『レムと偽兄様』☆
(ここは、どこ?)
記憶が判然としない。
レムは直前まで自分が何をしていたの思い出すことができなかった。
体が動かない。
意識だけがそこにあった。
――姉様。そうだ、姉様はどこに……
ふと、生まれた時から魂で繋がっている双子の姉を思い出した。
姉様ならこの不可思議な状況をどうにかしてくれるのではないか、レムはそんな期待を込めて姉を求めた。
だが、そんな彼女を否定する誰かの声がかかる。
「――君に姉はいない。君にいるのは僕……
瞳からハイライトを失った青色の少女、彼女の前には一人の男がいた。
その姿は判然とせず、老人のようでもあり、中年のようでもあり、年若い青年のようでもあった。
うつらうつらとする思考の中で、レムは男の声だけがスーっと頭の中に入っていくのを感じた。
「ぁ……? ……えさま? んえ、さま…………あれ? わた、しは……」
男の言葉とともに、頭の中からさきほどまでの思考が消えていく。
いったい自分は誰について考えていたのだろうか。
誰か、そう。こういうときに頼れる誰かについて考えていたはずだ。
それはいったい……
そこまで思考が及んだところで、再び声がかかる。
「ほら、呼んでみて。──僕はここにいるよ」
男の人の声だ。
そう、優しくて慈悲深くて、レムが
レムが敬愛する存在なんてこの世に一人しかいない。
血を分けた双子、その片割れ。
「…………にいさま?」
レムは自然と、そう口に出した。
すると驚くほどすんなりと受け入れることができた。
それは安心、安堵。愛するお兄様が傍にいてくれていることによる安心感だ。
「そうだよ、君の君だけの兄様。レムが大好きで大好きで仕方ない、兄様だ」
耳元で囁くように掛けられる言葉はレムの頭の中で何度も反芻された。
(『大好き』『大好き』『大好き』『大好きで大好きで仕方がない』『レムは、兄様が大好き』)
それが心の奥深く、魂に刻み込まれる。
まるで生まれた時からそうであったかのように自然に、レムは『いないはずの兄様』を心から愛していた。
「あ。ああ、あぁぁぁぁぁぁ――」
姉との思い出は兄との思い出に。
姉との絆は、兄との情事に変わり。
あるはずのない兄妹の契りが身体に刻まれていく。
「あ……兄さま……」
「ああ、僕だよ」
「兄様…………兄様、兄様、兄様ぁぁあ!!!!!」
「…………よかった。上手くいったみたいだ」
瞳から光を失っていたレムの表情は一転、歓喜を露わにした。
それは『大好きで大好きで仕方がない兄様』といられる喜び。
レムの顔は刹那の間に蕩けだす。
頬は紅潮し、瞳は熱を帯び、全身からハートがほとばしる。
(兄様っ♡ 兄様っ♡ 兄様っ♡)
レムにあるのは血のつながった兄への恋慕と情欲だけだ。
改ざんされた記憶の中で与えられた兄との『体の繋がり』に依存し、堕ちきり、完全に服従していた。
レムにとって兄とはまさに絶対の存在であり、絶対服従の存在だった。
その勢いのまま、レムは見知らぬ男……いいや、愛してやまない最愛にして唯一の肉親である兄様に勢いよく抱き着いた。
たわわに実った素晴らしいおっぱいが彼との間でふにゃりと潰れる。メイド服越しとはいえ、そこに感じる熱と感触は男にとって垂涎ものだ。
ぎゅっと互いを抱きしめる兄妹。
レムは兄の懐に顔をうずめて、匂いを擦り付けマーキングする子犬のようにすりすりと頬を擦り付けた。そうして、一通り満足すると安心したように微笑みを浮かべ全身を兄に預けた。
対して、兄となった男は気が気でない。――いつ、この『催眠』が解けるやもわからないからだ。男の目的は、ただ一つ。それさえ達成できたのなら、あとは些事だ。ただ一つの望みを叶える為に、男はすべてを捨ててここにいる。
だから、
「……っレム」
「はいっ! 兄様のレムですっ!」
「…………はぁぁぁぁかわいいぃぃぃぃぃ……!!」
花咲くような笑みを向けてくるレムに、男は彼女の後ろで振られる尻尾を幻視した。その愛らしさに、愛おしさに、男は堪らず息を吐くように心情を吐露した。
レムが男を愛してやまないように、男もまたレムを愛してやまなかった。そうでなければ、こんな大それたことをするはずがない。
その声、その容姿、その性格、そのしぐさ、その瞳、その髪、その手、その指一つとっても、そのすべてが男を魅了してやまなかった。
愛さずにはいられない。欲を抱いて、希望を抱いて、乞い縋らずにはいられない。
レムという少女は男の夢そのものだ。
そして、今は『兄』である自分だけのものだ。
これだけの美少女を前にして、
男は湧き上がる欲望を抑えることなくむき出しにして……童貞丸出しの願いを口にする。
「レム、いつもの、お願いしてもいい、かな…………?」
「……もう、兄様は……」
自分の声の情けなさなど今はどうでもよかった。
それよりも今はただ、目の前にいる上物のメスに対して湧き上がる情熱を、なけなしの理性でせき止めることで精一杯だった。
この興奮が、この高揚が、この情欲が、今は何よりも最優先だ。
ごくり、と固唾を飲む音が響く。
そして、
「レムがいないと本当に兄様はダメダメなんですから。──いいですよ」
軽く、ふぁさっと、服が捲れた。
肩から紐を外したレムは上半分を脱ぎ、ブラジャーを付けてない生のおっぱいを露わにした。
色、形、張り、どれをとっても一級品で、隠すどころか両手で差し出すように仕向けられるたわわな二つの実に、男の股間は怒張しっぱなしだった。
「どうぞ。レムの、その……おっぱい、は兄様のものなんですから。いつでも好きな時に触って、揉んで、赤ちゃんみたいにおっぱいを吸ったりしても、いいんですよ?」
このおっぱいを好き放題にしていい、そういった趣旨の許可に男の心臓がうるさく脈打つ。
緊張か、恐怖か、あるいは純然たる高揚か。とにもかくにも、目の前にある立派な双丘に男は我慢の限界だった。
「……っはむ」
「あんっ♡」
それに吸い寄せられようにして、男はレムのおっぱいに恥も外聞もなく吸い付いた。
片手で下から持ち上げるように片乳を揉みながら、もう片方のおっぱいに吸い付く。その乳首は甘く、何もでないはずなのに吸うこと自体が楽しくやめられなかった。
吸って、舐めて、甘噛みして、そのたびに可愛らしく喘ぐレムが可愛かったのも一因だ。左手で持ち上げるレムのおっぱいはとても重くて、片手では覆いきれないそのたわわさに、男は好き放題、揉んで、ぽよぽよして、乳首をコリコリした。
「じゅるるる、ちゅう♡ ちゅぅっ、ちゅぱっ♡ じゅるるるるるるっ♡」
「あ♡ んんんっ♡ 兄様ぁ♡」
「レムっ、レムっ」
「もう……そんなに焦らなくてもレムはここにいますよ?」
レムの愛する者に向ける声を聴きながら、一生懸命にその乳首を吸って、舐めて、男の唾液で汚す。本来、赤ん坊にあげるためのそれを、大の男が一心不乱に吸う。
「……んっ♡ あ♡ ぁあ♡」
レムはできるメイドであり女の子だから、男に対して忖度をし、男を立ててくれる。その嬌声が本物か否かなんて、童貞には聞き分けられない。
しかし、それとは別にだんだんと固くなっていく突起に、男は歓喜と興奮を一度に感じ、より一層乳首を刺激した。
大好きな人という設定の自分に胸を弄られて、レムもちゃんと興奮しているのだ。
よかった……、そのことにいくらか安堵する男。
いくら童貞とはいえ、処女の女の子一人満足させられないなど、男として情けないのもいいところだ。
――前戯が終われば、いよいよ本番だ。
正直もう我慢できない。
まだレムをイかせてあげられていないが、男の息子がさきに限界を迎えそうだった。
このままではせっかくの機会をズボンの中に捨ててしまう。
そう思いながらも、男はおっぱいを吸うのがやめられなかった。
右乳首を吸って、次は左を。片手ではわしずかむようにおっぱいを揉んだり、乳首を転がし弄ぶようにいじったりする。
少しだけ強くつねったり、こねて、握って、こすって、吸って、またこねて。口の中で甘噛みして、舌で転がして、舌が疲れたら大人しく赤ん坊のように吸うのに落ち着く。
おっぱいを吸うことがこんなにも心落ち着くなんて、男は知らなかった。
レムのちょっと逸った心音が耳心地によく、ずっとこうしていたいとすら思った。
「――♪」
レムは、そんな男の頭を撫でる。
ゆっくり、仰ぎ見るように視線をあげると、小さく微笑む女神がそこにいた。
「…………ぁ」
怖い。
これを汚すことが怖いと、そう思った。
だが、そんな恐怖心すらも今は……
「…………レム」
「はい」
「服を、脱いでくれ」
「………はい」
そうして――。
◆◇◆
「あっ♡♡ あん♡♡ 兄さま、兄様、にいさまっ♡♡」
「れ、むっ、れむっ、れむっ!」
腰を振り、その柔らかな臀部に骨盤を叩きつける。ぱんぱんパンパンと継続的に永続的に定期的に淫らな音が響く。
かたやメイド服にノーパン、ノーブラの痴女。かたや下半身だけ裸の露出狂。
男は腰を振りながら後ろから覆いかぶさりメイドの秘部を犯していた。
腰は止まらず、その動きによどみはなく、なんの躊躇も抵抗もなく、ケダモノとなって本能で彼女を犯す。
ぶちゅん、ずちゅん、と液体と個体のこすりあう音が響く。
「あ♡♡んあ♡♡んっ♡♡ にいさま、にいさまのおちんぽ、さまが♡♡レムのなかにいますっ♡♡あつくて、あつくて♡♡レムのなかで暴れてますっ、やんっ♡♡」
「あぁっ、やばいっ、腰、止まらなっ」
彼女がしゃべっていてもお構いなく、否、彼女がしゃべるたびにより一層強く腰を打ち付けた。
(きも、ちいい、きもちい、きもちい! やばい! これ、れむ、エロすぎっ!ああっ!)
背後から見える彼女のうなじが射精を誘う。
その揺れる柔らかなおっぱいを鷲掴みせずにはいられない。
握ればすさまじい弾力がやさしく返ってくる。
いったいここに何が詰まっているというのか、ただの脂肪だなんて、そんなことはもはやありえない。
そのかたくしなやかにいきり立つ乳首をいじることのなんと心地いいことか。
握って、潰して、こりこりして、いじめたくなって仕方がない。
「あっ♡♡いやっ♡♡にいさまぁぁ♡♡」
そのたびに彼女が喘ぎ、こちらに振り向き、淫らな顔でほほ笑む。
その瞳は濡れそぼり、はーとまぁくが浮かび、淫欲に沈み、あごには涎をたらし、甘えた声であえぎ散らかす。
脳が焼ききれそうだ。
興奮と高揚と至上の快楽に侵されている
(レムとやってるんだ、レムを、今、犯している! この僕がっ!)
背徳感、奪ってやったという悦楽。そして少しの罪悪感。
だが、それらは快楽の前では無に帰してしまうもの。
その程度のもの。
男の肉棒は当然生。この世界にコンドームなど存在しないのだから。
これは正真正銘の子作り。
すでにありあまる興奮で漏れ出た、大量のがまん汁がレムの中を満たしている。
それが潤滑油となり、汚しているという事実込みで興奮と快楽と腰を加速させる。
ここはベッド。いつもレムの寝ている布団。
今日も彼女はここで寝る。
自身の体液と男の汗と精液で満たされたこの場所で。
きっと寝ている間も侵されている夢を見るに違いない。
「あぐっ」
「?♡♡ あっ♡♡ あはぁあ♡♡ 出すんですね……♡♡ にいさまの、にいさまが、膨らんでいるのを感じます……!♡♡」
「ああっ、もう、我慢できない!うっ、レム!レム!!」
「はい!♡♡ 兄さまの♡♡ 兄さまの為だけの性処理妹! レムです!♡♡」
「あがっ」
「にいさま……レムの中に、あっつい子種、い~っぱぁい出して、それで」
「わたしのあかちゃんの部屋、めちゃめちゃに染めてくださいっ♡♡」
「あああああ!! えろすぎっ! 自分で言わせてることだけど、実物が言うと違うなぁもう! カワイイ! ああああああああ! 出るぅぅぅぅぅ!!!!」
どぷっ♡♡
どびゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!♡♡
「にいさまぁぁぁぁぁぁああああああ♡♡」
「うおっ」
射精とともにレムはだいしゅきほーるどの態勢に入った。
その必死さに、衝撃に、どへんたいで、どえろい妹(仮)に、興奮しない兄がいるだろうか。
どっっぷん♡♡
「へやぁぁぁ♡♡もう、いっぴゃい♡♡ なのに♡♡ まだでてみゃす♡♡ ぁぁぁあっ♡♡ ん゛ぅぅぅみゅぅぅぅぅぅう♡♡ あたまがちかちかして♡♡ れむも、れむも、いっぐッ!♡♡」
再び射精された第二射。
その量はあまりに多く、あまりに濃く、濃厚でねばついて、塊となって子宮をのノックする。
その野球ボール大の大きさの白濁の塊。
それが子宮へと密着された肉棒から大砲のごとく射精される。
その衝撃は幼い少女にはあまりある。
凄まじい快楽がレムを襲う。
脳内は混乱し、思考もできず、バカな娼婦のようにあへ顔を晒して、目をやって、べろを垂らして、その秘所から恥ずかしげもなく潮を吹く。
これをエロいといわずしてなんと言うのか。
「ッ!!」
びゅぅぅぅぅうううぅううううううう♡♡
その無様な顔に、たまらず第三射。
「ぁ♡♡♡♡♡♡」
びく♡♡びくびく♡♡
ぷしゃっ♡♡ぷしゃっ♡♡
れむの体はじっと痙攣し、聖水を吐き出し、びくんびくんとイキ散らかす。
それは反射。止められるものではない。
レムの体は今何一つ言うことを聞かない。
おしっこもイくのも止められはしない。
止めとばかりに出されたザーメンが子宮だけで吐く膣内すべてを白く染め上げる。
たとえこれからほかの男をやったとて二度と着床なんてさせない、そんな意思を感じる。
「うっ」
ぶるんっ♡♡
「っぁ…………♡♡」
そうして、やっと男はその巨大化した肉棒を妹から引き抜いた。
肉棒は本来の男のものよりもはるかに大きいものだった。
日本人離れした外国人さんの巨チン。
しかし大きさだけではない。
その硬さ、しなり、射精量。
耐久力。カリ高。熱量。
どれをとっても悪魔的な肉棒だった。
レムのまんこから引き抜かれたそれは、黒く硬く、さきっぽから残った精液を垂らし、彼女の体液と己の体液でどろどろになっていた。
湯気すらも見えてきそうな熱量をもったそれ。
それをあへっているレムの顔に近づけると。
「…………」
「…………はむっ♡♡ じゅる♡♡じゅる♡♡」
「ぁぁぁあ」
彼女は献身的に、男の肉棒を掃除し始める。
丹念に、それでいて美味しそうに、朦朧とした頭で、疲れているだろう体は動かさず、頭だけで掃除する。
「っえへっ」
「…………」
男がその熱した鉄棒のようなちんぽをその汚れない純白の頬に当ててやれば、レムはあったかそうにちんぽに縋った。
やさしく肉棒を握り、頑張ったそれを慰めるように両手で撫で、汚れ切ったそのさきっぽにキスするようにいたわるように吸い付く。
「ぁあぁああああぁ~」
「ちゅっ♡♡ちゅる♡♡ちゅぱっ♡♡」
しばらく、静を吐き出し、エネルギーを失った脳を休ませるように、互いにまどろんだ思考で戯れる。ちんぽにすがるレム。その彼女の頭をなでる男。
レムは、そんな男の撫でる手が好きなようだ。
その表情は安心しきっていて、さきほどのみだらな顔とは違い、今は子供みたいな無垢な顔をしている。
「…………」
「…………」
ちゅぱちゅぱと、その音だけが響く。
さらさらとした髪をなでる。
ところどころ精液に塗れているがそんなことは全く気にならない。
そうしてしばらくして、男はレムを抱きしめた。
「…………ちゅっ♡♡ …………にいさま……おそうじ、おわりまひた。だから、だからもっと、れむを…………っ?♡♡」
「…………っ」
抱きしめた。
抱きしめた。
ぎゅっと。ぎゅっと。離さないように、逃がさないように。
二度とは手に入らぬその色欲を満たすように。
「……にい、さま……? 泣いて、ますか……?」
ぽたぽたと、レムの額に落ちる雫。
それは。
「……っないてなんかないよ……泣くわけない、こんなに、こんなに、幸せなのに、泣くわけにじゃんっ、うぐっ」
「…………」
男は泣いている。
幸せだから泣いている。でも嬉しいからじゃない。
男は涙を流している。
悲しいから涙が出る。でもそれがすべてじゃない。
「…………大丈夫、だいじょうぶですよ、にいさま?」
「……れむ」
「わたしは、兄様のレムは、ずっと、ずぅぅぅっと! ……ここにいます。だから、だから、泣かないでください、ね?」
「…………ぁ、あぁっ、あぁああああああぁぁぁぁぁあ!!」
男は、助けたかった。
男は、彼女が好きだった。
男は、自分勝手だった。
彼女は、救われなかった。
彼女は、男なんて知らなかった。
彼女は、ただ、ひたすらに、健気だった。
「…………ごめんなさいなんて、言わない。そんなの、自己満足だからっ、ぐすっ、でも、でも、どれだけ自己満足でもっ! それでも!」
君がいなくなってしまうことに比べたら、そんな罪、些細なものだから。
「…………この夢から覚めた時、君はきっと目を覚ます。……こんな悪夢見たら、誰だってびっくりして目覚めちゃうよね…………だから、その記憶は消す。消して、君は何もなかったみたいに明日、目を覚ますよ」
「きっと、誰にも、君のほんとうの姉さまにも覚えてもらえてない。でも、君の英雄が、ちゃんと、君を覚えていて、君を待ってくれている。君の無事を願う人が、ボク以外にもいる。いいや、そいつはきっと僕よりも君を大事にしていると思う。でも、そいつは君を守れなかった。君を、レムを、救えずに、記憶を奪われ、永遠の眠りにつかせた」
これは、夢。
眠り姫となった彼女の、夢。
男は、やっとの思いで手に入れた力で、彼女を助けることを決めた。
だって。
「…………あなたは…………」
「だって、僕は君のファンだからっ」
泣いて、初めて、本音を語る。
「ね、レム、レムさん、ごめんなs、うああっ、あぁ、あ、ぁぁ、あの、あの、」
「……?」
レムの視界がぼやけ始めた。
そしてその催眠も解け始めている。
彼女の目覚めは近い。
そうして、男が消えるまでの時間もまた、近かった。
だから、最後に。
「ずっと、あなたに救われてきました。あなたがナツキスバルに向けていただけの言葉を、見て、読んで、聞いていただけの、僕は、救われました。あなたのおかげで、生きようって思えました。あなたのおかげで、前を向けました。あなたの可愛さが、あなたの健気さが、その可愛らしい声が、その姿が、想いが、行動が、ぜんぶがぜんぶ、僕を生きたいって思わせてくれました」
「?」
もう、聞こえてなかった。
レムの前で、見知らぬ黒髪の男は言った。
「…………どうか、幸せに、生きて……………………」
「……………………」
それが最後の言葉だった。
◆◇◆
「あ」
目が覚めた。
ひどい悪夢を見ていた気がする。
「ぁっ」
目の前には愛しい人。
どうにも久しぶりな気がする。
愛おしい人。
そばにいたい人。
大切な、レムの、英雄。
泣き虫で、よわっちくて、繊細で、でも、誰よりも頑張ってて、勇気があって、そうして、絵本の王子様みたいにみんなを助けてしまう、最愛の人。
彼がまた泣いている。
だから、いつも通り、レムは元気に言うのだ。
「おはようございます、スバルくん」
「レムっ!」
どうしたんですか? そんなに泣いて。また、何か辛いことがあったんですか? 大丈夫です。レムがいます。スバルくんのレムです。あなただけの、有能メイドです。大丈夫、大丈夫、スバルくんのレムは、ずっと、スバルくんのそばにいます。
泣いて笑って微笑んで、そうして抱擁を交わす。
……………………お熱いね。
うらやましいね。
ああ、でも、そのレムの微笑みを見れたから、寝覚めた彼女を見れたから、うん、まあ、僕はもう、満足した。
その傍らには、クルシュ邸に侵入し、クルシュに切られ、ヴィルヘルムに切られ、エミリアに凍らされ、フェリスに壊され、スバルに追い詰められた。
それでも、片腕を失って、両足も動かなくなって、目ももう見えなくて、髪も無様に切られちゃってはげてみえる、独りのみすぼらしい青年は、それでも。
この部屋にたどり着いた。
この部屋にたどり着き、彼女に触れた。
それを最後に、力尽きて、スバルに突き飛ばされた。
何をしたかったんだか、それだけの男。
レムに触れただけの男。
命がけで、なんでそんなことをしたのだか。
何か呪いでもと疑り、心配したスバル。
そんなスバルの前で、彼女は、なんの奇跡か。
永遠の眠り姫は、目覚めたのであった。
◆◇◆
男。名も名乗らないで死んだ男。
自分の名前を失った男。
今の名前は『サダルスウド』
男は、色欲に侵されていた。
男は、ふつうだった。
アニメが好きだった。
とある女の子に救われた。
ある日死んで、転生した。
好きな世界だった。
何の力もなかった。
これでは彼女を救えない。
力を求めた。
人生をかけて魔法を鍛えた。
そうして、ついに、死の間際に、色欲を葬ることに成功した。
そうして、色欲の力で若返った。
でも、魂が寿命だった。
急がなきゃいけなかった。
協力を取り付けてからでは間に合わない。
説明する時間はない。
急ぎ向かった。
彼女のことを思うたび、思考が色欲に侵されていった。
彼女を、自分を救ってくれた彼女を、犯したいと、そう思ってしまうようになった。
でも、きっと、それが本心だったんだと思う。
男の子だもの、好きな子と子供、作りたいじゃん。
ね?
でも、ああ、ちょっとだけ、もうちょっとだけ。
話したかったなぁ…………なんて。
これじゃあ、強欲かな。
おしまい