第1章 第一特異点 A.D.1431 邪竜百年戦争 オルレアン 副題「竜の魔女」
第6節 聖女と王妃と天使
【推奨BGM:聞き慣れたメロディー】Fate/Grand Orderより
「マスターくん。この辺りにはもうワイバーンはいないみたいですよぉ」
「虫さんたちも同じことを言っています。この森は安全と見て、間違いないと思いますよ」
「流石だな、二人共。助かった。あとはカルデアで休んでいてくれ」
言葉を持たない動物との意志疎通が可能となる『動物会話』の亜種スキル。
植物との意志疎通が可能となる『植物会話』を保有するビートネイチャー・アケビと、昆虫との意志疎通が可能となる『動物会話(蟲)』を保有する閃忍サナギが、それぞれの情報源から収集した周辺状況の情報を彼女たちのマスターに報告する。
二人より報告を受けた立香は、感謝の言葉を告げるとカルデアに二人を送還した。
「ああ、とっても素敵な人たちでした。植物さんとお話ができるなんて……!」
「自慢の仲間たちだ」
「うふふっ。落ち着いたところで、改めて皆さまに自己紹介をさせていただきますわね」
片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、背筋を伸ばしたまま一礼をする。
「わたしの真名はマリー・アントワネット。ライダーのクラスで召喚されました。
どんな人間であるかは、どうか皆さんの目と耳でじっくり吟味していただければ幸いです」
カーテシー。女性が位の高い者に対して行うヨーロッパの伝統的な礼儀作法。流麗な舞のような彼女の所作に見惚れていると、コホンともう一人の英霊が咳払いをする。
「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。正直、自分が英雄なんて実感はまるでない。確かに僕は偉大だが、しかし、それでも数多くあった芸術家の一人に過ぎないんだが……」
「クラスは?」
「キャスターだよ。……と言っても、魔術の腕には期待しないでほしい。音楽のために多少は嗜んでいたけど、悪魔の奏でるという音に興味があっただけだからね」
二人の自己紹介が終わり、一歩前に歩み出たマシュは自分の胸に片手を当てる。
「わたしはマシュ・キリエライト。デミ・サーヴァントで、真名は分かっていません」
自らも自己紹介を終えたマシュは、今度は自身のマスターの紹介を行う。
「こちらは藤丸立香。わたしのマスターに当たります」
「藤丸立香だ。アマデウス、それから……マリーさんでいいかい? これからよろしく頼むよ」
「マリーさん、ですって!?」
ビクッと体を跳ね上げるマリー。あわや地雷を踏んだかと、内心で焦りを覚えた次の瞬間。
「今の呼び方、とっても嬉しいわ! 耳が飛び出るくらい可愛いと思うの!
お願い、素敵な異国の御方! わたしのこと、これからもそう呼んでもらえないかしら……!」
大輪の花が咲いたような満面の笑顔で、宝物を見つけた童女のように瞳を輝かせる。体全体を使って喜びを表現するマリーに、ひどく困惑した様子のマシュが問いかける。
「ええと、ミス・マリーとかマドモアゼル・マリー……では、ダメなのですか?」
「ダメ! 全然ダメ! マリーさんがいいのっ! 羊さんみたいで!」
「それはメリーさんでは……?」
マリーさん、という可愛らしい響きに胸を躍らせるマリーは堅苦しい意見を却下する。
そんな女の子の期待に応えるべく、立香は彼女の望み通りの言葉を口にした。
「よろしく、マリーさん」
「はい! はいはいはい! はじめまして、マリーさんです!」
と嬉しそうに返事をしたマリーは、そのほっそりした白い指先で立香の顔をぴしりと指差した。
「話の早い殿方は魅力的よ。当ててみせるわ、貴方、とてもおもてになるのではなくて!?」
「以前、物凄い本数の糸で結ばれてる、とは言われたことがあるな」
「糸…………?」
「恋人同士を繋ぐ糸……所謂、運命の赤い糸というヤツだ。愛の天使直々の言葉だよ」
「まあ、貴方って恋の多い殿方なのね!」
「光栄なことにな」
天界に住まうアマツの神騎の中には愛を司る天使が存在している。
神騎リゲル。運命が導く恋人たちを、愛の矢で結びつけるのを役目とする神騎だ。
愛の裁定者であるリゲルは、運命の赤い糸を視認する権能を保有している。
前世、彼女に小指を見せた際に、赤い糸で真っ赤! と喜ばれたのを、立香はよく覚えていた。
「……それにしても、マリー・アントワネットか」
「なぁに? わたしがどうかしたの?」
「いや、別にキミが何かしたわけではないが……実は、俺たちの上司の名前もマリーなんだ」
「まあ、そんなことが!」
予想外の事実に、くるりと目を丸くするマリー・アントワネット。
対して、もう一人のマリー、オルガマリー・アニムスフィアは優雅にカーテシーを行う。
「特務機関カルデアの所長を務めているオルガマリー・アニムスフィアと申します」
「ふふ、あなたがそうなのね? 嬉しいわ、わたしと同じマリーに会えるなんて……!」
「こちらこそ、お会いできて光栄です。マリー・アントワネット王妃陛下」
「ああ、ダメ、そんな堅苦しい態度をなさらないで? 生まれた日、時は違っても同じマリーの名前を持つ姉妹のようなものでしょう? わたし、あなたとお友達になりたいの。もっと気軽に話しかけてはくれないかしら?」
「と、友達……?」
「ええ。あなたとは仲良くなれる気がするの。……それとも、わたしではダメかしら?」
マリー・アントワネットは生まれながらの
以前までの余裕の欠片もないオルガマリーならば拒絶したかもしれないが、自分を認め、褒め、欲してくれる人が傍に寄り添うことで、心に贅肉ができた今の彼女が脊髄反射的に拒絶することはない。むしろ、初めての友達ができるかもしれない、と期待に胸を膨らませていた。
「その、わたし、友達なんて初めてで、何をすればいいか……」
「うふふ。それなら一緒に色々な経験をしましょう?」
「ええ、ええ!」
二人のマリーは固い握手を交わす。その様子を立香たちは温かい目で見守っていた。
そうして、彼女たちが落ち着いた頃に最後の一人が自己紹介を切り出した。
「では、最後は私ですね。私の真名はジャンヌ・ダルク。ルーラークラスのサーヴァントです」
「ああ、夢みたい! 憧れのジャンヌ・ダルクにお会いできるなんて!」
「あ、憧れ……ですか?」
「ええ。救国の聖女ジャンヌ・ダルク。生前から、ずっと貴女にお会いしたかったの!」
星のように輝く王妃の視線から、ジャンヌは僅かに目を逸らす。
「……私は、聖女などではありません」
「ええ。貴女自身がそう思っていることは、誰もが理解していたはずです。それでも、少なくとも貴女の生き方は真実でした。その結果をわたしたちは知っています。だからみなが貴女を讃え、憧れ、忘れないのです。ジャンヌ・ダルク―――オルレアンの奇跡の名を」
なおも羨望の眼差しを向け続ける古馴染の様を見かねたアマデウスが呆れたように口を挟んだ。
「ま、その結果が火刑であり、あの竜の魔女なワケだが。前から言っているけど、マリア、人のいいところしか見ないのは君の悪い癖だ。偶には相手の間違いを否定することも大切だよ」
「そ、そんなこと、アマデウスに言われなくても分かっていますっ!」
「本当かい? よし。それならレッツトライだ! 思いつく限りの悪口を僕にぶつけるんだ!」
ばっちこい! と笑顔で告げる友人に、少ない語彙から精一杯の罵詈雑言を並べ立てる。
「こ、こうすればよいのでしょう? この音楽バカ! 人間のクズ! 音階にしか欲情しなくなった一次元フェチズム! そんなに楽譜が恋しいなら、いっそ音符にでもなったらどう!?」
「……自分で言っておいてなんだけど、君に罵倒されると、こう、何とも言えない感情が湧き上がるな」
彼女の言葉にゾクゾクと全身を震わせるアマデウス。その姿を目にしたオルガマリーは嫌悪感を露わにした表情で、傍らに立つ立香の服の裾をちょいちょいと引っ張った。
「………ちょっと、藤丸。アレ、どう思う?」
「紛うことなきドMの変態だ」
M属性にも理解のある立香だが、流石に人前でこれは……と頬を引き攣らせずにはいられない。
「だがまあ、やればできるじゃないか! そんな感じでジャンヌにもかましてあげなさい。もっと早く。もっと強く。もっと辛辣に! 君が思うままの欠点を口にするんだ!」
「それは無理よ、アマデウス。貴方のような人間のクズには欠点しか見当たらないけれど、ジャンヌには欠点らしい欠点なんて見当たらないのだもの」
「――……降参だ。まさか、君がそこまでジャンヌ・ダルクを好きだったなんてね……」
「好き、というよりは信仰かしら。あとはちょっとの後ろめたさ」
「後ろめたさ……?」
「……小さじ一杯分ぐらいの、ごめんなさい。愚かな王族が抱く、聖女への当然の罪悪感」
マリー=アントワネット=ジョゼフ=ジャンヌ・ド・アブスブール=ロレーヌ・ドートリシュ。
1770年、14歳の時に当時王太子だったルイ16世と結婚した彼女は、夫の即位に伴って1774年にフランス王妃となった。ジャンヌ・ダルクを見殺しにした王家の裔として、彼女は口にした以上の並々ならぬ罪悪感を覚えている。
そんな王妃の心を解きほぐすように、或いは自分の罪を吐露するように。ジャンヌは口を開く。
「……マリー・アントワネット。貴女の言葉は嬉しい。でも、だからこそ告白します。
生前の私は、貴女の言うような救国の聖女などではありませんでした。ただ、自分が信じたことのために旗を振り、その果てに魔女として火刑に処せられた愚かな女―――それが私です」
「っ…………!」
「田舎娘は自分の夢を信じた。その夢の行き着く先がどれほどの犠牲を生むものか、その時まで想像しようとすらせずに。自分の人生に後悔はありません。……ですが、流した血が多すぎた。畏れを抱くこともしなかった。――それこそが、この私が犯した最も深い罪です」
「……………………」
「王妃様……誰もが私を聖女と謳う、けれど他ならぬこの私だけがそう思ったことは一度もないのです。結果としてこの国を救っただけの小娘を聖女と呼ぶのは、やはりどこか違うのだと……」
聖女――否、信心深い一人の善良な少女の告解を聞き終えた王妃は静かに声をかける。
「…………そう。ねえ、聖女ではないのよね?」
「はい」
「それなら、わたしはあなたをジャンヌと呼んでもいい?」
「……え、ええ。勿論です。そう呼んで戴けると、何だか懐かしい気がします」
「良かった! それならあなたもわたしをマリーと呼んでくださいな!」
マリーは微笑みながら、ジャンヌの手を両手で包み込むように握り込む。
「あなたが聖女ではないただのジャンヌなら、わたしも王妃ではない、ただのマリーとしてお友達になりたいわ。ね、お願いジャンヌ。どうかわたしをマリーと呼んでみて?」
彼女の勢いに圧倒されつつも、ジャンヌはこくりと小さく頷いた。
「は、はい。では遠慮なく。……ありがとう、マリー」
「こちらこそ、嬉しいわジャンヌ!」
僅かばかり照れた様子で、それでも確かに口にされた自分の名前に、鮮やかに咲き誇る白い百合の花のように、マリーは溢れるような笑顔の花を咲かせた。
「……それとごめんなさい。わたしの気持ちばかりあなたに押し付けてしまって。あなたは自分の中の答えを見失ってしまったのね。なら、それはきっと自分で見つけるしかないモノだわ」
「…………」
「ふふ、大丈夫よ。わたしもあなたの力になるわ。困った時はお互い様。助け合い、支え合う。それこそが女友達の心意気! ……そうよね、アマデウス?」
「そうだね。いいんじゃないか? 女友達の心意気とか、甘い響きに満ちていて大変結構だ」
「………ねえ。わたしは頼りにしてくれないの?」
マリーは今にも泣きそうな不安げな表情をするオルガマリーに微笑みかける。笑顔のまま安心させるように優しく彼女の手を取ったマリーは、新しい二人の友人と三人で固い握手を交わす。
「そんなことはないわ。ねえ、マリー? あなたも力を貸してくれる?」
「も、もちろんよ!」
「……ふふ、ありがとうございます。心強いです」
女の子同士の友情。背景に咲き誇る白百合の花を幻視した立香はポツリと呟いた。
「これが
桃園の誓いとは。中国の通俗歴史小説『三国志演義』に於いて、劉備・関羽・張飛の三人が桃の花が咲き乱れる庭園で義兄弟の契りを交わしたとされる伝承だ。一面の百合を背景に友情を確かめ合う三人の姿が、伝承に語られる桃園の誓いを想起させた。
『
「むしろ、そこは
「ドクター、それにアマデウスさんまで……お二人は一体何を言っているんですか」
意味不明な事を口走る二人にマシュがツッコミを入れる。
彼らの漫才の裏で友好を深めたオルガマリーは、ふと真剣な表情を作り、友人たちに告げた。
「それで、マリーにはわたしたちの問題にも力を貸してほしいの」
「あなたたちの? ええ、構わないわ。詳しい事情を教えてくださいな」
――――斯くして。
フランス王妃マリー・アントワネットはこの世界に迫る危機の実態を知ることになる。
☆
【推奨BGM:Strain】超昂大戦より
「――事情は分かりました。フランスはおろか、世界存続の危機だったのですね。形は違えど、これもまた聖杯戦争というわけですか……」
「聖杯戦争、と題するには譜面が滅茶苦茶な気がするけどね。……マスターなしでの召喚なんて時点で危険な音しかしなかったけど、予想以上だなこれは」
オルガマリーからカルデア側の経緯と事情を聞いた二人は腕を組んで難しい顔をする。
その一方、二人の言葉を聞いたオルガマリーも思考の海に身を沈めていた。
「……恐らく、特異点では抑止力は働かない。英霊が世界に留まるための要石の役割を果たすマスターを持たない二人の存在が、他の何よりもその事実を証明している。……けど、そうなると、マリーたちを召喚したのは一体何者なの?」
通常、マスターを持たないサーヴァントは一日と保たずに下級霊にまで零落し消滅する。
サーヴァントは現世に留まること自体に魔力を消費するため、契約したマスターからの魔力供給がなければ、現界を保つことができない。さらにマスターは英霊が世界に留まるための要石の役割も果たしているため、仮に魔力があったとしても現界を保つために必要とする魔力量が増える。
これは、世界からの強制力を大幅に軽減する『単独行動』のスキルを持つ英霊も例外ではない。
詳細に言えば、魔力が英霊という魔術事象を維持するためのエネルギー、マスターとの契約が世界に留まるための要石。マスター不在のサーヴァントはエネルギーと要石が存在しない負担の二つの魔力を自力で捻出しなくてはならなくなるのですぐに消えてしまう。
召喚に必要な触媒が概念ではなく遺物だった場合、この遺物も要石として機能するのだが、その効力もそれほど高いものではない。
即ち、そんな状態で戦闘を行うばかりか宝具の真名解放すら行った二人の存在自体が、抑止力が正常に機能していない何よりもの証拠になる。仮に正常に機能しているとすれば、時間軸に寄る辺を持たない彼女らが現界を保てるはずがないからだ。
抑止力が召喚した、という可能性もないわけではないが、その線を追う場合は弱体化した状態で現界したジャンヌに疑問が残る。
「……これは、あくまで推測ですが。聖杯は聖杯戦争の最後に勝者が手にするものであるにもかかわらず、勝敗が決まる前から既に所有者が存在している。この因果の逆転、矛盾を正すために、聖杯自身に召喚されたのではないでしょうか?」
「つまり、わたしたちが召喚されたのは―――英雄のように、竜の魔女を打倒するためなのね!」
ジャンヌの推測を聞いたマリーは頬を微かに上気させ、かなり昂奮した様子で声を上げる。
「根拠のない自信は結構だけどね、マリア。相手は掛け値なしに強敵だぞ?」
「……そうですね。ファヴニール……あの竜種は英霊以上の脅威です」
『ファヴニール……『ニーベルンゲンの歌』に謳われる万夫不当の英雄、ジークフリートが討ち倒したとされている邪竜だね。同時に戦士の王と讃えられる『ヴォルスング・サガ』の大英雄、シグルドが討ち果たした悪竜でもある』
「聖杯を持つ竜の魔女は新しいサーヴァントを召喚するはずです。魔女配下のサーヴァントと同時に戦うことを考えれば、どうあっても戦力が足りません」
悪竜と英霊、どちらも片方ずつなら現在の戦力でも十分に対処できるだろう。だが、両方同時にとなると、途端に戦力が足りなくなる。この戦力差を埋めるのは英霊の一騎二騎では不可能だ。
―――とはいえ、一騎二騎の戦力強化はそれほど難しいことではない。何故なら、カルデアにはそれを可能とする画期的発明が存在しているからだ。
「そのための英霊召喚システム・フェイトです。……藤丸、新しいサーヴァントを召喚するわよ」
「ああ、了解だ」
オルガマリーに促されるまま、拠点の中央に展開された召喚サークルの目の前に立つ。
そして、この一週間前後の間に幾度となく口にした英霊召喚の詠唱を開始した。
【推奨BGM:英霊召喚】Fate/Grand Orderより
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。祖には我が大師アニムスフィア。
降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
魔力。魔術を発動させるための要素。この世界では原初の生命力とも表現されるそれは、別の並行世界では、人間の欲望から生まれるエネルギーを意味する。
人間の持つ欲望の力。アマツ神により封印されたその力を奪った人間を魔王と言う。悪魔を生み出し、地上を欲で満たそうとした魔王は天使により誅滅された。だが、魔王はその大きな力を抱えたまま転生を繰り返す。そして、その魔王の力を立香は
「
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する」
当然、その魔力量は尋常の域ではない。
西暦以降の生命体には有り得ない魔力の量にジャンヌたちは目を見開き、驚きを露わにする。
「―――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
人理の寄る辺に従い、この意、この理に従うのならば応えよ」
最後の一節が紡がれる。
「汝、星見の言霊を纏う七天。奔り、降し、裁きたまえ、天秤の守り手よ―――!」
生前、ジャンヌは異端審問の際に自分が19歳くらいだと発言しており、更に初めて「神の声」を聴いたのは13歳くらいの時だったと証言している。
当時、一人で屋外を歩いていたジャンヌは、大天使ミカエル、アレクサンドリアのカタリナ、アンティオキアのマルガリタの姿を幻視し、イングランド軍を駆逐して王太子シャルルをランスへと連れていきフランス王位に就かめしよ、という「声」を聴いたという。
「……………………え?」
フランスの土地。魔王の魔力。そして、大天使ミカエルの姿を視たジャンヌ・ダルク。
この三つの縁が集えば、彼女が召喚されるのは必然の結果だったのだろう。
「全ては力無き人々を守るため! 神騎ミカフィール推参いたしました」
「ミカエル、さま……?」
九大神騎が二位、謹厳実直なる神の剣。
別の世界では、大天使ミカエルの伝承の原型となった二の聖剣が降臨した。
☆
【推奨BGM:暗雲を払え】Fate/Grand Orderより
――オルレアン。
竜の巣と化した都市の宮殿で、ジャンヌリバースもまた英霊召喚の儀式を行っていた。
「―――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば応えよ」
彼女の傍らには不気味な巨漢の男が侍っている。
ローブと貴金属の数々に身を包み、眼を広く剥く蛙顔をした巨躯の男性。
彼の大きく開かれた両目には、救国の聖女の偉業が刻まれていた。
「誓いを此処に。我は常世総ての悪を敷く者」
本来、英霊召喚の詠唱は「我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」と続くことになるのだが、災厄の魔女として顕現した彼女は「常世総ての善」になど成るつもりはない。
老若男女の区別なく。異教信徒の区別なく。全ての人間を平等に殺す悪こそが彼女の在り方だ。
「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。
汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――」
故に、ジャンヌリバースは召喚した英霊全てに
英霊の本来の性質に関係なく。属性や伝説の有無に関係なく。狂化を付与されたサーヴァント。
バーサーク・サーヴァント。それこそが、魔女配下のサーヴァントの真の姿である。
「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
「おお……!」
新たな同胞の姿に感嘆の声を上げるローブの男。
英霊四騎。その真名を看破した魔女は邪悪な笑みを見せる。
「――よく来ました。
一騎、黒の外套を纏った青年。
一騎、黒甲冑を身に纏う騎士。
一騎、巨大な槍を携えた戦士。
一騎、蛇の髪飾りを付けた女。
「アサシンが二騎……ややこしいですね。真名で構いませんか?」
問いに対する答えを待たずして、裁定者は次々と召喚したサーヴァントの真名を口にする。
「湖の騎士、ランスロット。アーサー王の対処は貴方がしてください」
「――――――――urrrr」
「処刑人、シャルル=アンリ・サンソン。喜びなさい。もう一度、王妃様の処刑ができるわよ」
「……了解しました、マスター。王妃の首ならば、僕以外に適任はおりません」
「そして―――」
最後の二騎、黒の狂戦士たちに視線を向けた魔女はニタリと笑った。
味方サーヴァント
真名 :ビートネイチャー・アケビ
クラス:ランサー
出典 :『超昂大戦』
属性 :中立・善・人
真名 :閃忍サナギ
クラス:アーチャー
出典 :『超昂大戦』
属性 :秩序・善・人
真名 :二の聖剣ミカフィール
クラス:セイバー
出典 :『超昂大戦』、『超昂神騎エクシール』
属性 :秩序・善・天
敵サーヴァント
真名 :シャルル=アンリ・サンソン
クラス:アサシン
出典 :史実
属性 :秩序・悪・人
真名 :ランスロット
クラス:バーサーカー
出典 :『アーサー王伝説』
属性 :秩序・狂・地
真名 :???
クラス:ランサー
出典 :???
属性 :???
真名 :???
クラス:アサシン
出典 :???
属性 :???