四日目
「
エミリアとの仲もなんか凄いイイ感じだし、これはイける!
間違いなくイける!
我慢に我慢を重ねた今日、俺は彼女に告白しセフレから正式な関係へと至るのだ!
そうして、今夜、彼女と忘れられない初夜を過ごすのだ!
俺は程よい緊張と覚悟を胸にいつものように扉を潜った。
今日は素晴らしい一日になる。その確信を胸に。
◆◇◆
「魔法を教えて欲しい?」
俺はいつものように仕事の休憩時間を穏やかな風の吹く庭園でエミリアと過ごしていた。
そこで前々から気になっていたことをお願いしてみた。
そう、魔法である。
そもそも俺に魔法は使えるのか否か。
しかし、俺が本当に異世界転生の主人公であるのならば何かしらの才能はあるはず!
「それじゃあテンガの適性を調べてみるわね」
そう言って、彼女は目を閉じて何やら祈り始めた。
すると、俺の周囲に何か微かな熱を持った光の粒が集まってきた。
「わぁ、なにこれー」
「私が契約している微精霊よ。この子たちに手伝ってもらって適正を調べてるの」
「へぇ~」
暫くそうしていて、だんだんと周囲の微精霊が減っていく。
そうして最後には二匹だけになった。
オレンジ色の光を放つ子と黒い光を放つ子だ。
ちょんちょんとつつくと、触れる感触はないものの俺の指を避けるように彼女らはひらひらと舞った。
「おぉ~ちょっと可愛い」
「テンガの適性がわかったわよ」
「お、ほんと?! なになに!?」
おお、なんかわくわくするな。
なんだろ。
「陰と陽ね。すごーく珍しい……」
「ん? 陰陽? それって何ができるの?」
「陰属性は相手の視界を遮ったりとか、動けなくしたりとかできるって聞いたことがあるわね。陽属性は確か身体を強くする魔法が使えるとか」
「視界を遮って、動けなくするのかぁ……へー」
え? それ強姦専用魔法か何かですか?
危険すぎません?
陰と見せかけて【淫属性】ってこと? まじ?
「それから身体強化かぁ」
これはあれか! やはり精力増強とかもできるのかな!
こっちは当たりな気がする!
「ねぇねぇ! 魔法ってどうやって使うの?」
「ん、私は精霊術士だから普通の魔法使いとは少し違うんだけど……普通は身体の中に溜め込んだマナをゲートを通して外に出すことで使うのよね」
「体の中に溜め込んだものを吐き出すイメージ……?」
それってつまり金玉で生成したザーメンをチンポを通して一気に射精するようなイメージってことか!
※例えが最低すぎる。
──なんとなくイメージしてみると、腹の底から何か熱っぽいものが湧いてくる気がする。
それを腹から胸へ、胸から肩へ、肩から腕へと流していき──最終的に握り込んだ拳へと集めていく。
イメージだ。想像しろ。妄想は俺の得意分野だッ!
──イける!
「うぉぉぉぉぉぉおお!!! 天を穿つ一撃! ──必殺『
※うわぁ…
溢れ出す闘気。テンガを中心に風が芽吹き、莫大な力が拳へと集約していく。
それがテンガが拳を振り上げるとともに解き放たれる。
発生した突風がエミリアのスカートを捲り、凄まじい反力に地面が陥没する。
そうして解放されたそれは上へ上へと何にも遮られることなく中空を上昇していく。
そのまま天を覆う巨大な入道雲へと突き刺さって、そのどてっ腹に大穴を空け──なかった。
──というか、何も起きませんでした。はい。
俺のアッパーはそよ風を起こす程度で終わった。
「くっ、この俺が失敗しただとッ!?」
※ざまぁみろ。クソ厨二病。
「もう、そう簡単に上手くいかないわよ。少しずつ一歩一歩頑張る! ね?」
「はい……」
と、魔法へのわくわくで忘れるところだった。
魔法はついでだ。
今日の主題はそれじゃない。
「ね、エミリア」
「ん? どうしたの?」
「そそそそのっ、伝えたいことがあるので! 夜に僕の部屋に来てくださいっ!」
きゃっ! 言っちゃった!
※きっしょ。
「わ、わかったわ」
「そういうことだから! また夜に!」
んだこいつ。好きな人を校舎裏に呼び出す乙女か。
似合わなっ。
エミリアも困惑してるじゃねぇか。
テンガは一方的にそう告げて、仕事へと戻った。
◆◇◆
──ついにだ。
準備は満タン。
風呂にも入ったし、村で買った精力剤も既に飲んでいる。これで何回戦でもイけるッ!
え? 村に行ったのかって?
うん、媚薬も売ってないか聞いてみたけどあったのは熊の肝臓から取った精力剤だけだった。なんか怪しかったけど、目ぼしいものがこれしかなかったから仕方なく……。
まぁ小さな村だったからな。
でも、めちゃめちゃ有望な女の子がいたな!
確かペトラっていう子。あの子は才能がある。
また会いに行こう。
おっと、彼女とシようって時に他の女の子のことを考えるべきではないな。
今は彼女のことだけを考えよう。
あぁどうしよう。
楽しみで心臓がドクドクいってるッ。
鳴り止めッ、いや鳴り止むなッ!
※どっちだよ。
緊張するっ!
早く来ないかなぁ。
告白の言葉ももう考えてるんだ。
なんならピロートークで話すことさえ考えてる。
俺まじジェントルマン。略してOMJ。
「まずは用意した(勝手に取ってきた)紅茶で身体を温めリラックスさせる。そうしていつもより少し優しく服を脱がしていく。昨日で裸にも少しは慣れたはずだ。今日もマッサージをされるだけだと思ってる彼女にガチガチに勃起したマイサンを見せつけるッ! ぐッ、想像だけで勃起が収まらんッ! そうして彼女に言うのだ。──俺とセックスしよう、エミリア。──ってなッ!」
馬鹿かよ。ロマンチックの欠片もねぇな。
でもこれ以外思いつかなかったし。
思えば、いつもは女の子の方から言い寄ってきてくれたから俺から告白するとかしたことないし……。
※一片死ね。
「くっ、心臓の鼓動が強くなって来てやがるッ! くそっ、鳴り止めよ俺の心臓! ああクソ! 好きだエミリア!」
精力剤のせいだろうか。
鼓動が激しく、頭が熱をもってくる。
──好きだ。好きだ。今すぐ彼女を滅茶苦茶にしたい。
それももうすぐだ!
セックス!セックス!
もうすぐ気になるあの子と初めてのセックスだ!
俺の努力が実るとき!
ははっ! ばんざーい!ばんざーい!
「ばんざぁぁぁぁあああああぁぃ…………?」
……あれ?
天井が見える。
……倒れた?
なんだ、なんで──────意識が暗転した。
◆◇◆
「はっ、びっくりしたぁ……死んだかと思った!」
いやいや、そんなわけないよね。
でも、くそぅ、エミリアたんを呼んだのに寝過ごしてしまうとはっ!
これ、さてはあの精力剤のせいか?
やっぱりあんな怪しいの買うべきじゃなかったかぁ。
ま、仕方ない。それならそれで今日またエミリアを呼べばいいだけだ。
さっ、今日も朝食の準備を──────は?
そこで見えてしまった。
気づかざるを得ない──異変。
──俺の息子が、どす黒く見ていて痛々しいほどに勃起していた。
息子の目覚めと、無尽蔵に湧き上がり、思考を埋め尽くさんとするどす黒い欲望が、彼に起きた出来事を教えていた。
……………………死んだ、のか。
「…………エミリア…………」
熊の肝は精力剤ではなく鎮痛剤です。お間違えなきよう。