次回はあとがきです。それでは。
典也がよちよち歩きを始め、言葉らしきものも発するようになった頃。それまで以上に世話が掛かるようになった一方で、私の母親としての自覚もより強い者となっていた。
「……あの人の影響で、ヘンな言葉から覚えなければいいんだけど。」
「んばぁ?」
俊也のことを考えながら顔を見る私に、我が子は不思議そうな顔をして笑みを浮かべていた。
「ふふっ……!どうせパパに似るんだったら、良いところだけが似てほしいわね。悪いところは……」
「ぶぅぅ……」
あの人に悪いところなんてない。父親を悪く言おうとしているのを察したのか、典也は先程よりも仏頂面となって私を見る。歩けるようになっただけではなく、感情表現も豊かになっていく姿に、私は我が子の成長を感じていた。
「そう……あなたが元気に育ってくれることが、私にとっても俊也にとっても……」
そう思うことが母親として当然だと考えていた。子を持つ親として、子供の成長を見守ること以上に求めてものなんてない。でも、私にその資格があるのかと、典也を抱きながら逡巡をしてしまう。
◇
『俊也にはまだ、伝えていないのですか?』
『はい。すいません……あまり、ご実家のことになると口を開かなくなってしまうので。』
典也が生まれて間もない頃。私は俊也と付き合うきっかけを作ってくれた、彼の親族の関係者を名乗る人物と再び接触していた。
『やはり、千晶さんでも彼を説き伏せるのは難しいようですね。』
『少なくとも……ご実家の存在自体を忘れようとしているみたいですから。』
喫茶店テーブルの向かい側に座る人物は悩まし気な表情を浮かべつつ、私の言葉を聞いた上で口を開く。
『率直なことを申し上げますと、橘家としては俊也を実家へと戻すことに前向きではありません。』
『えっ?それじゃあ……私には彼を実家へ戻すようにと、あの時そう言われて……』
話を理解することが出来なくなろうとしていた。俊也の実家の目的は、彼と私を実家へと戻して世継ぎとすること。そう考えていたため、俊也のことをあっさりと諦める先方の態度には拍子抜けをしてしまった。
『要は跡継ぎが必要なのです。千晶さん、あなたと彼の間に生まれた跡継ぎが。』
『そんな……まさか……!』
しかし、続いた言葉を理解するのは容易であった。俊也の実家、橘家が求めているもの。それは橘家という家を存続させるための血筋。つまりは私と彼の間に生まれた子供、典也の存在をだけを求めているのであった。
『ふざけないでくださいっ!子を手放す親がどこに……!』
私は思わず両手をテーブルに叩き付け、その上に置かれていたグラスや食器だと震えさせて騒音を響かせる。周囲にいた客も多くないとはいえ、声を荒げる私と響いた音に振り返ってもいた。
『では、千晶さんと俊也が橘家へ戻れると?』
『彼だけじゃありません……!私だって、あなたたちのような人間がいる家になんて……!』
『それは困りますね。書類上の契約や約束ではないとはいえ、千晶さんには本家が期待をしているのですから。』
『くぅぅっ……!』
言葉遣いこそ丁寧ではあったものの、実質的な脅迫といえた。私と俊也の実家に間に発生した義理という存在が、私自身に呵責を芽生えさせているのであった。
『そう多くはありませんが、時間はまだあります。千晶さん、あなたがもっとも幸せだと思う選択をしてください。』
親子夫婦として俊也の実家へと戻るか、
息子である典也だけを差し出すか、
あるいはそのいずれも選ぶことなく、俊也と共に彼の実家と対立する道を選ぶか。
私に決定権があるように見えて、全ては彼らの都合の良い選択肢しか残されていなかった。
後悔をしていた。悪辣を極めたような俊也の一族に、自らの思いを委ねたことを。
そして何よりも、彼の気持ちを理解しないまま、偽りの幸せを手に入れてしまっていたことを。
この理不尽な仕打ちで苦しむのは私だけでいい。家族には決して背負わせていけない。それが俊也の妻であり、典也の母である私の出来る贖罪なのであると、一人で心に誓うのであった。
◇
些か重たさを感じる典也を抱えながら、買い物から帰路につく。程よい張り合いがある平穏が続く中で、私は自らの悩みも忘れることが出来ていた。
「んぅぅぅ……」
「あら、お腹が空いたのかしら。もう少し待っててね。帰ったらすぐにおやつを上げるから。」
そろそろベビーカーを買わなければ、私の身体が悲鳴を上げそうになるくらいに、我が子の重さを肌身で感じる。そしてさらには、成長をするにつれて幼稚園、あるいは保育園へと預ける時期も近付こうとしていた。
「……出来れば、もっと一緒にいたいのよね。」
「んぶぅ……?」
俊也が子煩悩となるのも無理はなかった。私の育児の負担を軽くすると言いながら、彼は積極的に世話をしたがるほどに溺愛をしていた。そうなると私も意地を張りたくなってしまい、彼よりもこの子に自然と愛情を注ごうとしている。
「典也は幸せ者ね。パパにもいっぱい大切にしてもらえるんだから。」
「んぅぅぅ……?」
幼い頃の私が得られなかった、ささやかであっても当然の幸せ。この子にはそんな当たり前の幸せを享受してもらいたい、それが私の願いであった。
◇
「あら?鍵が空いて……もう帰ってきたのかしら。」
戸締りはしっかりしていたため、自宅のドアが開いていたことに訝しさを感じたものの、玄関には見慣れた靴が置いてあったため、俊也が帰ってきていたことに安堵をする。
そうして典也と荷物を抱えた私がリビングに入ると、ソファーには早めの帰宅した夫が座っているのだった。
「おかえりなさい。早かったじゃない。」
「あ、ああ……」
疲れているのだろうか。あまり元気がない様子だった。仕事はそこまで立て込んでいないと聞いていたので、私は体調面に問題があるのかと心配する。
「いくら仕事が少ないからって、定時よりも早く帰ってきて大丈夫なの?」
「それは大丈夫だよ。あいつらが……早く帰っていいって言ってくれたら。」
「……?」
いつも通りの会話であるはずなのに、何処となくよそよそしさを感じる。そんな俊也の態度に、私もまた胸騒ぎをするようになる。
「すぐに夕飯の支度をするから、それまで典也の面倒でも見ててくれるかしら。」
「ああ、任せて。」
そういって私は抱きかかえていた典也を彼に託すと、買ってきた食材の調理と下ごしらえを始めようとする。
「あら?」
しかし、そうして俊也に典也を預けた時、彼の傍に一通の手紙が置いてあるのが目に入る。隠すわけでもなく、見せつけるわけでもない。本当にただ置いてあるだけの存在が私の中の何かを変える。
「それ……どうしたの?」
「い、いや……これは……その……」
歯切れの悪い俊也を尻目に、私はその手紙へと手を伸ばし、彼の許諾も得ずに目を通す。決して良いものではないと、私の全てが理解をしていた。それでも彼が目を通しているであろうその手紙を、私も読まずにはいられないのであった。
「………」
手紙の差出人は俊也の実家だった。そしての内容は非常に簡潔かつ単純。私と俊也の間に生まれた子供、典也を俊也の兄夫婦に養子として差し出せという要求であった。
「この手紙……うちに来たの?」
「いや、ご丁寧に俺の会社へと送られてきた。もちろん、宛名は俺じゃなくてお前だったけどな。」
心臓が握り潰されたような感覚だった。けれど実際はその逆で、尋常ではない鼓動の高鳴りが私を支配していた。
彼の顔を見ることが出来なかった。全て、そう、全てが彼の前で明るみになってしまっていた。この手紙の内容を私と俊也が受け容れることはない。しかし、この手紙の存在自体が私と彼の実家の繋がりを示すには十分すぎる存在であった。
「ねぇ……こんな時に聞くことじゃないと思うけど。ご実家へと戻るつもりはないのよね。」
「ああ、全くない。それに千晶、お前はどうなんだ?こんな手紙を送ってくる連中がいる場所で、俺と一緒に住みたいと思うのか?」
その言葉を聞いた瞬間、私は無意識に手に持っていた手紙と呼ばれていた紙切れを握り潰していた。
「よかった。私も……同じ気持ちだから。」
「ああ、そうだ。俺たちはこれからも一緒だ。ずっと……一緒だ。」
地獄だった。罵られ、糾弾され、侮蔑の視線を浴びたかった。あるいは暴力を振るわれ、首を絞められ、殺されても構わないとすら思うほどの気分だった。
でも、彼が私を責めることはなかった。それが私にとって何よりも苦痛であるのだと、彼が理解しているのか定かではなかった。ただ、唯一分かったことは、彼の気持ちが私から離れていくことだけであった。
◇
不仲な夫婦であっても、どうして子供だけは増えるのだろうか。結婚をする前は、ずっとそんな疑問を抱いていた。
「んぶぅっ、んぢゅっ……ぢゅる、んぢゅっ……んぢゅぅぅっ!!!」
「んんっ……ち、千晶……んぐぅっ……!?」
でも、同じ部屋、同じベッドで夜を過ごしていれば、否が応でも性欲は発散したくなるというもの。
長い一日を終えようとしていた私と俊也はお互い裸となり、私はベッドの縁に座った彼のペニスを咥え込んでいた。
「ぢゅるっ……んちゅっ、ぢゅぶっ、ぢゅぼっ!ぐぶぅっ、ぢゅっ……んぢゅぅぅぅぅっ……!!!」
「んんんぅっ……千晶っ、ダメだ……そんなに……!」
「ぐぶぉっ、ぐぶっ……んぢゅぅぅぅぅ……ぷはぁっ!」
俊也の勃起したペニスを前にして、私は謎の安心感を得てしまっていた。もう私みたいな女では勃起してくれないかもしれない、そんな不安を心の何処かに持っていたから。そういういった経緯もあって、私はいつも以上に彼のペニスに丹念な奉仕をしていた。
「ふふっ……!おチンチン、ビンビンになってる。こんな私でも、興奮をしてくれるのね……」
「当然……だろ。別に……千晶が悪いことなんて何も……んぅぅっ!?」
「んぢゅっ、んぶっ、ぢゅるっ、ぢゅぶっ、んんっ……んぢゅっ……ぢゅるっ、んぢゅるるるぅぅぅっ!!!!」
根元までを深く咥え込み、頭を前後へと振り乱して奉仕を再開する。ペニスは口内で激しく震え、先走り汁を何度も迸らせて射精に耐えているようであった。
「んぶぅぅぅぅっ!!!んぶっ、ぢゅぶっ、んぢゅっ、んぢゅぅぅぅぅっ!!!!」
「あぐぁっ……!ダメだ千晶……これ以上はもう……んぅぅぅっ!!!」
「んぢゅっ!ぢゅぶっ、んぶぅっ!ぢゅるっ、んぢゅっ……ぢゅぶっ、ぢゅぼぉっ!ぢゅっぶぅぅぅぅぅっ!!!!!」
私自身も激しく震えるペニスに興が乗ってしまい、奉仕を止めることが出来なくなってしまっていた。きっと、心以上に身体が彼に対する服従、隷属を求めて、奉仕欲が抑えきれなくなっているようだった。
「んぢゅぅぅぅっ!!!んぶっ、ぢゅるっ、んぶっ、ぢゅぶっ!!!ぢゅぼっ!んぶっ、んぼぉっ!ぢゅぶっ、ぢゅぼっ!んぢゅぶぶぶうぅっぅぅぅぅっ!!!!」
「んっぐぅぅっ!!!ダメだ千晶っ……出るっ、イくっ……あぁぁぁぁっ!!!!」
「ぐっぶぅぅぅぅぅっ!!!!?ぐぶぅっ……ぐぼぉっ!んぶっ……んぢゅっ、んっ、んぐっ、んっぐっ……んぢゅっ……ぢゅぅぅぅ……!」
そして、彼のペニスは私の口内で精を解き放つ。勃起した肉の棒から溢れ出た精液を、私は一滴も残さずに飲み干していく。彼に対する愛おしさを示すように。そうすることによって、私の肉穴からも自然と愛液が分泌され、抽挿の快楽を求めているのであった。
「んぢゅっ、ぢゅるっ……んっ、んぐっ……んぶっ、ぢゅるっ……ぷはぁっ!」
「はぁっ……はぁっ……ち、千晶……」
「はぁ、はぁ……んんっ……!ふふっ、全部飲んじゃった。精液、すっごくおいしかったわ。」
こんな下品な真似は、昨日までの私であれば決して出来なかったと思う。しかし、今の私は少しでも彼の気を引こうと、今までよりも淫らな性分を露わにしてしまっていた。
「な、なぁ……別に俺は、そんなにしなくても……今までの千晶でも十分に……」
「っ……!だ、ダメよ……!私は……私がもっと、あなたを満足させてあげるから……!」
「あ、ああ……」
違う。彼はこんな私を求めていない。これは淫らになっているのではなく、焦っているだけ。彼の心が私から離れることを恐れる焦燥だった。
「まだ、元気なままね。やっぱり……一度出しただけじゃ満足しないわよね。」
「当たり前だろ。お前だって……全然満足してないだろうし。」
「ええ……私は、あなたが思っている以上に淫乱で欲深いから。」
もう、本当の私を彼に見せることはないのかもしれない。夫婦となっても言い争い、いがみ合うような関係は二度と戻らないのかもしれない。それでも、私が彼を想う気持ちだけは変わらなかった。
私はベッドに上がると四つん這いとなり、自ら尻を突き出すと肉襞を押し広げ、膣奥までをも露わにして挿入を求めるのであった。
「うぅっ……千晶っ……!」
「きて……俊也のおチンチン、私のおマンコに挿れて。ナマのおチンポを思いっきりぶち込んで、一緒におマンコで気持ちよくなりたいの。」
股間の周囲を覆う茂みから滴り落ちるほどの愛液を零して、私は淫らに彼の肉棒を求めていた。子を持つ親とは思えないような下品な振る舞いに、俊也のペニスは瞬く間に蘇っていた。
「あぁっ……おチンチン、またこんなに固くなって……!」
「本当に……思いっきり突っ込むぞ?」
「ええ……ちょうだいっ!わたしのことなんか考えないでいいから……いっぱい激しくして、気持ちよくなってっ……!」
「くぅっ……んぅっ……ふんぅぅぅぅっ!!!」
そう私が声を上げた直後、極太の杭が撃ち込まれるように膣穴をペニスが侵入を果たしていく。付き合い始めから、結婚してからも毎晩のように繋がっていた肉棒。それでも、今日ほどの気持ちいい時は今までになかった。
「んっぐぅぅぅぅぅっ!!!!あぁっ、あぁぁんっ!!!すごぉっ……!俊也のおチンチン……こんなに固くて大きくて……んんぅぅぅっ!!!」
「んぐぅっ……!?ち、千晶……!?」
「あぁぁぁぁっ!!!だ、ダメッ……わたし、ダメっ、イくっ、イっちゃうっ!んぅぅっ!!!んんんんんぅぅぅぅぅぅっ!!!!!!」
自分でも信じられなかった。彼のペニスが挿入されてすぐに、私は絶頂を迎えていた。まるで自分の身体が別人のものだったかのように、今までのセックスとは全く違い快感が私の身体を駆け巡っていた。
「あぁぁぁんっ!!!はぁっ……はぁっ……んんぅっ!!!な、何……これ、わたし……こんな……挿入されただけで……んんぅぅっ!!!」
「ふぅっ……ふぅっ……千晶……大丈夫なのか?」
「え、ええ……平気……だから。わたしのことは気にしないで……このまま……もっと激しく……して?」
ますます自分が嫌になった。俊也に対して心だけではなく、身体までを偽っていたのかと。もちろん彼とのセックスは今までも素晴らしいものであったが、それが嘘をつき続けた自分の上に成立していたことを後悔してしまう。
「あぁぁぁんっ!!!んぅっ……んんっ!!すごっ……これっ、おマンコイったばかりなのに……あぁぁんっ!!!!」
「はぁっ……はぁっ……千晶のナカ、こんなに……気持ちよかったか……?」
「んひぃっ!んんんぅっ!!な、なによ……今までが、気持ちよくなかったの……?あぁんっ!!!」
「そういうわけじゃなけど……んぐぅっ!ただ……んんぅぅっ!!!」
彼の言っていることは、痛いほど理解出来てしまった。良くも悪くも本当の私を知られてしまった以上、彼に対する遠慮、罪悪感というものは薄れていた。
それが私の身体を通して、セックスの気持ちよさへと結びついていることに、悦びと安堵感を得て行為へと及ぶこと出来ていた。私はまだ、彼とする本当のセックスを知らなかったのかもしれない。
「あひぃっ!?んぅぅっ!!!!あぁぁぁっ!!!おチンチンすごいっ……あぁぁんっ!!!俊也のおチンチン……ガチガチのビンビン……んぅぅぅぅっ!!!!わたしのおマンコにゴリゴリって……んんんぅぅぅぅっ!!!!!」
「ぐぅっ……ふんぅっ……んぅぅっ!!!!いいぞ……千晶のマンコ、一度出してるのに……こんなに……!」
「あっ、あっ、あぁっ!!!あぁんっ!ダメッ、激しいっ。激しいのぉっ!おマンコっ、おマンコ感じすぎちゃうからぁっ!俊也のぶっといおチンポで気持ちよすぎておマンコおかしくなってるのぉぉぉぉっ!!!!」
私の求めるがまま、彼は自らの欲望に従って膣内にペニスを突き込んでくれていた。ベッドが軋み、腰が打ち付けられる度に、室内には下品な音が響き渡っている。先のことなんてどうでもいい、今はこの快楽を貪ることだけが私の全てだった。
「あぁぁぁ……好き、好きぃっ……!俊也のおチンチンっ、おチンチン好きぃっ!わたしのこといっぱい気持ちよくしてくれるおチンチン大好きなのぉっ……!」
「はぁ、はぁ……俺のことは、どうなんだ?んぅぅっ……!」
「もちろん好きよぉっ!おチンチンと同じくらい好きぃっ!俊也も俊也のおチンチンもどっちも大好きっ!このおチンポがあればもう何もいらないんだからぁぁぁぁぁっ!!!!!」
自分でもおかしく思えるほどに、私は淫らな言葉を発していた。そう、これは終わりであり始まりのセックス。偽りの自分と決別し、本当の私が彼と向き合い共に生きるための一歩。そう考えるだけで、私の身体は快楽以上の心地よさに包まれようとしていた。
「んひぃぃっ!!!んぅっ!!!あぁぁぁんっ!!出してっ、いっぱい出してぇっ!おチンチンから気持ちいいの出してっ!あぁぁぁぁぁんっ!!精液ちょうだいっ!おマンコのナカにたくさん出してっ、出してぇぇぇっ!!!!」
「あぐぅっ……!千晶っ、千晶ぃっ!ふんぅぅぅっ!!!!」
「あぁぁぁぁんっ!!!またっ、まだ激しくなるのぉっ!おチンポっ、チンポのズボズボもっと激しくなって……んっぐぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!」
身体が、心が、私の全てが彼の虜になっていく。愛する夫だから当然であるのだろうけど、私は改めて生涯を共にする男として、俊也を求めることが出来た。そしてこれからも、彼と共に生きていくことが出来る。その喜びだけが私の中に満ち溢れていた。
「イくぅっ!イっくぅっ!!!イっちゃうっ!!!わたしもイくぅっ!おマンコっ、おマンコでイくぅっ!!!俊也と一緒にイくのぉっ!あぁぁぁぁぁっ!!!!」
「ああっ……俺も、千晶と一緒……一緒に……んぐぅっ!んぅぅぅぅっ!!!!」
「あぁぁぁぁぁんっ!!!イくっ!イクイクイクぅっ!!!俊也っ、俊也ぁっ!あぁぁぁぁんっ!!!イクぅっ、イクぅぅっ!!!いっくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!」
「んくぅっ……あっ、あぁぁぁっ!!!!」
膣内を激しく突かれた果てに、全身を震わせて迎える激しい絶頂。彼とのセックスが最高であると思える瞬間。心身が満たされるのを最も感じている瞬間だった。
「えっ……?」
しかし、それと同時に訪れるはずの感覚は一切なかった。それどころか膣内には理解出来ない喪失感に襲われ、その代わりに尻肉へと降り注ぐ熱い何かが私を汚していた。
「ふぅぅ……ふぅぅ……!」
「どうしたの……?ねぇ、どうして……」
問わずにはいられなかった。ペニスを引き抜かれた私の膣内からは、私自身が零した愛液が溢れているだけだった。そして彼が解き放った大量の精液は、私の尻を白く汚しているだけなのであった。
「……ごめん、千晶。」
「………」
驚きはしなかった。こうなることはずっと心の何処かで感じていたのだから。私はまだ、自分を偽り続けていたのだから。
「なんで……なんであなたが謝るのよ?悪いのは……本当に悪いのはぜんぶ……あなたが謝ることなんてなんにも……!」
彼と過ごした幸せな日々、その全てが偽りだったのだと突き付けられたようだった。いがみ合い、言い争い、身体を重ねて快楽を求め合い続けた日々。その全てが露と消え、無に帰そうとしていた。
「ぐすっ……えぐ、ずずぅっ……ひぐっ……えぐっ……!」
「俺だって……わからないんだ。お前を信じたい……でも、それでも俺は……」
背を向けたまま顔を合わせることなく、嗚咽を漏らす私に対して俊也はそう語る。
彼は自らの実家と繋がりを持っていた私を信じ切ることが出来なかった。それが全てを壊してしまった。互いを決して責めることが出来ないまま、私たちの関係は破綻を迎えてしまった。
そして、このやり場のない思いは、決して向かってはいけないところへと向かうのであった。
◇
夫婦になることは案外容易く、その逆もまた容易なことであった。問題はそこへ至るまでの覚悟であり、私と俊也にはそれすらも容易いものであった。
「典也のこと、お願いね。」
「ああ。しっかり育てるよ。」
「本当に?なんだか……すっごく不安なんだけど。」
「それは俺だって同じだ。正直言って……自信なんか全然ないからな。」
玄関で最後の会話を交わす私と俊也。彼の腕には典也が抱っこされていて、私の顔をいつものように見つめていた。
「だぁ。」
「すまないな典也。お母さんとはしばらく会えなくなっちゃうけど、しっかり俺が世話をするからな。」
典也のことは俊也に任せられる。少なくとも、私より良い親でいられると思えた。彼の親バカぶりが少しでも長く続くことを、私はただ願うだけだった。
「なぁ、最後にもう一度抱っこしておくか?」
「えっ……!?わ、わたしは……」
抱きかかえる典也を差し出そうとする俊也。彼の腕の中で、私の息子は心地よさそうな笑みを浮かべていた。そして私は、そんな我が子の顔を見て伸ばそうとした手を戻すのだった。
「やめておくわ。せっかく断ち切った未練が、また繋がってしまいそうだから。」
「そうか……そうだな。千晶が俺に、託してくれたんだからな。」
「ええ……そういうこと。」
私にはもう、この子を抱く資格などなかった。私が俊也と離婚することで、この子には私と同じ思いの半分を味わわせることとなる。それだけであれば、私の後ろめたさはまだ明るいものだった。
「お父さんに似て……立派な子に育ってちょうだいね。」
「うぅっ……!俺も気を付けないとな。」
典也の顔を見つめながら、そう語りかける私。でも、そうしている私の目からは止めどなく涙が零れてくるのであった。
「ごめんね……典也。お母さんは……あなたと一緒にいることが……もうっ……!」
「………」
「んぶぅぅ?」
我が子に対する悔恨、懺悔の言葉。俊也はそんな私の言葉に沈黙し、典也は涙を流す私を不思議そうに見つめていた。
「ごめんなさいっ……!本当に……ごめんなさい……!ぐすっ、えぐっ……うぅぅぅぅっ……!!!」
『この子が生まれなければ、この子さえいなければ。』
母親として決して抱いてはならない感情。私と俊也の間を引き裂く要因となってしまった我が子に対して、そんな悍ましい感情を私は抱いてしまった。
俊也は私を咎めようとしなかったが、この子には彼に以上に私を恨む権利がある。そして私は、そんな我が子の憎しみを一生背負っていく覚悟を決めたのだった。
「すごく……楽しかったわ。ありがとう。」
「ああ、俺も楽しかったよ。身体には……気をつけろよ。」
「あなたも……無理はしちゃダメよ。」
もう二度と会うこともない。だから最後はせめて、良い別れ方をしたかった。それが私の、彼に対する最後の望みだった。
「……さようなら。」
そして私は玄関のドアを開き、彼と息子と過ごした家を後にする。もう私に背負う罪はなかった。残されたのはただ、偽りの幸せを享受した代償だけであった。