「頭が固ぇな、全然なってねぇ」
「クッソがッ! アァ!? ごはっ!!」
「加護の耐久力に頼って受け身になりがち。頑丈なのは結構だが、今の俺の攻撃を受け止めるにゃちと物足りないな。漢らしくありてぇってんならこんな狭っ苦しいとこに閉じこもってないで外に出るといいぜ。ちょっとは世間を知りな、ガキ」
暴れるクソガキにチョークスリーパーを決めて身動きを封じるクピド。
「クソッ、クソッ、クソォォ!! グルァァァァ!!!!!」
雄たけびを上げ、肥大化する上半身。
完全に首固めを決められた状態からなんとか抜け出した。
だが──。
「はぁ……まだ分かんねぇか? ──トーシロー」
「ゥゴォォォ!! ──あがッ!?」
「──拳撃」
「アッ!? ……ガっ…………」
交差する二つの物体。その速さたるや。瞬きをする間に終わっていた。
気づけば、金髪に上裸の少年──ガーフィールは地に伏していた。
──まるで歯が立たなかった。
聖域最強の守護神である彼が敵わないのであれば、もはやこの場所にその男の行動を止められるものはいない。
そう、ここは『聖域』。またの名を強欲の魔女の墓所。
屋敷で悠々自適に暮らしていたクピドはロズワールの指示により、この場所を訪れていた。
その指示の内容は簡潔に言えば──『聖域を解放しろ』、それだけだった。
方法は問われていない。
つまりは自由だ。
ならば速攻で終わらせて遊楽に過ごせる屋敷にさっさと帰ろうと、こうして屋敷からひとっ跳びにここまで来た。
──ラムを連れて。
ラムはクピドに絶対服従……というのもあるが、ラムはラムでクピドの監視役という役割もあってのことだ。
まぁそれがどこまで意味を成しているかは……この場の有様を見て察する他ない。
「……これはいったい何事じゃ? ──! ガー坊っ!」
そこへ現れたのは一見して幼女と言って差し支えないラムと同じ桃髪の少女。
焦燥の浮かぶ彼女は少年へ駆け寄ってその名を呼んだ。
「……なぁ、ラム。もしかしなくても俺って悪者か?」
「はい。どこからどうみても悪の親玉だと思います」
「おうおう悪の親玉と来たか。御主人に対して口がなってねぇなぁ、ラム?」
「いいえ、ご主人様。ラムがご主人様を悪く言うことなんてありませんわ。昨晩から休みなくお相手をさせられて、朝も無理やり起こされて、何の説明もないままここまで連れてくる。そんな無理無体なご主人様をラムは心から慕っております」
「あぁ、うん……悪かった」
「はい」
ラムは表情を変えないまま皮肉を垂れたが、毒舌に反してクピドに対して貞淑に接していた。
粛々と彼の一歩後ろに控え、恭しく頭を下げる。
彼女ほどの存在を背後に侍らせるというのも男として悪い気分じゃないが、周りの目など生まれてこの方気にしたことがないクピドからすれば、そんなことよりももっと親密に接して欲しかった。
「何度も言ってるけど、もっと気やすく話してくれていいんだぜ? ──最初の頃みたいに」
最初の頃はもう少しくだけた会話もしていた。
それも今は見る影もない。だがそれも仕方のないこと。
「恐れ多いです」
「さよか」
変わらぬ彼女の表情を少し残念に思いながらクピドは生返事を返した。
「そこにいるのはラムか? ロズ坊のところのメイドじゃな……だが、これはいったいどういうことじゃ? そこの者はいったい何用でこの場所に来た。ここで何があった」
「あ~、質問の多い婆さんだな。その見た目でその魂の劣化具合、老魂はいたわってやった方がいいぜ」
一見してただの少女。しかし、クピドは一目して彼女の年齢を看破し、魂が何だと口添えした。
「お主は……」
「リューズ様。こちらのお方はロズワール様の使い、この聖域を解放するために遣わされました」
「……なに?」
説明する気のないクピドに代わって、諸事情をラムが説明した。
ラムの口から出た『聖域の解放』という言葉に反応した少女──リューズが眉をあげた。
年齢やラムの態度から彼女がこの場の責任者のようなものだと理解したクピドは取り合えず叩きのめしたクソガキのことを謝罪しておこうと口を開いたが……
「と、その坊主に関しては悪かっ……いや? 俺よく考えなくても悪くないよな。先に突っかかってきたのはそっちだもんな?」
よくよく考えれば、正当防衛じゃないかと思い始めた。
「ガー坊はこの聖域を守る墓守のようなものじゃ。突然お主のような者が現れれば当然迎撃もする」
「全面的にご主人様が悪いかと」
だが、そうは問屋が卸さないようだ。
リューズだけでなくラムにまで言われてしまえば仕方ない。
「……あーはいはい、めんごめんご。俺が悪ぅございました。──ほら」
ここで謝らなきゃ後が面倒だと理解したクピドは適当な謝罪と共にクソガキへと近寄り、
「何を──」
する気だ、そう口にする間もなかった。
気づけば──彼が横にいた。
突然現れたようにさえ感じさせる音のない足運び。
驚き動揺している間に彼の手がガーフィールに触れていた。
「──アァ!?」
「ガー坊!」
クピドの手が白く光り、倒れ伏すガーフィールの頭に触れた。
すると次の瞬間、一方的に殴られた傷や血の跡が綺麗さっぱり消え去った。
それはクピドの扱う回復魔法。通常の水のマナや精霊によるものとは違い、本人の治癒力を活性化させる力だ。
『地霊の加護』を持ち、地面に寝っ転がっていたガーフィールには効果覿面だった。
「よう、頭ァ冷えたか、ガキ」
「ッ! テンメェッ! もっかいぶっ殺してやらァ!」
起きてすぐ再度暴れようとするガーフィール。
面倒に思ったクピドが空気を一変させた。
「だぁからやめろって、それとも……──馬鹿は死ななきゃ治らねえってか?」
「──ッ、か、ア、がッ」
ガーフィールは、心臓を見えざるナニカに握りしめられたかのように感じ、その身動きを止めた。呼吸がままならず、しかしその鋭い眼光から目を逸らすことが出来ない。
手足が震え、立ち上がることもできない。逃げることも、抗うこともできず、その場に釘付けにさせられる。冷たい汗をかき、ドロドロと胸に渦巻く感情。
ガーフィールはそれが何であるかを知っている。
──恐怖? このオレッ様が、ビビってるってのかッ!?
起き上がったばかりで、再び気絶しようかという間際。
その視線を、桃色の髪が遮った。
「──ご主人様、お戯れは程ほどに」
ラムだった。
「……らッむ……」
救いが現れ、ガーフィールは多少息を持ち直した。
その様子、特にラムを見るガキの目を見てクピドはある程度察した。
「はん。なんだ。さてはお前さん、ラムに惚れてんな?」
「──ッ!」
図星を突かれたようにわかりやすく狼狽えるガキ。
「ふ~ん、へ~、ほ~ん? いい趣味してんじゃねぇか。存外気が合うかもな? ──まぁ、ラムは俺のもんだがな」
女の趣味が同じであったことに多少の親近感を覚えつつ、されど、ラムは自分のものであると示すように、クピドはラムの腰に手を添わせ、自身の胸元に抱き寄せた。
それは動物の雄がする、雌が誰のものであるかを他の雄に分からせる恣意行為に他ならない。
「んっ」
「ッ!?」
自然に漏れたその声に、ガーフィールは動揺した。
あり得ない。あのラムが、鉄壁にすぎる彼女が今みたいな声を出すなんて。
何よりその声には今、確かな熱が籠っていた。
まるで、そうされることが嬉しいかのように。
その表情も一見すれば変化はないが、よく見れば頬が上気し、視線が目の前の男だけに向けられていることがわかる。
惚れた女のその不釣り合いな姿に、ガーフィールは現実を直視できなかった。
「ふむ……ガー坊。ここは一度わしが話を聞く。それでよいな?」
「…………あァ」
呆然自失に陥ったガーフィールが生返事を返す。
「そうか。ではお客人、わしの孫がすまなかったの。ロズ坊が何を考えているのか、ここをどうしたいのか、いろいろと話を──」
取り合えずこの場は収め、奥で先に話をしようとしたリューズだったが、
「あー、そう言うのはラムがやっといてくれ」
「……はい」
クピドはそれに応じず、面倒事をラムに放り投げた。
「ちょ、ちょっと待ちなされ! いくらロズ坊の使いと言えど、まずは話し合いをじゃな……!」
「うんにゃ、俺ぁ聖域を解放するようにとしか言われてねぇからな。細けぇことはラムが知ってるだろ。俺がいても何にもならねぇ、俺はそれより──その試練とやらをクリアしにいく」
──『試練』。
それが意味するところをリューズは理解している。
だからこそ解せない。
「……お主が試練を? 試練を受ける資格があるのはハーフの生まれのものだけじゃが……」
「あぁ、それなら問題ないな、なにせ──」
「むっ!」
その疑念に、クピドは己が身でもって示した。
ぐにゃんぐにゃんと、リューズの視界で男の身体が変形していく。
その奇怪な光景に思わず声を上げた。
しばらくすると変化は収まり、そこに前にはなかったはずのものが生えていた。
──狼人の耳。そして尻尾である。
「狼人じゃと……?」
「まぁな。生まれが生まれなもんで雑種ではあるが、俺の血筋は概ねハーフだぜ、これなら問題ねぇだろ?」
「狼人……帝国に住処を追われ数を減らしたと聞いていたが、よもやお主のような者がおるとは」
「別に俺ぁどうでもいいけど。俺みたいなやつを人狼って言うらしいな? 普段は人そのものでも満月だったり、訓練したりすりゃあ半獣化できる」
人狼。それは獣の強靭さと人の俊敏性を兼ね備えた、身体能力に優れ獣人族の中でも先頭に秀でた種族。
更には通常時では人と見分けがつかないと来た。
戦時中には工作員、戦闘員、なんでも出来る兵士として重宝された。
だからこそ恐れられ恐怖の対象となり迫害され、今では絶滅危惧種と言ってもいい。
「……そうか。それならば一度『試練』を受けてみるといい。もし、本当に『試練』を突破し、聖域を囲む結界を解除できるのであればそれに越したことはない。……新しく生まれた子供らを、このようなところにいつまでも閉じ込めるようなことはしたくないのでな」
未来を想う少女は確かな年上の思慮深さと知見を感じさせた。
子を想い、慈しみ、先のことを考える。見た目がどうであろうと関係なく、彼女こそがこの場の長であるのだと理解させられた。
「ありがとよ。んじゃ坊主、さっさとその試練の場所に案内してくれ。俺がパパっと攻略してやる」
「んがッ! なにッすんだ! ……おいッ!」
暴れ。拒否しようとするも男の腕はびくともせず。
ガーフィールは首根っこを掴まれてクピドに連れていかれ、ラムの視界から消えた。
◆◇◆
「と、そんなこんなでここに来たわけ、お分かり?」
クピドは晴れやかにして爽やかな草原に立っていた。
廃れ寂れた墓所とは一風変わった自然豊かな豊穣の丘。それは獣人族の血も混じるクピドに何処か懐かしさを感じさせた。
彼の目の前にはこの美しい光景に不自然に溶け込んだ机と日傘、そして自然には存在しない黒と白に身を包んだ細身の美女だった。
「──なるほど。よくわかったよ。君が三つの魔女因子に適応しているだけのことはあるということがね」
ノイズのない流暢で美しい声。それは聴くものを魅了し、傾聴を促す至上の音。
彼女は何でもないようにお茶を嗜みながら彼の持つ魔女因子について言及した。
【魔女因子】──それは世界の権能を矮小な人の身で扱うことを可能にする大罪の力だ。
それが三つ。そしてそのどれもに彼は適応しているのだ。それだけで彼がただ者ではないことが窺える。
「ご理解いただけたようで光栄の至り。それで、試練てのは何をすればいいんだ? ──強欲の魔女さんよ」
クピドは彼女が何者であるかを知っていた。
「まあまあ、そう気を急くこともないだろう。なにせ人との会話というのも何十年振りなんだ。もう少しお喋りをしても罰は当たらないだろう?」
まるで、久しくなかった会話を乞うようにソレは振舞う。
しかし、実のところその心──その脳内にあるのは疑問だ。
──なぜ、【叡智の書】に記されていない存在がこの場所に辿り着いたのか。
疑問。それは認識の齟齬だ。世界の大半を知識として収め、未来の景色さえも手中に収める彼女にとって何事に対しても無知ということはあり得ない。
しかし、知識とは時として現実とズレるものだ。その時、初めて彼女の脳裏に疑問というものは浮上する。
別段、叡智の書の記述にないことが現実に起きることがあり得ないわけではない。
叡智の書は所謂、未来の歴史書であり、例えば誰かが一度でも『運命』を弄るような因果を一たび施したならば、すぐさま狂ってしまう。その程度のものでしかない。
言うなれば叡智の書とはバタフライエフェクトを認識できるだけの装置なのだ。過去を変える力も、未来を歪める力もそれは持ち合わせていない。
とはいえ、『運命』を捻じ曲げるような大それたことができる者など、それこそ彼女の友人でもある【魔女たち】か、強き運命を纏う者である【剣聖】や一部の【龍】、あるいは外から来た『彼』か。
そして──そう、【嫉妬の魔女】くらいのものだろう。
「……また、君はボクの邪魔をするのか」
ぽつりと、クピドには聞こえない声量でエキドナは呟いた。
会話しようと言いながら何事か考え込み、
「んだよ、話したいんじゃなかったのか? さっきから独り言ばっかりじゃねぇか。
──ま、強いて言うなら俺が【堕天】してるからじゃないかねぇ。俺ってばとっくに人の域外れてるからな。世界と繋がってなけりゃ、子供も作れねぇ。まったく不便な体だ」
突然、クピドが答える。
口に出してはいないエキドナの疑念に彼はどういうわけか応えてみせた。
「──へぇ。もしやそれが」
エキドナは察する。
そう、それこそがが彼の力の片鱗。
「──俺の『強欲』の権能」
果たして、それはどのような力なのだろうか。
「思考を読めるのかい?」
「厳密には違うな。俺はただ魂を見て、聞いて、触れられるだけだ。俺はあんたの考えていることが見えるだけ」
彼女の質問にクピドは抽象的な表現で返した。
「? それとこれとどう違うのかな?」
「そうだなぁ、例えば──」
「──おまえ、アクニンだなっ!!」
「……あんたが俺を排除しようとしているのは分かってても、どうやってかまではわからないところ、だな」
突然、強欲の魔女──エキドナの姿が消え去り、そこには深緑にワンピースを着た褐色肌の幼女が入れ替わるように存在していた。
「俺の苦手な幼女を差し出してくるたぁ、中々に根性ひん曲がってんな、魔女ってのは」
「──ツミハタダイタミニヨッテノミアガナワレル」
文句を垂れるクピドに、傲慢なる幼女は容赦なく【権能】を行使した。
「ん」
──だが、クピドの様子にまるで変化は起きなかった。
「なっ、なんで!」
「そりゃあ、俺は悪人じゃないからな」
驚く幼女に平然と嘯くクピド。
「むー、それなら! ──トガハクサビトナッテケッシテハナサズ!」
再び異なる権能を行使するが、
「ふぁ~」
やはりクピドに変化はなく、それどころかあくびさえしてみせた。
彼女はその結果に確信が揺らぎ狼狽える。
「あ、アクニンじゃない、のか? おまえ、いいやつなのか?」
「ま、お前がそう思うのならそうだろうし、お前がそう思わないんならそうじゃないってこった。善悪なんて人各々だろ。何が良くて何が悪いかは自分で決めな。──
偉そうに言っちゃいるが、彼の日頃の行いは悪と断じて揺るぎないものだ。
そんな彼に説教された彼女は気分を害し、──その存在感を増大させた。
「むー。おまえ、いじわるだなー。テュフォンは怒ったぞー!」
「今度は何するんだ?」
テュフォンと名乗った少女が何事か身振り手振りをすると、彼女の赤い瞳が光り輝き出し、その存在感に比例して深緑の髪が立ち昇る。
増大する気配に肌を刺すような空気感が草原を埋め尽くした。
「こうしてー、こうだ!」
「おっ? ──痛ってぇ。痛覚なんてとっくになくなったってのに、ここじゃちゃんと痛ぇんだな。てか──んだこれ」
──クピドの視界には自身の
胸を見れば、他人のだろうと自分のだろうと容易に透けて見える。
それがクピドの権能の──【特性】のようなものだった。
そうして見える自身の魂──それが無数の【鎖】に縛り付けられていた。
ぎゅうぎゅうと締め付けられれば、クピドの身体に得も言われぬ痛みが発生する。
それをしたのはまず間違いなく対面の少女──テュフォンだろう。
しかし、これはいったいどういった権能だろうか。推察するにクピドのもつ三つの権能とは系統が違う。
ならば他の四つ──否、三つのうちの一つ。
そうして彼女の言動から推測して導き出される答えは──。
「ははーん、お前さん。さては『傲慢の魔女』だな」
「──アガナエヌタイザイハシヲモッテセイサンスル」
「──うぶっ、ぉげぇぁ!」
魔女が祝詞を刻むや否や、クピドの口腔内を血反吐が満たした。
溢れて止まらない血みどろを、たまらずクピドは吐き散らかした。
吐き出したそれは、まるで命の如く、吐くほどにクピドの魂が目減りしていくのを感じた。
──どういう権能だ、これ。
やべぇ、止まらねぇ。まさか、魂吐き出しきるまで止まらねぇってのか。
すでに三十秒を超えて、吐き続けている。
息もできず、ひたすらに湧き出てくる血を吐き続ける。
とうとうその場に膝をつき、手を突き、四つん這いになって、首を垂れるように彼女の前に這いつくばった。
「……ぐ、ぬぐぐ、んぐぐぐぐ!」
一巻の終わりかと思ったその時、少女の方から歯を喰いしばるように呻き声が聞こえてきた。
「……?」
「──ぷはっ! けほっけほっ…………おまえ、なんなん、だー?? ここまでやってもしなない、なんて……こうなったら──」
テュフォンが息を吐いたと同時、クピドの苦痛が消え、嘔吐が止まった。おそらく権能の条件か何かだったのだろう。息を止めていられなくなったテュフォンは権能を解いた。
しかし、ここまでやってもクピドの魂は──百分の一程しか減っていなかった。
ならばと、テュフォンは更なる咎を罪人に与えんとして──最終手段に臨む。
「──イノチトハソノモノガツミ──……
はぁ……そこまでさね。」
テュフォンの瞳が赤く光り輝き、自分自身すらも裁く絶大な権能を行使しようとした刹那──傲慢の魔女の姿は掻き消え、代わりにそこには──明るい紫の髪を持ち、その幽鬼の如く白い肌を妖艶な衣装で覆い隠した──【怠惰の魔女】がいた。
「ぺ──ッ……あ゛ぁぁぁ、喉がイガイガする!」
「悪かったね、とは言わないよ。はぁ、もともとはあんたが悪いさね」
口の中に残った血を悪態と共に吐き捨てたクピドを怠惰の魔女が窘める。
「あぁ? ……今度は、お姉さんか。魔女もバリエーション豊かだな」
新たに表れた彼女の容姿を見て、クピドはそんな感想を抱いた。
あと胸がでかい。
「ふぅ、あたしの話なんて、はぁ、聞いちゃいないか。はぁ、やってられないさね、これだから、ふぅ、男は……」
まるで常に息切れしているかのように彼女は吐息を交えながらぼやいた。
「ほほ~、今度は『怠惰』か。これまた個性が強いこと。俺ぁ嬉しくて泣いちゃうね」
その気だるげな様子を見て、今度は【怠惰の魔女】だろうと当りを付けた。
「そうやって軽口を叩きながら警戒する、はぁ、あの子の権能もまるで意に介さない、か、はぁ、なるほど、あの子には少し、ふぅ、荷が重かったさね──なら、これならどうさね」
彼女の宣言と共に、クピドの肉体を不可視の力が襲おう。
「おおっ? おお! こ、れは、ななか、なっかっ、ぐおっ!」
突如、降りかかる万力の力。
それがクピドを押しつぶすように展開している。
クピドが全力で抗っても、まるでびくともしない。
しかし、立っている。
すぐさま潰れるようなことはない。
なんなら今にも慣れ押し返さんとしているではないか。
「……まったく、全力でやってるっていうのに、はぁ、嫌になるね」
「ぉぉおおおおお!」
「暑苦しい、面倒くさい、はぁ、あたしはお断りだよ──……」
早々に諦めた【怠惰】が姿をくらます。
そうして、新たに出てきたのは──。
「ちょっと! 私にどうしろっていうのよ!」
元気溌剌といった様子の巨乳美少女だった。
「今度ァなんだぁ? あぁ、なんとなくわかるけど」
こうして立て続けに見れば候補も絞れて来る。
「セクメトったら信じらんない! 私たちの中じゃ一番強いのに、それを面倒くさいからって! ほんと、私がいなきゃダメなんだから! ──私は『憤怒の魔女』ミネルヴァ! 名乗るほどの者じゃないわ!」
彼女は豊満な胸を前に堂々と突き出してハキハキと一瞬で矛盾した名乗りを上げた。
「さよけ。まぁた俺の持ってねぇ大罪の魔女とは。狙ってんのかね? あ、俺はクピドな。名乗る間もなく襲われてて名乗れてなかったけど。はてさて、叶うなら俺は色欲の魔女に会いたいんだがね」
それにツッコミを入れることもなくクピドは比較的冷静に会話を試みた。
「男の人ってみんなそう! すぐカーミラに会いたがるんだから! あの子本人にじゃなくて、あの子に自分の姿偽らせて自分勝手に救われようとする! そういうの私嫌い! だってあの子が可哀そうだもの!」
どうやら名前はカーミラというらしい。
話からおおよそ権能を察することができる。
「へー、姿変える系か。そりゃあいい、いろんな姿になれりゃ、飽きもないだろうしな──っと、隙あり」
肥前と話していたはずのクピドが、気づけばミネルヴァの背後へと移動していた。
「へっ?」
瞬間移動したように、ミネルヴァの背後に現れたクピドは、ミネルヴァの腰に手を添え、手を取り、顔を近づけた。
「今までは隙が無かったり幼女だったりで手を出さなかったが……俺は狙った女は逃がさねぇ主義でな。──なぁ、ミネルヴァ、ちょっと俺とイイことしないか?」
背後から顔を合わせて彼女を口説いた。
吐いた息が届くほどの距離に男の顔が近づいてきたことで、彼女の顔が赤く染まる。
「はっ」
「は……?」
「──放しなさいよ! ふん!」
「あァ? がッ──ァガガガガガガがァァァアアアあ!???」
「……え?」
憤怒の魔女。彼女の権能は、彼女が生み出すその破壊的なまでの暴力を、人を傷つけるすべての力を、治癒の力に変換すること。
彼女は、傷を嫌い、怪我を許さず、死を厭む。
そんな彼女は当然、人を傷つけることを何よりも嫌う。
彼女の手にかかれば、人類皆、皆癒しの刑にかかる。
そんな彼女の手で、今、クピドは致命傷を負ったのだった。
おいおい、魔女と致すまでの手間が凄いって。
第二回 誰のが一番見たいですかー(オはオリ主と、スはスバルとです)
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エミリア(オ)
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レム(ス)
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ラム(オ)
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クルシュ(オ)
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フェリス(オ)
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エルザ(オ)
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メィリィ(オ)
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プリシラ(オ)
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カペラ・エメラダ・ルグニカ(オ)
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ベアトリス(オ)
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シリウス(オ)
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ルイ・アルネブ(オ)
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シャウラ(ス)
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シャウラ(オ)
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ロリリア、ロリレム、ロリラム(オ)
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ペトラ(ス)
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ペトラ(オ)
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パンドラ(続きエロなし)
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サテラ?
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その他感想にどうぞ