[ サーヤちゃんのオッパイ見せて~ ]
その日は配信が始まるなりそんなコメントが寄せられた……。
ここで言う『サーヤ』とは僕のサーナイトに皆が勝手につけたニックネームだ。
僕も別段否定せずにスルーしてしまったことから定着し、今やサーナイトはすっかりみんなの『サーヤちゃん』となってしまった。
ともあれ人気が出て視聴者も増えれば、こういったコメントを寄せる輩も出てくる。
本来ならばそういうコメントには厳正に対処しなければならないところなのだろうが……
「あ、コラ! 勝手にリクエストに応えちゃダメだってば!」
サーヤ嬢はその程度のことなら問題なく応えてしまう。
今やすっかり字の読み書きができるようになったサーナイトはむしろ、書き込まれるリクエストに応え、それに対する反応を見ることに喜びさえ見出していた。
今だって件のリクエストに、サーナイト特有の胸からの突起物を両手ですくい上げ、さながら乳房を寄せるような仕草をとってみせては、視聴者からの大反響を楽しんでいる。
そんなコメントの中に……
[ トレーナ君にもオッパイ飲ませてあげて~ ]
さらに理解に苦しむリクエストを見つけて僕も困惑を表情に出してしまう。
そもそもがあの突起を『乳房』と仮定していること自体が意味不明であるのに、それを更に僕に飲ませようとする行為は、もはや謎行動以外の何物でもなかった。
もちろんのことながらそんなものはスルーをして、本来の番組進行に戻ろうとした僕であったが……
「──え? わわ、な、なにッ?」
突如として傍らのサーナイトが動いた。
末広がりの大きな両手で僕の背を包み込んでは抱き寄せたかと思うと、まるで赤ん坊でもあやすかのようサーナイトは自分の膝の上に僕を乗せてしまった。
そうしてただ為されるがままの僕の鼻先へと……サーナイトは先の胸の突起を突き付けた。
状況から察するにここへキスか、あるいは赤ちゃんのように吸い付けということなのだろう。
膝の上からも不満気に見上げる僕の仏頂面とは対照的に、見下ろすサーナイトは慈愛に満ちた笑みを見せては何とも楽しげだ。
チラリとモニターもまた確認すれば、案の定このサーナイトのアドリブに視聴者達も大いに盛り上がっている。
ここでこれを拒否してしまうのは、もはやマイナス以外の何物でもないと判断し……仕方なく僕もこの茶番に付き合うことにした。
サーナイトの突起へと口元を寄せ僕の唇が僅かに吸い付くや、彼女はその一瞬強く体を跳ねあがらせては息を飲んだ。
僕自身もサーナイトのこの部分が存外に体温を持っていて、なおかつ柔らかい表皮に包まれていることを確認する。
もっと爪や牙といった角質的なパーツであるのかと思いきや、なるほどこの柔らかさと体温ならば『オッパイ』でも通用するのだなと一人納得などしてしまう。
ともあれリクエストには応えたのだから、これで視聴者も満足したことだろう。
あとはサーナイトの膝から降り、恙無く今後の番組をスタートさせようと思う僕をよそに──サーナイトは僕を膝の上に抱える両腕に力をこめた。
すっかりホールドされる様に抱きかかえられ、降りることはおろか身動きすらとれない。
「え……? さ、サーナイト? 番組を進めないと……」
これを視聴者達にハプニングと取られては大事だ。
小声で膝の上から語りかけては解放を促す僕であったが、一方のサーナイトの表情を確認した瞬間、それがもはや無理なことを僕は悟る。
見下ろしてくるサーナイトの顔はどこまでも無表情だった。
瞳孔を目一杯まで広げた瞳で僕一点を見つめるその顔は、彼女が何か一点に夢中になっている時の顔であることを僕は知っている。
そのままサーナイトはより深く僕を抱き込んで顔を寄せると──僕の唇を奪った。
そんな抱擁に、コメント欄は無数のコメントで滝の流れのように流動しては、さらに多数の投げ銭(ギフト)もまた受領しては小気味の良い音を奏でる。
そんな数あるコメントの中に、サーナイトの反射神経はとある一文を瞬間目に焼き付けて実行した。
それこそは……
[ 今度はトレーナー君のチンチンからミルクを飲んでみようか? ]
そんな一文を、同じくに僕も捉えていた。
「まさか」とは思った。
いかに字が読めるとはいえ、この文章の意味を僕のサーナイトが理解出来るわけがない。
そもそもがまだボキャブラリーが豊富ではない彼女では『チンチン』の意味すら分からないだろう。
ならば適当に言いくるめてこの状況を脱しようと画策した矢先──サーナイトは一切の躊躇なく、僕の短パンを下着もろともに剥ぎ取った。
包皮の先端がよじれた、豆のさやのような僕のペニスがカメラの前に晒されてしまう。
そのことに驚愕しては、僕も必死に足を閉じて両手でそこを覆い隠そうと躍起になるも、すべてはサーナイトに妨害されてしまう。
同時に画面には、先のキス以上の勢いでコメントが怒涛の縦列を為していた。
こんなみじめな体を晒してさも哂い者にされていると思いきや……
[ 可愛い♡ ]
[ トレーナー君のチンコ可愛すぎる…… ]
[ 美味しそう ]
[ 早くむきむきして中を見せて ]……──
等々、そこに溢れていたものはわが目疑う賛辞とそしてギフトの数々であった。
本気か? ──と訝る僕をよそに、サーナイトは更なる行動に出る。
今までは膝の上で互いの体が直交するように抱き上げていた体位を、今度は正面に重なるように僕を完全にひざの上へ置いては、その背後から僕の両足をカメラに向けて左右に展開させてしまうのだった。
「わ、わああッ! やめて! 見ないでッ‼」
M字に開脚させられるという、さながら幼児がトイレをさせられるかのような姿勢で持ち上げられる僕は、ペニスはおろかお尻の穴まで視聴者達に晒す格好となってしまった。
比例して視聴者達の熱気も最高潮に達すると、もはやこの場は誰もが制御できない無法地帯へと化していた。
……否、ただ一人を除いてはだ。
それこそは、
[ サーヤ様、ねがいします! そのトレーナー君のチンコからミルク絞ってあげてください! ]
[ サーヤ様~ お尻の穴もいじって~♡ ]
僕の背後に控える『サーヤ様』こそが、この場の全てを牛耳っていた。
そしてそんな無慈悲な女王の御手は──哀れな下僕のペニスを持ち上げると、それを皆へ見せつけるかのよう悠然としごき始めたのであった。