物事の終焉の大半がそうであるように、カビゴンとの別れもまた唐突なものであった。
その日、いつものようにカビゴンへの食糧を手土産に秘密基地へと訪れた三人は──誰もいなくなった倉庫の中で途方に暮れた。
「ま、まだ近くにいるかもしれない。手分けして探そうぜ!」
イチオの言葉に頷き、一同はそれぞれに敷地の中を探す。
倉庫を始めとした敷地内は元より境界フェンスの外にまで捜索の手を広げたが、それでもカビゴンを発見することは叶わなかった。
意気消沈してイチオとジュキは倉庫に戻る。
ここであのカビゴンと遭遇してからの一週間──三人はそれは濃厚な時間を彼女と過ごした。
おおよそ思い付く限りの交尾は元より、アナルセックスや乳首の乳口へと挿入をさせるニプルファックなど、彼らには思いもつかないやり方もまたカビゴンは披露しては、彼女からもたらされる快感に三人は時を忘れて夢中になったものだった。
「明日から冬休みだから、ずっと一緒に居られるって思ったのにな……」
ジュキの呟きとも取れない言葉に深くため息をついてはイチオもまた無言で頷く。
カビゴンの喪失感は想像以上に大きなものと言えた。
そんな落ち込むばかりの場に、
「おおーい。コレ見てよー」
遠くから掛けられるレーヤの声。
その方向に振り向けば、そこには両腕に何かを抱えたレーヤが小走りに倉庫の中を走って来る姿が見えた。
やはりというかイチオとジュキの関心はレーヤの手の中のものへと注がれる。
丸みを帯びたそれは、抱えるレーヤの胸元を埋めていることからもそこそこの大きさの何かであることが察せられた。
やがてはレーヤもまた合流を果たし、改めてその腕の中の物を見下ろすに至り──二人は彼が何を持ってきたのかを理解した。
その腕の中にあったものは、卵であった。
白を基調としたエナメル質の滑らかな表面には、薄緑の斑点が大小さまざまに浮き上がっている。
「倉庫の隅っこの方で見つけたんだ。これってもしかしてさ……」
レーヤの憶測には、まだその全てが語られずともジュキとイチオにも想像がついた。
それこそは……──
「きっと……カビゴンの卵だ」
イチオがそう言うと一同も大きく頷く。
状況から鑑みてそのことに疑いようはなかった。
そもそもがカビゴンがこの場所に潜伏していた理由こそはこの産卵の為ではなかったのだろうか?
……そうなるとあの苛烈な交尾の一週間は妊婦と交わしていたこととなり、その事実に各々が罪悪感とそしてささやかな興奮を覚えずにいられなかったが。
ともあれ今後はこの卵をどうするかを三人は話し合おうとしたその時であった。
「え……? うひゃあッ!?」
ふいに腕の中で激しく卵が身を震わせる動きにレーヤは声上げた。
その後も卵は内側から殻を突き破ろうとするかのよう、二度三度とその身をしならせる様に震わせ続ける。
「ど、どうしようイッチンッ?」
「と、とりあえず下に置け! そーっとだぞ?」
依然として──むしろどんどんと激しさを増す卵を足元に置くと、三人はイチオを先頭に固まっては少し離れた位置からそれを見守る。
もしかしたらカビゴンの物だと思っているのは自分達の思い込みであり、そこからまったくの別物が生まれてくる危険性も捨てきれなかったからだ。
そうして見守り続ける中、卵の表面にひびが入り、さらにはその亀裂は殻全体へと伝わっていく。
ついには欠けた殻の一部が地へと剥がれ落ち、まばゆい光が卵の内側から溢れては周囲に光輪を一環波及させるに至り、三人もその衝撃に身を縮こまらせては顔をそむけた。
しばしの静寂──。
すっかり静まり返った場に恐る恐る目蓋を開いては、先の卵を確認する三人の目に入ったものは──卵の殻を頭に乗せたまま、その場に尻もちに座り込んでいるゴンベの姿であった。
「な……なんだコイツ?」
「ゴンベだね。カビゴンの進化前の姿だよ」
訝しがるジュキに対してレーヤが説明をする。そして同時にこれは、あの卵が間違いなくカビゴンのものであったことの証明であった。
それでもしかし近づく勇気が持てずなおも見守り続けていると、ゴンベはその場で物珍し気に周囲を見渡した後、やがては一か所に固まる三人組を発見した。
そして互いの目を合わせること数秒──次の瞬間には、ゴンベは動物染みた声を発するや、見た目以上の機敏さで先頭のイチオへと駆けだした。
その突然の行動に慌てふためくあまり、避けることも逃げることも叶わずにゴンベとの接触を許してしまうイチオではあったが──ゴンベは別段危害を加える様子もなく、ただひたすらにイチオの腹に額を擦り付けては甘えてみせるのだった。
「な、なんだ? 生まれたばかりだっていうのにずいぶん人懐こいな……」
「生まれたばかりだからだよ。鳥なんかもそうだけど、こういう赤ちゃんって一番最初に目にしたモノを親だと思い込むんだ」
レーヤの説明に、ジュキとイチオも感心しきりにゴンベの頭を撫でた。
そんな折……
「なあ……コイツ、俺達で育てようぜ」
ふいにイチオがそんなことを言い出す。
突然の提案に驚いては、反射的に否定をしようとしたジュキとレーヤではあったが、
「──それで、あのカビゴンに俺達で育て上げるんだ」
イチオのその言葉に、二人は開きかけていた口をつぐんだ。
期せずしてその時、三人の脳内に広がっていた光景はあのカビゴンと過ごしためくるめく官能の日々であった。
「……それじゃあ、いろんなことをこの子に教えてあげないとね」
おずおずと頷くレーヤに対し、ジュキもまた同意しては頷く。
それを受け、
「よーし! それじゃまずはご飯からだ」
イチオの目にも悪童めいた光が閃いた。
一方でまだ言葉も満足に知らないはずのゴンベも、イチオの言う『ご飯』の単語に反応してはそれを求めるよう、抱き着くイチオに飛びついては餌付けを求める。
そんなゴンベを宥めながら、イチオはその場に直立をさせるとゴンベに大きく口を開くように言い諭す。
それを受け、目を閉じて三人の前に大きく口を開いては、期待いっぱいに生まれて初めて口にするごちそうを待ち受けるゴンベ。
そんなゴンベへと……三人はそれぞれに取り出したペニスをその口の淵に置いた。
すでに一連の計画を夢想することで、三人のそれは痛いくらいなまでの勃起を果たしている。
「一番最初は……この味をよく覚えるんだぞ」
言いながら自身のペニスをしごきだすイチオ。
それと同じくにジュキとレーヤもまた、その亀頭の先端をゴンベの舌上に定めてはペニスを激しく扱く。
これからはこのゴンベがカビゴンの代わりだ──冬休み中はいつまでも一緒に居られる。
カビゴンと体験したことは全て教えてやろう。それだけじゃない、あのカビゴンと出来なかったことも思いつく限り全てを試すんだ。
そう考えた時、三人は胸中には抑えきれない期待とそして興奮とが大きく渦巻いた。
そしてその想いの丈をぶつけるよう……──
「イクぞゴンベ!」
「俺も……俺もイク! 俺の味をしっかり覚えてゴンベ……!」
「はぁはぁ……キミが生まれて初めて口にするミルクだよ~♡」
三人はそれぞれの思いを胸に、大きく開かれたゴンベの口中へと大量の射精を果たすのだった。
【 エンゲルハンス島のカビゴン・完 】