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━━━━━━私がモルガンの城…………ブリスティンに入ってから、幾許かの時が経った頃。
私はすっかり馴染んだブリスティンで、モルガンとの新しい日常を過ごしていた。
この城は色々な施設を備えていて、飽きる事がない。
その多彩さはかつてのブリスティンを優に超えていて、城というかリゾートホテルって言わないこれ? と思うくらいだ。
まあハワトリアのブリスティンは確かにリゾートホテルなんだけど。
モルガン曰く、私を迎え入れる為に最高の環境を用意したとの事。
中にはいつ使うんだろこれ、と思ったものもあったけど、徹底的に作り込まれたその在り方が実にモルガンらしい、と感心したのを覚えている。
さて、そんな新しい日常の中。
今日も私は、夢の様な現実に目を開く。
「んー…………」
隣にモルガンはいない。
モルガンとの夜は不規則で、モルガンと一緒に起きる事もあれば、今日みたいに自室で起きる事もある。
いやまあ、毎日モルガンと一緒にいたら身体が保たないっていうのもあるけどね。
一緒の時を過ごす為にゆっくり身体を改造されていってるとはいえ。
閑話休題。
十分寝たけど、まだちょっと眠い。
後寝癖が付いてた。
ふぁ、と小さな欠伸をして身体を起こす。
眠気覚ましと、寝癖の付いた髪を直す為に部屋に設けられたバスルームに向かう。
モルガンに会うのに、乱れたままじゃ格好つかない。
…………まあモルガンと一緒に寝た時は余すとこなく見られる上に、モルガン自身の手で丁寧に直されるんだけども。
それはそれ、というもの。
せめて一緒にいない朝くらいは、格好つけたい。
手早く、しかし丁寧に寝癖を梳かしながらシャワーを浴びる。
適度に熱いお湯が、残っている僅かな眠気を溶かしていく。
寝癖がなくなったのを見計らって、洗面所で髪を乾かす。
「さて、今日はどれにしようかなー…………」
髪を乾かし終わった後、クローゼットで今日の服を見繕う。
クローゼットにはモルガンが選んだ私の服が日替わりで収められていて、フォーマルからカジュアルな服までよりどりみどりだった。
最も、選ぶのは大体決まってるからそこまで悩む事は無い。
ただ。
「…………」
下着の方はそう易々とは行かなかった。
クローゼットに備えられた引き出しを二つ開く。
片方にはシンプルなデザインの下着、片方には過激なデザインの下着が収められていた。
試しに、過激な方を手に取って見る、
「…………いや、ムリでしょ」
私が手に取ったそれは初夜のベビードールと比べても過激で、正しく勝負下着に相応しいというくらいのオーラを放っていた。
だけど悲しきかな、今の私にそれを着る勇気は無かった。
モルガンとは不定期に交わるから、こっちを着ていた方が良いとは思うんだけど。
結構反応が違うし。
でも、予め言われてから用意するのと、最初から用意しておくのは何というか、恥ずかしさが違う。
しばらくどうすればいいか悩むが、状況は変わらなかった。
結局諦めてシンプルな、悪く言えば無難な方を取る。
「…………はぁ」
着替えながら、自分の意気地なさに少し呆れる。
いつもの事ではあるんだけど、もう少し勇気を出せればなぁ、とちょっと暗い気持ちになる。
でも。
「…………うん、これで良し」
着替え終わった私の姿を鏡で見たら、そんな気持ちは吹き飛んでしまった。
私が選んだのは、トロピカル・サマーを模した様な、アロハシャツとホットパンツの組み合わせだった。
お腹が出たデザインなのが気に入ってる。
だって。
「…………ふふ」
私のお腹には、モルガンの手で刻まれたモルガンのとそっくりな赤い刻印があるからだ。
それは私がモルガンという魔女に娶られた事を示す消えない証で、撫でるだけで暗い気持ちなんて上書きされてしまう。
幸福感に顔が緩むのを抑えられないでいると、ノックの音が響く。
「…………はっ」
その音に冷静になり、どうぞと返事を返す。
すると、メイド姿のモルガンの使い魔が部屋に入ってくる。
どこかバーゲストを思わせる造形なのは、モルガンの趣味だろうか。
その使い魔に寝間着を渡して、モルガンがいるであろう食堂に向かう。
さあ、今日は何が起こるかな。
食堂に向かうと予想通り、モルガンが食堂にある小さなテーブルに着いていた。
モルガンは何やら本と睨めっこしていて、私が来た事には気づいていないみたいだ。
「おはよう、モルガン」
「…………む。もうそんな時間でしたか。おはようございます、我が妻よ」
声を掛けて、モルガンの向かいに座る。
すると、モルガンがパタン、と本を閉じて何処かに仕舞う。
チラリと見えたタイトルには地理書みたいな言葉が見えたけど、何処かの地図でも見ていたのだろうか。
まあ私とモルガンはこの城から出ないから関係ないと思うけどさ。
それより。
「…………いつも通り、とても愛らしい格好ですね」
「…………良かった。ありがとう、モルガン!」
モルガンに褒められた方が重要だ。
ここに来て毎日褒められてはいるけど、好きな人に褒められるというのは何度されても嬉しいものだ。
だってそれは、モルガンのお眼鏡に叶っているって事なんだから。
好きな人が喜ぶ姿は、見てて嬉しい。
…………それに、これくらいでしか、私はモルガンに返せないしね。
この城の維持管理は全てモルガンの手で行われていて、料理から掃除まで全てモルガンの使い魔達が担っている。
その技術はとても高く、私じゃ到底太刀打ち出来ない(一応、こっそり練習はしてるけど追いつくとは到底思えない)。
しかも、モルガンは受肉してるから私はいなくても問題は無い。
つまり、今の私は客観的に見れば…………所謂、穀潰しという奴だった。
モルガンは私がいてくれるだけで良いとは言ってくれるし、実際モルガンが私を手放す気配は微塵も感じられないのだけど。
だからと言って、今の立場に甘えていられるかと言ったら根が小市民的な私にとっては難しく。
だからせめて、格好くらいはモルガンが喜ぶ様な私でいたい、と今の私は思っている。
…………まあ、だからと言ってあの過激な下着を着るのは恥ずかしいけどね!
そんな風に脳内で一人相撲をしていると、メイド達が朝食を運んでくる。
運ばれて来たのは、パン、スープ、サラダ、デザートのフルーツだった。
料理自体はシンプルだけど、私とモルガンのものでちょっとずつ中身が違っている。
具体的には、パンに付いてるジャムの味が違うと言った感じで。
二人でいただきますの挨拶をして、朝食に手を付ける。
しばらくはお互い普通に食べていたが、どちらからともなく手が止まった。
そして、モルガンが私の食べかけのパンを指す。
「我が妻、そちらのパンを頂けますか? ジャムはそれなりでお願いします」
「うん、良いよ」
モルガンの言われるままにパンを食べ頃な大きさに千切り、こちらの付け合わせのラズベリージャムを少し塗る。
「はい、あーん…………」
若干緊張しながら、モルガンの口の中にジャムを塗ったパンを入れる。
モルガンの口が動き、パンが咀嚼されて飲み込まれた。
「…………ふむ。新しい品種を取り入れてみましたが、中々良いものですね。今回も当たりです。ありがとうございます、我が妻。ではお返しにこちらをどうぞ」
モルガンが感想を述べると共に、モルガンのパンを千切ってジャムを塗る。
「はい、あーん」
先程の焼き直しの様にモルガンのパンが私の口に差し出されたので、受け取って咀嚼する。
あんずの香りと共に、優しい甘さが舌を撫でた。
個人的には、こっちの方が好みだ。
「どうでもしょう、我が妻?」
飲み込むと、モルガンが感想を聞いてくる。
「いつも通り、美味しいよ? こっちの方が、私的には好みだけど」
「それは良かった。では我が妻、もっと食べてください」
素直に感想を言うと、モルガンがパンをまた千切って渡してくる。
ジャムを塗って。
そう。
モルガンと私の食事の中身が違うのは、この為だ。
お互いに違う食事を楽しむために、敢えてこう言う形式を取っている(モルガン曰く刺激に慣れさせない為だとかで、毎日やってるって訳じゃないけど)。
そのまま、朝食をお互いに食べさせ合う。
何回かそれを続けていると、モルガンに食べさせて貰っているということを強く意識してしまい、鼓動が高鳴る。
最初は鮮明だった舌もどんどんバカになって、甘さと幸福感しか感じられないようになっていく。
モルガンの思惑は上手く行っている様で、これが初めてじゃないのに私はモルガンに翻弄されっぱなしだった。
やがて朝食が終わった時、私は料理の味を全く覚えておらず、ふわふわと夢心地の様な気分になっていた。
多分ご馳走様って言ったけど、実感が無い。
舌に残る甘さだけが、朝食が終わった事を示していた。
「…………さて。朝食も終わった事ですし、我が妻に話があります」
「どうしたの?」
食後の紅茶でバカになった舌を覚ましていると、モルガンがそんな事を言う。
その顔はいつも通りのモルガンだったが、声に何処となく真剣さが漂っている。
多分重要な話だと思って居住まいを正す。
すると。
「一緒に、旅行に行きませんか?」
と、予想外の提案をモルガンがしてきた。
「旅行って…………この城の中で、って事?」
とりあえず、あり得そうな可能性をモルガンに聞いてみる。
ここは閉じられた世界だが、相当に広い。
旅行っぽい事くらい、出来るだろう。
それを旅行と言うのかはともかく。
しかし、モルガンは首を横に振る。
つまり。
「いいえ。この城の外…………外界への、旅行です」
旅行とは、この世界の外に行くことらしい。
「別にモルガンと一緒なら私は良いけど…………どうして?」
それ自体は問題無いのだが、モルガンが外に出ると言った事に引っかかる。
だって、この城はモルガンが私と永い時を過ごすために作り上げたものなのに。
自ら出るのは、モルガンらしく無い様な。
「それは…………」
疑問符に首を傾げていると、珍しくモルガンが言い淀む。
「…………言いにくいなら、別に言わなくても良いよ?」
何があろうと、私はモルガンについて行くだけだし。
「…………いえ。これは私の失態であり、我が妻に関わる事なのですから、黙っておくわけにはいきません。女王としても、夫としても」
しかし、モルガンには言わないという選択は信念に悖るものだった様で、少し間を置いてから静かに語り出した。
曰く。
モルガンと私の初夜で、勢い余って私を孕ませてしまったと。
その結果、このブリスティンを作り上げる術式に綻びが出る可能性が生じたとか。
しかし今から作り直すのは難しく、それならばいっそのこと理想郷…………アヴァロンに行こう、ということになり、今、準備を重ねているらしい。
「…………」
それを聞いて、私の中に生まれたのは…………言いようの無い、歓喜だった。
だって、それは。
モルガンが我を忘れるくらい、私に夢中になってくれたという事なのだから。
モルガンが私を愛している事は身をもって体感してた筈なのに、改めて言われると胸の奥が歓喜でじわじわと染まって行く。
「我が妻?」
「あっ、ごめん…………その、モルガンが私にそこまで夢中になってたって言われて、嬉しくて…………」
モルガンを前にしているのに、ぼーっとしてしまうくらいには。
慌てて謝ると、モルガンがちょっと驚いた様な顔を見せる。
「…………意外です。私の都合で振り回してしまったのですから、多少は怒るものかと思いましたが」
「そんな、怒るなんて…………だって私、モルガンと一緒にいられるならそれだけで嬉しいし…………」
このブリスティンは楽しいけど、私はそれでモルガンに付いてきた訳じゃない。
一緒にいたいから、付いてきたのだ。
だから、ブリスティンでの生活を失う事なんて、振り回される内にも入らない。
そう伝えると、モルガンが少し照れた様な顔を見せる。
「…………我が妻は、ずるいです」
モルガンが席を立ち、私を後ろから抱きしめる。
「…………その様に私の失態を許されては、夫として、見せる顔がありません」
つまり、ちょっと恥ずかしいらしい。
モルガンらしいな、と苦笑しながらしばらくモルガンに抱かれ続けた。
「…………先程は見苦しいとこを見せました」
「いや別に、可愛かったし…………」
いつもの調子を取り戻したモルガンに所感を言うと、半目で睨まれる。
あまり触れて欲しくはないらしい。
意外な一面にちょっと好奇心が刺激されるが、嫌がらせしたい訳でもないので口を閉じる。
すると、コホンと咳払いをしてモルガンが口を開く。
「では、仕切り直して…………アヴァロンへ行くのは先程説明した通りですが…………式の日取りは、いつにしましょうか?」
式と聞いて、モルガンと再会した時の事を思い出す。
言われてみれば、私とモルガンはとっくの昔に夫婦になってるけど、結婚式は挙げてなかった。
「出来る事ならば、アヴァロンへ行く前にこのブリスティンで挙げたいものですが…………式場も用意しましたので」
モルガンにそう言われて、少し考え込む。
結婚式っていえば、お母さんやお父さん、友達を呼んだりするらしいけど…………何故だろうか、今の私には彼らを呼びたいとは思えなかった。
別に嫌いな訳じゃないし、なんならお母さん達には報告したいんだけど。
もうしばらく考え込んでみると、意外とすぐに答えが見つかった。
「モルガン、ちょっと聞いてみたいんだけど…………結婚式って、私達二人だけでも良かったりする?」
「特段問題はありませんが…………むしろ、それならば今からでも式を挙げられます。日取りを聞いたのは、貴女の周りの都合に合わせる必要があるかと思ったまでです」
成程、つまりモルガンなりの気遣いだったらしい。
それは有り難いし、私もモルガンの言う通り今からでも式を挙げたいんだけど。
「それなら、お願いしたい事があるんだけど…………モルガン、私と一緒にお母さん達に挨拶しに行ってくれない? その後、二人きりで結婚式を挙げたいんだけど…………」
それには一つ、未練があった。
それは、私が何も言わずに家を出て行ってしまった事だ。
一応書き置きは残してきたけど、それで心配しないか、と言われたら話は別だろう。
だからせめて、お母さん達には謝りたい。
謝って、ちゃんとお別れしたい。
「…………ふむ。どうせその内ここを出るのですし、別にそれは構いませんが…………私は、貴女の周りの人間が来ても特段気にする事はありませんよ? 式の間であれば、ここで過ごす事を許しますが」
私のお願いに、モルガンが不思議そうな声で首を傾げる。
モルガンの声は自然なもので、私が知り合いを呼ぶ事に思うとこが無いのは事実らしい。
実際、客観的に見ればそっちの方が良いと私も思う。
だけど、感情的な面で言えばそれは、私にとって受け入れ難いものだった。
だって。
「…………えっと、その…………結婚式って事は、モルガンもドレスを着るよね?」
「? はい。女王であり夫なのですから、当たり前でしょう」
「その姿を、私以外の誰かに見せたく無いなって…………」
モルガンの姿を、他の誰かの目に晒したく無いから。
モルガンは綺麗だし、身体つきも妖艶だから色んな人の目を引くだろう。
ドレスなんて着たら、尚更に。
それが嫌だ。
取られるかもしれない、とは微塵も思ってないけど。
私がモルガンの妻である様に、モルガンは私の夫なんだから。
私だけが、モルガンを見れば良い。
そんな独占欲に、私は駆られていた。
「…………ふふ。今日の我が妻は、私を驚かせてばかりですね。ですが、これ程嬉しい事はありません。妻に求められるのは、夫の歓びですからね。良いでしょう。我が妻の望み通り、二人だけの式を挙げましょうか」
二人きりで式を挙げたい、だけど別れの挨拶はしたい、という私の我儘な本音を見たモルガンが、妖艶に笑う。
そして私の右手を取り、刻み込む様に唇を落とした。
それから、少しの時が経った頃。
ブリスティンに造られた式場の控室で、くるり、と身体を回して姿見に写る自分の身体を見る。
メイド達が着付けたオレンジのウェディングドレスが私の全身を隙なく飾っている。
それはメイド達に施された化粧も相まって、鏡の私は本当に私なのか疑ってしまう程のものだった。
まあ、お腹に刻まれたモルガンの刻印が隠れてるのには少し不満があるのだけど。
━━━━━━無事挨拶を終えた私達は、ブリスティンで結婚式の用意をしていた。
…………とまあ、言葉にすれば簡単だけど、結構大変だった。
勝手にいなくなったからめちゃくちゃ心配してたし。
自業自得だからしょうがないんだけど。
そういうわけでお母さん達を説得するためにしばらくモルガンと実家で同居生活をしたりしていたんだけど、それはまた別の話。
大切なのは、私がちゃんとお別れを言うことが出来たと言うことだ。
別れの寂しさは胸にあるけど、未練は無い。
これで心置きなく、私はモルガンと歩んでいける。
「…………だから、もう大丈夫」
息を整え、改めて鏡の私を見つめる。
鏡の私は、私の心を写すかの様に、少し寂しさの浮かんだ、だけど心からの笑顔を咲かせていた。
モルガンの前に出られるかちょっと不安だったけど、これなら大丈夫そうだ。
メイド達に連れられて式場に辿り着くと、奥の玉座に座ったモルガンが私を待っていた。
モルガンの服装はかつての妖精國で冬の女王として君臨していた時の格好だったが(フェイスベールは無くなっていたけど)、その厳かな雰囲気に反して、威圧感を感じる事は不思議と無かった。
メイド達が退室し、式場に私とモルガンだけが残される。
厳かな静寂の中、玉座のモルガンが私を誘う。
それに応える様に、身体が動く。
一歩進むたびに一つ、また一つと胸にある寂しさが消えて、モルガンに染まっていく。
そして玉座の下に辿り着いた時、私の心はモルガンだけになっていた。
モルガンが立ち上がり、玉座の前で向き合う。
モルガンの方が背が高いから、私が見上げる形だ。
「ふふ…………私の見立て通り、貴女にはそのドレスがよく似合っています」
モルガンが微笑みながら、私の頬を撫でる。
それは嬉しかったけど、モルガンのチョイスなら刻印が見える様にして欲しかったと僅かな不満が顔を出す。
すると。
「…………ふふ」
「…………モルガン?」
モルガンが不敵な顔で笑った。
まるで、私の心を見透かした様に。
「ええ、貴女の言いたい事はわかります」
「…………私、何も言ってないよ?」
慌てて誤魔化すけど、モルガンの目は獲物を掴んだ鳥の様に私を見据えている。
どうやら、隠す事は出来ないらしい。
「私は貴女の夫なのですよ? ああもアピールされて、わからないはずが無いでしょう」
モルガンがそっと私のお腹を…………刻印が刻まれた場所を撫でる。
「確かに、これは私と我が妻との永遠の契りの証です。それを大切にしてくれるのはとても嬉しいのですが…………これが見えては、今からやる事が霞んでしまうでしょう?」
それに、とモルガンが付け加える。
「私はあの様に魅力的な貴女の姿を、他の誰にも見せたくないのです…………アヴァロンには、他の妖精もいますからね…………ですから、これを用意しました。もう一つの、契りの証を」
モルガンが何処からか小箱を取り出し、蓋を開ける。
そこには、それぞれに異なった紋様の刻まれた、二つの指輪が収められていた。
初めて見る紋様だったが、何故か意味がわかった。
片方にはモルガン、片方には立香と刻まれている。
ここは式場で、私とモルガンは夫婦だ。
言われなくても、その意味はわかった。
「さあ我が妻、改めて契りましょう」
モルガンが小箱を私に差し出す。
その顔は先程の不敵な笑みとはまた違った、妖艶な笑みに染まっていた。
魔女らしく、関わるもの全てを破滅させてしまいそうな危険な笑みに。
だけどとっくの昔にモルガンに染まっている私にとって、その笑みは少女の様に華やかな笑顔だった。
モルガンが垣間見せた私への独占欲も合わせて、心が歓喜に震える。
気づけば、裡にある不満は完全に消えていた。
歓びのままに、立香と刻まれた指輪を取る。
「ふふ…………それでは我が妻、手を貸してください」
モルガンに言われるまま左手を差し出す。
その薬指に、モルガンの名が刻まれた指輪が嵌められた。
嵌められた瞬間、指輪が生物の様に蠢いて私の指に融け合う。
それは完全に私にぴったりな状態で、それが故にもう二度と外す事は出来ないと直感する。
ああ━━━━━━なんて、なんて幸せなのだろう。
消えない証を再び刻まれた事の歓びに、幸せの絶頂に支配される。
だけど、まだここで終わりじゃない。
「さあ、我が妻…………私にも、お願いします」
だって、これは結婚式なのだから。
私ばかり喜んでいては駄目だ。
さっきとは逆に、モルガンが差し出した左手を私が取る。
その白磁の薬指に、私の名前が刻まれた指輪を嵌める。
先程と同じ様に指輪が蠢き、モルガンの指にぴったりと融け合う。
モルガンの綺麗の身体に消えない印を刻み込んだせいか、裡から先程とは異なった類の歓びが湧いてくる。
「…………これが証を刻む、という事ですか。これは…………なんて…………」
指輪を交換し終えると、モルガンが呆けた様な声を出す。
モルガンにしては珍しいな、と頭の片隅で思ってると。
「…………きゃっ⁉︎」
いきなりモルガンが、私の身体を抱き上げた。
所謂、お姫様抱っこというやつだ。
落ちない様に強く抱きかかえられ、モルガンと身体が強く密着する。
いきなりの柔らかい感触に、興奮で心臓が強く跳ねる。
モルガンが私を抱いたまま、玉座に腰掛ける。
「モルガン、どうした、の…………っ⁉︎」
「…………すみません、我が妻。歓びの余り、つい取り乱してしまいました…………我が妻に証を刻まれるのがこれ程に心躍るものだとは、私も知らなかったのです…………」
静寂に包まれた式場に、モルガンの静かな声が響く。
その声は落ち着いている様に見えて、内に在る歓喜を全く隠していなかった。
それを示す様に、モルガンが姿勢を変える。
気を抜けば唇同士が触れてしまいそうな程にお互いの顔が近づき、鼓動が落ち着くどころか更に煩く跳ねる。
「…………ああ、これはきっと、星が終わったとしても忘れられない、かけがえの無い思い出になるでしょう…………」
心なしか蕩けたモルガンの瞳が、私を射抜く。
その瞳の奥にある情愛の炎に当てられて、理性がボロボロと崩れていく。
後には、モルガンと共に在る歓びが残るだけだ。
「…………ですが、まだ終わってません。さあ、最後の仕上げをしましょう、我が妻」
モルガンの言わんとする事は、すぐにわかった。
最後に誓う事がまだ一つ、残ってる。
だけど、蕩けた頭はそれに応える言葉を持たなかった。
だから。
「ん…………」
言葉の代わりに、唇を塞いでモルガンに誓った。
初めて、自分から行うキス。
私の行動に、モルガンが驚いた様に目を見開く。
だけど、私を拒む事は無かった。
互いに唇を触れ合わせて、感応し合う。
すると、言葉じゃ言い足りないお互いの感情が混ざり合って、境界が曖昧になっていく。
そして、完全に境界が融け合った頃。
頭の中に、
━━━━━これからも幾久しく。共にいましょう、我が妻よ。
━━━━━うん。ずっと、ずっと一緒にいようね。
そのまま、互いに満足するまで愛を語り、唇を貪り合った。
モルガンと二人だけの結婚式を迎えた、その夜。
披露宴代わりの晩餐も終えた私達は、一旦別れ、ブリスティンの浴室で合流する事にした。
ドレスを脱がせてもらい、ラフな格好に着替える。
そのまま自室に戻り、ベッドに深く沈み込んだ。
左手を天井に掲げ、薬指に嵌められた指輪を見る。
「ふふふ…………」
そこには、私には読み取る事の出来ない紋様が刻まれている。
だけど、意味はわかる。
指輪には、モルガンと刻まれていた。
新しく増えた伴侶の証に、心が否応なく躍る。
お腹に刻まれた刻印と合わせて、胸の歓びは留まる事を知らなかった。
そのまま幸福感に浸っていると、ふと時計が目に入った。
「…………っと。いけないいけない」
それを見て、正気に戻る。
一回別れたのは休憩の名目もあるとはいえ、時間はそこまで無い。
モルガンを待たせない様に、早めに準備しないと。
といっても、大体のものは浴場に揃ってるから実のところ準備するものは一つくらいだ。
最も、その一つが中々難しいのだが。
引き出しやクローゼットを眺め、逡巡する。
そう。
私がやる準備とは、モルガンに会うための身だしなみの事だ。
…………まあ、モルガンに言われたのは一緒にお風呂に入る事、だけでその後については特に言われて無いのだけど。
だって今日は式を迎えて初めての夜、なのだから。
そんな予測半分、期待半分の気持ちで、モルガンとの夜を過ごす服を選ぶ。
普段から気をつけてはいるけど、今日は特に最高の私でいたいから。
しかし。
「うーん、どうしよう…………」
特にこれ、といった様なものは選べなかった。
服が悪いというわけじゃないんだけど、どうにもしっくり来ないというか。
多分私が舞い上がってる、ていうのもあると思うんだけど。
しかしこのままの格好で行くにしても収まりが悪い。
どうしたものかと天を見上げる。
その時。
「あ、そういえば…………」
不意に、モルガンに言われた事を思い出す。
すると、胸の中にあった迷いがいとも容易く霧散してしまった。
どうしてこんな簡単な事を忘れていたのだろうか。
どうやら、自分でも自覚しきれない程に舞い上がっていたらしい。
クローゼットや引き出しを覗き込み、目当てのものを探す。
予想通り、それは確かにクローゼットにあった。
姿見を見る。
そこには、淡い橙の花が入った、白の浴衣を着る私が写っていた。
浴衣を選んだのは、モルガンとの約束が理由だ。
このブリスティンには様々な様式のお風呂があるが、今日選ばれたのは閻魔亭の様な、日本風の浴室だった。
それを考えたら、これ以外に相応しい服は無いだろう。
そう思いながら、全身を舐める様に見回す。
幸い、帯が緩んでいるなどという事も無く、きちんと着れている事がわかってホッとする。
…………そして、それ故に少し恥ずかしさが心の奥から湧いてくる。
「…………」
お尻の方を鏡で見る。
そこは特に変わった様子も無く、白い浴衣だけが写っている。
下着のラインが浮くという事も無く。
それも当然だろう。
だって私は今、下着を身につけていないのだから。
着けていないんだから、下着のラインが浮く筈が無かった。
…………言い訳すると、浴衣に合う下着が無かったって訳じゃない。
ただ、その手の下着は無難なデザインで、今日それを着るくらいならいっそ、という訳だ。
まあ、だからといって恥ずかしさが消える訳じゃ無いのが困るとこなんだけど。
とはいえ、結局は私が決めた事だ。
改めて鏡を見る。
そこには、今の私に出来得る、最高の私が写っていた。
「…………よし、行こう」
その姿で自分の中の恥ずかしさを説き伏せ、モルガンと約束した浴室へ向かう。
浴室の脱衣所に着いた時、モルガンはまだいなかった。
時計を見ると、約束の時間よりちょっと早い。
落ち着いたと思っていたが、まだ私の頭は熱から醒める事は出来ていないらしい。
とはいえ、今から部屋に戻る、という訳にもいかない。
モルガンとすれ違ったらいけないし。
脱衣所に設けられた椅子に腰を落ち着け、モルガンが来るのを待つ。
「…………む。待たせてしまいましたか。すみません、少々手間取ったもので」
しばらくすると、約束の時間ぴったりに青の花が差す、私とお揃いの浴衣を着たモルガンがやってきた。
「ううん。私が早く来ただけだから気にしないで、モルガン。それにしてもその浴衣、よく似合ってるね」
モルガンの浴衣は、モルガンにとっては遠く離れた異国の民族衣装の筈なのに、とても良く似合っていた。
綺麗な銀の髪に、白と青の色合いが良く映えている。
正直、日本人の私より似合ってると思う。
「ふふ…………貴女もよく似合っていますよ、我が妻。ここを指定した意図を汲んでくれたのも、たいへん花丸です」
その姿に見惚れていると、嬉しい言葉が聞こえてくる。
モルガンの言葉に妻として、胸が歓びに高鳴る。
だってそれは、ちゃんとモルガンの意図を読みとり、モルガンのお眼鏡に叶う様浴衣を着ることが出来たという事なのだから。
好きな人が喜んでくれるなら、私も嬉しい。
「では、行きましょうか」
歓喜に染まる胸の中、モルガンが微笑んで、私に左手を差し伸べる。
意図は言わずともわかった。
左手でその手を取り、立ち上がる。
指輪が触れる様な音と共に、モルガンの体温が伝わってくる。
跳ねる鼓動と共に、長い夜が始まった。
「我が妻、今日は私からでも良いでしょうか?」
「…………っ、うん」
湯気が立ち込める中、和式の浴室に設けられた洗い場でモルガンが訊いてくる。
その言葉に先の展開を期待して、少し言葉が詰まる。
何故なら、私達が一緒にお風呂に入る時はお互いに洗い合うからだ。
普段は背中を流し合うくらいだけど、今日は特別な日だ。
そして、今日は先に私がモルガンを洗う事になった。
つまり、後からモルガンにたっぷりと洗われる訳で。
何をされてしまうのかと、期待に胸が高鳴る。
いや、やると決まった訳じゃないし、何ならモルガンは普通に下着着てたけど。
それでも期待は、止められなかった。
「…………じゃあ、やるね?」
興奮で上擦ってしまいそうな声を抑えながら、身体を洗う準備を整え、モルガンに声を掛ける。
こくり、とモルガンが頷いたのを見て、その綺麗な身体に指を滑らせた。
石鹸を泡立てて、モルガンの背中を洗う。
きめ細かい肌の感触と、モルガンの甘い匂いが伝わってきて、脳が興奮で沸騰しそうになる。
このまま続けていたら、何も考えられなくなりそうだ。
だけどこれは、いつもやってる事だ。
どうにか息を落ち着けて、モルガンの背中を丁寧に泡で包み、洗い流す。
すると。
「ああ、我が妻。次はこちらをお願いしてもよろしいでしょうか? 今日は特別な日、ですからね。これくらいの我儘は、良いでしょう?」
私の動揺を見抜いた様に、モルガンが悪戯に微笑み、背中を流した私の手を自分の胸に触れさせた。
「〜〜〜っ!」
興奮で割れてしまいそうな器に更に熱が叩き込まれて、頭がくらくらとしてくる。
その隙を突いてモルガンの誘惑に乗せられた本能が身体の主導権を奪い、誘われるままにモルガンの胸を洗い始める。
モルガンの柔らかい胸に私の手が沈み込み、本能が獣の様な声を上げる。
更に。
「ん…………っ」
モルガンが悩ましい声を上げるせいで、余計に興奮が止まらなくなってしまう。
「…………っ、モルガン、流す、ね?」
「ええ、どうぞ」
それでもどうにか理性で本能を抑えつけて、モルガンの胸を洗い流す。
これで終わり、と一息吐くが。
「…………まだ、洗い終わっていませんよ?」
「…………っ!」
モルガンが今度は、そのお腹に私の手を触れさせた。
身体がさっきより密着して、理性が今度こそ音を立てて崩れ、何も考えられなくなる。
その後の事は、あまり覚えていない。
モルガンに言われるまま、モルガンの頭から爪先まで洗い終わった頃。
「ふふ…………ありがとうございました、我が妻。丁寧で、とても心地良かったですよ」
「それは、どう、も…………」
楽しそうなモルガンと対照的に、私は息も絶え絶えの状態になっていた。
モルガンを洗う事に興奮し過ぎて、途中から記憶がない。
モルガンを痛くさせないよう気をつけていた事だけは覚えてるけど。
この時、私は忘れていた。
まだ、終わっていない事を。
「では、次は私の番ですね」
「…………へ?」
だから、モルガンへの反応が遅れる。
気づけば、モルガンが私の後ろにいた。
「先程のお返しです。隅々まで、洗ってあげますね」
少女の様に、あるいは獲物を見つけた狩人の様に、楽しそうな笑みを浮かべたモルガンが、私の身体を洗い始めた。
モルガンが、石鹸の泡で背中を撫でる。
脊髄を刺激する様に撫でられて、くすぐったさのある快楽が私を襲う。
それは身体をモルガンに改造されてる私にとっては堪え切れない程の快楽で、背中を流された時に身体がピクリと跳ねる。
「我が妻、動かないでください。しっかり洗えないではないですか。…………しょうがないですね」
すると、それをモルガンに咎められた。
だけどその声は言葉に反して飴玉を転がす様に楽しげで、嗜虐的だった。
それを示す様にモルガンが私に身体を密着させる。
「…………っ⁉︎」
いきなりの衝撃に声にならない声が漏れて、身体が硬直する。
「背中は洗い終わったのですし、ここからはこうやって洗う事にしましょう。良いですね? 沈黙は肯定と見做します」
モルガンがそう問いかけるが、答える事は出来なかった。
背中で圧し潰される、モルガンの胸の感触にノックアウトされてしまったからだ。
それに、拒否する理由も…………私には無かった。
モルガンに翻弄されているのは確かだが、それ以上に幸福が胸を支配している。
どこに、逃げる必要があるのだろうか。
幸福に浸ったまま、モルガンに身体を洗われる。
「っ、ぁ…………っ♡」
石鹸に濡れてぬるぬるとしたモルガンの指が、私の胸に沈み込む。
十分に興奮を煽られた私にとってそれは、思わず嬌声が漏れてしまう程に気持ち良かった。
砂に溶ける水の様に、快楽が全身に浸透する。
「ふふ…………浴衣姿を見た時から思っていましたが、我が妻は本当にいじらしく、淫な妻ですね…………♡」
「なん、の、こと…………っ? ♡」
モルガンに胸を愛撫されて快楽に喘いでいると、モルガンが妙な事を言い出す。
「気づいていないと思いましたか? 貴女が下着を着ていなかった事くらい、一目で分かります」
「…………っ、あれは、にあうのが、なく、て…………っ♡」
それは、私の心を完全に見抜いた言葉だった。
胸に隠していた期待をあっさりと見抜かれて、羞恥で顔がかぁっと熱くなる。
思わず、建前の言い訳をする。
「…………ふむ。それはおかしいですね。私は、浴衣に合う下着もセットで置いておいた筈ですが。…………最も、地味ではありましたが」
だけどそれもあっさりと見抜かれて、逃げ道を塞がれてしまう。
羞恥と興奮が、頭の中を完全にオーバーヒートさせる。
「ああ、勘違いしないでください。私は別に怒っている訳ではありません。ただ…………」
「ふぁ、あっ⁉︎♡」
モルガンが耳元で囁くと共に、乳首を抓る。
じっくりと慣らされて快楽に晒されたせいか、痛みの代わりに強烈な快楽が私を襲い、甲高い嬌声と共に絶頂させられてしまう。
「私も、貴女に当てられて抑えられなくなっただけです♡」
「あ、ああっ♡」
モルガンが耳元で甘く囁き、胸を丁寧に弄くり回す。
そのせいで脳ががどんどんバカになり、ただでさえ快楽に弱いのに更に弱くなってしまう。
更に、モルガンがお腹の刻印に手を伸ばした。
「ふふ…………我が妻との結婚初夜とはいえ、羽目を外し過ぎるのはどうかと思いましたが…………貴女がそうまで望むのなら、応えない訳にはいきませんからね…………さあ、楽しみましょう、我が妻…………♡」
刻まれた刻印を刺激する様に、モルガンがお腹を指でそっと押し込む。
すると、感度が増幅されているせいか、ちょっと押されただけなのに強烈な快楽が脳を灼き、絶頂してしまった。
今までに体験した事のない絶頂の仕方に、快楽と共に困惑が浮かぶ。
だけど。
「ぃ…………っ♡♡♡」
そんな事はお構いなしと言わんばかりにモルガンに絶頂の感覚を叩き込まれ、快楽以外の感情が流されてしまう。
そのまま、モルガンに隈なく全身を石鹸と快楽で洗い尽くされ、脳を染め尽くされた。
ちゃぷん、と檜の浴槽から水音が響く。
私は、モルガンの膝の間に抱かれる様にして、お風呂に浸かっていた。
だけど、私の心がお風呂で鎮まる事は無かった。
モルガンと密着しているというのもあるが、それ以上にモルガンに洗われた快楽が忘れられなかったからだ。
それがもっと気持ち良くなりたいという渇望を呼び起こして、頭の中を掻き回す。
渇望と興奮でぐちゃぐちゃになって息が荒くなる中、モルガンがお腹の刻印に手を伸ばした。
「…………ぃ、あ…………っ♡」
「ふふ…………こうしていると、我が妻との初夜を思い出しますね…………♡」
指が刻印を撫でると共に、刻印が刻まれている場所の奥…………子宮に、ジンジンとした熱が叩き込まれ、快楽と共に呻くような嬌声が漏れる。
モルガンの撫でる手つきは優しく、だけど執拗で、まるで初めて刻印を刻まれた時の様だった。
その時の記憶がフラッシュバックして、私はモルガンに支配されてしまっているのだと改めて実感する。
だけど、それに悲壮も不安も感じる事は無かった。
だって私は、そんな事は最初から知っているのだから。
支配こそが、モルガンの愛のカタチだと。
だから、モルガンに支配される事は歓びでしか無かった。
「わたしも、おなじ、だよ…………っ♡だってこれ、モルガンが、はじめてくれた、あかし、だから…………っ♡」
その歓びを伝えると、モルガンが左手を私の左手に重ねる。
すると、金属が触れ合う様な感覚が指に走る。
それは今日刻まれた、私とモルガンの新しい契りの証…………私達の、結婚指輪だった。
「そうですね…………ですが今夜は、あの夜とは違います…………♡わかりますね、我が妻…………♡」
指を絡めながら、モルガンが耳元で囁く。
快楽に蕩けた頭でも、その言葉の意味はすぐにわかった。
今日は、モルガンとの結婚初夜だ。
それはつまり、私が全てをモルガンに捧げたという事で。
支配されるその歓びに震えながら、私も指を絡める。
「その通りです…………♡では続けましょうか、我が妻…………♡」
すると、モルガンが艶のある声を出しながら、お腹を撫でる指を下に降ろし始めた。
そして、ある一点で指が止まる。
「…………ぁ、あぁっ♡」
ある一点…………私の陰核をモルガンの指が撫で、快楽に嬌声が漏れる。
モルガンに洗われた興奮で陰核は既に固くなっていて、触れられただけで強烈な快楽を感じてしまう様になっていた。
指が陰核を執拗に責めて、強烈な快楽が絶え間なく襲ってくる。
しかし、モルガンの責めはまだまだ序の口だった。
「ひう…………っ♡」
モルガンの舌が首筋を舐める。
ゾクゾクとした快感が神経を刺激して、蕩けた理性が更に蕩けていく。
更に追い討ちの様にモルガンがかぷり、と首筋を噛んでくる。
先程よりも強い悪寒の様な快感が伝わり、理性が完全に消し飛ぶ。
そして、私がただ本能のままに嬌声を上げるだけの獣になった頃。
「ぃ、ぁ…………っ♡♡♡ぅ、あ、あぁっ♡♡♡」
一際強く陰核と首筋を責められ、絶頂した。
さっきよりも深い絶頂に、頭が真っ白になる。
「我が妻、こちらに顔を…………」
その時、モルガンの声が頭に響いた。
放心状態だった私は、言われるがままに顔をモルガンの方へ向ける。
すると。
「ん、む…………っ⁉︎♡♡♡」
いつの間にか上っていたモルガンの指に、刻印をまた撫でられ、その快楽で意識を叩き起こされた。
その隙を突いて、モルガンが唇を塞いでくる。
何度も、何度も、まるで私に刻む様に、モルガンに唇を塞がれ、甘い味を脳に叩き込まれる。
だけどモルガンの口付けは触れるだけの優しいものな上、頻繁に唇が離れるせいですぐに甘さが消えてしまう。
だからなのか、唇を重ねる度にじわじわとしたもどかしさが溜まっていく。
そして、そのもどかしさに堪えきれなくなって唇を開けた時。
それを狙っていたと言わんばかりに、モルガンの舌が侵入してきた。
蛇の様にモルガンの舌が蠢いて、口内を丁寧に舐られる。
唾液が混ざり合う淫靡な水音と共に、濃厚な甘さが舌を擽る。
それは先程の優しいキスよりも遥かに刺激的で、もどかしさが全て快楽に変換されていく。
更に、モルガンの舌が私の口を蹂躙するのに合わせてお腹を撫でる指の動きが変わる。
ただなぞるだけだった動きから、トントン、と叩く様な動きに。
その瞬間。
「〜〜〜っ♡♡♡」
モルガンに調教された子宮に痺れる様な快楽が走り、絶頂してしまう。
その上、モルガンの舌の動きが更に激しくなる。
私の舌が玩具の様に弄ばれ、さっきよりも快楽が強くなっていく。
際限なく強くなっていく快楽に、身体が反射的に逃げようとするが、モルガンに全身を絡め取られている私にそんな事が出来る筈も無く。
むしろより強く全身を絡め取られて、快楽の締め付けが余計に強くなるだけだった。
だけど、何故だろうか。
「んむ、ちゅぱ…………っ♡んはっ、ちゅぶ…………っ♡♡♡」
快楽を際限なく与えられているのに、与えられる度にどんどん物足りなくなってしまう。
それはさっきのもどかしさと似ている様で、別物だった。
その正体を、快楽で蕩けてしまった頭で必死に考える。
しかし、蕩けた頭でははっきりとわかる事は無かった。
わかったのはもっとモルガンが欲しい、という渇望だけだった。
同時に、モルガンが唇から舌を引き抜く。
「ふふ…………その様な物足りない顔をして、どうしたというのでしょうか、我が妻…………♡ほら、言ってみてください…………♡夫ですもの、妻の望みくらい叶えます…………♡」
妖艶な笑みを浮かべたモルガンが、誘う様に私を見つめる。
その顔に、モルガンへの渇望が更に燃え上がる。
気づけば。
「もっと、ちょうだい…………っ♡♡♡モルガンと、もっとつながり、たい…………っ♡♡♡」
その渇望を、モルガンに溢していた。
「良いでしょう…………♡私も、そろそろ我が妻の身体を味わうだけでは物足りなくなってきたところです…………♡望み通り、繋がりましょう…………♡」
モルガンも同じ渇望を抱いていたらしく、妖艶な笑みが更に深まる。
そして、艶のある声でモルガンが、何かを唱えた。
すると、モルガンに抱かれて密着する背中に、何か固いモノが触れた。
「…………っ♡」
その正体…………モルガンが魔術で生やした肉槍に興奮が高まり、思わず息を呑む。
「さあ、立ってください、我が妻…………♡」
ゾクゾクとする声で、モルガンが囁く。
その声に誘われるまま壁に手を付き、お尻を突き出す様に立ちあがる。
お湯から身体が出たせいか、少し涼しい。
しかし、それは束の間の事で、すぐにそんな涼しさを忘れる程の興奮が身を包む。
何故なら。
「…………っ、ぁ…………っ♡♡♡」
モルガンが私の腰を掴み、肉槍を膣口にあてがったからだ。
モルガンに子宮や陰核を弄られたせいか、膣内は触られてもいないのに興奮しきっていた。
そのせいか、肉槍の先が触れるだけで、膣口が嬉しそうに震えて肉槍を出迎える。
そして。
「…………っ♡♡♡はいって、きた…………っ♡♡♡…………っ♡♡♡あ、あぁ〜〜〜〜〜〜っ♡♡♡」
一息に、膣奥まで貫かれた。
モルガンに蕩けさせられた膣内はそれだけで絶頂してしまい、一つになった幸福と快楽に身体が震える。
同時に、与えられた快楽を手放さまいとして膣内が肉槍を締め付ける。
「ふふ…………♡触れてもいないのに、挿入れただけでこれ程に締め付けてくるとは…………♡我が妻は、本当に淫ですね…………♡私がそうなる様に躾けたとはいえ、少々心配になってしまいます…………♡」
モルガンが耳元で囁きながら、私に肉槍を馴染ませる様に抱きしめる。
肉槍が更に奥に捩じ込まれ、動いても無いのに快感がじわじわと増大していく。
「なら、もっと、しつけて…………っ♡♡♡モルガンいがい、めにはいらないように、して…………っ♡♡♡」
その状況に興奮して、媚びる様にモルガンに希う。
貴女だけのモノにして欲しいと、モルガンに身体を擦り付ける。
「ええ、そのつもりです…………♡骨の髄まで私に溺れる様、これからも躾けてあげます♡」
すると、嗜虐と情欲に濡れたモルガンの声が耳を侵した。
破滅的で魅力的な言葉に、えもいわれぬ幸福感が私を包む。
「…………っ、ぁ、ああ…………っ♡♡♡」
その幸福を快楽で塗り潰す様に、モルガンの腰がゆっくりと動く。
それは私の全てを支配するかの様な、執拗な動きだった。
丁寧に肉槍を馴染まされたせいか、普段より感覚が鋭敏に快楽を捉えて、悦びに震える。
特に雁首が膣内を抉る感覚が凶悪だ。
ただでさえモルガンに抉られるのは泣きたくなるくらい気持ちいいのに、普段よりも感覚が鋭くなってるせいで余計に酷くなっている。
そのまま、丁寧に膣内を抉られ、快楽という鞭に躾けられていると。
「…………あ、ひっ⁉︎♡♡♡」
モルガンが、膣内の弱点を抉った。
強烈な快楽に、獣の様な嬌声が漏れる。
慣らされたせいか、弱点を突かれる度に息が詰まる程の快楽が脊髄を叩き、絶頂させられる。
「ふふ…………♡弱点を責められただけで、こんなに悦んでしまうとは…………♡これは、もっと躾けなくてはいけませんね…………♡」
「だって、そこ…………っ♡♡♡よわい、のに…………っ♡♡♡」
「では弱点でなくなる様、鍛える事にしましょう、我が妻…………♡」
嗜虐に濡れたモルガンの理不尽な言葉に、無意識に誘う様な反抗的な言葉が出る。
すると、モルガンが嗜虐的に囁きながら、弱点の責めを激しくする。
快楽が余計に強くなり、頭が真っ白になる。
更に。
「我が妻は、快楽に弱いですからね…………♡いい機会です、ここも躾けてあげましょう…………♡」
「あっ、ああ…………っ♡♡♡」
モルガンが胸に手を伸ばし、優しく揉みほぐすように責め始めた。
周囲から徐々に距離を詰めるようにモルガンの指が胸を責め立て、逃げ道を無くしていく。
やがて頂点に達した指が、玩具の様に乳首を捏ねくり回す。
既に興奮しきった乳首はそれに興奮して、更なる快楽を叩き込んでくる。
その上、捏ねくり回される合間に、時折指で弾かれる。
そのせいで快楽に身体が慣れず、ひたすらに強烈な快楽を叩き込まれる。
そして、許容外の快楽に気絶しそうになっていると。
「そろそろ私も、果ててしまいそうです…………♡言うまでも無いですが、全部受け止めてくださいね、我が妻♡」
モルガンが私を抱きしめ、肉槍を一際奥へ突き刺してきた。
言われるままに膣内が勝手に動いて、モルガンの肉槍を離さまいと締め付ける。
子宮口に鈴口が密着して、逃げられなくなってしまう。
そして。
「…………ぃ、ぁ…………っ♡♡♡ぅ、ぁ、あ…………っ♡♡♡あ、あ、ああ〜〜〜〜〜〜っ♡♡♡」
ドクン、と肉槍が脈打ち、煮えたぎる様な精液が子宮に注ぎ込まれる。
熱で子宮が灼かれて、絶頂の渦に叩き落とされて戻ってこれなくなる。
それは気絶してしまいそうな程の快楽だったが、モルガンが的確に胸を責めるせいで、気絶しそうになる度に叩き起こされて快楽に晒される。
やがて射精が終わった時、私は快楽でぐちゃぐちゃの状態になっていた。
「…………っ、ぁ…………っ♡♡♡」
絶頂が収まった頃、ズルリ、と肉槍が膣内から引き抜かれる。
それにちょっとした寂しさを覚えると共に、快楽で腰が抜けた身体が湯船に倒れ込もうとする。
その瞬間。
「…………おっと」
モルガンが、私の身体を後ろから支えた。
柔らかいモルガンの胸の感触と共に、ぬるぬるした、熱くて固いモノが背中に触れる。
それは、愛液や精液に塗れた、モルガンの肉槍だった。
その存在に、興奮が再び鎌をもたげる。
気づけば。
「ねえ、モルガン…………♡♡♡もっと、もっとちょうだい…………♡♡♡もっともっと、わたしを、しつけて…………♡♡♡」
媚びる様な甘い声でモルガンに、続きをねだっていた。
どうやら私はまだ、物足りないらしい。
「ええ、勿論そのつもりです…………♡今日は、寝かせないつもりですからね…………♡」
それはモルガンも同じだったらしく、情欲に蕩けた瞳が私を射抜く。
そして、モルガンが腰の抜けた私を抱き上げた。
結婚式の様に、お姫様抱っこで。
「では、もっと相応しい場所に行きましょうか…………♡私達は夫婦であり、女王と妃なのですから…………♡」
モルガンが私を抱いたまま、浴室を出る。
そして、相応しい場所…………私達の閨に、足を向けた。
夜の闇に包まれた城の廊下に、足音が響く。
私を抱いたモルガンが、閨に向かう音だ。
モルガンの魔術で丁寧に水気を吹き飛ばされ、お風呂で火照った身体を覚まされたにも関わらず、モルガンが一歩閨に近づく度、興奮と期待が強くなる。
それは風船の様にどんどん膨らんでいき、やがて閨に辿り着いた時、それは破裂寸前にまで膨れ上がっていた。
「ふふ…………♡さあ、もっと楽しみましょう、我が妻…………♡」
モルガンが私をベッドに下ろし、上に覆い被さる。
再び肉槍を膣口にあてがわれ、快楽と歓びで身体が震える。
同時に視界の奥で、閨の扉が一人でに閉まり始める。
そして。
「…………っ♡♡♡また、きた…………っ♡♡♡…………ぃ、あ…………っ♡♡♡」
肉槍が再び膣内を貫き、抉ってくる。
それに快楽と幸福を覚えて絶頂すると共に、扉が閉まった。
━━━━━━モルガンとの結婚式から、しばらく経った後。
「うーん、今日はどうしようかなぁ…………」
もう何度目かわからないブリスティンの朝、私は習慣となった服選びを行う。
とはいえ、もう大体は決まっている。
手早く服を選び、寝間着から着替える。
「…………これで、良し!」
姿見に写る私を見る。
そこには、いつも通り刻印の刻まれたお腹を見せる服を着た私がいた。
だけど、それは前の私とは少し違っていた。
まず目につくのは、左手の薬指にきらりと輝く指輪だ。
モルガンと刻まれた指輪の存在は、見てるだけで嬉しくなってくる。
それと、もう一つ。
「…………今日は、これで大丈夫、だよね?」
服を捲って、中をちらりと覗き見る。
そこには、前の私ではとても普段使いする勇気が出ないような、過激な下着があった。
その色合いやデザインが、今日の服に合ってるかどうかをもう一回確認するが、問題は無いみたいだ。
改めてよし、と気合を入れながら、モルガンの待つ食堂に向かう。
━━━━━━モルガンとの結婚式を迎えた日から、私はちょっと変わった。
具体的には、モルガンの妻である自覚がちょっと強くなったと言うか。
だからなのか、過激な下着を着ることに以前よりも抵抗は少なくなっていた。
まあ、浴衣を着る時に何も着けないって選択した時からそんな感じはあったけど。
…………とはいえ、まだちょっとした気恥ずかしさは残っているのだけど。
でも、無理してるって訳じゃない。
モルガンの反応が良いのは嬉しいし、どうせモルガンにしか見せるつもりは無いし。
…………それに。
モルガンが私を離さない様に、私だってモルガンを取られたく無いのだから。
そのためなら、ね?
モルガン楽しかった
次は宝具6にしたしBBちゃん書きたいような奏章3まで待ちたい様な
続きを書くなら
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快楽堕ち(ビーストカーマ)
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カジノ敗北所有物(Wコヤンスカヤ)