~side紗夜~
みなさん、こんにちは。前回に引き続き氷川紗夜です。私たちは愛しのダーリンこと春希さんのライブを見に来ていたのですが……
デェェェェェェェェェェン!
「|Союз нерушимый республик свободных~
!?
「こ、これは……ソ連国歌ね!」
……とまあ、このようになぜかソ連の国歌をバンドアレンジで演奏し始めたのです。なぜソビエトなんですか?何度も聞きます、なぜソビエトなんですか?あと白鷺さん、なぜそんなに嬉しそうなんですか?
『|Да здравствует созданный волей народов~!
いや、なんでみんな歌えるのよ?そんな君が代を歌う感覚で歌うのやめなさい。
「紗夜。なんで彼らはソ連国歌を演奏できるのかしら?」
「わかりません、私に聞かないでください」
そんなやりとりをしていると、いつの間にか曲は終わっていました。次は何を歌うのかしら……いけない、気になってしまうわ。私はもうこのバンドの魔力に取りつかれてしまったのかも。
「次の曲でラストです!最後はみんなが踊ったことのあるあの曲でシメるよ~!」
難波さんが高らかにそう宣言すると、メンバーが移動して、なぜか今橋さん、谷町さん、法円坂さん、難波さんの四人が楽器を置いてステージの一番前に出てきました。
「構えぇぇぇっ!」
そして、法円坂さんの掛け声で四人が一斉に足を90度に開き、手を前に出して静止します。このポーズ、どこかで見たことが……
~♪
エレキギターが音色を紡いでいく。でもこの音色の裏に何か別の音があるわね……もしかして、三味線かしら?ということは、この曲もしかして……
「そう、今日最後の曲は、子供のころ誰もが運動会で踊った名曲……『TAKIOのソーラン節』だぁ!」
「ハァ、ドッコイショ ドッコイショ!」
やっぱり!予想外のチョイスがここできたのね……さっきのソ連国歌と全然違うジャンルじゃない。もうテンポが乱高下しすぎて訳が分からなくなってきたわ……
「ヤーレン ソーラン ソーラン ソーラン
ソーラン ソーラン (ハイハイッ!)
声を嗄れよと 唄声上げて
腕もちぎれよ 舞姿 チョイ
ヤサエ エンヤー
サーノドッコイショ!」
そういえばこの踊り、小学校の時日菜と一緒に運動会で踊ってたわね……懐かしいわ。多分、皆その記憶が呼び起されてるから一番の盛り上がりを見せているのね。
「ハァ、ドッコイショ ドッコイショ!」
『ドッコイショ ドッコイショ!』
「ソーラン ソーラン!」
『ソーラン ソーラン!』
道修さんがマイクを振れば、観客もそれに応えるがごとく掛け声を上げる。でもこの人たち適応力ありすぎじゃないですか?よくソ連からここまでテンション合わせられたわね。
「オラが多喜雄のソーラン節は
今じゃ北海道の 南中節よ
ヤサエ エンヤー
サーノドッコイショ!」
「さあいくぞぉ!ラストだァ!」
会場内のボルテージも最高潮に上がっていく。ラスサビに入ると横一列に並んでいた陣形が網を持ち上げるような動きをとりながら徐々に道修さんの周りを取り囲むような形に変わっていきます。歌唱パートが終わると、今度は道修さんも輪の中心で踊りに参加し始めました。
『ハイハイハイ!ハイハイハイ!』
道修さんの動きに合わせて観客全員が同じ動きをしてますね。これ、最早一種の集団催眠なんじゃないかしら。あ、曲終わったわね。最後はそれぞれがソーラン節の中であった踊りのポーズで締めて……
「あぢゅー!」
ええっ!?最後の最後で噛むんですか!?ちゃんとアデューって言えばかっこよかったのに!?こうして、波乱に満ちたライブは終わりを迎えたのでした……
~side春希~
「最後すっげー恥ずかしかった」
「あははっ!いいじゃないっすか、逆にラーヒの名前覚えてもらえるっすよ?」
「そういうので覚えてほしくなかったんだがなぁ」(^^ゞ
ライブが終わり、俺らはCiRCLEのラウンジを借りて打ち上げをやっていた。1stライブだけあって緊張とか疲れとかでみんな汗だくになっていたが、その表情はすがすがしいものだった。これならあのオーナーにもやり切ったと見てもらえるんやないやろか?
「ハァイみんな!ケイ姉印の浅漬けよぉ!たんと召し上がりなさい!」
そして登場。ケイ姉特製料理の一つ、浅漬け詰め合わせ。こいつの料理はとんでもなく美味く、あのリサとの料理対決でも勝利したほどなので腕前は本物や。
「どう?瑠理香ちゃん、ライブ終わりのきゅうりの味は」
「むまいむまい」(´~`)
「良かった~」
さらさに感想を聞かれて、緩み切った顔と声で応える瑠理香。ちなみに彼女の好物はきゅうりである。緑っぽい髪の毛とも合わせて河童とは言っちゃいけない。
「めっちゃご飯に合うなこれ!」
「あ、晃。そのご飯はどこから?」
「これ?リュックの中に保温式のミニ炊飯器があってそこから持ってきてるんだよ、今日はみずかがみだぜ!」
「そ、そうか……」
とまあ、このようにアンリミのメンバーは一癖も二癖もあるやつらばかり。『常識を超えるバンド』を目標に掲げて集った最強の仲間である。
「それじゃあ、アンリミの船出を祝して乾杯しますか」
「おk」
「じゃあ、ジョッキ持って……せーの」
『かんぱーい!』
それからわいわいと打ち上げは進み、時刻は9時半。そろそろ帰らんと条例に引っかかるということでお開きになった。
「んじゃ、そろそろ帰ろうか」
「せやな……」
「おーい、春希~」
「り、リサ!?」
CiRCLEから出て来るや否や、ほかのみんなと帰ったはずのリサが駆け寄ってきた。もしかして待っててくれてたんやろか?
「あら今井ちゃんじゃないの!こんな遅くにどうしたのかしら?」
「えーっと、春希を迎えに……」///
「ほう……ふふっ、そういうこったね」
「熱いっすね~二人とも」
「ほれほれ、彼女さんがお待ちかねだぞ」
「か、からわんでぇな」
ちなみに、アンリミのメンバーには彼女関連の話についてはすべて説明済みである。まあ、最初はめちゃくちゃ驚かれたが、『でも幸せならokです』と、どっかで聞いたことある言葉で受け入れてもらえた。おいそこ、やさしいせかいとかやさいせいかつとか言わない。
「じゃあ、春希は連れて帰りますね」
「ん、頼んだ~」
「またなー」
「かたなー」
「さらしきー」
……なんか約二名変なこと言っとる奴らがいるが気にせんとこ。
「はーい、お疲れ様♡春希のDJカッコよかったよ♡」
そして、家に帰ればリサのハグ攻撃が待っていた。緩み切った甘声とも相まって、疲れた身にリサの優しさが染みわたっていく。
「ん……それにしても、ようあのセトリで盛り上がってくれたなぁ。自分でも驚きや」
「確かに、電気グルー〇と国歌とソーラン節組み合わせるバンドなんて、世界中どこ探しても春希さん達のバンドしかいないんじゃないの」
「あれ、蘭おったんや」
「リサさんの胸にうずめてて見えなかったんでしょ」
「あっ、せやった」
ずっと顔を胸にすりつけてたので視界がぼやぼやだが、あの特徴ある赤メッシュが見えてようやく蘭だと分かった。
「んで?どうしたん」
「いや……今日のライブって全部カバー曲だったでしょ?オリジナル曲って作ってないの?」
「ない」
「「え?」」
「ない、うちはカバーバンドや」
「え、一曲もないの?」
「うん、作曲できる奴がうちのバンドにはおらん」
「あれだけバンドアレンジできてたのに……」
「一回なぁ、オリジナル曲は全員が一曲ずつ作ってみたんだが、歌詞が全然心に響かんくてこらいかんわって」
「聞いてみてもいい?」
「え、別にいいけど」
蘭の頼みに応えて、スマホに保存していたデモ音源を聞かせる。最初の伴奏までは蘭も「うん……」と悪くなさそうな反応を示していたが、歌詞が出てくると首をかしげ出し、曲が終わると眼の付け目を抑え始めるという始末である。
「……作詞教えよっか?」
なんかものすごい心配そうな表情で見つめられてるんですが……
「いや、ごめん。なんか逆に心配になってきちゃって……」
「なあに、心配せんでええよ。何でもカバー出来ることこそが俺らのアイデンティティなんやから。作詞はうちらのバンドではそんなに重要やないし」
「そう?ならいいけど。でも、教えてほしかったらいつでも教えてあげるから言ってよ?」
「おkおk」
「……」
「……」
「……あれ、帰らんの?」
「別にいいじゃん、あたしの勝手でしょ」
「あれ、蘭もしかして春希とイチャイチャしたいの?」
「!!?そ、そんなわけじゃ」///
リサの突然の援護射撃に蘭は慌てて否定するが、顔が真っ赤っかやから全く説得力はない。どうやらほんまに俺のそばにいたかったみたいや。
「別にええよ、俺も蘭と最近あんまり話せてなかったし」
「……ありがと。じゃあ、お言葉に甘えて……」
このあとめちゃくちゃセッ(ry