まだチョコ交換出来るからバレンタインなので初投稿です
追記
今更だけどこれ別世界線の話です
「立香さま、立香さま」
「んー? どうしたの、ゴッホちゃん」
「これをどうぞ! ハッピーバレンタインなので!」
今日も日がな一日、貰ったチョコを食べてたりレポートを書いてたりで時間を潰していると、ゴッホちゃんが何やらお盆の様なものを持って入ってきた。
お盆の上にはチョコソースが掛けられたマリナードが乗っている。
そういえば今年はまだ彼女から貰って無かったなと思い出す。
ここ最近はずっと一緒に何か食べたりしてるから感覚が麻痺しているけど。
「ウフフ、いつも通りならそろそろ立香さまも胃もたれする頃だと思いまして…………」
「あはは…………」
と思っていたら、私のお腹事情を把握してのマリナードらしく、強かなゴッホちゃんに若干苦笑が漏れる。
そこが可愛いんだけども。
実際毎年サーヴァントの皆は増えるし私もそれに合わせてチョコを作ったりするから味見とかで食べる量はどうしても増えるし胃もたれの辛い時期ではある。
そんな中、あっさりとした風味のゴッホちゃんのマリナードは個人的には胃に優しくてありがたい。
…………ただ一つの悪癖を除けば。
「それじゃあありがたく頂こうかな…………って何出してんのゴッホちゃん」
「ウフフ…………毎年贈っている立香さまへのマリナードですが、そろそろ立香さまも物足りなくなってきた頃だと思いまして…………これで、ゴッホの端っこを…………ウフフ…………」
そう言いながら、ゴッホちゃんが鞘に包まれたナイフの柄をこちらに渡してくる。
当然、そんな物騒なものを受け取る理由もないので首を横に振って丁寧にお断りして、マリナードを食べる。
ここ最近はこんな感じのやり取りをずっとやっている気がする。
まあゴッホちゃんなりの好意の表し方だから別に嫌なわけじゃないし、彼女も何だか楽しんでやっている節はあるけどいきなりナイフを手渡されると正直びっくりする。
「ウフフ…………残念です…………でも嬉しい…………エヘヘ…………」
「…………全くもう」
こちらの内心に関わらずマイペースなゴッホちゃんに呆れながら、マリナードを黙々と食べる。
とは言え、彼女のいう通り若干の物足りなさは感じる。
彼女が渡してくるのは品こそマリナードだが、段々と腕を上げているのかその内容は毎年少しずつ変わっている。
具体的には、海月みたいな食感の食材が入ってればなぁと思うくらいには。
思うだけで別に彼女の肉体から切り取ろうとまではいかないが。
「いつもの事だけど、美味しいね」
あっさりした何かが足りないマリナードを食べながら、素直な感想を漏らす。
「立香さまにそう言って頂けるなら、恐悦至極の次第で…………ウフフ…………」
それに対して少々オーバーなリアクションを返してくるゴッホちゃんに苦笑しながら、マリナードを完食する。
この日はそれで終わった。
この日は。
数日後。
「終わらない…………」
およそ自分の声とは思えない様な唸り声を上げながら、レポートに挑む。
これもそれも大体厄介事が舞い込んでくるバレンタインという季節が悪い。
数日前は特に問題無かったのに、昨日あたりからいきなり加速したレポートの嵐に揉まれながら、現実逃避的にそんな益体もないことを考える。
それでもとりあえず手を動かしていると。
「立香さま、大丈夫ですか…………?」
心配そうな声のゴッホちゃんがやってきた。
視線はレポート画面に向いてるから顔は見えないけど。
「んー…………まあこのままのペースで行けたらどうにか…………何この匂い?」
つまり余裕があるわけではないので、ゴッホちゃんの方を向かずに半分生返事で応対してると、甘い匂いが鼻腔を擽る。
それ一瞬思考が中断して思わず彼女の方を向く。
そこには、一口で食べれそうなサイズのチョコレートが沢山並んでいた。
…………何故かゴッホちゃんの腕じゃなくて彼女の触手がチョコの盛られたお皿を持っていたが。
「チョコレート?」
「はい! 立香さまがお忙しいと小耳に挟んだので、糖分補給にと思いまして…………その、お邪魔でしたら下げますけど…………」
チョコレートはどれも凝った花の造形をしていて、見るだけで食欲が湧いてくる。
…………いや、食欲が湧いてくるのはちょっとおかしい気もするな。
最近ゴッホちゃんお手製のサラダを食べたせいかな?
頭の中に生じたちょっとした違和感に脳裏で理由を考えるが、しっくり来るものはなかった。
しかし疲れた私の頭は突如湧いた甘味を求めていて、すぐに些細な事と違和感を受け流してしまう。
思えば、この時すでに歯車は狂っていたのかもしれない。
「ううん、嬉しいよ! それじゃあ、お言葉に甘えて食べても良いかな? 作業しながらになるけど」
甘味を求めていた私はゴッホちゃんが作ってきた事もあって特に警戒する事もなく(だってゴッホちゃんは、変なものを私に知らせずに入れる事はしないから)チョコに手を伸ばそうとする。
「…………はい、勿論! 立香さまのために作ったので! ところで、作業しながらというのならば…………ゴッホが立香さまに食べさせる、という形ならより効率的では無いでしょうか…………ウフフ…………ゴッホ策士…………」
その時、ゴッホちゃんが触手をウネウネさせながらそんな事を提案してくる。
これが狙いだったのかと感心するけど、
「いや流石に自分で食べるよ。ゴッホちゃんが食べさせてくれるのは嬉しいけど、集中出来そうに無いし。…………まあ、これが終わったら良いけどさ」
残念ながらレポートに忙殺されてる今の私にそんな恋人タイムを過ごす時間は無い。
そんな事をやってたらレポートを落としてしまう。
その旨をゴッホちゃんに伝えると、わざとらしくショックを受けた様子を見せながらも終わったらする約束を取り付けて来た。
相変わらず強かな女の子だ。
そう思いながらまず最初に、ひまわりの形をしたチョコレートに手を伸ばした。
そのまま口に放り込んで中で噛み砕くと、花のような香りと丁度いい甘さが口の中に染み渡る。
成る程、花…………つまりゴッホちゃんの作品をモチーフに入れたチョコという事だろう。
彼女らしいと思いながら、レポートを打ち込んでいく。
その後も、チョコを片手にレポート作業を進めていく。
彼女のチョコはどれも形が違っていて、食べるたびに違う花の香りが口の中に漂う。
そのおかげで疲れていた頭も体感的にリフレッシュして、彼女が来る前よりも効率よくレポートが仕上がっていく。
同時にもっと欲しいと脳がチョコを求めて、自然に手が伸びていく。
そのせいで沢山あったチョコはどんどん減っていき、あと少しで尽きるというくらいにまでなっていた。
その時。
「へ?」
チョコを求めてお皿の上を彷徨っていた私の手がヌルッとした何かを掴んだ。
普段の私ならきっとそれの正体にすぐに気づいて、手を離していただろう。
しかし疲れた頭はソレをチョコだと認識してしまい、勝手に口へ運んでいく。
「り、立香さまそれは…………」
慌てた様なゴッホちゃんの声が響くが、耳に届かない。
何かに取り憑かれたかの様に、手にしたナニカを食べる。
その瞬間。
「…………っ」
「☆@&$€£〜〜〜〜〜っ⁉︎」
頭の中に星が大量に散る様な痺れる味が舌を蹂躙した。
刺激的すぎる味に疲れた脳が叩き起こされ、まともな判断力を取り戻す。
そして、私が食べたモノが何か気づく。
「え、と…………立香さま、これはどういう…………その、ゴッホは嬉しいですけど…………」
それは、ゴッホちゃんの触手だった。
どうやらお皿の保持に使っていた一本を私が間違って食べてしまったらしい。
慌てて口から彼女の触手を取り出すと、そこにはくっきりと私の歯形が残っていた。
「ご、ごめんゴッホちゃん! 大丈夫⁉︎痛くなかった⁉︎」
歯型が残るくらいに強く噛んでしまっていた事に驚きながらも慌てて謝罪する。
「…………ああ、なるほど…………いえ、気にしないでください立香さま…………触手でお皿を持ってたゴッホも悪いんですから…………ちょっと残念ですけど」
すると、淡い期待を裏切られた残念そうな声が帰ってくる。
「…………その、本当にごめん」
しおらしいゴッホちゃんの姿に罪悪感が高まっていく。
食べた、という行為よりかは彼女の期待を裏切ったという方面で。
「ウフフ…………それなら、遠慮せずにゴッホを食べてもらっても良いんですよ? ゴッホは立香さまのサーヴァントなんですから」
「あ、あはは…………」
まあ、ゴッホちゃんの言葉でそんな罪悪感は吹き飛んだのだけども。
彼女なりに気遣った発言だろうけど、ありがたい。
内心感謝しながら、レポートを再開する。
しかし。
「…………」
先程と違って、レポートは全然捗らなかった。
あの刺激的な味を忘れられないせいだ。
一瞬だけとはいえ味わった、あの刺激的で、サイケデリックな触手の味が。
それはゴッホちゃんが作ってくれたチョコレートの味の印象を吹き飛ばす程に私の脳に染み付いて、離れなかった。
美味しいとは口が裂けても言えない、刺激だけの味だった。
だけどそれは何故か脳裏に焼き付いている。
またあれが欲しい、と叫ぶ声が強くなっていく。
気づけば、視線が彼女の触手へ向いていた。
慌ててレポートに視線を戻すけど、気づいたらまた勝手に視線が彼女を向いている。
それを何度も繰り返す。
「…………立香さま? どうされたので?」
不自然な私の様子が気になったのか、怪訝な顔をゴッホちゃんが向けてくる。
「え⁉︎えーと…………何でもないよ?」
「…………そうですか」
咄嗟に誤魔化すけど、流石に通用しない。
じとっとしたゴッホちゃんの視線が私に突き刺さってくる。
とはいえ、彼女を食べたいという狂気的な衝動を告白出来るわけも無く。
いくら彼女がそれを望んでいたとしても、この降って湧いた衝動のままに動くのは…………不誠実だ。
それは嫌だ。
マスターとしても、恋人としても…………彼女に不誠実であるのは、私の中で受け入れられるものではなかった。
だけど衝動は強くなる一方で。
そんな制御出来ない自分の本能に葛藤していると。
「ウフフ…………立香さま、良いんですよ…………」
「ご、ゴッホちゃん?」
後ろからゴッホちゃんが触手を絡ませながら抱きついてくる。
「そんな気に病まなくとも…………立香さまの事なら、ゴッホは何でも受け入れますから…………いえ、辛口の批判とかは嫌ですけど…………」
そして耳元で囁きながら、触手をチラチラと私の目の前で蠢かせる。
完全にこちらの内心を見抜いてる行動だったが、効き目は抜群だ。
抑えていた衝動が強くなり、息が荒くなる。
「いや、でも…………」
それでも衝動に身を任せる程に理性は崩れず、うわごとのように躊躇いが漏れる。
「良いじゃないですか立香さま…………ゴッホは立香さまに食べて貰うのが嬉しいんですから…………それに、先程も言いましたけどゴッホも悪いんですから、お仕置きと思って遠慮なくイっちゃって良いんですよ?」
「…………っ」
追い討ちの様にゴッホちゃんが身体を密着させる。
向日葵の香りが鼻を擽ると共に彼女の体温が伝わってきて、衝動が理性を駆逐し始める。
「ほら、立香さま…………」
そして、トドメと言わんばかりに、ゴッホちゃんがナイフの柄をこちらに差し出した。
普段なら断るであろう誘惑。
だけど狂った衝動に襲われる今の私には、耐え切れるものでは無かった。
フラフラと手が勝手に動き、柄を握りしめる。
そして。
「ウフフ、痛い…………! でも嬉しいです、立香さま…………!」
鞘から抜いた抜き身の刃を、躊躇無くゴッホちゃんの触手に突き立てた。
元から脆かったのか、それとも彼女が何か仕掛けをしていたのか。
構えも何もあったもんじゃない私の刃を受けた触手はぐにゅりとした感触を伝えながらあっさりと千切れ、ナイフを突き立てた机の上でビクビクと跳ねる。
同時に黒い液体の様なモノが触手から溢れでる。
その悍ましい光景は、本来なら食欲など湧くはずがないモノだ。
だけど。
「…………っ」
狂った衝動に支配される私の目にそれは光り輝く宝石の様に見えて、無意識に唾を飲み込む程に美味しそうに見えた。
そして、その衝動のままに口に運び、咀嚼する。
「〜〜〜〜〜〜っ」
先程と同じ様な、サイケデリックな味が舌を蹂躙する。
しかし触手を切ったせいか先程と違ってその味はマイルドで、先程よりもはっきりとその味を認識出来る。
やはりというべきか、ゴッホちゃんの触手は普段食べている海月の味とは全く違っていてサイケデリックな刺激の中に血の様な金属質の味が混ざっている。
その味は私に彼女の身体を食べているという事実を突き付けて、逃れられない背徳に突き落とす。
一噛みする事にその背徳は強くなり、私の中に深く染み込んでいく。
そして存分に味わい尽くして、飲み込んだ後もその背徳は消えなかった。
むしろ飲み込んだ事で彼女の触手が中で跳ねている様な幻覚を覚え、彼女と一体化した様な恍惚と共に背徳が更に強くなる。
「ウフフ…………立香さま、もっともっと、ゴッホを食べて良いんですよ…………痛いですけど、痛い事がゴッホの喜びですから…………だから、もっと…………」
衝動に飲み込まれた私を更に突き落とす様に、ゴッホちゃんが耳元で囁く。
その誘惑に私は飲まれ、言われるまま再びナイフを突き刺し、咀嚼し、飲み込む。
彼女を喰らう度に甘い恍惚と背徳が身を襲い、心を溶かしていく。
それが気持ちよくて、何度も何度も彼女の触手にナイフを突き立て、満足するまでその身を喰らう。
「──────ごちそうさまでした」
「ウフフ、こちらこそお粗末さまです…………」
やがて満腹になってナイフを机に置いた時、私の手はゴッホちゃんから漏れ出る黒いナニカに染まり切っていた。
異常な光景を気にする事もなく、普段通りに彼女にお礼を言う。
彼女も同様に普段通りの笑顔で返答して、ナイフを片付ける。
すると。
「あ、れ…………?」
ゴッホちゃんの懐にナイフが仕舞われると同時に、強烈な眠気が襲ってきた。
満腹になったせいだろうか。
「立香さまはどうぞそのままで…………後は全部ゴッホがやっておきますから…………」
同時に、ふわりと奇妙な浮遊感が私を襲う。
どうやら、ゴッホちゃんに抱き上げられたらしい。
そう理解しながらも眠気はどんどん強くなり、身体の力が抜けていく。
そのままベッドに運ばれて、布団をかけられる。
それは耐えようの無い誘惑で、瞼が重くなる。
「おやすみなさい、立香さま…………今日は嬉しかったです…………出来れば、今後もゴッホを…………ウフフ…………」
そして、どこか楽しそうなゴッホちゃんの声を最後に、意識が闇に溶けていった。
翌日。
はぁ、と溜息を吐きながらマイルームの机に突っ伏す。
思い返すのは昨日の事だ。
「…………どうしてあんな事しちゃったかなぁ…………」
苦々しい後悔の味が口に広がり、喉を掻き毟りたくなる程の気持ち悪さが走る。
それに耐えきれずつい顔をあげると、視界にふと飾ってある絵が映った。
昨日私がナイフを突き立てた、
その瞬間、昨日の光景がより鮮明にフラッシュバックする。
欲望のままにナイフを突き立てた触手のぐにゅりとした嫌な感覚、溢れ出す冷たくて黒い血、そして…………
「…………ッ」
舌に深く刻まれた、あの猟奇的な味を。
ゴッホちゃんが後始末をしたのか、ナイフの跡も血飛沫も綺麗さっぱり無くなっているが、記憶は消えない。
狂気の記憶が、頭の中を駆け巡る。
だけどそれ自体は問題じゃない。
問題なのは。
「…………何で、また…………」
問題なのは、私がその記憶に何ら恐怖を抱いていない事だ。
むしろその狂気は私の中で自然なものとして定着してしまっている。
更には、ゴッホちゃんを傷つけたにも関わらずまた彼女と一つになった様なあの背徳を味わいたいと心のどこかで思うほどだ。
それが怖い。
昨日の様に、欲望のままにまた彼女を襲ってしまうのではないかと、底冷えのする冷たい恐怖が背筋を走る。
出口の無い迷路にハマっていくようだ。
まるで自分が自分でなくなっていく様な恐怖に震えて無意識に身体を抱くけど、冷たさが消える事はなかった。
その時、ピシッ、と何かを踏んだ様な足音が響いた。
視線を向けると、そこには。
「…………立香さま」
「…………ゴッホ、ちゃん」
いつものズボンを履いた、ゴッホちゃんがいた。
「あー、えーと…………こんにちは、ゴッホちゃん。どうしたの?」
正直、今ゴッホちゃんとはあんまり顔を合わせたくない。
気づいたらまた、衝動のままに襲ってしまいそうで。
だけど私の中の狂気を理由にせっかく来てくれた彼女を遠ざけるのはもっと嫌だ。
そんな思いから、誤魔化す様に当たり障りの無い挨拶をする。
「…………はい。こんにちは、立香さま」
すると、ゴッホちゃんも同じ様に当たり障りの無い返事を返してくる。
しかし。
「「…………」」
お互いに何を話せば良いのかわからないらしく、そこで会話が止まってしまう。
そのまま重い空気が流れる。
重苦しい空気の中、現実逃避気味に益体もない考えを巡らせていると、ふと妙な点に気づく。
(…………そういえば、ゴッホちゃんはどうしてそんな思い詰めた顔をしているんだろう)
そう。
ゴッホちゃんは何やら思い詰めた様な険しい顔をして、俯いていたのだ。
昨日覚えている限りだと、彼女は今している顔とは反対に、かなり明るい顔をしていたはずなんだけど。
そこまで考え至って、もう一つ奇妙な点に気づく。
そもそも彼女は、いつマイルームにやってきたのだろうか。
足音はしたけどドアには開いた痕跡はなかった。
つまり彼女は、結構前からここにいた事になる。
気配を消していただけで。
という事は、私があれこれ悩んでいたのを彼女は──────と思った時。
「…………立香さま」
重苦しい空気を漂わせながら、ゴッホちゃんが動く。
そして。
「…………どうぞ、何なりとゴッホを罰してください」
「…………えぇ?」
次の瞬間、とても綺麗な姿勢の土下座をゴッホちゃんが決めた。
あまりのインパクトの強さに、色々考えていた事が吹き飛んで思わず困惑の声が漏れる。
「えっ、と…………ゴッホちゃん? 何してるの?」
混乱の中、ゴッホちゃんの行動について推測する。
罰して、というのは恐らく彼女が昨日の事について責任を感じているという事を意味しているのだろう。
しかし、そもそも私が凶行に走ったのは私の不注意が原因によるものでゴッホちゃんに原因は無いはずだ。
いや確かに誘惑はしてたけど、それに負けたのも私なんだし。
そう思って、彼女に言葉を掛けようとするが。
「…………立香さまは、苦しんでいますよね。…………それは、ゴッホの軽々な行動によるものです。ゴッホがあの時欲を優先して、立香さまの隙に付けいらなければ。確かに、あの時は嬉しかったです。でも、それで立香さまが苦しむのなら…………止めておくべきだった。貴女を苦しめるなんて…………わたしはしたくなかった。だからお願いします立香さま。この愚か者に、どうか断罪を。…………それが、どんな罰でも」
「…………」
絞り出す様な声で喋るゴッホちゃんの告白に、言葉が出なくなってしまう。
私の想像以上に彼女がショックを受けていると、理解してしまったから。
どう言葉を掛けていいか、わからなくなってしまった。
迂闊に喋ると、彼女の弱みに付け込む様な欲望が鎌をもたげてしまいそうで。
衝動のままに傷つけるのが怖くて、動けない。
彼女も同じ理由なのか、土下座の姿勢のままぴくりとも動かない。
このまま固まっていたら、花になってしまうのでは無いかと思うくらいに。
お互いに何も言えないまま、再び重い空気が流れる。
無駄な時間が過ぎていく。
このままじゃ良くないとわかっているけど、どうすれば良いのだろうか。
踏み出す勇気が、今の私には無い。
そんな堂々巡りの思考に陥る中、ふと疑問が生じる。
私は何故、昨日の彼女の誘いを断ろうとしていたという疑問が。
そしてすぐにその疑問の答えは出た。
それは、嫌だったからだ。
衝動に身を任せて、彼女を貪るという不誠実な事が。
…………まあ、結局やってしまったんだけど。
でも、それなら今の私はどうなんだろう?
誠実なのだろうか。
衝動のままに彼女に手を出して、また同じ事になるかもしれないから動けない私は。
…………違う。
それはただ、逃げてるだけだ。
私は彼女に向き合えていない!
…………だから、行かないと。
彼女と向き合える様に。
気づけば、心の内から動く力が湧いてくる。
そう思うと同時にストン、と心の中で何かが腑に落ちる。
「…………ゴッホ、ちゃん。顔を上げて」
「立香、さま…………?」
椅子を降りて、ゴッホちゃんと同じ目線になる様にしゃがむ。
衝動への恐怖で震える手をどうにか抑えて、顔を合わせて、彼女へ踏み出すための言葉を紡ぐ。
「…………ゴッホちゃんの言うことは、間違ってない。私は今、苦しい」
「でしたら…………!」
「…………でもそれは、ゴッホちゃんのせいじゃない。私にとって、昨日の出来事はむしろ嬉しかったんだもの。昨日だけじゃなく、今もそう思ってる」
そう。
嬉しかったのだ。
彼女を食べた事自体に恐怖がないのも当たり前だ。
私はゴッホちゃんが欲しかった。繋がりが欲しかった。
不注意で彼女の触手を食べたのはきっかけに過ぎない。
狂気に落ちてしまう下地は、既に私の中に有った。
「…………立香さま?」
「…………だから、私は、私が怖い。君を食べたいという欲望のままに刃を突き立てた私が。ゴッホちゃんは受け入れてくれたけど、それに甘えて、君に取り返しのつかない事をしちゃうんじゃ無いかって怖くなる。それが嫌なの。衝動のまま、ゴッホちゃんに手を出したくない。流されるままは嫌。…………だからと言って、覚悟があるわけじゃないから、ゴッホちゃんの言うとおり苦しいんだけど。これは私の問題で、ゴッホちゃんのせいじゃないよ。…………ごめんね、情けないマスターで」
口にしてみれば何て事のない、小さな事に拘ってるなと内心自嘲するが、不思議と心は晴れやかだった。
言って仕舞えば自己満足に過ぎない事ではあるのだけど。
「…………いえ」
「ゴッホちゃん?」
しかしゴッホちゃんにとっては、そうでも無かったらしい。
彼女の小さな手が私の手を包み、青の瞳が私を射抜く。
「立香さまは情けなくなんてありませんよ。だって立香さまは、真摯に迷っていらっしゃいますから。それはゴッホにとっては…………出来ない事で、眩しい。だから立香さまは、いつも通りの素敵な立香さまです」
ゴッホちゃんの顔は真っ直ぐで、本気の想いという事が否応無く伝わってくる。
「…………ありがとう」
だから、こっちも短いながら感謝を込めてゴッホちゃんに返答する。
「ウフフ、ゴッホはお礼を言われる様な事なんてしていませんよ…………ところで立香さま」
すると、ゴッホちゃんが先程までの思い詰めた顔とは似ても似つかない、悪い顔をし出した。
「?」
「立香さまは、ゴッホの事が好きなんですよね? それも、衝動のままに食べちゃいたいくらいに」
「え? うん、そうだけど…………それが何?」
今更何を当たり前の事を言っているのだろうと、軽く疑問符が頭に走る。
「なら、ゴッホとえっちしません?」
「何言ってんの⁉︎」
そしたら、先程までの空気を吹き飛ばす様なとんでもない発言が飛び出してきた。
「何、と言われても…………具体的に言えば、ベッドの上で裸になって、お互いに…………」
「いやそっちじゃないよ! 具体的なやり方を聞いてるんじゃなくて、どうしてその…………えっちしようなんて事になるの⁉︎」
「ウフフ…………立香さまも、本当はわかってるくせに♡」
「わ、ちょ…………っ」
植物の根の様にゴッホちゃんに絡まれ、優しく床に押し倒される。
そして、耳元で静かにゴッホちゃんが囁く。
「立香さまは、ゴッホともっと深く繋がりたいんですよね? だからゴッホを求めたんでしょう?」
「ぅ…………まあ、それはそうだけど」
おかしい、そこまで直接的には言ってなかったはずだけど。
内心を事細かに見抜かれた事に、軽く動揺が走る。
「バレバレですよ、立香さま。同じ事を、ゴッホだって考えているんですから。立香さまだから、食べて欲しいんですよ? つまり相思相愛、という事で…………エヘヘ…………」
顔にでも書いてあったのか、ゴッホちゃんが丁寧に理由を説明してくれる。
なるほど、それなら何故私は彼女に夜のお誘いをかけられているのだろうか。
「さて、話を本題に戻しますと…………えっちなら、お互いに傷つかず、立香さまが悩む事も無いまま繋がれると思いませんか? まあ、ゴッホ的には昨日よりも激しく貪って欲しいとこもありますが…………」
「…………」
一理ある、と思ってしまった。
ゴッホちゃんの言う通り、そっちも確かに私の求めた繋がりと言えるだろう。
しかも血飛沫の出ない、平和な繋がりだ。
…………とは言え。
「確かにそうかもしれないけど…………」
ゴッホちゃんの提案のままに乗ってしまうのは、昨日の繰り返しではないだろうか。
それは嫌だ。
内心を示す様に、消極的な声が口から漏れる。
しかし。
「ウフフ…………別にゴッホは、今すぐしよう、なんて言ってませんよ?」
「…………へっ?」
予想外にも、ゴッホちゃんから梯子を外された。
「ゴッホはただ提案してるだけですよ? 確かに、ゴッホも立香さまと交わりたいですけど…………立香さまの意思を尊重したいですし。それに、レポートも溜まっておられますよね? ゴッホとえっちしてる場合では無いのでは? まあ、立香さまが良いならゴッホも喜んでやらせてもらいますけど…………」
「〜〜〜〜〜っ」
やられた。
自分で墓穴を掘った事に気づいて、火が出るほどに顔が熱くなる。
「ウフフ…………顔が真っ赤ですよ? もしかして、期待してました? えっちですね、立香さま…………」
「…………」
同時に、ゴッホちゃんの発言の意図に気付く。
彼女は多分、私に迷う時間をくれたのだ。
恐らく彼女なりの気遣いだろう。
…………まあ、墓穴を掘らされた事には文句を言いたくなるが。
とは言え、文句を言うのもそれはそれでちょっと微妙な気持ちになる。
だから代わりに。
「きゃ…………っ」
照れ隠しも兼ねてゴッホちゃんを押し退け、レポートの続きに取り掛かる事にした。
「…………このレポート終わらせたら、そっちに行くね」
「…………はい。いつまでも、待っていますね」
ゴッホちゃんが部屋を出る。
選択肢と考える時間をくれたゴッホちゃんに内心感謝しながら、昨日途中で止まったレポートを進めていく。
頭の中で、彼女の事を考えながら。
翌日。
「ゴッホちゃん、いるー?」
コンコン、とゴッホちゃんの部屋の扉を叩く。
すると、勝手にドアが開く。
入って良い、という事らしい。
恐らく触手か何かでも使って遠隔で開けたんだろうけど、ひとりでに開く様を見ると食虫植物に誘い込まれる虫の様な錯覚を覚える。
まあその場合、私は誘い込まれるというよりかは、自分からその身を差し出していると言えるのかもしれないけど。
そんな益体も無い事を考えながら、部屋に入る。
「お邪魔しま〜す…………」
部屋の中は薄暗く、視界が悪い。
あちこち見回すと、ベッドの上にここの主人を見つける。
「ウフフ…………いらっしゃいませ、立香さま…………」
ちょこんと、白くなった向日葵のゴッホちゃんがベッドの上に座っていた。
「それにしても…………随分と早いご到着でしたね、立香さま? もう少しかかると踏んでいたのですが…………」
「うっ…………えっと、それは…………」
ゴッホちゃんがそう思うのも無理はない。
少なくとも、昨日の時点ではかなり進捗が悪かったのだから。
実際のところ、レポートは予想外に早く進んだ事もあり、既に終わって提出済みだ。
…………まあ、早く進んだ理由の一つはこの後の事を考えていたという性欲丸出しな理由なので私は答えに詰まるんだけど。
「ウフフ…………でもそんな事、ゴッホにとってはどうでも良いですけどね…………」
しかしゴッホちゃんが追求をやめたので助かった、とそっと胸を撫で下ろす。
その瞬間。
「わ…………っ⁉︎」
いきなりゴッホちゃんの触手に捉えられ、彼女の腕に抱きしめられた。
いきなり彼女の向日葵の香りと海の冷たさに包まれて、脳が軽く興奮する。
「だって立香さまが来た、というだけでゴッホは嬉しいんですから…………立香さまは、どうですか?」
そして興奮する脳の中に、ゴッホちゃんの囁く様な甘い声が染み込んでくる。
それは私の中の狂った衝動を呼び起こす様な声だった。
だけど。
「…………っ、嬉しいよ。ゴッホちゃんがそんなに想ってくれる事が…………そして…………私も、ゴッホちゃんが好き。好きで好きで、食べたいくらい。だから、ここに来た」
今の私なら、大丈夫。
迷ったし、衝動を克服したなんて口が裂けても言えないけど今なら、自分の意思で、迷い無くゴッホちゃんが欲しいと言える。
「…………立香さまに獣の様に貪られるのも良かったですけど、こうやって面と向かって告白されるのも…………エヘヘ…………」
すると感極まったかの様にゴッホちゃんが妖しく笑い、ベッドに私を優しく押し倒す。
「ウフフ…………立香さまの想いに応えられる様、ゴッホも頑張っちゃいますね…………」
私に馬乗りになりながらゴッホちゃんが笑い、触手を伸ばす。
触手は服の上を優しく這い回り、ボタンなどを丁寧に外していく。
そして手際良く服を剥ぎ取られ、一矢纏わぬ姿にされる。
抵抗しようと思えば出来るくらいの力だったが、私は抵抗しなかった。
この瞬間を、待ち望んでいたから。
「それでは…………始めましょうか、立香さま…………♡」
いつのまにか裸になっていたゴッホちゃんが三日月の様に笑い、触手を蠢かす。
溶ける様な夜が、始まる。
始めると言ったものの、私の身体を優しく抱きしめる以外にゴッホちゃんは何もしなかった。
しかし、ひんやりとした彼女の体温が肌を通して伝わるせいで私の身体は反応して否応無く興奮してしまう。
それに加えて彼女の向日葵の香りが強く脳を揺さぶるせいで更に興奮して、五月蝿いくらいに鼓動が高まって行く。
「ウフフ…………立香さま、まだ抱きしめただけですよ? それなのに、こんなに激しく…………まずは、立香さまの緊張を解しましょうか…………ゴッホが隅々まで解してあげますね、エヘヘ…………」
「…………っ」
ゴッホちゃんが私を横向けにして、つつ、と背中を指でなぞる。
冷たい指が骨に触れて、奇妙な感覚が脊髄に走る。
そのまま彼女の指は背中全体に広がっていく。
しかし、はっきりと触っていたさっきとは違って、今度は触れるか触れないかわからない程の優しい触り方だった。
円を描くように肩の周りを弄られたり、上から下、あるいは下から上に撫でられたりと様々な方法で触られる。
最初はくすぐったさを感じるくらいだったが、撫でられる内にそのくすぐったさは徐々に快感になっていって、甘い声が漏れ始める。
「ウフフ…………♡」
「ひ…………っ⁉︎」
その瞬間、首筋に湿った柔らかい感触が走った。
その不思議な感触はゆっくりと背中を下っていく。
どうやら、ゴッホちゃんにキスされているらしい。
彼女に愛撫されて性感を呼び起こされた身体はそのキスで感じてしまい、更に深い快感に包まれる。
やがて腰にまで彼女の唇が達した時、快感に包まれる私を彼女の更なる攻めが襲う。
「この前は立香さまがゴッホをたっぷり味わったんですし…………今度は、ゴッホが立香さまの身体を味わっちゃいますね♡」
そうゴッホちゃんが言うと同時に、今度は温かいゴムの肉の様なものが背中を撫でる。
舌で舐められている様だ。
同時に、彼女の指と触手が私の全身を這う。
まるで彼女の存在を私に馴染ませる様に全身を彼女に覆われ、胸や首筋、太もも等、敏感な部位を丁寧に撫でられる。
更に。
「っ⁉︎そこ、きたな、い…………っ」
背中だけでは満足出来なかったのか、ゴッホちゃんの舌が次の場所に伸びる。
触手に持ち上げられ、晒された…………私の脇へと。
「ウフフ、汚くなんてありませんよ…………それに、立香さまのここ、美味しいです…………♡」
「〜〜〜〜〜〜っ」
デリケートな場所を舐められる事への羞恥が私を襲うが、それ以上の快楽によってすぐに上書きされる。
脇にゴッホちゃんの舌が触れると同時に、彼女の指と触手の責めが激しくなったからだ。
脇を舌で舐られると共に、乳首や陰核の周りにまで指や触手が伸びてくる。
その動きは丁寧だったが執拗で、舌の動きに合わせて焦らすように快感を高めてくる。
そして。
「…………っ、イ、く…………ぁ…………っ」
脇に舌を押し込まれると同時に、ゴッホちゃんの触手達に焦らされて興奮させられた乳首や陰核を弄られて、絶頂した。
快楽が弾け、甘い感覚がじんわりと全身に広がっていく。
同時に、絶頂のせいか興奮で力んでいた身体の力が抜ける。
「ウフフ…………立香さまの身体も解れた様で何よりです…………でも、まだまだ始まったばかりですよ…………♡」
「うん…………っ…………私も、もっと欲しい…………っ」
「嬉しいです、立香さま…………それじゃあ、今度はちょっと激しく行きますね…………♡」
そう言うと、ゴッホちゃんが私を仰向けにして上に覆い被さる。
更に。
「っ⁉︎なに、これ…………っ⁉︎」
先程の絶頂で興奮して勃起した陰核に、柔らかい何かが巻き付いた。
何かは優しく、ゆっくりと回転する様に巻きついているので痛くは無い。
むしろ気持ちいいのだが、絶え間ない刺激により絶え間なく快楽が襲ってくるので奇妙な浮遊感が私を襲う。
「ゴッホの触手です、立香さま…………♡立香さまと繋がるために、ゴッホのクリトリスと繋がせてもらいました♡」
「ん…………っ」
ゴッホちゃんがそう言って、僅かに身じろぎする。
するとちょっと引っ張られる様な感覚が走って、規則的な快楽に波が出来る。
それが癖になって、自分でも無意識に腰が動く。
すると。
「…………ッ、立香さま、そんなに激しくされたらゴッホ、倒れちゃいます…………♡」
と言いながら、ゴッホちゃんが私の身体に沈み込む。
どうやら、本当に触手で繋がれているらしい。
「全くもう…………立香さまたら、そんなに繋がりたいんですね♡なら、もっと繋がっちゃいましょう♡」
私の胸に顔を埋めたゴッホちゃんが顔を上げて、妖しく笑う。
何をされるんだろうと期待すると、両手を握られる。
指を絡める様に握られて、嬉しくて握り返すと、触手で縛られて離せなくなる。
更に乳首も陰核と同じ様に彼女の乳首と繋がって、お互いに縫い付けられた様に離れられなくされる。
「ウフフ…………これでもう、離れられませんね♡」
「…………そう、だ、ね…………っ」
ゴッホちゃんが僅かに身じろぎするだけでピリピリとした快楽が全身に走って、言葉が詰まる。
更に。
「ん、む…………っ」
止めとばかりに、唇を塞がれる。
最初は一瞬唇が触れただけだったが、触手のせいで快楽による強烈な印象が刻まれる。
それを何度も繰り返す。
キスの度に快楽が走って脳が蕩けていくと共に酸欠気味になり、空気を求めて反射的に口を開ける。
その瞬間、口内にゴッホちゃんの舌が入ってくる。
舌を絡め取られて、飴玉の様に弄ばれる。
当然、舌が弄ばれるのに合わせて触手による快楽が私を襲う。
しばらく彼女のなすがままにされていたが、ある時快楽で軽く絶頂し、身体がビクン、と跳ねる。
すると連動して彼女の動きが鈍くなった。
どうやら私からの快楽のフィードバックで少し麻痺したらしい。
その隙をついて、今度は私が貪る。
彼女の舌を絡め取り、彼女の唇を舐めたり、歯の裏を舐めたり。
好き放題に彼女を貪っていると、次は彼女がビクン、と跳ねて絶頂する。
先程の焼き直しの様にフィードバックで快楽が伝わり、私の動きが止まる。
その隙を突いて再び彼女に主導権が戻り、貪られる。
まるでシーソーの様にその流れを何度も繰り返すが、繰り返す内に彼女との境界が曖昧になっていく。
酸欠気味で快楽に蕩けている事も相まって、一体化したかの様な錯覚を覚える程に。
自我すら曖昧に混ざり合う様なその一体感は幸せな感覚で、ずっと浸っていたいと思うほどのものだった。
しかし、絶頂による一体感が長く続けば続く程、奇妙な物足りなさが湧いて来る。
もっと欲しい、と飢餓感の様にわたしに訴える。
その思いが最高潮に達した時、どちらからともなく唇を離す。
同時に触手がバラけ、奇妙な一体感が嘘の様に消え失せる。
「…………ウフフ。立香さま、まだ物足りないですよね…………」
「…………うん。もっと一つになろう?」
しかし、それに寂しさを覚える事はなかった。
お互いに、何が欲しいかわかっていたから。
「…………それじゃあ、立香さまの初めては、ゴッホがもらっちゃいますね…………♡」
気づけば、ゴッホちゃんの陰核のあたりから陰核とは思えない程に大きくなった肉槍…………いや、男根が生えていた。
その肉槍は触手が寄り合って人の形を模した様な悍ましい形をしていて、見るだけで
今からこれで貫かれ、一つになれると狂気染みた喜びが脳を支配する。
「ウフフ…………」
ゴッホちゃんが再び私に覆い被さり、肉槍を秘部に当てがう。
彼女に丁寧に快楽を刻まれたおかげで秘部はダラダラと涎を垂らしてる様な状態になっていて、当てがわれただけで悦びに震えてしまう。
更に冷たくて熱い肉槍の感触が脳を揺さぶり、早く欲しい、とねだる様に彼女を抱きしめる。
そして。
「…………き、た…………っ…………ひ、ぁ…………っ」
ゆっくりと押し広げる様に、ゴッホちゃんの肉槍が膣内に挿入ってくる。
破瓜の痛みは無かった。
代わりに快楽が脳に迸り、挿入れられただけなのに軽く絶頂してしまう。
やがて彼女の肉槍が全て膣内に収まった時、私の身体はもう離さないと言わんばかりに肉槍を締め付け、快楽を貪り始めていた。
「立香さま、キツいです…………♡これじゃ、動けないじゃないですか…………♡」
「…………っ、うそ、つき…………っ♡」
口ではそう言いながらも、ゴッホちゃんが密着する様に私を抱きしめて、更に奥に肉槍をねじ込む。
そのせいで一体感と快楽が強まって幸福感に支配され、思考が蕩ける。
「ウフフ、本当ですよぉ…………♡でも、ずっとこのままというのも味気ないので…………立香さまの言うとおり、動いちゃいますね♡」
「っ⁉︎そんなこと、いってな…………ひっ♡」
ゴッホちゃんが肉槍を動かす。
それはゆっくりとした動きで、肉槍の存在をこちらにはっきりと認識させる様な動きだった。
じっくりと膣壁を引き摺られるのは彼女に解された身体にとっては蜜の様に甘い快楽で、肉槍が膣内を貫く度に快楽が強くなる。
気づけば、自分から彼女に密着する様に身体を絡めていた。
「立香さま、もっと欲しいですよね…………♡」
それに気づいたゴッホちゃんが耳元で囁く。
私は彼女との繋がりの渇望からその誘惑に首を振る。
すると、もっと彼女の攻めが激しくなる。
触手達が先程の様に蠢いて、全身を弄くり回す。
更に唇を塞がれ、口内を彼女の舌に貪られる。
お互いの唾液が混ざり合い、甘い味が舌に広がっていく。
そうしている内に再び思考が曖昧になる様な奇妙な一体感に襲われるが、不思議な事に満足する事はなかった。
むしろまだ足りない、と叫んで、私の中にある狂った衝動を呼び起こし始める。
「良いんですよ、立香さま…………」
その思いが伝わったのか、ゴッホちゃんが唇を離す。
彼女の一部である向日葵を取り出し、その花弁を口に含む。
そして。
「ん…………っ」
再び唇を奪われ、向日葵の花弁を彼女の舌が口の中に放り込む。
しかしその勢いは弱く、拒もうと思えば拒めるくらいのものだった。
だけど。
「…………っ」
私の喉はゴクン、と動いてその花弁を飲み込んでしまっていた。
花弁が喉を通り、またやってしまったと後悔の念が走る。
そしてそれ以上に、言いようのない恍惚が身を揺らした。
その恍惚は欠けていたものが埋まるようで、私の中に満たされる感覚が走る。
「ゴッホちゃん、もっと、ほしい…………っ」
その感覚にずっと浸っていたくて、ゴッホちゃんにねだるように甘い声を出す。
「わかりました♡立香さまの仰せの通りに♡」
それに応える様に、ゴッホちゃんが首筋をこちらに向ける。
首筋に向けて、勝手に顔が動く。
そして、獣の様に歯を首筋に突き立てた。
歯が血管を食い破り、血管を通る血が溢れ、口内に鉄の味が広がる。
それは私にとってはこれ以上のない背徳の味で、夢中になって彼女の首筋に食らいつく。
「痛いです、立香さま…………♡だから、もっと激しくしちゃいますね…………♡」
「…………っ♡」
お返しと言わんばかりに、ゴッホちゃんの動きが激しくなる。
彼女を貪る背徳と、彼女に貪られる快楽が混ざり合って何も考えられなくなる。
お互いに貪りながら、快楽の螺旋に落ちていく。
そして、私が食い付いている血管と同じ様に、肉槍が脈打つ錯覚が走る。
「ウフフ…………♡そろそろ、射精ちゃいそうです…………♡何処に欲しいですか、立香さま…………♡」
ゴッホちゃんが選択肢を提案する様に囁くが、答えは実質一つだった。
返答の代わりに、より深く首筋に噛みついて彼女に密着する様に抱きしめる。
「わかりました…………♡ゴッホの全部、あげちゃいます♡」
「〜〜〜〜〜〜っ♡」
そして、肉槍が一層強く震えて、精液を吐き出した。
熱い精液が膣内に注ぎ込まれ、その熱に身体が悦んで深い絶頂に落ちる。
やがて射精が終わった時、私は絶頂の中で放心し切っていた。
「ウフフ…………♡立香さま、まだまだ終わらないですよ♡」
その隙を付くように、ゴッホちゃんが耳元で囁く。
私は悦びながらその言葉に飛び付き、彼女を逆に押し倒す。
「ゴッホちゃん、ずっと、いっしょに…………っ♡」
「はい♡」
そして、再び貪り合う。
何もかも繋がっていると錯覚するような一体感の中、意識が溶けていく。
まだ、夜は終わらない。
翌日。
「…………またやってしまった…………」
起きた時、視界に映るゴッホちゃんを見て朝から後悔の念に囚われる。
ゴッホちゃんの首筋には、私の歯型がくっきりと刻まれていて、血の跡が残っていた。
また衝動でやってしまったと、自分に対する呆れが湧いてくる。
…………しかし。
「…………よし、悩むの終わり!」
この前よりも悩む事はなかった。
ゴッホちゃん側からも貪られた、と言うのもあるのかもしれない。
だけど、それ以上に自分で決めた事というのが大きい。
自分の欲望を自覚して、それを受け入れる。
たったそれだけの事だが、それは私にとっては大きな違いだった。
傍で眠る彼女を見ながら、そっと抱きしめる。
彼女の鼓動が伝わってきて、心が弾んでいく。
これこそが私が欲しかったもの。
「…………ずっと一緒にいようね、ゴッホちゃん」
眠るゴッホちゃんに囁きながら、布団を被る。
意識が微睡み、曖昧になっていく。
そのまま、視界が暗くなり、闇に落ちていく。
「…………はい。立香さまとゴッホはずーっと一緒です。何があってもずっと一緒…………エヘヘ!」
夢か現かわからない、ゴッホちゃんの声を聞きながら。
100本目!
一年前に初めてここまで行くとは思ってませんでした。
でも行けて嬉しい
これからも色々書いていきます
続きを書くなら
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快楽堕ち(ビーストカーマ)
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カジノ敗北所有物(Wコヤンスカヤ)