エロなしにつき、言うことがない。
「【腸狩り】エルザ・グランヒルテ」
「【剣聖の家系】ラインハルト・ヴァン・アストレア」
人外の剣撃が交差する。
眩い光が盗品蔵を埋め尽くし、大地震と暴風を齎した。
「おわぁっ!」
あまりの衝撃に見ていただけの俺の身体が宙に浮き、背後に吹き飛ばされた。
──テンガの背後には、崩壊し剥き出しになった木の杭があった。
え? 死ぬ?
内臓を木杭が貫通して死ぬ無残な光景を幻視した俺だったが、
「大丈夫かい?」
「あ、はい」
その背中を
──にこっ
「君が無事でよかった」
やだ、惚れそう。
鮮烈な赤髪を後ろ手に結んでポニーテールにした長身の美少女。
あまりに絢爛、あまりに優雅。
典雅という言葉は彼女の為にあると言っても過言じゃない。
「あ、ありがとう」
エミリアで美少女耐性のついているこの俺がきょどった、だと?
なんて美少女力。
なんだこの世界は、美少女しかいないのか。
最高じゃぁないですか。
「一人で立てそうかい?」
勃ちそうです。
※黙れ。
「ああ、問題ない! ありがとな!」
半勃ちがバレないうちに彼女から離れた。
「ううん、元々は僕が力加減を誤ったせいだからね。礼には及ばないよ、テンガ」
──ぐふっ
僕っ娘、だと……!?
超強くて、クールでビューティ―で、僕っ娘とは属性過多じゃあありませんかね?
これは言うしかない!
日和るなテンガ!
「俺と結婚してください」
「ごめんね。それは無理かな」
──ぐふっ(吐血)
玉砕した。
※たりめーだバカ。
「冗談はさておき、怪我はないかい?」
あ、冗談にされた。
ふざけすぎたかな。反省反省。
「ああホントに大丈夫だよ。俺らはもう友達だ。そんなに気を遣わなくてもいいぜ、ラインハルト、いや、ハルちゃん」
今適当に考えたけど、そもそもラインハルトって男の名前じゃないのか?
「! 僕のあだ名かい?」
え、何その驚いた表情。
あだ名とか慣れてないのかな。
「おう! あ、嫌だったら他の考えるけど」
「いいや、嬉しいよ! ありがとう、テンガ」
そんな可愛らしく笑うんだな。
さっきの凛々しい笑顔とはまったく別物だ。
ギャップ萌えまで備えてるとは、おのれハルちゃん、恐ろしい子だ。
「二人とも!大丈夫!?」
「エミリア様」
「エミリア」
会話に混ざってきたエミリア。
さきほどまでエルザの足を止めることに注力して貰っていたのだ。
「エミリアのおかげでモーマンタイ! エミリアこそ怪我とかない?」
「ええ……本当にありがとう。徽章を取り返せたのも、悪い人を倒せたのも貴方のおかげよ」
それは流石に違うと思うよ?
あいつと戦ったのほとんどエミリアとハルちゃんだからね?
あんまり褒めすぎると調子に乗っちゃうから。
まぁ、それはそれとしてもしかしてちょっとしたお礼くらいなら強請れちゃう?
※いい加減にしろよ。
「私にできることなら、その、さっきみたいなことも、ね? 私、貴方にお礼がしたいの」
えぇ、まじで?
ちょっと純粋過ぎません?
え、もしかしてそういうの理解して言ってる?
やっぱり処女ビッチなの? 才能の塊なの?
「──テンガ」
ぐいっと顔を近づけてくるエミリア。
可愛いなぁ。
……今日はいいや。
さっきので十分満足できた。
これ以上彼女を騙すのは忍びない。
※お前誰だ。さては賢者タイムだな。
せっかくの機会だ。ここぞとばかりに恰好付けてやろう。
「俺の名前は押鳥典雅! 女の子の誘いは断らない主義だ! エミリア、そこんとこちゃんと分かって言ってる?」
「わ、わかってるわ。その、テンガのおち──」
「ダメダメダメダメ、それ絶対人前で言っちゃダメ。オーケー?」
「お、おーけー?」
何言いだしてんだこの子は。
え?変態? 仲間なの?
童貞の女神様か何かなの?
「仕切り直して──リアって呼んでもイイかな?」
「え?」
「それが俺からのお願い」
別にお願いなんて何でもよかったけど。
なんとなく、この子ともっと仲良くなりたいと思ったから。
あだ名で呼ぶ許可を求めた。
「ふふ、もちろん! そしたら、私はテンテンって呼ぼうかしら」
「うん。却下で」
※畜生かテメー。
「えっ、ダメだった……?」
はよ取り消せ。
ガーンって顔に書いてあるぞ。
「いや、あだ名ってあれじゃない? たまに呼ぶから味が出るというか昆布出汁というか。だから今まで通りテンガって呼んで欲しいな。ダメ?」
※何言ってんだ。
だって、美少女がテンガって連呼してんのエロいじゃん。
それが目的かよ。
「わかったわ……?」
そら見ろ、ちんぷんかんぷんじゃねぇか。
「………」
あれ、何か考え込み始めちゃったぞ。
あだ名拒否されて傷ついちゃったかな。
「テンガは、どうして私を助けてくれるの?」
君がド天然処女ビッチだからです。
なんて言えるわけねぇよなぁ。
「俺がそうしたかったから。それだけだよ」
「それ、理由になってな──」
「──ごめん! 実はトイレ我慢してて今にも破裂しそうなんだ!」
突然、何かに気づいたように話を終わらせたテンガ。
「えっ?」
「ごめん、ちょっとトイレ!」
そう言って、俺は盗品蔵の出口へと走った。
「ちょ、ちょっと!」
エミリアの静止の声が聞こえるも、無視して外へ出た。
「急にどうしちゃったの……?」
「ふふ、彼はきっと貴方様に気を遣わせまいとしたのでしょう」
「そうなのかな……そっか、うん。私なりにお礼を考えておかないと」
「それがよろしいでしょうね。しかし、ルグニカでは珍しい格好の方でしたね。エミリア様のお知り合いですか?」
「ふふっ──私のお友達よ!」
月光の差す盗品蔵で、赤髪の貴公子と銀髪の美少女が微笑ましい会話を繰り広げた。
というわけで協議の結果、最強美少女剣聖ラインハルトちゃんが爆誕しました。
いつか彼女との戯れも書きたいものです。
ちなみにラインハルトちゃん、略称ハルちゃんは幼い頃のテレシアさん似の美人さんだよ。
ご要望があればifとして今の時点でも彼女とできなくはないけど……楽しみは取っておくものだしね?
あと、ハルちゃんくらいしか女の子っぽいあだ名思いつかなかったので有識者の方、可愛いあだ名のつけ方教えてください
次話が一章の最終話です。