不調! 不調! めちゃめちゃ不調!
と、見せかけてこれが素の実力か!
アタクシ様の想像力は、妄想力はそんなものか!
否否否! へぼでもダボでも書ききって見せるんだよ!
どーぞ! エロなし!
呪われている。
そうお墨付きをもらった俺はすぐにでも村に戻ろうと扉へと踵を返そうとして……透明な壁に阻まれた。
「ぐへっ……」
思い切り顔面をぶつけてその場にへたり込み、痛みに涙をにじませながら、それをした彼女の方へと訝し気な視線を向けた。
「なんで止めるんだ、ベアトリス……」
「話は最後まで聞くのよ」
「呪われてるのが分かったんだ。誰がやったかも分かってる。多分、あの子も呪われてたんだ。なら早く助けに行かないと……!」
「──どうやって助けるつもりなのよ。お前に呪いを解く術はないかしら」
「あ」
言われてすぐに気づいた。
危ない。焦って無駄足を踏むところだった。
落ち着け。
もう死ぬわけにはいかない。そして誰も死なせるわけにはいかない。
ペトラを死なせてはならない。死なせたくない。
だからこそ、今は一度心を落ち着けろ。
深呼吸。
すぅ……はぁ…………オーケー。
まずは呪いが解けるかどうかだ。
「ベアトリス、呪いを解く方法はあるのか?」
「はぁ……発動される前の呪いであれば結ばれた紐を解くようなものかしら」
「……つまり?」
「ベティ―なら解けるのよ」
「おおっ!」
流石ベアトリス!
頼りになるっ!
ベアトリス様様だ!
「ベアトリス、頼む! 一緒に村に付いてきてくれ! 村に呪われてる女の子がいるんだ!」
「……」
俺が手を合わせて頭を下げるも、ベアトリスの反応は芳しくなかった。
というより、理解に苦しむように眉を潜めていた。
どうしたのだろう。
「……お前の話だと、呪いを掛けたのはその娘だってことになるのよ。それでなんでその娘を助けることになるのかしら」
「……確かに俺に呪いを移したのはペトラなんだろうけど、根っこの呪術師は彼女じゃないよ。絶対に」
「言ったはずなのよ。呪術師との直接的な接触は呪術の外せない条件かしら。人を介して移る呪術なんて万が一にも有り得ないのよ」
「んー、いや、俺はペトラが呪術師である可能性よりもその条件の絶対性を疑うよ」
「……理由は?」
理由。そんなの一つしかない。
「──ペトラはいい子だ。人に呪いを掛けて殺すような子じゃない」
「理由になってないのよ。それはただのお前の主観かしら。……子供の見た目だからと言って見た目通りの年齢とは限らないかしら。お前が騙されてるだけかもしれないのよ」
「ペトラはペトラだよ。子供とかじゃない」
子供とて嘘はつく。人を殺すような子供だって世界のどこかにはいるだろう。
だが、少なくともあの子はそうじゃない。
少しではあるが身体を交わしたからこそ分かる。
あの子は、元気で溌剌で、ちょっとおませな普通の女の子だ。
「あの子はいい子だった、ベティ―とおんなじだよ」
「…………その言葉で余計不安になったかしら」
「えぇ!? なんで!?」
説得力を増す為にベティ―を引き合いに出すと余計煙たがられた。何故だ。
しかし、ベティは一つ納得したように息をついてから、開いていた本を閉じて席を立った。
そのままこちらへと近づいてきた。
「ま、いいかしら。そこまで言うならもうとやかく言わないのよ。──腕を出すかしら」
「え?」
「呪いを解いてやるって言ってるかしら。早くしないと村の娘が危ないのよ、さっさとするかしら」
ベアトリスの言葉に一瞬思考が止まり、すぐさま理解して身体が動いた。
思わず笑みを浮かべて確認に問う。
「おぉ! てことは村に一緒に行ってくれるのか!?」
「はぁ、仕方なくなのよ」
「ありがとう、ベティ!」
「うぎゃー! 離すのよ! 時間がないって言ってるのが分からないのかしらっ!」
仕方なく、そういうベティに思わず感じ入り、勢いのままに抱き上げた。
時間がないのは分かっていたが、ツンツンしながらも付いてきてくれるというベティが可愛くて、愛おしくて抱きしめずにはいられなかった。
「ありがとう、ベティ。君がいればすっごく頼もしい」
「……ふん、お礼を言うのははまだ早いかしら」
可愛い。
謙遜しながらも照れたようにぷいっと顔を逸らすベティが可愛くて、もう一度抱きしめた。
ぎゅっと、力強く。
彼女の体温故か、胸の奥がとても温かかった。
◆◇◆
「というわけなんだ。だからもう一度村に行かせて欲しい」
ベアトリスの説得を終えて、次に説得を試みたのはラムだった。
この場にはレムもいる。
「村に行きたいというからお使いに出してみれば、頼んだもの何一つ買わずに帰ってきて。その上まだ村に行きたいというの? いったいどういう了見なのかしら」
「いやほんとそれについてはすみませんでした」
俺は土下座して謝った。
マジで本当に冗談抜きに忘れていた。一連の事件の犯人を突き止めることに意識を持っていかれてお使いやらなにやらの口実のことを完全に忘れていた。
「でも、今言った通りだ。村に俺を呪って村の女の子も呪った呪術師がいる。はやく止めないとその子も、村も危ないんだ。だからもう一度村に行かせて欲しい」
「……呪われたという根拠はあるの?」
「それは──」
「それはベティーが保証するかしら。こいつは間違いなく呪われていたのよ。まあ、その呪いはベティーがもう解呪してしまったけど」
「ベアトリス様……貴方も村に行くおつもりですか?」
「本当に仕方なくなのよ。ベティがいなきゃ呪いの解呪は不可能かしら」
ベアトリスの仕方なくといった振舞いにラムは何を思ったのか。
彼女は黙り込んで何事かを考えているようだ。
そんな彼女に俺はダメ押しで懇願する。
「……」
「頼むラム、もう一度村に行かせてくれ」
「……どうして」
考え込むラムの代わりに口を開いたのはレムだった。
「どうして、そこまでするんですか? 村に行ったのは今日が初めてのはずです。なのに何故、無関係と言ってもいい村を助けようと思うんですか?」
「レム……」
そう彼女の名を呟いたのはラムか、俺か。
その問いに対する答えなんて決まっている。
「困っている人たちを助けることに理由がいるのか?」
「それは……っ」
「──なんて返しは卑怯だよな、すまん」
咄嗟に浮かんだ理由は
人間そう単純にできていやしない。
何故、出会って間もない人間を助けようとするのか。そこに何の理由もないなんて怪しいし、胡散臭い。俺は少年漫画の主人公でも何でもない、ただの一般人だ。凡庸で平凡で……ヒーローなんかじゃない。そんな奴がそんなセリフを吐いたって信用されない。
口からデマカセの口だけ男にしかならない。
だから、
「俺は女の子が好きだ。優しいし、可愛いし、笑っている姿を見るとすっごく嬉しくなる」
女の子の笑顔が好きだ。この場では言えないが、本当は気持ちよがってる可愛い嬌声も好きだし、柔らかい身体も、気持ちいい身体も、いい匂いのする身体も、全部が好きだ。
女の子に貴賤はない。幼くてもツンツンでも毒舌でも無口でも熟していても、年老いていようと。
俺は女の子が好きだ。それは理由なんて付けられるものじゃなくて、きっと生まれながらのものだ。
「笑顔にさせたいと思う。笑っていて欲しいと思う。だから、もし困っている女の子がいたら助けたいと思う。俺は俺にそう思わせてくれる女の子が大好きだ」
本音で、本心で、本当の気持ちを伝えよう。
疎まれようと、キモがられようと、それが俺なのだから。
言い訳はしない。俺の素直な気持ちを伝える。
「だから、村にいる未来ある女の子たちを見殺しにはできない。死なせたくない。助けたい」
これがレムの満足のいく答えになっているかは分からないが、これ以上の理由はない。
これこそが俺の生きる理由であり、生きがいなのだから。
「……変態ね」
「……変態ですね」
「変態かしら」
そうして返ってきた反応はやはり辛辣なものだった。
だが、
「……いいわ。正直に話したようだからお使いをサボったことは許してあげる。その代わり──村にはレムも連れて行きなさい」
「え……姉様?」
「村の危機に二人だけで行かせるわけにはいかないわ。ロズワール様がご不在の今、ラムは屋敷を離れられない。付いていってはあげられないわ。だから代わりにレム、貴方が行きなさい」
「私がですか……? でも……」
レムはいつもならラムの言いつけに対し即答していたが、今は言いよどんでいた。ちらりとその視線が俺とかち合う。原因は俺か?
俺からも何か言うべきかと口を開きかけたところでラムが重ねて言った。
「新人一人じゃ心配だから貴方にもお願いしたいの。──私のお願いを聞いてくれる?」
「……わかりました。姉様の言いつけとあれば」
どことなく雰囲気を変えたラムが、じっとりと視線を合わせて頼み込んだ。
それは多分、いつものようなメイドとしてのラムではなく【姉】としてのラムのように思えた。
その違いを察したのか、レムもまた素直に受け入れた。
それに対して俺も期待を込めて言った。
「テンガって呼んでよ、ラム。新人とかじゃなくてさ」
「なに? いやらしい」
「えぇっ!?」
名前で呼び合うことはどうやらいやらしいことらしい。
じゃあ俺がいつもしていることはどんだけ破廉恥なことなんだ。
……いや、十分破廉恥なことだったわ。反省しよ。
兎にも角にも村に行くメンバーは決まった。
まだそんなに時間は立ってないはずだが、それでも少し時間を消費しすぎた。
急がなければいけない。
「んじゃ、ちゃっちゃと村に行こう! 時間がない!」
「わかりました」
レムを加えて、俺とベアトリスの三人は屋敷を出て村へと向かった。
こういう何でもない話のタイトルが一番難しい。
なんとか明日も投稿できるよう頑張ります。