※この作品はR-18です。

アルフレートのプロポーズ   作:TDA

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 ※ ※ 注意 ※ ※
 
●本作は原作で言及されていない部分を独自設定・独自解釈で埋めている部分がありますが、素で何か間違っているかもしれません
●時系列としては18年目の秋頃を想定しています。(アルフレート11~12歳、ウルザ推定14歳)



キス&ハグ編

 その日、アルフレートとウルザは、連れだってガルガルド貴族学園の廊下を歩いていた。

 

 曲がり角に差し掛かった時、その角からさっと一人の青年が飛び出し、二人の前に立ちふさがる。

 

 アルフレートはとっさに構えようとしたが、相手からの殺気が無いこと、その顔に見覚えがあることから、すぐに警戒を解く。

 

 一方ウルザはといえば、慌てず騒がず、腕を組んで泰然とした様子だ。

 

 相手の男はさらに一歩進んでウルザの前に出ると、その場に跪いた。

 

 ここまできてようやく、アルフレートは、相手の男がおそらく自分たちの派閥のメンバーの一人だということがわかった。

 

 しかし名前はどうにも思い出せない。派閥のリーダーとしては良くないことだとわかっているが、人数が急に増えているので追いつかないのだ。

 

 ただ、派閥に関する何かの進言や依頼ではないという予測もついた。

 

 派閥の序列一位であるアルフレートを差し置いてウルザの前に跪くということは、派閥とは関係無く、ウルザ本人に用件があるのだろう。

 

「お、おお、麗しのウルザよ」

 

 青年は、緊張しているのか全身を小刻みに震わせながら言った。

 

「あなたの神秘の髪の一すじが風になびくだけのを見るだけで、僕の心が千々に乱れる、あなたの艶やかな唇から出る声を聞くだけで、僕の頭は愛に溢れる。あなた無しに生きる術などもはやこの世に無し。どうか僕に、朝露の雫の煌めきを宿すその瞳の光が共に同じ春の風の」

 

「長い長い」

 

 最後まで聞くことなく、ウルザは無造作に相手の顔面に蹴りを叩きこんだ。

 

「ぐあああああーっ! …………あ、ありがとうございますっ」

 

 顔にくっきりと靴底の跡をつけて、吹き飛んでいく青年。

 

 そのまま、床に仰向けに倒れて動かなくなった。悲鳴の後に何か変な言葉が聞こえた気がしたが、スルーでいいかとアルフレートは思う。

 

 ウルザがそのまま立ち去ろうと歩き出したので、アルフレートは慌てて追いかける。

 

「えっと……ウル姉、今のなんだったんだろう? 貴族言葉にしては、なんかおかしかったと思うんだけど」

 

「ああ、求婚よ」

 

「きゅ、求婚!?」

 

 驚きの声をあげるアルフレートに、ウルザは煩わしげに髪の毛を払う。

 

「ひと月に一回ぐらいの割合で来るのよね」

 

 彼女は平然としているので、本当に、珍しいことでも驚くことでもないのだろう。

 

 しかしアルフレートは、妙に心がざわつくのだった。

 

 

  ◆  ◆  ◆

 

 

 そのまま、二人はアルフレートの部屋に帰った。

 

 ウルザは当たり前のようにアルフレートの部屋に入ると、勝手に戸棚をごそごそと漁る。

 

 部屋の主も咎めたり迷惑がったりしない。いつものことだからだ。

 

「ねえアルフレート、こないだ村から送ってもらった缶詰の新製品ってこれ?」

 

「そうだよ。ナタデココっていう新しいのが入ってるって」

 

 ウルザはアルフレートの部屋に常備してある自分用の食器を持ち出し、そこに缶詰の中身を空けて、食べ始めた。

 

 さらに持っていた鞄から何かの書類を取り出して机に広げ、何やら書き込んでいる。

 

 ぱっと見、重要そうな書類なのだから、汚さないように食べた後でやればいいのに、とアルフレートは思ったが、言って聞く相手ではないとわかっているので無言である。

 

 その気になればマナーに則った行動ができるはずなのに、プライベートではこういうだらしない姿を見せるウルザだった。

 

「ナタデココ、なかなかいいわね。コンニャクとも寒天とも違う食感で。ティゼルがプレゼント外交に使いたがるんじゃない?」

 

「もう使ってるよ」

 

 思わず、二人同時に苦笑を浮かべた。

 

「ところで、それって何書いてるの?」

 

「ん~、進路希望調査の紙」

 

「それ十日くらい前にもらったやつ……」

 

 呆れながら、アルフレートは自分が何を書いたのだったか、思い出す。

 

 若干十二歳ながら、将来の進路についてアルフレートにはすでにいくつかの誘いがあった。

 

『五村でヨウコさんの手伝いをしてみないか』

 

『シャシャートのマイケルさんのところで勉強してみないか』

 

『王都で四天王の仕事を見てみるつもりはないか』

 

『猛虎魔王軍で一緒にプレイしてみないか』

 

 アルフレートには、どれもあまり魅力的な話に思えなかった。

 

 この前、アクシデントでクロイチを召喚してしまった時につくづく思ったのは、やはりインフェルノウルフを初めとする大樹の村の動物たちが恋しいということ。

 

 大樹の村の動物は基本的に死の森の外に出てはいけないので、シャシャートや王都で働くことになれば、またクロイチたちと長期間離れて過ごすことになるだろう。

 

 転移門があるから、大樹の村に戻ろうと思えば、それほど長旅をする必要も無いし、五村ならヨウコたちは毎日通っているぐらいだが、理想を言えば大樹の村で働くのが一番だ。

 

 しかし具体的に、大樹の村で何をして働くのか、となるとなかなか難しいものがある。

 

 この学園には仮にも貴族待遇で所属しているのだから、進路希望に「釣り人」だの「オオカミの世話」だの書くのは憚られた。

 

 結局、悩んだ末に「父の仕事の手伝い」という極めて大雑把な回答をして提出したのだった。

 

 自分の行動を思い出しつつ、アルフレートはなんの気無しにウルザの書いた部分を見てみる。

 

 そして思わず、「え」と声が出てしまった。

 

 

第一希望 探検家

第二希望 冒険者

 

 

「なに?」

 

 ウルザが不思議そうな顔で聞き返す。

 

「探検家に、冒険者って、どういうこと?」

 

「どういうことって……私、学園を卒業したらもっといろいろな場所に行ってみるつもりなの」

 

 ぽいとペンを机に放り出して、ウルザは言う。

 

「魔王国にも行ってない場所はまだあるし、人間の国も訪ねてみたいわ。それと、南の大陸とかも面白そうな場所があるって聞いてる。あと、お父さんが開拓する前の死の森みたいに、ほとんど立ち入った人のいない、魔境・秘境みたいな場所もまだまだあるらしいから……そういうところをね、巡っていくつもりなの。場合によっては何ヶ月も、何年もかけてね」

 

「そんなの聞いてない」

 

 アルフレートはショックを隠せなかった。

 

 一方ウルザは「言ってなかったっけ?」と平然としている。

 

 しかしアルフレートが両手で顔を覆い、次いで怒りと困惑が混じった目つきで上目遣いに見てくるのを見て、眉を顰める。

 

「どうしたっていうのよ」

 

「だって、ウル姉は僕と一緒に暮らすんじゃ……」

 

 アルフレートの、声は急速に小さくなり、もじもじと目を左右に走らせていたが、やや頬を赤くして言う。

 

「ウル姉は僕のお嫁さんになるんじゃないの?」

 

 つい勢いよく立ち上がりながら、アルフレートは言った。

 

 その言葉を聞いたウルザは、小さく息を漏らして少し思案し、そしてアルフレートを見つめながら、ゆっくりと言った。

 

「アルフレート、よく聞いて。お母さん達が、私とあなたの結婚を考えているのはわかってる。でも強制じゃないとも言われてる」

 

「……」

 

 アルフレートは不安げに視線を逸らして押し黙る。

 

 ウルザに限らず、将来を強制したくない、本人の意思に任せたい、というのは二人の父親であるヒラクが常日頃明言していることだ。

 

 母親たちの中にはまた別の思惑を持つ者もいるとはいえ、村長の意見を無碍にはできないはずだ。

 

 ウルザもまた立ち上がってアルフレートの正面に来ると、しっかりと彼の顔を見つめて言う。

 

 立った状態で二人向き合うと、ウルザの方がやや身長が高い。

 

 見下ろされたアルフレートは、ウルザの身体から放たれる独特の気配に押されるような感覚を覚えたが、気合を入れて踏ん張った。

 

「私は、『みんなが望んでいるからその相手と結婚する』なんて思ってる男の子とは結婚したくない。私をお嫁さんにしたいって言うなら、ちゃんと自分の意思と言葉でプロポーズして」

 

 真剣なウルザの言葉と表情に、アルフレートは息を呑む。

 

 相手の真っ直ぐな視線を受け止めながら、アルフレートは言った。

 

「……蹴らない?」

 

「蹴らないわよ」

 

「じゃあ……」

 

 アルフレートは、思いもよらない急展開に頭が熱くなるのを感じながら、必死で言葉を探した。

 

 目の前のウルザが持つ独特の迫力が、逃げたり誤魔化したりすることを許さなかった。

 

「う、麗しのウルザよ」

 

 口に出した瞬間、これ蹴られた奴と同じ出だしだと気づいて後悔するアルフレート。

 

 しかし「今の無し」とは言えず、絞り出すように続ける。

 

「あなたの存在こそ僕にとっての、えー、光……人生を輝かせる光そのもの。そして僕は闇の眷属で、あー、つまり、僕とあなたが、一緒になることで、光と闇が両方備わり最強に見える……?」

 

 途中から明らかに笑いを堪えていたウルザは、遂に耐えられずぷっと吹き出した。

 

「ちょっと、笑うのはひどいよ!」

 

「あっはははは! ごめんなさい、でも言ってて自分で変だなって思ったでしょ」

 

「ぐぬぬ」

 

 羞恥に赤面したアルフレートだったが、その時突然、一つの考えが、あるいは衝動が閃いた。

 

「じゃあこれならどう?」

 

 言って、その衝動のままにウルザの両肩を掴んで、その唇に自分の唇を推し当てた。

 

 昔、二人でじゃれあっていた時、頬にキスしたことはあった。だが唇は――

 

 一秒、二秒、と経ってから、アルフレートは顔を離す。

 

 今更ながら自分がしたことに、顔から火が出るほど恥ずかしく、気まずかった。

 

 心臓の鼓動がどんどん大きくなり、相手にまで聞こえてしまうのではないかと思うほどだった。

 

 一方ウルザは、キョトンとした表情になった後、確かめるように自分の唇を人差し指で撫でてから、言った。

 

「……アルフレートは、こういうことよくするの?」

 

「しないよ! 今日が、ウル姉が初めてだよ……」

 

 慌てて否定すると、ウルザは「ふーん……」と頷いた。

 

「まあ、さっきのプロポーズよりはだいぶマシね」

 

「そ、それで返事は」

 

 待ちかねたように、アルフレートは言った。

 

 早鐘を打つ胸が苦しくて、思わず胸元のシャツを握りしめる。

 

「返事? ああ、そうね。じゃあちょっと目をつむってて」

 

 その指示は意味がわからなかったが、アルフレートは素直に従った。

 

 これで急に殴られたら怖い、と思いながら。

 

 ウルザは蹴らないとは言ったが殴らないとは言ってないし。

 

「あ、それから、その状態で口を開けてね」

 

 次いでもう一つの命令を受ける。

 

 何か口の中に変なものを放り込まれるのだろうがとますます不安になりながら、アルフレートは大きく口を開ける。

 

 次の瞬間、彼の唇に、柔らかく温かく、そして少し濡れた感触の何かが押し当てられた。

 

 そしてほとんど間をおかず、口の中にぬるぬると動く物が侵入してくる。

 

「……っ!?」

 

 思わず目を見開くと、至近距離まで迫ったウルザの顔。

 

 相手に目を閉じることを要求したくせに、自分は悪戯っぽい光を宿らせた目でアルフレートのことを観察しているようだった。

 

 口の中に舌を差し入れられていることにアルフレートが気づくとほぼ同時に、ウルザはその舌を動かし始める

 

「ん……んんっ……ん、うん、ん……」

 

 軟体動物の触手のように、ウルザの舌がアルフレートの舌に絡みつく。

 

 ウルザの両手がアルフレートの頬を挟んで押さえ、顔が動かないようにして、更に強く唇を押し付け、舌がより奥まで進んでくる。

 

「んっ、ん、ちゅ……ちゅぷ……」

 

 ウルザは舌先をゆっくりと回すように動かして、アルフレートの舌を弄んだ。

 

 吐息に混じって唾液の弾ける音が、アルフレートの頭の中に響く。

 

「んんん……ぷはぁっ……!」

 

 ずっと呼吸を止めていたアルフレートはついに耐えられなくなり、半ば強引に手でウルザを押しやって、その唇と舌から逃れた。

 

「ウ、ウル姉……」

 

 生まれて初めてのディープキスと酸欠のせいで、頭がぼうっとして言葉にならない。

 

 ウルザは余裕のある表情をとっているが、その頬ははっきりと紅潮している。

 

「どうだった? 私の『返事』は」

 

「あ……甘かった……」

 

 やっとのことでアルフレートがそれだけ言うと、ウルザはくすくすと笑う。

 

「それは缶詰のシロップの味かな。もっとしたい?」

 

 再び顔を近づけながら、ウルザは囁くように言う。

 

 その甘い声にゾクゾクと身を震わせながら、アルフレートは何度も頷いた。

 

「じゃあ今度は、アルフレートが、私がやったみたいにしてみて。ちゃんと呼吸は忘れないでね」

 

 ちろりとピンクの舌を出して言うウルザ。

 

 あれが、自分の口の中で動いていたのかと思うと、アルフレートは身体がかっと熱くなり、感じたことのない昂りが身の内に湧き上がるのを自覚する。

 

 そして誘うように口を半開きにして小首を傾げるウルザの唇に、思いきって自分から吸い付く。

 

「ん……んっ……ちゅっ……んん……はぁ……んっ……ちゅっ、ちゅぷっ……」

 

 さっきされたことを思い出しながら、アルフレートは懸命に舌を突き出しでウルザは口の中に入り込む。

 

 ウルザの舌はたどたどしいアルフレートの舌を優しく導くように、その動きに合わせてあげていた。

 

 時折呼吸を挟む。その時に感じる吐息が熱い。

 

 舌を伝ってとろりと流れこんでくる唾液は、シロップの味を越えて甘い気がして、飲み込むごとに体温が上がる気がした。

 

「ウル姉、こういうこと、他の人としたことあるの?」

 

 つい、そんなことを聞いてしまうアルフレート。

 

 ウルザはにっこり笑うと、ゴンッ、と頭突きをしてきた。

 

「ないわよ。何言ってんの」

 

「いやだって、なんか慣れてるっていうか」

 

「なぜか知ってるし、わかるのよ。あと村の女の人から聞いたり」

 

 詳細は不明だが、ウルザには一部前世の記憶があることが親しい人の間では知られている。

 

 習っていない剣技をいきなり使いこなしたり、過去の歴史について知識があったり。

 

 だから今していることも、それと同じことなのだろうと、アルフレートは安心し、一度頭突きされた額を撫でてから、くちづけを再開する。

 

「んんっ、ちゅっ、ちゅっ……れろ……」

 

 だんだんと、大胆になっていくアルフレートの舌使い。

 

 深いキスを継続しながら、ウルザの両手が頬から背中に移り、彼をぎゅっと抱きしめる。

 

 押し付けられた体の柔らかさに、アルフレートは驚いた。

 

 ウルザがふざけて抱き着いてくることは、昔はよくあったが、最近は少なくなったように思う。

 

 いつの間に、こんなに柔らかい身体になったのだろうか。

 

 そして胸元に押し付けられた二つの膨らみの感触は、格別だった。

 

 不意に、熱くなった全身の中でも特に下腹のあたりに、不思議な感覚が生じるのにアルフレートは戸惑った。

 

 締め付けられるような、切ないような、しかし不快ではない、たまらない感覚だった。

 

 ウルザと接した口と、胸のあたりから、下腹部に向けて何かが流れ込んでくるような感覚だった。

 

「うっ、ああっ!」

 

 唐突に体を震わせて、アルフレートは股間から何かが迸り、味わったことのない強烈な快感が生じてふらついた。

 

「アルフレート……?」

 

 キスを中断したウルザは、不思議そうにアルフレートを見やる。

 

 アルフレートは、小水とは明らかに違う何かが噴き出したのを感じて、己の股間を見やる。

 

 その視線を追ったウルザは、アルフレートのズボンの股間にゆっくりと染みが浮かんでいくのを見て、「ああ」と頷いた。

 

「ふふっ……キスとハグだけでイっちゃったんだ」

 

「えっ、あの……」

 

 アルフレートの戸惑う様子を見たウルザは、はっと思い当たった。

 

「もしかして、出すのも初めてだった?」

 

「えっと、そういうのがあるっていうのは知ってて、でもこんな風になんて」

 

 顔を真っ赤にしてしどろもどろになるアルフレートに、ウルザは彼の頭をポンポンと優しく叩いて落ち着かせようとする。

 

「じゃあとりあえず、お風呂入ろっか。一緒にね」

 

「えっ」

 

 

      お風呂えっち編へ続く

 

 

 




アニメ最終回記念として書きました。
前中後の全三話構成です。
続きは明日の夜を予定しています。
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