※この作品はR-18です。

狂気的な恋 R18版   作:96963

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お題箱ネタの前編です
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書いてて楽しかった
後編と同時投稿です


ふたなりビーストカーマちゃんにぐだ子が敗北する話 前編

 ──────徳川廻天迷宮大奥、最深層。

 

「はい、それじゃどうぞ。時間無制限コース、楽しい宇宙(私)遊泳のスタートです」

 

 ビーストⅢ/Lとなり、頭に光の獣冠を戴いたカーマがそう言い放つと、周りから光が消えて浮遊感が酷くなる。

 同時に空気も薄れて、浮遊感と合わさって吐き気と息苦しさが襲ってくる。

 そして、何も見えなくなった。

 

「「「「マスター/主殿!」」」」

 

 幸い、ランプの精に掴まっていたおかげでシェヘラザードさん達から逸れる事はなかった。

 シェヘラザードさんの出した絨毯の上に腰を落ち着ける。

 しかし吐き気と息苦しさは治らず、視覚を奪われたのも相まって酷い孤独感に襲われる。

 だけどこの孤独感に折れたら、カーマの思い通りになってしまう。

 それだけは駄目だ。

 だから耐える為に、彼女達に手を伸ばそうとする。

 その瞬間。

 

「…………え?」

 

 足元にあるはずの絨毯の感覚ごと、彼女達の気配が消えた。

 

「…………パールさん? シェヘラさん? マタ・ハリさん? 柳生さん? 春日局さん?」

 

 慌てて彼女達の名前を呼ぶけど、返事はない。

 代わりに。

 

「ああ、あの人達ならもう居ませんよ?」

 

 カーマから予想外の返答が返ってくる。

 

「…………どういう、こと」

 

 信じられずに思わず訊き返すと。

 

「どう、と言われても…………そのままですよ? 言葉通り、消しちゃいました。もう要らないので。それに、残しておいて貴女と一緒に変な事をされても困りますし…………」

 

「…………そん、な」

 

 あっさりと。

 まるで塵を捨てる様に感慨のない口調で、絶望的な事実が返ってくる。

 その事実を否定したくてマシュ達と通信を取ろうとするも…………繋がらない。

 

「通信も使えませんよ? 接続を切ったので。それに、あの小太りさんも。まあ、人間を殺したいわけじゃないのであの人は消していませんが…………また変な事を言って場を乱されても困るので、他所に隔離しておきました」

 

「…………なん、で」

 

 あっさりと繋がりを断たれたショックに耐えきれず、意味が無いのに言葉が漏れる。

 

「なんでって…………言ったじゃないですか。私は貴女の心を折りたいだけですよ。それなのに、頼れるものがあっちゃ駄目でしょう?」

 

「…………っ」

 

 意外にも、カーマから律儀に返事が返ってきた。

 だけどそれは、私の心を軋ませるだけだった。

 きいきいと、不安が巣食って不協和音を鳴らす。

 

「でも安心してください。私がいますから。この宇宙全体で、貴女を愛してあげますから。さっきも言った通り、貴女を含めて人間はみんな嫌いですが…………貴女だけは特別です。だからほら、さっさと諦めたらどうですか? 私を羽化させてくれたお礼に、他の誰よりも愛してあげますよ?」

 

「…………」

 

 不安定な心に漬け込む様に、カーマの甘言が染み込んでくる。

 そのせいで一瞬、屈してしまっても良いかもしれないという考えが浮かぶ。

 この寒い場所から抜け出したい、温かいものに縋りたいという本能的な考えが。

 だけど。

 

『俺は、テメェを、絶対に許さない』

 

 そんな甘えた心を締め付ける様に、誰かの声が響いた。

 

「…………まだ、負けてない」

 

 まるで冷水を掛けられた様な気分に、目が覚める。

 そうだ、私は──────まだ、諦めちゃいけない。

 諦めるにはまだ早い。

 あの時(冠位時間神殿)と比べたら、まだ挽回のチャンスはいくらでもある。

 

『立て。立って戦え』

 

 胸に響く誰かの声が、心の中にガソリンを入れる。

 それはとても温かいなどと言えない、冷たくて熱い、激しい感情だった。

 だけど今は、それで良い。

 吐き気と息苦しさは収まらないけど、孤独感は紛れた。

 

「…………へぇ?」

 

 私の様子に気づいたのか、カーマが不機嫌そうな声を出す。

 

「もう頼れる仲間も居ないのに、まだ諦めないんですかぁ? 全く、無駄だというのに…………バカな人ですねぇ…………」

 

「…………」

 

「…………はぁ。ま、良いでしょう。余計な手間が増えそうなのでちょっとイラつきましたけど、結局最後は私の勝ちで終わるんですから。その時まで精々、頑張ってくださいね?」

 

 抵抗の意思を見せた私に呆れたのか、カーマの気配が離れていく。

 そこから、私とカーマの根比べが始まった。

 

 

 

 

 

「…………(暗い)」

 

 私は宇宙と化した昏くて寒い大奥の中、一人漂っていた。

 カーマの言う通り、この場所には何も無かった。

 手を伸ばしてもどこにも届かない。

 目を開いても何も見えない。

 耳を澄ましても何も聞こえない。

 何かの匂いを感じ取る事もない。

 何かを話そうとしても響かない。

 味覚以外の五感全てを奪われた様な状況に、一人ぼっちで閉じ込められた孤独感も相まってさっきまで燃えていた火が縮んでいくのを感じる。

 …………だけど、まだチャンスはある。

 カーマはこう言った。

『私は貴女の心を折りたいだけ』と。

 それは逆説的に言えば、私にこれ以上の危害を加える気がないという事の証明だ(希望的観測だけど)。

 それなら、後は心の勝負。

 私が耐えれば、その時間でマシュとシオンがきっとなんとかしてくれるはず。

 というか、そう信じるしかない。

 全てが綱渡りの様な甘い予測だけど、諦めるよりかはマシだ。

 だから、耐えないと。

 …………とはいえ。

 

「…………(正直、キツい)」

 

 それで苦しさが収まるわけじゃない。

 むしろ諦めろと誘惑を囁く声が響いてくる。

 そんな見通しが通じるものか。あいつには勝てない。

 だから、さっさと諦めた方が良い、と。

 その誘惑はとても魅力的で、楽そうだった。

 正直、これを聞き続けていたら耐えられそうにない。

 なので。

 

「…………(よし、寝よう)」

 

 寝る事にする。

 カーマが私に危害を加えないという前提ありきだけど、誘惑の声を聞き続けるよりマシだ。

 きゅっと目を閉じて、膝を抱える。

 吐き気と息苦しさは変わらないが、少し楽になった。

 すると、疲れていたのか急に眠気が襲いかかる。

 そのまま、意識が眠りに落ちていった。

 

 

 

 

「そろそろですかねぇ。無様な啜り泣きとか聞きたいですね」

 

 カルデアのマスターを宇宙に放置してから数時間程。

 いくら数多の試練を乗り越えてきた人間と言っても、彼女は英雄ではなくただの人間。

 そろそろ、一人でいるのも限界になって来た頃だろう。

 そう思って、期待の言葉を漏らしてみる。

 しかし。

 

 …………

 

「…………まだかな?」

 

 …………

 

「…………まだかな?」

 

 …………

 

 いくら待てど彼女の泣き声や私を求める声が聞こえてこない。

 

「あーもう、まだかなー! Lちゃん、流石にここまで我慢しすぎなんですけどー!」

 

 …………

 

 それに苛立ってつい叫んでしまうが、反応は返ってこない。

 

「…………おかしいですね。マスターさんはただの人間なんですから、あの忌々しい坊主と違って悟りなんて開いてないはず…………それに念には念を入れて、あの憎たらしいパールバティー達も排除したのに…………何が起こっているんでしょう」

 

 ただの人間がこの宇宙に放り込まれてこんなに長時間耐えられる筈がない、と疑問符が湧いてくる。

 それを解決すべくあれこれ頭を巡らせていると、ある考えが浮かんでくる。

 

「…………もしかして、パールバティー達を排除し損ねた? 奴らが彼女を守っている…………?」

 

 と言う考えが。

 あり得ない、と言いたい所だがそれ以外にこの状況を説明出来そうな答えがない。

 

「…………しょうがないですねぇ。様子を見に行きますか」

 

 ここまで待ったのだ。今更パールバティー達に邪魔されても困る。

 今度はもう一度、きっちりと消してやろう。

 

 

 カルデアのマスターの元にはすぐに着いた。

 彼女の周りを精査してみたが、サーヴァントの気配は全く無い。

 どうやら、私の考えは外れたらしい。

 と言うことは、この少女一人の力で耐えているということになるが…………

 

「マスターさーん、そろそろ辛くなって来たりしてませんかぁ?」

 

 それを確かめるために、彼女に語りかけてみる。

 すると。

 

「…………」

 

「…………へぇ」

 

 返答の代わりに、スースーと小さな寝息が聞こえてきた。

 どうやら、彼女はこの宇宙で眠ってしまったらしい。

 確かにそれなら耐える事も出来るかもしれない。

 心ごと深い眠りに閉じ込めてしまえば、情動を感じる事は無いのだから。

 

「…………なるほど、そういう態度を取っちゃうんですか…………」

 

 彼女が眠っているのは、防衛のためだ。

 私という宇宙から身を守るための手段。

 それはつまり、私の愛を無視するという事だ。

 それは合理的だが…………無性に腹が立つ。

 愛とは、私に与えられるものなのに。

 それを無視するなんて。

 

「…………なら、それ相応の報いを与えてあげないといけませんねぇ…………」

 

 それならば、与えよう。

 無視なんて出来ない程に。

 溺死する程の愛で…………何もかも、溶かしてやろう。

 

 

 

 

 

「…………マスターさーん、起きてくださーい…………マスターさーん…………」

 

「ん…………」

 

 耳に入る誰かの声で意識が闇から浮上する。

 そのまま目を開けるとそこには…………敵であるはずのビースト、カーマがいた。

 

「…………ってあれ?」

 

 その瞬間、疑問が走る。

 私は確か光を奪われたはず。

 なのになんで、カーマが見えるの? 

 同時に、無重力からくる吐き気や頭痛が治ってる、即ち地面に足が付いている事に気づく。

 私は何も言ってないはずなのに。

 

「何が何だかわからないって顔ですねぇ。ま、混乱するのも無理はないですが。これは単にサービスみたいなものなので、気にしない様に」

 

「…………何が目的なの」

 

 口ぶりからするとカーマ自身がこの空間を元に戻した様だが、理由がわからず余計に困惑する。

 

「何って、貴女の心を折る事ですけど? …………ただまあ、宇宙遊泳コースはお気に召さなかった様なので、少々趣向を変える事にしまして」

 

「…………」

 

 なるほど、どうもカーマは私が耐えようとしている事に気づいたらしい。

 墓穴を掘ってしまった気がするが、状況が動いただけ良しとするしかない。

 …………どちらにせよ、私一人ではカーマに敵わないのだから。

 なら、精々時間稼ぎをするだけだ。

 宇宙が解除された事で、マシュ達とも連絡が取れるかもしれないし。

 そう思った瞬間。

 

「…………何、これ…………っ⁉︎」

 

 いきなり、身体が炎に包まれる。

 その炎は全く熱く無く、私の身体を包むだけだった。

 しかし、その代わりと言わんばかりに、私の身を守る極地礼装や、下着が燃えていく。

 

「うふふ…………余計なものは、排除させてもらいますね? これから行う事に、こんなものは無粋ですから」

 

 そして最後に残ったシュシュが焼け落ちて、一糸纏わぬ姿にされてしまった。

 

「…………っ」

 

 呆気なく手札の一つを奪われた事実を直視出来ず、否定する様にその場に蹲る。

 だが。

 

「うふふ…………そんな事で、この私から逃げられると思ってるんですかぁ?」

 

 抵抗は許さないとばかりにカーマに後ろから抱き抱えられて、無理矢理立たされる。

 

「マスターさん、つかまえた♡」

 

 嘲りを込めた甘い声でカーマが囁いてくる。

 その声に一体何をされるのかと、悪寒が背中を走る。

 そのまま、彼女が私を後ろから抱き締める。

 彼女の柔らかい胸の感触と共に、お腹に炎の様な冷たさが伝わってくる。

 その瞬間。

 

「…………っ⁉︎」

 

 バヂッ、と電流を流し込まれた様な熱さが下腹部を襲った。

 

「うふふ…………♡」

 

 しかしそれだけでは終わらない。

 

「が…………っ⁉︎」

 

 間髪入れずに太腿や胸に背中、挙句の果てには口の中まで同じ様な感触が走る。

 短い時間で大量の刺激を流されたせいか、全身から力が抜ける。

 同時にカーマが離れて、そのまま床にへたり込んでしまう。

 

「一体、何が─────え?」

 

 とりあえず立ちあがろうと下を向いた瞬間、私の目に信じられないものが飛び込んできた。

 

「なに、これ…………」

 

 それは…………私の身体に刻まれた、卑猥な印だった。

 さっき電流が走った部位を中心に、子宮を模した様ないやらしいハートの紋様が鎖の様に刻まれている。

 見えないけど、きっと舌にも刻まれているのだろう。

 更に下腹部には他の場所よりも大きく卑猥なハートが刻まれていて、それを囲むようにカーマの光冠が刻まれていた。

 

「うふふ…………♡私からのプレゼント(淫紋)、気に入ってもらえました? 貴女の為に、とびきりのモノを用意したんですよ?」

 

「だれが…………っ」

 

 カーマの煽る様な物言いに、自分の身体にこんなモノを刻まれても嬉しいはずがないと、頭に血が昇る。

 そのまま、後先考えずに彼女に掴み掛かろうと立ち上がった瞬間。

 

「…………っ⁉︎♡」

 

 背筋を這う様に、甘い疼きが走った。

 そのせいで姿勢が崩れて、再び地面に座り込んでしまう。

 

「マスターさん、どうされたんです? いきなり座り込んで…………♡もしかしてぇ…………♡そんな顔して、本当は私に刻んでもらったのが嬉しいんじゃないですかぁ?」

 

 それに気づいたカーマが、私を見下ろして嘲笑う。

 

「何を、したの…………っ♡」

 

 反骨心でどうにかカーマを睨み返すが、強くなる疼きを抑えきれず、甘い声が混じる。

 

「私の愛を無視する捻くれ者のマスターさんに、素直になれるおまじないを刻ませていただきました♡そして、マスターさんがもっと素直になれる様に、特別な場所に案内してあげますね♡」

 

 カーマがパチンと指を鳴らす。

 すると、景色がカーマ達のなす歪んだ宇宙から、襖で区切られた和風の寝室という、ある種見慣れた光景に変わる。

 即ち─────今まで散々見てきた、彼女の作り上げた大奥へと。

 同時に、鼻の奥を擽る様に甘い匂いが部屋の中に漂い始める。

 その匂いを嗅いだ瞬間、疼きが更に強くなって思考が阻害される。

 

「大奥第五層『不邪淫戒』へようこそ、カルデアのマスターさん♡愛の魔王である私の愛を無視する捻くれ者の貴女には、ここがお似合いです♡不邪淫戒──────夫婦以外の者と交わってはいけない。私にとってはどうでも良い決まりですが、貴女にとっては違う。だって貴女はもう、知っていますからね」

 

 甘い疼きのせいで思考が纏まらず、カーマの意図が理解できない。

 だけど何故だろうか。

 理解できないはずなのに彼女の言葉は甘く脳髄に染み込んで…………私の心の一部を、がっちりと掴んでくる。

 まるで私が、カーマの言う通り何かを知っていると示す様に。

 

「なんの、こと…………っ♡そんなの、知らない…………っ♡」

 

 それを直視するのが怖くて、誤魔化す様に嘘をつく。

 ─────それが、大きな間違いと知らずに。

 

「うふふ…………♡全く、わかってる癖に素直じゃないですねぇ…………♡まぁ、そんなマスターさんでも私は愛してあげるので、特別に素直になる為のヒントを教えてあげます♡それは…………破ってはいけない決まり、って事です♡」

 

「…………やぶっては、いけない…………まさ、か…………っ♡」

 

 だけど、カーマの言葉で否応なくその何かに目を向けざるを得なくなる。

 それは─────

 

「はい、そのまさかです♡破っていけない決まりを破ってしまう、即ち禁忌を犯す。それは堕落への第一歩。何故ならば、禁忌を犯すのは気持ち良いから。そして人は快楽に抗えない。だからもう、後は堕ちていくだけ。だってマスターさんは、もう知っているんですから。破ってはいけない事を破ってしまうのは気持ちいい事だって。望む望まないに関わらず、貴女の心に刻まれている」

 

 禁忌を犯すという、快楽だった。

 大奥を隈なく探索した事で、私はしょうがないとはいえ幾つもの禁忌を犯している。

 無論嬉々としてやったわけではない。

 だけどその中に、背徳の悦びの様な感情が欠片ほども無いかと言われたら…………否定する事は、出来なかった。

 そして。

 

「─────ところでマスターさん、さっきなんて言いましたっけ?」

 

「…………っ」

 

 私が既に、カーマの術中に嵌っている事を思い知らされる。

 不妄語戒─────嘘をついてはいけない。

 さっき私は、知っているものを知らないと、嘘をついてしまった。

 それを自覚した瞬間。

 

「…………っ⁉︎♡♡♡…………これ、は…………っ♡♡♡」

 

 太腿に刻まれた淫紋を中心に、強烈な切なさが込み上げてきた。

 その切なさを埋めるように、無意識に太腿を擦り合わせる。

 

「あれー? どうしたんですかー? そんな顔しちゃって…………♡もしかして、私が欲しくなっちゃいました? 良いですよ、どんな欲望でも私は答えますから」

 

 それを見咎めたカーマが、私の顎を持ち上げて顔を覗き込んでくる。

 その顔はとても魅力的で、私を貶めるためとわかっているのに胸が跳ねる。

 

「…………ちが…………っ⁉︎♡♡♡」

 

 それを誤魔化す様に顔を背けながら答えるも、余計に切なさが酷くなる。

 

「うふふ、正直じゃないんですから、全く…………♡でも良いですよ、そんなマスターさんでも愛してあげますから♡」

 

 淫紋に侵されたせいなのか、カーマの声が蕩ける様に甘く脳に響いて、胸が嬉しさに包まれる。

 彼女の言葉は、破滅への誘惑でしかないのに。

 それなのに喜んでしまう自分の心に振り回されていると、カーマが私から離れる。

 カーマが離れた事で一瞬寂しさを覚えるがすんでのところで踏み止まる。

 …………最も、カーマは気づいているのか嘲る様な笑みを強くしていたが。

 そして。

 

「これからマスターさんには、自由に過ごしてもらいます♡無論、この大奥第五層『不邪淫戒』の中だけですけど♡ですがご安心を♡マスターさんの欲しいものは、なんでも叶えてあげるので♡それがこの、『大奥』ですから♡いつでも、どこでも…………私が貴女を、愛してあげます♡それでも満足出来なかった時は…………最深層に来てくださいね♡」

 

 上機嫌な声でカーマが説明する。

 だけど疼きと切なさに侵された私の頭には、碌に頭に入って来なかった。

 カーマが近くにいるという事と、最深層で待ってるという事以外。

 

「もし最深層に行ったら…………どう、なるの…………っ♡♡♡」

 

 まるでカーマに媚びる様な甘い声で、彼女に訊ねる。

 すると、カーマがクスリと笑って私の耳元に口を持ってくる。

 そして。

 

「──────溺れる様な愛で、何もかも溶かし尽くしてあげます」

 

「ひ、う…………っ⁉︎♡♡♡」

 

 ゾっとする程冷たい声で、耳元でそう囁かれた。

 背中に氷を入れられた様な感覚になり、驚き混じりの嬌声が漏れる。

 それだけでは留まらず、カーマの声がまるで麻薬の様に私の脳髄に食い込んで離れなくなってしまう。

 そのせいか、幻視してしまった。

 あの宇宙でカーマに愛されて、溶けていく私の末路を。

 そして、破滅しかないとわかっているのに…………その光景を、心のどこかで望んでしまった。

 否定する様に頭を振るが、心に湧いてしまった渇望は消えなかった。

 むしろ否定する度に少しずつ、強くなっている気がする。

 

「うふふ…………♡それではこの辺で、マスターさんがリラックス出来るように引かせていただきます♡…………たっぷり、気持ちよくなってくださいね♡」

 

 心がぐちゃぐちゃになってざわめいてる私をよそに、カーマがどこかに消える。

 そして再び、大奥に私は閉じ込められた。

 それも、とびきり最悪な状況で。

 

 

 

 

 

「…………とりあえず、カーマの所へ戻らないと…………」

 

 カーマが消えてから数分後。

 淫紋で疼く身体をどうにか抑え込んだ後、今後の事について考える。

 まず一つ言えるのは、早くこの大奥から出ないと不味いという事だ。

 ここには媚薬の様な香が焚かれていて、いるだけで思考が快楽に逸れ始める。

 放っておいたら、勝手に自分を慰めてしまいそうになる程に。

 その上、疼きを抑え込んだと言っても別に発散したわけじゃない。

 気合いで我慢しているだけだ。

 快楽を求める疼きは行きどころを無くして、私の中で膨張し続けている。

 そんな状態でこの香を吸い続けたら、取り返しがつかなくなってしまうだろう。

 だから、早く脱出して最深層に戻らないと。

 それに…………最深層に辿り着いたら、カーマが私を…………

 

「…………っ、違う! そんな事、あるわけ…………」

 

 …………香のせいか、思考にノイズが入る。

 それを首を振って否定しようとするが、ノイズは消えてくれない。

 即ち…………カーマに愛されたいという、欲望が。

 一度湧いてしまったその欲望は中々消えず、泥の様に私の心に纏わりつく。

 

「…………とにかく、行かないと」

 

 何もしなくてこれなのだ。

 このままここに居ては本当に取り返しがつかなくなる。

 そう思い、立ち上がって襖を開く。

 目の前に見慣れた、しかし慣れるはずもない大奥の廊下が現れる。

 誰も隣にいない、礼装もない、あるのはカーマの毒(愛)に侵された自分(わたし)だけ。

 何も頼れるものがない状態のまま、伏魔殿の如き大奥へ足を踏み出すのに身体が竦む。

 

「…………っ」

 

 だけど、進まなければ堕ちていくだけだ。

 なら、行かないと。

 足を一歩前に出す。

 一人ぼっちの、絶望的な探索が始まった。

 …………その心に、わけのわからない期待を抱きながら。

 

 

 

 

「…………っ、この…………っ♡♡♡」

 

 あの和室を出てから数十分程歩いた頃だろうか。

 私は、大奥の廊下でさっきよりも数段強い疼きに襲われていた。

 何故なら、廊下にもあの香が焚かれていたからだ。

 それをずっと吸い続けたせいで、この疼きを発散させたい、せめて自分で慰めたいという欲求がどんどん強くなっていく。

 当然そんな事をしたらカーマの思い通りになってしまうから、気づけば秘部を弄ろうとする身体を必死に抑える。

 しかし疼きは強くなるばかりで、それを発散出来ない事に気が狂いそうになってくる。

 狂おしい程の劣情に思考を苛まれながらも、抜け道はないかと探してみるが、あたりに避難できそうな場所はない。

 そのまま、火照る身体を持て余していると。

 

「…………あれ、は…………っ♡♡♡」

 

 廊下の奥に一つだけ、ポツンと閉じられた襖を見つける。

 あそこなら香の影響がないかもしれないと考えて、身体を引きずって襖に向かう。

 それが罠かもしれないと、考える事もせずに。

 そしてその部屋に辿り着き、襖を開ける。

 中には布団が一組置かれてるだけで、特に目立つものは置いていなかった。

 香が無いことに安心して、急いで部屋に入って襖を閉める。

 

「はぁ、はぁ…………っ♡♡♡」

 

 香の影響から抜け出せたおかげで、火照った身体が少し冷める。

 しかし疼きは未だ強く心を侵して、消えそうにない。

 どうしたものかと考えた時…………ポツンと置かれた、布団が目に入る。

 

「…………また、さっきみたいに…………っ♡♡♡」

 

 先ほど宇宙に放り込まれた時の記憶が蘇る。

 あの時の様に身体を休めたら、少しはこの疼きも治るかもしれない。

 そう思い、布団の中に潜り込む。

 全裸で歩いていたせいか、布団が温かくて心地いい。

 その心地よさに一息つきながら目を閉じると、強烈な眠気が襲ってくる。

 そのまま、意識が闇に落ちていった。

 ─────ここが、誰の腹の中なのかを考えることもせずに。

 

 

 

 

 ─────キーンコーンカーンコーン。

 

「…………ん?」

 

 聞き慣れた学校のチャイムが鼓膜を叩く。

 どうやら、授業中なのに寝てしまっていたらしい。

 辺りを見回すと、もう放課後なのか誰も周りにいなかった。

 一人を除いて。

 

「ようやく起きましたね、立香。全く、ねぼすけさんなんですから…………」

 

 それは、隣の席にいる──────カーマ様だった。

 

「あっ…………その、すみませんカーマ様…………」

 

 今日は大切な日なのに、カーマ様を待たせてしまった事に気づいて血の気が引いていく。

 無礼を詫びるために慌てて土下座をしようとするが、カーマ様に止められる。

 

「良いですよ、別に。貴女がねぼすけさんなのはわかっていますし。それでも私は貴女を愛するだけです。…………それに、これから立香に寝る暇なんてこれっぽっちも無いですからね…………♡」

 

「…………が…………っ♡」

 

 代わりに、私の首に嵌められた首輪代わりのチョーカーを弄り回される。

 カーマ様の指がチョーカーと首輪の隙間に侵入してきて、少し苦しい。

 だけど…………苦しさ以上に、カーマ様の弄られる悦びの方が勝っていた。

 だって─────私はカーマ様に飼われる、性奴隷なのだから。

 いつからかはわからないけど、私はカーマ様の恋人兼性奴隷として過ごしている。

 確か、自分から頼み込んだと思う。

 そんな非常識としか言えないお願いを、カーマ様は受け入れてくれた。

 その証に、全身に私が彼女のモノであるというう消えない印を全身に刻んでくれた程だ。

 そして今日この日…………私から、何もかもを奪って、永遠にカーマ様の奴隷として愛してくれると、約束してくれた。

 だから、こんな苦しみなんて私にとっては悦びでしか無い。

 

「うふふ…………♡舞台設定は上々、マスターさんもしっかり嵌りきっていて、全然解ける気配がありませんね…………♡それにしても私の誘導や誇張が入っているとはいえ、マスターさんにこんな願望があったなんて…………♡」

 

「…………?」

 

「ああ、立香には関係ないですよ。ほら、嬉しいでしょう?」

 

「…………っ♡♡♡そこ、よわいです…………っ♡♡♡」

 

 カーマ様が意味のわからない事を言って不思議に思うが、ペットを撫でるように首を弄り回されてどうでも良くなる。

 そのまま、彼女の愛に浸れる悦びに震えていると。

 

「それじゃあ、そろそろいきましょうか」

 

「は、い…………♡♡♡」

 

 カーマ様が席を立つ。

 奴隷である私の首輪に、鎖をつけて。

 

「うふふ…………♡たっぷり愛してあげますからね、立香♡…………もう二度と、戻れないくらいに♡」

 

 カーマ様が愛の言葉を囁く。

 

「…………おねがい、します…………♡♡♡」

 

 

 カーマ様の家に着き、彼女の個室に通される。

 そこにはベッドとゴミ箱が置いてあるだけで、他には何も無かった。

 およそ人の住む部屋とは思えない場所に、否応なく興奮が高まる。

 

「うふふ…………♡それでは手始めに…………身につけているものを全部この中に捨ててください、立香♡」

 

 カーマ様が全てを捨てろと命じてくる。

 普通ならあり得ない命令。

 だけど。

 

「わかりました、カーマ様♡♡♡」

 

 カーマ様の愛に蕩け切った私の心は、それを躊躇いなく受け入れた。

 命令通り、彼女に嵌められた首輪以外のものを全て脱いで、ゴミ箱の中に放り捨てる。

 教科書の詰まった鞄も、学生服も、スマホも、もういらない。

 全部ゴミ箱の中に。

 最後に残ったシュシュも放り捨てる。

 髪が解けるとともに、晴れやかな気分になった。

 

「よくできました、立香♡えらいえらい♡ほら、撫でてあげますからこっちに来てください♡」

 

 それをカーマ様に褒められて、心が跳ねる。

 言われるまま彼女が座っているベッドに向かい、彼女の膝を枕に横たわる。

 すると彼女に頭を優しく撫でられて、無性に嬉しくなってくる。

 

「立香は頑張ったので、私からのご褒美です♡ここでずっと、余計な事を考えずに私に愛されていましょうね…………♡」

 

 脳に染み込む様にカーマ様の声が響いてくる。

 その声はとても甘く、聞いてるだけで彼女以外がどうでも良くなってくる。

 僅かに残った捨てたモノへの感傷も、彼女の愛に塗り替えられていく。

 耳に鎖をどこかに繋ぐ音が響いたけど、どうでも良かった。

 ただ、彼女に愛されていれば、それで良いのだから。

 

「うふふ…………♡良いですねぇ。このまま、外の方も堕ちてくれたら楽なんですけど。まぁ、それは置いといて。そろそろ始めましょうか。貴女のためだけに用意した、特別な夢を」

 

 カーマ様が私から離れて、服を脱ぐ。

 一糸纏わぬ彼女の美しい身体が現れ、興奮に息を呑む。

 しかし、そこには奇妙な点があった。

 

「うふふ…………♡貴女の大好きなコレで、存分に溺れてくださいね、立香♡」

 

 それは、カーマ様の股間に生えて雄々しく隆起している男根だった。

 女性である彼女に存在するはずのないそれは当然彼女に似合わず、まさに肉槍というのが相応しい凶悪な形をしていた。

 本来ならあり得ない状況。

 しかし私はそれを不思議に思うこともなく、犬の様に彼女のの肉槍へ顔を近づけていた。

 

「そんなにがっついちゃって…………♡そんなに好きなら、まずはそのお口でやってもらいましょうか、立香♡」

 

「はい、カーマ様♡♡♡」

 

 カーマ様の命令に従い、肉槍を口の中に収める。

 彼女の肉槍は凶器の如く鋭い雁首と、無数に生えた大小様々なイボのおかげで、口で奉仕するにはやりづらい。

 それでも頑張って奉仕していると。

 

「…………なんだか、物足りないですねぇ…………ちょっと激しくしますね♡」

 

 いきなり頭を掴まれて、喉奥に押し込まれる。

 

「〜〜〜〜〜〜っ♡♡♡」

 

 ただでさえカーマ様の肉槍で息が苦しいのに、それを更に抉る様に押し込まれて、苦痛が走る。

 だけどそんな苦痛すら私にとっては悦びで、むしろ苦痛(快楽)を得るために自分からより奥に咥えようとする。

 

「おや、自分から積極的に動くなんて…………えらいですね、立香♡それなら、もっと激しくしちゃいましょうか♡」

 

 カーマ様により強く頭を掴まれ、更に激しく前後に動かされる。

 苦痛(快楽)が強くなって、気絶寸前まで意識が追い込まれる。

 

「うふふ…………♡そろそろ立香も限界の様ですし、ご褒美をあげましょう…………♡全部、飲み込んでくださいね♡」

 

 すると、更に奥まで肉槍を捩じ込まれる。

 同時に肉槍がドクンと脈打ち、煮えたぎる様な熱さの大量の精液が喉奥に吐き出された。

 喉を犯す精液はそのまま食道を犯して胃の中に飲み込まれるが、あまりの量に一部が逆流して口の中に広がってくる。

 反射的に吐き出してしまいそうになるが、カーマ様の命令に応えるため必死に耐える。

 やがて射精が終わり彼女の肉槍が引き抜かれた時、私の口は彼女の精液に埋め尽くされていた。

 火傷しそうな精液の熱さに頭がクラクラしてくるが、カーマ様の命令に応えるために精液を飲み干そうとする。

 しかし私の口から離れまいと言わん程に精液が口内にへばりついて、飲み込むことが出来ない。

 

「…………ゲホッ…………ゲホッ…………」

 

 やがて耐え切れなくなってしまった身体が、精液を床に吐き出してしまった。

 

「あーあ、吐き出しちゃいましたねぇ、立香さん…………♡」

 

「あ…………」

 

 カーマ様の命令に応えられなかった事にガラガラと足場が崩れていく様な気分になる。

 しかし。

 

「全く、何も出来ないダメダメな人なんですから…………♡でも良いですよ、私は貴女を愛しますから♡もっと愛してあげちゃいますね♡」

 

 カーマ様にそう言われて、どうでも良くなってくる。

 そして遅まきながらようやく理解する。

 私はカーマ様と愛を結んでいるのではなく、カーマ様の愛を注がれているだけだと。

 私が愛するなんて、烏滸がましい考えだった。

 だから、彼女に喜んでもらうためにもう頑張らなくても良い。

 何もしなくても、カーマ様は愛してくれるのだから。

 そう思うと、心のどこかが楽になった。

 

「そうですよ立香♡めんどくさい事なんて考えていても、ただ苦しいだけです♡だから、楽な方にいっちゃいましょう♡楽な方に流れて、私だけに溺れちゃいましょう♡ほら、今度は何をして欲しいか言ってください♡」

 

 カーマ様が私を抱きしめながらそう囁いてくる。

 それは甘く蕩ける様な誘惑で、僅かに残っていた心のしこりを溶かしていく。

 その後に残ったのは、ただ快楽に浸っていたいという、欲望だった。

 

「おかして…………ください♡♡♡ぐちゃぐちゃに、めちゃくちゃに…………きもちよくして、くださいっ♡♡♡」

 

 欲望のままにカーマ様へ願望を吐き出す。

 

「もちろん、良いですよ♡」

 

 カーマ様は当然の様に私の欲望を受け入れ、肉槍を膣口に当てがう。

 

「っ♡♡♡」

 

 カーマ様に愛された身体は既に蜜を垂れ流していて、それだけで気持ちよくなってしまう。

 そして。

 

「〜〜〜〜〜っ♡♡♡カーマ、さまの、が…………っ♡♡♡おく、に…………っ♡♡♡ぁ、あ…………っ♡♡♡」

 

 一息に、カーマ様の肉槍が膣内に捩じ込まれた。

 無理矢理膣内を押し広げられる感覚と共に強烈な快楽が頭を焼いて、思考がスパークする。

 しかしそれでも膣内は肉槍を離さまいと、キツく締め付けていた。

 

「良いですよ…………♡このまま、もっと私に溺れていきましょうね♡」

 

 挿入れられた快楽の余韻も抜けない内に、カーマ様の肉槍が動き始める。

 

「ぁ、ひ…………っ♡♡♡カーマ、さまのっ♡♡♡なか、かりかりってっ♡♡♡」

 

 先程私を苦しめた(気持ちよくしてくれた)雁首とイボが、今度は私の膣内を責め立てる。

 彼女の肉槍が奥を抉る度に、膣内を引っ掻く様に刺激して、動かれる度に強烈な快楽と多幸感に支配される。

 更に。

 

「…………っ⁉︎♡♡♡おく、ひびいて…………っ♡♡♡ぉ…………っ♡♡♡」

 

 膣奥をノックする様に小突かれて、気絶してしまいそうな程の快楽を流し込まれる。

 それに身体が悦んで、もっと彼女の肉槍を味わいたいと言わんばかりに子宮が降りる。

 

「うふふ…………♡子宮が降りてきちゃってますよ、立香♡」

 

「だって、カーマ、さまの♡♡♡きもち、いいから…………っ♡♡♡」

 

「はいはい、ならもっと気持ちよくなりましょうね♡」

 

「あっ♡♡♡」

 

 望み通りにカーマ様に気持ちよくされて、身体と心の両方が悦び、溺れていく。

 彼女の愛に。

 そのまま、彼女に犯されて(愛されて)いると。

 

「そろそろ射精しますけど、何処に欲しいです? 妊娠しちゃうかもしれませんし、立香の好きに選んで良いですよ♡」

 

 カーマがそう言って、より奥に捩じ込んでくる。

 それに合わせて、再びドクン、と肉槍が脈打つ。

 妊娠という可能性を突きつけられて、一瞬思考が理性を取り戻す。

 だけど。

 

「なかに…………くださいっ♡♡♡にんしんしても、いいのでっ♡♡♡」

 

 カーマ様に愛される快楽を考えたら、そんなものは考慮にも値しなかった。

 

「では、望み通りに…………♡」

 

 カーマ様がより強く私を抱きしめて、肉槍が子宮に密着する。

 それに身体が反応して、もっと欲しいと無意識に足を絡める。

 そして。

 

「…………っ♡♡♡なか、あつ…………っ♡♡♡ぁ、お…………っ♡♡♡ぁ、あ〜〜〜〜〜〜っ♡♡♡」

 

 宣言通りに、熱い精液が吐き出された。

 子宮に精液が注がれて、何度も絶頂してしまう。

 子宮内が満たされてもカーマ様の射精は止まらず、許容量を超えて流し込まれる。

 やがて彼女の射精が終わった頃、私のお腹はまるで妊婦の様に小さく膨らんでしまっていた。

 

「さて…………これからどうします? 立香の好きにしていいですよ♡」

 

 カーマ様が肉槍を引き抜き、精液と私の愛液に塗れたそれを見せつけながら囁く。

 それを見て、さっき埋め尽くされたはずの子宮が再び疼く。

 気づけば。

 

「もっと…………おかしてください♡♡♡わたしのぜんぶ、めちゃくちゃにしてくださいっ♡♡♡」

 

 快楽を求めて、カーマ様におねだりをしていた。

 

「ええ、もちろん♡」

 

「あっ♡♡♡また、きた…………っ♡♡♡これ、すき…………っ♡♡♡」

 

 カーマ様は嫌な顔一つせず私のおねだりを受け入れる。

 再び膣内に肉槍が捩じ込まれ、絶頂する。

 そのまま犯されていると(愛されていると)やがて意識が限界を迎えて、視界が暗くなる。

 泥の様な快楽と多幸感に包まれ、ゆっくりと闇に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

「──────っ⁉︎」

 

 自分が自分でなくなった様な拒絶反応に胸を突かれ、その衝撃で目を覚ます。

 バネの様に跳ね起きた私の視界に飛び込んだのは殺風景な部屋では無く、もう見慣れた和室──────カーマの造り上げた、大奥の中だった。

 その光景に、さっきの痴態が現実のものではなく夢だったと遅まきながら理解する。

 そう──────夢の中でカーマに犯されて、悦んでいたという淫らな夢を見てしまった事を。

 

「…………っ♡♡♡」

 

 同時に、背筋を甘い痺れと切なさが駆け抜ける。

 どうやら、あの夢のせいで快楽を求めようとする衝動は一層強くなってしまったらしい。

 

「なんで、あんな夢…………っ♡♡♡」

 

 頭の中で騒めく衝動に思考を邪魔されながら、どうにか考えようとする。

 考えられる理由は二つ。

 一つは、カーマが私の夢に介入してきたから。

 相手はビーストだ、それくらいなら出来るかもしれない。

 そして、もう一つは…………私自身が気づかない程心の底で、そうされる事を、誰かに犯される事を望んでいたから、だ。

 だけど、そんな事があるはずがない。

 だって私は、カーマを倒さないといけないのだから。

 ビーストを倒して、元の生活に戻らないといけないのだから。

 …………それなのに。

 

「なんで、消えない、の…………っ♡♡♡」

 

 夢で見た光景が、頭の中から離れない。

 何度否定しても、こびりついた汚れの様に激しくリフレインしてしまう。

 その時。

 

「クスクス…………♡まるで自分が犯される夢でも見て、興奮しちゃったーみたいな顔してますけどどうしたんですか、カルデアのマスターさん?」

 

 という嘲笑と共に、柔らかい感触が私の背中を包んだ。

 

「カーマ…………っ♡♡♡なに、したの…………っ♡♡♡」

 

「そんなのどうでも良いじゃないですか♡私は貴女を愛するだけですよ♡それよりほら、そろそろ現実(こっち)でも気持ちよくなりたいんじゃないですか?」

 

 その声の主─────カーマを睨むも、彼女はどこ吹く風とばかりに微笑を絶やさない。

 むしろ自分の仕業だとバレてもどうでも良いのか、堂々と誘惑してくる。

 

「そんな事、あるわけ…………っ♡♡♡」

 

 当然そんな見え透いた手に乗るわけも無く、拒絶してカーマから抜け出そうとする。

 しかし彼女の腕は私に一切の苦痛を与えていないのに巌の様に固く、抜け出す事ができない。

 

「全く、素直じゃないんですから…………♡それじゃあ、まずは仲良くなりましょうか♡マスターさんが素直になれる様に♡」

 

「ひ…………っ⁉︎♡♡♡なに、を…………っ⁉︎♡♡♡」

 

 それでもどうにか抜け出そうと足掻いていると、カーマの炎に包まれた手が秘部に触れる。

 その手は品定めする様に私の秘部を撫でたかと思うと、膣内に指を侵入させてきた。

 炎で燃えているはずの指は何だかドロドロとしたモノに包まれいて、抵抗なく私の膣内に侵入してくる。

 そして、それを膣内に塗りたくる様に彼女の指が蠢き始めた。

 

「何って…………マスターさんと仲良くなりたいだけですよ♡ほら、行きますね♡」

 

「やめ、て…………ぁ…………っ♡♡♡」

 

 カーマの指が私の膣内を掻き回す。

 無理矢理弄られているはずなのに、発情させられ、夢で快楽のイメージを叩き込まれた私の身体はそれに苦痛を感じる事は無かった。

 むしろ彼女の指が膣内を掻き回す度に脳を焦がしそうな情欲(ねつ)を感じてしまい、嬌声を漏らして悦んでしまう。

 やがて、私の嬌声に混じって淫らな水音が響き始める。

 快楽に悦んでしまっている事を、示す様に。

 

「駄目でーす♡これは私とマスターさんが仲良くなるためなんですから♡それにマスターさんだって気持ちいいんですし、拒む事なんて無いじゃ無いですか♡気持ちいい事は良い事なんですから♡」

 

 カーマがそう言って、指の動きを余計に激しくする。

 そのせいで快楽が強まり、理性がガリガリと削られていく。

 彼女を倒さなければならないのに、本能が彼女に愛されたいと叫んで、思考が汚染されていく。

 

「…………きもち、よくなんて、ない…………っ♡♡♡」

 

 それが怖くて反射的にカーマの言葉を否定する。

 しかし口とは反対に私の身体からは既に抵抗する力が抜けてしまい、カーマの責めを受け入れ悦ぶだけとなっていた。

 つまり、私は無意識に嘘を吐いてしまっていた。

 

「うふふ…………わかりやすい嘘なんて吐いちゃって…………♡そんなに気持ちよくなりたいんですね、マスターさん♡」

 

「…………っ⁉︎♡♡♡ちが…………っ♡♡♡うそじゃ、ない…………ひ、ぁ…………っ♡♡♡」

 

 カーマの言葉に自分が何を言ってしまったのかに気づくが、既に遅く。

 彼女の思惑通り不妄語戒(うそをついてはいけない)を破ってしまった私に、その罰(ペナルティ)が下り、より快楽が強くなってしまう。

 更にそれを否定するためにまた嘘を重ねてしまい、快楽に思考が塗り潰されていく。

 そして。

 

「嘘吐きのマスターさんが正直者になれる様に、マスターさんの欲しいものをあげますね♡」

 

「か、ひゅ…………っ⁉︎♡♡♡いきなり、はげし…………っ♡♡♡ぁ…………っ♡♡♡ぁ、あ〜〜〜〜〜〜っ♡♡♡」

 

 止めと言わんばかりにカーマの指に膣内を抉られる。

 それは彼女の策によって限界まで発情させられた身体にとっては脳天まで貫く様な刺激だった。

 頭が真っ白になると同時に呆気なく絶頂かされてしまい、嬌声を漏らす。

 

「ようやくイけましたねぇ、マスターさん♡でも気持ちいいのはこれからですよ♡さっき見つけたマスターさんの弱点、たっぷり虐めてあげますね♡」

 

「やめ…………っ♡♡♡イった、ばかり、だから…………ぁ…………っ♡♡♡」

 

 その隙を突くように、カーマが再び指を蠢かして私を快楽の沼に突き落とす。

 彼女の指が私の弱点を突いて、再び絶頂への波が上がってくる。

 しかし。

 

「どうしたんですかぁ、マスターさん♡何だか物足りないって、顔に書いてますけど♡もしかしてぇ…………もっと私にイかされたいんですかぁ? 人類最後のマスターなのに? もしそうなら最低ですね、マスターさん♡私はそれでも良いですけど♡」

 

「…………っ、だれ、が…………っ♡♡♡」

 

 絶頂する事は、出来なかった。

 カーマが絶頂する寸前で指を止めて、無理矢理快楽の波を下げたからだ。

 そして私に釘を刺す様に詰ってくる。

 そのおかげで意思が戻るが、絶頂したい、という欲望が消える事は無かった。

 

「流石マスターさん♡そう言ってくれると信じてました♡なので、もっともっと弄ってあげますね♡」

 

 再び、カーマの指が私の膣内を掻き回して、快楽の沼に突き落とす。

 地獄が、始まった。

 

 

 カーマの指がグチャグチャと私の膣内を弄り、快楽を煽ってくる。

 しかし。

 

「…………っ、また…………っ♡♡♡」

 

「マスターさん、大丈夫ですかぁ? 随分と辛そうですけど♡」

 

「だれのっ、せいで…………っ♡♡♡」

 

 どれだけ快楽を煽られても、私が絶頂する事は出来なかった。

 カーマが絶頂く直前で指を止めて、無理矢理クールダウンさせるからだ。

 だけど一度カーマの手で絶頂かされてしまった身体は絶頂を遠ざけられる度に快楽への渇望が強まり、思考を汚染していく。

 そして、彼女が呼び戻した私の意思は…………その渇望に、もう殆どが塗りつぶされてしまった。

 今はもう、とにかくカーマの言う事を聞いてはいけないという、意地だけで抗っている状態だ。

 

「クスクス…………♡良いじゃないですか♡どうせマスターさんも、私にこうやって弄られるのが好きなんですし♡」

 

 殆ど崩壊している私の意思に絡み付く様に、カーマの甘言が耳に響く。

 

「そんな、こと、あるわけ…………っ♡♡♡」

 

「えー? だってマスターさん、身体の力が抜けきって私のなすがままじゃないですか♡まるであの夢みたいに♡」

 

 当然その甘言を振り払おうとするが、絡みついたその言葉が離れる事は無かった。

 私が目を背けていた事実を突きつけられたからだ。

 実際、私の身体からはカーマの抱擁に抗う力は既に消えていた。

 今はただ、彼女の玩具にされてるだけだ。

 

「ちがう…………っ♡♡♡あれは、カーマが…………っ♡♡♡」

 

「違いませんよ、マスターさん♡確かにあの夢には私が色々と細工を施しましたが…………『誰かにめちゃくちゃに犯されるのが幸せ』なんて、変態的な夢の骨子は全く弄ってないので♡」

 

 だけどそれを認めるのが怖くて、否定する為にカーマのせいにしようとするが、そのカーマから否定される。

 

「どういう、こと…………っ♡♡♡」

 

「簡単な話です♡確かに私は愛欲の魔王ですが…………いくら私でも、存在しない欲望を形にするのは不可能です♡つまり、あの夢は紛れもなくマスターさんの欲望そのもので、私はそれを脚色しただけって事です♡」

 

 そして、愛欲の魔王という『欲』に関してのスペシャリストに肯定されてしまう。

 あの夢が、言い訳のしようもなく私の欲望であるという事を。

 逃れらなれない形で事実を突きつけられて、残った意思が激しく動揺する。

 

「どうせもう、マスターさんも私から抜け出す気は無いんでしょう? それなら、もう堕ちてる様なものです♡だから、これ以上を望んでも大して変わりませんよ♡だってもう、マスターさんは堕ちちゃってるんですから♡」

 

 その動揺を突く様に、カーマが甘言を吐く。

 だけどその言葉はさっきよりも深いとこまで絡みついて、離れない。

 もう堕ちてるんだから、これ以上頑張ってもしょうがない、無駄だと頭の中の本能が叫ぶ。

 罅だらけの意思を甘言がきつく締め付けて、新たな罅が走る。

 

「それに…………♡ここに居たらいつまでも、私に辿り着けませんよ♡マスターさんは私を倒すんでしたよね♡なら、早くここを出ないと♡だから、素直になっちゃいましょう? どうせ我慢なんて、する意味が無いんですから♡」

 

「カーマ、を…………たおす、ため…………」

 

「はい♡」

 

 その罅を砕く止めとして、カーマを倒す為に必要であるという大義名分を囁かれる。

 明らかにおかしい言葉だったが、快楽に炙られた今の私の頭にそれを考える力は無かった。

 むしろ大義名分を与えられたせいで、意地を張っていた心が崩れていく。

 カーマを倒す為だ、仕方ない、と。

 それが破滅の道だと自分でもわかってる筈なのに、ギリギリのとこで抑えてた本能が騒ぎ出す。

 もっとめちゃくちゃにされたい、この快楽に溺れていたいと。

 そして。

 

「ほら、どうしたいか言ってみてください、マスターさん♡」

 

「…………もっと、きもちよく、なりたい…………っ♡♡♡」

 

 最後に残った私の意思は本能によって打ち砕かれてしまい、快楽を求める意思だけが残る。

 本能の命ずるまま、破滅の道へ歩き出してしまう。

 

「ええ、もちろん♡マスターさんの望む事なら♡」

 

 それを嘲笑う様に、カーマの指が蠢く。

 カリカリと、引っ掻く様に弱点を責め立てられ、快楽に炙られる。

 だけどさっきと違って、絶頂をお預けされる事は無かった。

 

「あ…………っ♡♡♡き、た…………っ♡♡♡イ、く…………っ♡♡♡」

 

「はい、遠慮なくイっちゃってください、マスターさん♡」

 

 むしろ早くイけと言わんばかりに膣内を弄られる。

 

「ぁ、ひ…………っ♡♡♡ぉ…………っ♡♡♡あ、あ〜〜〜〜〜〜っ♡♡♡」

 

 散々焦らされた身体はそれに耐え切れず、簡単に絶頂させられる。

 獣の様な嬌声をあげ、ようやく与えられた快楽に悦びながら身体を震わせる。

 今まで我慢していた分を取り返すかの様に、絶頂の波から降りられなくなってしまう。

 

「うふふ…………♡マスターさんは頑張ったので、私からのご褒美です♡存分に味わってくださいね♡」

 

 意識が飛びそうな絶頂の中、嬉しそうなカーマの声が響く。

 その声を最後に、私の意識は快楽の中に沈んでいった。

 

 

 

 

 ─────大奥最深層

 

「うふふ…………♡や〜っと折れてくれましたねぇ、カルデアのマスターさん♡」

 

 手元にカルデアのマスター、立香の様子を映しながらほくそ笑む。

 常人にしては中々手強い精神の強さだったが、所詮常人の域だ。

 あの忌々しいクソ坊主やシヴァ程ではない。

 少し内側から欲望を煽ってやれば、これこの通り(まあ、色々と脚色はしたけど)。

 だけど、まだ足りない。

 

「うふふ…………♡貴女は私の愛を拒絶した…………♡そのお返しに、溺死しちゃうくらいに愛してあげますね♡」

 

 もっともっと、彼女を愛してあげなければ。

 

 

 

続きを書くなら

  • 快楽堕ち(ビーストカーマ)
  • カジノ敗北所有物(Wコヤンスカヤ)
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