新世界線
エロ要素特になし
ゴッホちゃん、誕生日おめでとう!
奴隷
わたしは、クリュティエ・ヴァン・ゴッホ。かの高名な画家、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホと同じ姓を持ち、オランダに生まれはしたが、彼とは関係ない。同姓というだけだ。・・・・・・・まあ、ゴッホの姓を受けて生まれた影響か、彼と同じ道を歩むことになったのだが。
わたしには彼と同じ様に弟が・・・・・・・テオドルス・ヴァン・ゴッホがいる。昔から絵以外に興味がなく、半ば世捨て人のようになっていたわたしは、テオドルス・・・・・・・テオに多くを助けられた。そのおかげで今はそこそこ成功した画家として食べることが出来ている。
そんなわたしだが、近年はゴッホに倣って日本に住んでいる。彼はニホンに訪れたことはなく、ベルギーで出会った浮世絵からニホンを夢想しただけだ。しかし、わたしはそんな彼の絵に惹かれた。だから、気になる。そこまで彼を惹きつけた日本が。そういう理由で日本で絵を描き続けている。
これは、そんな日本でのある出逢いだ。
ある日、わたしはアイデア探しついでに街を散歩していると、道に迷ってしまった。わたしは人見知りで、外出する時はフードを被っているから、視界が悪くてよく迷うのだ。
「エヘヘ・・・・・・・ここどこ・・・・・・・暗い・・・・・・・助けてテオ・・・・・・・」
暗い場所に迷い込んでしまい、怖くてついここに居ないテオに助けを求めてしまう。とりあえず明るい場所に行けば戻れるだろうと思い、明るい方向に向かう。しかし、元の道に出ることは出来なかった。
「いらっしゃいませ・・・・・・・」
「・・・・・・・エヘヘ、すいません・・・・・・・ここどこですか・・・・・・・」
どうやらわたしは、闇市というものに流れ着いてしまったらしい。平和で有名な日本にこんな闇市があったとは驚きだけど、幸いにして優しい人が案内してくれた。明らかに違法な市場で優しいというのも変な話だが。まあお金だけはあるし何か安いものでも買えばこのまま何も買わずに帰るよりは穏当に帰れるだろうと闇市を回る。・・・・・・・本当は、間違いと言うだけの勇気が無かっただけなのだけど。
そして、出逢った。
それは奴隷の区画だった。闇市だけでも驚きだが、まさか奴隷まであるとは。正直言って人見知り通り越して人間不信なわたしが奴隷を買っても困るだけなので早く次の区画に行って適当な品でも買おうとした時。
ふと、目に止まる。
それは、明るい髪の少女だった。身なりは商品らしく綺麗に整えられている。・・・・・・・少女ということは、そういうことに使うのだろう。まあ、容姿は正直関係ない。わたしが惹かれたのは彼女の表情だった。他の奴隷は大なり小なり反応を示すのに対し、彼女は明らかに場違いなわたしになんの反応も示さない。まるで人形だ。
看板から名前を読み取る。
「藤丸、立香・・・・・・・」
「おや、そちらの商品が気になりますか?彼女は確か・・・・・・・どこにでもいる普通の家庭の一人娘ですね。事故で家族を亡くして天涯孤独の身になったところを保護されたとか。ああ、後基本的に無口ですね。命令は答えるように調教してるのでご安心を」
「なる、ほど・・・・・・・」
保護なのに出品されているとか矛盾を感じずにはいられないが、正直どうでも良かった。わたしの中に生まれた感情は一つ。
──────彼女が、欲しい。
理由はわからない。ただ彼女はわたしの中の画家魂に刺さった。彼女を描いた絵を描いてみたいと思うほどに。とにかく彼女が欲しい。
そう思ってからの行動は早かった。すぐに購入の旨を伝える。まぁそこそこ値段が張ったが、画家として築いた財産からすれば許容範囲だ。契約書など諸々の手続きを終えて彼女を自分のモノにする。
「・・・・・・・エヘヘ、よろしくお願いします・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
彼女は言葉を返さない。ただ虚に見つめ返すだけだ。
なんだか言いようのない高揚感、まるで玩具を手に入れた子供のような気分で闇市を出て帰路に着く(彼女は後で送られるとのこと)。・・・・・・・この時わたしは、自分の中にあるもう一つの気持ちに気づいていなかった。
──────そして、帰宅して後悔した。
なんで一時のテンションに任せて奴隷なんか買っちゃったんだろう。どう考えても犯罪じゃないか。しかも無駄に高かったし。テオやご近所さんにバレたらどうしよう。いやテオは別に一緒に住んでるわけじゃないからまだ良いか。・・・・・・・使い込みがバレたら怒られるな。わたしの築いた財産だから仕事的には問題ないけどテオは厳しいし・・・・・・・いやでもテオならきっと理解してくれる。うん、大丈夫!問題はご近所さんだ。ただでさえ変な噂が立ってるのにこれ以上変な噂を立てられたら・・・・・・・よく考えたら大して付き合いないから別に良いか。いやいやそれでもバレたらマズイだろう。いやでも彼女は新作の良い材料になりそうだし。
そんな風に後悔と自己弁護を繰り返しながらベッドでゴロゴロしていると、突然ベルが鳴る。
「ハウッ⁉︎」
恐る恐る覗いて見ると、宅配便に偽装した闇市の人と、大きな箱。
「ゴッホ様、お荷物をお届けにあがりました」
「ひゃ、ひゃい・・・・・・・」
「では、サインを・・・・・・・」
受け取り証にサインして彼女が入っているのであろう大きな箱を受け取る。
わたしの身体じゃ運べないので部屋の中に運んでもらう。
「またのご利用を、お待ちしております」
そう言って、彼らは去ってしまった。部屋に残されたのは、彼女が入ってるであろう大きな箱と、わたしだけ。
「どうしよう・・・・・・・」
途方に暮れる。数分ほどそうしていただろうか。ようやく中に人が入っているのだと思い出して、慌てて箱を開ける。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「エヘ、エヘヘ・・・・・・・」
箱には、あの場所でいた時と同じ顔をした少女が体操座りで入っていた。普通の服に着替えさせられていて、ぱっと見は普通だ。首以外。首には首輪が付いていて、そこから鎖が伸びている。そこだけが異様だが、まあ外に出す気はないし別に良い。なんか若干睨まれている気がする。
「・・・・・・・あの、すみませんでした・・・・・・・」
彼女は何も答えない。ただ、見つめるだけ。
「・・・・・・・あの、わたし、クリュティエ・ヴァン・ゴッホと言います。よろしくお願いします・・・・・・・貴女の名前は?」
あまりにも喋らない彼女に不安になって、聞いたはずの名前を訊く。
「藤丸、立香・・・・・・・」
ダメ元で訊いてみたら、答えてくれた。どうやら命令と認識されたらしい。彼女の声は、暗かったけど芯を感じさせる不思議な声だった。縋ってみたくなるような声。わたしが主人なのに。そんな気分になり、若干苦笑する。
「では、立香と。・・・・・・・早速ですがお仕事、大丈夫ですか?」
こくりと彼女が頷いたので彼女の首輪を引いてアトリエに向かう。
アトリエで意識を切り替える。
「えっと、貴女にはわたしの絵のモデルになってもらいます。あそこに座っててください。そして、なるべく動かない様に」
「わかりました」
疑問にも思う素振りも見せず行動する姿に彼女が奴隷だと改めて認識しつつ、画材を用意する。
彼女はただ座っていた。そんな姿を見ながら、鉛筆で線を引いていく。
──────結論から言えば、彼女はモデルとして最高だった。これまでも人物をモデルに描いたことはあるが、やはり拘束代という名のモデル料金が嵩むし、ずっと拘束出来る訳でもない。しかし彼女はわたしの奴隷だ。文句も言わず同じ姿勢でいてくれる。それに金を払わなくて良い、というのはとても楽だ。心理的に(そもそも彼女を買った時点でモデルを雇うより金がかかっている事実からは目を逸らす)。そして、時間など気にせずにずっと絵を描き続けることが出来る。
・・・・・・・あと、家政婦としても。奴隷として一通りの技術を仕込まれてることもあって、絵にかまけてついついだらしなくなってしまう私生活を支えてくれる。何もせずに3食出てきて後片付けも手伝ってくれる。おかげで、わたしの調子は鰻登りに良くなって行った。もう手放すなんて考えられないくらい。
・・・・・・・・・・・・・・そして、彼女と過ごす程強くなる、昏い情念に気づく。
理由は分からない。でも、この気持ちは彼女を一目見た時からあった気持ちだ。彼女を見ていると切なくなる。わたしも彼女も、女なのに。きっとこれは、奴隷と主人という関係のせいだろう。わたしは彼女を買った。その時点で、それは決まってしまった。きっと今の関係はわたしが望んだ関係じゃないんだろう。彼女とは、立香とは、別の形で関わりあいたかった気がする。それでも一度始まってしまったものを変えることは出来ない。奴隷である立香にこれを言うわけにも行かない。それはあまりに、無責任だ。行き場が無く膨れた感情をどうすることも出来ず、自分を慰める。
「・・・・・・・んっ・・・・・・・ふぅ・・・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・・」
空しい。行き場のない感情をただ処理しているだけだ。それでも感情は強くなり、胸が苦しくなる。どうすれば、良いだろうか。
そんな苦しさを抱えながら、彼女との日々は過ぎていく。
立香を買ってから1ヶ月程しただろうか。
初めは無口だった彼女だが、時間が経つにつれてわたしのダメさ加減をたっぷり認識したのか、多少口数が増えてきた。相変わらず虚な目をしているが。・・・・・・・まあ、大体は線引きした立場からの諫言とも言える言葉なので聞いてる身としては耳が痛いけど。
それでも、彼女と会話出来るのは嬉しい。少し気持ちが楽になる。
そんな、ある日のこと。
彼女の首輪を外した。別に、彼女との奴隷契約をやめるとかそういう話ではない。単純に、首輪がデッサンの邪魔だったから外しただけだ。・・・・・・・ヌードデッサンの。
いや別に性欲からでは無く純粋に彼女の裸体を描きたいと言う高尚な気持ちでいやでも他の人に見せたくないないやいやわたしは何を考えているんだだからやましい気持ちなんてなくて。
「・・・・・・・ご主人様?」
彼女のヌードデッサンを描くという行為に内心激しく動揺していたのが伝わったのか、立香が訊いてくる。それに余計動揺しながらも、どうにか呼吸を立て直し、彼女に向き合う。
「い、いえなんでもないですよ?さ、さあ始めましょう!いつも通りに!そぉれ!ゴッホジョーク!」
「・・・・・・・・・・・・・・はぁ」
嘘。全く立て直せていない。彼女にも伝わった様で、呆れたようなため息を返してくる。
彼女の裸体を描くという行為に言い知れようの無い興奮を覚えながらも、デッサンを進めていく。しばらく進めていくと、絵を描くことに意識が切り替わり、立香と自分の手以外が意識から消えていく。
数時間ほど経っただろうか。ある程度納得のいくデッサンが出来上がったので切り上げる。
「えっと・・・・・・・とりあえず、今日はここで終わりです」
「わかりました、ご主人様」
彼女が服を着始める。この時間が終わることを若干残念に思いながらも、明日からも続くのだし、と気を取り直す。
そして、彼女に首輪をかけ直す時だった。
「────────」
彼女に首輪をかけるとき、ふと不安になる。このまま首輪を付けなければ、立香が消えてしまうのではないかと。所詮わたしと立香は契約上の関係だ。その象徴である首輪が無くなれば──────と疑心が増す。心の黒い炎が鎌をもたげる。彼女はわたしのものなのだと。彼女はわたしの好きにして良いのだと。わたしに語りかけてくる。そして、わたしは──────その誘惑に、勝てなかった。
「ご主人様?・・・・・・・きゃっ⁉︎」
彼女の首輪を引く。
「ご主人様、どこに・・・・・・・?」
「──────黙って、付いてきてください」
自室へ向かう。
自分のベッドに彼女を乱暴に放り投げる。彼女の鎖を壁に打ち付けて固定する。
「ご主人様、何を─────」
「立香、貴女はわたしのものです。だから、決めました。──────貴女を、逃がさない」
「そんな、私は逃げるなんて・・・・・・・ムグッ⁉︎」
彼女の唇を無理矢理奪う。初めてのキスは、苦い味がした。
「・・・・・・・ぷはっ。・・・・・・・キスって、苦いんですね・・・・・・・」
「・・・・・・・ご主人様、何故こんなことを・・・・・・・」
「・・・・・・・口答えしないでください」
何故だか無性に苛ついて、彼女を押し倒す。
「・・・・・・・貴女だって、覚悟していたことでしょう?」
「・・・・・・・・・・・・・・それは・・・・・・・」
衝動のまま口が動く。彼女の服を無理矢理脱がす。
彼女は抵抗しなかった。虚な瞳で、こちらを見つめるだけ。
わたしを映していないその瞳は、不安を掻き立てる。その不安を掻き消すために、彼女を襲う。
「──────」
彼女は無理矢理襲われているのに、怒りも悲しみもない。ただ受け入れるだけだ。
そして、現在。
──────わたしの視線の先には、鎖で繋がれた少女がいる。
「エヘヘ・・・・・・・かわいい・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
少女は虚な瞳でわたしを見つめる。まるで、人形の様。
その視線と、彼女を縛める首輪と鎖。それが彼女がわたしのモノであるという事実を強調する。昏い情念の炎がわたしを焦がす。
「ずっと一緒にいましょうね、立香・・・・・・・」
彼女を抱きしめる。
「・・・・・・・・・・・・・・」
彼女は無言のまま、わたしの求めに応えるだけだ。
それが寂しくて、思わず抱きしめる腕に力が入る。
「ずっと、ずーっと一緒・・・・・・・だって貴女は、ゴッホの奴隷なんですから・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
昏い部屋の中、歪んだ欲をぶつける、
奴隷ネタ
ゴッホちゃんは攻め
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