「こういうサービスがある訳じゃないのか!?」
事後、ようやく落ち着きを取り戻した俺は同じくリビングのソファにて驚愕の声を上げた。
隣で両膝を揃えて折り目正しく座ったカイリューはどこか照れ臭そうに微笑んでは小さく頷く。
当初、一連のカイリューの行為はいわば派遣会社側の裏メニュー的なサービスであると思っていた。
ゆえにその代金の支払いは元より、個人的な追加のチップも弾んでやりたくて詳細を訊ねた俺に返された答えこそは──全てはカイリューの個人的なサービスであったという事実だった。
「ど、どうしてそんな真似を……?」
当然の如くそう訊ねる俺に対し、カイリューは何やら取り出してはそれを俺に手渡した。
薄いプラスチック製のケースらしきそれは、チラリと目の端に留めただけでもケバケバしい色彩が印象深い代物だった。
そして手にしたそれを改めて確認し──俺は絶句する。
目の前には『チ●ポ掃除代行! 陥没乳首の淫乱家政婦』のタイトルと、そこに写る三角巾を被った全裸巨乳女性のパッケージ……言わずもがな、俺のエロDVDコレクションの一本であった。
聞くにリビングの掃除中にこれを発見したカイリューは、『家政婦』という自分の職業とも通じるその内容に興味を覚え、こっそりとコレの視聴をしてしまったのだという。
内容は家事代行で派遣されてきた家政婦が同時に依頼主の男を性的にも満足させるという物語ではあるのだが、生真面目なカイリューは『家政婦のサービスにはこういった側面もあるのだ』と感嘆してしまったそうな。
そしてさっそくにそれを試みるべく、再度現れた俺に対してビデオの内容をなぞった行為を実践した──というのが事の真相であった。
確かに一連の流れには所々で既知感を覚える瞬間が幾度となくあった。
そもそもがああまで我を忘れて発奮したこと自体、あの展開が俺の性癖に合致していたからに他ならない。
しかしこの時、事実を知った俺の胸中には納得とはまた別の違う感情もまた湧き上がっていた。
それこそは……──
「その……今後は他のお客さんに対してもこういうサービスをするのかい?」
訊ねる質問の意図を測りかねてはカイリューも小首をかしげる。
「いや、だからその……君が他の誰とでもセックスするようになるのかなって……」
一向に要領を得ないその遠回しな台詞に、我ながら自身へ歯がゆさを覚えずにはいられない。
この時の俺は既に──目の前のカイリューに恋心を抱いていた。
有体に言えば彼女のことを一人の女性として意識し始めてしまったのだ。
ゆえに、今後も彼女がサービスの一環として他の客と体を交わすような状況を想像した時、俺は胸かきむしらんばかりの嫉妬や焦りをそこに覚えたのだった。
「……君のことが好きなんだ。他の客とはこういうことをしてほしくない」
もはやどう言葉を繕ったらいいものか考えあぐね、俺はストレートにそれを伝えた。
10代の子供でもあるまいし、斯様な告白などはまさに顔から火が出る思いだ。
……というか、こうまで真摯に好意を相手に伝えること自体が初めてであったことにも気付き、俺はさらに恥ずかしくなっては視線をそらせてしまうのだった。
しかし次の瞬間、そんな俺を思わぬ衝撃が包み込んだ。
体全体が揺すぶられるかのごときそれに驚く俺であったが、それこそは突如としてカイリューが俺を抱きしめたからに他ならなかった。
あの巨乳で包み込むよう正面から抱きしめられると、俺はカイリューの乳房の間に挟まれては拘束される形となった。
そこからカイリューは胸の中の俺へと何度もキスの嵐を見舞っては、さらに愛おし気に舌を這わせ顔の箇所を問わずに舐め上げた。
この時の彼女は自分でも制御の利かない強い愛情に心駆られた状態であったのだ。
最初こそは思い付きで肉体を交わした関係ではあったが、想像をはるかに超える快感とそして初めての交尾相手であった俺に対し、カイリューもまた強い恋心を抱いていたのだ。
そんな俺から改めて告白されるに至り、カイリューは胸に生じる強い悦びと愛情を持て余しては衝動的に俺を抱きしめてしまったのだった。
その後も激しく施されるキスの合間を縫って、
「カイリュー……もし君さえ良ければここに住み込みで働いてくれないか? これからも俺の世話を焼いてほしいんだ」
そう告げる俺に対し、更にカイリューは激しく頬をすり寄せてはもはや噛みつく様なキスを返した。
……どうやら返事はOKのようだ。
そうして感情の赴くのままにキスを交わしていると──当然の如くに、俺達は再び昂っていった。
依然としてキスを続けながらカイリューの乳房に手を這わせると、熱に潤んだ視線が俺を捉える。
そして彼女の手もまた俺のペニスへと伸び……そこから俺達は、寝食も忘れては再度の交尾へと移行していった。
かくして俺は、専属の家政婦を迎え入れるに至った。
金額はそれなりのものではあったが、『無期限』の長期契約を結ぶことを条件にかなりの減額を代行会社側は提示してくれた。
後に知ることではあるが、契約書の一文に『弊社有事の際には、派遣する家政婦の身元は、本人の希望の下で契約主に帰属するもの』……とあった。
つまりは彼女の身元引受人としての責もまた顧客に押し付けるような内容ではあった訳だが、むしろ俺はそれを『娘の嫁入り』の如くに感じては見えない派遣会社の情を感じたようにすら思った。
ともあれ、俺と彼女の生活は恙無く続いている。
やもめ暮らしの時とは打って変わった清潔な室内と、そしてこれまた玄人はだしの腕前を披露するカイリューの手料理に舌鼓を打つ俺はふと気付くのだった。
それは念願の『恋人』が出来たということ。
相手はポケモンであるが、もはや気にすることもあるまい。
そんなことを考えながら傍らで洗濯物を畳んでいるカイリューを見つめていると──
それに気付いた彼女もまた、優しく微笑んでは俺を受けとめてくれるのだった。
【 派遣家政婦のカイリュー・完 】