるわけがない。
「うらっ!!」
「っ……!?」
「だぁりゃあ!!」
今度は俺が胴を打ち落とし、反撃が来ないように間合いを取りながら、袈裟斬りの要領で斬り裂いた。引こうとしているが、これは引ききれない。
「うぐッ……!!」
「よし、手応えあった!!」
「最高だ余、人間様ぁ……!!」
思いっきり傷がついている。浅いが、お互い傷があるな。
「余裕は?」
「あるように見える……?」
「いや、見えませんね」
どうやら効いてるらしいな……俺もなんだけど。
「そういう人間様は?」
「まだまだ余裕……と言いたいけど、俺にもない……」
「じゃあ、さっさと決めよう!!」
お互い飛び出して、仕切り直し。踏み込んで、お互い急所を狙う。百鬼さんが『巻き落とし』で俺の剣を叩き落とそうとしてきたが……構えを変えて、落とされないようにする。逆袈裟の要領で切り裂こうとしたが……
「止められたか……」
「そこっ!!」
「ちぃぃ……!!」
引きながらの一撃も躱され、隙を与えず突っ込んでくる。素早い横一文字や唐竹が俺に迫る……!
「これなら……どうだ!!」
「くっ……!!」
「届け!!」
思いきり体を引く。否、間に合わない。どうしても、食らってしまうなら……肉を切らせて骨を断つ!! その場で踏み込んで、刺突を狙う。あちらも俺を袈裟斬りにしてきたので、俺の体にも傷がついたが……それはあちらも同じだ。
「っぐぅ……!!」
「っっ!? ぐぎぃ……!!」
「ただじゃ転んで、やらないぜ……」
また、イーブン。最初の時と同じだな。
「ふ、ふふっ……あっはっはっは、本当に面白いっ!! その成長性も、反応速度も……他には真似できないよ!! こんなに楽しいのは久しぶりだぁ!! 何百年ぶりだろう!?」
「それはどうも、師匠……まだ、やるんでしょう?」
「当然……!! こんなところで終わったら勿体無いっ!! 最後まで楽しみ切りたいッ!!」
汗を振り払い、妖炎を纏う刀を構え直す百鬼さん……もう男女も経験も関係ない。これは……戦士同士の戦いだ!!
「俺も……ここで終わったら、あなたを越えられない!! 絶対に今日ここで、百鬼さんを超える!!」
「上等ッ!! やってみせろッ、
「ああ、やってやろうじゃねぇのッ!!
あと一発で決まる。先に喰らった方が負けだ……感覚でわかるようになった。剣を二本使って、全力で向かってくる……炎が強くなった!?
「全ての力、出し切らせてもらう余!! 業、不知火!! 力を貸して!! 奥義!! 『鬼炎術・二刀一体』!!!」
「炎が、ひとつになった……!!」
「受け止めることは不可能ッ!! 燃え尽きろォォ!!」
二つの刀をくっつけて、強くなった焔が合わさり……巨大な炎の一刀になっている。受け止めることは不可能という言葉に嘘がないことを、刀自身が気配で伝えてきている……小細工なし、本当に一刀で終わる。これまでできたことはないが……対抗するなら、これしかない!!
「こっちもやってやるぜ……見てろ、鬼神!! これが、俺の修行の集大成だ!!」
「何をする気!?」
「見て驚けぇっ!!」
啖呵を切った、もう失敗できない。自分で自分を追い詰めて……成功させてやろう。非常に習得が難しいらしいが、できなきゃ終わりだ。逸らすのも受け止めるのも無理なら……打ち落とすしかない。極意の欄に、書いてあった技。全力で集中して、雑念を取り払う……ここだ!!
「っ、え……!?」
「当たれぇぇぇ!!」
「っっっ……!!」
全開の一撃を打ち落として、僅かに出来た隙。そこにもう一発、上からの一撃を構える。これの名は……
「『面打ち落とし面』ッ!!」
「ぐ……がぁぁ!?」
「だぁぁりゃあぁぁぁぁーッ!!!」
当てて、思いっきり引く。とてつもなく大きい手応えだ……これまで感じたことがないほどの。目を開けると百鬼さんが消えている。つまり……俺の、勝ちだ。仮想空間が消えて、起き上がると……百鬼さんも起き上がっていた。
「あ~、余の負けだなぁ……でも本当に楽しかった!! ありがとうございましたっ!!」
「……ありがとうごさいました、師匠!!」
「これで免許皆伝! 余に教えられることは全部教えた余! 業と不知火もお疲れ様!!」
二人で握手する……勝てたんだ。俺でも、一般人でも死に物狂いで努力すれば、鬼にも勝てる。やってやったぞ……!!
「ありがとうございます!! これからもよろしくお願いしますね、百鬼さん!!」
「あやめでいい余、もう友達でしょ?」
「……よかったら、また勝負しような! あやめ!!」
もう一回、握手。今度のは意味が違うけどな。
「今度は負けない余、絶対!!」
「俺だって、もっと強くなってやるさ!!」
「やぁ、結果はどうだった?」
鷹嶺先生が来てくれた……
「人間様の勝ちだ余!! 負けた負けた!!」
「そうか……強くなったね、顔もなんだか変わった気がするよ」
「まだまだ僕も発展途上、ここからが本番ですって!!」
いつも通り笑いながら言うと、あやめも続けて言った。
「余だって負けてられないっ!! もっと、もーっと強くなって……今度は勝つ!!」
「二人とも、すっかりいいライバルだね……」
「俺としても、高め合う相手がいるのは嬉しいです!」
そう言って笑ったところで……少し、ふらつく。
「うっ……ちょっと頑張りすぎたかな……?」
「あ、余も……ごめん、先生……」
「まったく、しょうがない子達だね……」
そう言われつつ、俺達は強い眠気に耐えきれずに……眠ってしまった。
これで、剣も銃も使えるようになりました。